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特許7576165硬化性組成物、前記組成物を用いて製造された硬化膜、および前記硬化膜を含むカラーフィルタ
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  • 特許-硬化性組成物、前記組成物を用いて製造された硬化膜、および前記硬化膜を含むカラーフィルタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】硬化性組成物、前記組成物を用いて製造された硬化膜、および前記硬化膜を含むカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20241023BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20241023BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C08F220/10
G02B5/20 101
C08F2/44 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023513973
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-14
(86)【国際出願番号】 KR2021011109
(87)【国際公開番号】W WO2022059942
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0119173
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンギ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヨンヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,オンユ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ボムジン
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-118971(JP,A)
【文献】特開2016-066041(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0231871(US,A1)
【文献】特開2020-126234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0248068(US,A1)
【文献】特表2019-532473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0102449(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0105052(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08L
G02B5
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットおよび重合性化合物を含み、
前記重合性化合物は水素結合供与体の役割を果たす第1重合性化合物および水素結合受容体の役割を果たす第2重合性化合物を含み、
前記第1重合性化合物は、下記化学式1-1および下記化学式1-2のうちのいずれか一つで表され、前記第2重合性化合物は、下記化学式2-1~下記化学式2-5のうちのいずれか一つで表される
硬化性組成物。
【化1】

【化2】
【請求項2】
前記第1重合性化合物は、6.2cps超過の粘度および1×10-3torr未満の蒸気圧を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記第2重合性化合物は、6.2cps以下の粘度および1×10-3torr以上の蒸気圧を有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記硬化性組成物は、無溶媒型硬化性組成物である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記無溶媒型硬化性組成物は、前記無溶媒型硬化性組成物総量に対して、
前記量子ドット5重量%~60重量%;および
前記重合性化合物40重量%~95重量%
を含む、請求項に記載の無溶媒型硬化性組成物。
【請求項6】
前記硬化性組成物は、重合開始剤、光拡散剤、バインダー樹脂またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記光拡散剤は、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ジルコニアまたはこれらの組み合わせを含む、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記硬化性組成物は溶媒をさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記硬化性組成物は、前記硬化性組成物全体重量を基準にして、前記量子ドット1重量%~40重量%;前記重合性化合物1重量%~20重量%;および前記溶媒40重量%~80重量%を含む、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記硬化性組成物は、重合禁止剤;マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;シラン系カップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
請求項1~10のうちのいずれか一項による硬化性組成物を用いて製造された硬化膜。
【請求項12】
請求項11の硬化膜を含むカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、硬化性組成物、前記組成物を用いて製造された硬化膜、および前記硬化膜を含むカラーフィルタとディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な量子ドットの場合、疎水性を有する表面特性によって分散される溶媒が制限的であり、これにより、バインダーや硬化性モノマーなどのような極性システムへの導入に多く困っているのが事実である。
【0003】
一例として、活発に研究されている量子ドットインク組成物の場合でも、その初期段階では相対的に極性度が低く疎水性程度が高い硬化性組成物に使用される溶媒に分散される水準であった。そのため、全体組成物総量に対して20重量%以上の量子ドットを含ませにくくてインクの光効率を一定水準以上増加させることができず、光効率を増加させるために無理に量子ドットを追加投入して分散させてもインク-ジェッティング(Ink-jetting)が可能な粘度範囲を超えるようになって、工程性を満足させることができなかった。
【0004】
また、ジェッティング(jetting)が可能な粘度範囲を実現するために全体組成物総量に対して50重量%以上の溶媒を含ませてインク固形分含量を低める方法を使用してきたが、この方法も粘度面ではある程度満足すべき結果を提供するが、ジェッティング(jetting)時溶媒揮発によるノズル乾燥、ノズル目詰り現象、ジェッティング(jetting)後の時間による単膜厚さ減少などの問題と共に硬化後厚さ偏差が激しくなって、実際工程に適用しにくい短所を有する。
【0005】
したがって、量子ドットインクは溶媒を含まない無溶媒タイプが実際工程に適用するのに最も好ましい形態であり、現在の量子ドット自体を溶媒型組成物に適用する技術はもうある程度限界に至ったと評価されている。
【0006】
無溶媒型硬化性組成物(量子ドットインク組成物)の場合、重合性化合物が過量含まれる特性によって、揮発性によるノズル乾燥による目詰りおよび吐出不良、パターン隔壁ピクセル内ジェッティングされたインク組成物の揮発による単膜厚さ減少などが問題になる。したがって、無溶媒型硬化性組成物を構成する主要構成成分である重合性化合物の蒸気圧を最大限低めることが良い。よって、前記重合性単量体の分子量を増加させるかエチレングリコール鎖またはヒドロキシ基を含む化学構造を導入させて前記重合性化合物の蒸気圧を低めようとする努力があった。しかし、前記重合性化合物の蒸気圧が低ければ低いほどそれだけ前記重合性化合物の粘度が増加して、これを含む硬化性組成物の粘度を高めることによって、結局インク-ジェッティング性が低下する問題が発生した。
【0007】
