(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】置局設計支援方法及び置局設計支援装置
(51)【国際特許分類】
H04W 16/18 20090101AFI20241023BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20241023BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20241023BHJP
【FI】
H04W16/18
H04W16/28
H04W92/20 110
(21)【出願番号】P 2022577878
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2021002836
(87)【国際公開番号】W WO2022162786
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】俊長 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和人
(72)【発明者】
【氏名】北 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鬼沢 武
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-094425(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194757(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168110(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/008180(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0124520(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線局を無線接続して通信経路を形成する通信ネットワークの置局設計を支援するコンピュータによる置局設計支援方法であって、
前記無線局が備える指向性アンテナによる電波の放射方向に基づいて、前記通信経路において前記無線局と隣り合わない他の無線局である非隣接無線局を置局する置局設計ステップ
を有し、
前記置局設計ステップにおいて、前記非隣接無線局が前記放射方向に配置された場合に、前記非隣接無線局が受信する受信電波の受信電力と前記受信電波に干渉する前記電波の干渉電力との差が所定値未満であるならば前記非隣接無線局を前記放射方向に置局せず、前記差が所定値以上であるならば前記非隣接無線局を前記放射方向に置局する
置局設計支援方法。
【請求項2】
前記置局設計ステップにおいて、前記通信経路を分岐させる無線局である分岐無線局が前記通信ネットワークに含まれる場合、前記通信経路において前記無線局に対して前記分岐無線局を間に挟んで配置される前記非隣接無線局を、前記放射方向とは異なる方向に置局するか、又は、前記電波の周波数とは異なる周波数の電波を用いて通信を行う無線局とする
請求項1に記載の置局設計支援方法。
【請求項3】
前記放射方向は、前記電波の半値角の範囲内の方向である
請求項1
又は2に記載の置局設計支援方法。
【請求項4】
前記無線局は、複数の前記指向性アンテナを用いて前記電波を送受信し、各指向性アンテナからの前記電波によって伝送されるデータ信号に対してそれぞれ異なる巡回遅延量を付与する周期的遅延ダイバーシティを行う
請求項1から
3のうちいずれか一項に記載の置局設計支援方法。
【請求項5】
複数の無線局を無線接続して通信経路を形成する通信ネットワークの置局設計を支援する置局設計支援装置であって、
前記無線局が備える指向性アンテナによる電波の放射方向に基づいて、前記通信経路において前記無線局と隣り合わない他の無線局である非隣接無線局を置局する置局設計部
を備え、
前記置局設計部は、前記非隣接無線局が前記放射方向に配置された場合に、前記非隣接無線局が受信する受信電波の受信電力と前記受信電波に干渉する前記電波の干渉電力との差が所定値未満であるならば前記非隣接無線局を前記放射方向に置局せず、前記差が所定値以上であるならば前記非隣接無線局を前記放射方向に置局する
置局設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置局設計支援方法及び置局設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な無線通信システムの普及に伴い、周波数資源の逼迫が課題となっている。限りある周波数資源を有効活用するためには、無線局間で生じる電波の干渉を考慮したシステム設計が要求される。干渉評価を実施するためには、干渉を生じさせる与干渉局による無線送信に関する情報、干渉を受ける被干渉局による無線受信に関する情報、及び、与干渉局から被干渉局までの距離やその他の環境条件によって減衰する干渉波の伝搬損失に基づいて干渉計算が行われる必要がある。
【0003】
また、ルーラルエリアにおける通信手段として、マルチホップを用いた無線通信(以下、「マルチホップ無線通信」という。)が考えられる。例えば基地局と端末局との間の距離が長く両局間で直接に無線通信を行うことができない場合であっても、少なくとも1つの中継局が電波の伝送を中継して無線リンク経路が構築されることで、両局間での通信が可能になる。このようなマルチホップ無線通信を用いる場合、電波の干渉等を考慮して基地局及び中継局を適切な位置に設置する必要がある。以下、基地局及び中継局等の無線局の配置を設計することを「置局設計」という。
【0004】
昨今、事業者による置局設計を支援する置局設計支援技術の検討が進められている。例えば、特許文献1に記載の置局設計方法は、無指向性アンテナでは集約局又は既収容局との無線通信を行うことができない未収容局において指向性アンテナを適用することで、両局間の無線通信を可能にする。さらに、指向性アンテナのアンテナ方位角が適切に選択されることにより、ロバスト性及び信頼性が高く、かつ、設備コストが低くなるような、より効果的なマルチホップ無線通信の実現が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6009637号公報
【文献】特開2004-023726号公報
【文献】特開2002-010340号公報
【文献】特開2019-169815号公報
【文献】特開2005-341317号公報
【文献】特開2010-093703号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】田岡秀和,永田聡,武田和晃,柿島祐一,シェ ショウミン,楠目勝利,“LTE-AdvancedにおけるMIMOおよびセル間協調送受信技術”,NTT DOCOMO テクニカル・ジャーナル,Vol.18 No.2,pp.22-30,2010年7月
【文献】石橋功至,落合秀樹,河野隆二,“巡回遅延ダイバーシティを用いた符号化DAPSK変調の性能解析”,情報理論とその応用シンポジウム予稿集,29(2),pp.783-786,2006年11月
【文献】佐々木自然,村田英一,山本高至,吉田進,“CDDを用いた協力マルチホップ無線ネットワークにおける遅延時間分散制御方式の一検討”,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.108 No.117,RCS2008-20,pp.25-30,2008年6月
【文献】河内涼子,武田和晃,安達文幸,“周波数領域等化を用いるDS-CDMAへのCyclic Delay Transmit Diversityの適用効果”,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.104 No.680,RCS2004-392,pp.13-18,2005年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マルチホップ無線通信において、例えば単一の無線周波数チャネルのみが用いられる場合、ある中継局において受信されるべき電波が、無線リンク経路上で当該中継局と隣り合っていない無線局(例えば、無線リンク経路上で2つ前の無線局等)から送信された電波による電波干渉の影響を受けることがある。これにより、マルチホップ無線通信が正常に行われない場合がある。このような電波干渉を回避するため、マルチホップ無線通信では、中継局が、中継元である無線局(すなわち、無線リンク経路上で1つ前の無線局)からの電波の受信と中継先である無線局(すなわち、無線リンク経路上で1つ後の無線局)への電波の送信とにおいて、異なる無線周波数チャネルを用いるようにすることがある。しかしながら、無線リンク経路において複数の無線周波数チャネルが割り当てられると、中継局と当該中継局に収容される端末局との間の無線通信に対して割り当てることができる無線周波数チャネルの個数が少なくなってしまう。これにより、収容可能な端末局数が限定されてしまうという課題がある。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、中継局間で用いられる無線周波数チャネルの個数を増大させることなくマルチホップ無線通信を可能にする置局設計を支援することができる置局設計支援方法及び置局設計支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、複数の無線局を無線接続して通信経路を形成する通信ネットワークの置局設計を支援するコンピュータによる置局設計支援方法であって、前記無線局が備える指向性アンテナによる電波の放射方向に基づいて、前記通信経路において前記無線局と隣り合わない他の無線局である非隣接無線局を置局する置局設計ステップを有する置局設計支援方法である。
【0010】
また、本発明の一態様は、複数の無線局を無線接続して通信経路を形成する通信ネットワークの置局設計を支援する置局設計支援装置であって、前記無線局が備える指向性アンテナによる電波の放射方向に基づいて、前記通信経路において前記無線局と隣り合わない他の無線局である非隣接無線局を置局する置局設計部を備える置局設計支援装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、中継局間で用いられる無線周波数チャネルの個数を増大させることなくマルチホップ無線通信を可能にする置局設計を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】マルチホップ無線通信を行う無線通信システム5aの構成例を示す図である。
【
図2】マルチホップ無線通信を行う無線通信システム5aの構成例を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5bの構成例を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態における置局設計支援装置1の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態における置局設計支援装置1の動作を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1の実施形態における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5cの構成例を示す図である。
【
図7】実在のルーラルエリアに対する置局設計の結果の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第1の実施形態の中継局において用いられる指向性アンテナのアンテナパターンの一例を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態の中継局において用いられる無指向性アンテナのアンテナパターンの一例を示す図である。
【
図10】マルチホップ無線通信を行う無線通信システム5eの構成例を示す図である。
【
図11】マルチホップ無線通信を行う無線通信システム5eの構成例を示す図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態の変形例1における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5fの構成例を示す図である。
【
図13】本発明の第1の実施形態の変形例1における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5gの構成例を示す図である。
【
図14】実在のルーラルエリアに対する置局設計の結果の一例を示す図である。
【
図15】マルチホップ無線通信を行う無線通信システム5iの構成例を示す図である。
【
図16】本発明の第1の実施形態の変形例2における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5jの構成例を示す図である。
【
図17】本発明の第2の実施形態における置局設計支援装置1による中継局の候補位置の選定について説明するための図である。
【
図18】本発明の第2の実施形態における置局設計支援装置1の動作を示すフローチャートである。
【
図19】本発明の第2の実施形態における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5lの構成例を示す図である。
【
図20】送受信ダイバーシティを用いない場合の無線通信を説明するための図である。
【
図21】送受信ダイバーシティを用いる場合の無線通信を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
