(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20241024BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241024BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241024BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20241024BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20241024BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
H01L29/78 301F
H01L29/78 652T
H01L29/78 652K
H01L29/78 658F
H01L29/78 652E
H01L29/78 301B
H01L21/316 S
H01L21/318 A
H01L21/318 M
H01L29/78 655A
(21)【出願番号】P 2021083216
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】渡部 平司
(72)【発明者】
【氏名】細井 卓治
(72)【発明者】
【氏名】志村 考功
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 豊
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-048198(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111627(WO,A1)
【文献】特開2020-061475(JP,A)
【文献】特開2006-156478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/318
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化シリコンからなるチャネル形成領域の上面にシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、
窒素原子を含むガスで前記ゲート絶縁膜を熱処理することで、前記ゲート絶縁膜と炭化シリコンとの界面を窒化処理して、前記チャネル形成領域と前記ゲート絶縁膜との界面に中間窒化層を形成する工程と、
二酸化炭素を含むガスで前記ゲート絶縁膜を熱処理することで、前記ゲート絶縁膜中の窒素原子の一部を除去し、前記界面に窒化終端層を形成する工程と、
前記窒化終端層を形成後に、不活性ガスで前記ゲート絶縁膜を熱処理する工程と、
前記ゲート絶縁膜の上に、前記チャネル形成領域の表面ポテンシャルを制御するゲート電極を形成する工程と
を含むことを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記チャネル形成領域及び前記ゲート電極間の通電によって前記ゲート絶縁膜に5×10
15cm
-2以上、1×10
16cm
-2以下の注入電荷量で電子を注入したとき、前記ゲート絶縁膜に捕獲される前記電子の平均密度が2×10
17cm
-3以下であることを特徴とする請求項1に記載の絶縁ゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記窒化終端層を形成後の前記熱処理は、前記不活性ガス中で、900℃以上、1200℃以下の範囲の温度で、30分以上、60分以下の時間で実施されることを特徴とする請求項1又は2に記載の絶縁ゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記窒化終端層は、前記二酸化炭素を含むガス中で、900℃以上、1400℃以下の範囲の熱処理温度で、30分以上、120分以下の時間で形成されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の絶縁ゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記チャネル形成領域の前記上面の面方位が(0001)面であり、前記窒化終端層が1100℃以上、1300℃以下の熱処理温度で形成されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の絶縁ゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記チャネル形成領域の前記上面の面方位が(000-1)面、(11-20)面、及び(1-100)面のいずれかであり、前記窒化終端層が1000℃以上、1200℃以下の熱処理温度で形成されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の絶縁ゲート型半導体装置の製造方法。
【請求項7】
