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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20241023BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B25J13/08 A
G01B11/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021023518
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125750
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 稜太
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 博典
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特許第5003840(JP,B1)
【文献】特開2005-111607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送中の一または複数のワークを検出するためのシステムであって、
一または複数のワークが移動する所定のエリア内の各位置の情報を含むエリア情報を時間的に連続して取得する取得部と、
該取得部により取得されたエリア情報のうち、所定の時間間隔を空けて連なる一連のエリア情報を構成する各エリア情報について、一または複数のワークが占有する候補領域をワーク毎に検出する領域検出部と、
前記一連のエリア情報について、一または複数のワークの移動を個別に追跡することでワークを検出する追跡部と、を有し、
該追跡部は、前記一連のエリア情報を構成する各エリア情報から検出された各候補領域について、取得時点が異なる他のエリア情報から検出された候補領域との間に重複が有るか無いかを判断すると共に、
互いに重複する候補領域に対していずれか一のワークを特定可能な識別情報をひも付け、当該互いに重複する候補領域を関連付けることにより、前記一連のエリア情報における一または複数のワークを個別に追跡し、
当該追跡部は、重複を有するいずれか2つの候補領域の検出元である各エリア情報の取得時点の時間的な差分が所定の閾値以内あるいは未満であることを条件として、当該いずれか2つの候補領域に対して同じ識別情報をひも付けるシステム。
【請求項2】
請求項において、ひも付けられた識別情報が同じであるいずれか2つの候補領域の検出元である各エリア情報の取得時点によって時間的に挟まれており、かつ、同じ識別情報がひも付けられた候補領域が検出された他のエリア情報が属していない期間を特定すると共に、
当該期間内に取得されたいずれか他の一または複数のエリア情報が存在しており、かつ、当該他の一または複数のエリア情報から前記同じ識別情報がひも付けられた候補領域が未検出である場合に、当該他の一または複数のエリア情報について、前記同じ識別情報がひも付けられるべき候補領域の検出漏れが生じたと判定する検出漏れ判定部を備えるシステム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記追跡部は、いずれかの識別情報がひも付けられた候補領域が初めて検出された後、同じ識別情報がひも付けられた候補領域が最後に検出されるまでの期間内のエリア情報の取得回数のうち、当該いずれかの識別情報がひも付けられた候補領域が検出されたエリア情報の取得回数、の比率に関する閾値処理により、当該識別情報に係るワークを追跡した結果が有効であるか無効であるかを判断するシステム。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項において、前記エリア情報は、前記エリア内の各位置までの距離の情報を含む情報であるシステム。
【請求項5】
請求項において、前記候補領域は、3次元的な領域であるシステム。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項において、前記搬送中のワークは、製品を製造あるいは加工するための装置から搬送されて排出されるワークであるシステム。
【請求項7】
