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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】構造物及び構造物の診断方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
E21D11/38 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023537792
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027761
(87)【国際公開番号】W WO2023007589
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】松本 安弘
(72)【発明者】
【氏名】玉松 潤一郎
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-180699(JP,A)
【文献】特開昭57-140500(JP,A)
【文献】実開昭56-121799(JP,U)
【文献】特開2007-146492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の第1覆工と、
前記第1覆工の内側の少なくとも一部に沿って延在し、流体が浸透する多孔質体と、
前記多孔質体の内側に配置される管状の第2覆工と、
を含む構造物であり、
前記第2覆工を貫通して前記多孔質体に達するともに、前記構造物の軸方向に延びる貫通孔が形成されている、構造物。
【請求項2】
前記貫通孔から流出する前記流体を受けて流す流路を更に備える、請求項に記載の構造物。
【請求項3】
前記多孔質体における前記流体の浸透を遮る仕切りが、前記構造物の軸方向に離間して設けられている、請求項1又は2に記載の構造物。
【請求項4】
前記流体が前記貫通孔を流れたことを検出するセンサを備える、請求項のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項5】
前記多孔質体がポーラスコンクリートである、請求項1~のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項6】
管状の第1覆工と、
前記第1覆工の内側の少なくとも一部に沿って延在し、流体が浸透する多孔質体と、
前記多孔質体の内側に配置される管状の第2覆工と、
を含み、
前記多孔質体がポーラスコンクリートである、構造物。
【請求項7】
水を遮る壁と、
取水部から前記壁を通って出水部まで延在するとともに、前記水が浸透する多孔質体と、を備える構造物であり、
前記多孔質体の前記取水部が通常の水位よりも高い位置に配置され
前記多孔質体は、前記取水部と、前記取水部に連通し、水平方向に対して下向きに傾斜して延びる中間部と、前記中間部に連通する前記出水部と、を含む、構造物。
【請求項8】
管状の第1覆工と、
前記第1覆工の内側の少なくとも一部に沿って延在し、流体が浸透する多孔質体と、
前記多孔質体の内側に配置される管状の第2覆工と、
前記流体が、前記第2覆工を貫通して前記多孔質体に達する貫通孔を流れたことを検出するセンサと、を含む構造物の診断方法であり、
前記センサを用いて、前記流体が前記貫通孔を流れたか判定するステップを含む、構造物の診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造物及び構造物の診断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一方側から他方側へ流体が移動することを少なくとも部分的に妨げる構造物が知られている。例えば特許文献1に例示するトンネルは、トンネル外部の水がトンネル内部に流入することを防ぐ。また、ダムは、内側に存在する水が外側に流出することを防ぐ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「トンネル標準示方書 [共通編]・同解説/[シールド工法編]・同解説」、土木学会、2016年制定、第1編 総論 鉄道・道路・通信トンネル p21 解説 図1.3.7 通信トンネル断面図の例
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、構造物が劣化した場合、流体の内部への流入又は外側への流出を完全に防ぐことができず、流体の圧力が構造物の局所に集中することにより構造物が破壊するおそれがある。
