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特許7575714保全対応時期提案装置、保全対応時期方法、及び、保全対応時期提案プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】保全対応時期提案装置、保全対応時期方法、及び、保全対応時期提案プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 41/0654 20220101AFI20241023BHJP
【FI】
H04L41/0654
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023539555
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029354
(87)【国際公開番号】W WO2023013045
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】石塚 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹下 恵
(72)【発明者】
【氏名】副島 裕司
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/122928(WO,A1)
【文献】特開2019-140496(JP,A)
【文献】特開2019-18979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/0654
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の不具合に対する予防保全の対応時期を提案する保全対応時期提案装置において、
装置の不具合の予兆を検知した予兆検知情報を受信する予兆受信部と、
前記装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用用途及び利用時期の計画を示したリソース利用計画情報を受信するリソース受信部と、
前記リソース利用計画情報に含まれる前記人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を、人的・物的リソースの利用用途及び利用期間を基に人的・物的リソースの利用量の推移データを生成する機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、前記装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用量の推移データを推定計算するリソース推定部と、
前記予兆検知情報と前記人的・物的リソースの利用量の推移データとを基に、前記装置の不具合に対して対処すべき時期及び方法を判定する対処判定部と、
を備える保全対応時期提案装置。
【請求項2】
前記予兆検知情報を基に、前記装置の不具合によるリスク度の推移データを推定計算するリスク推定部を更に備え、
前記対処判定部は、
前記リスク度の推移データから前記人的・物的リソースの利用量の推移データを差し引いた差分推移データを求め、前記差分推移データの値が、差分の指標に対して予め定めた所定対処方法の閾値に合致する時期を、前記所定対処方法の対処時期として判定する請求項1に記載の保全対応時期提案装置。
【請求項3】
前記リソース推定部は、
前記装置の不具合に対して判定した対処すべき時期と人が判断した対処すべき時期との差が小さくなるように、複数のリソース利用計画情報にそれぞれ含まれる人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を前記機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、人的・物的リソースの利用量の推移データのパターン形状の変動パラメータを更新する請求項1又は2に記載の保全対応時期提案装置。
【請求項4】
前記変動パラメータは、
前記人的・物的リソースの利用量の立ち上がり期間、収束期間、最大値である請求項3に記載の保全対応時期提案装置。
【請求項5】
前記機械学習エンジンは、
前記人的・物的リソースの利用用途毎に、人的・物的リソースのリソース利用量の推移データのパターンを生成する請求項3又は4に記載の保全対応時期提案装置。
【請求項6】
前記対処判定部は、
前記装置の不具合の発生予測期間に含まれる、前記装置の不具合に対して対処すべき時期を判定する請求項1乃至5のいずれかに記載の保全対応時期提案装置。
【請求項7】
装置の不具合に対する予防保全の対応時期を提案する保全対応時期提案方法において、
保全対応時期提案装置が、
装置の不具合の予兆を検知した予兆検知情報を受信するステップと、
前記装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用用途及び利用時期の計画を示したリソース利用計画情報を受信するステップと、
前記リソース利用計画情報に含まれる前記人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を、人的・物的リソースの利用用途及び利用期間を基に人的・物的リソースの利用量の推移データを生成する機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、前記装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用量の推移データを推定計算するステップと、