以下に説明する各実施形態及び各実施形態の変形例では、より少ない無線周波数チャネルでマルチホップ無線通信を可能にさせる中継局の置局設計支援方法及び置局設計支援装置ついて説明する。ここでは一例として、通信インフラの整備が遅れているルーラルエリアにおいてマルチホップ無線通信を可能にする置局設計支援を行う場合について説明する。また、ここでは一例として、中継局は電柱に設置されるものとし、収容される端末局は建物(例えば住戸等)の壁面に設置されるものとする。そのため、以下に説明する置局設計において、中継局の設置候補位置は電柱の位置から選択され、端末局の設置候補位置は建物の壁面の位置から選択される。
【0014】
なお、以下に説明する各実施形態及び各実施形態の変形例では、図面を見易くするため、マルチホップ無線通信を実現する無線通信システムが備える中継局の個数を3~4個程度としている。但し、中継局の個数は2つ以上であるならば、いくつであっても構わない。
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0016】
図1及び
図2は、マルチホップ無線通信を行う無線通信システム5aの構成例を示す図である。
図1は地面と水平の方向から見た無線通信システム5aを表しており、
図2は上空から見た無線通信システム5aを表している。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、無線通信システム5aは、中継局50a-1と、中継局50a-2と、中継局50a-3とを含んで構成される。また、中継局50a-1、中継局50a-2、及び中継局50a-3は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50a-1、中継局50a-2、及び中継局50a-3は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
【0018】
以下、中継局50a-1、中継局50a-2、及び中継局50a-3を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50a」ということがある。
【0019】
中継局50a-1は、基地局から送信された電波を受信して中継局50a-2へ向けて電波を送信することにより、基地局から端末局へ伝送される無線の電波を中継する。また、中継局50a-1は、当該中継局50a-1が収容する端末局又は中継局50a-2から送信された電波を受信して基地局へ向けて電波を送信することにより、端末局から基地局へ伝送される無線の電波を中継する。
【0020】
中継局50a-2は、中継局50a-1から送信された電波を受信して中継局50a-3へ向けて電波を送信することにより、基地局から端末局へ伝送される無線の電波を中継する。また、中継局50a-2は、当該中継局50a-2が収容する端末局又は中継局50a-3から送信された電波を受信して中継局50a-1へ向けて電波を送信することにより、端末局から基地局へ伝送される無線の電波を中継する。
【0021】
中継局50a-3は、中継局50a-2から送信された電波を受信して端末局へ向けて電波を送信することにより、基地局から端末局へ伝送される無線の電波を中継する。また、中継局50a-3は、当該中継局50a-3が収容する端末局から送信された電波を受信して中継局50a-2へ向けて電波を送信することにより、端末局から基地局へ伝送される無線の電波を中継する。
【0022】
したがって、無線通信システム5aにおける無線リンク経路(通信経路)は、基地局、中継局50a-1、中継局50a-2、中継局50a-3という順番となる経路、又はその逆の順番となる経路である。
【0023】
ここで、中継局50a-1と中継局50a-2との間で送受信される電波ra-1と、中継局50a-2と中継局50a-3との間で送受信される電波ra-2とでは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図1及び
図2では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い実線の両矢印で表している。
【0024】
図1及び
図2では、中継局50a-1から中継局50a-2へ向けて電波ra-1を送信する送信アンテナのアンテナ指向性の範囲のみが、アンテナ指向性範囲da-1として示されている。
図1及び
図2に示されるように、中継局50a-2だけでなく、中継局50a-3もアンテナ指向性範囲da-1の範囲内に位置している。また、前述の通り、電波ra-1と電波ra-2とは同一の無線周波数チャネルが用いられている。そのため、中継局50a-3が中継局50a-2から送信された電波ra-2を受信する場合、電波ra-2と電波ra-1とが電波干渉する。これにより、中継局50a-2から中継局50a-3への通信が妨げられてしまうことがある。
【0025】
なお、ここでは電波の送信の場合について説明したが、受信の場合も同様である。例えば、中継局50a-1の受信アンテナのアンテナ指向性の範囲が、
図1及び
図2に示されるアンテナ指向性範囲da-1であるならば、中継局50a-1が中継局50a-2から送信された電波ra-1を受信する場合、電波ra-1と電波ra-2とが電波干渉する。これにより、中継局50a-2から中継局50a-1への通信が妨げられてしまうことがある。
【0026】
このように、中継局50aが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で隣り合う他の中継局50a(隣接無線局)だけでなく、無線リンク経路上で隣り合わない他の中継局50a(非隣接無線局)(例えば、無線リンク経路上で2つ隣の中継局50a)が存在する場合において、単一の無線周波数チャネルの電波が用いられると、電波干渉が生じ、基地局と端末局との間の通信が妨げられてしまうことがある。
【0027】
以下に説明する、第1の実施形態における置局設計支援装置1は、電波干渉が生じない、又は、電波干渉の影響が小さい無線通信システムとなるように、中継局50aの置局設計を支援する。
【0028】
図3は、本発明の第1の実施形態における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5bの構成例を示す図である。
図3は上空から見た無線通信システム5bを表している。
【0029】
図3に示されるように、無線通信システム5bは、中継局50b-1と、中継局50b-2と、中継局50b-3とを含んで構成される。また、中継局50b-1、中継局50b-2、及び中継局50b-3は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50b-1、中継局50b-2、及び中継局50b-3は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
【0030】
以下、中継局50b-1、中継局50b-2、及び中継局50b-3を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50b」ということがある。
【0031】
無線通信システム5bにおける無線リンク経路は、基地局、中継局50b-1、中継局50b-2、中継局50b-3という順番となる経路、又はその逆の順番となる経路である。
【0032】
ここで、中継局50b-1と中継局50b-2との間で送受信される電波rb-1と、中継局50b-2と中継局50b-3との間で送受信される電波rb-2とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図3では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い実線の両矢印で表している。
【0033】
図3では、中継局50b-1から中継局50b-2へ向けて電波rb-1を送信する送信アンテナのアンテナ指向性の範囲(電波rb-1の放射方向)のみが、アンテナ指向性範囲db-1として示されている。
図3に示されるように、中継局50b-2はアンテナ指向性範囲db-1の範囲内に位置しているが、中継局50b-3はアンテナ指向性範囲db-1の範囲外に位置している。そのため、電波rb-1と電波rb-2とは同一の無線周波数チャネルが用いられているものの、中継局50b-3が中継局50b-2から送信された電波rb-2を受信する場合に、電波rb-2と電波rb-1とが電波干渉しない。これにより、中継局50b-2から中継局50b-3への通信が正常に行われる。
【0034】
なお、ここでは電波の送信の場合について説明したが、受信の場合も同様である。例えば、中継局50b-1の受信アンテナのアンテナ指向性の範囲が、
図3に示されるアンテナ指向性範囲db-1であるならば、中継局50b-1が中継局50b-2から送信された電波rb-1を受信する場合に、電波rb-1と電波rb-2とが電波干渉しない。これにより、中継局50b-2から中継局50b-1への通信が正常に行われる。
【0035】
このように、第1の実施形態における置局設計支援装置1は、中継局50bが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で隣り合う他の中継局50b以外の、無線リンク経路上で隣り合わない他の中継局50b(例えば、無線リンク経路上で2つ隣の中継局50b)が存在することのないように、置局設計を行う。これにより、無線リンク経路において単一の無線周波数チャネルの電波が用いられる場合であっても、電波干渉が生じることなく、基地局と端末局との間の通信が正常に行われる。
【0036】
[置局設計支援装置の機能構成]
図4は、本発明の第1の実施形態における置局設計支援装置1の機能構成を示すブロック図である。置局設計支援装置1は、例えば汎用コンピュータ等の情報処理装置である。
【0037】
図4に示されるように、置局設計支援装置1は、制御部100と、記憶部101と、操作入力部102と、出力部103と、設計範囲指定部104と、端末局位置特定部105と、設備情報取得部106と、中継局位置選定部107と、電波干渉評価部108とを含んで構成される。
【0038】
制御部100は、置局設計支援装置1が備える上記の各機能部の動作を制御する。制御部100は、例えば、記憶部101が記憶するプログラムを読み出して実行することにより、上記の各機能部を備える装置として置局設計支援装置1を機能させる。制御部100は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。
【0039】
記憶部101は、各種のデータ及びプログラム等を記憶する。記憶部101は、例えば、地図データ、置局設計の結果データ、及び置局設計の処理において用いられる一時データ等を記憶する。また、記憶部101は、例えば、基地局、中継局、及び端末局がそれぞれ備えるアンテナの性能を示す情報等を記憶する。ここでいうアンテナの性能とは、例えば、出力、通信可能距離、指向性、及び受信性能等のアンテナ特性である。また、記憶部101は、例えば、基地局の位置を示す情報を記憶する。なお、記憶部101は、端末局の位置を示す情報を記憶していてもよい。
【0040】
記憶部101は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、及びHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせを含んで構成される。
【0041】
操作入力部102は、ユーザによる操作入力を受け付ける。操作入力部102は、例えば、入力ボタン、キーボード、及びマウス等を含んで構成される。
【0042】
出力部103は、各種の情報を出力する。出力部103は、例えば置局設計の結果データ等を表示する。置局設計の結果データとは、例えば、選定された無線リンク経路、及び中継局の設置候補位置を示すデータである。出力部103は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置を含んで構成される。なお、出力部103は、外部の装置へ各種の情報を出力する通信インターフェースであってもよい。
【0043】
なお、操作入力部102と出力部103とは、例えばタッチパネル等の入力機能と出力機能とが一体化された部材であってもよい。
【0044】
設計範囲指定部104は、例えば記憶部101から地図データを読み出す。設計範囲指定部104は、読み出された地図データにおいて、例えば、操作入力部102が置局設計支援装置1のユーザの操作を受けて出力する設計範囲を示す情報に基づいて、例えば矩形形状の範囲を選択する。設計範囲指定部104は、選択された範囲を設計対象エリアとして指定する。
【0045】
端末局位置特定部105は、設計対象エリア内の地図データから、建物の位置及び輪郭(又は壁面)を示す情報を建物ごとに抽出する。端末局位置特定部105は、抽出された情報に基づいて、例えば建物の壁面の位置(すなわち、端末局の設置候補位置)を特定する。置局設計支援装置1は、特定された壁面の位置を、端末局の設置位置と見なして後段の処理を行う。なお、端末局の設置位置を示す情報が入手可能である場合には、端末局位置特定部105は、当該情報を用いて端末局の設置位置を特定してもよい。
【0046】
設備情報取得部106は、例えば外部の装置等から設備情報を取得する。ここでいう設備情報とは、中継局50bの設置候補位置となる設備(例えば電柱)の位置を示す情報を含む情報である。
【0047】
中継局位置選定部107は、中継局50bの全ての設置候補位置の中から、無線リンク経路として評価対象とする中継局50bの設置候補位置を選定する。例えば、中継局位置選定部107は、端末局の設置位置と、電柱の位置と、端末局と中継局50bとの通信可能距離等とに基づいて、中継局50bを設置する少なくもとも1つの電柱を選択する。例えば、中継局位置選定部107は、設計対象エリア内の全ての端末局の設置位置をより少ない個数の中継局50bによってカバーできるように、中継局50bを設置する電柱を選択する。
【0048】
電波干渉評価部108は、基地局の位置と、中継局位置選定部107によって選定された中継局50bの設置候補位置とに基づいて、無線リンク経路を特定する。電波干渉評価部108は、特定された無線リンク経路が、所定の条件を満たしているか否かを判定する。ここでいう所定の条件とは、各中継局50bが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で隣り合っていない他の中継局50bの設置位置が含まれていないという条件である。
