(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】脱離基を有するモノクロスカップリング芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 209/68 20060101AFI20241024BHJP
C07C 209/74 20060101ALI20241024BHJP
C07C 211/54 20060101ALI20241024BHJP
C07C 211/52 20060101ALI20241024BHJP
C07C 41/24 20060101ALI20241024BHJP
C07C 43/205 20060101ALI20241024BHJP
C07C 43/225 20060101ALI20241024BHJP
C07C 15/12 20060101ALI20241024BHJP
C07C 1/32 20060101ALI20241024BHJP
C07C 17/25 20060101ALI20241024BHJP
C07C 25/18 20060101ALI20241024BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C07C209/68
C07C209/74
C07C211/54
C07C211/52
C07C41/24
C07C43/205 A
C07C43/225 A
C07C15/12
C07C1/32
C07C17/25
C07C25/18
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022504388
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2021007912
(87)【国際公開番号】W WO2021177290
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2020035093
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「レドックスメカノケミストリーによる固体有機合成化学」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 肇
(72)【発明者】
【氏名】久保田 浩司
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-540854(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110183333(CN,A)
【文献】KABALKA, G. W. et al.,Microwave-assisted, solventless Suzuki coupling reactions on palladium-doped alumina,Green Chemistry,2000年,Vol.2, No.3,pp.120-122,DOI: 10.1039/b001191f
【文献】FELDBAEK, N. S. et al.,The Suzuki Reaction Under Solvent-Free Conditions,Synthetic Communications,2000年,Vol.30, No.19,pp.3501-3509,DOI:10.1080/00397910008087262
【文献】MELUCCI, M. et al.,Solvent-Free, Microwave-Assisted Synthesis of Thiophene Oligomers via Suzuki Coupling,J. Org. Chem,2002年,Vol.67,No.25,pp.8877-8884,DOI:10.1021/jo026269d
【文献】THEERAMUNKONG, S. et al.,Regioselective Suzuki Coupling of Dihaloheteroaromatic Compounds as a Rapid Strategy To Synthesize Potent Rigid Combretastatin Analogues,J. Med. Chem. ,2011年,Vol.54, No.14,pp.4977-4986,DOI:10.1021/jm200555r
【文献】WANG, Zi Jun et al.,Photocatalytic Suzuki Coupling Reaction Using Conjugated Microporous Polymer with Immobilized Palladium Nanoparticles under Visible Light,Chem. Mater. ,2015年,Vol.27, No.6,pp.1921-1924,DOI: 10.1021/acs.chemmater.5b00516
【文献】ASACHENKO, A. F. et al.,Suzuki-Miyaura Cross-Coupling under Solvent-Free Conditions,Advanced Synthesis & Catalysis,2013年,Vol.355, No.18,pp.3505-3735,DOI:10.1002/adsc.201300741
【文献】SEO, T. et al.,Selective mechanochemical monoarylation of unbiased dibromoarenes by in situ crystallization,Journal of the American Chemical Society,2020年04月27日,Vol.142, No.22,pp.9884-9889,DOI:10.1021/jacs.0c01739
【文献】KUBOTA, K. et al.,Olefin-accelerated solid-state C-N cross-coupling reactions using mechanochemistry,NATURE COMMUNICATIONS,2019年,Vol.10, Article number 111,pp.1-11
【文献】SCHNEIDER, F et al.,The Suzuki-Miyaura Reaction under Mechanochemical Conditions,Organic Process Research & Development,2009年,Vol. 13,pp. 44-48
【文献】JIANG, Zhi-Jiang et al.,Liquid-Assisted Grinding Accelerating: Suzuki-Miyaura Reaction of Aryl Chlorides under High-Speed B,The Journal of Organic Chemistry,2016年,Vol. 81,pp. 10049-10055
【文献】STOLLE, Achim et al.,Solvent-free reactions of alkynes in ball mills: It is definitely more than mixing,Pure and Applied Chemistry,2011年,Vol.83, No.7,pp.1343-1349
【文献】HERNANDEZ, J. G. et al.,Useful chemical activation alternatives in solvent-free organic reactions,Comprehensive Organic Synthesis (2nd Edition),Vol.9,2014年,pp.287-314
【文献】SEO, T. et al.,Solid-state Suzuki-Miyaura cross-coupling reactions: olefin-accelerated C-C coupling using mechanochemistry,Chem. Sci.,2019年,Vol.10, No.35,pp.8202-8210,DOI:10.1039/C9SC02185J
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)を準備すること;
芳香族ボロン酸類(2-1)、芳香族アミノ化合物(2-2)、ジボロン酸エステル類(2-3)、水酸基を有する芳香族化合物(2-4)及びチオール基を有する芳香族化合物(2-5)から選択されるクロスカップリング反応可能な化合物(2)を、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)に対して0.6~1.6の当量比で準備すること;並びに
パラジウム触媒、無機塩基またはアルカリ金属アルコキシドから選ばれる少なくとも一以上の塩基、アリールホスフィン、アルキルホスフィンまたはアリールアルキルホスフィンから選ばれる少なくとも一以上のホスフィン化合物、及び、鎖状でも環状でもよい化合物であって炭素数5~12である炭素-炭素二重結合を有する化合物(芳香族を含まない)の存在下、
更に、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)及び化合物(2)の合計1mmol当たり、多くとも0.2mL以下の溶媒を使用してよい条件下で、
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と化合物(2)を、ボールミル、(垂直軸回転)固定容器型混合装置、及び(振動)固定容器型混合装置から選ばれる装置で混合してクロスカップリング反応させること;
を含む、
前記少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)より1つ少ない脱離基を有する、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法であって、