炭化シリコンからなるチャネル形成領域の上面に設けられたシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜と、
前記チャネル形成領域と前記ゲート絶縁膜との界面に設けられた窒化シリコンからなる窒化終端層と、
前記ゲート絶縁膜の上に設けられ、前記チャネル形成領域の表面ポテンシャルを制御するゲート電極と、
を備え、
前記チャネル形成領域及び前記ゲート電極間の通電によって前記ゲート絶縁膜に5×10
15cm
-2以上、1×10
16cm
-2以下の注入電荷量で電子を注入したとき、前記ゲート絶縁膜に捕獲される前記電子の平均密度が2×10
17cm
-3以下であることを特徴とする絶縁ゲート型半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法に係り、特に炭化シリコン(SiC)を用いた絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SiCを用いたMOS電界効果トランジスタ(FET)では、半導体層上にゲート絶縁膜を形成する際に、高密度の界面準位ができる。そのため、チャネルの移動度が低くなり、MOSFETのオン抵抗等の電気的特性が劣化するという課題がある。ゲート絶縁膜形成後に窒素(N)を含有するガス中で加熱処理し、シリコン酸化(SiO2)膜とSiC界面に高濃度窒化領域を形成することで、ゲート絶縁膜界面の界面準位密度(Dit)を低減し、高移動度化することが提案されている。しかし、負バイアス印加ストレスに対して、デバイスのオン-オフ電圧であるゲート閾値電圧の変動が生じる負バイアス温度不安定性(NBTI)によって、駆動条件によっては半導体装置の動作信頼性が確保できないという問題がある。非特許文献1では、NBTIの問題の原因として、窒化領域形成プロセスにより、ゲート絶縁膜であるSiO2膜中に入った窒素原子による正孔トラップ生成の可能性が指摘されている。非特許文献2には、SiC/SiO2界面の電気的特性に与えるCO2を含む各種ガスによる熱処理の効果が報告されている。
【0003】
特許文献1では、NBTIを改善するために、SiO2膜とSiC界面近傍のN濃度を規定する技術を開示している。具体的には、酸素(O)濃度がSiO2膜中のO濃度の90%となる位置を界面と定義し、界面から±5nmの領域に含まれるN濃度を5×1013cm-2より高く、1.6×1014cm-2未満と規定している。しかし、特許文献1の技術では、界面のパッシベーションに寄与するN原子の量が減少するため、窒化効果が十分ではなく、チャネル移動度が低下する。また、正バイアス温度不安定性(PBTI)によるゲート閾値電圧の変動が問題となる。
【0004】
SiC‐MOSFETは、インバータなどの電力用半導体素子として実用化されている。インバータでは、スイッチング素子としてMOSFETが、交互にオン/オフを繰り返して駆動される。例えば、n型MOSFETのゲート電極に正及び負のゲート電圧が繰り返し印加されると、ゲート酸化膜中にトラップされる電子密度の増大によりゲート閾値電圧が変動して信頼性の劣化をもたらすという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J. ローゼン(Rozen)他、「SiO2/SiC界面での窒素取り込みに関連した酸化物ホールトラップ密度の増加(Increase in oxide hole trap density associated with nitrogen incorporation at the SiO2/SiC interface)」、ジャーナルオブアプライドフィジックス(J. Appl. Phys.)、第103巻、2008年、p.124513
【文献】W.ワン(Wang)他、「O2、N2O、NO及びCO2でアニールしたMOSキャパシタ及びFETの4H-SiC/SiO2の界面特性(Interface Properties of 4H-SiC/SiO2 with MOS Capacitors and FETs annealed in O2, N2O, NO and CO2)」、マテリアルサイエンスフォーラム、第457-460巻、2004年、pp.1309-1312
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点を鑑み、ゲート閾値電圧の変動を低減でき、半導体装置の信頼性の劣化を抑制することが可能な絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、(a)炭化シリコンからなるチャネル形成領域の上面にシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜を形成する工程と、(b)窒素原子を含むガスでゲート絶縁膜を熱処理することで、ゲート絶縁膜と炭化シリコンとの界面を窒化処理して、チャネル形成領域とゲート絶縁膜との界面に中間窒化層を形成する工程と、(c)二酸化炭素を含むガスでゲート絶縁膜を熱処理することで、ゲート絶縁膜中の窒素原子の一部を除去し、界面に窒化終端層を形成する工程と、(d)窒化終端層を形成後に、不活性ガスでゲート絶縁膜を熱処理する工程と、(e)ゲート絶縁膜の上に、チャネル形成領域の表面ポテンシャルを制御するゲート電極を形成する工程とを含む絶縁ゲート型半導体装置の製造方法であることを要旨とする。