【0005】
本開示は、構造物が劣化した場合に流体の圧力が構造物の局所に集中することを抑制し、構造物の破壊を未然に防ぐことが可能な構造物及び構造物の診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る構造物は、管状の第1覆工と、前記第1覆工の内側の少なくとも一部に沿って延在し、流体が浸透する多孔質体と、前記多孔質体の内側に配置される管状の第2覆工と、を含む。
【0007】
一実施形態に係る構造物は、水を遮る壁と、開口部から前記壁を通って出水口まで延在するとともに、前記水が浸透する多孔質体と、を備える構造物であり、前記多孔質体の前記開口部が通常の水位よりも高い位置に配置される。
【0008】
一実施形態に係る構造物の診断方法は、管状の第1覆工と、前記第1覆工の内側の少なくとも一部に沿って延在し、流体が浸透する多孔質体と、前記多孔質体の内側に配置される管状の第2覆工と、前記流体が、前記第2覆工を貫通して前記多孔質に達する貫通孔を流れたことを検出するセンサと、を含む構造物の診断方法であり、前記センサを用いて、前記流体が前記貫通孔を流れたか判定するステップを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、構造物が劣化した場合に流体の圧力が構造物の局所に集中することを抑制し、構造物の破壊を未然に防ぐことが可能な構造物及び構造物の診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る構造物の断面図を示す。
図2】第1実施形態に係る構造物の変形例の断面図を示す。
図3図2の構造物の側面透視図を示す。
図4図2に示す構造体200の診断方法の一例を示すフローチャートである。
図5A】第2実施形態に係る構造物の横断面図を示す。
図5B】第2実施形態に係る構造物の正面図を示す。
図5C】第2実施形態に係る構造物の上方からの透視図を示す。
図6A】第3実施形態に係る構造物の横断面図を示す。
図6B】第3実施形態に係る構造物の正面図を示す。
図6C】第3実施形態に係る構造物の上方からの透視図を示す。
図7A】従来のトンネルを示す。
図7B】従来のトンネルを示す。
図7C】従来のトンネルを示す。
図7D】従来のトンネルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(トンネル)
非特許文献1に記載され図7Aに示す従来のトンネル700では、土壌1000側の覆工材(一次覆工材)710に、腐食等で劣化する可能性のある金属等の材料を使用している。また、トンネル内空間側の覆工材(二次覆工材)730は一般にコンクリート等の材料を使用している。土壌1000側の覆工材710は、流体1100がトンネル700の内部に流入することを妨げる。
【0012】
このような構造物の場合、図7Bに示すように、土壌1000側の覆工材710が腐食等で劣化すると、土壌1000側の覆工材710の内側に地下水等の流体1100や土砂が流入する。
【0013】
トンネル内空間側の覆工材730の劣化が進行すると、滞留水等の影響をトンネル内空間側の覆工材730が直接受けることになる。これにより、下記の参考文献1に記載されるように、トンネル内空間側の覆工材730にひび割れが生じたり、図7Cに示すように、覆工材710及び730の間の継ぎ目等の隙間に水が流入したりする。ひび割れや水の流入がさらに進行すると、図7Dに示すように、トンネル内空間側の覆工材730が崩落し崩落片740が落下したり、大規模出水及び土砂流入により道路が陥没したりするなどのおそれがある。
[参考文献1]「トンネル・ライブラリー 第30号」、土木学会、平成31年1月15日第1版・第1刷発行、p126 表-3.3.5 トンネル補修・補強技術の種類と変遷 1山岳トンネル(鉄道・道路)/矢板工法 NATM(その3)の漏水対策の欄
【0014】
トンネル内空間側の覆工材730は一般的に不透明であるため、外観を目視する等の遠隔診断によって、土壌1000側の覆工材710の劣化状況や健全性を、速やか且つ簡便に確認することが難しかった。
【0015】
第1実施形態に係る構造物は、覆工材の劣化状況や健全性を、速やか且つ簡便に確認することが可能な構造物を提供することを目的とする。
【0016】
以下、本開示の一実施形態に係る構造物について説明する。
【0017】
