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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】湿式自動磁選機
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/28 20060101AFI20241024BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
B03C1/28
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/28 103
B03C1/00 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021048140
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147046
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】河上 聖介
(72)【発明者】
【氏名】大田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】高津 秀寿
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-514292(JP,A)
【文献】特開平08-117635(JP,A)
【文献】特開平11-158667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/28
B03C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス液が挿通される通液流路が設けられた磁選機ケーシングと該磁選機ケーシングに設けられた除去機構とを備えたプロセス液から磁性体を除去する装置を複数有する自動湿式磁選装置であって、
前記複数の装置は、
前記磁選機ケーシングの通液流路に沿って前記除去機構が複数設けられており、
該複数の除去機構は、
前記磁選機ケーシングの通液流路内に配置され、該通液流路内と分離されかつ挿入口によって該磁選機ケーシング外と連通される挿入空間を有する保護管と、
該保護管内に第一端部から挿入抜去される永久磁石と、
該永久磁石を前記保護管の挿入空間に挿入抜去する磁石移動機構と、を有しており、
該磁石移動機構が、
前記永久磁石の第二端部が連結された移動プレートと、
該移動プレートを移動する移動部と、
前記移動プレートの位置決めと移動の案内を行う案内機構とを有しており、
該自動湿式磁選装置は、
該自動湿式磁選装置にプロセス液を供給するプロセス液供給流路と、
該自動湿式磁選装置からプロセス液を排出するプロセス液排出流路と、
該自動湿式磁選装置に洗浄液を供給する洗浄液供給流路と、
該自動湿式磁選装置から洗浄液を排出する洗浄液排出流路と、
該プロセス液供給流路から分岐され、各装置の前記磁選機ケーシングの通液流路に連通された分岐流路と、
該プロセス液排出流路から分岐され、各装置の前記磁選機ケーシングの通液流路に連通された分岐流路と、
該洗浄液供給流路から分岐され、各装置の前記磁選機ケーシングの通液流路に連通された分岐流路と、
該洗浄液排出流路から分岐され、各装置の前記磁選機ケーシングの通液流路に連通された分岐流路と、を有しており、
各分岐流路には各分岐流路を開閉するバルブがそれぞれ設けられており、
該自動湿式磁選装置は、
前記複数の装置における前記複数の除去機構の磁石移動機構の移動部の作動、および、各分岐流路に設けられた前記バルブの作動を制御する制御部を備えており、
該制御部は、
前記複数の装置に設けられている前記除去機構の前記磁石移動機構の移動部によって前記永久磁石が移動されている間は全てのバルブが閉塞され、
前記複数の装置のうち前記複数の除去機構において前記永久磁石が前記保護管の挿入空間に挿入されている装置に連通されている前記洗浄液供給流路の分岐流路および前記洗浄液排出流路の分岐流路に設けられているバルブは閉塞され、