請求項において、前記装置から全てのワークが搬送され排出されたことを検知し、ワークを排出するための搬送動作を停止させる回路を備えるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送中のワークを検出するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、ファクトリーオートメーション用途として、搬送中のワークを検出するシステムの提案がある(例えば、特許文献1参照。)。このシステムでは、搬送されてくるワークを取り出すため、搬送中のワークの検出が行われる。搬送中のワークを確実に検出できれば、ロボット等を利用してワークを速やかに取出しでき、このワークを利用する生産の効率を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-111607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のシステムでは、次のような問題がある。すなわち、実際には存在しないワークを誤って検出すれば、存在しないワークの取出しを試みるロボットの無駄な動作が生じるおそれがあり、また、実際に搬送中のワークの検出漏れが起きれば、取出しされずにそのまま搬送されてしまったワークを下流で回収する作業等が必要になり、生産あるいは作業の効率が損なわれるおそれがある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、搬送中のワークを精度高く検出するシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、搬送中の一または複数のワークを検出するためのシステムであって、
一または複数のワークが移動する所定のエリア内の各位置の情報を含むエリア情報を時間的に連続して取得する取得部と、
該取得部により取得されたエリア情報のうち、所定の時間間隔を空けて連なる一連のエリア情報を構成する各エリア情報について、一または複数のワークが占有する候補領域をワーク毎に検出する領域検出部と、
前記一連のエリア情報について、一または複数のワークの移動を個別に追跡することでワークを検出する追跡部と、を有し、
該追跡部は、前記一連のエリア情報を構成する各エリア情報から検出された各候補領域について、取得時点が異なる他のエリア情報から検出された候補領域との間に重複が有るか無いかを判断すると共に、
互いに重複する候補領域に対していずれか一のワークを特定可能な識別情報をひも付け、当該互いに重複する候補領域を関連付けることにより、前記一連のエリア情報における一または複数のワークを個別に追跡し、
当該追跡部は、重複を有するいずれか2つの候補領域の検出元である各エリア情報の取得時点の時間的な差分が所定の閾値以内あるいは未満であることを条件として、当該いずれか2つの候補領域に対して同じ識別情報をひも付けるシステムにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシステムは、一連のエリア情報を構成する各エリア情報について、一または複数のワークの候補領域を検出する領域検出部と、一または複数のワークを個別に追跡することでワークを検出する追跡部と、の組合せに技術的特徴のひとつを有している。本発明のシステムにおける追跡部は、各エリア情報から検出された各候補領域について、取得時点が異なる他のエリア情報から検出された候補領域との間に重複が有るか無いかを判断する。そして、この追跡部は、互いに重複する候補領域に対してワークの識別情報をひも付け、当該互いに重複する候補領域を関連付ける。
【0008】
本発明のシステムは、一連のエリア情報においてワークの候補領域を互いに関連付けることで、ワークを精度高く検出可能な優れた特性のシステムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1における、ショットブラスト装置を示す説明図。
図2】実施例1における、カメラの撮像エリアの説明図。
図3】実施例1における、システムの構成図。
図4】実施例1における、システムの動作の流れを示すフロー図。
図5】実施例1における、候補領域を抽出する処理の説明図。
図6】実施例1における、候補領域の追跡する処理の説明図。
図7】実施例1における、候補領域を補間する処理の説明図。
図8】実施例1における、誤抽出された候補領域を排除する処理の説明図。
図9】実施例1における、他の適用例の説明図。
図10】実施例2における、ワークの追跡結果を表す表。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、エリア情報を取得する取得部としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサや、ToF(Time of Flight)カメラや、測距センサなどが考えられる。イメージセンサが取得部である場合、所定のエリアに相当する撮像エリア内の各位置の情報は、明るさや色の情報となる。ToFカメラや測距センサが取得部の場合、エリア内の各位置の情報には、距離情報が含まれる。