【0009】
本発明の他の態様は、(a)炭化シリコンからなるチャネル形成領域の上面に設けられたシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜と、(b)チャネル形成領域とゲート絶縁膜との界面に設けられた窒化シリコンからなる窒化終端層と、(c)ゲート絶縁膜の上に設けられ、チャネル形成領域の表面ポテンシャルを制御するゲート電極と、を備え、チャネル形成領域及びゲート絶縁膜の通電によってゲート絶縁膜に注入された注入電荷量が5×1015cm-2以上、1×1016cm-2以下の注入電荷量で電子を注入したとき、ゲート絶縁膜に捕獲される電子の平均密度が2×1017cm-3以下である絶縁ゲート型半導体装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ゲート閾値電圧の変動を低減でき、半導体装置の信頼性の劣化を抑制することが可能な絶縁ゲート型半導体装置及び絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の一例を示す断面概略図である。
【
図2】実施形態に係る絶縁ゲート構造の評価に用いるMOSキャパシタの製造方法の工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図3】実施形態に係る絶縁ゲート構造の評価に用いるMOSキャパシタの製造方法の
図2に引き続く工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図4】実施形態に係る絶縁ゲート構造の評価に用いるMOSキャパシタの製造方法の
図3に引き続く工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図5】実施形態に係る絶縁ゲート構造の評価に用いるMOSキャパシタの製造方法の
図4に引き続く工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図6】比較例1又は2のMOSキャパシタの一例を示す断面概略図である。
【
図7】MOSキャパシタのゲート絶縁膜の通電試験の概要を説明するバンド図である。
【
図8】MOSキャパシタのゲート絶縁膜の通電試験による評価方法を説明する図である。
【
図9】実施形態に係るゲート絶縁膜の通電試験で得られた注入電子量に対するトラップ電子密度の関係の一例を示す図である。
【
図10】実施形態に係るゲート絶縁膜の通電試験による評価結果の一例を示す表である。
【
図11】実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図12】実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の
図11に引き続く工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図13】実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の
図12に引き続く工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図14】実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の
図13に引き続く工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図15】実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の
図14に引き続く工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図16】実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法の
図15に引き続く工程の一例を説明するための断面概略図である。
【
図17】比較例3又は4の絶縁ゲート型半導体装置の一例を示す断面概略図である。
【
図18】実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置のゲート閾値電圧のシフト量とゲート電圧印加時間との関係の一例を示す図である。
【
図19】実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置のゲート閾値電圧のシフト量評価の結果の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付し、重複する説明を省略する。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は実際のものとは異なる場合がある。また、図面相互間においても寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。