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の脱離基は、クロロ、ブロモ、ヨードまたはトリフルオロメタンスルホネートから選択される基であり、かつ、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点より、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点が高く、クロスカップリング反応の反応温度が、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点と、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点の間にある、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法。
【請求項2】
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は脱離基がブロモであるハロゲン化芳香族化合物であり、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)が、ハロゲン化モノクロスカップリング芳香族化合物である請求項1記載のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法。
【請求項3】
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は、
下記一般式(I):
A
1-Xn
[A
1は、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択され、Xは、クロロ、ブロモ、ヨードまたはトリフルオロメタンスルホネートから選択される脱離基、nは、2以上の整数。]
で示され;
芳香族ボロン酸類(2-1)は、
下記一般式(II-1):
【化1】
[R
1~R
2は、各々独立して、水素、置換基を有してよいアルキル基、置換基を有してよいアリール基から選択され、R
1とR
2は相互に結合してよく、A
2は置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択される]で示され;
芳香族アミノ化合物(2-2)は、
下記一般式(II-2):
【化2】
[A
3及びA
4は、各々独立して、水素、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリールから選択され、A
3及びA
4は、同時に水素ではなく、A
3とA
4は、相互に結合していてよい]
で示され;
ジボロン酸エステル類(2-3)は、
下記一般式(II-3):
【化3】
[R
3~R
6は、各々独立して、水素、置換基を有してよいアルキル基、置換基を有してよいアリール基から選択され、R
3とR
4は相互に結合してよく、R
5とR
6は相互に結合してよい]で示され;
水酸基を有する芳香族化合物(2-4)は、
下記一般式(II-4):
HO-(C
mH
2m)-A
5
[A
5は置換基を有してよいアリール基
及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択される。mは、0~20の整数。]で示され;並びに
チオール基を有する芳香族化合物(2-5)は、
下記一般式(II-5):
HS-(C
pH
2p)-A
6
[A
6は置換基を有してよいアリール基
及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択される。pは、0~20の整数。]で示される、
請求項1に記載のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法。
【請求項4】
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は、2つの脱離基と芳香族基を含み、
2つの脱離基は、クロロ、ブロモ、ヨードまたはトリフルオロメタンスルホネートから選択され、2つの脱離基は、同じでも異なってもよく、
芳香族基は、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択され、
置換基を有してよいアリール基は、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ビフェニルジイル基、ターフェニルジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、トリフェニレンジイル基を含み、
置換基を有してよいヘテロアリール基は、含硫黄ヘテロアリール基;含酸素ヘテロアリール基;含窒素ヘテロアリール基;及び二種以上のヘテロ原子を含むヘテロアリール基を含み、
芳香族ボロン酸類(2-1)は、芳香族ボロン酸と芳香族ボロン酸エステルを含み、
芳香族基として、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択される1種を含み、
置換基を有してよいアリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基、ペリレニル基、トリフェニレニル基を含み、
置換基を有してよいヘテロアリール基は、含硫黄ヘテロアリール基;含酸素ヘテロアリール基;含窒素ヘテロアリール基;及び二種以上のヘテロ原子を含むヘテロアリール基を含み、
芳香族アミノ化合物(2-2)は、最大で二つの芳香族基を含むことができ、その芳香族基は、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択することができ、
置換基を有してよいアリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基、ペリレニル基、トリフェニレニル基を含み、
置換基を有してよいヘテロアリール基は、含硫黄ヘテロアリール基;含酸素ヘテロアリール基;含窒素ヘテロアリール基;及び二種以上のヘテロ原子を含むヘテロアリール基を含み、
ジボロン酸エステル類(2-3)は、ジボロン酸アルキルエステル、ジボロン酸アルキレングリコールエステル、ジボロン酸アリールエステル、ジボロン酸アリーレングリコールエステル、テトラヒドロキシジボランを含み、
水酸基を有する芳香族化合物(2-4)は、
芳香族基として、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択される1種を含み、
置換基を有してよいアリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基、ペリレニル基、トリフェニレニル基を含み、
置換基を有してよいヘテロアリール基は、含硫黄ヘテロアリール基;含酸素ヘテロアリール基;含窒素ヘテロアリール基;及び二種以上のヘテロ原子を含むヘテロアリール基を含み、
チオール基を有する芳香族化合物(2-5)は、
芳香族基として、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択される1種を含み、
置換基を有してよいアリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基、ペリレニル基、トリフェニレニル基を含み、
置換基を有してよいヘテロアリール基は、含硫黄ヘテロアリール基;含酸素ヘテロアリール基;含窒素ヘテロアリール基;及び二種以上のヘテロ原子を含むヘテロアリール基を含む、請求項
1又は3に記載のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法。
【請求項5】
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と、芳香族ボロン酸類(2-1)、または芳香族アミノ化合物(2-2)との反応で得られ、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)は、下記一般式(III-1-1)~(III-1-2)で示されるモノクロスカップリング芳香族化合物から選択される、請求項3に記載のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法。
X
n-1-A
1-A
2 :III-1-1
X
n-1-A
1-N(A
3)A
4 :III-1-2
[A
1~A
4、n、Xについては、一般式(I)、(II-1)~(II-2)に記載の通りである。]
【請求項6】
モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)が得られる際に一緒に生成する、2回クロスカップリング反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)について、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)とジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)との比(モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)/ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)は、1より大きい、請求項1~5のいずれか1項に記載のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法を含み、
モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を、2回目のクロスカップリング反応させることを含む、2回クロスカップリング反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造方法。
【請求項8】
モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を、
モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)及び化合物(2)の合計1mmol当たり、多くとも0.2mL以下の溶媒を使用してよい条件下で、
