(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-21
(45)【発行日】2024-10-29
(54)【発明の名称】積層構造体およびその用途
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20241022BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20241022BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241022BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241022BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20241022BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B32B27/40
B32B27/00 D
C09J11/06
C09J175/04
(21)【出願番号】P 2024111004
(22)【出願日】2024-07-10
(62)【分割の表示】P 2023561244の分割
【原出願日】2022-12-09
【審査請求日】2024-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2021202932
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 周一
(72)【発明者】
【氏名】松木 裕一
(72)【発明者】
【氏名】阿部 愛美
(72)【発明者】
【氏名】三浦 和樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 顕雄
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-158554(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158289(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/124871(WO,A1)
【文献】特開2017-088742(JP,A)
【文献】The Dow Chemical Company,ENGAGE(TM) Polyolefin Elastomers,2019年,URL: https://www.dow.com/content/dam/dcc/documents/en-us/catalog-selguide/777/777-088-01-engage-polyolefin-elastomer-product-selection-guide.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00-201/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体(i)に、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む樹脂硬化層(ii)が直接積層された積層構造体であって、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物が、
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が50~150g/10分、デカン可溶部量が6~15質量%であるプロピレン系重合体(A)5~47質量部、
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が10~500g/10分であるプロピレン単独重合体(B)20~30質量部、
エチレンと炭素原子数が4~8のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、密度が0.850~0.880g/cm
3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~30g/10分、融点ピークが110℃以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体(C)23~30質量部、および
無機充填剤(D)30~40質量部
[但し、成分(A)~(D)の合計量を100質量部とする。]
を含有し、
前記樹脂硬化層(ii)が、
ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤である接着剤(I)を硬化させたものであり、
前記接着剤(I)がカンフェンとフェノールとの付加物を含み、
前記付加物が、下記式(Z1-1)で表される化合物、式(Z1-2)で表される化合物、式(Z2-1)で表される化合物、式(Z2-2)で表される化合物及び式(Z3-1)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする積層構造体。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の積層構造体からなる自動車外装部材。
【請求項3】
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が50~150g/10分、デカン可溶部量が6~15質量%であるプロピレン系重合体(A)5~47質量部、
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が10~500g/10分であるプロピレン単独重合体(B)20~30質量部、
エチレンと炭素原子数が4~8のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、密度が0.850~0.880g/cm
3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~30g/10分、融点ピークが110℃以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体(C)23~30質量部、および
無機充填剤(D)30~40質量部
[但し、成分(A)~(D)の合計量を100質量部とする。]
を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形もしくはプレス成形により成形し、成形体(i)を製造する工程と、
ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤である接着剤(I)を、前記成形体(i)に接触または塗布したのち硬化させて樹脂硬化層(ii)を形成する工程と
を含み、
前記接着剤(I)がカンフェンとフェノールとの付加物を含み、
前記付加物が、下記式(Z1-1)で表される化合物、式(Z1-2)で表される化合物、式(Z2-1)で表される化合物、式(Z2-2)で表される化合物及び式(Z3-1)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする積層構造体の製造方法。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車外装部材などに用いられる積層構造体であって、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体の層を有する積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品の分野においては、自動車の軽量化ニーズに合わせ、外板材の樹脂化が各製造業者で積極的に進められている。その動きの中で、バックドアのアウターに関しても金属から樹脂への切り替えが進んできている。この外板材の樹脂化には、デザイン性の観点から金属並みの寸法精度が求められており、低い線膨張係数を有する材料である必要がある。また、バックドア材については、他部材との貼り合わせが必要であり、高い接着性能も要求される。
【0003】
一方、ポリプロピレン等の樹脂組成物から得られる成形体は、その優れた機械物性や成形性、さらには他材料に比べて相対的に有利なコストパーフォーマンスの点から、自動車部品や家電部品など様々な分野での利用が進んでいる。しかしながらポリプロピレンは、温度に対する寸法変化(線膨張係数)が一般に比較的大きい。このような状況において、ポリプロピレンにタルク等の無機充填剤、エラストマー成分等をブレンドし、寸法安定性の改善を図ったポリプロピレン系樹脂組成物が種々提案されている(特許文献1~8参照)。しかしながら、これらのポリプロピレン系樹脂組成物の成形体を、他部材と貼り合わせた場合の接着性能を向上させる手段については教示されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-077396号公報
【文献】特開平5-051498号公報
【文献】特開2000-095919号公報
【文献】特開2007-91789号公報
【文献】特開2013-159709号公報
【文献】特開2014-58614号公報
【文献】特開2016-84386号公報
【文献】WO2017/082358
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリプロピレン系の成形体の低線膨張化を果すためには、上述のように線膨張係数の低い副資材の配合量を増やす必要があり、更に塗装性能を付与するために、ゴムの配合率も高める必要がある。これらの理由から、樹脂外板向けのポリプロピレンコンパウンド材はフィラーとゴムの配合割合が非常に高いものとなるが、他部材との張り合わせにおいては、接着性試験の際にその副資材とポリプロピレンコンパウンド材との界面における界面剥離が発生しやすく、強度の低下が起こり易い問題を抱えてきた。また、ポリプロピレン自体には極性官能基がない事から、接着剤との強固な化学結合を作るため、フレーム処理やプラズマ処理を行う必要があり、この処理を行うことで、基材表面はダメージを負い接着強度の低下が起こり易い事も問題となっている。この接着強度を担保するため、プライマーを使用することが一般的であるが、プライマーの使用はコスト高や製造工程の増加の要因となってしまう。そのため、高い寸法安定性と高い接着性能の二つの特性を両立し、外板材として必要とされる低線膨張係数を維持した中で、プライマーレスで十分な接着強度を有する複合材料の出現が求められている。
【0006】
本発明は、線膨張係数が低く、かつ、プライマーレスで接着剤層などの樹脂硬化層との接着強度が高い、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体と樹脂硬化層との積層構造体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記のような状況に鑑みて鋭意検討した結果、融点が非常に高いエチレン・α-オレフィン共重合体をエラストマー成分として含有するポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体と、特定の樹脂硬化層との積層構造体が、寸法安定性に優れるとともに、接着性が低下しやすい高温においても、前記特定の成形体と前記特定の硬化性樹脂との間で高い接着強度を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、たとえば以下の事項に関する。
〔1〕ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体(i)に、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む樹脂硬化層(ii)が直接積層された積層構造体であって、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物が、
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が50~150g/10分、デカン可溶部量が6~15質量%であるプロピレン系重合体(A)5~47質量部、
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が10~500g/10分であるプロピレン単独重合体(B)20~30質量部、
エチレンと炭素原子数が4~8のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、密度が0.850~0.880g/cm3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~30g/10分、融点ピークが110℃以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体(C)23~30質量部、および
無機充填剤(D)30~40質量部
[但し、成分(A)~(D)の合計量を100質量部とする。]
を含有することを特徴とする積層構造体。
〔2〕プライマーレス接着試験において、90℃熱間せん断試験強度が1.5MPaを超えることを特徴とする〔1〕に記載の積層構造体。
〔3〕前記プロピレン系重合体(A)が、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体であり、該共重合体のデカン可溶部の極限粘度[η]が2~9dl/gである、〔1〕または〔2〕に記載の積層構造体。
〔4〕前記無機充填材(D)がタルクであり、そのアスペクト比が3以上15未満である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の積層構造体。
〔5〕前記ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む樹脂硬化層が、ポリエーテル骨格のウレタンプレポリマーと脂肪族イソシアネート誘導体とを含むウレタン系接着剤を硬化させたものである、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の積層構造体。
〔6〕前記成形体(i)が、射出成形体またはプレス成形体である、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の積層構造体。
〔7〕自動車外装部材に用いられる〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の積層構造体。
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の積層構造体からなる自動車外装部材。
〔9〕メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が50~150g/10分、デカン可溶部量が6~15質量%であるプロピレン系重合体(A)5~47質量部、
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が10~500g/10分であるプロピレン単独重合体(B)20~30質量部、
エチレンと炭素原子数が4~8のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、密度が0.850~0.880g/cm3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~30g/10分、融点ピークが110℃以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体(C)23~30質量部、および
無機充填剤(D)30~40質量部
[但し、成分(A)~(D)の合計量を100質量部とする。]
