(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
A61C 15/02 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
A61C15/02 502
(21)【出願番号】P 2020082630
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2022-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】吉川 侑
(72)【発明者】
【氏名】朝山 紘貴
【審査官】松山 雛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-000778(JP,A)
【文献】特開2016-193084(JP,A)
【文献】特開2017-119095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、前記基部から先端に向かってテーパ形状に延在する軸部と、を有する基材部と、
前記軸部の少なくとも一部を
前記基材部よりも低い硬度を有する材料で被覆する軟質部と、を備え、
前記軟質部における前記基部側の縁部領域によって被覆された領域において、前記軸部は矩形の断面を有し、前記軟質部における前記基部側の縁部領域によって被覆された領域より先端側の領域において、前記軸部は円形の断面を有する、歯間清掃具。
【請求項2】
基部と、前記基部から先端に向かってテーパ形状に延在する軸部と、を有する基材部と、
前記軸部の少なくとも一部を
前記基材部よりも低い硬度を有する材料で被覆する軟質部と、を備え、
前記軟質部における前記基部側の縁部領域によって被覆された領域において、前記軸部の断面は、第1方向に規定される第1外形寸法と、前記第1方向に直交する第2方向に規定されて前記第1外形寸法より小さい第2外形寸法と、を有し、前記軟質部における前記基部側の縁部領域によって被覆された領域よりの先端側の領域において、前記軸部は円形の断面を有する、歯間清掃具。
【請求項3】
前記縁部領域は、前記軸部の軸方向に規定される前記軟質部の全長の4分の1以下の長さを有する、請求項1又は2に記載の歯間清掃具。
【請求項4】
前記軟質部は、前記軸部の外周面を被覆する被覆部と、前記被覆部から突き出る複数の突起部と、を備えており、前記縁部領域は、前記軟質部の前記基部側の縁部に沿って、前記突起部が形成されない最縁領域を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の歯間清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯間を清掃する歯間清掃具が知られている。例えば特許文献1に開示された歯間清掃具は、合成樹脂から形成された基材部と、エラストマーから形成された軟質部と、を備えている。基材部は、持ち手としての扁平なハンドル部と、ハンドル部の先端から延びる細長い芯基材部と、を備えている。軟質部は、芯基材部の少なくとも一部を覆う被覆部と、被覆部の表面から突き出る複数の突起部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
芯基材部は通常、その先端に向かうにつれて縮径する略円錐(テーパ)形状に形成されており、比較的狭い歯間から比較的広い歯間までの一定範囲の歯間を清掃することが出来る設計となっている。しかしながら、広い歯間を清掃するために芯基材部の基端側の太い箇所を使用して歯間を清掃する場合、歯間清掃具が芯基材部の軸心周りで回転することによって歯間清掃具が歯茎を傷つけてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、使用中の回転を防止することができる歯間清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る歯間清掃具は、基部と、基部から延在する軸部と、を有する基材部と、軸部の少なくとも一部を被覆する軟質部と、を備え、軟質部における基部側の縁部領域によって被覆された領域において、軸部は矩形の断面を有する。
【0007】
この態様によれば、歯間清掃具が、軟質部における基部側の縁部領域まで、すなわち、軟質部の基端側まで歯間に挿入された場合、軸部の断面の矩形の角部が歯の側面に突き当たることによって、軸部の軸心周りの歯間清掃具の回転を防止することができる。その結果、歯間清掃具の回転による歯茎の傷つきを回避することができる。