2回目のクロスカップリング反応させることを含む、請求項7に記載の2回クロスカップリング反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造方法。
【請求項9】
1回目のクロスカップリング反応に用いる化合物(2)と、2回目のクロスカップリング反応に用いる化合物(2)が異なる、請求項7又は8に記載のジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造方法。
【請求項10】
モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を精製することなく、そのまま使用して2回目のクロスカップリング反応を行う、請求項7~9のいずれか1項に記載のジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な、溶媒を使用しない、脱離基を有するモノクロスカップリング(1回クロスカップリング反応して得られる)芳香族化合物の製造方法に関する。複数の脱離基を有する芳香族化合物(例えば、芳香族環に芳香族基を有する複数の基が結合した芳香族化合物) から、特定の数の脱離基を残しながら選択的に芳香族基等への変換をおこない、脱離基を有するモノクロスカップリング芳香族化合物(例えば、芳香族環に芳香族基を有する基とハロゲン等の脱離基が結合した芳香族化合物) を製造する方法に関する。さらに、ジハロゲン化芳香族化合物からモノハロゲン化モノクロスカップリング芳香族化合物の製造方法に関し、さらに、そのモノハロゲン化モノクロスカップリング芳香族化合物を用いるジクロスカップリング(2回クロスカップリング反応して得られる)芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族化合物に複数の芳香族基を有する芳香族化合物は、医用やエレクトロニクス分野で広く使用されている。複数の芳香族基を有する芳香族化合物の製造は、ハロゲンなどの脱離基を複数有する芳香族化合物を基質とし、芳香族基を有する基でその脱離基を変換することが一般的である。例えば、芳香環に種類の異なる2つの芳香族基を有する化合物を合成する場合、まず、2つの脱離基を有する芳香族化合物に、1つの芳香族基を導入し、次に、種類の異なる他の芳香族基を導入することになる。
【0003】
有機合成化学において、同一の脱離基を複数有する分子に対し、ある特定の位置の脱離基のみを選択的に変換することは大変困難である。例えば、2つのハロゲノ基を有する基質に対して、鈴木-宮浦クロスカップリング反応を行うと、一般的にモノカップリング生成物とジカップリング生成物の混合物が得られる。従来技術では、基質分子に電子的もしくは立体的バイアスをかけることでモノカップリング生成物を選択的に合成している。しかし、この方法では適用可能な基質が限定されてしまうため、新しい合成戦略が求められていた(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
本発明者らは、ボールミルを用いた有機合成反応を検討し、固体状態の化合物のクロスカップリング反応において100%近い高収率で目的の化合物を製造できることを報告した(非特許文献2)。しかし、複数の脱離基を有する化合物のクロスカップリング反応において、反応に選択性があることは何ら報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Sewan Theeramunkong, Antonio Caldarelli, Alberto Massarotti, Silvio Aprile, Diego Caprioglio, Roberta Zaninetti, Alessia Teruggi, Tracey Pirali, Giorgio Grosa, Gian Cesare Tron, and Armando A. Genazzani, J. Med. Chem., 2011, Vol.54, 4977-4986
【文献】Koji Kubota, Tamae Seo, Katsumasa Koide, Yasuchika Hasegawa, and Hajime Ito, Nature Communications, 2019, 10: 111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、複数の芳香族基を有する芳香族化合物(例えば、芳香族環に芳香族基を有する複数の基が結合した芳香族化合物)を製造する際の前駆体となる、脱離基を有するモノクロスカップリング芳香族化合物(例えば、芳香族環に芳香族基を有する基とハロゲン等の脱離基が結合した芳香族化合物)を、複数の脱離基を有する芳香族化合物から容易に製造できる方法の確立を課題とする。例えば、代表例として、ジハロゲン化芳香族化合物から、モノハロゲン化モノクロスカップリング芳香族化合物(モノカップリング生成物又は第1反応生成物)(例えば、芳香族環に芳香族基を有する基とハロゲンが1つ結合した芳香族化合物)を、より選択的、より効率的に製造する方法を提供することを目的とする。従来の方法では、例えば、2つのハロゲノ基を有する基質に対して、反応性の優劣を得るため基質分子に電子的もしくは立体的バイアスをかけるが、このことは基質となる化合物を複雑な構造へと設計させることになる。本発明は、同種のハロゲンを導入した、単純な構造のジハロゲン化芳香族化合物を基質として、一つのハロゲンのみが芳香族基を有する置換基で変換したモノハロゲン化モノクロスカップリング芳香族化合物を製造できる技術を提供することを課題とする。
更に、本発明は、モノクロスカップリング芳香族化合物を更にカップリング反応させる、ジクロスカップリング芳香族化合物(ジクロスカップリング生成物)の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ボールミルを用いた有機合成反応を検討したところ、この反応は、有機溶媒を使用しないため、基質及び生成物の状態(固体の硬さや柔らかさ、液体の粘性、気体)において、反応が大きく左右されることを見出した。
例えば、ボールミルを用いたパラジウム触媒クロスカップリング反応では、固体の基質に比べ、液体の基質の方がより高い反応性を示すことを、本発明者らは見出した。そこで本発明者らは、液体のジハロゲン化物がメカノケミカルクロスカップリング反応により固体のモノカップリング生成物(モノハロゲン化物又は第1反応生成物)に変換されれば、固体のモノカップリング生成物は、更にジカップリング生成物(又は第2反応生成物)に変換され難いであろうと考えた。即ち、液体原料であるジハロンゲン化物が、モノカップリング生成物と比較して優先的に反応し、結果としてモノカップリング生成物が選択的に得られると考えた。
また、基質や生成物の固体と液体の状態変化においてのみではなく、固体の状態(固体の硬さや柔らかさ)を制御することにより、モノカップリング生成物(又は第1反応生成物)をジカップリング生成物(又は第2反応生成物)に優先して選択的に製造することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)より1つ少ない脱離基を有する、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法を提供し、それは、
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)を準備すること;
芳香族ボロン酸類(2-1)、芳香族アミノ化合物(2-2)、ジボロン酸エステル類(2-3)、水酸基を有する芳香族化合物(2-4)及びチオール基を有する芳香族化合物(2-5)から選択されるクロスカップリング反応可能な化合物(2)を準備すること;並びに
パラジウム触媒、及び塩基の存在下、
無溶媒で、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と化合物(2)をクロスカップリング反応させること;
を含む。
【0009】
本発明は他の要旨において、上述のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を、2回目のクロスカップリング反応させることを含む、2回クロスカップリング反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法を用いると、複数の芳香族基を有する芳香族化合物の前駆体となり得る、脱離基を有するモノクロスカップリング芳香族化合物を高選択率、高収率で製造することができる。反応工程を大幅に短縮することができ、コスト的に有利となる。また、ボールミルを用いた有機合成反応は、有機溶媒を殆ど使用しないことから、その有機溶媒の処理問題を解消できる。
本発明の実施形態の製造方法を用いると、例えば、ジハロゲン化芳香族化合物(1)から、より選択的に、より効率的に、モノハロゲン化モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を製造することができる。ジハロゲン化芳香族化合物は、安価で多量に流通されていることから、高価な原料を使用する必要がなく、安価にモノハロゲン化モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を提供できることになる。
更に、本発明の実施形態において、モノハロゲン化モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を、更にクロスカップリング反応させて、医用やエレクトロニクス分野で広く使用されている複数の芳香族基を有する芳香族化合物をジクロスカップリング生成物(3-2)として、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、粉末X線回折による、実施例5の固相パラジウム触媒クロスカップリング反応の観察を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法は、