図1に示すように、トンネル、地下道等の構造物100は、管状の第1覆工110と、第1覆工110の内側全体に沿って延在し、流体が浸透する多孔質体120と、多孔質体120の内側に配置される管状の第2覆工130と、を含む。また、第1覆工110を貫通して多孔質体120に達するとともに、構造物100の軸方向(図1の紙面に直交する方向)に延びる貫通孔140が形成されている。
【0018】
図1に示す第1覆工110は円筒形である。第1覆工110の形状を矩形状、楕円形状等とすることもできる。以下述べる多孔質体120及び第2覆工130の形状も同様である。第1覆工110は流体1100が構造物100の内部に流入することを妨げる。第1覆工110を金属とすることができる。
【0019】
本実施形態では、シールドマシンで土壌1000を掘りながら、掘った部分が崩れないように第1覆工110が設けられる。また第1覆工110をセグメントから組み立てることができる。
【0020】
多孔質体120には気泡や空孔が存在する。多孔質体120は第1覆工110の内側の少なくとも一部に沿って延在していればよい。例えば他の実施形態では、多孔質体120は、構造物100の貫通孔140が設けられている側(図1の右側)に、構造物100の上部から下部まで延在する。多孔質体120は、ポーラスコンクリート、軽石等とすることが、強度の点から好ましい。多孔質体120をスポンジ、ゼオライト、多孔質セラミックス、多孔質ガラス、多孔質繊維、発泡体、ウレタンゴム、プラスチックフォーム等としてもよい。多孔質体120の厚さは例えば数mmから数cmであるが、この範囲に限定されるものではない。
【0021】
多孔質体120が、第1覆工110の内側に吹き付けられる。多孔質体120をパネルとして第1覆工110の内側に取り付けることもできる。
【0022】
第2覆工130はコンクリートとすることができる。第1覆工110と第2覆工130とを同じ材料で構成することもできる。
【0023】
貫通孔140が、構造物100の下部の、図1の右側に形成されている。貫通孔の他の配置も可能であり、例えば貫通孔140を図1の左右両側それぞれに形成することもできる。貫通孔140の断面形状は例えば円形状とすることができる。貫通孔140を、ドリル等で形成することができる。
【0024】
構造物100は道床150を含む。作業者は道床150の上を歩くことができる。物資等を道床150上で運搬することもできる。道床150はコンクリートとすることができる。
【0025】
図2は、第1実施形態に係る構造物100の変形例である構造物200の断面図を示す。構造物200は、構造物100に類似する構成を有する。そのため、構造物200における、構造物100とは異なる構成について説明し、構造物100について説明した構成の説明は省略する。
【0026】
構造物200は、貫通孔140から流出する、地下水等の流体1100を受けて貯水槽等に流す流路260を更に備える。また、図2に示すように、貫通孔140の出口には、例えばセンサとしての流量計270が設けられる。
【0027】
本実施形態では、流路260は、二次覆工130の下部の内面上の、道床150の両側に形成される。貫通孔140は、図3に示すように構造物100の軸方向(図2の紙面に直交する方向)に延びて、貯水槽に連通する。
【0028】
以下、図2及び3を参照して、構造物200の第1覆工110が劣化した場合の挙動について説明する。
【0029】
第1覆工110が劣化(ひび割れ等)すると、劣化箇所から、構造物200の外側に存在する地下水等の流体1100が第1覆工110に流入し始める。
【0030】
劣化が多孔質体120まで進展すると、流体1100は多孔質体120に流入する。この際に、多孔質体120には気泡や空孔が存在するため、流体1100は多孔質体120の広範囲に浸透する。そのため、流体1100の水圧が分散緩和され、第2覆工130で応力が集中することを妨げ得る。その結果、第2覆工130が劣化することを防止できる。なお、ここまで構造物200の挙動について説明したが、図1に示す構造物100でも同様の挙動を示す。
【0031】
流体1100が多孔質体120に更に流入すると、図2及び図3に示すように、流体1100は、多孔質体120を通って貫通孔140に達し、その後流路260まで流れる。この際に、流量計270は、貫通孔140を流れる流体1100の流量を測定する。流路260はその後、構造物200の延在方向、すなわち構造物200の軸方向に流れ、貯水槽に流入する。
【0032】
このように流体1100が貯水槽まで流れることで、流体1100が、構造物200の第1覆工110、多孔質体120又は第2覆工130に留まることを防止できる。その結果、これら部材に大きな負荷が加わることを防止できる。
