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特許7576030溶着成形体の製造方法、溶着成形体及びパイプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】溶着成形体の製造方法、溶着成形体及びパイプ
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/06 20060101AFI20241023BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B29C65/06
B29C65/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021533097
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027669
(87)【国際公開番号】W WO2021010436
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2019131629
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】坂井 大雅
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179862(WO,A1)
【文献】特開平11-240073(JP,A)
【文献】特開2011-218800(JP,A)
【文献】特開2012-188559(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179861(WO,A1)
【文献】特表2012-508358(JP,A)
【文献】特開平03-184830(JP,A)
【文献】特開2005-320478(JP,A)
【文献】特開2011-011360(JP,A)
【文献】特開2009-019135(JP,A)
【文献】米国特許第06706357(US,B2)
【文献】米国特許第06588970(US,B1)
【文献】特開2009-066819(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/06
B29C 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステルを形成材料とする溶着成形体の製造方法であって、
前記液晶ポリエステルを形成材料とする第1部材が有する第1凸条部と、前記液晶ポリエステルを形成材料とする第2部材が有する第2凸条部とを、それぞれ前記液晶ポリエステルの流動開始温度以上に加熱する工程と、
前記第1凸条部と前記第2凸条部とを当接させ、前記第1凸条部と前記第2凸条部とが相対的に近づく方向に押圧しながら振動溶着する工程を有し、
前記第1部材においては前記第1凸条部のみを加熱し、前記第2部材においては前記第2凸条部のみを加熱する溶着成形体の製造方法。
【請求項2】
前記第1部材は、第1基部と、
前記第1基部から突出した前記第1凸条部と、
前記第1凸条部の延在方向に沿って前記第1凸条部の両側に設けられ、前記第1基部に対し前記第1凸条部と同じ側に突出した一対の第1リブを有し、
前記第2部材は、第2基部と、
前記第2基部から突出した前記第2凸条部と、
前記第2凸条部の延在方向に沿って前記第2凸条部の両側に設けられ、前記第2基部に対し前記第2凸条部と同じ側に突出した一対の第2リブを有し、
前記振動溶着する工程では、前記第1リブと前記第2リブとが当接するまで前記第1部材と前記第2部材とを近づける請求項1に記載の溶着成形体の製造方法。
【請求項3】
前記振動溶着する工程は、前記第1凸条部と前記第2凸条部と前記第1リブと前記第2リブとで囲まれた空間から溶融樹脂が漏れ出る前に終了させる請求項2に記載の溶着成形体の製造方法。
【請求項4】
前記第1凸条部の頭頂面の幅が、前記第2凸条部の頭頂面の幅の90%以上110%以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の溶着成形体の製造方法。
【請求項5】
第1部材と、第2部材と、を備え、
前記第1部材と前記第2部材とは、それぞれ液晶ポリエステルを形成材料とし、
前記第1部材と前記第2部材とが熱溶着して形成された溶着部と有し、
前記溶着部は、前記第1部材と前記第2部材とが熱溶着した溶着本体部と、前記溶着本体部の両側に設けられた一対のリブと、を有し、
前記溶着本体部と前記リブとの間には筒状の保持空間が形成され、
前記保持空間には、前記液晶ポリエステルで形成されたバリが充填され、
前記溶着本体部及び前記一対のリブと交差する断面において、前記保持空間における前記バリの充填率は、65%以上100%未満である溶着成形体。
【請求項6】
前記溶着部の引張強度が13MPa以上である請求項5に記載の溶着成形体。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の溶着成形体であるパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶着成形体の製造方法、溶着成形体及びパイプに関する。
本願は、2019年7月17日に出願された日本国特願2019-131629号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複雑な形状を有する樹脂成形体は、目的物である樹脂成形体を構成する部品をそれぞれ射出成形した後に、互いの部品を溶着させて製造している(例えば、特許文献1,2参照)。「複雑な形状を有する樹脂成形体」としては、例えば、流体が内部を流動する配管を挙げることができる。また、このような樹脂成形体の形成材料としては、熱可塑性樹脂が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-171712号公報
【文献】特開2007-169379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱可塑性樹脂のうち、液晶ポリエステルは、溶融流動性に優れ、耐熱性、強度、剛性が高いことから、電気電子部品を製造するための射出成形材料として用いられている。液晶ポリエステルは、このような特性を生かし、電気・電子部品、機械部品などに採用され、用途も拡大されつつある。
【0005】
しかし、液晶ポリエステルは、溶融時の固化速度が速く、また、溶着時に接合界面に界面流動が生じつつ固化する。そのため、接合面に新たな界面が生じて接合しにくい。すなわち、液晶ポリエステルを用いた複数の成形体を溶着させようとしても、溶着箇所の強度が不足しやすく、改善が求められていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、液晶ポリエステルを形成材料とし、好適に溶着成形体を製造可能とする溶着成形体の製造方法を提供することを目的とする。また、溶着箇所の強度が担保された溶着成形体を提供することを併せて目的とする。また、液晶ポリエステルを形成材料とする溶着成形体であり、信頼性が高いパイプを提供することを併せて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、以下の態様を包含する。
【0008】