【0049】
制御部100は、電波干渉評価部108によって所定の条件が見たされていると判定された場合、無線リンク経路となる中継局50bの設置位置を示す情報を出力させるように出力部103を制御する。
【0050】
一方、制御部100は、電波干渉評価部108によって所定の条件が見たされていないと判定された場合、中継局50bの設置候補位置を再選定させるように中継局位置選定部107を制御する。また、制御部100は、選定可能な中継局50bの設置候補位置が他に存在しない場合、例えば、無線リンク経路において所定の条件を満たさない箇所を示す情報を出力させるように出力部103を制御する。なお、制御部100は、所定の条件を満たす無線リンク経路が存在しないことを示す情報を出力させるように出力部103を制御してもよい。
【0051】
[置局設計支援装置の動作]
以下、置局設計支援装置1の動作の一例について説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態における置局設計支援装置1の動作を示すフローチャートである。本フローチャートが示す置局設計支援装置1の動作は、例えば、置局設計支援装置1のユーザの操作を受けて、操作入力部102から置局設計の開始指示が出力された際に開始される。
【0052】
設計範囲指定部104は、地図データを読み出し、操作入力部102から出力された設計範囲を示す情報に基づいて、例えば矩形形状の範囲を選択する。設計範囲指定部104は、選択された範囲を設計対象エリアとして指定する(ステップS101)。
【0053】
端末局位置特定部105は、設計対象エリア内の地図データから、建物の位置及び輪郭(又は壁面)を示す情報を建物ごとに抽出する。端末局位置特定部105は、抽出された情報に基づいて建物の壁面の位置を特定し、端末局の設置位置を特定する(ステップS102)。なお、ここでいう端末局の設置位置の特定とは、端末局の設置位置と見なす位置を決定することであってもよい。
【0054】
設備情報取得部106は、例えば外部の装置等から、中継局50bの設置候補位置を選定するための設備情報を取得する(ステップS103)。
【0055】
中継局位置選定部107は、端末局の設置位置と、設備情報と、端末局と中継局50bとの通信可能距離等とに基づいて、中継局50bの少なくとも1つの設置候補位置を選定する(ステップS104)。
【0056】
電波干渉評価部108は、基地局の位置と、中継局位置選定部107によって選定された中継局50bの設置候補位置とに基づいて、無線リンク経路を特定する。電波干渉評価部108は、特定された無線リンク経路に含まれる各中継局50bが、所定の条件を満たしているか否かを順に判定する(ステップS105)。なお前述の通り、所定の条件とは、各中継局50bが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で隣り合っていない他の中継局50bの設置候補位置が含まれていないという条件である。
【0057】
無線リンク経路に含まれる中継局50bが所定の条件を満たしている場合(ステップS106・Yes)、電波干渉評価部108は、無線リンク経路に含まれる次の中継局50bについて、所定の条件を満たしているか否かの判定を行う(ステップS106)。
【0058】
一方、無線リンク経路に含まれる中継局50bが、所定の条件を満たしていない場合(ステップS106・No)、中継局位置選定部107は、選定可能な中継局50bの設置候補位置が他にあるか否かを確認する(ステップS107)。
【0059】
選定可能な中継局50bの設置候補位置が他にある場合(ステップS107・Yes)、中継局位置選定部107は、中継局50bの他の設置候補位置を再選定する(ステップS108)。電波干渉評価部108は、設置候補位置が再選定された中継局50bについて、所定の条件を満たしているか否かの判定を行う(ステップS106)。
【0060】
一方、選定可能な中継局50bの設置候補位置が他にない場合(ステップS107・No)、制御部100は、無線リンク経路において所定の条件を満たさない箇所を示す情報を出力させるように出力部103を制御する(ステップS109)。
【0061】
一方、無線リンク経路の全ての中継局50bが所定の条件を満たしている場合(ステップS105・Yes)、制御部100は、無線リンク経路となる中継局50bの設置候補位置を示す情報を出力させるように出力部103を制御する(ステップS110)。以上で
図5のフローチャートが示す置局設計支援装置1の動作が終了する。
【0062】
置局設計支援装置1が上記のように置局設計を行うことにより、全ての中継局において上記の所定の条件が満たされる無線リンク経路が、複数導出されることがある。この場合、置局設計支援装置1は、複数導出された無線リンク経路の中から、スループットが最大となる無線リンク経路をさらに選定するようにしてもよい。あるいは、置局設計支援装置1は、複数導出された無線リンク経路の中から、通信遅延が最小となる無線リンク経路をさらに選定するようにしてもよい。これにより、置局設計支援装置1は、電波干渉を回避しつつ、スループットを最大化又は通信遅延を最小化させる無線リンク経路を特定することができる。なお、導出された無線リンク経路におけるスループット又は通信遅延を推定する方法については、任意の従来技術を用いることができる。
【0063】
ここまで、中継局の個数が3つである場合について説明したが、4つ以上であっても同様に電波干渉の回避が可能である。以下、一例として、中継局が4つである場合について説明する。
【0064】
図6は、本発明の第1の実施形態における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5cの構成例を示す図である。
図6は上空から見た無線通信システム5cを表している。
【0065】
図6に示されるように、無線通信システム5cは、中継局50c-1と、中継局50c-2と、中継局50c-3と、中継局50c-4とを含んで構成される。また、中継局50c-1、中継局50c-2、中継局50c-3、及び中継局50c-4は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50c-1、中継局50c-2、中継局50c-3、及び中継局50c-4は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
【0066】
以下、中継局50c-1、中継局50c-2、中継局50c-3、及び中継局50c-4を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50c」ということがある。
【0067】
無線通信システム5cにおける無線リンク経路は、中継局50c-1、中継局50c-2、中継局50c-3、中継局50c-4という順番となる経路、又はその逆の順番となる経路である。
【0068】
ここで、中継局50c-1と中継局50c-2との間で送受信される電波rc-1と、中継局50c-2と中継局50c-3との間で送受信される電波rc-2と、中継局50c-3と中継局50c-4との間で送受信される電波rc-3とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図6では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い実線の両矢印で表している。
【0069】
図6では、中継局50c-1から中継局50c-2へ向けて電波rc-1を送信する送信アンテナのアンテナ指向性の範囲のみが、アンテナ指向性範囲dc-1として示されている。
図6に示されるように、中継局50c-2はアンテナ指向性範囲dc-1の範囲内に位置しているが、中継局50c-3及び中継局50c-4はアンテナ指向性範囲dc-1の範囲外に位置している。
【0070】
そのため、電波rc-1と電波rc-2とは同一の無線周波数チャネルが用いられているものの、中継局50c-3が中継局50c-2から送信された電波rc-2を受信する場合に、電波rc-2と電波rc-1とが電波干渉しない。これにより、中継局50c-2から中継局50c-3への通信が正常に行われる。また同様に、電波rc-1と電波rc-3とは同一の無線周波数チャネルが用いられているものの、中継局50c-4が中継局50c-3から送信された電波rc-3を受信する場合に、電波rc-3と電波rc-1とが電波干渉しない。これにより、中継局50c-3から中継局50c-4への通信が正常に行われる。
【0071】
本実施形態における置局設計支援装置1は、例えば
図6に示されるように、中継局50cの各アンテナのアンテナ指向性の範囲に無線リンク経路上で隣り合っていない他の中継局50cが互いに含まれないように、各中継局50cの置局設計を行う。これにより、無線リンク経路上で単一の無線周波数チャネルが用いられる場合であっても、電波干渉の発生の防止又は低減が可能になる。
【0072】
なお、
図6に示される4つの中継局50cの配置は、
図7に示される実在のルーラルエリアに対して行われた置局設計の結果と凡そ一致している。
【0073】
図7は、実在のルーラルエリアに対する置局設計の結果の一例を示す図である。
図7には、実在するルーラルエリアの地図データ上に、置局設計された無線通信システム5dが示されている。
【0074】
図7に示されるように、無線通信システム5dは、中継局50d-1と、中継局50d-2と、中継局50d-3と、中継局50d-4とを含んで構成される。また、中継局50d-1、中継局50d-2、中継局50d-3、及び中継局50d-4は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50d-1、中継局50d-2、中継局50d-3、及び中継局50d-4は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
以下、中継局50d-1、中継局50d-2、中継局50d-3、及び中継局50d-4を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50d」ということがある。
【0075】
図7において、実線の小さな円は電柱(すなわち、中継局50dの設置候補位置)を示す。また、破線の4つの円は、各中継局50dがそれぞれ端末局と通信可能な範囲を表している。破線の4つの円の中心に位置する電柱に、中継局50dがそれぞれ設置されている。図示されるように、この4つの円からなる範囲は、
図7に示される地図データ内の全ての建物の少なくとも1つの壁面の位置(すなわち、端末局の設置位置)をカバーしている。このように、設計対象エリアの全ての端末局が4つの中継局50dのいずれかに収容可能であるように、中継局50dが配置されている。
【0076】
図7のように置局設計された無線通信システム5dにおいて、中継局50d-1から中継局50d-2への方向と、中継局50d-2から中継局50d-3への方向との間の角度は、66度である。また、中継局50d-2から中継局50d-3への方向と、中継局50d-3から中継局50d-4への方向との間の角度は、70度である。
【0077】
また、中継局50d-1から中継局50d-2への方向と、中継局50d-1から中継局50d-3への方向との間の角度は、31度である。また、中継局50d-2から中継局50d-3への方向と、中継局50d-2から中継局50d-4への方向との間の角度は、35度である。また、中継局50d-3から中継局50d-2への方向と、中継局50d-3から中継局50d-1への方向との間の角度は、34度である。また、中継局50d-4から中継局50d-3への方向と、中継局50d-4から中継局50d-2への方向との間の角度は、33度である。
【0078】
これらの角度が、いずれも各中継局50dで用いられるアンテナのアンテナパターンの半値幅θBW以上であるならば、各中継局50dは、無線リンク経路上で隣り合っていない他の中継局50dから送出される電波による電波干渉を回避することができる。半値幅θBWの詳細については、後述される。
【0079】
なお、
図5に示されるフローチャートが示す置局設計支援装置1のステップS101の動作は、置局設計の対象とする設計対象エリアを指定する動作であるが、これは例えば、
図7に示される地図データの範囲を指定する動作に相当する。また、ステップS103の動作は、設備情報を取得する動作であるが、これは例えば、電柱等の設備の位置を示す設備情報を取得して、
図7に示される地図データ上に(実線の小さな円で)プロットする動作に相当する。
【0080】
なお、
図7に示されるように、実際には道路に沿って多数の電柱が存在する。そのため、
図5に示されるフローチャートが示す置局設計支援装置1のステップS104の動作において、中継局50dの設置候補位置を絞り込むための制約条件が加えられていることが望ましい。
【0081】
ここでいう制約条件とは、例えば、建物が密集する集落の位置を考慮して、中継局50dの設置候補位置を選定することである。すなわち、制約条件とは、
図7において破線の円で示される中継局50dのカバーエリア内により多くの建物が含まれるように(すなわち、より多くの端末局が収容されるように)中継局50dの設置候補位置を選定することである。これは言い換えると、より多くの端末局から通信可能な位置を中継局50dの設置候補位置として選定することに等しいと言える。
【0082】
置局設計支援装置1は、このような条件を満たす円の中心近くに存在する電柱の位置を、中継局50dの設置候補位置として選定するようにしてもよい。このように選定された中継局50dの設置候補位置は、凡そ各集落の中心に近い位置となる。
【0083】
なお、
図7に示される実在のルーラルエリアに対する置局設計の結果例は、上記の制約条件に基づいて中継局50d-2及び中継局50d-3の設置候補位置の絞り込みを行い、置局設計がなされたものである。
【0084】