よって、量子ドット含有無溶媒型硬化性組成物を構成する主要構成成分である重合性化合物に低い蒸気圧と低い粘度を同時に付与しようとする研究が続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、水素結合の可能な互いに異なる2種の重合性化合物を共に使用して水素結合相互作用を引き起こすことによって、インクジェッティング物性を強化し、揮発性改善を通じて単膜厚さ減少も最少化することができる硬化性組成物を提供するためのものである。
【0009】
他の一実施形態は、前記硬化性組成物を用いて製造された硬化膜を提供するためのものである。
【0010】
また他の一実施形態は、前記硬化膜を含むカラーフィルタおよびディスプレイ装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態は、量子ドットおよび重合性化合物を含み、前記重合性化合物は水素結合供与体の役割を果たす第1重合性化合物および水素結合受容体の役割を果たす第2重合性化合物を含み、前記第1重合性化合物および第2重合性化合物はそれぞれ独立して少なくとも一つ以上の末端に(メタ)アクリレート基を含む硬化性組成物を提供する。
【0012】
前記第1重合性化合物は、下記化学式1で表すことができる。
【0013】
【化1】
【0014】
上記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
およびLは、それぞれ独立して単一結合、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
Xは、ヒドロキシ基で置換された炭素数1~10のアルキレン基、アミノ基で置換された炭素数1~10のアルキレン基または*-NH-*である。
【0015】
前記第1重合性化合物は、6.2cps超過の粘度および1×10-3torr未満の蒸気圧を有することができる。
【0016】
前記第1重合性化合物は、下記化学式1-1~化学式1-3のうちのいずれか一つで表すことができる。
【0017】
【化2】
【0018】
前記第2重合性化合物は、下記化学式2で表すことができる。
【0019】
【化3】
【0020】
上記化学式2中、
およびRは、それぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
およびLは、それぞれ独立して単一結合、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
Yは、酸素原子、硫黄原子、*-C(=O)-*、フッ素原子で置換された炭素数1~10のアルキレン基または*-NR(Rは炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~20のアリール基)-*である。
【0021】
前記第2重合性化合物は、6.2cps以下の粘度および1×10-3torr以上の蒸気圧を有することができる。
【0022】
前記第2重合性化合物は、下記化学式2-1~化学式2-5のうちのいずれか一つで表すことができる。
【0023】
【化4】
【0024】
前記硬化性組成物は、光拡散剤、重合開始剤、バインダー樹脂またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0025】
前記光拡散剤は、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、ジルコニアまたはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0026】
前記硬化性組成物は、無溶媒型硬化性組成物であってもよい。
【0027】
前記無溶媒型硬化性組成物は、前記無溶媒型硬化性組成物総量に対して、前記量子ドット5重量%~60重量%;および前記重合性化合物40重量%~95重量%を含むことができる。
【0028】
前記硬化性組成物は溶媒をさらに含むことができる。この時、前記硬化性組成物は、前記硬化性組成物全体重量を基準にして、前記量子ドット1重量%~40重量%;前記重合性化合物1重量%~20重量%;および前記溶媒40重量%~80重量%を含むことができる。
【0029】
前記硬化性組成物は、重合禁止剤;マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;シラン系カップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0030】
他の一実施形態は、前記硬化性組成物を用いて製造された硬化膜を提供する。
【0031】
また他の一実施形態は、前記硬化膜を含むカラーフィルタおよびディスプレイ装置を提供する。
【0032】
また他の一実施形態は、前記カラーフィルタを含むディスプレイ装置を提供する。
【0033】
その他の本発明の側面の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0034】
水素結合供与体と水素結合受容体の役割を果たす、粘度が高く低いそれぞれ異なる2つのモノマーを混用して水素結合相互作用(hydrogen bonding interaction)を引き起こすことによって、インク組成物のインクジェッティング物性を強化させ、同時に時間経過によってインク組成物が揮発され易い揮発性問題を改善してコーティングされたインク組成物の単膜厚さ減少率を最少化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施例1による硬化性組成物をピクセルにインクジェッティングし、1時間が経過した後の膜断面写真である。
図2】比較例1による硬化性組成物をピクセルにインクジェッティングし、1時間が経過した後の膜断面写真である。
図3】比較例2による硬化性組成物をピクセルにインクジェッティングし、1時間が経過した後の膜断面写真である。
図4】本願の第1重合性化合物と第2重合性化合物間水素結合が起こることを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されるわけではなく、本発明は後述の特許請求の範囲の範疇によって定義されるだけである。
【0037】
本明細書で特別な言及がない限り、“アルキル基”とは炭素数1~20のアルキル基を意味し、“アルケニル基”とは炭素数2~20のアルケニル基を意味し、“シクロアルケニル基“とは炭素数3~20のシクロアルケニル基を意味し、“ヘテロシクロアルケニル基”とは炭素数3~20のヘテロシクロアルケニル基を意味し、“アリール基”とは炭素数6~20のアリール基を意味し、“アリールアルキル基”とは炭素数6~20のアリールアルキル基を意味し、“アルキレン基”とは炭素数1~20のアルキレン基を意味し、“アリーレン基”とは炭素数6~20のアリーレン基を意味し、“アルキルアリーレン基”とは炭素数6~20のアルキルアリーレン基を意味し、“ヘテロアリーレン基”とは炭素数3~20のヘテロアリーレン基を意味し、“アルコキシレン基”とは炭素数1~20のアルコキシレン基を意味する。
【0038】
本明細書で特別な言及がない限り、“置換”とは少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミン基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバモイル基、チオール基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸やその塩、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルケニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキニル基、炭素数3~20のヘテロアリール基またはこれらの組み合わせの置換基で置換されたことを意味する。
【0039】
また、本明細書で特別な言及がない限り、“ヘテロ”とは、化学式内にN、O、SおよびPのうちの少なくとも一つのヘテロ原子が少なくとも一つ含まれたことを意味する。
【0040】
また、本明細書で特別な言及がない限り、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”と“メタクリレート”の両方とも可能であるのを意味し、“(メタ)アクリル酸”は“アクリル酸”と“メタクリル酸”の両方とも可能であるのを意味する。
【0041】
本明細書で特別な言及がない限り、“組み合わせ”とは、混合または共重合を意味する。
【0042】
本明細書内化学式で別途の定義がない限り、化学結合が描かれなければならない位置に化学結合が描かれていない場合は、前記位置に水素原子が結合されているのを意味する。
【0043】
また、本明細書で特別な言及がない限り、“*”は同一であるか異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0044】