[1]液晶ポリエステルを形成材料とする溶着成形体の製造方法であって、前記液晶ポリエステルを形成材料とする第1部材が有する第1凸条部と、前記液晶ポリエステルを形成材料とする第2部材が有する第2凸条部とを、それぞれ前記液晶ポリエステルの流動開始温度以上に加熱する工程と、前記第1凸条部と前記第2凸条部とを当接させ、前記第1凸条部と前記第2凸条部とが相対的に近づく方向に押圧しながら振動溶着する工程を有する溶着成形体の製造方法。
【0009】
[2]前記第1部材は、第1基部と、前記第1基部から突出した前記第1凸条部と、前記第1凸条部の延在方向に沿って前記第1凸条部の両側に設けられ、前記第1基部に対し前記第1凸条部と同じ側に突出した一対の第1リブを有し、前記第2部材は、第2基部と、前記第2基部から突出した前記第2凸条部と、前記第2凸条部の延在方向に沿って前記第2凸条部の両側に設けられ、前記第2基部に対し前記第2凸条部と同じ側に突出した一対の第2リブを有し、前記振動溶着する工程では、前記第1リブと前記第2リブとが当接するまで前記第1部材と前記第2部材とを近づける[1]に記載の溶着成形体の製造方法。
【0010】
[3]前記振動溶着する工程は、前記第1凸条部と前記第2凸条部と前記第1リブと前記第2リブとで囲まれた空間から溶融樹脂が漏れ出る前に終了させる[2]に記載の溶着成形体の製造方法。
【0011】
[4]前記第1凸条部の頭頂面の幅が、前記第2凸条部の頭頂面の幅の90%以上110%以下である[1]から[3]のいずれか1項に記載の溶着成形体の製造方法。
【0012】
[5]第1部材と、第2部材と、を備え、前記第1部材と前記第2部材とは、それぞれ液晶ポリエステルを形成材料とし、前記第1部材と前記第2部材とが熱溶着して形成された溶着部と有し、前記溶着部は、前記第1部材と前記第2部材とが熱溶着した溶着本体部と、前記溶着本体部の両側に設けられた一対のリブと、を有し、前記溶着本体部と前記リブとの間には筒状の保持空間が形成され、前記保持空間には、前記液晶ポリエステルで形成されたバリが充填され、前記溶着本体部及び前記一対のリブと交差する断面において、前記保持空間における前記バリの充填率は、20%以上100%未満である溶着成形体。
【0013】
[6]第1部材と、第2部材と、を備え、前記第1部材と前記第2部材とは、それぞれ液晶ポリエステルを形成材料とし、前記第1部材と前記第2部材とが熱溶着した溶着部の引張強度が13MPa以上である溶着成形体。
【0014】
[7][5]又は[6]に記載の溶着成形体であるパイプ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液晶ポリエステルを形成材料とし、好適に溶着成形体を製造可能とする溶着成形体の製造方法を提供できる。また、溶着箇所の強度が担保された溶着成形体を提供できる。また、液晶ポリエステルを形成材料とする溶着成形体であり、信頼性が高いパイプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態における溶着成形体を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1の線分II-IIにおける矢視断面図である。
図3図3は、図1の線分III-IIIにおける矢視断面図である。
図4図4は、本実施形態の溶着成形体の製造方法を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態の溶着成形体の製造方法を示す模式図である。
図6図6は、通常知られた振動溶着の様子を示す模式図である。
図7図7は、実施例で用いた試験片を示す模式図である。
図8図8は、実施例で用いた試験片を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[溶着成形体]
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態に係る溶着成形体及び溶着成形体について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0018】
本実施形態の溶着成形体は、液晶ポリエステルを形成材料とする。
【0019】
[液晶ポリエステル]
本実施形態で用いられる液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーの一つであり、光学的異方性を示す溶融体を450℃以下の温度で形成し得る重合体である。
【0020】
本実施形態の液晶ポリエステルは、下記一般式(1)で表される繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記一般式(2)で表される繰返し単位と、下記一般式(3)で表される繰返し単位と、を有することがより好ましい。
以下、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を「繰返し単位(1)」ということがある。
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を「繰返し単位(2)」ということがある。
下記一般式(3)で表される繰り返し単位を「繰返し単位(3)」ということがある。
【0021】
(1)-O-Ar-CO-
(2)-CO-Ar-CO-
(3)-X-Ar-Y-
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基を表す。X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(-NH-)を表す。Ar、Ar又はArで表される前記基中の1個以上の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0022】
(4)-Ar-Z-Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。
Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【0023】
本実施形態で用いられる液晶ポリエステルとしては、具体的には、
(1)芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られる重合体、
(2)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合して得られる重合体、
(3)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせを重合して得られる重合体、
(4)ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性ポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られる重合体、などを挙げることができる。
【0024】
なお、液晶ポリエステルの製造において、原料モノマーとして使用する芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及び芳香族ジオールの一部又は全部を、予めエステル形成性誘導体にして重合に供することもできる。このようなエステル形成性誘導体を用いることにより、液晶ポリエステルをより容易に製造できるという利点がある。
【0025】
エステル形成性誘導体としては次のような化合物が例示される。
【0026】
分子内にカルボキシ基を有する芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の例としては、当該カルボキシ基が、ハロホルミル基(酸ハロゲン化物)やアシルオキシカルボニル基(酸無水物)などの高反応性の基に転化した化合物や、当該カルボキシ基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、一価のアルコール類やエチレングリコール等の多価アルコール類、フェノール類などとエステルを形成した化合物が挙げられる。