【0008】
本発明の一態様に係る歯間清掃具は、基部と、基部から延在する軸部と、を有する基材部と、軸部の少なくとも一部を被覆する軟質部と、を備え、軟質部における基部側の縁部領域によって被覆された領域において、軸部の断面は、第1方向に規定される第1外形寸法と、第1方向に直交する第2方向に規定されて第1外形寸法より小さい第2外形寸法と、を有する。
【0009】
この態様によれば、歯間清掃具が、例えばより大きな第1外形寸法を有する部分が鉛直方向に向く状態で、軟質部における基部側の縁部領域まで、すなわち、軟質部の基端側まで歯間に挿入された場合、第1外形寸法を有する部分が歯の側面に突き当たることによって、軸部の軸芯周りの歯間清掃具の回転を防止することができる。その結果、歯間清掃具の回転による歯茎の傷つきを回避することができる。
【0010】
上記態様において、縁部領域は、軸部の軸方向に規定される軟質部の全長の4分の1以下の長さを有することが好ましい。
【0011】
上記態様において、軟質部は、軸部の外周面を被覆する被覆部と、被覆部から突き出る複数の突起部と、を備えており、突起部は、軟質部の縁部領域において、軸部の軸心から最大距離にある位置から突き出る。この態様によれば、例えば軸部が矩形の断面を有する場合には、矩形の対角線上の角部からさらに突起部が突き出ることとなり、矩形の角部に加えてこれらの突起部が歯の側面にさらに突き当たることができるので、軸部の軸心周りの歯間清掃具の回転をさらに確実に防止することができる。
【0012】
上記態様において、軟質部は、軸部の外周面を被覆する被覆部と、被覆部から突き出る複数の突起部と、を備えており、縁部領域は、軟質部の基部側の縁部に沿って、突起部が形成されない最縁領域を含む。こうした構成によれば、軸部の基端側まで歯間に挿入された場合であっても、歯間清掃具は軟質部の最縁領域で歯茎に接触することができるので、歯茎の傷つきを回避することができる。一方で、突起部が形成されない最縁領域が形成されていない場合には、その領域で軸部が露出することになるため、軸部と歯茎との接触によって歯茎を傷つけてしまうおそれがある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用中の回転を防止することができる歯間清掃具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の構造を概略的に示す正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の構造を概略的に示す平面図ある。
【
図4】本発明の一実施形態に係る歯間清掃具の一部の構造を概略的に示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
図1~
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る歯間清掃具1は、基材部10と、基材部10の少なくとも一部を被覆する軟質部20と、を備えている。歯間清掃具1は、例えば基材部10に形成された1対の接続部30、30によって歯間清掃具1の短手方向(第1方向)D1に例えば10個の歯間清掃具1が並列に接続されて形成された接続体40から個別に切り離されたものである。
【0016】
基材部10は、使用者が把持する基部11と、基部11の先端から歯間清掃具1の短手方向D1に直交する長手方向D2に延在して、使用者の歯間に挿入される軸部12と、を備えている。なお、本明細書において、基部11から軸部12に向かう側を先端側とし、軸部12から基部11に向かう側を基端側とする。
【0017】
基部11は、例えば扁平に広がる板状に形成されており、本実施形態では、例えば平たい直方体形状に形成されているが、使用者が把持することができる形状であれば、その他の形状に形成されてもよい。
【0018】
軸部12は、基部11の一端である先端から長手方向D2に延在している。軸部12は、基部11から連続して扁平な板状に延在する移行部13と、移行部13の先端から軸部12の先端まで細い軸状に延びる先端部14と、を備えている。移行部13は、軸部12の先端に向かうにつれて短手方向D1に沿って規定される幅を減少させるテーパ形状に形成される。
【0019】