を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形もしくはプレス成形により成形し、成形体(i)を製造する工程と、
ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)またはその原料を、前記成形体(i)に接触または塗布したのち硬化させて樹脂硬化層(ii)を形成する工程と
を含むことを特徴とする積層構造体の製造方法。
〔10〕メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、50~150g/10分、デカン可溶部量が6~15質量%であるプロピレン系重合体(A)5~47質量部、
メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が10~500g/10分であるプロピレン単独重合体(B)20~30質量部、
エチレンと炭素原子数が4~8のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、密度が0.850~0.880g/cm3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~30g/10分、融点ピークが110℃以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体(C)23~30質量部、および、
無機充填剤(D)30~40質量部
[但し、成分(A)~(D)の合計量を100質量部とする。]
を含有するポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体に直接積層して用いるための接着剤層を形成するために用いられる硬化性樹脂組成物であって、
前記硬化性樹脂組成物は、ポリエーテル骨格のウレタンプレポリマーと脂肪族イソシアネート誘導体とを含む硬化性樹脂組成物。
〔11〕更に、下記式(X):
【0009】
【化1】
(上記式(X)中、R
37およびR
38はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。)
で表される化合物とフェノール化合物との付加物を含有する、〔10〕に記載の硬化性樹脂組成物。
〔12〕前記硬化性樹脂組成物の脂肪族イソシアネート誘導体が、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含む、〔10〕または〔11〕に記載の硬化性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体と樹脂硬化層とが、プライマーを介さず直接積層されており、線膨張係数が低く寸法安定性に優れるとともに、接着性が低下しやすい高温においても、前記特定の成形体と前記特定の硬化性樹脂との間で、プライマーレスで高い接着強度を有する積層構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、積層構造体の熱間せん断試験強度測定の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
本発明の積層構造体は、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体(i)に、ウレタン結合を有する硬化性樹脂を含む樹脂硬化層(ii)が直接積層された積層構造体であり、具体的には、例えば、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体(i)と、ウレタン系の接着剤等から形成される硬化性樹脂の層(ii)とが、プライマーを介さずに直接積層された積層構造体である。
【0014】
[成形体(i)]
本発明に係る成形体(i)は、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体である。
ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、プロピレン単独重合体(B)、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)、無機充填剤(D)を含有し、必要に応じてさらにその他の成分を含有する。
【0015】
<プロピレン系重合体(A)>
本発明で用いるプロピレン系重合体(A)は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が50~150g/10分、デカン可溶部量が6~15質量%であるプロピレン系重合体である。
【0016】
プロピレン系重合体(A)は、実質的には、6~15質量%のデカン可溶部(a1)と85~94質量%のデカン不溶部(a2)を含む。デカン不溶部(a2)とは、一般にn-デカン溶剤に室温(23℃)で不溶な成分であり、通常はプロピレン系重合体(A)中に占めるプロピレン単独重合体部(プロピレン単独重合体成分)と等価である。デカン可溶部(a1)は、プロピレン単独重合体部以外の部分と等価であり、好ましくはプロピレンとエチレンとの共重合体部(エチレン・プロピレン共重合体成分)である。
【0017】
プロピレン系重合体(A)は、通常は6~15質量%のデカン可溶部(a1)と85~94質量%のデカン不溶部(a2)を含み、好ましくは7~12質量%のデカン可溶部(a1)と88~93質量%のデカン不溶部(a2)を含む[ここで(a1)の含有量と(a2)の含有量の合計は100質量%である]。
【0018】
プロピレン系重合体(A)は、プロピレンとエチレンから得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが好ましい。このプロピレン系ブロック共重合体のデカン可溶部(a1)の極限粘度[η]は、好ましくは2~9dl/g、より好ましくは3~8dl/gである。
【0019】
プロピレン系重合体(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は50~150g/10分であり、好ましくは50~130g/10分、より好ましくは60~120g/10分、特に好ましくは70~110g/10分である。
【0020】
プロピレン系重合体(A)は、公知の方法により製造できる。例えば、以下に説明する固体状チタン触媒成分(I)と有機金属化合物触媒成分(II)とを含むオレフィン重合用触媒を用いてプロピレンを重合し、さらにプロピレンとエチレンを共重合させることにより、プロピレン系ブロック共重合体が得られる。
【0021】
[固体状チタン触媒成分(I)]
オレフィン重合用触媒を構成する固体状チタン触媒成分(I)は、例えば、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び必要に応じて電子供与体を含む。この固体状チタン触媒成分(I)には公知の成分を制限無く用いることができる。
【0022】
固体状チタン触媒成分(I)の調製には、マグネシウム化合物及びチタン化合物が用いられる例が多い。
【0023】
マグネシウム化合物の具体例としては、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、フェノキシ塩化マグネシウム等のアルコキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、2-エチルヘキソキシマグネシウム等のアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム等のアリーロキシマグネシウム;ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウムのカルボン酸塩;等が挙げられる。マグネシウム化合物は一種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。またマグネシウム化合物は、他の金属との錯化合物、複化合物あるいは他の金属化合物との混合物であってもよい。
【0024】
中でも、ハロゲンを含有するマグネシウム化合物が好ましく、ハロゲン化マグネシウム、特に塩化マグネシウムがより好ましい。他に、エトキシマグネシウム等のアルコキシマグネシウムも好ましい。またマグネシウム化合物は、他の物質から誘導されたもの、例えばグリニャール試薬等の有機マグネシウム化合物とハロゲン化チタンやハロゲン化珪素、ハロゲン化アルコール等とを接触させて得られる化合物であってもよい。
【0025】
チタン化合物としては、例えば下記式で示される4価のチタン化合物が挙げられる。
【0026】
Ti(OR)gX4-g
(式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4である。)
チタン化合物の具体例としては、TiCl4、TiBr4等のテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC2H5)Cl3、Ti(O-n-C4H9)Cl3、Ti(OC2H5)Br3、Ti(O-i-C4H9)Br3等のトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)2Cl2、Ti(OC2H5)2Cl2等のジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)3Cl、Ti(O-n-C4H9)3Cl、Ti(OC2H5)3Br等のモノハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH3)4、Ti(OC2H5)4、Ti(OC4H9)4、Ti(O-2-エチルヘキシル)4等のテトラアルコキシチタン;等が挙げられる。チタン化合物は一種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。中でも、テトラハロゲン化チタンが好ましく、四塩化チタンがより好ましい。
【0027】
マグネシウム化合物及びチタン化合物としては、例えば、特開昭57-63310号公報、特開平5-170843号公報等に詳細に記載されている化合物も使用できる。
【0028】
本発明で用いられる固体状チタン触媒成分(I)の好ましい調製方法の具体例としては、以下の(P-1)~(P-4)の方法が挙げられる。
(P-1)マグネシウム化合物及びアルコール等の電子供与体成分(1)からなる固体状付加物と、後述する電子供与体成分(2)と、液状状態のチタン化合物とを、不活性炭化水素溶媒共存下、懸濁状態で接触させる方法。
(P-2)マグネシウム化合物及び電子供与体成分(1)からなる固体状付加物と、電子供与体成分(2)と、液状状態のチタン化合物とを、複数回に分けて接触させる方法。
(P-3)マグネシウム化合物及び電子供与体成分(1)からなる固体状付加物と、電子供与体成分(2)と、液状状態のチタン化合物とを、不活性炭化水素溶媒共存下、懸濁状態で接触させ、且つ複数回に分けて接触させる方法。
(P-4)マグネシウム化合物及び電子供与体成分(1)からなる液状状態のマグネシウム化合物と、液状状態のチタン化合物と、電子供与体成分(2)とを接触させる方法。
【0029】
固体状チタン触媒成分(I)を調製する際の反応温度は、好ましくは-30~150℃、より好ましくは-25~130℃、特に好ましくは-25~120℃である。
【0030】
固体状チタン触媒成分(I)の調製は、必要に応じて公知の媒体の存在下に行うこともできる。媒体の具体例としては、やや極性を有するトルエン等の芳香族炭化水素、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の公知の脂肪族炭化水素または脂環族炭化水素化合物が挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素が好ましい。
【0031】
固体状付加物や液状状態のマグネシウム化合物の形成に用いられる電子供与体成分(1)としては、室温~300℃程度の温度範囲でマグネシウム化合物を可溶化できる公知の化合物が好ましく、例えばアルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸及びこれらの混合物等が好ましい。これらの化合物としては、例えば特開昭57-63310号公報、特開平5-170843号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0032】
マグネシウム化合物を可溶化できるアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、2-メチルペンタノール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール等の脂肪族アルコール;シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等の脂環族アルコール;ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール等の芳香族アルコール;n-ブチルセロソルブ等のアルコキシ基を有する脂肪族アルコール;等が挙げられる。
【0033】
カルボン酸の具体例としては、カプリル酸、2-エチルヘキサノイック酸等の炭素原子数7以上の有機カルボン酸類が挙げられる。アルデヒドの具体例としては、カプリックアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド等の炭素原子数7以上のアルデヒド類が挙げられる。アミンの具体例としては、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、ラウリルアミン、2-エチルヘキシルアミン等の炭素原子数6以上のアミン類が挙げられる。
【0034】
電子供与体成分(1)としては、上記のアルコール類が好ましく、特にエタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、デカノールが好ましい。
【0035】
得られる固体状付加物や液状状態のマグネシウム化合物のマグネシウムと電子供与体成分(1)との組成比は、用いる化合物の種類によって異なるので一概には規定できないが、マグネシウム化合物中のマグネシウム1モルに対して、電子供与体成分(1)は、好ましくは2モル以上、より好ましくは2.3モル以上、特に好ましくは2.7モル以上、5モル以下である。
【0036】
固体状チタン触媒成分(I)に必要に応じて用いられる電子供与体の特に好ましい例としては、芳香族カルボン酸エステル及び/又は複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物(以下「電子供与体成分(2)」という。)が挙げられる。
【0037】
この電子供与体成分(2)としては、従来オレフィン重合用触媒に好ましく用いられている公知の芳香族カルボン酸エステルやポリエーテル化合物、例えば特開平5-170843号公報や特開2001-354714号公報等に記載された化合物を制限無く用いることができる。
【0038】
芳香族カルボン酸エステルとしては、具体的には安息香酸エステルやトルイル酸エステル等の芳香族カルボン酸モノエステルの他、フタル酸エステル類等の芳香族多価カルボン酸エステルが挙げられる。中でも、芳香族多価カルボン酸エステルが好ましく、フタル酸エステル類がより好ましい。このフタル酸エステル類としては、フタル酸エチル、フタル酸n-ブチル、フタル酸イソブチル、フタル酸ヘキシル、フタル酸へプチル等のフタル酸アルキルエステルが好ましく、フタル酸ジイソブチルが特に好ましい。
【0039】
ポリエーテル化合物としては、具体的には下記化学構造式(1)で表わされる化合物が挙げられる。
【0040】
【化2】
上記式(1)中、mは1≦m≦10の整数、より好ましくは3≦m≦10の整数であり、R
11~R