前記予兆検知情報と前記人的・物的リソースの利用量の推移データとを基に、前記装置の不具合に対して対処すべき時期及び方法を判定するステップと、
を行う保全対応時期提案方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の保全対応時期提案装置としてコンピュータを機能させる保全対応時期提案プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保全対応時期提案装置、保全対応時期方法、及び、保全対応時期提案プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ、ルータ、スイッチ等のネットワーク上の装置には、ネットワークインフラの監視・管理に用いるテレメトリ等の技術を踏まえ、装置内の詳細な状態をリアルタイムで取得・送信する機能を備えているものがある。ネットワークの監視・管理者は、この機能で装置内の詳細な状態を取得することで、故障等の予兆を把握可能となり、装置の予防保全を実施することができる。
【0003】
装置の故障等の予兆に対しては、直ちに対処するよりも、人的・物的リソースに余裕のある都合の良い時間に実施することが望ましい。つまり、人的・物的リソースの利用計画の少ない時期を装置の予防保全の実施時期とすべきである。そこで、与えられた条件を基に効率的に人的リソースの割り付けを行うスケジューリング支援技術が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】陳、外1名、“ガントチャートとRPAを活用した計画業務の支援方法の提案”、経営情報学会2020年全国研究発表大会、2020年11月7日、8日、p.148-p.151、[online]、[2021年7月15日検索]、インターネット<URL : https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasmin/202011/0/202011_148/_pdf/-char/ja>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1は、人的リソースの割り付けを行う技術にすぎず、その前提である人的リソースの利用量の推定作業については、人手で実施しなければならない。そのため、装置の予防保全の実施計画の作成を完全に自動化できなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、故障や障害等といった装置の不具合の予兆に対し、人手を介さずに自動で装置の予防保全の実施計画を立案可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の保全対応時期提案装置は、装置の不具合に対する予防保全の対応時期を提案する保全対応時期提案装置において、装置の不具合の予兆を検知した予兆検知情報を受信する予兆受信部と、前記装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用用途及び利用時期の計画を示したリソース利用計画情報を受信するリソース受信部と、前記リソース利用計画情報に含まれる前記人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を、人的・物的リソースの利用用途及び利用期間を基に人的・物的リソースの利用量の推移データを生成する機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、前記装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用量の推移データを推定計算するリソース推定部と、前記予兆検知情報と前記人的・物的リソースの利用量の推移データとを基に、前記装置の不具合に対して対処すべき時期及び方法を判定する対処判定部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様の保全対応時期提案方法は、装置の不具合に対する予防保全の対応時期を提案する保全対応時期提案方法において、保全対応時期提案装置が、装置の不具合の予兆を検知した予兆検知情報を受信するステップと、前記装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用用途及び利用時期の計画を示したリソース利用計画情報を受信するステップと、前記リソース利用計画情報に含まれる前記人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を、人的・物的リソースの利用用途及び利用期間を基に人的・物的リソースの利用量の推移データを生成する機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、前記装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用量の推移データを推定計算するステップと、前記予兆検知情報と前記人的・物的リソースの利用量の推移データとを基に、前記装置の不具合に対して対処すべき時期及び方法を判定するステップと、を行う。
【0009】