【0013】
本明細書においてMOSトランジスタのソース領域は絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)のエミッタ領域として選択可能な「一方の主領域(第1主領域)」である。又、MOS制御静電誘導サイリスタ(SIサイリスタ)等のサイリスタにおいては、一方の主領域はカソード領域として選択可能である。MOSトランジスタのドレイン領域は、IGBTにおいてはコレクタ領域を、サイリスタにおいてはアノード領域として選択可能な半導体装置の「他方の主領域(第2主領域)」である。本明細書において単に「主領域」と言うときは、当業者の技術常識から妥当な第1主領域又は第2主領域のいずれかを意味する。
【0014】
また、以下の説明における上下等の方向の定義は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、対象を90°回転して観察すれば上下は左右に変換して読まれ、180°回転して観察すれば上下は反転して読まれることは勿論である。また以下の説明では、第1導電型がp型、これと反対となる第2導電型がn型の場合について例示的に説明する。しかし、導電型を逆の関係に選択して、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても構わない。またnやpに付す+や-は、+及び-が付記されていない半導体領域に比して、それぞれ相対的に不純物密度が高い又は低い半導体領域であることを意味する。ただし同じnとnとが付された半導体領域であっても、それぞれの半導体領域の不純物密度が厳密に同じであることを意味するものではない。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。
【0015】
本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置は、ゲート絶縁膜にシリコン酸化膜(SiO
2)膜を用いた横型MOSFETである。
図1に示すように第1導電型(p型)のチャネル形成領域(ベース領域)3を備え、チャネル形成領域3の表面に反転チャネルを形成する。チャネル形成領域3の上部には、高不純物密度の第2導電型(n
+型)の主領域、例えばソース領域(第1主領域)4a及びドレイン領域(第2主領域)4bが選択的に設けられる。ソース領域4a及びドレイン領域4bを跨いでチャネル形成領域3の上面に、窒素(N)で終端された窒化終端層6を介して絶縁ゲート型電極構造(5,7)が設けられる。絶縁ゲート型電極構造(5,7)は、SiO
2膜からなるゲート絶縁膜5及びゲート絶縁膜5上のゲート電極(制御電極)7で構成される。ゲート電極7は、チャネル形成領域3の表面ポテンシャルを、ゲート絶縁膜5を介して静電的に制御して、チャネル形成領域3の表面に反転チャネルを形成する。
【0016】
窒化終端層6は、ゲート絶縁膜5及びチャネル形成領域3の界面を窒化処理した後に二酸化炭素(CO2)ガスによって熱処理して設けた窒素終端層である。MOSFETのゲート絶縁膜5であるシリコン酸化膜(SiO2膜)として、酸素(O2)ドライ酸化やウェット酸化等の熱酸化膜、あるいはスパッタ、熱化学気相堆積(CVD)、及びプラズマCVD等の堆積酸化膜が採用可能である。ゲート電極7の材料としては、アルミニウム(Al)等の金属膜、燐(P)、ホウ素(B)等の不純物を高濃度に添加したポリシリコン層(ドープドポリシリコン層)等が使用可能である。
【0017】
チャネル形成領域3は、
図1に示すように、n型のSiC半導体からなる基板1の上にエピタキシャル成長して設けられる。また、ソース領域4a及びドレイン領域4bにそれぞれ物理的に接するようにソース電極8a及びドレイン電極8bが設けられる。ソース電極8a及びドレイン電極8bは、それぞれソース領域4a及びドレイン領域4bにオーミック接続されている。ソース電極8a及びドレイン電極8bは、例えば、Alからなる単層膜や、ニッケルシリサイド(NiSi
x)、窒化チタン(TiN)、Alの順で積層された金属膜が使用可能である。なお、図示は省略したが、ソース電極8aとチャネル形成領域3とを電気的に接続するp
+型のコンタクト領域がソース領域4aと分離して、チャネル形成領域3に配置されている。
【0018】
SiC結晶には結晶多形が存在し、主なものは立方晶の3C、及び六方晶の4H、6Hである。室温における禁制帯幅は3C-SiCでは2.23eV、4H-SiCでは3.26eV、6H-SiCでは3.02eVの値が報告されている。本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置では、4H-SiCを用いて説明する。実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置においては、基板1はSiCからなる半導体基板(SiC基板)を用いる。SiC基板を用いた場合、チャネル形成領域3はSiCからなるエピタキシャル層(SiC層)で構成された構造を例示する。SiC基板の面方位は、(0001)面(Si面)を用いて説明するが、(11-20)面(a面)、(1-100)面(m面)、及び(000-1)面(C面)を用いてもよい。