【0027】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールのようなフェノール性水酸基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、該フェノール性水酸基が、エステル交換反応によりポリエステルを生成するように、低級カルボン酸類とエステルを形成した化合物が挙げられる。
【0028】
さらに、エステル形成性を阻害しない程度であれば、上述の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジオールは、分子内の芳香環に、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;メチル基、エチル基、ブチル基などの炭素数1~10のアルキル基;フェニル基などの炭素数6~20のアリール基を置換基として有していてもよい。
【0029】
芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸、m-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、5-ヒドロキシ-1-ナフトエ酸、4-ヒドロキシ-4’-カルボキシジフェニルエーテルが挙げられる。また、これらの芳香族ヒドロキシカルボン酸の芳香環にある水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換された芳香族ヒドロキシカルボン酸が挙げられる。
【0030】
p-ヒドロキシ安息香酸は、後述の(A)を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸である。
【0031】
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸は、後述の(A)を誘導する芳香族ヒドロキシカルボン酸である。
【0032】
該芳香族ヒドロキシカルボン酸は、液晶ポリエステルの製造において、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上述した繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位としては、例えば、以下に示す繰り返し単位が挙げられる。なお、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位は、その芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換されていてもよい。
【0034】
なお、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
【0035】
【化1】
【0036】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、2,6-ナフタレンジルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェニルチオエーテル-4,4’-ジカルボン酸が挙げられる。また、これらの芳香族ジカルボン酸の芳香環にある水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換された芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0037】
テレフタル酸は、後述の(B)を誘導する芳香族ジカルボン酸である。
【0038】
イソフタル酸は、後述の(B)を誘導する芳香族ジカルボン酸である。
【0039】
2,6-ナフタレンジルボン酸は、後述の(B)を誘導する芳香族ジカルボン酸である。
【0040】
該芳香族ジカルボン酸は、液晶ポリエステルの製造において、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上述した繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位としては、例えば、以下に示す繰り返し単位が挙げられる。なお、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位は、その芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換されていてもよい。
【0042】
【化2】
【0043】
芳香族ジオールとしては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。また、これらの芳香族ジオールの芳香環にある水素原子の一部が、アルキル基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換された芳香族ジオールが挙げられる。
【0044】
4,4’-ジヒドロキシビフェニルは、後述の(C)を誘導する芳香族ジオールである。
【0045】
ハイドロキノンは、後述の(C)を誘導する芳香族ジオールである。
【0046】
レゾルシは、後述の(C)を誘導する芳香族ジオールである。
【0047】
該芳香族ジオールは、液晶ポリエステルの製造において、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
上述した繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を含む。芳香族ジオールに由来する繰返し単位としては、例えば、以下に示す繰り返し単位が挙げられる。なお、芳香族ジオールに由来する繰返し単位は、その芳香環にある水素原子の一部が、ハロゲン原子、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1種以上の置換基で置換されていてもよい。
【0049】
【化3】
【0050】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位及び芳香族ジオールに由来する繰返し単位が、それぞれ任意に有していてもよい置換基は、以下の置換基が挙げられる。
ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が挙げられる。
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、ブチル基などの炭素数1~4程度の低級アルキル基が挙げられる。
アリール基の例としては、フェニル基が挙げられる。
【0051】
特に好適な液晶ポリエステルに関し説明する。
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位としては、パラヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位((A))又は2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸もしくはその両方に由来する繰返し単位((A))を有していると好ましい。
【0052】
芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位としては、テレフタル酸に由来する繰返し単位((B))、イソフタル酸に由来する繰返し単位((B))及び2,6-ナフタレンジカルボン酸((B))に由来する繰返し単位からなる群より選ばれる繰り返し単位を有していると好ましい。