【0033】
また、流量計270が貫通孔140を流れる流体1100の流量を測定することで、第1覆工110の劣化状況や健全性を確認することができる。具体的には、流体1100が貫通孔140を流れたことを、流量計270が検出することで、第1覆工110が劣化していると推測できる。また、流量計270が大きな流量を測定した場合には、第1覆工110の劣化が激しいと推測できる。また、流量計270に代えて又はこれとともに、流路260に水位計を設けて同様の推測を行ってもよい。作業者が貫通孔140や流路260を目視して、第1覆工110の劣化状況や健全性を確認することもできる。なお、貫通孔140の出口等に、流体1100が流れたことを通電により感知する通電計を設けることもできる。
【0034】
貫通孔140を流れる流体1100の濁度等の水質を測定することで、流体1100に土砂が混入しているか確認することができる。例えば、貫通孔140の出口等に、測色計又は濁度計を設けることで、汚濁した水を識別できる。流体1100の濁度が大きい場合、貫通孔140まで大量の土砂が流入しており、第1覆工110の劣化が激しいと推測できる。また、貫通孔140の出口等に、溶存イオンの濃度を分析する水質計を設けることもできる。
【0035】
図3を参照して、多孔質体120における流体1100の浸透を遮る仕切り310が、構造物100の軸方向に離間して設けられている。
【0036】
仕切り310は、例えば構造物200の軸方向に隣接する多孔質体120同士を接続する前に、多孔質体120同士の端部を塞ぐことで形成できる。
【0037】
仕切り310を設けることで、流体1100が多孔質体120に浸透する範囲を限定できる。これにより、貫通孔140のある部分に流体1100が流れた場合、当該部分付近で第1覆工110が劣化していると特定できる。さらに、流量計270を仕切り310で区画された領域ごとに設けることで、劣化部分の特定をより容易にすることができる。
【0038】
(診断方法)
次に、一実施形態に係る構造物の診断方法について説明する。図4は、図2に示す構造物200の診断方法の一例を示すフローチャートである。
【0039】
ステップS41において、図2を参照して、センサとしての流量計270により、貫通孔140を流れる流体1100の流量を測定する。
【0040】
ステップS42において、流体1100が貫通孔140を流れたか判定する。例えば、流量計270や水位計の測定値が、ある閾値以上であるときに、流体1100が貫通孔140を流れたと判定する。この場合に、ステップ43に進む。一方、流体1100が貫通孔140を流れていないと判定した場合、ステップ41に戻る。
【0041】
流体1100が貫通孔140を流れている場合、第1覆工110が劣化していると推測できる。そのため、ステップS43において、構造物200の補修が必要であるとの警報を通知する。例えば、ブザーを鳴らしたり、ランプを点灯させたりすることで、警報を通知できる。
【0042】
ここで、センサが複数設けられている場合には、どのセンサを用いて流体1100が貫通孔140を流れたと判定したか通知することもできる。これにより、第1覆工110の劣化箇所の特定を容易にすることができる。
【0043】
ステップS44において、作業者は、警報を受けて、構造物200を補修する。例えば作業者は、第1覆工110の劣化箇所付近を、その内側を覆う第2覆工130及び多孔質体120を除去することで露出させる。その後作業者は、劣化箇所を補修できる。
【0044】
以上の方法によって、構造物200の保全管理を容易に行うことができる。
【0045】
(ダム及び堰)
例えば大雨が降り、ダムや堰への流入量が、放流量を上回り、水位が危険水位(最大水位)に到達することが予測される場合に、放流量を流入量相当に増加させる緊急放流が行われる。この操作を行うと、下流河川の水位が高くなる恐れがある。
【0046】
第2実施形態に係る構造物は、水位が危険水位に到達する前に、適切な流量で放流することが可能な構造物を提供することを目的とする。
【0047】
以下、本開示の第2実施形態に係る構造物について説明する。
【0048】
図5A~5Cに示すように、ダム等の構造物500は、水1200を遮る壁510と、取水部520iから壁510を通って出水部530まで延在するとともに、水1200が浸透する多孔質体520と、を備える。
【0049】
壁510は、例えばコンクリートである。壁510の高さは、危険水位よりも高い。
【0050】