前記複数の装置のうち前記複数の除去機構において前記永久磁石が前記保護管の挿入空間から抜去されている装置に連通されている前記プロセス液供給流路の分岐流路および前記プロセス液排出流路の分岐流路に設けられているバルブが閉塞された状態になるように、各バルブの作動を制御する
ことを特徴とする自動湿式磁選装置。
【請求項2】
前記永久磁石が軸状の磁石であり、
前記保護管が、
前記永久磁石よりも軸径が大きい筒状の部材であって、その軸方向が前記磁選機ケーシングの通液流路においてプロセス液が流れる方向と交差するように配設されており、
前記磁石移動機構の移動部が、
前記保護管の軸方向と平行に伸縮するシリンダであり、
前記磁石移動機構の案内機構が、
前記移動プレートが移動可能に連結された、前記保護管の軸方向と平行に設けられた案内軸と、
該案内軸を所定の位置に固定する固定部材と、を有している
ことを特徴とする請求項1記載の自動湿式磁選装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式自動磁選機に関する。具体的には、非磁性粉体を製造するプラント等のプロセス液に含まれる鉄等の不純物磁性体を除去する湿式自動磁選機に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルを主体とする非磁性粉体を製造するプラント等の設備では、粉体生成等の工程(前工程)で生成(使用)された粉体を含むプロセス液に鉄等の不純物磁性体の異物(以下単に異物という)が含まれている可能性がある。異物を含んだプロセス液をそのまま固液分離等の工程(次工程)に供給した場合、次工程における反応や製造される製品に異物が悪影響を与える可能性がある。そこで、前工程で生成(使用)されたプロセス液を次工程に供給する前に、プロセス液を磁選機に通して異物を除去することが必要になる。
【0003】
液体中に含まれる異物を除去する方法として、永久磁石を使用する方法がある(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、流体を横切るように配置できる少なくとも一本の中空の棒と、各棒の中に挿入される磁石体とを備えた磁選機が開示されている。この磁選機を液体の流路に配置しておけば、磁石体を棒内に挿入しておけば流体中の異物を棒の表面に吸着できる。また、磁選機を洗浄する際には、棒から磁石体を抜き取れば異物に磁力が作用しなくなるので、棒の表面から異物を容易に取り除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2009-269006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1の技術では、棒に磁石体を挿入したり抜き取ったりする作業は作業者が実施するが、磁石体はある程度の重量を有するので作業者の負担が大きい。しかも、磁選機を洗浄する際には、磁選機を流路から取り外さなければならないので、洗浄の作業工数も多くなり、作業者の負担は更に大きくなる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、液体中の異物を効果的に回収することができ、作業者の負担も軽減できる湿式自動磁選機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の湿式自動磁選機は、プロセス液が挿通される通液流路が設けられた磁選機ケーシングと該磁選機ケーシングに設けられた除去機構とを備えたプロセス液から磁性体を除去する装置を複数有する自動湿式磁選装置であって、前記複数の装置は、前記磁選機ケーシングの通液流路に沿って前記除去機構が複数設けられており、該複数の除去機構は、前記磁選機ケーシングの通液流路内に配置され、該通液流路内と分離されかつ挿入口によって該磁選機ケーシング外と連通される挿入空間を有する保護管と、該保護管内に第一端部から挿入抜去される永久磁石と、該永久磁石を前記保護管の挿入空間に挿入抜去する磁石移動機構と、を有しており、該磁石移動機構が、前記永久磁石の第二端部が連結された移動プレートと、該移動プレートを移動する移動部と、前記移動プレートの位置決めと移動の案内を行う案内機構とを有しており、該自動湿式磁選装置は、該自動湿式磁選装置にプロセス液を供給するプロセス液供給流路と、該自動湿式磁選装置からプロセス液