【0053】
芳香族ジオールに由来する繰返し単位としては、ヒドロキノンに由来する繰返し単位((C))又は4,4’-ジヒドロキシビフェニルもしくはその両方に由来する繰返し単位((C))を有していると好ましい。
【0054】
そして、これらの組み合わせとしては、下記(a)~(h)で表される組み合わせが好ましい。これら(a)~(h)の繰返し単位の組み合わせであれば、良好な電気絶縁性を有する液晶ポリエステルが得られる。
【0055】
(a):(A)、(B)及び(C)からなる組み合わせ、又は、(A)、(B)、(B)及び(C)からなる組み合わせ。
(b):(A)、(B)及び(C)からなる組み合わせ、又は(A)、(B)、(B)及び(C)からなる組み合わせ。
(c):(A)及び(A)からなる組み合わせ。
(d):(a)の繰返し単位の組み合わせにおいて、(A)の一部又は全部を(A)で置きかえた組み合わせ。
(e):(a)の繰返し単位の組み合わせにおいて、(B)の一部又は全部を(B)で置きかえた組み合わせ。
(f):(a)の繰返し単位の組み合わせにおいて、(C)の一部又は全部を(C)で置きかえた組み合わせ。
(g):(b)の繰返し単位の組み合わせにおいて、(A)の一部又は全部を(A)で置きかえた組み合わせ。
(h):(c)の繰返し単位の組み合わせに、(B)と(C)を加えた組み合わせ。
【0056】
特に好ましい液晶ポリエステルとしては、全繰返し単位の合計に対して、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位の合計が30~80モル%、芳香族ジオールに由来する繰返し単位の合計が10~35モル%、芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位の合計が10~35モル%、である液晶ポリエステルを挙げることができる。
【0057】
前記液晶ポリエステルの製造方法としては、例えば、特開2002-146003号公報に記載の方法などの公知の方法が適用できる。すなわち、上述の原料モノマー(芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール又はこれらのエステル形成用誘導体)を溶融重合(重縮合)させて、比較的低分子量の芳香族ポリエステル(以下、「プレポリマー」と略記する。)を得、次いで、このプレポリマーを粉末とし、加熱することにより固相重合する方法が挙げられる。このように固相重合させることにより、重合がより進行して、より高分子量の液晶ポリエステルを得られる。
【0058】
その他、最も基本的な構造となる前記(a)、(b)の繰返し単位の組み合わせを有する液晶ポリエステルの製造方法については、特公昭47-47870号公報、特公昭63-3888号公報などにも記載されている。
【0059】
溶融重合は、触媒の存在下で行ってもよい。溶融重合に用いられる触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属化合物や、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1-メチルイミダゾールなどの含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0060】
本実施形態の溶着成形体に使用する液晶ポリエステルとしては、下記の方法で求められる流動開始温度が280℃以上の液晶ポリエステルであることが好ましい。上述のように、液晶ポリエステルの製造において固相重合を用いた場合には、液晶ポリエステルの流動開始温度を280℃以上にすることが比較的短時間で可能である。そして、このような流動開始温度の液晶ポリエステルを用いることにより、得られる成形体は高度の耐熱性を有する成形体となる。一方、成形体を実用的な温度範囲で成形する観点では、本実施形態の溶着成形体に使用する液晶ポリエステルの流動開始温度は420℃以下が好ましく、390℃以下であればさらに好ましい。
【0061】
ここで、流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのダイスを取付けた毛細管型レオメーターを用い、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下において昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルをノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度である。流動開始温度は、当技術分野で周知の液晶ポリエステルの分子量を表す指標である(小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用-」、95~105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。流動開始温度を測定する装置としては、例えば、(株)島津製作所製の流動特性評価装置「フローテスターCFT-500D」を用いることができる。
【0062】
[充填材]
本実施形態の溶着成形体は、充填材を含有してもよい。本実施形態では、溶着成形体が充填材を含有することで、溶着成形体に十分な強度を付与できる。
【0063】
本実施形態で用いられる充填材は、無機充填材であってもよいし、有機充填材であってもよい。また、繊維状充填材であってもよく、板状充填材であってもよく、粒状充填材であってもよい。
【0064】
繊維状充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などの炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などのセラミック繊維;及びステンレス繊維などの金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカーなどのウイスカーも挙げられる。
【0065】
板状充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、硫酸バリウム及び炭酸カルシウムなどが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、四ケイ素雲母であってもよい。
【0066】
粒状充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0067】
[その他の成分]
本実施形態に係る溶着成形体は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記液晶ポリエステル及び充填材のいずれにも該当しない、他の成分を含有してもよい。
【0068】
上記他の成分の例としては、フッ素樹脂、金属石鹸類などの離型改良剤;染料、顔料などの着色剤;酸化防止剤;熱安定剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤;界面活性剤などの、樹脂成形体に一般的に使用される添加剤が挙げられる。
【0069】
また、上記他の成分の例としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤などの外部滑剤効果を有する化合物も挙げられる。
【0070】
さらに、上記他の成分の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂も挙げられる。