【0011】
一般的に、イメージセンサや、ToFカメラや、測距センサなどの取得部は、例えば30~60Hzなどの周波数で、エリア情報に相当する撮像画像や距離画像等を取得する。一連のエリア情報は、取得部が時間的に連続して取得するエリア情報そのものであっても良く、例えば0.1秒毎などの間隔で抜き出された一部のエリア情報であっても良い。
【0012】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、装置の一例であるショットブラスト装置5によって搬送されて排出(搬出)されるワーク100を個別に追跡することでワーク100を検出するシステム1に関する例である。このシステム1の内容について、図1図9を用いて説明する。
【0013】
まず、システム1を適用するショットブラスト装置5の構成について説明する。なお、図1は、ショットブラスト装置5の筐体500の手前側を一部カットし、内部構造を見えるようにした図である。ショットブラスト装置5は、例えば、直径1mm程度のスチール粒をワーク100に向けて投射して、ワーク100の表面のさびや汚れを落としたり、強度を高めるための表面処理を行う加工装置である。なお、ショットブラスト装置5は、投射物の投射機構や投射物の回収機構等を備えるが、図1ではこれらの機構の図示を省略している。
【0014】
ショットブラスト装置5は、箱状の筐体500の内部に、ワーク100を循環させるためのコンベア機構50や、扉52を開閉させる機構、等を備えている。コンベア機構50は、略水平を呈する水平セクション501と、略鉛直部分を含む揚送セクション502と、の組合せによる断面L字状を呈するように形成されている。箱状の筐体500の前面の上部には、ワーク100の搬出完了を報知するための表示ランプ56が設けられている。
【0015】
扉52は、平板状をなし、鉛直方向に進退可能(昇降可能)である。また、ショットブラスト装置5の手前側には、ショットブラスト装置5から排出されたワーク100が、そのまま滑り落ちる傾斜状のスロープ台55が設けられている。このスロープ台55は、後工程の装置に向けてワーク100を供給可能なように構成されている。
【0016】
ショットブラスト装置5は、扉52が下降して装置の前面が閉じている状態で、ワーク100の加工を実行する。このとき、コンベア機構50は、水平セクション501のワーク100を揚送セクション502に送り出し、揚送セクション502がワーク100を上方に運ぶように動作する。コンベア機構50によって上方に運ばれたワーク100は、重力の作用により、水平セクション501に向けて落下し、これにより、装置内部を循環する。このとき、図示しない投射機構からスチール粒などの投射物がワーク100に向けて投射され、これにより、ワーク100に表面加工が施される。
【0017】
扉52が上昇すると、ショットブラスト装置5の前面が開口し、コンベア機構50の水平セクション501と、スロープ台55と、が若干の隙間を空けて連結された状態となる。ワーク100の表面加工の後、装置の前面が開口している状態で、コンベア機構50が逆向きに回転する。そうすると、揚送セクション502側からスロープ台55側に向けてワーク100が送り出されて搬出される。上記のごとく、スロープ台55に搬出されたワーク100は、重力の作用を利用して後工程の装置に搬送される。
【0018】
本例のシステム1(図2及び図3)は、ショットブラスト装置5の正面側に配設されたToF(Time of Flight)カメラ12と、メインユニット10と、を含めて構成されたシステムである。メインユニット10からは信号線18が引き出されており、ショットブラスト装置5に接続されている。メインユニット10は、この信号線18を介して、ショットブラスト装置5が備える上記の表示ランプ56の点灯状態を切り替える。
【0019】
ToFカメラ12は、撮像エリア(エリア)12Aに向けて赤外光を照射し、赤外光の反射時間を計測することで、撮像エリア12A内の各点(各位置)の距離の情報を含む距離画像(エリア情報の一例)を取得するカメラである。このToFカメラ12は、この距離画像を時間的に連続して取得する取得部の一例をなしている。ToFカメラのフレームレートは、30フレーム毎秒、解像度は縦横、640ピクセル×480ピクセルである。
【0020】