量子ドットはそれ自体では不安定な性質を有するため、一般にこれを用いて組成物を製造する時には量子ドットをリガンドで表面改質させて、量子ドットを安定化させた後、これを使用する。しかし、現在までのディスプレイ装置を構成するパネルの製造方法を見れば、前記のように不安定な量子ドットを含む組成物をインク-ジェッティング設備を用いて単膜の上の隔壁ピクセル内に一定の厚さで満たした後、露光および熱硬化を経て硬化膜を製造した後、後続熱工程を経てパネルを製造するようになる。この時、前記後続熱工程によって量子ドットの光効率損失が発生するようになるため、後続熱工程以後にも光効率を継続して高く維持することが高輝度パネル製作のために何より重要である。
【0045】
既存のリガンド開発過程を見てみると、初期にはthiol-freeリガンドとしてphosphoric acid、carboxylic acid官能基を有するリガンドを主に使用した。しかし、このようなリガンドはリガンド置換反応性は卓越しているが、これを含む組成物を用いて硬化膜を製造する場合、前記硬化膜の光効率が急激に減少するという問題点があった。よって、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオナート)などのthiolリガンドを導入して硬化膜の光効率減少問題を多く改善させたが、前記thiolリガンドは高温熱工程でのリガンド分解によるアウトガス発生問題とthiolリガンドで表面改質された量子ドット含有硬化性組成物のインクジェッティング性側面から大きな問題があった。よって、thiolリガンドの代わりにヒドロキシ基リガンドなどを通じてリガンド交換反応性を低く制御すると同時に表面改質された量子ドットが適用された組成物が高温熱工程でもリガンド分解が起こることを防止しようとする努力があったが、これも硬化膜の光効率を向上させることには力不足であった。
【0046】
何よりも量子ドットの表面を改質させるリガンドは組成物全体組成に対して1重量%~2重量%のみ添加されてもチオール基やヒドロキシ基のような反応性の高い置換基によって組成物の増粘現象制御が難しく、満24時間以内に発生するゲル化現象によって(粘度増加)最終的に組成物自体を使用することができないという問題がある(即ち、インクジェッティング性側面から非常に好ましくない)。
【0047】
よって、別途の添加剤を使用せず量子ドット表面のリガンド構造自体を耐熱性が改善される方向に改質させようとする努力もあったが、(例えば、リガンド末端官能基に反応性サイトやrigid moietyを適用)別途の添加剤の使用なく、量子ドット表面のリガンド構造自体が改質された量子ドットを合成することが非常に難しく、合成したとしても最終的に配合された組成物が有する粘度が依然として高くてインクジェッティング性改善効果がないという点で、現在このような努力は注目されていない。
【0048】
本発明者らは従来のように量子ドット表面改質などによる方法のみではインクジェッティング性を改善するのに不足すると判断し、従来はなかった全く新たな方式で接近して、インク組成物のインクジェッティング性を改善すると同時に揮発性も改善させることができる技術を開発するに至った。
【0049】
具体的に、一実施形態は、量子ドット含有硬化性組成物に必須的に含まれる重合性化合物、水素結合供与体官能基と水素結合受容体官能基が含まれている、粘度と蒸気圧が高く低い、互いに異なる2種の重合性化合物を混合使用することによって、インクジェッティング性および揮発性を改善させた。
【0050】
より具体的に、一実施形態による硬化性組成物は量子ドットおよび重合性化合物を含み、前記重合性単量体は水素結合供与体の役割を果たす第1重合性化合物および水素結合受容体の役割を果たす第2重合性化合物を含み、前記第1重合性化合物および第2重合性化合物はそれぞれ独立して少なくとも一つ以上の末端に(メタ)アクリレート基を含む。
【0051】
以下、一実施形態による硬化性組成物を構成するそれぞれの成分について具体的に説明する。
【0052】
重合性化合物
インクジェッティング性を改善して円滑なインクジェッティング工程を可能にするためには、蒸気圧と粘度が全て低い重合性化合物を適用することが好ましい。しかし、一般的な重合性化合物の構造、即ち、両末端のうちの少なくとも一つ以上に炭素-炭素二重結合を有する重合性化合物の構造では蒸気圧と粘度が互いにtrade-off関係にあることによって、多くの制約がある。
【0053】
本発明者らは互いに異なる粘度および蒸気圧を有する重合性化合物の組み合わせを最適化することによって優れたインクジェット工程性を有することができる硬化型組成物を完成するに至った。
【0054】
具体的に、重合性化合物としてi)一般的な量子ドットインク硬化性組成物に主に使用される1,6-hexandiol diacrylate(粘度6.2cPs、蒸気圧1×10-3torr)のような単量体より高い粘度を有しながら蒸気圧は低い重合性化合物(第1重合性化合物)と、ii)1,6-hexandiol diacrylateが有する粘度より低い粘度を有しながら蒸気圧は高い重合性化合物(第2重合性化合物)とを混用する場合、前記2つの重合性化合物間水素結合によって、最終的に製造される量子ドットインク硬化性組成物の粘度が適切に制御されてインクジェッティング性が優れるようになるだけでなく、量子ドットインク硬化性組成物の揮発性を改善させるのを確認することができた。
【0055】
例えば、水素結合供与体の役割を果たす前記第1重合性化合物は、下記化学式1で表すことができる。
【0056】
【化5】
【0057】
上記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
およびLは、それぞれ独立して単一結合、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
Xは、ヒドロキシ基で置換された炭素数1~10のアルキレン基、アミノ基で置換された炭素数1~10のアルキレン基、カルボキシル基で置換された炭素数1~10のアルキレン基または*-NH-*である。
【0058】
水素結合は二つの双極子の間で起こる結合であって、電気陰性度が大きな原子に結合した水素原子が水素結合供与体(δの役割を果たし、電気陰性度が大きな窒素原子や酸素原子などが水素結合受容体(δの役割を果たす。
【0059】
前記化学式1のXで、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、*-NH-*基などの水素原子が水素結合供与体の役割を果たすことができるため、前記化学式1で表される化合物は本願の第1重合性化合物として機能できる。
【0060】
例えば、前記第1重合性化合物は、1,6-hexandiol diacrylateの粘度である6.2cPsより高い粘度を有することができる。
【0061】
例えば、前記第1重合性化合物は、1,6-hexandiol diacrylateの蒸気圧である1×10-3torrより低い蒸気圧、例えば1×10-4torr以下の蒸気圧を有することができる。
【0062】
例えば、前記第1重合性化合物は下記化学式1-1~化学式1-3のうちのいずれか一つで表すことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0063】
【化6】
【0064】
例えば、水素結合受容体の役割を果たす前記第2重合性化合物は、下記化学式2で表すことができる。
【0065】
【化7】
【0066】
上記化学式2中、
およびRは、それぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
およびLは、それぞれ独立して単一結合、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキレン基または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基であり、
Yは、酸素原子、硫黄原子、*-C(=O)-*、フッ素原子で置換された炭素数1~10のアルキレン基または*-NR(Rは炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~20のアリール基)-*である。
【0067】
前記化学式2のYで、非共有電子対を有する酸素原子、硫黄原子、フッ素原子、窒素原子が水素結合受容体の役割を果たすことができるため、前記化学式2で表される化合物は本願の第2重合性化合物として機能できる。
【0068】
例えば、前記第2重合性化合物は、1,6-hexandiol diacrylateの粘度である6.2cPs以下の粘度を有することができる。
【0069】
例えば、前記第2重合性化合物は、1,6-hexandiol diacrylateの蒸気圧である1×10-3torr以上の蒸気圧、例えば1×10-3torr~1×10-2torrの蒸気圧を有することができる。
【0070】
例えば、前記第2重合性化合物は、下記化学式2-1~化学式2-5のうちのいずれか一つで表すことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0071】
【化8】