前述の通り、本実施形態における置局設計支援装置1は、中継局50dが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で隣り合わない他の中継局50dが存在することのないように置局設計を行う。ここでいうアンテナ指向性の範囲内とは、例えば、用いられる指向性アンテナでのアンテナパターンにおいて利得が3[dB]低下する半値角となる角度以内であることである。例えば半値角が10度の指向性アンテナの場合、アンテナ指向性の範囲内とは、自局から無線リンク経路上で隣り合う中継局50dへの方向に対して、その半値角である10度以内の方向に納まる範囲である。
【0085】
以下、本実施形態の中継局間の無線通信において用いられる指向性アンテナの一例について説明する。
【0086】
図8は、本発明の第1の実施形態の中継局において用いられる指向性アンテナのアンテナパターンの一例を示す図である。ここでは、指向性アンテナの一例として、RADWIN社製の4.9[GHz]帯無線の10度の指向性アンテナを挙げる。
図8には、当該指向性アンテナの水平方向のアンテナパターンが示されている。
【0087】
図8に示されるように、この指向性アンテナの水平方向のアンテナパターンでは、正面方向(0度)から±20度を境として利得差が16[dB]を超える。また、
図8に示されるように、この指向性アンテナの水平方向のアンテナパターンでは、正面方向(0度)のピーク利得から-3[dB]となる半値幅(半値角)θ
BWは、正面方向(0度)から±5度(10度)となっている。なお、
図8においては、半値幅(半値角)θ
BW以内の範囲は、網掛けで示された範囲である。
【0088】
前述の通り、
図7のように置局設計された無線通信システム5dにおいて、中継局50d-1から中継局50d-2への方向と、中継局50d-2から中継局50d-3への方向との間の角度は、66度である。また、中継局50d-2から中継局50d-3への方向と、中継局50d-3から中継局50d-4への方向との間の角度は、70度である。
図8に示される指向性アンテナのアンテナパターンでは、正面方向(0度)から66度及び70度の角度の場合、利得差は26[dB]及び34[dB]である。
【0089】
本実施形態における置局設計支援装置1によれば、マルチホップ無線通信を実現する無線通信システムの置局設計において、中継局で電波の送受信方向が変わる際に利得差が所定値以上となるような位置に中継局が配置される。すなわち、利得差が所定値未満となることがないように各中継局が配置される。これにより、電波干渉の防止又は低減がなされる。
【0090】
次に、本実施形態における、中継局と端末局との間の無線通信において中継局側で用いられるアンテナの一例について説明する。本実施形態では、端末局との無線通信において、中継局側アンテナとして、無指向性のアンテナ(オムニアンテナ)が用いられる。
【0091】
図9は、本発明の第1の実施形態の中継局において用いられる無指向性アンテナのアンテナパターンの一例を示す図である。ここでは、無指向性アンテナの一例として、LigoWave社の4.9[GHz]帯屋外用無線ブリッジに用いられる7[dBi]Omniアンテナを挙げる。
図9には、当該無指向性アンテナの水平方向のアンテナパターンが示されている。
【0092】
このような無指向性アンテナが、中継局と端末局との間の無線通信において中継局側で用いられることで、当該中継局を中心とした同心円の範囲内に存在する端末局が、当該中継局によって収容される。但し、
図8に示されるような指向性アンテナのアンテナ指向性における正面方向の利得と比較して、無指向性アンテナの利得は低い値である。例えば、
図8に示される指向性アンテナの正面方向の利得は23[dBi]であるのに対し、
図9に示される無指向性アンテナの利得は7[dBi]である。
【0093】
しかしながら、無指向性アンテナは、いずれの方向に対しても、ほぼ同程度の利得となるため、端末局を収容する中継局の収容範囲の水平方向の形状は円形となる。そのため、無指向性アンテナは、中継局の周囲の複数の建物の壁面に設置された端末局を当該中継局によりまんべんなく収容する場合に適したアンテナといえる。
【0094】
なお、中継局間のマルチホップ無線通信に用いられる電波の無線周波数チャネルと、中継局と端末局との間の無線通信に用いられる電波の無線周波数チャネルとにおいて、異なる無線周波数チャネルが用いられることで、両者の無線通信における電波干渉の発生を回避することができる。
【0095】
以上説明したように、第1の実施形態では、無線リンク経路において単一の無線周波数チャネルが用いられる無線通信システムの置局設計を支援する置局設計支援装置1について説明した。置局設計支援装置1は、中継局が備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で隣り合わない他の中継局が存在することのないように置局設計を行う。このような構成を備えることにより、第1の実施形態における置局設計支援装置1は、中継局間で用いられる無線周波数チャネルの個数を増大させることなくマルチホップ無線通信を可能にする置局設計を支援することができる。
【0096】
(第1の実施形態の変形例1)
以下、本発明の第1の実施形態の変形例1について説明する。
【0097】
前述の第1の実施形態では、無線リンク経路において単一の無線周波数チャネルが用いられる場合について説明した。以下に説明する第1の実施形態の変形例1では、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルが交互に用いられる無線通信システムの置局設計を支援する置局設計支援装置について説明する。なお、ここでは一例として2つの無線周波数チャネルが用いられる構成について説明するが、これに限られるものではなく、3つ以上の無線周波数チャネルが交互に用いられる構成であってもよい。
【0098】
なお、第1の実施形態の変形例1における置局設計支援装置の機能構成を示すブロック図は、
図4に示される第1の実施形態における置局設計支援装置1の機能構成を示すブロック図と同様であるため、以下、各機能部に同一の符号を付して説明する。
【0099】
図10及び
図11は、マルチホップ無線通信を行う無線通信システム5eの構成例を示す図である。
図10は地面と水平の方向から見た無線通信システム5eを表しており、
図11は上空から見た無線通信システム5eを表している。
【0100】
図10及び
図11に示されるように、無線通信システム5eは、中継局50e-1と、中継局50e-2と、中継局50e-3と、中継局50e-4とを含んで構成される。また、中継局50e-1、中継局50e-2、中継局50e-3、及び中継局50e-4は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50e-1、中継局50e-2、中継局50e-3、及び中継局50e-4は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
【0101】
以下、中継局50e-1、中継局50e-2、中継局50e-3、及び中継局50e-4を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50e」ということがある。
【0102】
中継局50e-1は、基地局から送信された電波を受信して中継局50e-2へ向けて電波を送信することにより、基地局から端末局へ伝送される無線の電波を中継する。また、中継局50e-1は、当該中継局50e-1が収容する端末局又は中継局50e-2から送信された電波を受信して基地局へ向けて電波を送信することにより、端末局から基地局へ伝送される無線の電波を中継する。
【0103】
中継局50e-2は、中継局50e-1から送信された電波を受信して中継局50e-3へ向けて電波を送信することにより、基地局から端末局へ伝送される無線の電波を中継する。また、中継局50e-2は、当該中継局50e-2が収容する端末局又は中継局50e-3から送信された電波を受信して中継局50e-1へ向けて電波を送信することにより、端末局から基地局へ伝送される無線の電波を中継する。
【0104】
中継局50e-3は、中継局50e-2から送信された電波を受信して中継局50e-4へ向けて電波を送信することにより、基地局から端末局へ伝送される無線の電波を中継する。また、中継局50e-3は、当該中継局50e-3が収容する端末局又は中継局50e-4から送信された電波を受信して中継局50e-2へ向けて電波を送信することにより、端末局から基地局へ伝送される無線の電波を中継する。
【0105】
中継局50a-4は、中継局50a-3から送信された電波を受信して端末局へ向けて電波を送信することにより、基地局から端末局へ伝送される無線の電波を中継する。また、中継局50a-4は、当該中継局50a-4が収容する端末局から送信された電波を受信して中継局50a-3へ向けて電波を送信することにより、端末局から基地局へ伝送される無線の電波を中継する。
【0106】
したがって、無線通信システム5eにおける無線リンク経路は、基地局、中継局50e-1、中継局50e-2、中継局50e-3、中継局50e-4という順番となる経路、又はその逆の順番となる経路である。
【0107】
前述の通り、本変形例における無線通信システム5eでは、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルが交互に用いられる。すなわち、中継局50e-1と中継局50e-2との間で送受信される電波re-1と、中継局50e-3と中継局50e-4との間で送受信される電波re-3とでは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図10及び
図11では、この同一の無線周波数チャネル(電波re-1及び電波re-3)を、同一の太い実線の両矢印で表している。一方、中継局50e-2と中継局50e-3との間で送受信される電波re-2と、電波re-1及び電波re-3とでは、異なる無線周波数チャネルが用いられる。
図10及び
図11では、この異なる無線周波数チャネル(電波re-2のみ)を、太い破線の両矢印で表している。
【0108】
図10及び
図11では、中継局50e-1から中継局50e-2へ向けて電波re-1を送信する送信アンテナのアンテナ指向性の範囲のみが、アンテナ指向性範囲de-1として示されている。
図10及び
図11に示されるように、中継局50e-2だけでなく、中継局50e-3及び中継局50e-4もアンテナ指向性範囲de-1の範囲内に位置している。
【0109】
前述の通り、電波re-1と電波re-2とは異なる無線周波数チャネルが用いられている。そのため、中継局50e-3が中継局50e-2から送信された電波re-2を受信する場合、電波re-2と電波re-1とでは電波干渉が生じない。これにより、中継局50e-2から中継局50e-3への通信が妨げられることがない。
【0110】
一方、前述の通り、電波re-1と電波re-3とは同一の無線周波数チャネルが用いられている。そのため、中継局50e-4が中継局50e-3から送信された電波re-3を受信する場合、電波re-3と電波re-1とが電波干渉する。これにより、中継局50e-3から中継局50e-4への通信が妨げられてしまうことがある。
【0111】
図10及び
図11に示される例のように、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルが交互に用いられる無線通信システム5eであっても、無線リンク経路上で隣り合う中継局50eに向けられたアンテナのアンテナ指向性範囲de-1内に、(例えば3つ隣の)他の中継局50eが存在するような中継局50eの配置であるならば、電波干渉が生じうる。
【0112】
なお、ここでは電波の送信の場合について説明したが、受信の場合も同様である。例えば、中継局50e-1の受信アンテナのアンテナ指向性の範囲が、
図10及び
図11に示されるアンテナ指向性範囲de-1であるならば、中継局50e-1が中継局50e-2から送信された電波re-1を受信する場合、電波re-1と電波re-3とが電波干渉する。これにより、中継局50e-2から中継局50e-1への通信が妨げられてしまうことがある。
【0113】
このように、中継局50eが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で隣り合う他の中継局50eだけでなく、無線リンク経路上で隣り合わない他の中継局50e(例えば、無線リンク経路上で3つ隣の中継局50e)が存在する場合において、同一の無線周波数チャネルの電波が用いられると、電波干渉が生じ、基地局と端末局との間の通信が妨げられてしまうことがある。
【0114】
以下に説明する、第1の実施形態の変形例1における置局設計支援装置1は、電波干渉が生じない、又は、電波干渉の影響が小さい無線通信システムとなるように、中継局50fの置局設計を支援する。
【0115】
図12は、本発明の第1の実施形態の変形例1における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5fの構成例を示す図である。
図12は上空から見た無線通信システム5fを表している。
【0116】
図12に示されるように、無線通信システム5fは、中継局50f-1と、中継局50f-2と、中継局50f-3と、中継局50f-4とを含んで構成される。また、中継局50f-1、中継局50f-2、中継局50f-3、及び中継局50f-4は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50f-1、中継局50f-2、中継局50f-3、及び中継局50f-4は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
以下、中継局50f-1、中継局50f-2、中継局50f-3、及び中継局50f-4を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50f」ということがある。
【0117】
無線通信システム5fにおける無線リンク経路は、基地局、中継局50f-1、中継局50f-2、中継局50f-3、中継局50f-4という順番となる経路、又はその逆の順番となる経路である。
【0118】