本例のシステム1では、このToFカメラ12の撮像エリア12Aとして、ショットブラスト装置5のコンベア機構50の水平セクション501による搬送面511のほぼ全域が包含されるエリアが設定されている(図2)。撮像エリア12Aには、揚送セクション502の下部と、スロープ台55の前縁部分と、が含まれる。この撮像エリア12Aは、ショットブラスト装置5がワーク100を搬出する際、各ワーク100が移動するエリアを包含するように設定されている。
【0021】
メインユニット10は、図3のごとく、CPU(Central Processing Unit)101、GPU(Graphic Processing Unit)105を含む回路である。CPU101、GPU105には、それぞれ、ROM、RAMなどのメモリデバイス102が接続されている。メインユニット10には、ToFカメラ12が接続されているほか、ショットブラスト装置5の表示ランプ56の点灯状態を切り替えるための信号線18が接続されている。なお、同図では、ToFカメラ12や表示ランプ56等との接続を可能にするI/O(Input/Output)回路の図示を省略している。
【0022】
GPU105は、例えばROMから読み出したソフトウェアを実行することで、ToFカメラ12による距離画像からワーク100の候補領域を検出する処理を実行する。GPU105は、ToFカメラ12により取得されたエリア情報のうち、所定の時間間隔を空けて連なる一連の距離画像(エリア情報)を構成する各距離画像について、ワーク100の候補領域を個別に検出する領域検出部としての機能を有する。
【0023】
GPU105は、ディープラーニングを利用するAI的な方法によって、ToFカメラ12による各距離画像から候補領域を検出する。なお、このAI的な方法については、後で概説する。GPU105は、ToFカメラ12から一定の周期で、時間的に連続して取得する距離画像を順次処理し、候補領域の検出結果を随時、CPU101に入力する。なお、本例の候補領域は、距離画像中の2次元的なエリアである。
【0024】
CPU101は、例えばROMから読み出したソフトウェアを実行することで、ToFカメラ12による時間的に連続する一連の距離画像中の各ワーク100を個別に追跡することでワーク100を検出する追跡部としての機能を実現する。CPU101は、GPU105から入力された候補領域の検出結果を処理することで、各ワーク100を個別に追跡する。また、CPU101は、距離画像について候補領域の検出漏れが生じたか否かを判定する検出漏れ判定部としての機能を備えている。
【0025】
CPU101は、ショットブラスト装置5からのワーク100の排出が完了したか否かを判断し、完了に応じてショットブラスト装置5の表示ランプ56を青色で点灯させる。例えば、ショットブラスト装置5を操作するオペレータ等は、表示ランプ56が青色点灯した後、加工対象の新たなワーク100を投入する作業を開始すると良い。表示ランプ56が青色点灯した後であれば、加工済のワーク100がショットブラスト装置5の内部に残っているおそれが少ない。
【0026】
例えばショットブラスト装置5のオペレータ等は、表示ランプ56の点灯状態を確認するのみで良く、例えば目視等により装置の内部を確認する作業を行う必要性が少ない。本例のシステム1を適用した場合、ショットブラスト装置5による加工対象のワーク100が多種類の場合であっても、いずれかの種類のワークに異種のワークが混入する状況を未然に回避できる。
【0027】
次に、本例のシステム1の動作の流れについて、図4のフロー図を参照して説明する。ここでは、メインユニット10の動作(処理)を中心として、システム1の動作の内容を説明する。
【0028】
メインユニット10は、ToFカメラ12を制御して、一定の周期で距離画像を取得(撮像、撮影)する(S101)。ToFカメラ12による時間的に連続する一連の距離画像は、随時、メインユニット10のGPU105に取り込まれ(S102)、順次、候補領域を検出する処理が実行される(S103)。
【0029】
ステップS103では、図5のごとく、GPU105のワークエリアにソフトウェア的に構築される畳込みニューラルネットワーク105Nに距離画像を適用して、その距離画像における候補領域が検出される。なお、候補領域の検出数は、1つでも2つ以上の複数であっても良い。本例のシステム1の目的は、加工済のワーク100をショットブラスト装置5から排出(搬出)する際、装置内部に残材が無いことの確認である。候補領域の検出は、ワーク100を排出する期間の終盤で実行すれば良く、排出する期間の終盤であれば、ワーク数はごく少数である。あるいは、ワーク数が十分に少なくなった状況を待って、以下に説明するステップS104以降の処理を実行することも良い。