【0072】
例えば、前記第1重合性化合物および第2重合性化合物は、2:8~8:2の重量比で混用することが好ましい。
【0073】
一実施形態による硬化性組成物が無溶媒型硬化性組成物である場合、前記重合性化合物は前記無溶媒型硬化性組成物総量に対して40重量%~95重量%、例えば40重量%~85重量%、例えば40重量%~80重量%で含まれてもよい。前記重合性化合物の含量が前記範囲内である場合、インクジェッティングが可能な粘度、例えば10cPs~30cPsの粘度を有する無溶媒型硬化性組成物の製造が可能であり、また製造された無溶媒型硬化性組成物内量子ドットが優れた分散性を有することができて、光特性も向上できる。
【0074】
また、前記硬化性組成物が溶媒を含む場合、前記重合性化合物は前記硬化性組成物総量に対して1重量%~15重量%、例えば5重量%~15重量%で含まれてもよい。前記重合性化合物が前記範囲内に含まれる場合、前記量子ドットの光特性向上を図ることができる。
【0075】
例えば、前記重合性化合物は、200g/mol~1,000g/molの分子量を有することができる。前記重合性化合物の分子量が前記範囲である場合、量子ドットの光特性を阻害しないながら組成物の粘度を高めなくてインク-ジェッティングに有利であり得る。
【0076】
また、前記重合性化合物は前記第1重合性化合物および第2重合性化合物と共に従来の熱硬化性または光硬化性組成物に一般に使用される単量体(第3重合性化合物)をさらに含むことができ、例えば前記第3重合性化合物はビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテルなどのオキセタン系化合物などをさらに含むことができる。
【0077】
量子ドット
一実施形態による硬化性組成物内量子ドットは、極性基を有するリガンド、例えば、前記重合性化合物と親和性の高いリガンドで表面改質された量子ドットであってもよい。前記のように表面改質された量子ドットの場合、高濃度あるいは高濃縮量子ドット分散液の製造が非常に容易(重合性単量体に対する量子ドットの分散性向上)で、光効率改善に大きな影響を与えることができ、特に無溶媒型硬化性組成物実現に有利であり得る。
【0078】
例えば、前記極性基を有するリガンドは、前記重合性化合物の化学構造と親和性の高い構造を有することができる。
【0079】
例えば、前記極性基を有するリガンドは下記化学式3~化学式16のうちのいずれか一つで表すことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0080】
【化9】
【0081】
上記化学式3~化学式8中、
~Rは、それぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
~L16は、それぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
n1~n7は、それぞれ独立して0~10の整数である。
【0082】
【化10】
【0083】
上記化学式9~化学式11中、
およびRは、それぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
17~L23は、それぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
n8~n10は、それぞれ独立して0~10の整数である。
【0084】
【化11】
【0085】
上記化学式12~化学式15中、
10~R15は、それぞれ独立して水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
24~L29は、それぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
n11~n16は、それぞれ独立して0~10の整数である。
【0086】
【化12】
【0087】
上記化学式16中、
16~R18は、それぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり、
30~L32は、それぞれ独立して置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
n17~n19は、それぞれ独立して0~10の整数である。
【0088】
例えば、前記化学式3~化学式16で表される化合物は下記化学式A~化学式Qで表される化合物のうちのいずれか一つで表すことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0089】
【化13】
【0090】
(上記化学式D中、m1は0~10の整数である。)
【0091】
【化14】
【0092】
前記リガンドを使用する場合、量子ドットの表面改質がさらに容易であって、前記リガンドで表面改質された量子ドットを前述の重合性化合物に投入して攪拌すれば、非常に透明な分散液を得ることができ、これは量子ドットの表面改質が非常によく行われたのを確認する尺度となる。
【0093】
例えば、前記量子ドットは、500nm~680nmで最大蛍光発光波長を有することができる。
【0094】
例えば、一実施形態による硬化性組成物が無溶媒型硬化性組成物である場合、前記量子ドットは5重量%~60重量%、例えば10重量%~60重量%、例えば20重量%~60重量%、例えば30重量%~50重量%で含まれてもよい。前記量子ドットが前記範囲内に含まれる場合、硬化後にも高い光維持率および光効率を達成することができる。
【0095】
例えば、一実施形態による硬化性組成物が溶媒を含む硬化性組成物である場合、前記量子ドットは前記硬化性組成物総量に対して1重量%~40重量%、例えば3重量%~30重量%含まれてもよい。前記量子ドットが前記範囲内に含まれる場合、光変換率に優れパターン特性と現像特性を阻害しなくて優れた工程性を有することができる。
【0096】
現在までの量子ドット含有硬化性組成物(インク)は量子ドットとの相溶性が良いチオール系バインダーまたはモノマーを特化させる方向に開発が行われており、さらに製品化まで行われている。
【0097】
例えば、前記量子ドットは360nm~780nmの波長領域、例えば400nm~780nmの波長領域の光を吸収して、500nm~700nmの波長領域、例えば500nm~580nmで蛍光を放出するか、600nm~680nmで蛍光を放出することができる。即ち、前記量子ドットは500nm~680nmで最大蛍光発光波長(fluorescence λem)を有することができる。
【0098】
前記量子ドットは、それぞれ独立して20nm~100nm、例えば20nm~50nmの半値幅(Full width at half maximum;FWHM)を有することができる。前記量子ドットが前記範囲の半値幅を有する場合、色純度が高いことによって、カラーフィルタ内色材料として使用時、色再現率が高まる効果がある。
【0099】
前記量子ドットはそれぞれ独立して有機物であるか無機物または有機物と無機物のハイブリッド(混成物)であってもよい。
【0100】
前記量子ドットはそれぞれ独立してコアおよび前記コアを囲むシェルから構成され、前記コアおよびシェルはそれぞれ独立してII-IV族、III-V族などからなるコア、コア/シェル、コア/第1シェル/第2シェル、合金、合金/シェルなどの構造を有することができ、これに限定されるのではない。
【0101】
例えば、前記コアはCdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InP、InAsおよびこれらの合金からなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。前記コアを囲んだシェルはCdSe、ZnSe、ZnS、ZnTe、CdTe、PbS、TiO、SrSe、HgSeおよびこれらの合金からなる群より選択された少なくとも一つ以上の物質を含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0102】
一実施形態では、最近、全世界的に環境に対する関心が大きく増加し有毒性物質に対する規制が強化されているので、カドミウム系コアを有する発光物質の代わりに、量子効率(quantum yield)は多少低いが、環境にやさしい非カドミウム系発光素材(InP/ZnS、InP/ZeSe/ZnSなど)を使用したが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0103】
前記コア/シェル構造の量子ドットの場合、シェルを含む全体量子ドットそれぞれの大きさ(平均粒径)は1nm~15nm、例えば5nm~15nmであってもよい。
【0104】
例えば、前記量子ドットはそれぞれ独立して、赤色量子ドット、緑色量子ドットまたはこれらの組み合わせを含むことができる。前記赤色量子ドットはそれぞれ独立して、10nm~15nmの平均粒径を有することができる。前記緑色量子ドットはそれぞれ独立して、5nm~8nmの平均粒径を有することができる。