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)を準備すること;
芳香族ボロン酸類(2-1)、芳香族アミノ化合物(2-2)、ジボロン酸エステル類(2-3)、水酸基を有する芳香族化合物(2-4)及びチオール基を有する芳香族化合物(2-5)から選択されるクロスカップリング反応可能な化合物(2)を準備すること;並びに
パラジウム触媒、及び塩基の存在下、
無溶媒で、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と化合物(2)をクロスカップリング反応させること;
を含む。モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)は、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)より1つ少ない脱離基を有する。
【0013】
本発明の実施形態のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法は、
<1>少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)を準備することを含む。
本開示において、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は、少なくとも二つの脱離基と結合した芳香族基を有し、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
【0014】
本開示において、脱離基は、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはないが、一般に、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲノ基、ジアゾニウム塩、トリフルオロメタンスルホネート及びカルボン酸誘導体から選択され得る。脱離基は、更にクロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲノ基、ジアゾニウム塩及びトリフルオロメタンスルホネートから選択され得、ハロゲノ基が好ましい。
【0015】
本開示において、脱離基としてのハロゲノ基は、一般に、クロロ、ブロモ、ヨードから選択することができる。2つのハロゲノ基は、相違しても同一であってもよい。2つともクロロ、2ともブロモ、2つともヨード、クロロとブロモの組み合わせ、クロロとヨードの組み合わせ、ブロモとヨードの組み合わせてあってよい。2つもクロロ、2つともブロモ、2ともヨードの、同一のハロゲノ基であってよい。
【0016】
本発明の実施形態において、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は脱離基がハロゲンであるハロゲン化芳香族化合物であり、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)が、ハロゲン化モノクロスカップリング芳香族化合物である、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法を提供する。
【0017】
芳香族基は、クロスカップリング反応において、通常利用される芳香族基であって、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。芳香族基は、一般に、置換基を有してよい芳香族基及び置換基を有してよいヘテロ芳香族基(ヘテロ原子を含む芳香族基)から選択され得る。
【0018】
置換基を有してよい芳香族基は、例えば、フェニル基、ナフタレン基、アントラセン基、フェナントレン基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレン基、ペリレン基、トリフェニレン基等を含む。置換基を有してよい芳香族基は、置換基の数に対応する数の水素が除去されている。
【0019】
置換基を有してよいヘテロ芳香族基は、例えば、
チオフェン基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、フェニルジベンゾチオフェン基等の含硫黄ヘテロ芳香族基;
フラン基、ベンゾフラン基、ジベンゾフラン基、フェニルジベンゾフラン基等の含酸素ヘテロ芳香族基;
ピリジン基、ピリミジン基、ピラジン基、キノリン基、イソキノリン基、カルバゾール基、9-フェニルカルバゾール基、アクリジン基、キナゾリン基、キノキサリン基、1,6-ナフチリジン基、1,8-ナフチリジン基及びポルフィリン基等の含窒素ヘテロ芳香族基;
ベンゾチアゾール基等の二種以上のヘテロ原子(例えば、窒素と硫黄)を含むヘテロ芳香族基
を含む。置換基を有してよいヘテロ芳香族基は、置換基の数に対応する数の水素が除去されている。
【0020】
置換基を有してよい芳香族基及び置換基を有してよいヘテロ芳香族基が有し得る置換基は、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
置換基は、例えば、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等)、
炭素数3~24、例えば3~18、例えば3~12、例えば3~8のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基など)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルケニル基(例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基など)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基など)、
炭素数4~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のヘテロアリール基(例えば、チオフェニル基、フラニル基、カルバゾール基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラ二ル基、インドリル基、ピロリル基、ピリジル基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘプタノイル基並びにそのアシル基に含まれるカルボニル基が、エステル基又はアミド基で置換された基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、
フッ素(一部フッ素置換及び完全フッ素置換を含む)、シアノ基、ニトロ基を含む。
置換基同士は、相互に架橋していてもよく、置換基全体で、環状構造(芳香族基)を形成してもよい。更に、上述の置換基は、更に上述の置換基を有してよい。
【0021】
本発明の実施形態において、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は、2つの脱離基と芳香族基を含み、
2つの脱離基は、ハロゲノ基、ジアゾニウム塩、トリフルオロメタンスルホネート及びカルボン酸誘導体から選択され、2つの脱離基は、同じでも異なってもよい、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法を提供する。
【0022】
脱離基が2つの場合が好ましく、2つの脱離基と結合した芳香族基は、クロスカップリング反応において、通常利用される二置換の芳香族基であって、芳香族性を有する環状構造を含む基であり、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。二置換の芳香族基は、一般に、置換基を有してよいヘテロ原子を含まない芳香族基(アレーンジイル基又はアリーレン基)及び置換基を有してよいヘテロ原子を含む芳香族基(又はヘテロ芳香族基)から選択され得る。
【0023】
二置換の置換基を有してよいヘテロ原子を含まない芳香族基は、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ビフェニルジイル基、ターフェニルジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、トリフェニレンジイル基等を含む。
【0024】
二置換の置換基を有してよいヘテロ芳香族基は、例えば、
チオフェンジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、ジベンゾチオフェンジイル基及びフェニルジベンゾチオフェンジイル基等の含硫黄ヘテロ芳香族基;
フランジイル基、ベンゾフランジイル基、ジベンゾフランジイル基及びフェニルジベンゾフランジイル基等の含酸素ヘテロ芳香族基;
ピリジンジイル基、ピリミジンジイル基、ピラジンジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、カルバゾールジイル基、9-フェニルカルバゾールジイル基、アクリジンジイル基、キナゾリンジイル基、キノキサリンジイル基、1,6-ナフチリジンジイル基、1,8-ナフチリジンジイル基及びポルフィリンジイル基(又はポルフィリン環)等の含窒素ヘテロ芳香族基;
ベンゾチアゾールジイル基等の二種以上のヘテロ原子(例えば、窒素と硫黄)を含むヘテロ芳香族基
を含む。
【0025】
二置換のヘテロ原子を含まない芳香族基及びヘテロ芳香族基が有し得る置換基は、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
置換基は、例えば、上述した置換基を有してよい芳香族基及び置換基を有してよいヘテロ芳香族基が有し得る置換基を例示できる。
【0026】
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は、より具体的には、例えば、下記一般式(I)で示すことができる。
A1-Xn :(I)
[A1は、置換基を有してよい芳香族基及び置換基を有してよいヘテロ芳香族基から選択され、Xはハロゲノ基、ジアゾニウム塩、トリフルオロメタンスルホネート及びカルボン酸誘導体から選択され、nは2以上の整数であり、例えば、4以下であり、3以下であり、2であってよい。]