【0019】
図1に示すように、実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置では、ゲート電極7に電圧を印加してゲート絶縁膜5とチャネル形成領域3との界面にチャネルとなる反転層を形成する。このとき、ソース電極8aとドレイン電極8b間に電圧を印加することで、ソース領域4aからキャリア(電子)がチャネルに注入される。注入されたキャリアは、チャネルを走行してドレイン領域4bに流れ込む。
【0020】
通常、ゲート絶縁膜5に用いるSiO2膜を熱酸化法等で形成すると、SiO2膜とSiC半導体層の界面にC原子が残留し、高密度の界面準位が形成される。界面準位に電子が捕獲されると、クーロン散乱等により電子移動度が低下する。SiO2膜とSiC半導体層の界面をN原子で終端することで、界面準位密度を低減する方法が提案されている。しかし、SiO2膜とSiC半導体層の界面に高濃度窒化領域が形成されると、ゲート負電圧印加ストレスに対して、半導体装置のゲート閾値電圧変動が生じる。
【0021】
実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置では、窒化処理してゲート絶縁膜5及びチャネル形成領域3の界面に形成した中間窒化終端層を二酸化炭素(CO2)ガスで熱処理して窒化終端層6を設ける。CO2熱処理で窒化終端層6及びゲート絶縁膜5のSi-N結合が切断され、余剰のN原子を排除できゲート絶縁膜5中の正孔トラップを除去することができる。更に、CO2熱処理後に、ゲート絶縁膜5を窒素(N2)やアルゴン(Ar)等の不活性ガスで熱処理して窒化処理やCO2熱処理では除去されずに残留するゲート絶縁膜5の中の電子トラップ準位を低減する。その結果、半導体装置のゲート閾値電圧変動を抑制することが可能となる。
【0022】
半導体装置のゲート閾値電圧の変動は、例えば、MOSキャパシタのフラットバンド電圧(V
FB)のシフトによって評価できる。そこで、実施形態に係る絶縁ゲート構造に相当するMOSキャパシタを作製してMOSキャパシタの界面特性を評価した。
図2~
図5に示す工程図を用いて、実施形態に係る絶縁ゲート構造に相当するMOSキャパシタの製造方法を説明する。なお、以下に述べるMOSキャパシタの製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0023】
まず、窒素(N)等のn型不純物が添加されたn型のSiC基板(基板)2を用意する。基板2は4H-SiC基板であり、面方位が(0001)面(Si面)である。まず、基板2に対して過酸化水素にアルカリや酸を加えて加熱して洗浄するRCA洗浄を実施し、フッ化水素(HF)処理して乾燥する。
図2に示すように、洗浄した基板2の上面に、100%酸素(O
2)ガス雰囲気中、1100℃以上1300℃以下、例えば1200℃程度の温度で160分間程度加熱して50nm程度のSiO
2からなる酸化膜5aを形成する。酸化膜5aとして、ドライ酸化膜を例示したが、ウェット酸化膜でもよく、また、スパッタリング法、熱CVD、プラズマCVD等による堆積酸化膜でもよい。例えば、減圧熱CVDでシラン(SiH
4)ガスとO
2ガスを用いて、0.2Pa程度の圧力、600℃程度の温度で酸化膜5aを堆積してもよい。
【0024】
次に、窒素(N
2)ガスに一酸化窒素(NO)ガスを10%添加したガス雰囲気中、1150℃以上1300℃以下、例えば1250℃程度の温度で60分間程度過熱して窒化処理を行う。この窒化処理により、
図3に示すように、酸化膜5aと基板2との界面に中間窒化層6aが形成される。なお、窒化処理には、NOに代えて亜酸化窒素(N
2O)ガスを用いてもよい。
【0025】
次に、CO
2ガス雰囲気中、900℃以上1400℃以下、望ましくは950℃以上1300℃以下で、30分間程度の熱処理(CO
2熱処理)を行う。CO
2熱処理の温度は、実施例1として950℃、実施例2及び実施例3として1100℃の温度である。更に、実施例3には、不活性ガス、例えばN
2ガス雰囲気中、1100℃程度で30分間程度の熱処理(N
2熱処理)を加えている。実施例1~3の3通りの熱処理により、
図4に示すように、酸化膜5aと基板2の界面近傍の酸化膜5aの中のN原子濃度が低減すると共に、中間窒化層6aから一部のN原子が除去された窒化終端層6が、3種類の態様で生成される。CO
2熱処理では、100%のCO
2ガスを用いたが、CO
2ガスとN
2やAr等の不活性ガスとの混合ガスを用いてもよい。
【0026】