ここで、中継局50f-1と中継局50f-2との間で送受信される電波rf-1と、中継局50f-3と中継局50f-4との間で送受信される電波rf-3とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図12では、この同一の無線周波数チャネル(電波rf-1及び電波rf-3)を、同一の太い実線の両矢印で表している。一方、中継局50f-2と中継局50f-3との間で送受信される電波rf-2と、電波rf-1及び電波rf-3とは、異なる無線周波数チャネルが用いられる。
図12では、この異なる無線周波数チャネル(電波rf-2のみ)を、太い破線の両矢印で表している。
【0119】
図12では、中継局50f-1から中継局50f-2へ向けて電波rf-1を送信する送信アンテナのアンテナ指向性の範囲のみが、アンテナ指向性範囲df-1として示されている。
図12に示されるように、中継局50f-2及び中継局50f-3はアンテナ指向性範囲df-1の範囲内に位置しているが、中継局50f-4はアンテナ指向性範囲df-1の範囲外に位置している。そのため、電波rf-1と電波rf-3とは同一の無線周波数チャネルが用いられているものの、中継局50f-4が中継局50f-3から送信された電波rf-3を受信する場合に、電波rf-3と電波rf-1とが電波干渉しない。これにより、中継局50f-3から中継局50f-4への通信が正常に行われる。
【0120】
また、
図12に示されるように、中継局50f-2及び中継局50f-3は、共にアンテナ指向性範囲df-1の範囲内に位置しているが、電波rf-1と電波rf-2とでは異なる無線周波数チャネルが用いられているため、中継局50f-3が中継局50f-2から送信された電波rf-2を受信する場合に、電波rf-2と電波rf-1とが電波干渉しない。これにより、中継局50f-2から中継局50f-3への通信も正常に行われる。
【0121】
なお、ここでは電波の送信の場合について説明したが、受信の場合も同様である。例えば、中継局50f-1の受信アンテナのアンテナ指向性の範囲が、
図12に示されるアンテナ指向性範囲df-1であるならば、中継局50f-1が中継局50f-2から送信された電波rf-1を受信する場合に、電波rf-1と電波rf-3とが電波干渉しない。さらに、電波rf-1と電波rf-2とでは、異なる無線周波数チャネルが用いられているため、電波rf-1と電波rf-2とが電波干渉することもない。これにより、中継局50f-2から中継局50f-1への通信が正常に行われる。
【0122】
このように、第1の実施形態の変形例1における置局設計支援装置1は、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルが交互に用いられる無線通信システムの置局設計を支援する。本変形例における置局設計支援装置1は、中継局50fが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で3つ隣り以上の他の中継局50f(例えば、無線リンク経路上で3つ隣,5つ隣,7つ隣・・・の他の中継局50f)が存在することのないように、置局設計を行う。これにより、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルの電波が交互に用いられる場合であっても、電波干渉が生じることなく、基地局と端末局との間の通信が正常に行われる。
【0123】
なお、本変形例では、無線リンク経路上で2つの無線周波数チャネルが交互に用いられる場合について説明したが、無線リンク経路上で3つ以上の無線周波数チャネルが交互に用いられる場合であっても同様である。
【0124】
このように、置局設計支援装置1は、各中継局のアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、同一の無線周波数チャネルを用いる複数の他の中継局が含まれないように各中継局を配置する置局設計を行う。
【0125】
次に、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルが交互に用いられる無線通信システムの他の構成例について説明する。
【0126】
図13は、本発明の第1の実施形態の変形例1における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5gの構成例を示す図である。
図13は上空から見た無線通信システム5gを表している。
【0127】
図13に示されるように、無線通信システム5gは、中継局50g-1と、中継局50g-2と、中継局50g-3と、中継局50g-4と、中継局50g-5と、中継局50g-6とを含んで構成される。また、中継局50g-1、中継局50g-2、中継局50g-3、中継局50g-4、中継局50g-5、及び中継局50g-6は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50g-1、中継局50g-2、中継局50g-3、中継局50g-4、中継局50g-5、及び中継局50g-6は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
【0128】
以下、中継局50g-1、中継局50g-2、中継局50g-3、中継局50g-4、中継局50g-5、及び中継局50g-6を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50g」ということがある。
【0129】
ここで、中継局50g-1と中継局50g-2との間で送受信される電波rg-1と、中継局50g-3と中継局50g-4との間で送受信される電波rg-3と、中継局50g-5と中継局50g-6との間で送受信される電波rg-5とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図13では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い実線の両矢印で表している。一方、中継局50g-2と中継局50g-3との間で送受信される電波rg-2と、中継局50g-1と中継局50g-6との間で送受信される電波rg-6とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図13では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い破線の両矢印で表している。電波rg-1、電波rg-3及び電波rg-5と、電波rg-2及び電波rg-6とは、互いに異なる無線周波数チャネルが用いられる。
【0130】
図13では、中継局50g-1から中継局50g-2へ向けて電波rg-1を送信する送信アンテナのアンテナ指向性の範囲のみが、アンテナ指向性範囲dg-1として示されている。
図13に示されるように、中継局50g-2及び中継局50g-3はアンテナ指向性範囲dg-1の範囲内に位置しているが、中継局50g-4はアンテナ指向性範囲dg-1の範囲外に位置している。そのため、電波rg-1と電波rg-3とは同一の無線周波数チャネルが用いられているものの、中継局50g-4が中継局50g-3から送信された電波rg-3を受信する場合に、電波rg-3と電波rg-1とが電波干渉しない。これにより、中継局50g-3から中継局50g-4への通信が正常に行われる。
【0131】
また、
図13に示されるように、中継局50g-2及び中継局50g-3は、共にアンテナ指向性範囲dg-1の範囲内に位置しているが、電波rg-1と電波rg-2とでは異なる無線周波数チャネルが用いるため、中継局50g-3が中継局50g-2から送信された電波rg-2を受信する場合に、電波rg-2と電波rg-1とが電波干渉しない。これにより、中継局50g-2から中継局50g-3への通信も正常に行われる。
【0132】
また、
図13に示されるように、本変形例における置局設計支援装置1は、中継局50g-1、中継局50g-5、及び中継局50g-6をつなぐ無線リンク経路を設計する際に、最短経路となる中継局50g-1、中継局50g-5、中継局50g-6の順番でつなぐのではなく、中継局50g-1、中継局50g-6、中継局50g-5の順番でつなぐように設計している。
【0133】
これは、中継局50g-1、中継局50g-5、中継局50g-6の順番でつながれる無線リンク経路とするならば、中継局50g-3のアンテナのアンテナ指向性範囲内に中継局50g-5が含まれてしまう場合、及び、中継局50g-5のアンテナのアンテナ指向性範囲内に中継局50g-3が含まれてしまう場合が生じうるからである。この場合、中継局50g-2と中継局50g-3との間で送受信される電波rg-2と、中継局50g-1と中継局50g-5との間で送受信される電波とでは、同一の無線周波数チャネルが用いられることになり、両者の電波が電波干渉する。これにより、中継局50g-2と中継局50g-3との間の通信、及び中継局50g-1と中継局50g-5との間の通信が妨げられてしまうことがある。
【0134】
このように、本変形例における置局設計支援装置1は、中継局50gが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で3つ隣り以上の他の中継局50g(例えば、無線リンク経路上で3つ隣,5つ隣,7つ隣・・・の他の中継局50g)が存在することのないように、無線リンク経路上の中継局50gの接続順序も含めた置局設計を行う。これにより、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルの電波が交互に用いられる場合であっても、電波干渉が生じることなく、基地局と端末局との間の通信が正常に行われる。
【0135】
なお、
図13に示される6つの中継局50gの配置は、
図14に示される実在のルーラルエリアに対して行われた置局設計の結果と凡そ一致している。
【0136】
図14は、実在のルーラルエリアに対する置局設計の結果の一例を示す図である。
図14には、実在するルーラルエリアの地図データ上に、置局設計された無線通信システム5hが示されている。
【0137】
図14に示されるように、無線通信システム5hは、中継局50h-1と、中継局50h-2と、中継局50h-3と、中継局50h-4と、中継局50h-5と、中継局50h-6とを含んで構成される。また、中継局50h-1、中継局50h-2、中継局50h-3、中継局50h-4、中継局50h-5、及び中継局50h-6は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50h-1、中継局50h-2、中継局50h-3、中継局50h-4、中継局50h-5、及び中継局50h-6は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
【0138】
以下、中継局50h-1、中継局50h-2、中継局50h-3、中継局50h-4、中継局50h-5、及び中継局50h-6を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50h」ということがある。
【0139】
図7と同様に、
図14において、実線の小さな円は電柱(すなわち、中継局50hの設置候補位置)を示す。また、破線の6つの円は、各中継局50hがそれぞれ端末局と通信可能な範囲を表している。破線の6つの円の中心に位置する電柱に、中継局50hがそれぞれ設置されている。図示されるように、この6つの円からなる範囲は、
図14に示される地図データ内の全ての建物の少なくとも1つの壁面の位置(すなわち、端末局の設置位置)をカバーしている。このように、設計対象エリアの全ての端末局が6つの中継局50hのいずれかに収容可能であるように、中継局50hが配置されている。
【0140】
図14のように置局設計された無線通信システム5hにおいて、中継局50h-1から中継局50h-2への方向と、中継局50h-2から中継局50h-3への方向との間の角度は、15度である。例えば、45度の指向性アンテナが用いられた場合、15度の角度差は、アンテナ指向性の範囲内であるとみなすことができる。しかしながら、無線通信システム5hでは、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルが交互に用いられるため、中継局50h-3から送信され中継局50h-2が受信する電波は、中継局50h-4から送信された電波と電波干渉しない。これにより、中継局50b-2から中継局50b-3への通信が正常に行われる。
【0141】
また、
図14のように置局設計された無線通信システム5hにおいて、中継局50h-2から中継局50h-3への方向と、中継局50h-3から中継局50h-4への方向との間の角度は、96度である。そのため、中継局50h-2のアンテナのアンテナ指向性の範囲内に中継局50h-4は含まれず、中継局50h-4のアンテナのアンテナ指向性の範囲内に中継局50h-2は含まれない。さらに、中継局50h-2と中継局50h-3との間で送受信される電波と、中継局50h-3と中継局50h-4との間で送受信される電波とでは、異なる無線周波数チャネルが用いられるため、中継局50h-3から中継局50h-4への通信、及び、中継局50h-3から中継局50h-2への通信が正常に行われる。
【0142】
また、中継局50h-1から中継局50h-2への方向と、中継局50h-1から中継局50h-4への方向との間の角度は、35度である。また、中継局50h-4から中継局50h-3への方向と、中継局50h-4から中継局50h-1への方向との間の角度は、73度である。そのため、中継局50h-1のアンテナのアンテナ指向性の範囲内に中継局50h-4は含まれず、中継局50h-4のアンテナのアンテナ指向性の範囲内に中継局50h-1は含まれない。そのため、中継局50h-2から送信され中継局50h-1が受信する電波は、中継局50h-4から送信された電波と電波干渉しない。また、中継局50h-3から送信され中継局50h-4が受信する電波は、中継局50h-1から送信された電波と電波干渉しない。これにより、中継局50h-2から中継局50h-1への通信、及び中継局50h-3から中継局50h-4への通信が正常に行われる。
【0143】
また、