基材部10は例えば合成樹脂材料から成形される。合成樹脂材料としては、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリアミド等を採用することができる。また、合成樹脂材料には、例えば1~30重量%程度の割合でガラス繊維等の繊維素材が添加されてもよい。
【0020】
軟質部20は、軸部12の先端部14の少なくとも一部の外周面を被覆する被覆部21と、被覆部21から突き出る複数の突起部22と、を備えている。突起部22は、例えば円錐形状に形成されており、被覆部21の基端から先端まで、軸部12の先端部14の軸心周りに螺旋状に配置されている。被覆部21の外周面からの突起部22の高さは、被覆部21の基端から先端に向かうにつれて減少する。
【0021】
軟質部20は、基部10の合成樹脂材料の硬度よりも低い硬度を有する樹脂材料から形成される。樹脂材料としてはエラストマーを採用することができ、エラストマーとしては、スチレン系エラストマー、シリコーン、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が用いられてもよい。エラストマーの硬度は、デュロメータ硬さタイプA(JISK6253)が、10~50であることが好ましく、10~40であることがより好ましい。本実施形態では、デュロメータ硬さタイプAは35である。
【0022】
本実施形態の歯間清掃具1において、長手方向D2に規定される基材部10の長さL1は例えば45mm~55mmに設定されている。短手方向D1に規定される基部11の幅W1は例えば3mm~10mmに設定されている。また、短手方向D1及び長手方向D2に直交する厚さ方向(第2方向)D3に規定される基部11の厚さT1は例えば0.5mm~10mmに設定されている。
【0023】
長手方向D2に規定されるその基端から先端までの被覆部21の長さは例えば10mm~25mmに設定されている。被覆部21の長さは、好ましくは15mm以上であり、本実施形態では例えば20mmに設定されている。被覆部21は、長手方向D2の同じ位置では均一な厚さで形成されており、その厚さは例えば0.1mm~2.5mmに設定されている。被覆部21の外周面からの突起部22の高さは例えば0.1mm~5.0mmに設定されている。
【0024】
軸部12の先端部14は、その先端から基端に向かって延びる先端領域14aと、先端領域14aから移行部13まで延びる基端領域14bと、を備えている。先端領域14aは被覆部21に被覆されている。
図4に示すように、被覆部21は、被覆部21の基部11側すなわち基端側の縁部に沿って縁部領域21aを規定している。なお、軸部14の先端領域14aは、その基端から先端に向かうにつれてその縮径するテーパ形状に形成されており、その直径又は一辺の長さは例えば0.6mm~3.0mmに設定されている。また、本実施形態では、縁部領域21aは、被覆部21の長さ20mmの4分の1以下の長さを有することが好ましい。本実施形態では、縁部領域21aの長さは、全長の4分の1である5mmに設定されている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、被覆部21の縁部領域21aにおける被覆部21の基部11側すなわち基端側の縁部には、突起部22が形成されていない最縁領域21bが設けられている。長手方向D2に規定される最縁領域21bの長さは、長手方向D2に規定される縁部領域21aの長さの例えば5分の1以下に設定される。本実施形態では、長手方向D2に規定される最縁領域21bの長さは例えば1mmに設定されている。
【0026】
図5に示すように、軸部12の軸心に直交する軸部12(先端部14)の断面は、先端領域14aにおいてほぼ正円形の輪郭を有している。これに対して、
図6に示すように、被覆部21の縁部領域21aによって被覆された領域において軸部12(先端部14)は矩形の輪郭を有しており、本実施形態では、当該矩形の輪郭は正方形である。すなわち、軸部12の断面は、先端から縁部領域21aの先端側の縁部までほぼ正円形であり、縁部領域21aの先端から基端まで正方形である。なお、矩形(正方形や長方形)の角は厳密にはやや丸みを帯びている。
【0027】
軸部12は、縁部領域21aで被覆される領域と同様に、基端領域14bにおいても矩形の断面を有しており、さらに、