【0030】
GPU105は、距離画像を取り込む毎に候補領域を検出する処理を実行し、順次、候補領域の検出結果をCPU101に入力する。CPU101は、時間的に連続する一連の距離画像を構成する各距離画像から検出された候補領域を記憶しており、候補領域の検出履歴に基づいて、候補領域のラベリング(S104)、ワーク100を追跡する処理(S105)を実行する。
【0031】
ここで、候補領域をラベリングする処理(ステップS104)、及びワーク100を追跡する処理(ステップS105)、の内容について、図6図8を参照して説明する。メインユニット10のCPU101は、過去の所定のフレーム数分の距離画像からの候補領域の検出結果を、例えばRAMなどの記憶領域を利用して記憶している。
【0032】
例えば、図6図8では、最新の時点tの距離画像Xt、及び時点tを基準として時間的に遡るt-1、t-2、t-3の3時点の距離画像(Xt-1、Xt-2、Xt-3)が、取得時点の古いものから順番に図中、左側から配列されている。なお、4つの時点の時間的な間隔は、ToFカメラ12が距離画像を取得する間隔(フレームレートに対応する間隔)であっても良く、この間隔よりも時間的に長い間隔であっても良い。ただし、4つの時点の時間的な間隔は、等間隔であると良い。CPU101は、各距離画像で検出された候補領域(A、A-1、A-2、A-3)の位置や大きさなどを記憶している。
【0033】
図6は、Xt-3からXtの各距離画像において、いずれか一のワーク100に対する候補領域(A-3、A-2、A-1、A)が漏れなく検出された状況を例示している。CPU101は、時間的に最も古い距離画像Xt-3で検出された候補領域A-3と、3番目に古い距離画像Xt-2で検出された候補領域A-2と、を比較する。具体的には、CPU101は、撮像エリア12Aにおいて、2つの候補領域A-3と候補領域A-2とを重ね合わせた際に重複する領域が有るか無いかを調べる。CPU101は、候補領域A-3と候補領域A-2との間に重複する領域が有る場合、これら2つの候補領域A-3、A-2に同じラベル(識別情報)をひも付け、これら2つの候補領域A-3、A-2を関連付ける。
【0034】
さらに、CPU101は、時間的に3番目に古い距離画像Xt-2と、時間的に2番目に古い距離画像Xt-1と、について、上記と同様、候補領域A-2と候補領域A-1との比較を実行する。CPU101は、既にラベルをひも付けた候補領域A-2に対して、候補領域A-1が重複していれば、候補領域A-3と候補領域A-2とにひも付けたものと同じラベルを、候補領域A-1にひも付ける。
【0035】
さらに、CPU101は、時間的に2番目に古い距離画像Xt-1と、最新(時間的に1番目に古い)の距離画像Xtと、についても同様の処理を実行する。そうすると、距離画像Xt-3から距離画像Xtに亘って、同じラベルがひも付けられた候補領域A-3、A-2、A-1、Aが特定される。CPU101は、このように距離画像Xt-3から距離画像Xtに亘って同じラベルがひも付けられた4つの候補領域A-3、A-2、A-1、Aについて、いずれか一のワーク100に由来する候補領域として特定する。CPU101は、このようにして、一連の距離画像において移動するワーク100を個別に追跡することでワーク100を検出する。
【0036】
一方、図7は、時間的に3番目に古い距離画像Xt-2について、図4中のステップS103で候補領域を検出できなかった場合の例示である。同図の場合、距離画像Xt-3と距離画像Xt-2とを比較する処理、及び距離画像Xt-2と距離画像Xt-1とを比較する処理では、距離画像Xt-2において候補領域が未検出であるため、候補領域が重複するか否かの判断が不可能である。
【0037】
図7の場合、CPU101は、時間的に4番目に古い距離画像Xt-3と、時間的に2番目に古い距離画像Xt-1と、の間で、候補領域A-3と候補領域A-1とが重複しているか否かを判断する。CPU101は、候補領域A-3と候補領域A-1とが重複している場合、これら2つの候補領域A-3及びA-1に同じラベルをひも付ける。
【0038】