本発明の一態様の保全対応時期提案プログラムは、上記保全対応時期提案装置としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、故障や障害等といった装置の不具合の予兆に対し、人手を介さずに自動で装置の予防保全の実施計画を立案可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、保全対応時期提案装置の機能ブロック構成を示す図である。
図2図2は、リスク度の推移データの例、人的・物的リソースの利用量の推移データの例を示す図である。
図3図3は、保全対応時期提案装置の処理フローを示す図である。
図4図4は、予兆検知情報の例を示す図である。
図5図5は、予兆関連情報の例を示す図である。
図6図6は、リスク度の推移データの例を示す図である。
図7図7は、リソース利用計画情報の例を示す図である。
図8図8は、人的・物的リソースの利用量の推移データの例を示す図である。
図9図9は、リスク度の推移データの例、リソース利用計画情報の例、差分推移データの例を示す図である。
図10図10は、推奨対処時期及び推奨対処方法の例を示す図である。
図11図11は、キーワード毎の利用リソース推移パターンの例を示す図である。
図12図12は、保全対応時期提案装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0013】
[保全対応時期提案装置]
図1は、本実施形態に係る保全対応時期提案装置1の機能ブロック構成を示す図である。保全対応時期提案装置1は、サーバ、ルータ、スイッチ等のネットワーク上の装置(以降、NW装置)の不具合の予兆に対し、当該NW装置の予防保全の対応時期及び対応方法を提案するコンピュータである。不具合とは、例えば、NW装置の故障、障害等である。
【0014】
[保全対応時期提案装置の動作概要]
NW装置の予防保全の対応時期及び対応方法を提案するため、保全対応時期提案装置1は、NW装置の不具合の予兆を検知した予兆検知情報と、当該NW装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用用途及び利用時期の計画を示したリソース利用計画情報と、を入力とする。
【0015】
そして、保全対応時期提案装置1は、図2に示すように、上記予兆検知情報を基に、NW装置の不具合によるリスク度の推移データRを推定計算し、上記リソース利用計画情報を基に、人的・物的リソースの利用量の推移データUを推定計算する。
【0016】
その後、保全対応時期提案装置1は、リスク度の推移データRから人的・物的リソースの利用量の推移データUを差し引いた差分推移データ(不図示)を基に、予兆の検知時点T1から不具合発生予測時期T2までの不具合発生予測期間D1内及びその前後期間において、人的・物的リソースの利用量に余裕のある期間D2内を、NW装置の予防保全の対応時期として提案する。
【0017】
特に、本実施形態では、保全対応時期提案装置1は、人的・物的リソースの利用量の推移データUを推定計算する際に、人的・物的リソースの利用用途及び利用期間を基に人的・物的リソースの利用量の推移データを生成する機械学習エンジンを用いる。保全対応時期提案装置1は、入力していたリソース利用計画情報に含まれる人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を当該機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、不具合発生予測期間D1に関連する人的・物的リソースの利用量の推移データUを推定計算する。
【0018】
また、本実施形態では、保全対応時期提案装置1は、NW装置の不具合に対して判定した対処すべき時期と人が判断した対処すべき時期との差が小さくなるように、複数のリソース利用計画情報にそれぞれ含まれる人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を上記機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、人的・物的リソースの利用量の推移データのパターン形状の変動パラメータを更新する。
【0019】
このように、保全対応時期提案装置1は、機械学習エンジンを用いて人的・物的リソースの利用量の推移データUを推定計算するので、故障や障害等といったNW装置の不具合の予兆に対し、人手を介さずに自動でNW装置の予防保全の実施計画を適切に立案可能な技術を提供可能となる。
【0020】
また、保全対応時期提案装置1は、NW装置の不具合に対して判定した対処すべき時期と人が判断した対処すべき時期との差が小さくなるように、機械学習エンジンの機械学習を繰り返すので、NW装置の予防保全の実施計画を適切に立案可能な技術を提供可能となる。
【0021】
さらに、保全対応時期提案装置1は、人的・物的リソースの利用量に余裕のある期間D2内をNW装置の予防保全の対応時期として提案するので、NW装置の予防保全の実施計画をより適切に立案可能な技術を提供可能となる。
【0022】
[保全対応時期提案装置の構成]
上記概要動作を実行し、その効果を実現するため、保全対応時期提案装置1は、例えば、図1に示したように、予兆受信部11と、リスク推定部12と、予兆関連情報記憶部13と、リソース受信部14と、リソース推定部15と、リソース利用計画情報記憶部16と、対処判定部17と、対処出力部18と、を備える。IF-Aは、保全対応時期提案装置1の運用時のインタフェースである。IF-Bは、機械学習エンジンの学習時のインタフェースである。