を排出するプロセス液排出流路と、該自動湿式磁選装置に洗浄液を供給する洗浄液供給流路と、該自動湿式磁選装置から洗浄液を排出する洗浄液排出流路と、前記プロセス液供給流路から分岐され、各装置の前記磁選機ケーシングの通液流路に連通された分岐流路と、該プロセス液排出流路から分岐され、各装置の前記磁選機ケーシングの通液流路に連通された分岐流路と、該洗浄液供給流路から分岐され、各装置の前記磁選機ケーシングの通液流路に連通された分岐流路と、該洗浄液排出流路から分岐され、各装置の前記磁選機ケーシングの通液流路に連通された分岐流路と、を有しており、各分岐流路には各流路を開閉するバルブがそれぞれ設けられており、該自動湿式磁選装置は、前記複数の装置における前記複数の除去機構の磁石移動機構の移動部の作動、および、各分岐流路に設けられた前記バルブの作動を制御する制御部を備えており、該制御部は、前記複数の装置に設けられている前記除去機構の前記磁石移動機構の移動部によって前記永久磁石が移動されている間は全てのバルブが閉塞され、前記複数の装置のうち前記複数の除去機構において前記永久磁石が前記保護管の挿入空間に挿入されている装置に連通されている前記洗浄液供給流路の分岐流路および前記洗浄液排出流路の分岐流路に設けられているバルブは閉塞され、前記複数の装置のうち前記複数の除去機構において前記永久磁石が前記保護管の挿入空間から抜去されている装置に連通されている前記プロセス液供給流路の分岐流路および前記プロセス液排出流路の分岐流路に設けられているバルブが閉塞された状態になるように、各バルブの作動を制御することを特徴とする。
第2発明の湿式自動磁選機は、第1発明において、前記永久磁石が軸状の磁石であり、前記保護管が、前記永久磁石よりも軸径が大きい筒状の部材であって、その軸方向が前記磁選機ケーシングの通液流路においてプロセス液が流れる方向と交差するように配設されており、前記磁石移動機構の移動部が、前記保護管の軸方向と平行に伸縮するシリンダであり、前記磁石移動機構の前記案内機構が、前記移動プレートが移動可能に連結された、前記保護管の軸方向と平行に設けられた案内軸と、該案内軸を所定の位置に固定する固定部材と、を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、磁石移動機構によって永久磁石を自動的に保護管に挿入したり保護管から抜き取ったりできるので、作業者の負担を軽減できる。また、複数の除去機構によってプロセス液から磁性体を除去するので、磁性体をより効果的に除去できる。さらに、磁選機ケーシングに供給する液体をプロセス液と洗浄液とで切り替えれば、保護管に吸着した磁性体を容易に回収することができる。そして、一の装置がプロセス液から磁性体の除去をしている間に、他の装置で保護管に吸着した磁性体の回収を実施できるので、プロセス液からの磁性体の除去と回収を効率よく実施できる。
第2発明によれば、永久磁石を自動的に精度よく移動させることができるので、永久磁石を保護管に挿入したり抜き取ったりする際に、永久磁石や保護管が損傷することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の湿式自動磁選機1の概略説明図であり、(A)は側面図であり、(B)は正面図である。
図2】(A)は図1のII-II線断面であって永久磁石13が抜去された状態の概略説明図であり、(B)は図1のII-II線断面であって永久磁石13が挿入された状態の概略説明図である。
図3】本実施形態の湿式自動磁選機1に配管P3~P6が接続されている状態の概略説明図である。
図4】第一湿式自動磁選機1Aと第二湿式自動磁選機1Bを設けた場合の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の湿式自動磁選機は、プロセス液に含まれる磁性体を除去するものであり、磁性体を回収する作業を容易に行えるようにしたことに特徴を有している。
【0011】
本実施形態の湿式自動磁選機を採用する設備はとくに限定されない。例えば、非磁性粉体製造プラント等の設備において、粉体の生成、水洗浄、溶解等の工程(前工程)から固液分離、乾燥、水分除去等の工程(次工程)に供給されるプロセス液に含まれる磁性体を除去するために使用することができる。