さらに、CPU101は、ひも付けられたラベルが同じいずれか2つの候補領域A-3及びA-1の検出元である各距離画像Xt-3及びXt-1の取得時点(t-3、t-1)によって時間的に挟まれた期間(時点t-3から時点t-1に至る期間)を特定する。そして、CPU101は、この期間内に取得されたいずれか他の一または複数の距離画像が存在しており、かつ、当該他の一または複数の距離画像から同じラベルがひも付けられた候補領域が未検出であるという条件が満たされるか否かを判断する。この条件が満たされる場合、検出漏れ判定手段としてのCPU101は、当該他の一または複数の距離画像について、同じラベルがひも付けられたはずの候補領域の検出漏れが生じたと判定する。なお、図7の例示の場合、上記の他の一または複数の距離画像は、時点t-2の距離画像Xt-2のみである。図7の場合、CPU101は、距離画像Xt-3から距離画像Xtまでの一連の距離画像において、検出漏れと判定された距離画像Xt-2を挟みながら移動するワーク100を追跡できたことで、ワーク100を検出できたと判断する。
【0039】
また、図8は、時点t-3から時点tまでの期間における一連の距離画像において、時点t-2の距離画像Xt-2からのみ、候補領域A-2が検出された場合の例示である。この場合、距離画像Xt-2に対して時間的に前後する他の距離画像からは、候補領域A-2と位置的に重複する候補領域が検出されていない。このような場合、CPU101は、距離画像Xt-2から検出された候補領域A-2について、誤検出と判定して、その検出結果を無視する。
【0040】
以上のように、本例のシステム1によれば、装置から搬送されて排出されるワーク100を個別に追跡することで各ワーク100を検出でき、これにより、装置内部に残材が生じる状況を確実性高く回避できる。特に本例のシステム1では、AI的な手法により各距離画像から検出された候補領域の時間的な変位に着目して、異なる時点の距離画像から検出された候補領域を相互に関連付けることで、ワーク100を追跡してワーク100を検出している。このような候補領域の関連付けによれば、確実性高くワーク100を追跡できる。
【0041】
なお、本例の構成においては、時間的に前後する2つの距離画像(エリア情報)から検出された候補領域間に重複があれば、それら候補領域に対して同じラベルをひも付けて関連付けている。これに加えて、同じラベルのひも付けによりいずれか2つの候補領域を関連付けるための条件として、候補領域の検出元の距離画像の取得時点の時間的な差分が、例えば0、5秒や1秒などの所定の閾値となる時間以内あるいは未満であるという条件を追加して設定することも良い。
【0042】
本例では、候補領域として、ToFカメラ12の撮像エリア12A中の2次元的な領域を例示している。これに代えて、距離画像に基づいて、3次元的な領域を候補領域として検出することも良い。なお、3次元的な候補領域を特定するに当たっては、コンベア機構50の水平セクション501の搬送面511にワーク100が載置されているという知識を利用すると良い。この知識に基づけば、水平セクション501の搬送面511に底面が沿っているものとして、その底面を含む3次元的な候補領域を特定できる。距離画像から3次元的な候補領域を検出した際、異なる距離画像からそれぞれ検出された候補領域の重複の有無を判断する際、3次元的な候補領域間の3次元的な重複領域の有無を判断すると良い。
【0043】
本例では、一連の距離画像を構成する各距離画像を畳込みニューラルネットワーク(図5参照。)に適用し、ワーク100の候補領域を検出している。これに代えて、エッジング処理や2値化処理やラベリング処理などの古典的な画像処理手法によって、各距離画像から候補領域を検出することも良い。
【0044】
なお、ショットブラスト装置5の動作を制御する機能の全部あるいは一部を、メインユニット10に具備させることも良い。例えば、ショットブラスト装置5から全てのワーク100が搬送され排出されたことを検知し、ワーク100を排出するための搬送動作を停止させる回路を、メインユニット10に含めると良い。この場合には、全てのワーク100を排出した時点で、ショットブラスト装置5の動作を停止させることができ、消費エネルギーを低減できる。
【0045】
なお、本例のシステム1を、図9に示すごとく、ワーク100を搬送するために特化されたコンベア装置59に適用することも良い。同図の構成では、コンベア装置59の搬送面を撮像できるようにToFカメラ12が設けられている。ToFカメラ12による撮像エリア12Aにより、検出開始位置を起点とした追跡区間が形成される。
【0046】
例えば、下請け工場から加工用のワーク100を搬入する際の第1のコンベア装置59と、加工済みのワーク100を出荷エリアに向けて搬送するための第2のコンベア装置59と、の両方に、本例のシステム1を適用する構成が考えられる。この場合、一連の距離画像において追跡されたワーク100の個数を計数する計数部としての機能を、メインユニットに持たせることも良い。各コンベア装置59で搬送中のワーク100を追跡する際、ひも付けられたラベル数に基づいてワーク100の個数を計数すれば、ワーク100の搬入数と搬出数との対比が可能になる。ワーク100の搬入数と搬出数とを対比すれば、歩留まりの特定やワーク100の紛失検出等が可能になる。