図5に示すように、リフトオフ又は通常のフォトリソグラフィの手法を用いて、酸化膜5aの上面に直径が200μm程度の金属膜の円形パターンを形成する。円形パターンの前提となる金属膜は、スパッタリング法、真空蒸着法等により、酸化膜5aの上面に、厚さが100μm程度のAl等の金属膜を堆積すれば良い。引き続き、スパッタリング法、真空蒸着法等により、基板2の裏面全面に厚さが100μm程度のAl等の金属膜を堆積する。このようにして、表面電極10及び裏面電極11が形成される。
【0027】
作製した3種類の実施例1~3について、通電試験及びCV測定を繰り返し行い、酸化膜5a中のトラップ準位に捕獲された電子の平均密度(トラップ電子密度)を評価している。また、実施例1~3と比較するため、
図6に示すように、
図3の中間窒化層6a形成後にCO
2熱処理を行わずに、表面電極10及び裏面電極11を形成した比較例1を作成して評価している。また、中間窒化層6a形成後に、CO
2熱処理に代えて1100℃程度で30分間程度のN
2熱処理を行った比較例2も作成して評価している。
【0028】
通電試験においては、
図7に示すように、表面電極10であるAl金属膜に正電圧V
Gを印加して基板2であるn型SiC半導体層からAl金属膜に微小な通電電流I
Gを一定の通電時間で流す。通電中に、SiC半導体層と酸化膜5aに対応するSiO
2酸化膜との半導体界面に蓄積する電子が、界面の障壁を越えて、あるいはトンネルして酸化膜に注入される。通電電流I
Gは、30pA以上100pA以下の範囲、例えば50pA程度の定電流である。酸化膜への注入電子量(注入電荷量)は、通電電流I
Gと通電時間との積の値を素電荷で割ることにより求めることができる。
【0029】
MOSキャパシタのCV測定から得られるフラットバンド電圧V
FBの変化量ΔV
FBを用いて、酸化膜中にトラップされた電子密度n
Tを式(1)から算出することができる。なおトラップ電子密度n
Tは、トラップされた電子が酸化膜中に一様に分布していると仮定して求められる値であるが、実際に電子のトラップサイトが酸化膜中に一様に分布していることを示しているのではなく、このように仮定して求めた値を、酸化膜中に存在する電子トラップ数の大小の指標として用いている。
n
T=-(2Cox/d)ΔV
FB (1)
ここで、Coxは単位面積当たりの酸化膜容量、dは酸化膜の厚さである。
図8は、酸化膜への注入電子量に対するV
FBの変化量ΔV
FB又はトラップ電子密度n
Tの関係の概略を示す線形グラフである。
図8に示すように、変化量ΔV
FB又はトラップ電子密度n
Tは、通電時間の増加により注入電子量が累積すると飽和する傾向が見られる。なお、長時間の通電によって累積した注入電子量が限界に達すると、酸化膜の絶縁破壊が生じる。
【0030】
図9は、実施例1~3及び比較例1、2に対して通電試験及びCV測定を繰り返し行って得られた、酸化膜5a中のトラップ電子密度n
Tと注入電子量との関係を示す両対数グラフである。
図9に示すように、注入電子量の増加に伴い、トラップ電子密度n
Tは増加する。実施例1のトラップ電子密度n
Tは、注入電子量が10
15cm
-2以下では比較例1と同程度であるが、注入電子量が10
15cm
-2程度を超えると比較例1よりも低くなる。また、実施例2のトラップ電子密度n
Tは、注入電子量が10
15cm
-2以下では、CO
2熱処理に代えてN
2熱処理を行った比較例2と同程度であるが、注入電子量が10
15cm
-2程度を超えると比較例2よりも低くなる。更に、注入電子量が5×10
15cm
-2程度以上では、実施例1のトラップ電子密度n
Tも、比較例2よりも低くなる。このように、CO
2熱処理によるトラップ電子密度n
Tの低減効果は、注入電子量が5×10
15cm
-2程度以上、1×10
16cm
-2程度以下の範囲で顕在化することがわかる。また、CO
2熱処理後にN
2熱処理を行った実施例3は、実施例1及び2と比べて、注入電子量の全域にわたりトラップ電子密度n
Tが低減されている。このことから、窒化処理及びCO
2熱処理では除去されずに酸化膜5aの中に残留した電子のトラップ準位がN
2熱処理により減少し、トラップ電子密度n
Tが低減すると推定される。
【0031】
図10に、実施例1~3及び比較例1、2についての通電試験及びCV測定で得られた、総注入電子量が6×10
15cm
-2程度でのトラップ電子密度n
Tを示す。
図10の表に示すように、CO
2熱処理を行っていない比較例1及び2においては、トラップ電子密度n
Tは、それぞれ3.5×10
17cm
-3及び3.35×10
17cm
-3と高い。一方、CO
2熱処理を行った実施例1及び2では、トラップ電子密度n
Tは、それぞれ1.95×10
17cm
-3、及び0.66×10
17cm
-3となり、2×10
17cm
-3以下に低減されていることがわかる。更に、CO
2熱処理後にN
2熱処理を行った実施例3では、トラップ電子密度n
Tは0.26×10
17cm
-3と更に低減されている。このように、CO
2熱処理は高温で実施するほうがトラップ電子密度n
Tの低減に有効である。また、CO
2熱処理後にN