また、磁性体を除去するプロセス液や除去する磁性体もとくに限定されない。例えば、貴金属回収や汚染土壌浄化等を実施する設備であれば、プロセス液として貴金属浸出液や汚染土壌スラリー等を挙げることができ、また、除去する磁性体として鉄やニッケル、コバルト等を挙げることができる。
【0012】
<湿式自動磁選機1>
図1に示すように、本実施形態の湿式自動磁選機1は、前工程から次工程にプロセス液を流す配管P1と配管P2との間に設けられている。具体的には、配管P1の下流側の端部が湿式自動磁選機1の磁選機ケーシング2の上端に連結されており、配管P2の上流側の端部が湿式自動磁選機1の磁選機ケーシング2の下端に連結されている。
【0013】
<磁選機ケーシング2>
磁選機ケーシング2は、上端と下端との間を連通する通液流路2hを有する中空な管状の構造体である。この磁選機ケーシング2の側面には、通液流路2h内をプロセス液が流れる方向に沿って、通液流路2hと外部との間を連通する開口2aが複数設けられている(図2参照)。この複数の開口2aには、それぞれ除去機構10が設けられている。
【0014】
なお、磁選機ケーシング2に設ける開口2aの数、つまり、除去機構10の数はとくに限定されない。図1では、開口2aが6個所(つまり、除去機構10が6個所)設けられている例を示しているが、開口2aは5個所以下でもよいし、7個所以上設けてもよい。複数の開口2aを設けて複数の除去機構10を設ければ、プロセス液から磁性体を除去する効果を高めることができる。また、開口2aを一箇所だけ設けて、除去機構10を一個所だけ設けるようにしてもよい。
【0015】
<除去機構10>
上述したように、磁選機ケーシング2の各開口2aには、除去機構10がそれぞれ設けられている。除去機構10は、磁選機ケーシング2に取り付けられるベース部11を備えている。このベース部11は、磁選機ケーシング2の開口2aを塞ぐように取り付けられるベースプレート11aを備えている。このベースプレート11aには、磁選機ケーシング2の開口2aを塞ぐように取り付けた際に磁選機ケーシング2の通液流路2h側の面(以下ベースプレート11aの内面という)と他方の面(以下ベースプレート11aの外面という)との間を連通する貫通孔11hが複数設けられている。また、ベース部11は、ベースプレート11aに連結された一対のフレーム11b,11bを有している。一対のフレーム11b,11bは、磁選機ケーシング2を挟むように配置されており、その両端部がそれぞれ連結フレーム11cによって連結されている。
【0016】
<保護管12>
図2に示すように、ベース部11のベースプレート11aの内面には複数の保護管12が設けられている。具体的には、この複数の保護管12は、その軸方向が磁選機ケーシング2の通液流路2hにおいてプロセス液が流れる方向と交差するように、ベースプレート11aの内面に設けられている。この複数の保護管12は、一端が閉塞し他端が開口した挿入空間12hを内部に有する管状部材であり、ベースプレート11aの貫通孔11hと同じ数だけ設けられている。具体的には、各保護管12は、その他端によってベースプレート11aの貫通孔11hを塞ぐように、ベースプレート11aの内面に連結されている。つまり、複数の保護管12の内部の挿入空間12hは、ベースプレート11aの貫通孔11hを通して外部と連通された状態になる。しかも、複数の保護管12によって貫通孔11hが塞がれているので、ベースプレート11aを磁選機ケーシング2の開口2aを塞ぐように取り付ければ、磁選機ケーシング2の通液流路2hと外部との間や、磁選機ケーシング2の通液流路2hと挿入空間12hとの間を液密に遮断できる。なお、ベースプレート11aの貫通孔11hと保護管12の他端の開口が、特許請求の範囲にいう挿入口に相当する。
【0017】
<永久磁石13>
図2に示すように、複数の保護管12の挿入空間12hには、それぞれ永久磁石13が挿入抜去可能に配置されている。各永久磁石13は、いずれもその第一端部(先端)から保護管12の挿入空間12hに挿入されており、保護管12の挿入空間12h内の軸方向に沿って移動可能に設けられている。
【0018】
<磁石移動機構15>