で示され;
【0027】
式(I)中、A1の置換基を有してよい芳香族基及び置換基を有してよいヘテロ芳香族基は、例えば、上述の例示した、置換基を有してよい芳香族基及び置換基を有してよいヘテロ芳香族基を含むことができる。
式(I)中、置換基を有してよい芳香族基及び置換基を有してよいヘテロ芳香族基の置換基は、例えば、上述の置換基であり得る。
その置換基同士は、相互に架橋していてもよく、置換基全体で、環状構造(芳香族基)を形成してもよい。更に、その置換基は、更に上述の置換基を有してよい。
【0028】
式(I)中、Xは、ハロゲノ基から選択されることが好ましい。
【0029】
脱離基が2つの場合が好ましく、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)のA1として、更に、例えば、下記の二置換の基を例示することができる:
ナフタレンジイル基、アリール(例えば、フェニル等)ナフタレンジイル基、アルキレン(例えば、エチレン等)架橋を有するナフタレンジイル基、アリーレン(例えば、フェニレン等)架橋を有するナフタレンジイル基等のナフタレンジイル基;
フェナントレンジイル基;
アントラセンジイル基、アリール(例えば、フェニル等)アントラセンジイル基、ジアリール(例えば、ジナフチル等)アントラセンジイル基、ジアリールボリル(例えば、ビス(トリアルキルフェニル)ボリル等)アントラセンジイル基等のアントラセンジイル基;
ピレンジイル基、アルキル(例えば、t-ブチル等)ピレンジイル基等のピレンジイル基;
ビフェニルジイル基、アルキレン(例えば、プロピレン、イソプロピレン等)架橋を有するビフェニルジイル基等のビフェニルジイル基;
ターフェニルジイル基、テトラアリール(例えば、テトラフェニル等)ターフェニルジイル基等のターフェニルジイル基;
トリフェニレンジイル基;
2-アリール(例えば、フェニル等)エテニルフェニレン基、1,2,2-トリアリール(例えば、トリフェニル等)エテニルフェニレン基、2-アリール(例えば、フェニル等)エチニルフェニレン基、フェニレン基、アルキル(例えば、メチル)フェニレン基、ジアルキル(例えば、ジメチル)フェニレン基、アルコキシ(例えば、メトキシ)フェニレン基、ジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノ)フェニレン基、ジアリール(例えば、ジフェニル)アミノフェニレン基、パーフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)フェニレン基、アルキル(例えば、エチル)オキシカルボニルフェニレン基、アルカノイル(例えば、アシル)フェニレン基等のフェニレン基;
カルバゾールジイル基、アリール(例えば、フェニル等)置換カルバゾールジイル基;
アントラセンジイル基、アントラセン-9.10-ジオンジイル基、
チオフェンジイル基、アリール(例えば、フェニル等)置換チオフェンジイル基;
ポルフィリンジイル基、アリール(例えば、ビス(3,5-メチルフェニル)等)ポルフィリンジイル基等。
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)として、市販の化合物を使用できる。
【0030】
本発明の実施形態のモノハロゲン化芳香族化合物(3-1)の製造方法は、
<2>芳香族ボロン酸類(酸及びそのエステルを含む)(2-1)、芳香族アミノ化合物(2-2)、ジボロン酸エステル類(エステル及び酸を含む)(2-3)、水酸基を有する芳香族化合物(2-4)及びチオール基を有する芳香族化合物(2-5)から選択されるクロスカップリング反応可能な化合物(2)を準備することを含む。
【0031】
本開示において、クロスカップリング反応可能な化合物(2)は、上述の少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)とクロスカップリング反応が可能な化合物であり、芳香族ボロン酸類(酸及びそのエステルを含む)(2-1)、芳香族アミノ化合物(2-2)、ジボロン酸エステル類(エステル及び酸を含む)(2-3)、水酸基を有する芳香族化合物(2-4)及びチオール基を有する芳香族化合物(2-5)から選択される化合物(2-1)~(2-5)であれば、特に制限されることはない。
【0032】
本開示において、芳香族ボロン酸類(酸及びそのエステルを含む)(2-1)は、B-C結合を有し、芳香族基を有し、上述のジハロゲン化芳香族化合物(1)とクロスカップリング反応をして、C-C結合が形成されたクロスカップリング生成物を与える限り、特に制限されることはない。本開示において、芳香族ボロン酸類(2-1)は、芳香族ボロン酸と芳香族ボロン酸エステルの両者を含む。芳香族ボロン酸エステルは、芳香族ボロン酸アルキルエステル、芳香族ボロン酸アルキレングリコールエステル、芳香族ボロン酸アリールエステル、芳香族ボロン酸アリーレングリコールエステルを含む。
【0033】
芳香族基は、例えば、置換基を有してよいアリール基(又は芳香族基)及び置換基を有してよいヘテロアリール基(又はヘテロ芳香族基)から選択することができる。
【0034】
置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基(又はアントラセン基)、フェナントレニル基(又はフェナントレン基)、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基(又はピレン基)、ペリレニル基(又はペリレン基)、トリフェニレニル基(又はトリフェニレン基)等を含む。
【0035】
置換基を有してよいヘテロアリール基(又はヘテロ芳香族基)は、例えば、
チオフェニル基(チオフェン基又はチエニル基)、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基及びジベンゾチエニレニルフェニル基等の含硫黄ヘテロアリール基;
フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基及びジベンゾフラニルフェニル基等の含酸素ヘテロアリール基;
ピリジル基(又はピリジン基)、ピリジレニル基(又はピリジンジイル基)、ピリミジニル基(又はピリミジン基)、ピラジル基(又はピラジン基)、キノリル基(又はキノリン基)、イソキノリル基(又はイソキノリン基)、カルバゾリル基(又はカルバゾール基)、9-フェニルカルバゾリル基、アクリジニル基(又はアクリジン基)、キナゾリル基(又はキナゾリン基)、キノキサリル基(又はキノキサリン基)、1,6-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基及びポルフィリン基(又はポルフィリン環)等の含窒素ヘテロアリール基;
ベンゾチアゾリル基(又はベンゾチアゾール基)等の二種以上のヘテロ原子(例えば、窒素と硫黄)を含むヘテロアリール基
を含む。
【0036】
アリール基及びヘテロアリール基が有し得る置換基は、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
置換基は、例えば、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等)、
炭素数3~24、例えば3~18、例えば3~12、例えば3~8のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基など)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルケニル基(例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基など)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基など)、
炭素数4~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のヘテロアリール基(例えば、チオフェニル基、フラニル基、カルバゾール基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラ二ル基、インドリル基、ピロリル基、ピリジル基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘプタノイル基並びにそのアシル基に含まれるカルボニル基が、エステル基又はアミド基で置換された基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、
フッ素(一部フッ素置換及び完全フッ素置換を含む)、シアノ基、ニトロ基を含む。
【0037】
本発明の実施形態において、芳香族ボロン酸類(酸及びそのエステルを含む)(2-1)は、より具体的には、例えば、
一般式(II-1):
【化1】
R
1~R
2は、各々独立して、水素、置換基を有してよいアルキル基、置換基を有してよいアリール基から選択され、R
1とR
2は相互に結合してよく、
A
2は置換基を有してよいアリール基及びは置換基を有してよいヘテロアリール基から選択される]で示すことができる。
【0038】
式(II-1)において、R1~R2は、各々独立して、水素、置換基を有してよいアルキル基、置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)から選択され、R1とR2は相互に結合してよい。更に、R1とR2は一緒に環状構造を形成してよい。その環状構造は、芳香族基であってよい。例えば、1,2-フェニレン基等を例示できる。
置換基を有してよいアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等を含む。更に、2つのアルキル基は、結合してよく、R1-R2として、例えば、エチレン基、1,1,2,2-テトラメチルエチレン基(ピナコラト基)、ネオペンチルグリコラト基、プロピレン基を含む。
置換基を有してよいアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等から選択される。