【0071】
本実施形態においては、液晶ポリエステル、充填材、及び必要に応じて用いられる他の成分を、一括又は適当な順序で混合する。
【0072】
本実施形態においては、液晶ポリエステル、充填材、及び必要に応じて用いられる他の成分を、押出機を用いて溶融混練することで、ペレット化することが好ましい。
【0073】
図1は、本実施形態における溶着成形体を示す概略斜視図である。図2は、図1の線分II-IIにおける矢視断面図である。図3は、図1の線分III-IIIにおける矢視断面図である。
【0074】
図1~3に示すように、溶着成形体100はパイプである。以下の説明では溶着成形体100をパイプ100と称する。
【0075】
パイプ100は、一端が閉じられた第1配管101と、第1配管101の壁面に設けられた貫通孔110xに接続された第2配管102とを有する。第1配管101と第2配管102とは、貫通孔110xにおいて連通している。
【0076】
第1配管101は、第1部材1と第2部材2とが組み合わされて形成される筒状の内部空間110aを有する。内部空間110aは、例えばパイプ100の使用用途に応じて、液体や気体が流動する空間である。
【0077】
以下の説明においては、xyz直交座標系を設定し、このxyz直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。ここでは、第1配管101の延在方向をx軸方向、水平面内においてx軸方向と直交する方向をy軸方向、x軸方向及びy軸方向のそれぞれと直交する方向、すなわち鉛直方向をz軸方向とする。
【0078】
以下、+z軸方向のことを「上方向」、-z軸方向のことを「下方向」と称することがある。また、ある部材や構造に対し+z軸側のことを「上」、ある部材や構造に対し-z軸側のことを「下」と称することがある。
【0079】
第1配管101は、配管本体110と、配管本体110の外周に設けられた溶着部130とを有する。溶着部130は、xy平面と重なる第1配管101の外面に沿って、帯状に突出する凸条部である。
【0080】
図1~3に示すようなパイプ100は、一般に、射出成形で一体的に形成することが困難である。このような射出成形で一体的に形成することが困難な成形体は、通常、複数の部材に分けて射出成形を行い、成形された各部材を組み合わせて製造される。
【0081】
詳しくは図3に示すように、本実施形態のパイプ100は、液晶ポリエステルの射出成形体である第1部材1と、液晶ポリエステルの射出成形体である第2部材2と、が溶着した溶着成形体である。第1部材1と第2部材2とは、溶着部130において溶着している。
【0082】
第1部材1は、配管本体110の上側の半分を構成する第1配管上部111と、溶着部130の上側の半分を構成する第1溶着部140と、を有する略半円筒状の部材である。第1溶着部140とは、第1配管上部111の両側に設けられている。第1配管上部111の+x軸方向の端部は、第2部材2と組み合わされて形成される第1配管101の端部を閉じるように丸まっている。
【0083】
第2部材2は、配管本体110の下側の半分を構成する第1配管下部112と、溶着部130の下側の半分を構成する第2溶着部150と、第1配管下部112に接続された第2配管102とを有する部材である。第2溶着部160とは、第1配管下部112の両側に設けられている。第1配管下部112の+x軸方向の端部は、第1部材1と組み合わされて形成される第1配管101の端部を閉じるように丸まっている。
【0084】
溶着部130は、溶着本体部131と、図3の視野において溶着本体部131の両側に設けられた一対のリブ132,133と、を有する。リブ132,133は、本発明における「一対のリブ」に該当する。図3の視野における断面は、本発明における「溶着本体部及び一対のリブと交差する断面」に該当する。
【0085】
溶着部130の側面には、第1溶着部140と第2溶着部150とが当接した位置に形成される接合線130xが現れている。
【0086】
溶着本体部131は、溶着部130の内部において、第1配管101の外面に沿って帯状に形成された凸条部である。溶着本体部131は、後述する方法によって第1部材1と第2部材2とが熱溶着した部分である。
【0087】
溶着本体部131において符号Xで示す部分は、第1部材1を構成する液晶ポリエステルと、第2部材を構成する液晶ポリエステルとが溶融して相互に混ざり合っている。
【0088】
一対のリブ132,133は、溶着部130の内部において、溶着本体部131の両側に沿って帯状に形成された凸条部である。図では、溶着本体部131に対し配管本体110側のリブをリブ132、溶着本体部131に対し配管本体110とは反対側のリブをリブ133としている。
【0089】
溶着本体部131とリブ132との間、及び溶着本体部131とリブ133との間には、溶着本体部131の両側に沿って、筒状の保持空間130aが形成されている。保持空間130aの内部は、バリ139が充填されている。
【0090】
バリ139は、後述する製造方法において生じる溶融樹脂が固化した部分であり、第1部材1の形成材料と第2部材2の形成材料とが溶融し、相互に混ざりあった樹脂を形成材料とする。
【0091】
本実施形態のパイプ100においては、保持空間130aにおけるバリ139の充填率は、20%以上100%未満である。上記充填率は、25%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。すなわち、保持空間130aにおけるバリ139の充填率は、25%以上100%未満が好ましく、30%以上100%未満がより好ましく、50%以上100%未満がさらに好ましく、65%以上100%未満がよりさらに好ましい。
【0092】
保持空間におけるバリの充填率は、断面の画像を用いた画像解析により測定できる。具体的には、画像処理ソフト(WinROOF2018、三谷商事株式会社)を用いる。
【0093】
まず、保持空間の延在方向に直交する面でパイプを切断し、断面を得る。観察に際し、断面及び露出する空隙にエポキシ樹脂などの光透過性を有する硬化性樹脂を充填し硬化させて固め、さらに断面を研磨することで、断面を平滑に加工してもよい。
【0094】
画像解析においては、断面を撮像し、得られる断面の画像においてバリが存在する保持空間を指定し、バリの保持空間内のバリが占める領域と空隙が占める領域とを、画像処理ソフトの機能である二値化コマンドにて二値化して区別する。二値化の閾値は、断面画像から判断できるバリと空隙との境界と、二値化後の像におけるバリと空隙との境界とが一致する値とする。作業者は、「二値化コマンド」を実行するにあたり、画像処理ソフトを調整して上記条件の閾値を設定する。ただし、作業者は、バリと、保持空間を形成する溶着本体部との境界を目視で区別する。同様に作業者は、バリと保持空間を形成するリブとの境界、空隙と溶着本体部との境界、及び空隙とリブとの境界をそれぞれ目視で区別する。
【0095】
バリの充填率は、断面の画像における保持空間のうち、バリが占める領域の面積を、保持空間の全体の面積で除することで算出する。保持空間の全体の面積は、バリが占める領域の面積と、空隙が占める領域の面積の和である。
【0096】
バリの充填率を求める対象が、屈曲の多いパイプである場合、パイプ中の複数個所の断面において上記方法によりバリの充填率を算出し、得られた各充填率の算術平均値を求めるバリの充填率として採用する。この場合、バリの充填率は、3箇所以上の断面で算出する。また、バリの充填率は、作業効率を考慮して、10箇所以下の断面で算出するとよい。