図13と同様に、
図14のように置局設計された無線通信システム5hは、最短経路となる中継局50h-1、中継局50h-5、中継局50h-6の順番ではなく、中継局50h-1、中継局50h-6、中継局50h-5の順番で無線リンク経路が設計されている。これにより、中継局50h-3の指向性アンテナによって中継局50h-2へ送信された電波が、中継局50h-5が受信する電波に電波干渉することが回避される。
【0144】
また、
図14のように置局設計された無線通信システム5hにおいて、中継局50h-3から中継局50h-2への方向と、中継局50h-2から中継局50h-1への方向との間の角度は、-15度である。また、中継局50h-2から中継局50h-1への方向と、中継局50h-1から中継局50h-6への方向との間の角度は、-29度である。また、中継局50h-1から中継局50h-6への方向と、中継局50h-6から中継局50h-5への方向との間の角度は、142度である。
【0145】
また、中継局50h-3から中継局50h-2への方向と、中継局50h-3から中継局50h-6への方向との間の角度は、21度である。また、中継局50h-6から中継局50h-1への方向と、中継局50h-6から中継局50h-3への方向との間の角度は、23度である。
【0146】
これらの角度は、いずれも各中継局50hで用いられるアンテナの、
図8に示されるアンテナパターンの半値幅θ
BW以上である。そのため、各中継局50hは、無線リンク経路上で隣り合っていない他の中継局50hから送出される電波による電波干渉を回避することができる。
【0147】
なお、
図5に示されるフローチャートが示す置局設計支援装置1のステップS101の動作は、置局設計の対象とする設計対象エリアを指定する動作であるが、これは例えば、
図14に示される地図データの範囲を指定する動作に相当する。また、ステップS103の動作は、設備情報を取得する動作であるが、これは例えば、電柱等の設備の位置を示す設備情報を取得して、
図14に示される地図データ上に(実線の小さな円で)プロットする動作に相当する。
【0148】
図14に示されるように、実際には道路に沿って多数の電柱が存在する。そのため、
図5に示されるフローチャートが示す置局設計支援装置1のステップS104の動作において、中継局の設置候補位置を絞り込むための制約条件が加えられていることが望ましい。なお、ここでいう中継局とは、本変形例では
図14に示される中継局50hであり、前述の第1の実施形態では
図3に示される中継局50bに相当する中継局である。前述の通り、制約条件とは、
図14において破線の円で示される中継局50hのカバーエリア内により多くの建物が含まれるように(すなわち、より多くの端末局が収容されるように)中継局50hの設置候補位置を選定することである。
【0149】
なお、
図14に示される実在のルーラルエリアに対する置局設計の結果例は、上記の制約条件に基づいて中継局50h-2、中継局50h-3、中継局50h-5、及び中継局50h-6の設置候補位置の絞り込みを行い置局設計がなされたものである。
【0150】
以上説明したように、第1の実施形態の変形例1では、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルが交互に用いられる無線通信システムの置局設計を支援する置局設計支援装置1について説明した。置局設計支援装置1は、中継局50fが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で3つ隣り以上の他の中継局(例えば、無線リンク経路上で3つ隣,5つ隣,7つ隣・・・の他の中継局)が存在することのないように、置局設計を行う。
【0151】
これにより、無線リンク経路において2つの無線周波数チャネルの電波が交互に用いられる場合であっても、電波干渉が生じることなく、基地局と端末局との間の通信が正常に行われる。このような構成を備えることにより、第1の実施形態の変形例1における置局設計支援装置1は、中継局間で用いられる無線周波数チャネルの個数を増大させることなくマルチホップ無線通信を可能にする置局設計を支援することができる。
【0152】
(第1の実施形態の変形例2)
以下、本発明の第1の実施形態の変形例2について説明する。
【0153】
前述の第1の実施形態及び第1の実施形態の変形例1では、分岐を含まない無線リンク経路を対象とした置局設計について説明した。しかしながら、実際には、分岐を含む無線リンク経路を対象とした置局設計が行われる場合がある。以下に説明する第1の実施形態の変形例2では、分岐を含む無線リンク経路を有する無線通信システムの置局設計を支援する置局設計支援装置について説明する。
【0154】
なお、第1の実施形態の変形例2における置局設計支援装置の機能構成を示すブロック図は、
図4に示される第1の実施形態における置局設計支援装置1の機能構成を示すブロック図と同様であるため、以下、各機能部に同一の符号を付して説明する。
【0155】
図15は、マルチホップ無線通信を行う無線通信システム5iの構成例を示す図である。
図15は上空から見た無線通信システム5iを表している。
【0156】
図15に示されるように、無線通信システム5iは、中継局50i-1と、中継局50i-2と、中継局50i-3と、中継局50i-4と、中継局50i-5とを含んで構成される。また、中継局50i-1、中継局50i-2、中継局50i-3、中継局50i-4、及び中継局50i-5は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50i-1、中継局50i-2、中継局50i-3、中継局50i-4、及び中継局50i-5は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
【0157】
以下、中継局50i-1、中継局50i-2、中継局50i-3、中継局50i-4、及び中継局50i-5を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50i」ということがある。
【0158】
図15に示されるように、無線通信システム5iにおける無線リンク経路は、基地局、中継局50i-1、中継局50i-2、中継局50i-3という順番の経路の後、中継局50i-4と中継局50i-5に分岐する経路、又はその逆の順番となる経路である。すなわち、その逆の順番となる経路とは、中継局50i-4から中継局50i-3への経路と、中継局50i-5から中継局50i-3への経路とが中継局50i-3において合流し、その後、中継局50i-2、中継局50i-1という順番となる経路である。
【0159】
ここで、中継局50i-1と中継局50i-2との間で送受信される電波ri-1と、中継局50i-3と中継局50i-5との間で送受信される電波ri-5とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図15では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い実線の両矢印で表している。一方、中継局50i-2と中継局50i-3との間で送受信される電波ri-2と、中継局50i-3と中継局50i-4との間で送受信される電波ri-3とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図15では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い破線の両矢印で表している。電波ri-1及び電波ri-5と、電波ri-2及び電波ri-3とは、互いに異なる無線周波数チャネルが用いられる。
【0160】
図15に示される無線通信システム5iは、基本的には2つの無線周波数チャネルが交互に用いられる無線リンク経路を有する。しかしながら、
図15に示されるように、分岐を含む無線リンク経路では、複数に分岐する経路のうち少なくとも一方の経路において、同一の無線周波数チャネルが連続して用いられることになる。例えば、
図15においては、無線リンク経路上で連続する区間である、中継局50i-2と中継局50i-3の間の区間と、中継局50i-3と中継局50i-4の間の区間とにおいて、同一の無線周波数チャネルが連続して用いられている。
【0161】
図15では、中継局50i-1から中継局50i-2へ向けて電波ri-1を送信する送信アンテナのアンテナ指向性の範囲のみが、アンテナ指向性範囲di-1として示されている。
図15に示されるように、中継局50i-2、中継局50i-3、及び中継局50i-5はアンテナ指向性範囲di-1の範囲内に位置しているが、中継局50i-4はアンテナ指向性範囲di-1の範囲外に位置している。そのため、電波ri-2と電波ri-3とは同一の無線周波数チャネルが用いられているものの、中継局50i-4が中継局50i-3から送信された電波ri-3を受信する場合に、電波ri-3と電波ri-2とが電波干渉しない。これにより、中継局50i-3から中継局50i-4への通信が正常に行われる。
【0162】
また、
図15に示されるように、中継局50i-2及び中継局50i-3は、共にアンテナ指向性範囲di-1の範囲内に位置しているが、電波ri-1と電波ri-2とでは異なる無線周波数チャネルが用いるため、中継局50i-3が中継局50i-2から送信された電波ri-2を受信する場合に、電波ri-2と電波ri-1とが電波干渉しない。これにより、中継局50i-2から中継局50fi3への通信も正常に行われる。
【0163】
一方、前述の通り、中継局50i-2と中継局50i-5とはいずれもアンテナ指向性範囲di-1内に存在し、かつ、電波ri-1と電波ri-5とは同一の無線周波数チャネルが用いられている。そのため、中継局50i-5が中継局50i-3から送信された電波ri-5を受信する場合、電波ri-5と電波ri-1とが電波干渉する。これにより、中継局50i-3から中継局50i-5への通信が妨げられてしまうことがある。
【0164】
このように、中継局50iが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で隣り合う他の中継局50iだけでなく、無線リンク経路上で隣り合わない他の中継局50i(例えば、無線リンク経路上で3つ隣の中継局50i)が存在する場合において、同一の無線周波数チャネルの電波が用いられると、電波干渉が生じ、基地局と端末局との間の通信が妨げられてしまうことがある。
【0165】
以下に説明する、第1の実施形態の変形例2における置局設計支援装置1は、電波干渉が生じない、又は、電波干渉の影響が小さい無線通信システムとなるように、中継局50jの置局設計を支援する。
【0166】
図16は、本発明の第1の実施形態の変形例2における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5jの構成例を示す図である。
図16は上空から見た無線通信システム5jを表している。
【0167】
図16に示されるように、無線通信システム5jは、中継局50j-1と、中継局50j-2と、中継局50j-3と、中継局50j-4と、中継局50j-5とを含んで構成される。また、中継局50j-1、中継局50j-2、中継局50j-3、中継局50j-4、及び中継局50j-5は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50j-1、中継局50j-2、中継局50j-3、中継局50j-4、及び中継局50j-5は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
【0168】
以下、中継局50j-1、中継局50j-2、中継局50j-3、中継局50j-4、及び中継局50j-5を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50j」ということがある。
【0169】
図16に示されるように、無線通信システム5jにおける無線リンク経路は、基地局、中継局50j-1、中継局50j-2、中継局50j-3という順番の経路の後、中継局50j-4と中継局50j-5に分岐する経路、又はその逆の順番となる経路である。すなわち、その逆の順番となる経路とは、中継局50j-4から中継局50j-3への経路と、中継局50j-5から中継局50j-3への経路とが中継局50j-3において合流し、その後、中継局50j-2、中継局50j-1という順番となる経路である。
【0170】
ここで、中継局50j-1と中継局50j-2との間で送受信される電波rj-1と、中継局50j-3と中継局50j-5との間で送受信される電波rj-5とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図16では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い実線の両矢印で表している。一方、中継局50j-2と中継局50j-3との間で送受信される電波rj-2と、中継局50j-3と中継局50j-4との間で送受信される電波rj-3とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図15では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い破線の両矢印で表している。電波rj-1及び電波rj-5と、電波rj-2及び電波rj-3とは、互いに異なる無線周波数チャネルが用いられる。
【0171】
図16に示される無線通信システム5jの無線リンク経路が、前述の
図15に示される無線通信システム5iの無線リンク経路と異なる点は、
図15において中継局50i-5がアンテナ指向性範囲di-1の範囲内に配置されているのに対し、
図16において中継局50j-5がアンテナ指向性範囲dj-1の範囲外に配置されている点である。
【0172】
前述の通り、電波rj-1と電波rj-5とは同一の無線周波数チャネルが用いられているが、中継局50j-5はアンテナ指向性範囲dj-1内には存在しない。そのため、中継局50j-5が中継局50j-3から送信された電波rj-5を受信する場合、電波rj-5と電波rj-1とは電波干渉しない。これにより、中継局50j-3から中継局50j-5への通信が正常に行われる。