【0039】
アルキル基、アリール基はいずれも、置換基を有してよい。そのような置換基は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等から選択されることができる。置換基同士は、相互に架橋していてもよい。置換基は、更に、置換基を有することができる。
【0040】
式(II-1)において、A2は置換基を有してよいアリール基及びは置換基を有してよいヘテロアリール基から選択され、クロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基は、上述の置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基を含むことができる。
式(II-1)において、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基の置換基は、例えば、上述の置換基であり得る。
更に、その置換基は、更に上述の置換基を有してよい。
【0041】
芳香族ボロン酸類(II-1)のA2として、より具体的には、例えば、下記の基を例示することができる:
ナフチル基、アリール(例えば、フェニル)ナフチル基、アルキレン(例えば、エチレン)架橋を有するナフチル基、アリーレン(例えば、フェニレン)架橋を有するナフチル基等のナフチル基;
フェナントレニル基;
アントラセニル基、アリール(例えば、フェニル)アントラセニル基、ジアリール(例えば、ジナフチル)アントラセニル基、ジアリールボリル(例えば、ビス(トリアルキルフェニル)ボリル)アントラセニル基等のアントラセニル基;
ピレニル基、アルキル(例えば、t-ブチルピレニル基等のピレニル基;
ビフェニル基、アルキレン(例えば、プロピレン、イソプロピレン)架橋を有するビフェニル基等のビフェニル基;
ターフェニル基、テトラアリール(例えば、テトラフェニル)ターフェニル基等のターフェニル基;
トリフェニレニル基;
2-アリール(例えば、フェニル)エテニルフェニル基、1,2,2-トリアリール(例えば、トリフェニル)エテニルフェニル基、2-アリール(例えば、フェニル)エチニルフェニル基、フェニル基、アルキル(例えば、メチル)フェニル基、ジアルキル(例えば、ジメチル)フェニル基、アルコキシ(例えば、メトキシ)フェニル基、ジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノ)フェニル基、ジアリール(例えば、ジフェニル)アミノフェニル基、パーフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)フェニル基、アルキル(例えば、エチル)オキシカルボニルフェニル基、アルカノイル(例えば、アシル)フェニル基等のフェニル基;
アリール(例えば、フェニル)置換カルバゾリル基;
アントラセン-9.10-ジオン基、
チエニル基、アリール(例えば、フェニル)チエニル基等。
芳香族ボロン酸類(2-1)として、市販の化合物を使用できる。
【0042】
本開示において、芳香族アミノ化合物(2-2)は、芳香族基と結合したアミノ基を有し、アミノ基は水素を有し、上述のジハロゲン化芳香族化合物(1)とクロスカップリング反応をして、N-C結合が形成されたクロスカップリング生成物を与える限り、特に制限されることはない。
【0043】
芳香族基は、例えば、置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)及び置換基を有してよいヘテロアリール基(又はヘテロ芳香族基)から選択することができる。 芳香族アミノ化合物(2-2)は、最大で二つの芳香族基を含むことができる。芳香族アミノ化合物(2-2)が、二つの芳香族基を有する場合、その二つの芳香族基は相互に架橋しても、結合してもよい。
芳香族アミノ化合物(2-2)は、二つの置換基を有し、それが、相互に結合して、結果として全体として一つの環状構造を形成して、例えば、芳香族基を形成してもよい。
【0044】
置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基(又はアントラセン基)、フェナントレニル基(又はフェナントレン基)、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基(又はピレン基)、ペリレニル基(又はペリレン基)、トリフェニレニル基(又はトリフェニレン基)等を含む。
【0045】
置換基を有してよいヘテロアリール基(又はヘテロ芳香族基)は、例えば、
チオフェニル基(チオフェン基又はチエニル基)、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基及びジベンゾチエニレニルフェニル基等の含硫黄ヘテロアリール基;
フラニル基(又はフラン基)、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基及びジベンゾフラニルフェニル基等の含酸素ヘテロアリール基;
ピリジル基(又はピリジン基)、ピリジレニル基(又はピリジンジイル基)、ピリミジニル基(又はピリミジン基)、ピラジル基(又はピラジン基)、キノリル基(又はキノリン基)、イソキノリル基(又はイソキノリン基)、カルバゾリル基(又はカルバゾール基)、9-フェニルカルバゾリル基、アクリジニル基(又はアクリジン基)、キナゾリル基(又はキナゾリン基)、キノキサリル基(又はキノキサリン基)、1,6-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基及びポルフィリン基(又はポルフィリン環)等の含窒素ヘテロアリール基;
ベンゾチアゾリル基(又はベンゾチアゾール基)等の二種以上のヘテロ原子(例えば、窒素と硫黄)を含むヘテロアリール基
を含む。
【0046】
アリール基及びヘテロアリール基が有し得る置換基は、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
置換基は、例えば、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等)、
炭素数3~24、例えば3~18、例えば3~12、例えば3~8のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基など)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルケニル基(例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基など)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基など)、
炭素数4~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のヘテロアリール基(例えば、チオフェニル基、フラニル基、カルバゾール基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラ二ル基、インドリル基、ピロリル基、ピリジル基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘプタノイル基並びにそのアシル基に含まれるカルボニル基が、エステル基又はアミド基で置換された基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、
フッ素(一部フッ素置換及び完全フッ素置換を含む)、シアノ基、ニトロ基を含む。
置換基同士は、相互に架橋していてもよく、置換基全体で、環状構造(芳香族基)を形成してもよい。更に、上述の置換基は、更に上述の置換基を有してよい。
【0047】
芳香族アミノ化合物(2-2)は、より具体的には、例えば、
一般式(II-2):
【化2】
[A
3及びA
4は、各々独立して、水素、置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)及び置換基を有してよいヘテロアリール基(又はヘテロ芳香族基)から選択され、A
3及びA
4は、同時に水素ではなく、A
3とA
4は、相互に結合していてよい]で示される。
【0048】
式(II-1)中、A3及びA4は、水素、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択されるが、同時に水素ではない。
置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基は、上述の置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基を含むことができる。
【0049】
式(II-2)中、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基の置換基は、例えば、上述の置換基であり得る。
その置換基同士は、相互に架橋していてもよく、置換基全体で、環状構造(芳香族基)を形成してもよい。更に、その置換基は、更に上述の置換基を有してよい。
【0050】
芳香族アミノ化合物(2-2)のA3及びA4として、より具体的には、例えば、下記の基を例示することができる:
ナフチル基、アリール(例えば、フェニル等)ナフチル基、アルキレン(例えば、エチレン等)架橋を有するナフチル基、アリーレン(例えば、フェニレン等)架橋を有するナフチル基等のナフチル基;
フェナントレニル基;
アントラセニル基、アリール(例えば、フェニル等)アントラセニル基、ジアリール(例えば、ジナフチル等)アントラセニル基、ジアリールボリル(例えば、ビス(トリアルキルフェニル)ボリル等)アントラセニル基等のアントラセニル基;
ピレニル基、アルキル(例えば、t-ブチル等)ピレニル基等のピレニル基;
ビフェニル基、アルキレン(例えば、プロピレン、イソプロピレン等)架橋を有するビフェニル基等のビフェニル基;
ターフェニル基、テトラアリール(例えば、テトラフェニル等)ターフェニル基等のターフェニル基;
トリフェニレニル基;