【0023】
予兆受信部11は、NW装置の不具合の予兆を検知した予兆検知情報を受信する機能を備える。例えば、予兆受信部11は、OpS(Operation System)(不図示)や予兆検知装置(不図示)から、当該OpSや当該予兆検知装置がNW装置から受信していた予兆検知情報を取得する。予兆検知情報には、例えば、不具合の予兆のあったNW装置名、NW装置の設置場所、予兆検知日時、予兆名等が含まれている。
【0024】
リスク推定部12は、予兆検知情報を基に、運用者等により予兆関連情報記憶部13に予め設定された予兆関連情報を用いて、NW装置の不具合によるリスク度の推移データを推定計算する機能を備える。
【0025】
予兆関連情報記憶部13は、運用者等により予め設定された予兆関連情報を記憶する機能を備える。予兆関連情報には、例えば、予兆名、予兆のあったNW装置の不具合に対して有効な対処方法、予兆の検知時点から不具合発生時期までの猶予期間等が設定されている。
【0026】
リソース受信部14は、NW装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用用途及び利用時期の計画を示したリソース利用計画情報を受信する機能を備える。例えば、リソース受信部14は、社内周知情報管理装置(不図示)から、当該社内周知情報管理装置に格納されている社内周知情報を取得する。社内周知情報には、所定のイベント(=人的・物的リソースの用途)を〇〇月××日から〇〇月△△日まで行うことが記載されている。
【0027】
社内周知情報以外に、例えば、リソース受信部14は、災害対策用伝達ツール等(不図示)から災害対応連絡票を取得する。災害対応連絡票には、□□月から◇◇月まで震災(=人的・物的リソースの用途)の対応を行うことが記載されている。その他、リソース利用計画情報には、EoL(End of Life)による部材の枯渇に関する情報、イベント開催による人的リソースの枯渇に関する情報等がある。
【0028】
リソース推定部15は、リソース利用計画情報に含まれる人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を、人的・物的リソースの利用用途及び利用期間を基に人的・物的リソースの利用量の推移データを生成する機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、NW装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用量の推移データを推定計算する機能を備える。
【0029】
また、リソース推定部15は、複数のリソース利用計画情報にそれぞれ含まれる人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を機械学習エンジンに入力して機械学習を繰り返すことにより、人的・物的リソースの利用量の推移データのパターン形状を形成する変動パラメータを更新する機能を備える。変動パラメータとは、例えば、人的・物的リソースの利用量の立ち上がり期間、収束期間、最大値である。
【0030】
さらに、リソース推定部15は、NW装置の不具合に対して保全対応時期提案装置1が判定した対処すべき時期と人が判断した対処すべき時期との差が小さくなるように、機械学習エンジンの機械学習を繰り返すことにより、上記変動パラメータをより適切に更新する機能を備える。
【0031】
リソース利用計画情報記憶部16は、機械学習エンジンが人的・物的リソースの利用量の推移データを推定計算する際、機械学習を行う際等に用いる各種データを記憶する機能を備える。例えば、リソース利用計画情報記憶部16は、リソース利用計画情報に含まれていた人的・物的リソースの利用用途及び利用時期、変動パラメータ、運用者端末(不図示)から入力された人が判断した対処すべき時期(機械学習の教師データ:正答)等を記憶する。
【0032】
対処判定部17は、予兆検知情報と人的・物的リソースの利用量の推移データとを基に、NW装置の不具合の発生予測期間に含まれる期間内又はその前後の期間を含む期間内で、NW装置の不具合に対して対処すべき時期及び方法を判定する機能を備える。具体的には、対処判定部17は、予兆検知情報を基に推定計算したリスク度の推移データから人的・物的リソースの利用量の推移データを差し引いた差分推移データを求め、当該差分推移データの値が、当該差分の指標に対して予め定めた所定対処方法の閾値に合致する時期を、当該所定対処方法の対処時期として判定する。
【0033】
所定対処方法とは、例えば、遠隔リセット等の遠隔措置、オンサイトで部品等の交換を伴わないケーブルの抜き差し等の現地措置、オンサイトで部品交換等を行う現地交換、何もしない等である。
【0034】
対処出力部18は、NW装置の不具合に対して判定した対処すべき時期及び方法を推奨対処時期及び推奨対処方法として出力する機能を備える。例えば、対処出力部18は、判定した対処すべき時期及び方法を運用者端末の画面等に表示する。
【0035】
[保全対応時期提案装置の処理動作]
図3は、保全対応時期提案装置1の処理フローを示す図である。
【0036】
ステップS1;
まず、予兆受信部11が、NW装置の不具合の予兆を検知した図4の予兆検知情報を受信する。当該予兆検知情報には、障害の予兆のあったNW装置名、NW装置の設置場所、予兆検知日時、予兆名等が含まれている。