36は、それぞれ独立に、水素原子、あるいは炭素、水素、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、硫黄、リン、ホウ素及びケイ素から選択される少なくとも1種の元素を有する置換基である。mが2以上である場合、複数個存在するR
11及びR
12は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。任意のR
11~R
36、好ましくはR
11及びR
12は共同してベンゼン環以外の環を形成していてもよい。
【0041】
この様な化合物の具体例としては、2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-クミル-1,3-ジメトキシプロパン等の1置換ジアルコキシプロパン類;2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソプロピル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジエトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジブトキシプロパン、2,2-ジ-s-ブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジネオペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-シクロヘキシルメチル-1,3-ジメトキシプロパン等の2置換ジアルコキシプロパン類;2,3-ジシクロヘキシル-1,4-ジエトキシブタン、2,3-ジシクロヘキシル-1,4-ジエトキシブタン、2,3-ジイソプロピル-1,4-ジエトキシブタン、2,4-ジフェニル-1,5-ジメトキシペンタン、2,5-ジフェニル-1,5-ジメトキシヘキサン、2,4-ジイソプロピル-1,5-ジメトキシペンタン、2,4-ジイソブチル-1,5-ジメトキシペンタン、2,4-ジイソアミル-1,5-ジメトキシペンタン等のジアルコキシアルカン類;2-メチル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-エトキシメチル-1,3-ジエトキシプロパン、2-シクロヘキシル-2-メトキシメチル-1,3-ジメトキシプロパン等のトリアルコキシアルカン類;等が挙げられる。ポリエーテル化合物は一種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。中でも、1,3-ジエーテル類が好ましく、特に、2-イソプロピル-2-イソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジイソブチル-1,3-ジメトキシプロパン、2-イソプロピル-2-イソペンチル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ジシクロヘキシル-1,3-ジメトキシプロパン、2,2-ビス(シクロヘキシルメチル)1,3-ジメトキシプロパンが好ましい。
【0042】
固体状チタン触媒成分(I)において、ハロゲン/チタン(原子比)(すなわち、ハロゲン原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2~100、好ましくは4~90であり、電子供与体成分(1)/チタン原子(モル比)は0~100、好ましくは0~10であり、電子供与体成分(2)/チタン原子(モル比)は0~100、好ましくは0~10である。マグネシウム/チタン(原子比)(すなわち、マグネシウム原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2~100、好ましくは4~50である。
【0043】
固体状チタン触媒成分(I)のより詳細な調製条件として、電子供与体成分(2)を使用する以外は、例えば、EP585869A1や特開平5-170843号公報等に記載の条件を好適に用いることができる。
[有機金属化合物触媒成分(II)]
有機金属化合物触媒成分(II)は、周期表の第1族、第2族及び第13族から選ばれる金属元素を含む成分である。例えば、第13族金属を含む化合物(有機アルミニウム化合物等)、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族金属の有機金属化合物等を用いることができる。中でも、有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0044】
有機金属化合物触媒成分(II)としては具体的には、前記EP585869A1等の公知の文献に記載された有機金属化合物触媒成分を好適に用いることができる。
【0045】
本発明の目的を損なわない限り、以上説明した電子供与体成分(1)や電子供与体成分(2)の他、公知の電子供与体成分(3)を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
電子供与体成分(3)としては、有機ケイ素化合物が好ましい。この有機ケイ素化合物は、例えば下記式で表される化合物である。
【0047】
RnSi(OR')4-n
(式中、R及びR'は炭化水素基であり、nは0<n<4の整数である。)
上記式で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、ジイソプロピルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2-メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、トリシクロペンチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシラン等が用いられる。中でも、ビニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが好ましい。
【0048】
また、国際公開第2004/016662号パンフレットに記載されている下記式で表されるシラン化合物も有機ケイ素化合物の好ましい例である。
【0049】
Si(ORa)3(NRbRc)
上記式中、Raは、炭素原子数1~6の炭化水素基である。例えば炭素原子数1~6の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基であり、特に炭素原子数2~6の炭化水素基が好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。中でも、エチル基が特に好ましい。
【0050】
Rbは、炭素原子数1~12の炭化水素基又は水素である。例えば炭素原子数1~12の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基又は水素である。具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。中でも、エチル基が特に好ましい。
【0051】
Rcは、炭素原子数1~12の炭化水素基である。例えば炭素原子数1~12の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基である。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。中でも、エチル基が特に好ましい。
【0052】
上記式で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、ジメチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリn-プロポキシシラン、ジn-プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルn-プロピルアミノトリエトキシシラン、t-ブチルアミノトリエトキシシラン、エチルn-プロピルアミノトリエトキシシラン、エチルiso-プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルエチルアミノトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
さらに、有機ケイ素化合物の他の例として、下記式で表される化合物も挙げられる。
【0054】
RNSi(ORa)3
上記式中、RNは、環状アミノ基である。具体例としては、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基、1,2,3,4-テトラヒドロキノリノ基、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリノ基、オクタメチレンイミノ基等が挙げられる。Raは前記と同じである。
【0055】
上記式で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、(パーヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4-テトラヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、オクタメチレンイミノトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0056】
以上説明した各有機ケイ素化合物は、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0057】
[重合]
プロピレン系重合体(A)の好ましい態様であるプロピレン・エチレンブロック共重合体は、上述したオレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンを重合し、次いでプロピレンとエチレンを共重合させるか、又は予備重合させて得られる予備重合触媒の存在下にプロピレンを重合し、次いでプロピレンとエチレンの共重合を行う等の方法で製造できる。
【0058】
予備重合は、オレフィン重合用触媒1g当り通常0.1~1000g、好ましくは0.3~500g、特に好ましくは1~200gの量でオレフィンを予備重合させることにより行われる。予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりも高い濃度の触媒を用いることができる。
【0059】
予備重合における固体状チタン触媒成分(I)の濃度は、液状媒体1リットル当り、チタン原子換算で、通常0.001~200ミリモル、好ましくは0.01~50ミリモル、より好ましくは0.1~20ミリモルである。
【0060】
予備重合における有機金属化合物触媒成分(II)の量は、固体状チタン触媒成分(I)1g当り通常0.1~1000g、好ましくは0.3~500gの重合体が生成されるような量であればよく、固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、通常0.1~300モル、好ましくは0.5~100モル、より好ましくは1~50モルである。
【0061】
予備重合では、必要に応じて前記電子供与体成分を用いることもでき、この際これらの成分は、固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、通常0.1~50モル、好ましくは0.5~30モル、より好ましくは1~10モルである。
【0062】
予備重合は、不活性炭化水素媒体にオレフィン及び上記の触媒成分を加え、温和な条件下に行うことができる。不活性炭化水素媒体を用いる場合は、予備重合はバッチ式で行うことが好ましい。
【0063】
不活性炭化水素媒体の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;あるいはこれらの混合物等が挙られる。中でも、脂肪族炭化水素が好ましい。
【0064】
オレフィン自体を溶媒として予備重合を行うこともできる。また、実質的に溶媒の無い状態で予備重合することもできる。この場合は、予備重合を連続的に行うことが好ましい。
【0065】
予備重合で使用されるオレフィンは、後述する本重合で使用されるオレフィンと同一であっても異なっていてもよい。オレフィンとしては、特にプロピレンが好ましい。
【0066】
予備重合の際の温度は、通常-20~100℃であり、好ましくは-20~80℃、より好ましくは0~40℃である。
【0067】
次に、予備重合を経由した後に、あるいは予備重合を経由することなく実施される本重合について説明する。
【0068】
本重合は、プロピレン単独重合体成分を製造する工程及びプロピレン-エチレン共重合体成分を製造する工程に分けられる。
【0069】
本重合(及び予備重合)は、バルク重合法、溶解重合、懸濁重合等の液相重合法あるいは気相重合法のいずれにおいても実施できる。プロピレン単独重合体成分を製造する工程としては、バルク重合や懸濁重合等の液相重合法あるいは気相重合法が好ましい。プロピレン-エチレン共重合体成分を製造する工程としては、バルク重合や懸濁重合等の液相重合法あるいは気相重合法が好ましく、気相重合法がより好ましい。
【0070】
本重合がスラリー重合の反応形態を採る場合、反応溶媒としては、上述の予備重合時に用いられる不活性炭化水素を用いることもできるし、反応温度・圧力において液体であるオレフィンを用いることもできる。
【0071】
本重合において、固体状チタン触媒成分(I)は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は0.0001~0.5ミリモル、好ましくは0.005~0.1ミリモルの量で用いられる。また、有機金属化合物触媒成分(II)は、重合系中の予備重合触媒成分中のチタン原子1モルに対し、通常1~2000モル、好ましくは5~500モルの量で用いられる。電子供与体成分が使用される場合は、有機金属化合物触媒成分(II)1モルに対して、通常0.001~50モル、好ましくは0.01~30モル、より好ましくは0.05~20モルの量で用いられる。
【0072】
本重合を水素の存在下に行えば、得られる重合体の分子量を調節する(下げる)ことができ、メルトフローレート(MFR)の大きい重合体が得られる。分子量を調整するために必要な水素量は、使用する製造プロセスの種類、重合温度、圧力によって異なるため、適宜調整すればよい。
【0073】
プロピレン単独重合体成分を製造する工程では、重合温度、水素量を調整してMFRを調整できる。また、プロピレン-エチレン共重合体成分を製造する工程においても、重合温度、圧力、水素量を調整して、極限粘度を調整することができる。
【0074】
本重合において、オレフィンの重合温度は、通常0~200℃、好ましくは30~100℃、より好ましくは50~90℃である。圧力(ゲージ圧)は、通常常圧~100kgf/cm2(9.8MPa)、好ましくは2~50kgf/cm2(0.20~4.9MPa)である。
【0075】
プロピレン系重合体(A)の好ましい態様であるプロピレン・エチレンブロック共重合体の製造においては、重合を、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。さらに反応器の形状は、管状型、槽型のいずれも使用できる。さらに重合を、反応条件を変えて二段以上に分けて行うこともできる。この場合、管状型と槽型を組合せることができる。
【0076】
プロピレン系重合体(A)の好ましい態様であるプロピレン・エチレンブロック共重合体中のプロピレン・エチレン共重合体部を得るためには、後述する重合工程2においてエチレン/(エチレン+プロピレン)ガス比を制御する。エチレン/(エチレン+プロピレン)ガス比は、通常5~80モル%、好ましくは10~70モル%、より好ましくは15~60モル%である。
【0077】