【0105】
一方、前記量子ドットの分散安定性のために、一実施形態による硬化性組成物は分散剤をさらに含んでもよい。前記分散剤は量子ドットのような光変換物質が硬化性組成物内で均一に分散されるように助け、非イオン性、陰イオン性または陽イオン性分散剤を全て使用することができる。具体的には、ポリアルキレングリコールまたはそのエステル類、ポリオキシアルキレン、多価アルコールエステルアルキレンオキシド付加物、アルコールアルキレンオキシド付加物、スルホン酸エステル、スルホン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アルキルアミドアルキレンオキシド付加物、アルキルアミンなどを使用することができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。前記分散剤は量子ドットのような光変換物質の固形分に対して0.1重量%~100重量%、例えば10重量%~20重量%で使用できる。
【0106】
光拡散剤
一実施形態による硬化性組成物は光拡散剤をさらに含むことができる。
【0107】
例えば、前記光拡散剤は、硫酸バリウム(BaSO)、炭酸カルシウム(CaCO)、二酸化チタン(TiO)、ジルコニア(ZrO)またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0108】
前記光拡散剤は前述の量子ドットに吸収されない光を反射させ、前記反射された光を量子ドットが再び吸収できるようにする。即ち、前記光拡散剤は量子ドットに吸収される光の量を増加させて、硬化性組成物の光変換効率を増加させることができる。
【0109】
前記光拡散剤は平均粒径(D50)が150nm~250nmであってもよく、具体的には180nm~230nmであってもよい。前記光拡散剤の平均粒径が前記範囲内である場合、より優れた光拡散効果を有することができ、光変換効率を増加させることができる。
【0110】
前記光拡散剤は、前記硬化性組成物総量に対して1重量%~20重量%、例えば2重量%~15重量%、例えば3重量%~10重量%で含まれてもよい。前記光拡散剤が前記硬化性組成物総量に対して1重量%未満で含まれる場合、光拡散剤を使用することによる光変換効率向上効果を期待しにくく、20重量%を超過して含む場合には量子ドット沈降問題が発生するおそれがある。
【0111】
重合開始剤
一実施形態による硬化性組成物は重合開始剤をさらに含むことができ、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0112】
前記光重合開始剤は感光性樹脂組成物に一般に使用される開始剤であって、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物、アミノケトン系化合物などを使用することができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0113】
前記アセトフェノン系の化合物の例としては、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0114】
前記ベンゾフェノン系化合物の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-2-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0115】
前記チオキサントン系化合物の例としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0116】
前記ベンゾイン系化合物の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタルなどが挙げられる。
【0117】
前記トリアジン系化合物の例としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ビフェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-s-トリアジンなどが挙げられる。
【0118】
前記オキシム系化合物の例としては、O-アシルオキシム系化合物、2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、O-エトキシカルボニル-α-オキシアミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどを使用することができる。前記O-アシルオキシム系化合物の具体的な例としては、1,2-オクタンジオン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、および1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1-オンオキシム-O-アセテートなどが挙げられる。
【0119】
前記アミノケトン系化合物の例としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(2-Benzyl-2-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-butanone-1)などが挙げられる。
【0120】
前記光重合開始剤は、前記化合物以外にもカルバゾール系化合物、ジケトン類化合物、スルホニウムボレート系化合物、ジアゾ系化合物、イミダゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物などを使用することができる。
【0121】
前記光重合開始剤は光を吸収して励起状態になった後にそのエネルギーを伝達することによって化学反応を引き起こす光増感剤と共に使用されてもよい。
【0122】
前記光増感剤の例としては、テトラエチレングリコールビス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート、ジペンタエリトリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネートなどが挙げられる。
【0123】
前記熱重合開始剤の例としては、ペルオキシド、具体的に、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、シクロヘキサンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ヒドロペルオキシド(例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド)、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、2,2-アゾ-ビス(イソブチロニトリル)、t-ブチルペルベンゾエートなどが挙げられ、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオニトリルなども挙げられるが、必ずしもこれに限定されるのではなく、当業界に広く知られたものであれば何れも使用することができる。
【0124】
前記重合開始剤は、前記硬化性組成物総量に対して0.1重量%~5重量%、例えば、1重量%~4重量%で含まれてもよい。重合開始剤が前記範囲内に含まれる場合、露光または熱硬化時に硬化が十分に起こって優れた信頼性を得ることができ、未反応開始剤による透過率の低下を防止して量子ドットの光特性低下を防止することができる。
【0125】
バインダー樹脂
前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂、カルド系樹脂、エポキシ樹脂、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0126】
前記アクリル系樹脂は第1エチレン性不飽和単量体およびこれと共重合可能な第2エチレン性不飽和単量体の共重合体であって、一つ以上のアクリル系繰り返し単位を含む樹脂であってもよい。
【0127】
前記アクリル系バインダー樹脂の具体的な例としては、ポリベンジルメタクリレート、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などが挙げられるが、これに限定されるのではなく、これらを単独または2種以上を配合して使用してもよい。
【0128】
前記アクリル系樹脂の重量平均分子量は5,000g/mol~15,000g/molであってもよい。前記アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記範囲内である場合、基板との密着性に優れ、物理的、化学的物性が良く、粘度が適切である。
【0129】
前記アクリル系樹脂の酸価は80mgKOH/g~130mgKOH/gであってもよい。前記アクリル系樹脂の酸価が前記範囲内である場合、ピクセルパターンの解像度が優れる。