【0037】
ステップS2;
次に、リスク推定部12が、予兆関連情報記憶部13に格納されている図5の予兆関連情報から、予兆検知情報内の予兆名に対応する有効な対処方法及び猶予期間を取得し、予兆検知情報内の予兆検知日時と前記有効な対処方法及び猶予期間とを基に、NW装置の障害によるリスク度の推移データを推定計算する。
【0038】
例えば、リスク推定部12は、図6に示すように、予兆検知日時を予兆の検知時点T1とし、予兆の検知時点T1に猶予期間を加算した時期をNW装置の障害発生予測時期T2とし、T1からT2までの期間をNW装置の障害発生予測期間D1とし、予兆名に応じたリスク度を有する推移データRを払い出す。
【0039】
なお、リスク推定部12は、予兆名に応じて異なる経時的なリスク度を予め保持している。例えば、予兆Aについては短期間で急峻に上昇するリスク度を保持し、予兆Bについては長期間で緩やかに上昇するリスク度を保持している。
【0040】
ステップS3;
次に、リソース受信部14が、上記NW装置の障害発生予測期間D1に関連する人的・物的リソースの利用用途及び利用時期の計画を示した複数のリソース利用計画情報を受信する。例えば、リソース受信部14は、図7(a)の周知情報、図7(b)の災害対応連絡票を受信する。
【0041】
ステップS4;
次に、リソース推定部15が、複数のリソース利用計画情報に含まれる人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を基に、上記NW装置の障害発生予測期間D1に関連する人的・物的リソースの利用計画を作成する。具体的には、リソース推定部15は、複数のリソース利用計画情報に含まれる人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、NW装置の障害発生予測期間D1に関連する人的・物的リソースの利用量の推移データを推定計算する。
【0042】
推定計算のイメージとしては、図8に示すように、図7(a)の周知情報の利用用途で必要となる人的・物的リソースの利用量の推移データU1と、図7(b)の災害対応連絡票の利用用途で必要となる人的・物的リソースの利用量の推移データU2と、を合算したような推移データUを作成する。
【0043】
ステップS5;
次に、対処判定部17が、図9に示すように、ステップS2で求めたリスク度の推移データRからステップS4で求めた人的・物的リソースの利用量の推移データUを差し引いた差分推移データWを求める。その後、対処判定部17は、ステップS2で取得していた有効な対処方法の閾値TH(当該差分の指標に対して予め定められていた閾値)を上回った時、当該対処方法をその時に実施すると判定する。
【0044】
このとき、対処判定部17は、NW装置の障害発生予測期間D1に含まれる対処時期のみを選択する。ただし、障害発生予測期間D1の最終時期である障害発生予測時期T2は、あくまでも保全対応時期提案装置1が自身で推定した予測時期であり、T2を経過しても障害が発生しない可能性もあるため、T2以降の期間に含まれる対処時期も選択してもよい。
【0045】
ステップS6;
最後に、対処出力部18は、NW装置の障害に対して判定した対処すべき時期及び方法を推奨対処時期及び推奨対処方法として出力する。例えば、対処出力部18は、図10の推奨対処時期及び推奨対処方法を出力する。
【0046】
[機械学習エンジンの機械学習]
リソース推定部15は、ステップS4で機械学習エンジンを使用するにあたり、複数のリソース利用計画情報にそれぞれ含まれる人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を機械学習エンジンに入力して機械学習を繰り返することにより、人的・物的リソースの利用量の推移データのパターン形状を形成する変動パラメータを何度も更新している。
【0047】
しかし、社内周知文書や災害対応連絡票のような自由度の高いリソース情報を保全対応時期提案装置1に入力し、機械学習で更新する中間層の内部パラメータを闇雲に設定しても、対処時期の判定精度が向上しない可能性がある。
【0048】
そこで、本実施形態では、人による対処時期の判断結果をフィードバックすることで、機械学習の精度を高めていくようにする。具体的には、機械学習エンジンの学習時において、実際に人が対処を行うべきと判断した対処時期を教師データ(正答)として取り込み、その対処時期に近い時期を出力するように機械学習エンジンを改善する。これにより、精度の高い対処時期を出力できるようにする。
【0049】
具体的には、リソース推定部15は、図11に示すように、人的・物的リソースの利用用途(社内周知文書に含まれるキーワード)毎に、人的・物的リソースのリソース利用量の推移データのパターンを生成する。そして、リソース推定部15は、キーワード毎の人的・物的リソースの利用量の推移データUの推定計算に必要となる変動パラメータを機械学習の内部パラメータとし、つまり、各キーワードに対応する利用リソース推移パターン(=U)の人的・物的リソースの利用量の立ち上がりの期間a1~a5、その収束期間b1~b5、確保すべき人的・物的リソースの最大値c1~c5を内部パラメータとし、目標関数である「|正答の対処時期-判定結果の対処時期|の総合計」が小さくなるように内部パラメータの各値をチューニングする。
【0050】