図7に示すように、移行部13においても矩形の断面を有している。移行部13は、基部11から連続して扁平な板状に延在するので、長方形の断面を有している。なお、被覆部21の縁部領域21aによって被覆された領域において、軸部12の断面は長方形の輪郭を有してもよい。この場合、長方形の長辺は、移行部13における軸部12の断面と同様に、基部11が扁平に広がる平面に平行に規定される。
【0028】
図6に戻ると、被覆部21の縁部領域21aにおいて、少なくとも一部の突起部22は、軸部12の軸心から最大距離MDにある位置において被覆部21から突き出る。本実施形態では、軸部12の軸心周りに6つの突起部22が形成されている。縁部領域21aによって被覆される軸部12の断面は正方形であるので、最大距離MDは正方形の対角線上に規定される。したがって、本実施形態では、6つの突起部22のうちの4つが、軸部12の先端部14の軸心から最大距離MDにある位置から突き出ている。
【0029】
以上のような歯間清掃具1によれば、軸部12は、被覆部21の縁部領域21aによって被覆された領域において矩形の断面を有する。軸部12の先端領域14aは基端から先端に向かって縮径するテーパ形状に形成されており、基端側の縁部の縁部領域21aによって被覆される軸12は比較的広い歯間に挿入される。こうした構成によれば、縁部領域21aまで軸部12が歯間に挿入された場合、その断面における矩形の角部が歯の側面に突き当たることができるので、軸部12の軸芯周りの歯間清掃具1の回転を防止することができる。その結果、歯間清掃具1の回転による歯茎の傷つきを回避することができる。
【0030】
さらに、被覆部21の縁部領域21aにおいて、少なくとも一部の突起部22が、軸部12の軸心から最大距離MDにある位置から突き出ている。こうした歯間清掃具1によれば、本実施形態では、断面の矩形の角部からさらに突起部22が突き出ることとなり、矩形の角部に加えてこれらの突起部22が歯の側面にさらに突き当たることができるので、軸部12の軸心周りの歯間清掃具1の回転をさらに確実に防止することができる。なお、縁部領域21aにおいて軸部12の断面は長方形であってもよく、また、軸部12の断面は先端領域14aの全域において矩形の輪郭を有してもよい。
【0031】
また、歯間清掃具1は、被覆部21の縁部領域21aは、被覆部21の基端側の縁部に沿って、突起部22が形成されない最縁領域21bを規定している。こうした構成によれば、歯間清掃具1が軸部12の先端領域14aの基端側まで挿入された場合であっても、歯間清掃具1は被覆部21の最縁領域21bで歯茎に接触することができるので、歯茎の傷つきを回避することができる。一方で、突起部22が形成されない最縁領域21bが形成されていない場合には、比較的硬い合成樹脂材料から形成された軸部21が歯茎に直接接触することによって歯茎を傷つけてしまうおそれがある。
【0032】
なお、歯間清掃具1の縁部領域21aにおいて軸部21の断面は、例えば
図8に示すように、短手方向D1に規定される第1外形寸法X1が、短手方向D1に直交する厚さ方向D3に規定される第2外形寸法X2よりも大きく設定されてもよい。すなわち、縁部領域21aにおいて軸部21の断面は、短手方向D1に長辺、厚さ方向D3に短辺を規定する楕円形の輪郭を有してもよい。また、突起部22は、楕円形の長辺上に規定される最大距離MDにある位置から突き出る。こうした構成によれば、歯間清掃具1が、楕円形の長辺が鉛直方向に向くように歯間に挿入された場合、楕円形の長辺側の部分が歯の側面に突き当たることによって軸部12の軸芯周りの歯間清掃具1の回転を防止することができる。
【0033】
次に、歯間清掃具1の製造方法について以下に説明する。まず、基材部10の外形を象った第1金型の充填空間に溶融した合成樹脂材料が充填されて基材部10が成形される。その後、基材部10は第1金型から取り出される。続いて、成形された基材部10は、軟質部20の外形を象った第2金型の充填空間内に配置される。充填空間には、溶融したエラストマーが充填され軟質部20が成形される。こうして歯間清掃具1が成形される。歯間清掃具1は、その後、第2金型から取り出される。
【0034】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1…歯間清掃具、10…基材部、11…基部、12…軸部、20…軟質部、被覆部…21、縁部領域…21a、最縁領域…21b、突起部…22、D1…短手方向(第1方向)、D3…厚さ方向(第2方向)、X1…第1外形寸法、X2…第2外形寸法