2-アリール(例えば、フェニル等)エテニルフェニル基、1,2,2-トリアリール(例えば、トリフェニル等)エテニルフェニル基、2-アリール(例えば、フェニル等)エチニルフェニル基、フェニル基、アルキル(例えば、メチル)フェニル基、ジアルキル(例えば、ジメチル)フェニル基、アルコキシ(例えば、メトキシ)フェニル基、ジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノ)フェニル基、ジアリール(例えば、ジフェニル)アミノフェニル基、パーフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)フェニル基、アルキル(例えば、エチル)オキシカルボニルフェニル基、アルカノイル(例えば、アシル)フェニル基等のフェニル基;
アリール(例えば、フェニル等)置換カルバゾリル基;
アントラセン-9.10-ジオン基、
アリール(例えば、フェニル等)置換チエニル基等。
芳香族アミノ化合物(2-1)として、市販の化合物を使用できる。
【0051】
本開示において、ジボロン酸エステル類(2-3)は、B-B結合を有し、上述のジハロゲン化芳香族化合物(1)とクロスカップリング反応をして、B-C結合が形成されたクロスカップリング生成物を与える限り、特に制限されることはない。
尚、本開示において、ジボロン酸エステル類(2-3)は、ジボロン酸モノエステル及びジボロン酸等を含み、例えば、テトラヒドロキシジボラン(Tetrahydroxydiborane)を含む。
ジボロン酸エステル類(2-3)は、ジボロン酸アルキルエステル、ジボロン酸アルキレングリコールエステル、ジボロン酸アリールエステル、ジボロン酸アリーレングリコールエステル、テトラヒドロキシジボランを含む。
【0052】
本発明の実施形態において、ジボロン酸エステル類(エステル及び酸を含む)(2-3)は、より具体的には、例えば、
一般式(II-3):
【化3】
[R
3~R
6は、各々独立して、水素、置換基を有してよいアルキル基、置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)から選択され、R
3とR
4は相互に結合してよく、R
5とR
6は相互に結合してよい]で示すことができる。
【0053】
式(II-3)において、R3~R6は、各々独立して、水素、置換基を有してよいアルキル基、置換基を有してよいアリール基から選択され、R3とR4は相互に結合してよく、R5とR6は相互に結合してよい。更に、R3とR4は一緒に環状構造を形成してよく、R5とR6は一緒に環状構造を形成してよい。その環状構造は、芳香族基であってよい。例えば、1,2-フェニレン基等を例示できる。
【0054】
置換基を有してよいアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等を含む。更に、2つのアルキル基は、結合してよく、R1-R2及びR3-R4として、例えば、エチレン基、1,1,2,2-テトラメチルエチレン基、2,2-ジメチルプロピレン基、ヘキシレン基(又は1,1,3-トリメチルプロピレン基)等を含む。
置換基を有してよいアリール基は、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等から選択される。
【0055】
アルキル基、アリール基が有してよい置換基は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等から選択されることができる。置換基同士は、相互に架橋していてもよい。置換基は、更に置換基を有してよい。
【0056】
ジボロン酸エステル類は、より具体的には、例えば、ビス(ピナコラト)ジボロン(Bis(pinacolato)diboron)、ビス(ネオペンチルグリコラト)ジボロン(Bis(neopentyl Glycolate)diboron)、ビス(ヘキシレングリコラト)ジボロン(Bis(hexylene Glycolato)diboron)、ビス(カテコラト)ジボロン(Bis(catecholato)diboron)等を含む。
ジボロン酸エステル類(2-3)として、市販品を使用することができる。
【0057】
本開示において、水酸基を有する芳香族化合物(2-4)は、H-O結合を有し、芳香族基を有し、上述のジハロゲン化芳香族化合物(1)とクロスカップリング反応をして、O-C結合が形成されたクロスカップリング反応生成物を与える限り、特に制限されることはない。
【0058】
芳香族基は、例えば、置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)及び置換基を有してよいヘテロアリール基(又はヘテロ芳香族基)から選択することができる。
【0059】
置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基(又はアントラセン基)、フェナントレニル基(又はフェナントレン基)、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基(又はピレン基)、ペリレニル基(又はペリレン基)、トリフェニレニル基(又はトリフェニレン基)等を含む。
【0060】
置換基を有してよいヘテロアリール基(又はヘテロ芳香族基)は、例えば、
チオフェニル基(チオフェン基又はチエニル基)、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基及びジベンゾチエニレニルフェニル基等の含硫黄ヘテロアリール基;
フラニル基(又はフラン基)、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基及びジベンゾフラニルフェニル基等の含酸素ヘテロアリール基;
ピリジル基(又はピリジン基)、ピリジレニル基(又はピリジンジイル基)、ピリミジニル基(又はピリミジン基)、ピラジル基(又はピラジン基)、キノリル基(又はキノリン基)、イソキノリル基(又はイソキノリン基)、カルバゾリル基(又はカルバゾール基)、9-フェニルカルバゾリル基、アクリジニル基(又はアクリジン基)、キナゾリル基(又はキナゾリン基)、キノキサリル基(又はキノキサリン基)、1,6-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基及びポルフィリン基(又はポルフィリン環)等の含窒素ヘテロアリール基;
ベンゾチアゾリル基(又はベンゾチアゾール基)等の二種以上のヘテロ原子(例えば、窒素と硫黄)を含むヘテロアリール基
を含む。
【0061】
アリール基及びヘテロアリール基が有し得る置換基は、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
置換基は、例えば、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等)、
炭素数3~24、例えば3~18、例えば3~12、例えば3~8のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基など)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルケニル基(例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基など)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基など)、
炭素数4~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のヘテロアリール基(例えば、チオフェニル基、フラニル基、カルバゾール基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラ二ル基、インドリル基、ピロリル基、ピリジル基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘプタノイル基並びにそのアシル基に含まれるカルボニル基が、エステル基又はアミド基で置換された基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、
フッ素(一部フッ素置換及び完全フッ素置換を含む)、シアノ基、ニトロ基を含む。
【0062】
本発明の実施形態において、水酸基を有する芳香族化合物(2-4)は、より具体的には、例えば、
一般式(II-4):
HO-(CmH2m)-A5
[A5は置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択される。mは、0~20の整数。]で示すことができる。
【0063】
式(II-4)において、mは、0~20の整数であり、mは10以下であることが好ましく、4以下であることが更に好ましい。A5は、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択されることができ、クロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基は、上述の置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基を含むことができる。
式(II-4)において、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基の置換基は、例えば、上述の置換基であり得る。
更に、その置換基は、更に上述の置換基を有してよい。
【0064】
水酸基を有する芳香族化合物(2-4)のA5として、より具体的には、例えば、下記の基を例示することができる:
ナフチル基、アリール(例えば、フェニル)ナフチル基、アルキレン(例えば、エチレン)架橋を有するナフチル基、アリーレン(例えば、フェニレン)架橋を有するナフチル基等のナフチル基;
フェナントレニル基;
アントラセニル基、アリール(例えば、フェニル)アントラセニル基、ジアリール(例えば、ジナフチル)アントラセニル基、ジアリールボリル(例えば、ビス(トリアルキルフェニル)ボリル)アントラセニル基等のアントラセニル基;