【0097】
なお、本実施形態において、「保持空間におけるバリの充填率」とは、溶着部130の断面において露出する2つの保持空間130aの合計面積に対する、2つの保持空間130aに充填されたバリ139の合計面積の割合(%)として求めた値を採用する。保持空間におけるバリの充填率を求める際、対象となる保持空間を含む溶着部130の断面は、保持空間の延在方向に直交する仮想面における断面とするとよい。
バリの充填率は、後述する製造方法における製造条件(加熱条件、押圧条件、振動条件)を制御することにより調整可能である。
【0098】
上記充填率が20%以上であると、バリ139が溶着本体部131の側面を覆い、溶着本体部131を効果的に補強できる。そのため、上記充填率が20%以上である溶着成形体100は、溶着部130の溶着強度に優れ、信頼性が高い成形体となる。
【0099】
また、充填率が25%以上であると、例えばパイプ100の内部空間110aを流動する気体や液体が保持空間130aに浸入しにくい。そのため、内部空間110aを流動する気体や液体によって溶着本体部131を膨潤させ、溶着強度を低下させるような不具合が生じにくくなる。
【0100】
一方、上記充填率が100%未満であると、バリ139が保持空間130aから漏出することなく、保持空間130aに留まる。そのため、上記充填率が100%未満であると、バリ139が原因となる溶着部130の外観不良が生じない。
【0101】
さらに、充填率が100%未満であると、バリ139がパイプ100の内部空間110aに漏出することなく、保持空間130aに留まる。そのため、上記充填率が100%未満であると、パイプ100の内部を流動する気体や液体にバリ139が混入しにくい。
【0102】
本実施形態において、第1部材1と第2部材2とが熱溶着した溶着部130の溶着強度は、溶着部130の引張強度とする。第1部材1と第2部材2とが熱溶着した溶着部130の溶着強度は、13MPa以上であることが好ましく、15MPa以上がより好ましく、20MPa以上がさらに好ましい。溶着部130の溶着強度が13MPa以上であると、破損しにくく信頼性が高い成形体となる。また、通常、熱溶着した溶着部130の溶着強度は、100MPa以下である。すなわち、第1部材1と第2部材2とが熱溶着した溶着部130の溶着強度は、13MPa以上100MPa以下が好ましく、15MPa以上100MPa以下がより好ましく、20MPa以上100MPa以下がさらに好ましい 。
【0103】
溶着部130の溶着強度は、溶着部130の延在方向に10mm厚で溶着部130を切り出した試験片を作製し、得られた試験片について、溶着面に対して直交する方向に引っ張る引張試験を行って、試験片が試験片の溶着面で破壊するまでの最大応力として測定できる。
【0104】
また、本実施形態のように溶着成形体がパイプ形状を呈し、パイプの延在方向に沿って延在方向の両側に溶着部を有する場合には、溶着成形体を10mm厚の輪切りにして試験片を作製し、得られた試験片について上述の引張試験を行ってもよい。この場合、試験片は2つの溶着部を有することとなり、一方の溶着部における溶着面で試験片が破壊するまでの最大応力を測定することとなる。そのため、一つの溶着部についてのみ引張試験を行う場合とは、測定値の技術的な意味が異なる。この場合であっても、同形状の試験片について測定値を比較することで、溶着部の溶着強度について評価できる。
【0105】
引張試験は、万能試験機(テンシロンRTG-1250、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて行う。引張試験の測定条件は、スパン間距離20mm、試験速度5mm/分である。引張試験の試験回数は、例えば3回以上10回以下が好ましい。複数の試験片について引張試験を行い、得られた複数の溶着強度の算術平均値を溶着強度とする。
【0106】
[溶着成形体の製造方法]
図4,5は、本実施形態の溶着成形体の製造方法を示す模式図である。上述したように、本実施形態の溶着成形体100は、液晶ポリエステルを形成材料とする。
【0107】
図4に示すように、本実施形態の溶着成形体の製造方法においては、第1部材1と第2部材2とを用いる。第1部材1及び第2部材2は、それぞれ液晶ポリエステルを形成材料とする射出成形体である。
【0108】
第1部材1は、第1配管上部111と、第1溶着部140とを有する。第1溶着部140は、第1基部141と、第1凸条部142と、一対の第1リブ143,144、リブ145とを有する。
【0109】
第1基部141は、第1配管上部111の側面からxy平面方向に突出している。
【0110】
第1凸条部142は、第1基部141から下方(-z軸方向)に突出している。第1凸条部142は、断面視において頭頂面142aが第1凸条部142の突出する方向に対して直交するように設けられた略矩形の構造を有する。
【0111】
第1リブ143,144は、第1凸条部142の延在方向に沿って第1凸条部142の両側に設けられ、第1基部141に対し第1凸条部142と同じ側に突出している。図では、第1凸条部142に対し第1配管上部111側のリブを符号143で示し、第1凸条部142に対し第1配管上部111とは反対側のリブを符号144で示している。
【0112】
第1凸条部142と第1リブ143との間、及び第1凸条部142と第1リブ144との間には、それぞれ凹部149が形成されている。
【0113】
なお、図に示す第1リブ143,144は、第1凸条部142と平行に-z軸方向に突出しているが、これに限らず、第1リブ143,144は、第1凸条部142に対して傾斜していてもよい。
【0114】
また、第1溶着部140は、第1凸条部142に対し第1配管上部111とは反対側であって、第1基部141に対し第1凸条部142とは反対側に突出したリブ145を有する。
【0115】
第2部材2は、第1配管下部112と、第2溶着部150とを有する。第2溶着部150は、第2基部151と、第2凸条部152と、一対の第2リブ153,154、リブ155とを有する。
【0116】
第2基部151は、第1配管下部112の側面からxy平面方向に突出している。
【0117】
第2凸条部152は、第2基部151から上方(+z軸方向)に突出している。第2凸条部152は、断面視において、頭頂面152aが第2凸条部152の突出する方向に対して直交するように設けられた略矩形の構造を有する。
【0118】
第2リブ153、154は、第2凸条部152の延在方向に沿って第2凸条部152の両側に設けられ、第2基部151に対し第2凸条部152と同じ側に突出している。図では、第2凸条部152に対し第1配管下部112側のリブを符号153で示し、第2凸条部152に対し第1配管下部112とは反対側のリブを符号154で示している。
【0119】
第2凸条部152と第2リブ153との間、及び第2凸条部152と第2リブ154との間には、それぞれ凹部159が形成されている。
【0120】
なお、図に示す第2リブ153,154は、第2凸条部152と平行に+z軸方向に突出しているが、これに限らず、第2リブ153,154は、第2凸条部152に対して傾斜していてもよい。
【0121】
また、第2溶着部150は、第2凸条部152に対し第1配管下部112とは反対側であって、第2基部151に対し第2凸条部152とは反対側に突出したリブ155を有する。
【0122】
本実施形態の溶着成形体の製造方法においては、まず、第1部材1が有する第1凸条部142と、第2部材2が有する第2凸条部152とを、それぞれの部材の形成材料である液晶ポリエステルの流動開始温度以上に加熱する。例えば、第1凸条部142と第2凸条部152とのそれぞれに赤外線IRを照射して、第1凸条部142と第2凸条部152とを加熱する。