図2に示すように、磁石移動機構15は、ベースプレート11aと連結フレーム11cとの間に設けられた案内軸17を有している。案内軸17は、その軸方向が保護管12の軸方向と平行に設けられている。この案内軸17には、案内軸17の軸方向に沿って移動可能に移動プレート16が連結されている。この移動プレート16には、複数の永久磁石13の第二端部(基端)が連結されている。なお、ベースプレート11aと連結フレーム11cが、特許請求の範囲に言う固定部材に相当し、案内軸17とベースプレート11aと連結フレーム11cとが特許請求の範囲に言う案内機構に相当する。
【0019】
また、磁石移動機構15は、案内軸17の軸方向と平行に、言い換えれば、保護管12の軸方向と平行に伸縮する一対のエアシリンダ18,18を備えている。一対のエアシリンダ18,18は、そのシリンダボディがベース部11の一対のフレーム11b,11bにそれぞれ連結されており、そのシリンダロッドが移動プレート16に連結されている。この一対のエアシリンダ18,18が、特許請求の範囲にいう移動部に相当する。
【0020】
したがって、一対のエアシリンダ18,18を伸縮させれば移動プレート16を案内軸17に沿って移動させることができるので、移動プレート16とともに複数の永久磁石13を保護管12の軸方向に沿って移動させることができる。具体的には、一対のエアシリンダ18,18を伸長させれば、複数の保護管12内から複数の永久磁石13を同時に抜去することができ(図2(A)参照)、一対のエアシリンダ18,18を収縮させれば、複数の保護管12内に複数の永久磁石13を同時に挿入することができる(図2(B)参照)。
【0021】
なお、一対のエアシリンダ18,18の伸縮量はとくに限定されない。複数の永久磁石13を、複数の保護管12内に複数の永久磁石13が挿入された状態(図2(B)ではベースプレート11aと移動プレート16が接触した状態)と、複数の保護管12内から複数の永久磁石13が抜去された状態(図2(A)では、移動プレート16がベースプレート11aから離れ、連結フレーム11cに近づいた状態)との間で移動できるようになっていればよい。
【0022】
<本実施形態の湿式自動磁選機1による磁性体の回収作業>
本実施形態の湿式自動磁選機1が以上のような構造を有するので、以下のようにすれば、プロセス液中の磁性体を回収することができる。
【0023】
まず、磁石移動機構15の一対のエアシリンダ18,18を収縮させて複数の保護管12内に複数の永久磁石13が挿入された状態とする。この状態で、磁選機ケーシング2の通液流路2hにプロセス液を通液すれば、永久磁石13の磁力によってプロセス液中の磁性体を複数本の保護管12の表面に吸着することができる。したがって、プロセス液の通液を継続すれば、複数の保護管12の表面に磁性体を蓄積することができる。つまり、プロセス液から磁性体を除去することができる。
【0024】
そして、プロセス液の通液を停止し、プロセス液に代えて、磁選機ケーシング2の通液流路2hに洗浄水を通水する。その状態で、一対のエアシリンダ18,18を伸長させて複数の保護管12から複数の永久磁石13を抜去する。すると、複数の永久磁石13からの磁力が磁性体に働かなくなるので、複数の保護管12の表面に蓄積した磁性体を洗浄水によって簡単に洗い流すことができる。したがって、複数の保護管12の表面に蓄積した磁性体を洗浄水とともに回収することができる。
【0025】
以上のように、本実施形態の湿式自動磁選機1であれば、磁石移動機構15の一対のエアシリンダ18,18を伸縮させるだけで複数の保護管12に対して複数の永久磁石13を挿入したり抜去したりできる。すると、作業者は一対のエアシリンダ18,18の作動を操作するだけ(例えばボタンを押すだけ)で、自動的に複数の永久磁石13を挿入抜去する作業を実施できるので、作業者の負担を軽減できる。
とくに、湿式自動磁選機1が複数の除去機構10を有している場合には、一回の操作で、全ての除去機構10における永久磁石13を自動的に挿入抜去できるので、作業者の負担を大幅に軽減できる。
【0026】
<制御部20>
本実施形態の湿式自動磁選機1では、磁石移動機構15の一対のエアシリンダ18,18の作動を作業者が操作してもよい。一方、制御部20を設けて、本実施形態の湿式自動磁選機1が採用された設備の操業状況に応じて、制御部20が磁石移動機構15の一対のエアシリンダ18,18の作動を制御するようにしてもよい。