先に述べたように、プロピレン・エチレンブロック共重合体のデカン不溶部(a2)は、主としてプロピレン単独重合体成分から構成される。一方、デカン可溶部(a1)は、主としてゴム状成分であるエチレン・プロピレン共重合体成分から構成される。例えば、以下の二つの重合工程1及び2を連続的に実施することによって、プロピレン系重合体(A)の好ましい態様であるプロピレン・エチレンブロック共重合体が得られる。
(重合工程1)
固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレンを重合し、プロピレン単独重合体成分を製造する工程(プロピレン単独重合体製造工程)。
(重合工程2)
固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレン及びエチレンを共重合してエチレン・プロピレン共重合体成分を製造する工程(共重合体ゴム製造工程)。
【0078】
特に、重合工程1を前段で行い、重合工程2を後段で行うことがより好ましい。各重合工程1および2は二槽以上の重合槽を用いて行うこともできる。デカン可溶部(a1)の含有量は、重合工程1と重合工程2の重合時間(滞留時間)により調整できる。また、前段の重合工程1は、二段以上の直列した重合器で行ってもよい。その場合、各段のプロピレンと水素との比が重合器ごとに異なっていてもよい。
【0079】
本発明に用いるプロピレン系重合体(A)は、1種以上のバイオマス由来モノマーを含んでいてもよい。重合体を構成する同じ種類のモノマーがバイオマス由来モノマーのみでもよいし、バイオマス由来モノマーと化石燃料由来モノマーの両方を含んでもよい。バイオマス由来モノマーとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来モノマーは、従来から知られている方法により得られる。本発明に用いるプロピレン系重合体(A)がバイオマス由来モノマーを含むことは環境負荷低減の観点から好ましい。重合用触媒、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、原料オレフィンがバイオマス由来オレフィンを含んでいても、14C同位体を10-12程度の割合で含む以外の分子構造は化石燃料由来モノマーからなるプロピレン系重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0080】
また、本発明に係るプロピレン系重合体(A)は、ケミカルリサイクル由来プロピレンを含んでいてもよい。重合体を構成するプロピレンがケミカルリサイクル由来プロピレンのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンおよび/またはバイオマス由来プロピレンを含んでもよい。ケミカルリサイクル由来プロピレンは、従来から知られている方法により得られる。本発明に係るプロピレン系重合体(A)がケミカルリサイクル由来プロピレンを含むことは環境負荷低減(主に廃棄物削減)の観点から好ましい。原料モノマーがケミカルリサイクル由来モノマーを含んでいても、ケミカルリサイクル由来モノマーは廃プラスチックなどの重合体を解重合、熱分解等でプロピレンなどのモノマー単位にまで戻したモノマー、ならびに該モノマーを原料にして製造したモノマーであるので、重合用触媒、重合プロセス、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、分子構造は化石燃料由来モノマーからなるプロピレン単独重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0081】
<プロピレン単独重合体(B)>
本発明に用いるプロピレン単独重合体(B)は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が10~500g/10分であるプロピレン単独重合体である。
【0082】
プロピレン単独重合体(B)は、実質的にプロピレンのみを重合したポリマーであればよい。例えば、プロピレンのみを重合したホモポリマー、あるいはプロピレンと6モル%以下、好ましくは3モル%以下の他のα-オレフィンとを共重合した結晶性のポリマーを使用できる。中でも、プロピレンのみを重合したホモポリマーが好ましい。
【0083】
プロピレン単独重合体(B)は、公知の方法によりプロピレンを主とするモノマーを重合することにより製造できる。例えば、先に説明した固体状チタン触媒成分(I)と有機金属化合物触媒成分(II)とを含むオレフィン重合用触媒、あるいは通常チーグラーナッタ型触媒と呼称される三塩化チタンおよびアルキルアルミニウム化合物との組合せ触媒の存在下に、プロピレンを主とするモノマーを重合することにより得られる。重合反応は連続式で行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。また例えば、先に説明した重合工程1のみを行うことにより好適に製造できる。
【0084】
重合反応において、重合温度は、通常0~200℃、好ましくは30~100℃、より好ましくは50~90℃である。圧力(ゲージ圧)は、通常常圧~100kgf/cm2(9.8MPa)、好ましくは2~50kgf/cm2(0.20~4.9MPa)である。
【0085】
プロピレン単独重合体(B)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は10~500g/10分であり、好ましくは10~300g/10分、より好ましくは20~250g/10分である。
【0086】
プロピレン単独重合体(B)は、1種の重合体であってもよく、全体として上記のメルトフローレートを満たす範囲内において2種以上のプロピレン単独重合体を任意に組み合わせてもよい。
【0087】
本発明に用いるプロピレン単独重合体(B)は、バイオマス由来プロピレンを含んでいてもよい。重合体を構成するプロピレンがバイオマス由来プロピレンのみでもよいし、バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの両方を含んでもよい。バイオマス由来プロピレンとは、菌類、酵母、藻類および細菌類を含む、植物由来または動物由来などの、あらゆる再生可能な天然原料およびその残渣を原料としてなるモノマーで、炭素として14C同位体を10-12程度の割合で含有し、ASTM D 6866に準拠して測定したバイオマス炭素濃度(pMC)が100(pMC)程度である。バイオマス由来プロピレンは、従来から知られている方法により得られる。本発明に用いるプロピレン単独重合体(B)がバイオマス由来モノマーを含むことは環境負荷低減の観点から好ましい。重合用触媒、重合温度などの重合体製造条件が同等であれば、原料プロピレンがバイオマス由来プロピレンを含んでいても、14C同位体を10-12程度の割合で含む以外の分子構造は化石燃料由来プロピレンからなるプロピレン単独重合体と同等である。従って、性能も変わらないとされる。
【0088】
また本発明に用いるプロピレン単独重合体(B)は、上述したプロピレン系重合体(A)と同様、モノマーとしてケミカルリサイクル由来のプロピレンを含んでいてもよい。すなわち、重合体を構成するプロピレンがケミカルリサイクル由来プロピレンのみでもよいし、ケミカルリサイクル由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンおよび/またはバイオマス由来プロピレンを含んでもよい。
【0089】
<エチレン・α-オレフィン共重合体(C)>
本発明に用いるエチレン・α-オレフィン共重合体(C)は、エチレンと炭素原子数が4~8のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、密度が0.850~0.880g/cm3、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5~30g/10分、融点ピークが110℃以上であるエチレン・α-オレフィン共重合体である。このエチレン・α-オレフィン共重合体(C)は、他成分との相乗効果によって、成形体(i)およびそれを有する積層構造体の寸法安定性の向上(線膨張係数の低減)に寄与することが予想されると共に、その他の物性の向上にも寄与し成形品に高度な物性バランスが発現する。
【0090】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)を構成する炭素原子数4~8のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-へキセン、1-オクテンが好ましい。α-オレフィンは一種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。エチレン・α-オレフィン共重合体(C)としては、特にエチレン-オクテン共重合体、エチレン-ブテン共重合体が好ましい。
【0091】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、0.5~30g/10分であり、好ましくは1~25g/10分、より好ましくは2~20g/10分である。
【0092】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.5g/10分以上であれば、ポリプロピレン系樹脂組成物の流動性の低下や混練時の分散不良が起こり難く、耐衝撃性等の物性の低下や成形品表面外観の悪化が生じ難くなる傾向にある。また、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が30g/10分以下であれば、成形体(i)およびそれを有する積層構造体が十分な耐衝撃性を有する傾向にある。
【0093】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の密度は、0.850~0.880g/cm3であり、好ましくは0.855~0.875g/cm3である。
【0094】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の融点ピークは、110℃以上、好ましくは110~130℃である。融点ピークは、示差走査型熱量計(DSC)により求められる値を意味する。具体的には、示差走査型熱量計(DSC)の吸熱曲線を求めた際の、最大ピーク位置の温度を融点ピーク(Tm)として求めることができる。エチレン・α-オレフィン共重合体(C)の融点ピークが上記の高温な範囲を満たすことにより、これを含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体(i)と樹脂硬化層(ii)とが積層された本発明の積層構造体が、優れた接着強度を有するものとなる。
【0095】
<無機充填剤(D)>
本発明に用いる無機充填剤(D)としては、公知の無機充填剤を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、タルク、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、ワラストナイト、モンモリオナイト等が挙げられる。無機充填剤(D)は一種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。中でも、タルクが好ましい。このような無機充填剤(D)を用いることにより、成形体(i)およびそれを有する積層構造体の機械物性が向上する。
【0096】
無機充填剤(D)は、樹脂組成物中に分散されるものであればよく、特に限定されるものではないが、その平均粒子径は、例えば1μm~20μm、好ましくは3.0μmを超え、10.0μm以下であり、好ましくは3.0μm~8.0μm、より好ましくは3.0μm~7.0μmである。この平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。具体的には、レーザー回折散乱方式粒度分布計等の粒度分布計によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径であり、測定装置としては、例えばMicrotrac社製MT3300EXII、堀場製作所製LA-920型等が挙げられる。
【0097】
無機充填剤(D)のアスペクト比は特に制限されないが、通常3以上15未満、好ましくは4~13、より好ましくは5~11である。一般にアスペクト比とは、充填剤の長径と厚みの比率、または長辺と短辺の比率を表す値である。このアスペクト比が3以上であれば、成形体の剛性および寸法安定性が低下し難い傾向にある。また15未満であれば、機械物性のバランスが低下し難く、さらに耐衝撃強度も低下し難い傾向にある。具体的には、このアスペクト比は、電子顕微鏡を用いて写真撮影を行い、粉体の長径と厚みを測定し、平均値を求め、平均粒子径/平均厚みの比から求めた値である。
【0098】
無機充填剤(D)は、成形体(i)およびそれを有する積層構造体の寸法安定性の向上(線膨張係数の低減)に寄与すると共に、剛性および耐衝撃強度などの機械的物性の向上に寄与する。無機充填剤(D)が上述した平均粒子径(及びアスペクト比)を有する場合には、他成分との相乗効果によって、特に優れた寸法安定性を有しかつ剛性および耐衝撃強度に優れた高度な物性バランスが発現しやすいため好適である。
【0099】
無機充填剤(D)としては、粒状、板状、棒状、繊維状、ウィスカー状など、いずれの形状の無機充填剤も使用することができる。また、ポリマー用フィラーとして市販されている無機充填剤も使用できる。さらに、一般的な粉末状やロービング状の他に、取り扱いの利便性等を高めたチョップドストランド状、圧縮魂状、ペレット(造粒)状、顆粒状等の形態のものも使用できる。中でも、粉末状、圧縮魂状、顆粒状が好ましい。
【0100】
無機充填剤(D)は、二種以上の形状の無機充填剤の混合物であってもよい。
【0101】
無機充填剤(D)の製造方法は特に限定されず、公知の各種方法により製造できる。無機充填剤(D)として例えばタルクを用いる場合、特定の平均粒子径及びアスペクト比を有するタルクは、粉砕または造粒により製造できる。具体的には、例えばタルクの原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕する方法、その後さらにジェットミルで粉砕し、サイクロンやミクロンセパレータ等で分級調整する方法等がある。タルクのアスペクト比及び平均粒子径は、粉砕装置および粉砕時間により適宜調整でき、必要に応じて分級することにより形状が制御されたタルクが得られる。
【0102】
無機充填剤(D)としては、原石を粉砕して得たものを直接用いてもよく、また、少なくとも一部を表面処理したものを用いてもよい。表面処理には、例えば、有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、又はその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等の各種表面処理剤を使用できる。表面処理剤は一種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0103】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、核剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、充填剤、着色剤、滑剤、顔料などの他の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。添加剤の混合順序は任意であり、同時に混合してもよいし、一部成分を混合した後に他の成分を混合するというような多段階の混合方法を用いることもできる。
【0104】
<ポリプロピレン系樹脂組成物>