【0173】
なお、ここでは電波の送信の場合について説明したが、受信の場合も同様である。例えば、中継局50j-1の受信アンテナのアンテナ指向性の範囲が、
図16に示されるアンテナ指向性範囲dj-1であるならば、中継局50j-1が中継局50j-2から送信された電波rj-1を受信する場合に、電波rj-1と電波rb-5とが電波干渉しない。これにより、中継局50j-2から中継局50j-1への通信が正常に行われる。
【0174】
以上説明したように、第1の実施形態の変形例2では、分岐を含む無線リンク経路を有し、2つの無線周波数チャネルが交互に用いられる無線通信システムの置局設計を支援する置局設計支援装置1について説明した。置局設計支援装置1は、中継局50jが備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で3つ隣り以上の他の中継局(例えば、無線リンク経路上で3つ隣,5つ隣,7つ隣・・・の他の中継局)が存在することのないように、置局設計を行う。
【0175】
これにより、分岐を含む無線リンク経路であっても、電波干渉が生じることなく、基地局と端末局との間の通信が正常に行われる。このような構成を備えることにより、第1の実施形態の変形例2における置局設計支援装置1は、中継局間で用いられる無線周波数チャネルの個数を増大させることなくマルチホップ無線通信を可能にする置局設計を支援することができる。
【0176】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0177】
前述の第1の実施形態、第1の実施形態の変形例1、及び第1の実施形態の変形例2における置局設計支援装置1は、中継局のアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線経路上で当該中継局と隣り合っていない他の中継局が含まれないように各中継局を配置することで、電波干渉の発生を防止又は低減する構成であった。しかしながら実際には、例えば中継局の設置候補位置の選択肢が限られている場合等があり、中継局のアンテナのアンテナ指向性の範囲内であっても、無線経路上で当該中継局と隣り合っていない他の中継局を配置しなければならない場合も生じうる。
【0178】
以下に説明する、第2の実施形態における置局設計支援装置は、中継局のアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線経路上で当該中継局と隣り合っていない他の中継局が含まれる場合に、被干渉局と与干渉局との干渉計算を行う。ここで、被干渉局は、与干渉局のアンテナのアンテナ指向性の範囲内に存在するが、当該与干渉局と無線リンク経路において隣り合っていない無線局である。
【0179】
本実施形態における置局設計支援装置は、干渉計算の結果、本来の無線リンク経路における受信電力と干渉電力との差が十分大きい場合には、被干渉局の位置を中継局の候補位置として選定する。なお、置局設計支援装置は、干渉計算の結果、干渉電力が十分小さい場合に、被干渉局の位置を中継局の候補位置として選定するようにしてもよい。
【0180】
なお、第2の実施形態における置局設計支援装置の機能構成を示すブロック図は、
図4に示される第1の実施形態における置局設計支援装置1の機能構成を示すブロック図と同様であるため、以下、各機能部に同一の符号を付して説明する。
【0181】
図17は、本発明の第2の実施形態における置局設計支援装置1による中継局の候補位置の選定について説明するための図である。
【0182】
図17には、中継局50k-1、中継局50k-2、及び中継局50k-3が示されている。中継局50k-1、中継局50k-2、及び中継局50k-3はそれぞれ指向性アンテナを備えている。図示されるように、中継局50k-1と、中継局50k-2と、中継局50k-3とは凡そ一直線上に配置されており、中継局50k-1のアンテナのアンテナ指向性の正面方向に、中継局50k-2及び中継局50k-3が配置されている。
【0183】
以下、中継局50k-1、中継局50k-2、及び中継局50k-3を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50k」ということがある。
【0184】
中継局50k-1、中継局50k-2、及び中継局50k-3がこのような配置である場合、中継局50k-1から中継局50k-2へ送信される電波の無線周波数チャネルと、中継局50k-2から中継局50k-3へ送信される電波の無線周波数チャネルとが同一であるならば、中継局50k-3が中継局50k-2から送信された電波を受信する際に、中継局50k-1から送信された電波による電波干渉が生じうる。そのため、前述の第1の実施形態、第1の実施形態の変形例1、及び第1の実施形態の変形例2における置局設計支援装置1ならば、このような中継局50kの配置とならないように置局設計が行われる。
【0185】
しかしながら、中継局50k-1と中継局50k-3との距離が十分に離れている場合、中継局50k-1から送信された電波は、中継局50k-3へ到達するまでにある程度減衰する。第2の実施形態における置局設計支援装置1は、干渉計算により、中継局50k-3における、中継局50k-2から送信された電波の受信電力と、中継局50k-1から送信された電波の干渉電力とを比較する。
【0186】
置局設計支援装置1は、比較結果に基づき、中継局50k-1から送信された電波が、中継局50k-2から送信された電波の受信を妨害するレベルに達しているか否かを判定することができる。これにより、置局設計支援装置1は、中継局50k-1のアンテナのアンテナ指向性範囲Ra内に中継局50k-3が含まれていても、中継局50k-1及び中継局50k-2と中継局50k-3との距離関係によって、通信可能範囲Rb内に中継局50k-3の設置候補位置を選定することができる。
【0187】
なお、
図17においては、中継局50k-1のアンテナのアンテナ指向性は中継局50k-2の方向へ向けられ、中継局50k-2のアンテナのアンテナ指向性は中継局50k-3の方向へ向けられ、中継局50k-3のアンテナのアンテナ指向性は中継局50k-2の方向へ向けられている場合を一例として挙げている。但し、もし中継局50k-3のアンテナのアンテナ指向性が中継局50k-2及び中継局50k-2の方向へ向けられていないならば、中継局50k-3における、中継局50k-1から送信された電波の干渉電力はより小さくなり、電波干渉の影響が無くなる場合もある。
【0188】
[置局設計支援装置の動作]
以下、置局設計支援装置1の動作の一例について説明する。
図18は、本発明の第2の実施形態における置局設計支援装置1の動作を示すフローチャートである。本フローチャートが示す置局設計支援装置1の動作は、例えば、置局設計支援装置1のユーザの操作を受けて、操作入力部102から置局設計の開始指示が出力された際に開始される。
【0189】
設計範囲指定部104は、地図データを読み出し、操作入力部102から出力された設計範囲を示す情報に基づいて、例えば矩形形状の範囲を選択する。設計範囲指定部104は、選択された範囲を設計対象エリアとして指定する(ステップS201)。
【0190】
端末局位置特定部105は、設計対象エリア内の地図データから、建物の位置及び輪郭(又は壁面)を示す情報を建物ごとに抽出する。端末局位置特定部105は、抽出された情報に基づいて建物の壁面の位置を特定し、端末局の設置位置を特定する。
【0191】
設備情報取得部106は、例えば外部の装置等から、中継局50kの設置候補位置を選定するための設備情報を取得する。
【0192】
中継局位置選定部107は、端末局の設置位置と、設備情報と、端末局と中継局50kとの通信可能距離等とに基づいて、中継局50kの少なくとも1つの設置候補位置を選定する(ステップS202)。
【0193】
電波干渉評価部108は、基地局の位置と、中継局位置選定部107によって選定された中継局50kの設置候補位置とに基づいて、無線リンク経路を特定する。電波干渉評価部108は、特定された無線リンク経路における各中継局50kが、所定の条件を満たしているか否かを順に判定する(ステップS203)。なお、ここでいう所定の条件とは、後述される干渉計算の結果に基づく条件である。
【0194】
中継局位置選定部107は、干渉計算の評価対象とする中継局の設置候補位置を設定する(ステップS205)。マルチホップに関係する全ての中継局について判定が行われた場合(ステップS206・Yes)、ステップS203に戻る。一方、マルチホップに関係する全ての中継局について判定が行われていない場合(ステップS206・No)、電波干渉評価部108は、中継局位置選定部107によって設定された中継局の設置候補位置の中から、被干渉局と与干渉局とを再設定する(ステップS207)。
【0195】
電波干渉評価部108は、干渉計算を行い、与干渉局による干渉電力が無線リンク経路における受信電力と比較して十分に小さい場合(ステップS208・Yes)、ステップS206に戻る。一方、電波干渉評価部108は、与干渉局による干渉電力が無線リンク経路における受信電力と比較して十分に小さくはない場合(ステップS208・No)、中継局位置選定部107は、選定可能な中継局の設置候補位置があるか否かを確認する(ステップS209)。
【0196】
選定可能な中継局の設置候補位置が他にある場合(ステップS209・Yes)、中継局位置選定部107は、中継局の他の設置候補位置を再選定する(ステップS210)。電波干渉評価部108は、再び干渉評価を行う(ステップS208)。
【0197】
一方、選定可能な中継局50kの設置候補位置が他にない場合(ステップS209・No)、制御部100は、無線リンク経路において所定の条件を満たさない箇所を示す情報を出力させるように出力部103を制御する(ステップS211)。
【0198】
一方、無線リンク経路の全ての中継局について所定の条件を満たしているか否かの判定が行われた場合(ステップS203・Yes)、制御部100は、所定の条件を満たす無線リンク経路を表示させるように出力部103を制御する(ステップS204)。以上で
図18のフローチャートが示す置局設計支援装置1の動作が終了する。
【0199】
なお、前述の干渉計算では、例えば、与干渉局が送信する電波の周波数、送信電力、与干渉局・被干渉局が使用するアンテナの指向性(水平面パターン)、アンテナの方向(方位角)、与干渉局と被干渉局との間の距離に基づいて、被干渉局での干渉電力が求められる。さらに、指向性アンテナの指向性については、仰角方向パターン、アンテナ設置の高さ、アンテナの仰俯角を用いて干渉計算が行われることにより、より精密な干渉計算が可能になる。その他にも、与干渉局と被干渉局との間の地形や、両局間における建物等の障害物の存在等の周辺環境が考慮されることで、より精密な干渉計算が可能になる。
【0200】
なお,2つの無線局間(ここでは、与干渉局と被干渉局との間)の干渉計算における条件指定の方法、及び指定された条件に基づく干渉計算の方法としては任意の方法を用いることができるが、例えば、特許文献4に記載の方法を用いることができる。
【0201】
図19は、本発明の第1の実施形態における置局設計支援装置1によって置局設計された無線通信システム5lの構成例を示す図である。
【0202】
図19に示されるように、無線通信システム5lは、中継局50l-1と、中継局50l-2と、中継局50l-3と、中継局50l-4と、中継局50l-5と、中継局50l-6とを含んで構成される。また、中継局50l-1、中継局50l-2、中継局50l-3、中継局50l-4、中継局50l-5、及び中継局50l-6は、指向性アンテナをそれぞれ備えている。中継局50l-1、中継局50l-2、中継局50l-3、中継局50l-4、中継局50l-5、及び中継局50l-6は、基地局(不図示)と端末局(不図示)との間の通信において伝送される無線の電波を中継する無線局である。
【0203】
以下、中継局50l-1、中継局50l-2、中継局50l-3、中継局50l-4、中継局50l-5、及び中継局50l-6を区別して説明する必要がない場合には、単に「中継局50l」ということがある。
【0204】
無線通信システム5lにおける無線リンク経路は、中継局50l-1、中継局50l-2、中継局50l-3、中継局50l-4、中継局50l-5、中継局50l-6という順番となる経路、又はその逆の順番となる経路である。
【0205】
ここで、中継局50l-1と中継局50l-2との間で送受信される電波rl-1と、中継局50l-2と中継局50l-3との間で送受信される電波rl-2と、中継局50l-3と中継局50l-4との間で送受信される電波rl-3と、中継局50l-4と中継局50l-5との間で送受信される電波rl-4と、中継局50l-5と中継局50l-6との間で送受信される電波rl-5とは、同一の無線周波数チャネルが用いられる。
図19では、この同一の無線周波数チャネルを、同一の太い実線の両矢印で表している。
【0206】
図19では、中継局50l-1から中継局50l-2へ向けて電波rl-1を送信する送信アンテナのアンテナ指向性の範囲のみが、アンテナ指向性範囲dl-1として示されている。
【0207】
図19に示されるように、無線リンク経路において中継局50l-1と隣り合い互いに通信を行う中継局50l-2は、アンテナ指向性範囲dl-1内に存在する。
【0208】
また、無線リンク経路において中継局50l-1と隣り合わない中継局50lのうち、中継局50l-3及び中継局50l-4は、アンテナ指向性範囲dl-1内にはなく、アンテナ指向性範囲dl-1の外側にある。そのため、中継局50l-3が中継局50l-2から送信された電波rl-2を受信する際に、中継局50l-1から送信された電波rl-1による電波干渉が生じにくい。また、中継局50l-4が中継局50l-3から送信された電波rl-3を受信する際に、中継局50l-1から送信された電波rl-1による電波干渉が生じにくい。
【0209】