多孔質体520は、水1200に対向して構造物500の幅方向に延びる取水部520iと、構造物500の幅方向両端付近で取水部520iに連通し、水平方向に対して下向きに傾斜して延びる中間部520mと、を含む。中間部520mは、水1200の反対側に開口し空洞である出水部530に連通する。多孔質体520の取水部520iは、通常時の水位(以下、「通常水位」と呼ぶ)よりも高い位置に配置される。出水部530は、通常水位よりも低い位置に配置される。
【0051】
水1200の水位が取水部520iの下縁(この水位を以下「注意水位」という)以下の場合は、水1200は多孔質体520に流入しない。
【0052】
水位が注意水位を越えると、構造物500内の水1200が取水部520iから多孔質体520に流入する。流入した水1200は、多孔質体520内に広く浸透し、出水部530から構造物500の外に放出される。
【0053】
水1200が多孔質体520内に広く浸透することで、水1200は、壁510に大きな水圧をかけることなく取水部520iから出水部530まで流れることができる。また、水1200の多孔質体520への浸透速度は所定の範囲に制限されるため、水1200が急激に出水部530から放出されることを妨げ得る。
【0054】
水位が、注意水位よりも高く、かつ取水部520iの上縁よりも低い間は、水位が高くなるにつれて、水1200の取水部520iへの流入量が増加する。そのため、早急に水1200の水位を下げることができる。なお、本実施形態では、取水部520iの上縁は、危険水位と同じ高さに配置される。
【0055】
水位が、取水部520iの上縁よりも高い場合には、水1200の取水部520iへの流入量は水位に関わらず一定となる。これにより、水1200が取水部520iから出水部530まで流れる際に、壁510に過大な水圧がかかることを防止できる。
【0056】
以下、本開示の第3実施形態に係る構造物について説明する。
【0057】
図6A~6Cに、第3実施形態に係る構造物600の断面図を示す。構造物600は、構造物500に類似する構成を有する。そのため、構造物500における、構造物500とは異なる構成について説明し、構造物500について説明した構成の説明は省略する。
【0058】
堰等の構造物600は、多孔質体520の下側に配置される空洞部620を含む。空洞部620は、水1200に対向するとともに構造物600の幅方向に延びる取水部620iと、構造物600の幅方向両端付近で取水部620iに連通し、水平方向から下向きに傾斜して延びる中間部620mと、中間部620mに連通して水1200の反対側を向く空洞部である出水部620оと、を含む。空洞部620の取水部620iは通常水位以下の位置に配置される。本実施形態では、取水部620iの上縁は通常水位と実質的に同じ高さである。出水部620оは、通常水位よりも低い位置に配置される。
【0059】
多孔質体520の出水部520оは、空洞部620の出水部620оに接続する。
【0060】
水1200の水位が取水部620iの下縁(この水位を以下「低水位」という)以下の場合は、水1200は空洞部620に流入しない。
【0061】
水位が低水位を越えると、構造物600内の水1200が取水部620iから空洞部620に流入する。流入した水1200は、出水部620оから空洞部620の外に放出される。
【0062】
水位が、低水位よりも高く、かつ取水部620iの上縁以下である間は、水位が高くなるにつれて、取水部620iへの水1200の流入量が増加する。そのため、早急に水1200の水位を下げることができる。
【0063】
水位が、通常水位よりも高い場合には、水1200の取水部620iへの流入量は水位に関わらず一定となる。これにより、水1200が取水部620iから出水部620оまで流れる際に、壁510に過大な水圧がかかることを防止できる。
【0064】
水位が注意水位を越えると、構造物600内の水1200が取水部520iから多孔質体520に流入する。流入した水1200は、多孔質体520内に広く浸透し、出水部620оから構造物600の外に放出される。
【符号の説明】
【0065】
100 構造物
110 第1覆工
120 多孔質体
1200 水
130 第2覆工
140 貫通孔
150 道床
200 構造物
260 流路
310 仕切り
500 構造物
510 壁
520 多孔質体
520i 取水部
520о 出水部
530 出水部
600 構造物
620 出水部
620 空洞部
620i 取水部
1000 土壌
1100 流体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図7D