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)5~47質量部、プロピレン単独重合体(B)20~30質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)23~30質量部、および、無機充填剤(D)30~40質量部[但し、成分(A)~(D)の合計量を100質量部とする。]を含有する。
【0105】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、好ましくは、プロピレン系重合体(A)7~35質量部、プロピレン単独重合体(B)20~30質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)23~28質量部、および、無機充填剤(D)32~40質量部[但し、成分(A)~(D)の合計量を100質量部とする。]を含有する。
【0106】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、より好ましくは、プロピレン系重合体(A)8~28質量部、プロピレン単独重合体(B)23~30質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)24~28質量部、および、無機充填剤(D)33~38質量部[但し、成分(A)~(D)の合計量を100質量部とする。]を含有する。
【0107】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、特に好ましくは、プロピレン系重合体(A)10~22質量部、プロピレン単独重合体(B)25~30質量部、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)24~27質量部、および、無機充填剤(D)34~37質量部[但し、成分(A)~(D)の合計量を100質量部とする。]を含有する。
【0108】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、上述した各成分(A)~(D)、および必要に応じて添加剤などの任意成分を配合することにより製造できる。各成分は、任意の順番で逐次配合しても良いし、同時に混合しても良い。また、一部の成分を混合した後に他の成分を混合するような多段階の混合方法を採用してもよい。具体的には、例えば、ポリプロピレン系樹脂組成物中の樹脂成分(有機化合物成分)である成分(A)~(C)を最初に配合した後、次いで成分(D)および必要に応じて添加剤などの任意成分を添加して配合することによっても製造できる。
【0109】
各成分の配合方法としては、例えば、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置を用いて、各成分を同時にあるいは逐次に混合または溶融混練する方法が挙げられる。
【0110】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)は、通常23g/10分以上、好ましくは23g/10分超え、50g/10分以下である。メルトフローレートをこのような範囲に設定することによって、成形性が良好なものとなり、射出成型後の塗装外観の悪化を抑制できる。
【0111】
<成形体(i)>
本発明に係る成形体(i)は、上述した本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体である。成形体(i)は、本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物を適宜成形することにより得ることができる。ポリプロピレン系樹脂組成物の成形法は特に限定されず、樹脂組成物の成形法として公知の様々な方法を用いることができる。成形体(i)の成形法としては、特に射出成型、プレス成型が好ましい。本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体(i)は、温度変化による寸法変化が小さく寸法安定性に優れており、それを有する積層構造体についても温度変化による寸法変化が小さく寸法安定性に優れたものとなる。
【0112】
[樹脂硬化層(ii)]
本発明に係る樹脂硬化層(ii)は、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む樹脂硬化物の層である。
【0113】
本発明で用いられる硬化性樹脂(E)は、ウレタン結合を有する硬化性樹脂である。このような硬化性樹脂(E)としては、ウレタン結合を有する公知の硬化性樹脂が制限なく使用でき、具体的にはポリウレタン樹脂などが挙げられる。ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)にはウレタン結合の他に尿素結合、ビュレット結合などが含まれていてもよい。ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む樹脂硬化層(ii)の製造には、必要に応じて硬化剤が用いられてもよい。
【0114】
ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)として用いるポリウレタン樹脂としては、公知のポリウレタン樹脂が使用できる。例えば、多官能イソシアナートもしくはその誘導体と、ポリオールもしくはその誘導体および/またはポリエステルもしくはその誘導体とを反応させて得られる重合体が使用できる。
【0115】
ポリウレタン樹脂の原料となる多官能イソシアナートもしくはその誘導体としては、トリレンジイソシアナート(TDI)、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、イソホロンジイソシアナートおよびノルボルナンジイソシアナート等の多官能イソシアナート、ならびにこれらのブロック誘導体またはイソシアヌレート誘導体等の誘導体などがあげられる。これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0116】
ポリウレタン樹脂の原料となるポリオールもしくはその誘導体としては、例えば分子量が500~100000のポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールブロック共重合体、末端がアミン化されたポリプロピレングリコール等をあげることができる。これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0117】
ポリウレタン樹脂の原料となるポリエステルもしくはその誘導体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリブチレンイソフタレート、ならびにこれらのポリエステルとポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール等との反応物などがあげられる。これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0118】
多官能性イソシアナートとポリオールおよび/またはポリエステルとからポリウレタン樹脂を得るには、例えば両者を等モル~多官能イソシアナートが過剰になるように混合して撹拌することにより得ることができる。この際重合促進剤、例えばアミン化合物等を配合してもよい。
【0119】
本発明に係る樹脂硬化層(ii)は、上述したポリウレタン樹脂の原料を含む接着剤や塗料等の組成物を、成形体(i)上に塗布し、硬化させて製造してもよく、成形体(i)と貼り合わせる他部材上に塗布し、硬化させて製造してもよい。また、成形体(i)と、樹脂硬化層(ii)と、他部材とからなる積層体は、上述したポリウレタン樹脂の原料を含む組成物を、成形体(i)上に塗布し、それと貼り合わせる他部材を前記組成物が硬化する前に貼り合わせて硬化させて製造したり、前記成形体(i)以外の部材上に塗布し、それと前記成形体(i)を、前記組成物が硬化する前に貼り合わせて硬化させて製造したりすることができる。
【0120】
本発明に係る樹脂硬化層(ii)は、例えば、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む第1剤と硬化剤を含む第2剤とを混合した組成物からなる層を形成し、硬化することにより得てもよく、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む湿気硬化性の組成物からなる層を形成し、硬化することにより得てもよく、熱硬化性樹脂であるウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む層を形成し、加熱硬化することにより得てもよい。
【0121】
また本発明に係る樹脂硬化層(ii)は、ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤を硬化させたものであることが好ましい。接着剤としては、例えば、常温2液硬化型接着剤、1液湿気硬化型接着剤、熱硬化型接着剤などを挙げることができる。このような接着剤を硬化させて得られる樹脂硬化層は、ウレタン結合を有する硬化性樹脂を含むものとなる。
【0122】
ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤としては、公知の接着剤が使用できるが、2液硬化型または1液湿気硬化型の接着剤や水性または水性エマルション型の接着剤が好ましく、具体的にはウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン・アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系等のポリウレタン樹脂を含む、2液硬化型または1液湿気硬化型の接着剤や水性または水性エマルション型の接着剤、あるいは塗布後にウレタン結合を形成するウレタン樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン・アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系等の接着剤などが挙げられる。
【0123】
接着剤には主剤(イソシアナート化合物を含む組成物)と硬化剤(ポリオールのような活性水素含有化合物を含む組成物)を併用することができる。このような主剤としては、イソシアナート系、ポリイソシアナート系等が挙げられ、硬化剤としてはポリオール系、ポリアミン系等が挙げられる。硬化剤は、潜在化処理を施されて接着剤に配合されている場合もあるが、通常は塗布直前に接着剤と特定の比率で混合して用いる。主剤としては、イソシアナート系およびポリイソシアナート系が好ましい。接着剤としては市販されているポリウレタン系の接着剤を使用することもできる。
【0124】
このような接着剤のうちでも、ウレタンプレポリマーとイソシアネート誘導体を含む接着剤が好ましく、ポリエーテル骨格のウレタンプレポリマーと脂肪族イソシアネート誘導体とを含むウレタン系接着剤がより好ましい。すなわち、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む樹脂硬化層が、ポリエーテル骨格のウレタンプレポリマーと、脂肪族イソシアネート誘導体とを含むウレタン系接着剤を硬化させたものであることが好ましい。
【0125】
・ウレタンプレポリマー
ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応する活性水素を1分子中に2個以上有する活性水素化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0126】
ウレタンプレポリマーの調製に用いられるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添m-キシリレンジイソシアネート、水添p-キシリレンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類;p-フェニレンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、3,3'-ジメチルジフェニル-4,4'-ジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類;上記各ポリイソシアネートをカルボジイミド変性又はイソシアヌレート変性したもの等が挙げられ、これらは単独で又は二種以上混合して用いることができる。これらの中では、接着性により優れ、硬化性に優れるという観点から、芳香族イソシアネートを使用するのがより好ましい。
【0127】
ウレタンプレポリマーの調製に用いられる活性水素化合物としては、アルコール性水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールあるいはその他のポリオール等を1種又は2種以上組み合わせて用いることができるが、ポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。活性水素化合物としてポリエーテルポリオールを用いて得られたウレタンプレポリマーは、ポリエーテル骨格を有するものとなり、得られた接着剤が成形体(i)との接着性能に優れたものとなる。これらのポリオール化合物としては、数平均分子量が100~50,000、特に300~10,000のものが好ましい。
【0128】
ウレタンプレポリマーの調製に好適に使用可能な活性水素化合物であるポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシヘキサメチレングリコールなどの他に、活性水素を二個以上有する低分子量活性水素化合物、例えばビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等のトリオール類;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等のアミン類等の一種又は二種以上の存在下でプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを開環重合させて得られるランダム共重合体を挙げることができる。
【0129】
ウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物中に含まれるヒドロキシル基1モルに対して、ポリイソシアネート化合物中に含まれるイソシアネート基が1モルを越える割合で、すなわち、化学当量比(NCO/OH)が1を越える配合として、ポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物とを、必要に応じて加熱して、反応させることで得ることができる。このようなウレタンプレポリマーは、通常、その分子両末端にイソシアネート基を有する。ウレタンプレポリマーとして、ポリオール化合物中に含まれるヒドロキシル基とポリイソシアネート化合物中に含まれるイソシアネート基の化学当量比(NCO/OH)を1.5~20の割合でポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、23℃において液状を呈するものが、作業性、硬化物の物性等といった点からより好ましい。また、ウレタンプレポリマーとしては、接着性により優れ、硬化性に優れるという観点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーが好ましい。
【0130】
・イソシアネート誘導体
イソシアネート誘導体としては、主剤として作用するイソシアネート誘導体を特に制限なく用いることができる。例えば、イソシアネート類、ジイソシアネート類、ポリイソシアネート類及びそれらの誘導体を用いることができ、具体的には、上述した多官能イソシアナートもしくはその誘導体等を用いることができる。
【0131】