【0130】
前記カルド系樹脂は通常の硬化性樹脂(または感光性樹脂)組成物に使用されるものを使用することができ、例えば、韓国公開特許10-2018-0067243号に提示されたものを使用することができるが、これに限定されない。
【0131】
前記カルド系樹脂は、例えば、9,9-ビス(4-オキシラニルメトキシフェニル)フルオレンなどのフルオレン含有化合物;ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフタル酸無水物などの無水物化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどのアルコール化合物;プロピレングリコールメチルエチルアセテート、N-メチルピロリドンなどの溶媒類化合物;トリフェニルホスフィンなどのリン化合物;およびテトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、ベンジルジエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリドなどのアミンまたはアンモニウム塩化合物のうちの二つ以上を混合して製造することができる。
【0132】
前記カルド系樹脂の重量平均分子量は500g/mol~50,000g/mol、例えば1,000g/mol~30,000g/molであってもよい。前記カルド系樹脂の重量平均分子量が前記範囲内である場合、硬化膜製造時に残渣なくパターン形成がよく行われ、溶媒型硬化性組成物の現像時に膜厚の損失がなく、良好なパターンを得ることができる。
【0133】
前記バインダー樹脂がカルド系樹脂である場合、これを含む硬化性組成物、特に感光性樹脂組成物の現像性に優れ、光硬化時感度が良くて微細パターン形成性に優れる。
【0134】
前記エポキシ樹脂は熱によって重合されるモノマー(monomer)またはオリゴマー(oligomer)であって、炭素-炭素不飽和結合および炭素-炭素環状結合を有する化合物などを含むことができる。
【0135】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂および脂肪族ポリグリシジルエーテルなどを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0136】
このような化合物の市販品として、ビスフェニルエポキシ樹脂には油化シェルエポキシ(株)社のYX4000、YX4000H、YL6121H、YL6640、YL6677;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂には日本化薬(株)社のEOCN-102、EOCN-103S、EOCN-104S、EOCN-1020、EOCN-1025、EOCN-1027および油化シェルエポキシ(株)社のエピコート180S75;ビスフェノールA型エポキシ樹脂には油化シェルエポキシ(株)社のエピコート1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010および828;ビスフェノールF型エポキシ樹脂には油化シェルエポキシ(株)社のエピコート807および834;フェノールノボラック型エポキシ樹脂には油化シェルエポキシ(株)社のエピコート152、154、157H65および日本化薬(株)社のEPPN201、202;その他の環状脂肪族エポキシ樹脂にはCIBA-GEIGY A.G社のCY175、CY177およびCY179、U.C.C社のERL-4234、ERL-4299、ERL-4221およびERL-4206、昭和電工(株)社のショーダイン509、CIBA-GEIGY A.G社のアラルダイトCY-182、CY-192およびCY-184、大日本インキ化学工業(株)社のエピクロン200および400、油化シェルエポキシ(株)社のエピコート871、872およびEP1032H60、セラニーズコーティング(株)社のED-5661およびED-5662;脂肪族ポリグリシジルエーテルには油化シェルエポキシ(株)社のエピコート190Pおよび191P、共栄社油脂化学工業(株)社のエポライト100MF、日本油脂(株)社のエピオールTMPなどが挙げられる。
【0137】
例えば、一実施形態による硬化性組成物が無溶媒型硬化性組成物である場合、前記バインダー樹脂は硬化性組成物総量に対して0.5重量%~10重量%、例えば1重量%~5重量%で含まれてもよい。この場合、前記無溶媒型硬化性組成物の耐熱性および耐化学性を向上させることができ、組成物の貯蔵安定性も改善させることができる。
【0138】
例えば、一実施形態による硬化性組成物が溶媒を含む硬化性組成物である場合、前記バインダー樹脂は硬化性組成物総量に対して1重量%~30重量%、例えば3重量%~20重量%で含まれてもよい。この場合、パターン特性と耐熱性および耐化学性を向上させることができる。
【0139】
その他の添加剤
前記量子ドットの安定性および分散性の向上のために、一実施形態による硬化性組成物は重合禁止剤をさらに含むことができる。
【0140】
前記重合禁止剤は、ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。一実施形態による硬化性組成物が前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせをさらに含むことによって、硬化性組成物を印刷(コーティング)後、露光する間に常温架橋を防止することができる。
【0141】
例えば、前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせは、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン、カテコール、t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、ピロガロール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-ナフトール、トリス(N-ヒドロキシ-N-ニトロソフェニルアミナト-O,O’)アルミニウム(Tris(N-hydroxy-N-nitrosophenylaminato-O,O’)aluminium)またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるのではない。
【0142】
前記ヒドロキノン系化合物、カテコール系化合物、またはこれらの組み合わせは分散液の形態で使用でき、前記分散液形態の重合禁止剤は硬化性組成物総量に対して0.001重量%~3重量%、例えば0.1重量%~2重量%で含まれてもよい。前記重合禁止剤が前記範囲内に含まれる場合、常温経時問題を解決すると同時に、感度低下および表面剥離現象を防止することができる。
【0143】
また、一実施形態による硬化性組成物は、耐熱性および信頼性の向上のために、マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;シラン系カップリング剤;レべリング剤;フッ素系界面活性剤;またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0144】
例えば、一実施形態による硬化性組成物は、基板との密着性などを改善するために、ビニル基、カルボキシル基、メタクリルオキシ基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシラン系カップリング剤をさらに含むことができる。
【0145】
前記シラン系カップリング剤の例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γイソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、βエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して使用することができる。
【0146】
前記シラン系カップリング剤は、前記硬化性組成物100重量部に対して0.01重量部~10重量部で含まれてもよい。シラン系カップリング剤が前記範囲内に含まれる場合、密着性、貯蔵性などに優れる。
【0147】
また、前記硬化性組成物は、必要によってコーティング性向上および欠点生成防止効果のために、即ち、レベリング(leveling)性能を改善させるために界面活性剤、例えばフッ素系界面活性剤をさらに含むことができる。
【0148】