これにより、それぞれの利用リソース推移パターンが機械学習によって更新されるため、キーワードと利用リソース推移パターンとが次第に1:1で紐づくようになり、人による対処時期の判断結果に近い精度の高い対処時期を出力できるようになる。
【0051】
このように、リソース利用量の立ち上がりの期間a、収束期間b、最大値cを内部パラメータに用いることで、ロジックに基づいた意味のある機械学習が行われることから、機械学習の精度を高めることができる。また、内部パラメータの初期値は人の手でも入力できるため、機械学習の精度を早期に高めることができる。さらに、リソース利用量の立ち上がりの期間a、収束期間b、最大値cで構成される利用リソース推移パターンを用いるので、詳細なリソース利用計画情報が与えられていなくても、予防保全の対応時期及び対応方法を提案できる。
【0052】
[効果]
本実施形態によれば、保全対応時期提案装置1が、NW装置の不具合の予兆を検知した予兆検知情報を受信する予兆受信部11と、前記NW装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用用途及び利用時期の計画を示したリソース利用計画情報を受信するリソース受信部14と、前記リソース利用計画情報に含まれる前記人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を、人的・物的リソースの利用用途及び利用期間を基に人的・物的リソースの利用量の推移データを生成する機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、前記NW装置の不具合の発生予測期間に関連する人的・物的リソースの利用量の推移データを推定計算するリソース推定部15と、前記予兆検知情報と前記人的・物的リソースの利用量の推移データとを基に、前記NW装置の不具合に対して対処すべき時期及び方法を判定する対処判定部17と、を備えるので、故障や障害等といった装置の不具合の予兆に対し、人手を介さずに自動で装置の予防保全の実施計画を立案可能な技術を提供できる。
【0053】
また、本実施形態によれば、前記リソース推定部15は、前記NW装置の不具合に対して判定した対処すべき時期と人が判断した対処すべき時期との差が小さくなるように、複数のリソース利用計画情報にそれぞれ含まれる人的・物的リソースの利用用途及び利用時期を前記機械学習エンジンに入力して機械学習することにより、人的・物的リソースの利用量の推移データのパターン形状の変動パラメータを更新するので、前記NW装置の不具合に対して対処すべき時期の精度を高めることができ、NW装置の予防保全の実施計画を適切に立案可能な技術を提供できる。
【0054】
さらに、本実施形態によれば、対処判定部17は、前記NW装置の不具合の発生予測期間に含まれる、前記NW装置の不具合に対して対処すべき時期を判定するので、前記NW装置の不具合に対して対処すべき時期の精度をより高めることができ、NW装置の予防保全の実施計画をより適切に立案可能な技術を提供できる。
【0055】
以上の結果、本実施形態では、リソース状況を考慮した予防保全実施時期の算出に必要な情報を補完できるため、精度の高い結果が得られることが期待できるとともに、人の手で初期値を与えやすくなることで早期に学習精度が上がることが期待できる。これにより、曖昧な情報に基づいて、telemetryの解析等によって予兆を検知する手段を備えるNW装置について、障害を未然に防ぐことができるようになり、緊急対応が減り、夜間・休日等の対応が抑えられ、顧客への悪影響(通信品質低下等)も抑制できる。
【0056】
[その他]
本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0057】
上記説明した本実施形態の保全対応時期提案装置1は、例えば、図12に示すように、CPU901と、メモリ902と、ストレージ903と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906と、を備えた汎用的なコンピュータシステムを用いて実現できる。メモリ902及びストレージ903は、記憶装置である。当該コンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、保全対応時期提案装置1の各機能が実現される。
【0058】
保全対応時期提案装置1は、1つのコンピュータで実装されてもよい。保全対応時期提案装置1は、複数のコンピュータで実装されてもよい。保全対応時期提案装置1は、コンピュータに実装される仮想マシンであってもよい。保全対応時期提案装置1用のプログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。保全対応時期提案装置1用のプログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1:保全対応時期提案装置
11:予兆受信部
12:リスク推定部
13:予兆関連情報記憶部
14:リソース受信部
15:リソース推定部
16:リソース利用計画情報記憶部
17:対処判定部
18:対処出力部
901:CPU
902:メモリ
903:ストレージ
904:通信装置
905:入力装置
906:出力装置
図1
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図10
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図12