上記イソシアネート誘導体としては、イソシアヌレート構造とイソシアネート基とを有する化合物であることが好ましい。イソシアネート誘導体として、イソシアヌレート構造とイソシアネート基とを有する化合物、特に脂肪族イソシアネート誘導体である、イソシアヌレート構造とイソシアネート基とを有する化合物を用いた場合には、成形体(i)との接着強度が高いものとなるため好ましい。
【0132】
イソシアヌレート構造は、下記式(B1)で表される構造である。上記脂肪族イソシアネート誘導体は、1分子当たり、上記イソシアヌレート構造を少なくとも1個有することができ、上記イソシアヌレート構造を1個有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0133】
【化3】
上記イソシアネート誘導体は1分子当たり、イソシアネート基を少なくとも1個有することができ、イソシアネート基を複数有することが好ましく、イソシアネート基を3個以上有することがより好ましい。
【0134】
上記イソシアネート誘導体において、上記イソシアヌレート構造と上記イソシアネート基とは直接又は連結基を介して結合することができ、連結基を介して結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0135】
上記イソシアネート誘導体において、上記イソシアヌレート構造と上記イソシアネート基とは直接又は連結基を介して結合することができ、連結基を介して結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0136】
上記連結基としては、例えば、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基が挙げられる。上記炭化水素基は、炭素原子及び水素原子のみで構成されていることが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記炭化水素基は特に制限されないが、具体的には例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0137】
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状、これらの組み合わせのいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては例えば、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、直鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、炭素数が1~20であることが好ましく、3~10がより好ましく、4~5が更に好ましい。上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基であることが好ましく、ブチレン基、ペンチレン基がより好ましく、ペンチレン基が更に好ましい。
【0138】
炭化水素基が有してもよいヘテロ原子としては特に制限されないが、具体例としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。上記ヘテロ原子は別のヘテロ原子、炭素原子又は水素原子と結合して官能基を形成してもよい。
【0139】
上記イソシアネート誘導体は、本発明の効果により優れるという観点から、下記式(B2)で表される化合物が好ましい。
【0140】
【化4】
式(B2)中、R
141、R
142、R
143は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基を表す。R
141等としてのヘテロ原子を有してもよい炭化水素基は上記と同様である。
【0141】
上記イソシアネート誘導体は、本発明の効果により優れるという観点から、後述する脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体を含むことが好ましく、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(下記式(B2-1)で表される化合物)及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(下記式(B2-2)で表される化合物)を含むことがより好ましく、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含むことが更に好ましい。
【0142】
【化5】
上記イソシアネート誘導体は、例えばポリイソシアネート化合物によって構成され得る。上記ポリイソシアネート化合物は、上記連結基にイソシアネート基が複数結合した化合物であれば特に制限されない。なかでも、脂肪族ポリイソシアネート(上記脂肪族炭化水素基にイソシアネート基が複数結合した化合物)が好ましい。
【0143】
上記イソシアネート誘導体としては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のような脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。上記イソシアネート化合物(B)を構成しうるポリイソシアネート化合物は、1種又は2種以上の組合わせであってもよい。
【0144】
上記イソシアネート誘導体は、本発明の効果(初期接着性及び接着耐久性)により優れ、粘度が低いため組成物中に添加しやすいという理由から、上記式(B2-1)で表される化合物が好ましい。
【0145】
上記イソシアネート誘導体の含有量は、本発明の効果(特に接着耐久性)により優れるという観点から、本発明の組成物全量に対して、0.10~10.0質量%であることが好ましく、0.50~5.0質量%であることがより好ましい。
【0146】
・付加物
ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤は、下記式(X)で表される化合物(式(X)中、R37およびR38は、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。)とフェノール化合物との付加物を含有することができる。この付加物は、ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤中において、接着付与剤として機能できる。
【0147】
【化6】
式(X)中、R
37およびR
38は、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。
【0148】
R37およびR38としての炭化水素基は、特に制限されない。上記炭化水素基は、ヘテロ原子を有してもよい。炭素原子及び水素原子のみで構成されていることが好ましい態様の1つとして挙げられる。上記炭化水素基は特に制限されないが、具体的には例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせが挙げられる。なかでも、脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0149】
上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状、これらの組み合わせのいずれであってもよい。上記脂肪族炭化水素基の具体例としては例えば、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、直鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、炭素数が1~20であることが好ましく、1~10がより好ましい。上記脂肪族炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基であることが好ましく、メチル基がより好ましい。
【0150】
上記芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基、ナフチル基などが挙げられる。上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などの炭素数が6~18のアリール基が挙げられる。
【0151】
炭化水素基が有してもよいヘテロ原子としては特に制限されないが、具体例としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)などが挙げられる。上記ヘテロ原子は別のヘテロ原子、炭素原子又は水素原子と結合して官能基を形成してもよい。
【0152】
上記式(X)で表される化合物は、本発明の効果により優れるという観点から、カンフェンが好ましい。カンフェンは下記式(X1)で表される化合物である。
【0153】
【化7】
本発明において、上記付加物を形成するもう一方の化合物は、フェノール化合物である。上記フェノール化合物は、ベンゼン環にヒドロキシ基が結合した化合物であれば特に制限されない。
【0154】
上記フェノール化合物は1分子中に、フェノール性ヒドロキシ基(ベンゼン環に直接結合したヒドロキシ基)を、1個以上有することでき、1個有することが好ましい。上記フェノール化合物としては例えば、下記式(Y)で表される化合物が挙げられる。
【0155】
【化8】
式(Y)中、R
39は置換基を表し、n2は0又は1~4を表す。
【0156】
式(Y)におけるR39としての置換基としては、例えば、炭化水素基、ヒドロキシ基が挙げられる。
【0157】
n2は0又は1~4を表し、本発明の効果により優れるという観点から、0が好ましい。
【0158】
上記フェノール化合物は例えば、本発明の効果により優れるという観点から、フェノールが好ましい。
【0159】
上記付加物は、本発明の効果により優れ、臭気が少ないという観点から、上記式(X)で表される化合物1分子と上記フェノール化合物1分子との反応生成物であることが好ましい。
【0160】
上記付加物は、本発明の効果により優れるという観点から、上記フェノール化合物による、フェノール性ヒドロキシ基又はフェノキシ基(いずれもベンゼン環上に更に上記置換基を有してもよい。)を有することが好ましい。
【0161】
なお、上記付加物は、上記反応生成物を少なくとも含めばよい。上記付加物は、上記反応生成物以外に、更に、反応副生成物、未反応物を含んでもよい。
【0162】
上記付加物としては、例えば、下記式(Z1)~(Z3)で表される化合物が挙げられる。
【0163】
【化9】
式(Z1)中、R
40およびR
41は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R
42は置換基を表し、n3は0又は1~4を表す。
【0164】
式(Z1)中、R40およびR41としての炭化水素基は、式(X)のR37およびR38としての炭化水素基と同様である。R42としての置換基は、式(Y)のR39としての置換基と同様である。n3は0又は1~4を表し、0が好ましい。
【0165】
【化10】
式(Z2)中、R
43およびR
44は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R
45は置換基を表し、n4は0又は1~4を表す。
【0166】
式(Z2)中、R43およびR44としての炭化水素基は、式(X)のR37およびR38としての炭化水素基と同様である。R45としての置換基は、式(Y)のR39としての置換基と同様である。n4は0又は1~4を表し、0が好ましい。
【0167】
【化11】
式(Z3)中、R
51およびR
52は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R
53は置換基を表し、n5は0又は1~4を表す。
【0168】
式(Z3)中、R51およびR52としての炭化水素基は、式(X)のR37およびR38としての炭化水素基と同様である。
【0169】
R53としての置換基は、式(Y)のR39としての置換基と同様である。
【0170】
n5は0又は1~4を表し、0が好ましい。
【0171】
上記付加物は、本発明の効果により優れ、臭気が少ないという観点から、下記式(Z1-1)で表される化合物、式(Z1-2)で表される化合物、式(Z2-1)で表される化合物、式(Z2-2)で表される化合物及び式(Z3-1)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0172】
【0173】
【0174】
【化14】
上記付加物の製造方法は、上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを反応させる方法であれば特に制限されない。上記反応における、上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物との使用量は特に制限されない。上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを反応させる際の、上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物との使用量(モル比。(X)で表される化合物:フェノール化合物)は、例えば、1:0.5~2とすることができ、1:0.8~1.2が好ましく、1:1がより好ましい。上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを触媒の存在下で反応させることができる。上記触媒としては、例えば、三フッ化ホウ素エーテル錯体が挙げられる。上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを溶媒中で反応させてもよい。上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンのような芳香族系炭化水素;シクロヘキサンのような脂肪族系炭化水素;四塩化炭素のようなハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0175】
上記式(X)で表される化合物と上記フェノール化合物とを反応させる際の反応温度は、例えば、0~100℃とできる。
【0176】
上記付加物の含有量は、本発明の効果により優れるという観点から、本発明の硬化性樹脂(E)を形成する組成物(接着剤)全量に対して、0.05~10質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがより好ましい。
【0177】
上記付加物の含有量に対する上記イソシアネート誘導体の含有量の質量比(イソシアネート誘導体:付加物の質量比)は、本発明の効果により優れるという観点から、0.1:1~50:1であることが好ましく、10:1~2:1であることがより好ましい。
2液型の場合、上記付加物を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
【0178】
ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤は、上述した成分以外のその他の成分を含有していてもよい。2液型の場合、その他の成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。そのようなその他の成分としては、例えば、充填剤(例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム)、触媒(硬化触媒)、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、顔料(染料)、接着付与剤、ターピネオールのようなテルペン化合物、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を更に含有することができる。なお、上記充填剤は、例えば、脂肪酸、樹脂酸、ウレタン化合物及び脂肪酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の処理剤で表面処理されていてもよい。また、接着剤が2液型の場合、上記任意成分を主剤又は硬化剤の何れに添加するかは、適宜選択することができる。