2熱処理を実施すると、比較例1及び2に比べて、トラップ電子密度n
Tを1桁以上低減することができる。
【0032】
実施形態に係る絶縁ゲート構造では、酸化膜5aの窒化処理後にCO2熱処理を実施し、更にN2熱処理を実施する。CO2処理では、窒化処理で導入された酸化膜5a中のSi-N結合あるいはSi-O-N結合が切断される。CO2ガスに代えてO2ガスで熱処理してもSi-N結合を切ってSi-O結合に変換する作用があるが、基板2のSiC表面も酸化され、窒化処理によって形成した界面のNパッシベーションが破壊されてしまう。一方、CO2ガスは、800℃~1400℃程度で、還元ガスのCO及び酸化ガスのO2に分解される。COは、SiO2膜中のSi-N結合を切断することができるが、O2ほど界面のNパッシベーションは破壊され難い。そのため、界面準位密度を低減することができる。また、N2熱処理を追加して行うことにより、窒化処理やCO2熱処理によっては修復され難い酸化膜5a中の電子のトラップ準位を低減できる。その結果、半導体装置のゲート閾値電圧変動を抑制することが可能となる。
【0033】
上述の説明では、基板2として、面方位が(0001)面(Si面)のSiC基板を用いている。Si面は、(11-20)面(a面)、(1-100)面(m面)、及び(000-1)面(C面)に比べて酸化速度が速い。そのため、Si面では、CO2熱処理温度は1000℃~1400℃の範囲、望ましくは1100℃~1300℃の範囲が好適である。a面、m面、及びC面では、CO2熱処理温度は800℃~1200℃の範囲、望ましくは1000℃~1200℃の範囲が好適である。
【0034】
(絶縁ゲート型半導体装置の製造方法)
次に、
図11~
図16に示す工程図を用いて、実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置の製造方法を、横型MOSFETの場合を一例に説明する。なお、以下に述べるMOSFETの製造方法は一例であり、特許請求の範囲に記載した趣旨の範囲であれば、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0035】
まず、窒素(N)等のn型不純物が添加されたn型のSiC基板(基板)1を用意する。基板1は4H-SiC基板であり、面方位が(0001)面(Si面)である。基板1の上面に、p型のチャネル形成領域(ベース領域)3をエピタキシャル成長させる。チャネル形成領域3の上面側から、フォトリソグラフィ技術及びイオン注入技術などにより、N等のn型不純物を選択的に注入する。熱処理を行うことにより、注入されたn型不純物イオンを活性化させる。その結果、
図11に示すように、チャネル形成領域3の上部にn
+型のソース領域(第1主領域)4a及びドレイン領域(第2主領域)4bが選択的に埋め込まれる。
【0036】
図12に示すように、チャネル形成領域3の上面に、100%O
2ガス雰囲気中、1200℃程度の温度で160分間程度加熱して50nm程度のSiO
2からなる酸化膜5bを形成する。酸化膜5bとして、ドライ酸化膜を例示したが、ウェット酸化膜でもよく、また、熱CVD、プラズマCVD等による堆積酸化膜でもよい。例えば、減圧熱CVDでシラン(SiH
4)ガスと酸素(O
2)ガスを用いて、0.2Pa程度の圧力、600℃程度の温度で酸化膜5bを堆積してもよい。
【0037】
次に、N
2ガスに一酸化窒素(NO)ガスを10%添加したガス雰囲気中、1250℃程度の温度で60分間程度過熱して窒化処理を行う。この窒化処理により、
図13に示すように、酸化膜5bと、チャネル形成領域3、ソース領域4a及びドレイン領域4bとの界面に中間窒化層6aが形成される。なお、窒化処理には、NOに代えてN
2Oガスを用いてもよい。
【0038】
窒化処理後、CO
2ガス雰囲気中、2通りの温度でそれぞれ30分間程度のCO
2熱処理を行う。2通りの温度は、実施例4として950℃程度、実施例5及び6として1100℃程度を採用する。実施例3については、CO
2熱処理後、更にN
2ガス雰囲気中、1100℃程度で30分間程度のN
2熱処理を行う。実施例4~6の熱処理により、
図14に示すように、酸化膜5bと、チャネル形成領域3、ソース領域4a及びドレイン領域4bとの界面近傍の酸化膜5bの中のN原子濃度が、それぞれの態様で低減する。又、それぞれの態様で、中間窒化層6aから一部のN原子が除去された窒化終端層6が生成される。CO
2熱処理では、100%のCO
2ガスを用いたが、CO
2ガスとN
2やAr等の不活性ガスとの混合ガスを用いてもよい。
【0039】
フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング等により酸化膜5bにソースコンタクトホール及びドレインコンタクトホールを開孔する。その結果、
図15に示すように、チャネル形成領域3の上面にソース領域4a及びドレイン領域4bを跨ぐようにゲート絶縁膜5のパターンが選択的に残留する。
【0040】