【0123】
なお、第1凸条部142と第2凸条部152との加熱方法は、液晶ポリエステルの流動開始温度以上に加熱する方法であれば、通常知られた方法を採用できる。例えば、赤外線照射の他、第1凸条部142と第2凸条部152とに熱源を接触させ、第1凸条部142と第2凸条部152とを直接加熱することとしてもよい。
【0124】
次いで、図5に示すように、第1凸条部142と第2凸条部152とを当接させ、第1凸条部142と第2凸条部152とが相対的に近づく方向に力Fを加えて押圧しながら振動溶着する。
【0125】
振動溶着に際し、第1凸条部142と第2凸条部152とは、各部材の形成材料である液晶ポリエステルの流動開始温度以上に予め加熱している。そのため、第1凸条部142と第2凸条部152とを振動溶着すると、液晶ポリエステルが溶融しやすく、相互に混ざり合いながら溶着する。
【0126】
そのため、本実施形態の溶着成形体の製造方法によれば、通常の知見によれば、固化速度が速く、また界面流動の発生のため溶着には不向きであることが知られる液晶ポリエステルの成形体を、容易に振動溶着できる。
【0127】
振動溶着が進むと、第1凸条部142と第2凸条部152とが溶融しながら、第1部材1と第2部材2とが近づく。その際、振動溶着は、第1リブ143と第2リブ153、第1リブ144と第2リブ154が当接するまで、第1部材1と第2部材2とを近づけることが好ましい。
【0128】
第1リブ143と第2リブ153が当接することで、凹部149と凹部159とがつながり、第1リブ143、第2リブ153、第1凸条部142、第2凸条部152で囲まれた上述の保持空間130aが形成される。また、第1リブ144と第2リブ154が当接することで、凹部149と凹部159とがつながり、第1リブ144、第2リブ154、第1凸条部142、第2凸条部152で囲まれた上述の保持空間130aが形成される。
【0129】
振動溶着時には、第1凸条部142と第2凸条部152との溶着箇所から、溶融樹脂MRが排出される。排出された溶融樹脂は、上述の保持空間に流れ込み保持される。溶融樹脂MRは、固化することで上述したバリ139となる。
【0130】
上述した振動溶着する工程は、第1凸条部142と第2凸条部152と第1リブ143と第2リブ153とで囲まれた空間(保持空間130a)、又は第1凸条部142と第2凸条部152と第1リブ144と第2リブ154とで囲まれた空間(保持空間130a)から溶融樹脂MRが漏れ出る前に終了させることが好ましい。
【0131】
なお、上述の振動溶着を実施するにあたり、図5に示す第1凸条部142の頭頂面142aの幅W1は、第2凸条部152の頭頂面152aの幅W2の90%以上110%以下であることが好ましい。第1凸条部142と第2凸条部152との大きさが上記のような関係にあると、溶着強度が高くなりやすく好ましい。図に示す第1部材1、第2部材2においては、第1凸条部142の頭頂面142aの幅W1と、第2凸条部152の頭頂面152aの幅W2とは同じ(100%)となっている。
【0132】
図6は、通常知られた振動溶着の様子を示す模式図である。
【0133】
通常の溶着振動の知見に基づけば、一方の凸条部142Xの頭頂面の幅Waは、他方の凸条部152Xの頭頂面の幅Wbの例えば70%程度に設定する。これは、図6に示すように、凸条部142Xと凸条部152Xとを相対的に凸条部142Xの幅方向に振動させた場合、常に凸条部142Xの頭頂面と凸条部152Xの頭頂面とが接した状態で振動させるという思想に基づく。
【0134】
凸条部142Xの頭頂面と凸条部152Xの頭頂面の大きさをこのような関係とすることで、凸条部152Xの頭頂面は常に凸条部142Xの頭頂面と接することとなり、凸条部152Xの放冷が抑制される。そのため、振動溶着に有利であると考えられている。
【0135】
対して、本実施形態の溶着成形体の製造方法においては、第1凸条部142の頭頂面142aの幅W1は、第2凸条部152の頭頂面152aの幅W2の90%以上110%以下とし、通常知られた知見からすると不利と考えられる大きさとする方が、高い溶着強度が得られることが分かった。
【0136】
なお、図4では、第1凸条部142の頭頂面142aは、断面視において第1凸条部142の突出する方向に対して直交することとしたが、これに限らない。
【0137】
第1凸条部142は、頭頂面142aが凹部149側に傾斜していると好ましい。このような形状の場合、溶着時に生じる余剰の溶融樹脂MRを、効率よく保持空間130aに排出できる。また、このような形状の場合、第1凸条部142で生じた溶融樹脂MRを第2凸条部152で生じた溶融樹脂MRに向けて押し込みやすく、溶融樹脂同士が混ざり合いやすいため、溶着強度を向上させやすい。
【0138】
また、頭頂面142aの形状は、頭頂面142aの中央部を境として両側の凹部149側に傾斜する、すなわち頭頂面142aが第2凸条部152に向かって凸状になっていてもよい。
【0139】
上述した第1凸条部142の好ましい形状と同じ理由から、第2凸条部152は、頭頂面152aが凹部159側に傾斜していると好ましい。第1凸条部142の頭頂面142a及び第2凸条部152の頭頂面152aがともに傾斜する場合は、傾斜する向きが互いに異なっていることが好ましい。このような第1凸条部142及び第2凸条部152は、頭頂面142a及び頭頂面152aが略平行となる様に対向させて溶着を行うとよい。
【0140】
以上のような構成の溶着成形体の製造方法によれば、好適に溶着成形体を製造可能とする溶着成形体の製造方法を提供できる。
【0141】
また、以上のような構成のパイプによれば、溶着箇所の強度が担保された信頼性が高いパイプとなる。
【0142】
なお、本実施形態の溶着成形体100は、パイプを例にして説明したが、これに限らない。上述のパイプ100が有する溶着部130と同じ構成の溶着部を有し、溶着部の保持空間におけるバリの充填率が20%以上100%未満となる溶着成形体によれば、溶着箇所の強度が担保された溶着成形体となる。
【0143】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例
【0144】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0145】
図7、8は、実施例で用いた試験片を示す模式図である。実施例においては、液晶ポリエステルを形成材料として図7に示すような試験片Aを射出成形した。
【0146】
試験片Aは、平板状の本体A0と、本体A0の一端側において本体A0と交差して設けられた基部A1と、基部A1から本体A0とは反対側に突出して設けられた凸条部A2と、凸条部A2の延在方向に沿って凸条部A2の両側に設けられ、基部A1に対し凸条部A2と同じ側に突出した一対のリブA3とを有する。
【0147】
試験片Aは、上述の実施形態の製造方法で示した第1部材1が有する第1溶着部140及び第2部材2が有する第2溶着部150のモデルである。
【0148】
試験片Aの材料及び成形条件については、以下のとおりである。
【0149】
(液晶性ポリエステルの製造)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、パラヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れた。
【0150】