【0027】
<制御部20による制御>
制御部20は、磁石移動機構15の作動だけでなく、湿式自動磁選機1に供給する液体の制御を行ってもよい。具体的には、どのタイミングでどの液体(プロセス液、洗浄液)を湿式自動磁選機1に供給するかを制御部20が制御するようにしてもよい。
【0028】
例えば、図3に示すように、本実施形態の湿式自動磁選機1に接続された配管P3~P6に、電磁バルブなどの遠隔操作可能なバルブV3~V6を設けておく。なお、配管P3、P4は、プロセス液が流れる配管(プロセス液供給流路およびプロセス液排出流路)であり、配管P5、P6は、洗浄液が流れる配管(洗浄液供給流路および洗浄液排出流路)である。
【0029】
この場合、複数の保護管12内に複数の永久磁石13を挿入した状態としたのち、バルブV3とバルブV4とを開きバルブV5とバルブV6とを閉じるように、制御部20が磁石移動機構15やバルブV3~V6の作動を制御する。すると、磁選機ケーシング2の通液流路2hにプロセス液が通液されるので、プロセス液中の磁性体を保護管12表面に蓄積させることができる。
【0030】
そして、プロセス液を一定時間通液した後、バルブV3~V6の全てを閉じたのち、複数の保護管12内から複数の永久磁石13が抜去されるように、制御部20が磁石移動機構15やバルブV3~V6の作動を制御する。その後、バルブV3とバルブV4とを閉じバルブV5とバルブV6とを開くように、制御部20が磁石移動機構15やバルブV3~V6の作動を制御する。すると、磁選機ケーシング2の通液流路2hに洗浄液が通液されれるので、複数の保護管12の表面に蓄積した磁性体を洗浄水とともに回収することができる。
【0031】
その後、一定時間の洗浄水を通液した後、バルブV3~V6の全てを閉じたのち、複数の保護管12内に複数の永久磁石13を挿入するように、制御部20が磁石移動機構15やバルブV3~V6の作動を制御する。その後、バルブV3とバルブV4とを開きバルブV5とバルブV6とを閉じるように、制御部20が磁石移動機構15やバルブV3~V6の作動を制御する。すると、再び、磁選機ケーシング2の通液流路2hにプロセス液が通液されるので、プロセス液中の磁性体を保護管12表面に蓄積させることができる。
【0032】
上述したように、制御部20が、バルブV3~V6や複数の磁石移動機構15の作動を制御するようにすれば、本実施形態の湿式自動磁選機1によるプロセス液からの磁性体の除去と、洗浄液による磁性体の回収を自動で切り替えることができる。すると、永久磁石13の挿入抜去や磁選機ケーシング2の通液流路2hに流す液体を切り替える作業を作業者が実施する必要が無いので、作業者の負担をより軽減できる。
【0033】
<本実施形態の湿式自動磁選機1を複数台設置した場合>
また、図4に示すように、本実施形態の湿式自動磁選機1を2台併設し、制御部20(図示せず)によって各湿式自動磁選機1に供給する液体を制御すれば、プロセス液の流れを止める時間を短くすることができるので、プロセス液からの磁性体の除去と回収を効率よく実施することができる。
【0034】
例えば、図4に示すように、第一湿式自動磁選機1Aに、配管P3から分岐した配管P3a、配管P4から分岐した配管P4a、配管P5から分岐した配管P5a、配管P6から分岐した配管P6a、をそれぞれ連通する。また、第二湿式自動磁選機1Bに、配管P3から分岐した配管P3b、配管P4から分岐した配管P4b、配管P5から分岐した配管P5b、配管P6から分岐した配管P6b、をそれぞれ連通する。そして、配管P3a~P6aおよび配管P3b~P6bに、それぞれバルブV3a~V6a、バルブV3b~V6bを設ける。
【0035】
上記構成とすれば、第一湿式自動磁選機1Aの複数の保護管12内に複数の永久磁石13を挿入し、バルブV3aとバルブV4aとが開かれバルブV5aとバルブV6aとが閉じられた状態とすれば、第一湿式自動磁選機1Aによってプロセス液中の磁性体の除去作業を実施することができる。一方、第二湿式自動磁選機1Bの複数の保護管12内から複数の永久磁石13を抜去した状態とし、バルブV3bとバルブV4bとが閉じられバルブV5bとバルブV6bとを開かれた状態とすれば、第二湿式自動磁選機1Bによって洗浄液による磁性体の回収作業が実施することができる。つまり、第二湿式自動磁選機1Bにおいて洗浄液による磁性体の回収作業を実施している間も、第一湿式自動磁選機1Aにおいてプロセス液からの磁性体の除去作業を実施することができる。