前記フッ素系界面活性剤は、4,000g/mol~10,000g/molの低い重量平均分子量を有することができ、具体的には6,000g/mol~10,000g/molの重量平均分子量を有することができる。また前記フッ素系界面活性剤は、表面張力が18mN/m~23mN/m(0.1%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液で測定)であってもよい。前記フッ素系界面活性剤の重量平均分子量および表面張力が前記範囲内である場合、レベリング性能をさらに改善することができ、高速コーティング(high speed coating)時に染み発生を防止することができ、気泡発生が少なく膜欠陥が少ないため、高速コーティング法であるスリットコーティング(slit coating)に優れた特性を付与する。
【0149】
前記フッ素系界面活性剤としては、BM Chemie社のBM-1000(登録商標)、BM-1100(登録商標)など;大日本インキ化学工業(株)社のメガファック F 142D(登録商標)、同F 172(登録商標)、同F 173(登録商標)、同F 183(登録商標)など;住友スリーエム(株)社のフロラードFC-135(登録商標)、同FC-170C(登録商標)、同FC-430(登録商標)、同FC-431(登録商標)など;旭硝子(株)社のサーフロンS-112(登録商標)、同S-113(登録商標)、同S-131(登録商標)、同S-141(登録商標)、同S-145(登録商標)など;東レシリコン(株)社のSH-28PA(登録商標)、同-190(登録商標)、同-193(登録商標)、SZ-6032(登録商標)、SF-8428(登録商標)など;DIC(株)社のF-482、F-484、F-478、F-554などの名称で市販されているフッ素系界面活性剤を使用することができる。
【0150】
また、一実施形態による硬化性組成物は前述のフッ素系界面活性剤と共にシリコン系界面活性剤を使用することもできる。前記シリコン系界面活性剤の具体的な例としては、東芝シリコン社のTSF400、TSF401、TSF410、TSF4440などがあるが、これに限定されるのではない。
【0151】
前記フッ素系界面活性剤などを含む界面活性剤は、前記硬化性組成物100重量部に対して0.01重量部~5重量部、例えば0.1重量部~2重量部で含まれてもよい。前記界面活性剤が前記範囲内に含まれる場合、噴射された組成物内に異物が発生される現象が減少される。
【0152】
また一実施形態による硬化性組成物は、物性を阻害しない範囲内で酸化防止剤などのその他の添加剤が一定量さらに添加されてもよい。
【0153】
溶媒
一方、一実施形態による硬化性組成物は溶媒をさらに含んでもよい。
【0154】
前記溶媒は、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;メチルラクテート、エチルラクテートなどの乳酸アルキルエステル類;メチルヒドロキシアセテート、エチルヒドロキシアセテート、ブチルヒドロキシアセテートなどのヒドロキシ酢酸アルキルエステル類;メトキシメチルアセテート、メトキシエチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシメチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどの酢酸アルコキシアルキルエステル類;メチル3-ヒドロキシプロピオネート、エチル3-ヒドロキシプロピオネートなどの3-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、メチル3-エトキシプロピオネートなどの3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-ヒドロキシプロピオネート、エチル2-ヒドロキシプロピオネート、プロピル2-ヒドロキシプロピオネートなどの2-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-メトキシプロピオネート、エチル2-メトキシプロピオネート、エチル2-エトキシプロピオネート、メチル2-エトキシプロピオネートなどの2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート、エチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネートなどの2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-メトキシ-2-メチルプロピオネート、エチル2-エトキシ-2-メチルプロピオネートなどの2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチルプロピオネート、2-ヒドロキシ-2-メチルエチルプロピオネート、ヒドロキシエチルアセテート、メチル2-ヒドロキシ-3-メチルブタノエートなどのエステル類;またはピルビン酸エチルなどのケトン酸エステル類の化合物があり、またN-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセチルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フェニルセロソルブアセテートなどが挙げられるが、これに限定されるのではない。
【0155】
例えば、前記溶媒は、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレンジグリコールメチルエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;エタノールなどのアルコール類またはこれらの組み合わせを使用することが好ましい。
【0156】
例えば、前記溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレンジグリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2-ブトキシエタノール、N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、プロピレンカーボネート、γブチロラクトンまたはこれらの組み合わせを含む極性溶媒であってもよい。
【0157】
前記溶媒は、硬化性組成物総量に対して40重量%~80重量%、例えば45重量%~80重量%で含まれてもよい。溶媒が前記範囲内に含まれる場合、溶媒型硬化性組成物が適切な粘度を有することによってスピンコーティングおよびスリットを用いた大面積コーティング時に優れたコーティング性を有することができる。
【0158】
他の一実施形態は、前記硬化性組成物、例えば前記硬化性組成物を用いて製造された硬化膜、前記硬化膜を含むカラーフィルタおよびディスプレイ装置を提供する。
【0159】
前記硬化膜の製造方法のうちの一つは、前記硬化性組成物を基板の上にインクジェット噴射方法で塗布してパターンを形成する段階(S1);および前記パターンを硬化する段階(S2)を含む。
【0160】
(S1)パターンを形成する段階
前記硬化性組成物は、インクジェット分散方式で0.5~20μmの厚さで基板の上に塗布することが好ましい。前記インクジェット噴射は、各ノズル当り単一カラーのみ噴射して必要な色の数によって反復的に噴射することによってパターンを形成することができ、工程を減らすために必要な色の数を各インクジェットノズルを通じて同時に噴射する方式でパターンを形成することもできる。
【0161】
(S2)硬化する段階
前記得られたパターンを硬化させて画素を得ることができる。この時、硬化させる方法としては、熱硬化工程または光硬化工程を全て適用することができる。前記熱硬化工程は100℃以上の温度で加熱して硬化させることが好ましく、さらに好ましくは100℃~300℃で加熱して硬化させることができ、より一層好ましくは160℃~250℃で加熱して硬化させることができる。前記光硬化工程は、190nm~450nm、例えば200nm~500nmのUV光線などの化学線を照射する。照射に使用される光源としては低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、金属ハロゲン化物ランプ、アルゴンガスレーザなどを使用することができ、場合によってX線、電子線なども用いることができる。
【0162】
前記硬化膜の製造方法のうちのまた他の一つは、前記硬化性組成物を用いてリソグラフィ法を用いて硬化膜を製造することであって、製造方法は次の通りである。
【0163】
(1)塗布および塗膜形成段階
前記硬化性組成物を所定の前処理を行った基板上にスピンまたはスリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケータ法などの方法を使用して所望の厚さ、例えば2μm~10μmの厚さで塗布した後、70℃~90℃の温度で1分~10分間加熱して溶媒を除去することによって塗膜を形成する。
【0164】
(2)露光段階
前記得られた塗膜に必要なパターン形成のために所定形態のマスクを介した後、190nm~450nm、例えば200nm~500nmのUV光線などの化学線を照射する。照射に使用される光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、金属ハロゲン化物ランプ、アルゴンガスレーザなどを使用することができ、場合によってX線、電子線なども用いることができる。