反応器内を窒素ガスで置換した後、窒素ガス気流下、1-メチルイミダゾール0.18gを添加して、30分かけて150℃まで昇温し、その温度を保持したまま30分間還流した。
【0151】
次いで、1-メチルイミダゾールを2.4g添加した後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら反応器内の混合物を2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められた時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。
【0152】
得られた固形分を室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した。その後、粉砕した固形分を、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、さらに250℃から295℃まで5時間かけて昇温した後、295℃で3時間保持して固相重合を進めた。次いで、反応生成物を冷却して、液晶ポリエステルを得た。
【0153】
(液晶ポリエステル樹脂組成物の製造)
液晶ポリエステルの粉末70質量部と、チョップドガラス繊維(型番:CS03JAPX-1、オーウェンスコーニング社製)30質量部とを混合し、得られた混合物を2軸押出機(型番:PCM-30、株式会社池貝製)を用いて溶融混錬することにより、液晶ポリエステル樹脂組成物のペレットを製造した。
【0154】
溶融混錬条件は、2軸押出機のシリンダー設定温度が340℃であり、スクリュー回転速度が150rpmであった。なお、「シリンダー設定温度」とは、シリンダーの下流側からシリンダー長の約2/3の部分までに設けられた加熱機器(シリンダーヒータ)の設定温度の算術平均値を意味する。
【0155】
(試験片の成形)
得られたペレットを、射出成形機(型番:PS40E5ASE、日精樹脂工業株式会社製)を用いて340℃にて成形し、凸条部A2の形状が異なる複数の試験片Aを成形した。図7に示す試験片Aの寸法は、L100m×W55mm×H5mmであった。
【0156】
上述の成形条件にて、凸条部A2について形状を変更した複数の試験片Aを作製した。なお、複数の試験片Aにおいては、凸条部A2の大きさの形状以外の構成は共通している。そのため、試験片A全体の長さ(図7における符号Lの大きさ)は、凸条部A2の形状に応じて異なる。
【0157】
作製した試験片について、図8に示すような凸条部A2を有する試験片同士の組を設定した。図8中の各数値は、凸条部A2及びリブA3の寸法を示す。寸法の単位はmmである。
【0158】
(実施例1~6)
図8に示すように、図8に示す各組の試験片を、それぞれ実施例1~6とした。各組の試験片について、凸条部A2に下記条件で赤外線IRを照射して加熱した後すぐに、凸条部A2同士を下記条件にて振動溶着し、溶着成形体を製造した。
【0159】
(赤外線加熱条件)
電熱線出力:7.5A
試験片と電熱線との距離:2.0mm
加熱時間:40秒
【0160】
(振動溶着条件)
振幅 :1.0mm
振動周波数:220Hz
振動時間 :1.0秒
押付け荷重:3MPa
【0161】
(比較例1)
試験片同士を当接させた後、振動させなかったこと以外は実施例2と同様にして、比較例1の溶着成形体を製造した。
【0162】
(比較例2)
赤外線にて試験片を加熱することなく振動溶着したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の溶着成形体を製造した。しかし、凸条部同士や溶着せず、溶着成形体は得られなかった。
【0163】
(比較例3)
赤外線にて試験片を加熱することなく振動溶着したこと以外は実施例2と同様にして、比較例3の溶着成形体を製造した。しかし、凸条部同士や溶着せず、溶着成形体は得られなかった。
【0164】
(比較例4)
赤外線の照射による加熱時間を7秒に変更したこと以外は比較例1と同様にして、比較例4の溶着成形体を製造した。
【0165】
(バリの充填率)
バリの充填率の算出方法は、以下の記載の方法で実施した。
まず、作製した溶着成形体を、バリが充填される筒状の保持空間の延在方向に直交する面(断面)で切削した。切削した断面の画像を撮像し、得られた断面の画像を、画像処理ソフト(WinROOF2018、三谷商事株式会社)を用いて画像解析した。
【0166】
画像解析においては、断面を撮像し、得られる断面の画像においてバリが存在する保持空間を指定し、バリの保持空間内のバリが占める領域と空隙が占める領域とを、画像処理ソフトの機能である二値化コマンドにて二値化して区別した。二値化の閾値は、断面画像から判断できるバリと空隙との境界と、二値化後の像におけるバリと空隙との境界とが一致する値とした。作業者は、「二値化コマンド」を実行するにあたり、画像処理ソフトを調整して上記条件の閾値を設定した。作業者は、バリと保持空間を形成する溶着本体部との境界、バリと保持空間を形成するリブとの境界、空隙と溶着本体部との境界、及び空隙とリブとの境界を、それぞれ目視で区別した。
【0167】
バリの充填率は、断面の画像における保持空間のうち、バリが占める領域の面積を、保持空間の全体の面積で除することで算出した。保持空間の全体の面積は、バリが占める領域の面積と、空隙が占める領域の面積の和である。
【0168】
バリの充填率は、溶着した凸条部の両側にある保持空間の合計面積と、凸条部の両側の保持空間においてバリが占める領域の合計面積と、を用いて計算した。
【0169】
(溶着強度)
試験片の溶着成形体の溶着強度は、引張試験で引張強度を測定して求めた。下記方法で測定して得られる引張強度を、試験片の溶着成形体の溶着強度とした。
具体的には、実施例1~6、比較例1~4において得られた試験片の溶着成形体について、本体A0の他端側(凸条部A2とは反対側)をそれぞれ把持し、引張試験を行って溶着強度を確認した。溶着強度の測定は、溶着成形体を3個用意して3回行った。得られた溶着強度の算術平均値を、求める溶着強度の値とした。
【0170】
引張試験は、万能試験機(テンシロンRTG-1250、株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、スパン間距離20mm、試験速度5mm/分の測定条件で実施した。溶着強度の測定値は、引張試験における最大応力を採用した。
【0171】
評価結果を、表1に示す。
【0172】
【表1】
【0173】
評価の結果、実施例1~6は、いずれも赤外線照射のみ(比較例1,4)、振動溶着のみ(比較例2,3)と比べて高い溶着強度を示した。また、実施例1、2の保持空間におけるバリの充填率は、73%、61%と高い値を示した。比較例4の保持空間におけるバリの充填率は、17%であった。
なお、実施例3~6の保持空間におけるバリの充填率は、実測はしていないが、比較例4のバリの充填率よりも目視で明らかに多く、20%以上の充填率であることが強く示唆された。
【0174】
以上の結果から、本発明が有用であることが分かった。
【符号の説明】
【0175】
1…第1部材、2…第2部材、100…溶着成形体(パイプ)、130…溶着部、130a…保持空間、131…溶着本体部、132,133…リブ、139…バリ、141…第1基部、142…第1凸条部、142a,152a…頭頂面、143,144…第1リブ、151…第2基部、152…第2凸条部、153,154…第2リブ、W1…第1凸条部の頭頂面の幅、W2…第2凸条部の頭頂面の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8