スパッタリング法、真空蒸着法等により、ゲート絶縁膜5、ソースコンタクトホール及びドレインコンタクトホールの上面に厚さが100μm程度のAl等の金属膜を堆積する。フォトリソグラフィ技術及びドライエッチング等により、金属膜を分離してゲート電極7、ソース電極8a及びドレイン電極8bのパターンを形成する。その結果、ソース領域4a及びドレイン領域4bの端部の一部を跨ぐように、チャネル形成領域3の上面に、窒化終端層6を介して絶縁ゲート型電極構造(5,7)が形成される。このようにして、
図16に示した実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置が完成する。
【0041】
このようにして作製した3通りの横型MOSFETの実施例4~6について、トランジスタ駆動試験によりトランジスタ特性の測定を行い、ゲート閾値電圧(V
TH)のシフト量ΔV
THの評価を行う。トランジスタ駆動試験は、ゲート電圧として+20V/-10Vの矩形波電圧を、室温環境、スイッチング周波数200kHzで10000時間印加して行っている。
図17に示すように、実施例4~6と比較するため、
図13の中間窒化層6a形成後にCO2熱処理を行わずに、ゲート絶縁膜5、並びに、ゲート電極7、ソース電極8a及びドレイン電極8bを形成した比較例3も同様に評価する。また、中間窒化層6a形成後に、CO
2熱処理に代えて1100℃程度で30分間程度のN
2熱処理を行った比較例4も作成して評価している
【0042】
図18は、トランジスタ駆動時間に対するゲート閾値電圧のシフト量ΔV
THを示すグラフである。
図18に示すように、シフト量ΔV
THは駆動時間の増加に伴い増加する。実施例4のシフト量ΔV
THは、駆動時間が1000時間未満では比較例3と同程度であるが、駆動時間が1000時間以上になると比較例3よりも小さくなる。また、実施例5のシフト量ΔV
THは、駆動時間が100時間以下では、CO
2熱処理に代えてN
2熱処理を行った比較例4と同程度であるが、駆動時間が100時間を超えると比較例4よりも小さくなる。更に、実施例5のシフト量ΔV
THは、駆動時間が1000時間を超えると、実施例4のシフト量ΔV
THも、比較例4よりも小さくなる。また、CO
2熱処理後にN
2熱処理を行った実施例6は、駆動時間の全域にわたりシフト量ΔV
THが小さい。
図18に示した駆動時間とシフト量ΔV
THとの関係は、
図9に示した注入電子量とトラップ電子密度n
Tとの関係と類似している。特に、
図9のトラップ電子密度n
Tの各測定値間を直線補間すると、注入電子量が5×10
15cm
-2程度でのトラップ電子密度n
Tが、1000時間を超える駆動時間でのシフト量ΔV
THの大小関係と対応していることがわかる。
【0043】
図19には、駆動時間が10000時間後のゲート閾値電圧のシフト量ΔV
THの評価結果を示す。
図19の表に示すように、950℃及び1100℃でCO
2熱処理した実施例4及び実施例5のシフト量ΔV
THは、それぞれ0.30V及び0.10Vである。1100℃でCO
2熱処理とN
2熱処理とを実施した実施例6のシフト量ΔV
Tは0.06Vである。一方、従来の窒化処理だけの比較例3のシフト量ΔV
Tが0.94Vで、CO
2熱処理に代えてN
2熱処理した比較例4のシフト量ΔV
Tが0.86Vである。このように、実施例4~6では、駆動10000時間後のゲート閾値電圧のシフト量ΔV
THに大きな改善が見られる。このスイッチング周波数200kHzで駆動10000時間は、スイッチング周波数20kHzで駆動100000時間に相当し、実施例4~6のシフト量ΔV
THは実用上問題のない範囲である。このように、実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置では、ゲート閾値電圧シフトを抑制することができ、半導体装置の信頼性の劣化を抑制することが可能となる。
【0044】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明の実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0045】
上述のように、実施形態に係る絶縁ゲート型半導体装置に係る半導体装置においては、4H-SiCを用いた横型MOSFETを例示したが、6H-SiC、3C-SiCを用いた半導体装置に適用することも可能である。更に、プレーナゲート縦型MOSFETやトレンチゲート縦型MOSFETにも適用することも可能である。
【0046】
このように、上記の実施形態及び各変形例において説明される各構成を任意に応用した構成等、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0047】
1、2…基板(SiC基板)
3…チャネル形成領域(ベース領域)
4a…ソース領域(第1主領域)
4b…ドレイン領域(第2主領域)
5…ゲート絶縁膜
5a、5b…酸化膜
6…窒化終端層
6a…中間窒化層
7…ゲート電極(制御電極)
8a…ソース電極
8b…ドレイン電極
10…表面電極
11…裏面電極