また、無線リンク経路において中継局50l-1と隣り合わない中継局50lのうち、中継局50l-5及び中継局50l-6は、アンテナ指向性範囲dl-1内(電波rl-1の放射方向)に存在する。しかしながら、中継局50l-5は、指向性アンテナを中継局50l-4及び中継局50l-6の方向に向けており、いずれの方向も中継局50l-1が存在する方向とは異なっている。そのため、中継局50l-5が、中継局50l-4から送信された電波rl-4及び中継局50l-6から送信された電波rl-5を受信する際に、中継局50l-1から送信された電波rl-1による電波干渉が生じにくいといえる。
【0210】
一方、中継局50l-6は、指向性アンテナを中継局50l-5の方向に向けており、この方向は中継局50l-1が存在する方向でもある。そのため、中継局50l-6が中継局50l-5から送信された電波rl-5を受信する際に、中継局50l-1から送信された電波rl-1による電波干渉が生じる可能性がある。したがって、前述の第1の実施形態、第1の実施形態の変形例1、及び第1の実施形態の変形例2における置局設計支援装置1ならば、このような中継局50lの配置とならないように置局設計が行われる。
【0211】
これに対し、第2の実施形態における置局設計支援装置1は、干渉計算により、中継局50l-6における、中継局50l-5から送信された電波rl-5の受信電力と、中継局50l-1から送信された電波rl-1の干渉電力とを比較する。
【0212】
置局設計支援装置1は、比較結果に基づき、中継局50l-1から送信された電波rl-1が、中継局50l-5から送信された電波rl-5の受信を妨害するレベルに達しているか否かを判定する。具体的には、例えば、受信電力と干渉電力との差が所定値以上であるか否かに基づいて判定する。置局設計支援装置1は、受信電力と干渉電力との差が所定値以上であるならば、この中継局50l-6の位置を設置候補位置として選定する。
【0213】
これにより、置局設計支援装置1は、中継局50l-1のアンテナのアンテナ指向性範囲dl-1内に中継局50l-6が含まれていても、中継局50l-1及び中継局50l-5と中継局50l-6と間の距離等に基づいて減衰する干渉電波の強さによっては、アンテナ指向性範囲dl-1内に中継局50l-6の設置候補位置を選定することができる。
【0214】
以上説明したように、第2の実施形態では、置局設計支援装置1は、中継局が備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内に、無線リンク経路上で隣り合わない他の中継局が存在する場合には干渉計算を行う。他の中継局における干渉計算の結果、受信電力と比較して干渉電力が十分に小さいならば、置局設計支援装置1は、中継局のアンテナ指向性の範囲内であっても、他の中継局の設置候補位置として許容する。
【0215】
このような構成を備えることにより、第2の実施形態における置局設計支援装置1は、中継局が備えるアンテナのアンテナ指向性の範囲内であっても、無線リンク経路において当該中継局と隣り合わない他の中継局の設置候補位置として選定することができる場合があるため、当該他の中継局の設置候補位置の選択可能性をより広げることができる。また、上記のような構成を備えることにより、第2の実施形態における置局設計支援装置1は、中継局間で用いられる無線周波数チャネルの個数を増大させることなくマルチホップ無線通信を可能にする置局設計を支援することができる。
【0216】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0217】
前述の第1の実施形態、第1の実施形態の変形例1、第1の実施形態の変形例2、及び第2の実施形態では、置局設計支援装置1によって置局設計される無線通信システムにおける中継局間の通信は、双方1本ずつのアンテナによる1対1での無線通信であることを想定した。一方、以下に説明する第3の実施形態では、置局設計支援装置1によって置局設計される無線通信システムにおける中継局間の通信は、双方2本ずつのアンテナによる2対2での無線通信を想定する。
【0218】
ここで、中継局の2本のアンテナは、同一の無線周波数チャネルを用いて電波を同時に送信及び受信する送受信ダイバーシティを行う。この場合、周期的遅延ダイバーシティ(CDD)が用いられてもよい。周期的遅延ダイバーシティとは、送信ダイバーシティ技術の1つであり、送信アンテナ間での同一のデータ信号に対して異なる巡回遅延量を付与し、当該データ信号を送信する技術である(例えば、特許文献5及び6、非特許文献1~4を参照)。このような遅延量の付与によって、シンボル間干渉を回避しつつ、周波数ダイバーシティを得ることができる。
【0219】
中継局間の通信において送受信ダイバーシティが行われることにより、無線リンク経路が冗長化(二重化)されるため、障害等に対する耐性が向上する。例えば、中継局の一方のアンテナが何らかの障害によって機能停止したとしても、無線通信の維持が可能になる。また、中継局間の通信において送受信ダイバーシティが行われることにより、1つのアンテナ当たりの電波の送信電力を抑制することができるため、電波干渉の影響を防止又は低減することができる。
【0220】
また、中継局間の通信において送受信ダイバーシティが行われることにより、指向性アンテナを用いた場合に比べて、アンテナ指向性をより高めることができる。また、中継局間の通信において送受信ダイバーシティが行われることにより、中継局が端末局を収容するためにカバーする範囲を2つのアンテナで分担することができるため、1つのアンテナがカバーする範囲をより小さくすることができ、中継局において端末局との通信に用いられる送信電力を抑制することができる。また、これにより、中継局と端末局との間の通信における電波干渉の影響も抑制される。
【0221】
図20は、送受信ダイバーシティを用いない場合の無線通信を説明するための図である。
図20に示されるように、無線通信システム5mの構成は、前述の第1の実施形態、第1の実施形態の変形例1、第1の実施形態の変形例2、及び第2の実施形態における無線システムの構成に相当する。
【0222】
図20に示されるように、無線通信システム5mは、中継局50m-1と、中継局50m-2と、中継局50m-3とを含んで構成される。中継局50m-1は、アンテナ51m-11を備える。中継局50m-1は、アンテナ51m-11を用いて中継局50m-2と無線通信を行う。中継局50m-2は、アンテナ51m-21とアンテナ51m-22とを備える。中継局50m-2は、アンテナ51m-21を用いて中継局50m-1と無線通信を行い、アンテナ51m-22を用いて中継局50m-3と無線通信を行う。中継局50m-3は、アンテナ51m-31を備える。中継局50m-3は、アンテナ51m-31を用いて中継局50m-2と無線通信を行う。
【0223】
図20に示されるように、中継局50m-1から中継局50m-2への方向と、中継局50m-1から中継局50m-3への方向との角度は、θである。前述の通り、中継局50m-3が中継局50m-2から送信された電波を受信する際に、中継局50m-1から送信される電波による電波干渉を回避するためには、θ≧θ
BWを満たす必要がある。前述の通り、θ
BWは、中継局で用いられるアンテナのアンテナパターンの半値幅である。
【0224】
図21は、送受信ダイバーシティを用いる場合の無線通信を説明するための図である。
図21示される無線通信システム5nの構成は、第3の実施形態における無線システムの構成である。
【0225】
図21に示されるように、無線通信システム5nは、中継局50n-1と、中継局50n-2と、中継局50n-3とを含んで構成される。中継局50n-1は、アンテナ51n-11と、アンテナ51n-13と、巡回シフタ52n-11とを備える。中継局50n-2は、アンテナ51n-21と、アンテナ51n-22と、アンテナ51n-23と、アンテナ51n-24と、巡回シフタ52n-21と、巡回シフタ52n-22とを備える。中継局50n-3は、アンテナ51n-31と、アンテナ51n-33と、巡回シフタ52n-31とを備える。
【0226】
巡回シフタ52n-11、巡回シフタ52n-21、巡回シフタ52n-22、巡回シフタ52n-31は、送信されるデータ信号に巡回遅延量を付与する。
【0227】
中継局50n-1は、アンテナ51n-11及びアンテナ51n-13により送受信ダイバーシティ技術を用いて中継局50n-2と無線通信を行う。中継局50n-2は、アンテナ51n-21及びアンテナ51n-23により送受信ダイバーシティ技術を用いて中継局50n-1と無線通信を行い、アンテナ51n-22及びアンテナ51n-24により送受信ダイバーシティ技術を用いて中継局50n-3と無線通信を行う。中継局50n-3は、アンテナ51n-31及びアンテナ51n-33により送受信ダイバーシティ技術を用いて中継局50n-2と無線通信を行う。
【0228】
ここで、中継局50n-1のアンテナ51n-11とアンテナ51n-13との間の中間の位置から中継局50n-2のアンテナ51n-21とアンテナ51n-23との間の中間の位置への方向と、中継局50n-1のアンテナ51n-11とアンテナ51n-13との間の中間の位置から中継局50n-3のアンテナ51n-31とアンテナ51n-33との間の中間の位置への方向との角度は、θd度である。
【0229】
このような送受信ダイバーシティを用いる構成において、中継局50n-3が中継局50n-2から送信された電波を受信する際に、中継局50n-1から送信される電波による電波干渉を回避するために必要となる角度θdは、θd<θとなる。すなわち、送受信ダイバーシティを用いる構成では、送受信ダイバーシティを用いない構成において電波干渉を回避するために必要となる角度θより小さい角度θdで、電波干渉を回避することができる。したがって、送受信ダイバーシティが用いられることで、中継局におけるアンテナ指向性をより高めることができる。
【0230】
なお、このように冗長化(二重化)された無線リンクを有する無線通信システムは、前述の通り電波干渉の影響を低減させることができるため、ルーラルエリアのみならず、電波干渉の要因がより多い市街地エリアに敷設しても有効なシステムである。
【0231】
以上説明したように、第3の実施形態では、置局設計支援装置1は、中継局間の通信において双方2本ずつの指向性アンテナが用いられる無線通信システム5nにおける置局設計を支援する。中継局の各2本の指向性アンテナは、送受信ダイバーシティを行うことによって、1本の指向性アンテナのみが用いられる場合に比べて、より指向性が高まる。
【0232】
上記のような構成を備えることにより、第3の実施形態における置局設計支援装置1は、送受信ダイバーシティによってよりアンテナの指向性が高められたことを考慮して置局設計を行うことができる。これにより、中継局の設置候補位置の選択可能性をより広げることができる。また、上記のような構成を備えることにより、第3の実施形態における置局設計支援装置1は、中継局間で用いられる無線周波数チャネルの個数を増大させることなくマルチホップ無線通信を可能にする置局設計を支援することができる。
【0233】
上述した各実施形態及び各変形例によれば、置局設計支援装置は、複数の無線局を無線接続して通信経路を形成する通信ネットワークの置局設計を支援する。例えば、無線局は実施形態における中継局50a~50nであり、通信経路は実施形態における無線リンク経路であり、通信ネットワークは実施形態における無線通信システム5a~5nである。置局設計支援装置は、無線局が備える指向性アンテナによる電波の放射方向に基づいて、通信経路において無線局と隣り合わない他の無線局である非隣接無線局を置局する置局設計部を備える。例えば、置局設計部は実施形態における電波干渉評価部108及び中継局位置選定部107であり、電波の放射方向は実施形態におけるアンテナ指向性の範囲(例えば半値角θBWの範囲)の方向であり、非隣接無線局は実施形態における無線リンク経路において3つ先以上の他の中継局である。
【0234】
なお、置局設計部は、非隣接無線局が放射方向に存在することがないように複数の無線局を置局するようにしてもよい。
【0235】
なお、置局設計部は、前記電波の周波数と同一の周波数の電波を用いて通信を行う非隣接無線局が放射方向に存在することがないように、複数の無線局を置局するようにしてもよい。
【0236】
なお、置局設計部は、通信経路を分岐させる無線局である分岐無線局が通信ネットワークに含まれる場合、通信経路において前記無線局に対して分岐無線局を間に挟んで配置される非隣接無線局を放射方向とは異なる方向に置局するか、又は、前記電波の周波数とは異なる周波数の電波を用いて通信を行う無線局とするようにしてもよい。例えば、分岐無線局は実施形態における中継局50i-3及び50j-3である。
【0237】
なお、置局設計部は、非隣接無線局が放射方向に配置された場合に、非隣接無線局が受信する受信電波の受信電力と、受信電波に干渉する電波の干渉電力との差が所定値未満であるならば、非隣接無線局を放射方向に置局するようにしてもよい。
【0238】
なお、放射方向は、前記電波の半値角の範囲内の方向であってもよい。
【0239】
なお、前記無線局は、複数の指向性アンテナを用いて電波を送受信し、各指向性アンテナからの電波によって伝送されるデータ信号に対してそれぞれ異なる巡回遅延量を付与する周期的遅延ダイバーシティを行うようにしてもよい。例えば、複数の指向性アンテナは実施形態における、アンテナ51n-11及びアンテナ51n-13、アンテナ51n-21及びアンテナ51n-23、アンテナ51n-22及びアンテナ51n-24、アンテナ51n-31及びアンテナ51n-33である。
【0240】
上述した各実施形態における置局設計支援装置1の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0241】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0242】
1…置局設計支援装置、5…無線通信システム、50…中継局、51…アンテナ、52…巡回シフタ、100…制御部、101…記憶部、102…操作入力部、103…出力部、104…設計範囲指定部、105…端末局位置特定部、106…設備情報取得部、107…中継局位置選定部、108…電波干渉評価部