【0179】
樹脂硬化層(ii)は、上述のウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む層であればよく、層の形成方法を限定されるものではないが、好ましくは、ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤を硬化させたものである。
【0180】
前記ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)およびそれを含む樹脂硬化層(ii)は、再生可能資源の活用およびCO2排出量削減の観点から、少なくとも一部にバイオマス由来の原料を用いて製造されたものであることも好ましい。すなわち本発明では、ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤を構成する成分などの、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)あるいはそれを含む樹脂硬化層(ii)を形成する際に用いられる原料として、1種以上のバイオマス由来の原料を用いることが好ましい。ここで、バイオマスとは、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」を指し、バイオマス由来の原料とは、太陽エネルギーを使って水と二酸化炭素から生物が光合成によって生成した有機物に由来する成分を含む原料を意味する。なお、バイオマス由来原料であるかどうかについては、ASTM D6866に規定される14C法により求められる、バイオマス由来炭素の割合によっても判断することができる。
【0181】
バイオマス由来の原料としては、例えば、ASTM D6866 Method Bにて測定されるバイオマス度が50%以上である原料、植物度(植物由来成分の割合)が50%以上である原料、化石資源以外の天然原料由来であることが明示されている市販原料等を特に制限なく用いることができる。
【0182】
[積層構造体]
本発明の積層構造体は、上述したポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体(i)に、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む樹脂硬化層(ii)が直接積層されたものである。
【0183】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)を含む樹脂硬化層(ii)に対する接着性に優れ、成形体(i)と樹脂硬化層(ii)とがプライマーを介すことなく直接積層しているにもかかわらず強固に接着し、積層構造体は通常接着力が低下する高温下においても接着力が高度に保持されたものとなる。
【0184】
本発明において、成形体(i)、樹脂硬化層(ii)ならびにこれらが積層された本発明の積層構造体の製造方法および形状などは限定されない。また本発明の積層構造体は、成形体(i)および樹脂硬化層(ii)のみからなる積層構造体であってもよく、成形体(i)および樹脂硬化層(ii)以外の層がさらに積層されたものであってもよく、例えば、成形体(i)と、樹脂硬化層(ii)と、他部材とが、この順に積層された積層構造体であってもよい。成形体(i)と、樹脂硬化層(ii)と、他部材とが積層された積層構造体は、例えば、成形体(i)上に樹脂硬化層(ii)を形成する硬化性組成物を塗布し、前記組成物が硬化する前に他部材を貼り合わせ、組成物を硬化させて成形体(i)と他部材の間に樹脂硬化層(ii)を形成する方法や、他部材上に樹脂硬化層(ii)を形成する硬化性の組成物を塗布し、前記組成物が硬化する前に成形体(i)を貼り合わせ、組成物を硬化させて成形体(i)と他部材の間に樹脂硬化層(ii)を形成する方法などにより製造することができる。
【0185】
樹脂硬化層(ii)が、ポリウレタン樹脂を含む接着剤もしくはウレタン結合を形成する接着剤を硬化させたものである場合、樹脂硬化層(ii)は、当該接着剤を成形体(i)上に塗布し硬化させて製造してもよく、当該接着剤を成形体(i)上に塗布し、他部材と貼り合わせた状態で硬化させて製造してもよく、当該接着剤を成形体(i)と貼り合わせる他部材上に塗布し、成形体(i)と貼り合わせた状態で硬化させて製造してもよい。また、成形体(i)と、樹脂硬化層(ii)と、他部材とが積層された積層構造体の製造においては、剥離フィルム等の上に接着剤を塗布したものを成形体(i)に貼付し、剥離フィルムを剥離して成形体(i)上に接着剤層を形成し、他部材を貼り合わせてから接着剤層を硬化させて樹脂硬化層(ii)を製造してもよく、剥離フィルム等の上に接着剤を塗布したものを他部材に貼付し、剥離フィルムを剥離して他部材上に接着剤層を形成し、成形体(i)を貼り合わせてから接着剤層を硬化させて樹脂硬化層(ii)を製造してもよい。このような樹脂硬化層(ii)の製造では、硬化時に接着剤が成形体(i)に接した状態であることが好ましく、接着剤を成形体(i)上に塗布し硬化させることがより好ましい。
【0186】
また好ましくは、本発明の積層構造体の製造方法は、上述したポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形もしくはプレス成形により成形し、成形体(i)を製造する工程と、
ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)またはその原料を、前記成形体(i)に接触または塗布したのち硬化させて樹脂硬化層(ii)を形成する工程とを含む。
【0187】
より好ましくは、上述したポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形もしくはプレス成形により成形し、成形体(i)を製造する工程と、
ポリエーテル骨格のウレタンプレポリマーと脂肪族イソシアネート誘導体とを含むウレタン系接着剤を、前記成形体(i)に塗布したのち硬化させて樹脂硬化層(ii)を形成する工程とを含む。
【0188】
具体的には、例えば、上述したポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形もしくはプレス成形により成形して得た成形体(i)の表面に、必要に応じてフレーム処理やプラズマ処理などの表面処理を施した後、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)またはその原料である接着剤等を直接塗布し、硬化して、樹脂硬化層(ii)を形成する方法が挙げられる。硬化条件は使用する硬化性樹脂(E)またはその原料の種類、硬化剤の有無及び種類などに応じて選択することができ、例えば20℃以上100℃未満、好ましくは40℃以上80℃未満の温度で硬化させることができる。
【0189】
本発明の積層構造体は、成形体(i)および樹脂硬化層(ii)以外の他部材の層を有してもよい。本発明の積層構造体の好ましい一態様としては、成形体(i)、樹脂硬化層(ii)、および他部材の層が、この順に積層された積層構造体が挙げられる。このような積層構造体においては、成形体(i)と他部材の層とが、樹脂硬化層(ii)を介して接着された形態となることが好ましい。
【0190】
他部材の層を構成する他部材は、特に制限されずどのような部材であってもよく、例えば、ABS樹脂、PVCシート、ポリオレフィンシート、発泡層付ポリオレフィンシート等の樹脂製部材、ガラス、布、ファブリック、金属(鉄(軟鋼)、カチオン電着鋼板やアルミ等)、木、紙など、およびこれらの複合材が挙げられる。これらの他部材の層を有する積層構造体の製造においては、例えば、成形体(i)の表面に、樹脂硬化層(ii)を構成するウレタン結合を有する硬化性樹脂(E)またはその原料である接着剤等を直接塗布し、この塗布面に他部材を接触させて重ね合わせた後、室温養生、加熱あるいは圧着等により接着する方法などが採用できる。
【0191】
このような本発明の積層構造体は、寸法安定性に優れるとともに、接着性が低下しやすい高温においても成形体(i)と樹脂硬化層(ii)とがプライマーを介すことなく強固に接着したものとなる。例えば、従来接着試験において最も強度が出にくいとされる90℃程度の高温環境下においても高度な接着強度を維持しており、90℃での熱間剪断試験でも十分な接着強度を示す。具体的には、JIS K6850:1999に準じた90℃の条件下での熱間せん断強度試験(引張り速度50mm/分)において、成形体(i)と樹脂硬化層(ii)との層間のせん断強度が、通常1.2MPa以上、好ましくは1.5MPaを超え、より好ましくは2.0MPaを超え、さらに好ましくは2.5MPa以上であるという優れた接着強度を示す。
【0192】
本発明の積層構造体はドアトリム、インストゥルメントパネル、天井、コンソールボックス、ピラー、グローブボックス等の自動車内装材;バンパー、サイドガード、エアースポイラー、サイドプロテクター、フェンダー、ドアパネル、バックドア等の自動車外装部材、家電部品、建材等の工業部品などとして好適に利用することができ、特にバックドア等の自動車外装部材として好適に利用することができる。
【実施例】
【0193】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0194】
各物性の測定および評価は以下の方法により行った。
[メルトフローレート(MFR)(g/10分)]
ISO 1133に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。
[デカン可溶部量(Dsol)および不溶部量(Dinsol)]
ガラス製の測定容器に試料[成分(A)]約3g(10-4gの単位まで測定した。また、この質量を下式においてx2(g)と表した。)、n-デカン500ml、およびn-デカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温して試料を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られた析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G-4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得、この質量を10-4gの単位まで測定した(この質量を下式においてx1(g)と表した)。この測定値を用いて、室温(すなわち23℃)におけるデカン可溶部量(Dsol)および不溶部量(Dinsol)を下記式によって決定した。
Dsol(質量%)=100×(500×x1)/(100×x2)
Dinsol(質量%)=100-Dsol
【0195】
[融点ピーク]
示差走査型熱量計(DSC)の吸熱曲線を求め、最大ピーク位置の温度を融点ピーク(Tm)として求める。
測定機には、パーキンエルマー社製Pyris 1を用いた。試料をアルミパンに詰め、30℃で1分間保持したのち、500℃/分で160℃まで昇温し、その後、160℃で5分間保持したのち、10℃/分で-30℃まで降温し、ついで10℃/分で-30℃から160℃まで昇温したときに得られた吸熱曲線より融点ピーク(Tm)を求めた。
[無機充填剤の平均粒子径]
JIS R1620およびJIS R1622に準拠し、レーザー回折法によって測定した粒度累積曲線から読み取った累積量50質量%の粒径値を平均粒子径とした。
[無機充填剤のアスペクト比]
電子顕微鏡を用いて写真撮影を行い、粉体の長径(粒径)と厚みを測定し、平均値を求め、平均粒子径/平均厚みの比からアスペクト比を求めた。
[曲げ弾性率(MPa)]
ASTM D790に準拠し、以下の条件で測定した。
温度:23℃
試験片:127mm(長さ)×12.7mm(幅)×6.35mm(厚み)
曲げ速度:30mm/min
スパン間:100cm
【0196】
[IZOD衝撃強度(J/m)]
ASTM D256に準拠し、以下の条件でIZOD衝撃強度を測定した。
試験片:63.5mm(長さ)×12.7mm(幅)×3.2mm(厚み) ノッチ有
試験温度:-30℃
[線膨張係数(10
-5/℃)]
ASTM D 696に準拠し、TMA法(測定範囲-30~80℃)にて評価した。
[プライマーレス層間接着試験(90℃熱間せん断試験)]
JIS K6850:1999に準じ、引張試験機を用い、
図1の模式図に示すように樹脂板とガラス板を被着体とした接着せん断試験体の樹脂板側を固定し、ガラス側を固定治具に取り付け、90℃において、引張速度50mm/分の条件でせん断強度を測定し、4回の測定値の平均値を熱間せん断試験強度(MPa)として求めた。
【0197】
[製造例1]プロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)の調製
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mLおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とし、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0198】
この均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200mL中に、均一溶液75mLを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、2時間同温度にて攪拌保持した。
【0199】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mLの四塩化チタンに再懸濁させ、その後再び110℃で2時間加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0200】
この遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。予め窒素置換した100mLの枝付きシュレンクに上記固体触媒成分の上澄み液10mLを注射器で採取し装入した。次に、窒素気流にて溶媒ヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40mL、(1+1)硫酸10mLを装入し30分間攪拌した。この水溶液をろ紙を通して100mLメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃H3PO4溶液1mLとチタンの発色試薬として3%過酸化水素水溶液5mLを加え、さらにイオン交換水で100mLにメスアップしたこのメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い420nmの吸光度を観測しこの吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去を行った。
【0201】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分の組成は、チタン2.3質量%、塩素61質量%、マグネシウム19質量%、DIBP 12.5質量%であった。
(2)前重合触媒の製造
前記の固体状チタン触媒成分100g、トリエチルアルミニウム131mL、ジエチルアミノトリエトキシシラン37.3ml、ヘプタン14.3Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを1000g挿入し、120分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で1.0g/Lとなるようヘプタンにより濃度調整を行って、前重合触媒スラリーを得た。