【0036】
第一湿式自動磁選機1Aと第二湿式自動磁選機1Bの作業を切り替える場合には、制御部20からの指令によって、一旦、バルブV3a~V6aおよびバルブV3b~V6bの全てが閉じられる。その後、制御部20からの指令によって、第一湿式自動磁選機1Aでは複数の保護管12内から複数の永久磁石13が抜去され、第二湿式自動磁選機1Bでは複数の保護管12内に複数の永久磁石13が挿入される。その後、制御部20からの指令によって、バルブV3aとバルブV4aとが閉じた状態に維持されバルブV5aとバルブV6aとが開かれた状態とすれば、第一湿式自動磁選機1Aにおいて洗浄液による磁性体の回収作業が実施される。同時に、制御部20からの指令によって、バルブV3bとバルブV4bとが開かれバルブV5bとバルブV6bとが閉じた状態に維持されれば、第二湿式自動磁選機1Bにおいてプロセス液中の磁性体の除去作業を実施することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態の湿式自動磁選機1を複数台設置して、バルブや除去機構10の磁石移動機構15の作動を制御部20が制御すれば、各湿式自動磁選機1において作業を切り替えている間だけ、プロセス液中の磁性体の除去作業や磁性体の回収作業を停止させればよくなる。したがって、プロセス液からの磁性体の除去と回収を効率よく実施することができる。
【0038】
<保護管12について>
保護管12の長さや幅等はとくに限定されない。保護管12の長さは、磁選機ケーシング2の通液流路2の奥行きの長さ(図2では左右方向の長さ)と同等程度とすれば、プロセス液から磁性体を除去する効果を高めやすくなる。また、保護管12の長さは、全て同じ長さでもよいし、位置によって異なる長さにしてもよい。磁選機ケーシング2の通液流路2の形状に合わせて適切な長さにすればよい。
【0039】
また、保護管12を設ける数はとくに限定されない。保護管12を多く設置すれば、保護管12に挿入できる永久磁石13の本数を多くできるので、プロセス液から磁性体を除去する効果を高めることができる。一方、保護管12を多く設置すれば、磁選機ケーシング2の通液流路2hを流れるプロセス液の流動抵抗が大きくなる。したがって、保護管12は、プロセス液の流れを阻害しない範囲である程度多く設ける方がよい。
【0040】
保護管12の配置もとくに限定されない。図2に示すように、磁選機ケーシング2の通液流路2hの軸方向(つまりプロセス液が流れる方向)から見たときに、通液流路2hにおいて保護管12が存在しない部分が少なくなるように配置されていることが望ましい。例えば、通液流路2hの幅方向(図2では上下方向)の位置がズレた状態となるように、複数の保護管12は設置することが望ましい。
【0041】
<磁石移動機構15について>
移動部は、移動プレート16を保護管12の軸方向と平行に移動させることができる機構であればよく、上述したエアシリンダにかぎられない。例えば、油圧シリンダや機械式シリンダ等を備えたシリンダ機構でもよいし、サーボモータや自走式機構等を採用してもよい。
【0042】
案内機構は、移動プレート16の位置決めと移動の案内を行うことができればよく、上述したような案内軸を有する構造に限定されない。例えば、案内機構として、保護管12の軸方向と平行にレールを設けて、そのレールに沿って移動プレート16が移動するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の湿式自動磁選機は、非磁性粉体製造プラント等のプロセス液に含まれる鉄等の不純物磁性体を除去する装置として適している。
【符号の説明】
【0044】
1 湿式自動磁選機
2 磁選機ケーシング
2h 通液流路
10 除去機構
12 保護管
12h 挿入空間
13 永久磁石
15 磁石移動機構
16 移動プレート
17 案内軸
18 エアシリンダ
20 制御部
V バルブ
P 配管

図1
図2
図3
図4