【0165】
露光量は前記硬化性組成物各成分の種類、配合量および乾燥膜の厚さによって異なるが、例えば、高圧水銀灯を使用する場合、500mJ/cm以下(365nmセンサーによる)である。
【0166】
(3)現像段階
前記露光段階に続き、アルカリ性水溶液を現像液として用いて不必要な部分を溶解、除去することによって露光部分のみを残存させて画像パターンを形成させる。即ち、アルカリ現像液で現像する場合、非露光部は溶解され、イメージカラーフィルタパターンが形成される。
【0167】
(4)後処理段階
前記現像によって得られた画像パターンを耐熱性、耐光性、密着性、耐クラック性、耐化学性、高強度、貯蔵安定性などの面で優れたパターンを得るために、再び加熱するか化学線照射などを行って硬化させることができる。
【0168】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。但し、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0169】
(表面改質された量子ドットの製造)
製造例
3口丸底フラスコにマグネチックバーを入れ、緑色量子ドット分散溶液(InP/ZnSe/ZnS、ハンソルケミカル;量子ドット固形分23重量%)を投入する。ここに下記化学式Qで表される化合物(リガンド)を投入し、80℃窒素雰囲気で攪拌する。反応終了後、常温(23℃)に冷却した後cyclohexaneに量子ドット反応液を入れて沈殿を取る。遠心分離を通じて沈殿物とcyclohexaneを分離し、沈殿物は真空オーブンで一日間十分に乾燥して、表面改質された量子ドットを得る。
【0170】
(*化学式Qで表される化合物合成:PH-4(韓農化成)100gを2口丸底フラスコに入れてTHF 300mLに十分に溶解させる。ここに0℃でNaOH 15.4g、水100mLを投入した後、清い溶液になるまで十分に溶解させる。Para-toluene sulfonic chloride 73gをTHF 100mLに溶かした溶液を0℃で徐々に注入する。注入は1時間行われ、その後、常温で12時間攪拌する。反応終了後、過量のmethylene chlorideを入れて攪拌後、NaHCO飽和溶液を入れて抽出、滴定、水分除去を行う。溶媒を除去した後、dry ovenで24時間乾燥する。得られた乾燥物50gを2口丸底フラスコに入れてエタノール300mLに十分に攪拌する。その後、Thiourea 27gを入れて分散後、80℃で12時間refluxする。その後、NaOH 4.4gを20mLの水に溶かした水溶液を注入して5時間さらに攪拌しながら過量のmethylene chlorideを入れて攪拌後、塩酸水溶液を入れて抽出、滴定、水分除去、溶媒除去を順次に行う。真空オーブンで24時間乾燥して、下記化学式Qで表される化合物を得る。)
【0171】
【化15】
【0172】
(硬化性組成物製造)
下記各構成成分に基づいて、実施例1~実施例15および比較例1~5による硬化性組成物を製造した。
【0173】
(A)量子ドット
前記製造例から製造された表面改質された緑色量子ドット
(B)重合性化合物
(b-1)下記化学式1-1で表される化合物(粘度:8cPs、蒸気圧:3×10-4torr)
【0174】
【化16】
【0175】
(b-2)下記化学式1-2で表される化合物(粘度:12cPs、蒸気圧:7.3×10-4torr)
【0176】
【化17】
【0177】
(b-3)下記化学式1-3で表される化合物(粘度:9.8cPs、蒸気圧:9.1×10-4torr)
【0178】
【化18】
【0179】
(b-4)下記化学式2-1で表される化合物(粘度:3.8cPs、蒸気圧:4.9×10-2torr)
【0180】
【化19】
【0181】
(b-5)下記化学式2-2で表される化合物(粘度:4.4cPs、蒸気圧:1×10-3torr)
【0182】
【化20】
【0183】
(b-6)下記化学式2-3で表される化合物(粘度:5.8cPs、蒸気圧:5×10-3torr)
【0184】
【化21】
【0185】
(b-7)下記化学式2-4で表される化合物(粘度:4.2cPs、蒸気圧:1×10-2torr)
【0186】
【化22】
【0187】
(b-8)下記化学式2-5で表される化合物(粘度:6cPs、蒸気圧:4×10-3torr)
【0188】
【化23】
【0189】
(b-9)前記化学式C-1で表される化合物(粘度:6.2cPs、蒸気圧:1×10-3torr)
【0190】
【化24】
【0191】
(C)光重合開始剤
OXE01(BASF社)
(D)光拡散剤
二酸化チタン分散液(SDT89、イリドス(iridos)社;固形分50%)
(E)重合禁止剤
メチルヒドロキノン(TOKYO CHEMICAL社;5wt% in 前記化学式C-1で表される化合物)
実施例1~実施例15
具体的に、前記製造例から得られた表面改質された量子ドットを第1重合性化合物と同一な重量比で混合、12時間攪拌する。ここに第2重合性化合物および重合禁止剤を入れて5分間攪拌する。次いで、光開始剤(TPO-L、ポリネトロン社)を投入した後、光拡散剤分散液を入れる。
【0192】
(実施例1の場合を例として挙げれば、表面改質された緑色量子ドット40gと第1重合性化合物として前記化学式1-2で表される化合物40gを混合、攪拌して量子ドット分散液を製造した後、ここに第2重合性化合物として前記化学式2-1で表される化合物12.5g、重合禁止剤0.5gを入れて5分間攪拌し、次いで、光開始剤3gと光拡散剤4gを入れ攪拌して、硬化性組成物を製造する。)
具体的な組成は下記表1に示した。
【0193】
【表1】
【0194】
比較例1
表面改質された緑色量子ドット40gと前記化学式C-1で表される重合性化合物40gを混合、攪拌して量子ドット分散液を製造した後、ここに前記化学式C-1で表される重合性化合物12.5g、重合禁止剤0.5gを入れて5分間攪拌し、次いで光開始剤3gと光拡散剤4gを入れ攪拌して、硬化性組成物を製造した。
【0195】
比較例2
前記化学式C-1で表される重合性化合物の代わりに前記化学式2-1で表される重合性化合物を使用したことを除いては比較例1と同一にして、硬化性組成物を製造した。
【0196】
比較例3
前記化学式C-1で表される重合性化合物の代わりに前記化学式1-2で表される重合性化合物を使用したことを除いては比較例1と同一にして、硬化性組成物を製造した。
【0197】
比較例4
第1重合性化合物(前記化学式1-2で表される化合物)の代わりに前記化学式C-1で表される重合性化合物を使用したことを除いては実施例1と同一にして、硬化性組成物を製造した。
【0198】
比較例5
第1重合性化合物(前記化学式1-2で表される化合物)の代わりに前記化学式C-1で表される重合性化合物を使用し、第2重合性化合物(前記化学式2-1で表される化合物)の代わりに前記化学式1-2で表される重合性化合物を使用したことを除いては、実施例1と同一にして、硬化性組成物を製造した。
【0199】
評価1:インク粘度およびジェッティング性評価
実施例1~実施例15および比較例1~比較例5による硬化性組成物それぞれに対して粘度計(Brookfield社 DV-IIRV-2スピンドル、23rpm)を使用して25℃で初期粘度値を測定してその結果を表2に示し、また、15日以後再び粘度値を測定して、15日後の粘度値が初期粘度値より0.5cps未満に上昇するか変化がなければ良好と判定し、15日後の粘度値が初期粘度値より0.5cps超過に上昇すれば不良と判定して、その結果を下記表2に示した。時間経過による粘度値の変化が大きくないほどインクジェッティング性に優れるとみることができるので、下記表2で良好と評価された例は全てインクジェッティング性に優れるとみることができる。
【0200】
【表2】
【0201】
評価2:揮発性評価
実施例1~実施例15および比較例1~比較例5による硬化性組成物それぞれを隔壁を有するピクセル内にインクジェッティングし、1時間経過後単膜の厚さ減少率を3D光学顕微鏡(KEYENCE、VK-9710 color 3D laser micorscope)を用いて測定し、その結果を下記表3および図1図3に示した。
【0202】
【表3】
【0203】
前記表2および表3から、硬化性組成物に使用される互いに異なる重合性化合物間水素結合を用いることによって、前記組成物のインクジェッティング性および揮発性を同時に改善させることができるのを確認することができる。
【0204】
本発明は前記実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態に実施できるのを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
図1
図2
図3
図4