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを43kg/時間、水素を256NL/時間、前記(2)で製造した前重合触媒スラリーを固体状チタン触媒成分として0.49g/時間、トリエチルアルミニウム4.5mL/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン1.8mL/時間で連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.57MPa/Gであった。
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器には、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が8.8mol%になるように供給し、重合温度68℃、圧力3.36MPa/Gで重合を行った。
【0202】
次いで、得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、このスラリーをガス化させ、気固分離を行った。その後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.20(モル比)、水素/エチレン=0.0031(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給し、重合温度70℃、圧力1.40MPa/Gで重合を行った。
【0203】
次いで、得られたプロピレン系ブロック共重合体を80℃で真空乾燥を行った。このようにして得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(A-1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は80g/10分であり、デカン可溶部(プロピレン・エチレン共重合体成分)の量は7質量%であり、デカン不溶部(プロピレン単独重合体成分)の量は93質量%、デカン可溶部の極限粘度[η]は7.5dl/gであった。
【0204】
[製造例2]プロピレン単独重合体(B-1)の調製
製造例1の(1)固体状チタン触媒成分の調製と同様にして固体状チタン触媒成分を得た。
(2)前重合触媒の製造
固体状チタン触媒成分100g、トリエチルアルミニウム39.3mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15~20℃に保ちプロピレンを600g挿入し、60分間攪拌しながら反応させて、前重合触媒スラリーを得た。
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを43kg/時間、水素を177NL/時間、(2)で製造した前重合触媒スラリーを固体状チタン触媒成分として0.58g/時間、トリエチルアルミニウム3.1ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン3.3ml/時間で連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.53MPa/Gであった。
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器には、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が3.2mol%になるように供給し、重合温度70℃、圧力3.28MPa/Gで重合を行った。
次いで、得られたプロピレン単独重合体を80℃で真空乾燥を行った。このようにして得られたプロピレン単独重合体(B-1)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は30g/10分であった。
【0205】
[製造例3]プロピレン単独重合体(B-2)の調製
まず、製造例1の(1)固体状チタン触媒成分の調製、(2)前重合触媒の製造と同様にして前重合触媒スラリーを得た。
(3)本重合
内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを131kg/時間、前重合触媒スラリーを遷移金属触媒成分として0.70g/時間、トリエチルアルミニウム19.6mL/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン4.2mL/時間を連続的に供給し、水素を気相部の水素濃度が5.3mol%になるように供給し、重合温度75℃、圧力3.5MPa/Gで重合を行った。
【0206】
得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを30kg/時間、水素を気相部の水素濃度が3.9mol%になるように供給し、重合温度74.5℃、圧力3.4MPa/Gで重合を行った。
【0207】
次いで、得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを20kg/時間、水素を気相部の水素濃度が3.4mol%になるように供給し、重合温度73℃、圧力3.4MPa/Gで重合を行った。
次いで、得られたスラリーを失活、気化後、気固分離を行った。得られたプロピレン単独重合体を80℃で真空乾燥を行った。このようにして得られたプロピレン単独重合体(B-2)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は210g/10分であった。
【0208】
[エチレン・α-オレフィン共重合体]
エチレン・α-オレフィン共重合体(C-1)としては、三井化学社製のタフマー(登録商標)A4050S(エチレン含量=80モル%、1-ブテン含量=20モル%、MFR(230℃、2.16kg荷重)=7g/10分、密度=0.862g/cm3、融点ピーク=50℃未満)を用いた。
【0209】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C-2)としては、三井化学社製のタフマー(登録商標)A1050S(エチレン含量=80モル%、1-ブテン含量=20モル%、MFR(230℃、2.16kg荷重)=2g/10分、密度=0.862g/cm3、融点ピーク=50℃未満)を用いた。
【0210】
エチレン・α-オレフィン共重合体(C-3)としては、ダウ・ケミカル社製のポリオレフィンエラストマーであるENGAGE(登録商標)11547(MFR(230℃、2.16kg荷重)=9g/10分、密度=0.866g/cm3、融点ピーク=120℃)を用いた。
[無機充填剤]
無機充填剤(D-1)としては、次の特性を有するタルクを用いた。
(D-1):タルク、平均粒子径(レーザー回折法)=6.0μm、アスペクト比(SEM採寸)=7.0
【0211】
[製造例4~6]主剤(E1-1)~(E1-3)の調製
下記表1の各成分を、撹拌機を用いて同表に示す組成(質量部)で混合し、2液硬化型接着剤の主剤(E1-1)~(E1-3)をそれぞれ調製した。
【0212】
【表1】
上記表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
(主剤成分詳細)
・ポリマー1:下記で合成したウレタンプレポリマー:
ポリオキシプロピレンジオール(平均分子量2000)700g、ポリオキシプロピレントリオール(平均分子量3000)300g、および4,4′-ジイソシアネートフェニルメタン(分子量250)499gを混合し(この時NCO/OH=2.0)、更にフタル酸ジイソノニル500gを加えて、窒素気流中、80℃で12時間撹拌を行い、反応させて、イソシアネート基を2.10%含有するウレタンプレポリマー(ポリマー1)を合成した。
・ポリマー2:主鎖がポリオキシプロピレンであり末端に加水分解性シリル基としてメチルジメトキシシリル基を有する変性シリコーン樹脂。カネカMSポリマーS203(カネカ社製)
・エポキシ樹脂1:アデカレジンEP-4100(アデカ社製)
・エポキシ樹脂2:アデカレジンEP-4006(アデカ社製)
・化合物1:ヘキサメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体(タケネートD-170HN、三井化学社製)
・化合物2:ペンタメチレンジイソシネートのイソシアヌレート体とアロファネート体の混合物(スタビオD-376N(低粘度タイプ)、三井化学社製)(バイオマス由来化合物:植物度(ASTM D6866-04):67%)
・化合物3:ケチミン型潜在性硬化剤 エピキュア H-30(三菱化学社製)
・化合物4:カンフェンとフェノールとの付加物(ヤスハラケミカル社製)。この化合物4として用いた付加物は、市販品であって、下記式(Z1-1)で表される化合物、式(Z1-2)で表される化合物、式(Z2-1)で表される化合物、式(Z2-2)で表される化合物及び式(Z3-1)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。(バイオマス由来化合物:バイオマス度(ASTM D6866 Method B):55%)
【0213】
【0214】
【化16】
・カーボンブラック:#200MP(新日化カーボン社製)
・炭酸カルシウム1:スーパーS(丸尾カルシウム社製)
・炭酸カルシウム2:カルファイン200(丸尾カルシウム社製)
・可塑剤1:フタル酸ジイソノニル(ジェイプラス社製)
・可塑剤2:シェルゾールTM(ジャパンケムテック社製)
・触媒1:ジモルホリノジエチルエーテル(サンアプロ社製)
・触媒2:スズ系触媒 ネオスタンU-303(日東化成社製)
【0215】
[製造例7、8]硬化剤(E2-1)、(E2-2)の調製
下記表2の各成分を、撹拌機を用いて同表に示す組成(質量部)で混合し、2液硬化型接着剤の硬化剤(E2-1)、(E2-2)をそれぞれ調製した。
【0216】
【表2】
上記表2中の各成分の詳細は以下のとおりである。
(硬化剤成分詳細)
・化合物5:3官能ポリプロピレンポリオール(エクセノール1030、旭硝子社製)
・化合物6:ポリブタジエンジオール(Poly bd R-45HT、出光興産社製、水酸基価:0.8mol/kg)
・化合物7:ターピネオール(ヤスハラケミカル社製)(バイオマス由来化合物:バイオマス度(ASTM D6866 Method B):95%以上)
・化合物8:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン サイラエース S-510(チッソ社製)
・化合物9:X-12-972F(アミノシランオリゴマー)(信越化学工業社製)
・炭酸カルシウム2:カルファイン200(丸尾カルシウム社製)
・触媒1:ジモルホリノジエチルエーテル(サンアプロ社製)
・触媒3:アミン系触媒 TEDA-L33E(東ソー社製)
【0217】
[実施例1~3、比較例1~3]
・成形体試験片の作製および表面処理
プロピレン系重合体(A)、プロピレン単独重合体(B)、エチレン・α-オレフィン共重合体(C)および無機充填剤(D)の各成分を、表3に示す種類および配合量で混合し、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX(登録商標)30α)により、シリンダ温度180℃、スクリュー回転750rpm、押出し量60kg/hの条件で押出し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた各ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)を表3に示す。
【0218】
得られた各ポリプロピレン系樹脂組成物を、長さ350mm、幅100mm、厚み3mmの金型キャビティーを用いて樹脂温度210℃、金型温度40℃で射出成形して平板を得て、これを100mm×50mm×3mmの形状に切り出し、積層構造体作成用の成形体試験片(平板)を得た。
【0219】
また、同様の樹脂温度及び金型温度での射出成形・切り出しにより、上述した形状の、測定用の成形体試験片を得た。得られた各成形体試験片を用いて、上述した試験法により、曲げ弾性率、IZOD衝撃強度および線膨張係数を測定した。結果を表3に示す。
【0220】
また、上記で得た平板を100mm×25mm×3mmの形状に切り出し試験片を得た。得られた試験片の表面に表面処理(フレーム処理)を行った。表面処理には、フレーム処理装置(Arcogas社製のFTS 201)を用いた。フレーム処理装置は、燃焼ガス及び空気の流量を調節できる。
【0221】
表面処理としては、空気の流量を100L/分に固定し、燃焼ガス(プロパンガス)の流量を3.7L/分に調節し、平板とフレーム照射ヘッドの距離を40mm、処理スピードを800mm/秒として表面自由エネルギーが42ダイン/cm(mN/m)の表面を製作した(表面処理状態:低処理)。また同様に距離30mm、800mm/秒として表面自由エネルギーが52ダイン/cm(mN/m)の表面を製作し(表面処理状態:中処理)、さらに同様に距離10mm、800mm/秒として表面自由エネルギーが64ダイン/cm(mN/m)の表面を製作した(表面処理状態:高処理)。
【0222】
・接着剤の調製
表3に示す種類の主剤および硬化剤を用い、接着剤塗布の直前に、主剤100gと、硬化剤10gとを混合して、接着剤を得た。
なお、接着剤(E-1)、(E-3)はウレタン系接着剤であって、これを用いて得られる接着剤層は、硬化して、ウレタン結合を有する硬化性樹脂を含む樹脂硬化層を形成する。また接着剤(E-2)は非ウレタン系接着剤であって、これを用いて得られる接着剤層は、硬化して、非ウレタン結合を有する硬化性樹脂を含む樹脂硬化層を形成する。
・積層構造体の作製および評価
上記で得られた各表面処理済みの試験片上に、接着面積25mm(幅)×10mm(長さ)で厚さ5mmとなるように上記で得られた接着剤からなる接着剤層を形成し、接着剤層を介した相手側の部材にガラス(7.5×25×5mm厚)を選定して用い、室温条件で硬化させて、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体と、接着剤から得られた樹脂硬化層と、ガラスとが積層された積層構造体試験片を得た。
【0223】
室温で3日養生後に、得られた各積層構造体試験片の樹脂基材側の背面に、上述と同様の表面処理を施し、厚さ1mmのカチオン電着鋼板を、接着剤(シーカ・ハマタイト社製 WS-242)を用いて貼り合わせ、更に室温で3日養生させた後に、JIS K6850:1999に準拠し、引張試験機を用い、
図1の模式図に示すようにガラスを固定し、90℃にて熱間せん断強度試験を行った(引っ張り速度:50mm/分)。結果を表3に示す。
【0224】
【表3】
表3に示す結果から明らかなように、融点ピークが110℃以上という高融点を有するエチレン・α-オレフィン共重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体の層と、ウレタン結合を有する硬化性樹脂(接着剤の硬化物)からなる樹脂硬化層とを有する実施例1~3の積層構造体は、機械的物性に優れるとともに、プライマーを介さず(プライマーレスで)積層した積層構造体であるにもかかわらず、層間が強固に接着されており、90℃という高温条件下においても高い接着強度を有することがわかった。
【産業上の利用の可能性】
【0225】
本発明の積層構造体は、ドアトリム、インストゥルメントパネル、天井、コンソールボックス、ピラー、グローブボックス等の自動車内装材;バンパー、サイドガード、エアースポイラー、サイドプロテクター、フェンダー、ドアパネル、バックドア等の自動車外装部材、家電部品、建材等の工業部品などの用途に好適に利用することができる。