【0047】
(実施例2)
本例は、実施例1の構成に基づいて、ワークを追跡した結果の有効性を判断する処理を追加した例である。この内容について、図10を用いて説明する。
本例の構成では、0.1秒毎の距離画像について候補領域の検出処理を実行し、検出された候補領域に対して実施例1と同様、ラベルをひも付けている。さらに、同じラベルがひも付けられた候補領域が、0.1秒を超える時間を空けて隣り合う2つの時点の距離画像から検出され、かつ、その2つの時点の間隙に取得時点が属する距離画像から、そのラベルの候補領域が未検出の場合、検出漏れと判定する。
【0048】
図10は、本例の構成によるワークの追跡結果を例示する図である。同図では、横方向に時間が規定されており、時点tが最新の距離画像の取得時点で、時点t-29が同図中に示された時点のうちで最古の距離画像の取得時点である。距離画像の取得周期は、0.1秒なので、時点t-29から時点tに至る経過時間は3.0秒となる。同図中の○印は、対応するラベルに係る候補領域が検出された距離画像であることを示している。△印は、対応するラベルに係る候補領域の検出漏れが生じたと判定された距離画像であることを示している。
【0049】
図10では、タイミングをずらして3つのワークが追跡されている。ラベルL1は、時点t-20で追跡が完了したワークに対応している。同図中の〇印は、ラベルL1がひも付けられた候補領域が検出された距離画像の取得時点に付されている。△印は、ラベルL1の候補領域の検出漏れと判定された距離画像の取得時点に付されている。なお、追跡が完了したときの候補領域の位置が、コンベア機構の水平セクションの端部、スロープ台側の末端である場合、そのワークについて、ショットブラスト装置から排出されたと判断すると良い。
【0050】
図10中、ラベルL3は、時点t-11の距離画像において初めて検出され、最新の時点tにおいて候補領域の検出が継続中のワークに対応している。ラベルL3のワークは、コンベア機構の水平セクションをスロープ台に向けて搬送途中のワークである可能性が高い。
【0051】
図10中、ラベルL2は、時点t-29から時点tの期間内に、候補領域の検出が開始されて排出までが確認されたワークに対応している。このワークは、時点t-27で取得された距離画像で初めて候補領域が検出され、その後、取得時点t-6で取得された距離画像にて最後に候補領域が検出されて、スロープ台への搬出が確認されたものである。
【0052】
本例の構成では、追跡部としてのCPU(メインユニット)が、図10の各ラベルに係るワークを追跡した結果が有効であるか無効であるかの判断をする。CPUは、一連の距離画像(エリア情報)を構成する距離画像の取得回数のうち、ひも付けられたラベルが同じ候補領域が検出された距離画像の取得回数の比率に関する閾値処理により、上記の判断を実行する。
【0053】
例えば図10中のラベルL2の場合、対応する候補領域が初めて検出された時点がt-27の時点であり、最後に検出された時点、すなわち排出(搬出)が確認された時点がt-6の時点である。時点t-27から時点t-6に至るまでの距離画像の取得回数は22回である。その22回の取得回数のうち、ラベルL2に係る候補領域が検出された距離画像(同図中の○印)の取得回数が16回であるとすれば、上記の比率は、16/22≒0.73となる。例えば、この比率が70%以上あるいは超である場合、ラベルL2に係るワークの追跡結果を有効と判定できる。なお、比率に関する閾値は適宜、変更すると良い。
【0054】
ワークの移動の追跡結果の有効、無効を判定すれば、追跡結果を信頼するか否かの判断が可能となり、追跡結果を利用し易くなる。さらに、上記の比率を、追跡結果の信頼性の度合いを表す指標として利用することも良い。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0055】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0056】
1 システム
10 メインユニット(領域検出部、追跡部、検出漏れ判定部)
100 ワーク
101 CPU
105 GPU
12 ToFカメラ(取得部)
5 ショットブラスト装置(装置)
50 コンベア機構
55 スロープ台
56 表示ランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10