ピレニル基、アルキル(例えば、t-ブチルピレニル基等のピレニル基;
ビフェニル基、アルキレン(例えば、プロピレン、イソプロピレン)架橋を有するビフェニル基等のビフェニル基;
ターフェニル基、テトラアリール(例えば、テトラフェニル)ターフェニル基等のターフェニル基;
トリフェニレニル基;
2-アリール(例えば、フェニル)エテニルフェニル基、1,2,2-トリアリール(例えば、トリフェニル)エテニルフェニル基、2-アリール(例えば、フェニル)エチニルフェニル基、フェニル基、アルキル(例えば、メチル)フェニル基、ジアルキル(例えば、ジメチル)フェニル基、アルコキシ(例えば、メトキシ)フェニル基、ジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノ)フェニル基、ジアリール(例えば、ジフェニル)アミノフェニル基、パーフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)フェニル基、アルキル(例えば、エチル)オキシカルボニルフェニル基、アルカノイル(例えば、アシル)フェニル基等のフェニル基;
アリール(例えば、フェニル)カルバゾリル基;
アントラセン-9.10-ジオン基、
チエニル基、アリール(例えば、フェニル)チエニル基等。
水酸基を有する芳香族化合物(2-4)として、市販の化合物を使用できる。
【0065】
本開示において、チオール基を有する芳香族化合物(2-5)は、H-S結合を有し、芳香族基を有し、上述のジハロゲン化芳香族化合物(1)とクロスカップリング反応をして、S-C結合が形成されたクロスカップリング反応生成物を与える限り、特に制限されることはない。
【0066】
芳香族基は、例えば、置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)及び置換基を有してよいヘテロアリール基(又はヘテロ芳香族基)から選択することができる。
【0067】
置換基を有してよいアリール基(又は芳香族炭化水素基)は、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基(又はアントラセン基)、フェナントレニル基(又はフェナントレン基)、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基(又はピレン基)、ペリレニル基(又はペリレン基)、トリフェニレニル基(又はトリフェニレン基)等を含む。
【0068】
置換基を有してよいヘテロアリール基(又はヘテロ芳香族基)は、例えば、
チオフェニル基(チオフェン基又はチエニル基)、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基及びジベンゾチエニレニルフェニル基等の含硫黄ヘテロアリール基;
フラニル基(又はフラン基)、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基及びジベンゾフラニルフェニル基等の含酸素ヘテロアリール基;
ピリジル基(又はピリジン基)、ピリジレニル基(又はピリジンジイル基)、ピリミジニル基(又はピリミジン基)、ピラジル基(又はピラジン基)、キノリル基(又はキノリン基)、イソキノリル基(又はイソキノリン基)、カルバゾリル基(又はカルバゾール基)、9-フェニルカルバゾリル基、アクリジニル基(又はアクリジン基)、キナゾリル基(又はキナゾリン基)、キノキサリル基(又はキノキサリン基)、1,6-ナフチリジニル基、1,8-ナフチリジニル基及びポルフィリン基(又はポルフィリン環)等の含窒素ヘテロアリール基;
ベンゾチアゾリル基(又はベンゾチアゾール基)等の二種以上のヘテロ原子(例えば、窒素と硫黄)を含むヘテロアリール基
を含む。
【0069】
アリール基及びヘテロアリール基が有し得る置換基は、本発明が目的とするクロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
置換基は、例えば、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等)、
炭素数3~24、例えば3~18、例えば3~12、例えば3~8のシクロアルキル基(例えば、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基など)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルケニル基(例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等)、
炭素数1~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基など)、
炭素数5~24、例えば5~18、例えば5~12、例えば5~8のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、ビフェニルオキシ基など)、
炭素数4~24、例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のヘテロアリール基(例えば、チオフェニル基、フラニル基、カルバゾール基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフラ二ル基、インドリル基、ピロリル基、ピリジル基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘプタノイル基並びにそのアシル基に含まれるカルボニル基が、エステル基又はアミド基で置換された基等)、
炭素数1~24,例えば1~18、例えば1~12、例えば1~8のアミノ基(例えば、ジフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、
フッ素(一部フッ素置換及び全フッ素置換を含む)、シアノ基、ニトロ基を含む。
【0070】
本発明の実施形態において、チオール基を有する芳香族化合物(2-5)は、より具体的には、例えば、
一般式(II-5):
HS-(CpH2p)-A6
[A6は置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択される。pは、0~20の整数。]で示すことができる。
【0071】
式(II-5)において、pは、0~20の整数であり、pは10以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。A5は、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基から選択されることができ、クロスカップリング反応を行える限り特に制限されることはない。
置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基は、上述の置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基を含むことができる。
式(II-5)において、置換基を有してよいアリール基及び置換基を有してよいヘテロアリール基の置換基は、例えば、上述の置換基であり得る。
更に、その置換基は、更に上述の置換基を有してよい。
【0072】
チオール基を有する芳香族化合物(2-5)のA6として、より具体的には、例えば、下記の基を例示することができる:
ナフチル基、アリール(例えば、フェニル)ナフチル基、アルキレン(例えば、エチレン)架橋を有するナフチル基、アリーレン(例えば、フェニレン)架橋を有するナフチル基等のナフチル基;
フェナントレニル基;
アントラセニル基、アリール(例えば、フェニル)アントラセニル基、ジアリール(例えば、ジナフチル)アントラセニル基、ジアリールボリル(例えば、ビス(トリアルキルフェニル)ボリル)アントラセニル基等のアントラセニル基;
ピレニル基、アルキル(例えば、t-ブチルピレニル基等のピレニル基;
ビフェニル基、アルキレン(例えば、プロピレン、イソプロピレン)架橋を有するビフェニル基等のビフェニル基;
ターフェニル基、テトラアリール(例えば、テトラフェニル)ターフェニル基等のターフェニル基;
トリフェニレニル基;
2-アリール(例えば、フェニル)エテニルフェニル基、1,2,2-トリアリール(例えば、トリフェニル)エテニルフェニル基、2-アリール(例えば、フェニル)エチニルフェニル基、フェニル基、アルキル(例えば、メチル)フェニル基、ジアルキル(例えば、ジメチル)フェニル基、アルコキシ(例えば、メトキシ)フェニル基、ジアルキルアミノ(例えば、ジメチルアミノ)フェニル基、ジアリール(例えば、ジフェニル)アミノフェニル基、パーフルオロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)フェニル基、アルキル(例えば、エチル)オキシカルボニルフェニル基、アルカノイル(例えば、アシル)フェニル基等のフェニル基;
アリール(例えば、フェニル)カルバゾリル基;
アントラセン-9.10-ジオン基、
チエニル基、アリール(例えば、フェニル)チエニル基等。
チオール基を有する芳香族化合物(2-5)として、市販の化合物を使用できる。
【0073】
本発明の実施形態のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法は、
<3>パラジウム触媒、塩基の存在下、
無溶媒で、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と化合物(2)をクロスカップリング反応させること
を含む。
【0074】
本発明の実施形態において、パラジウム触媒は、通常、クロスカップリング反応に使用され、本発明が目的とする無溶媒で、上述の少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と化合物(2)の間のクロスカップリング反応を進行させることができれば、特に制限されることはない。
【0075】
本発明の実施形態において、パラジウム触媒は、例えば、酢酸パラジウム(II)、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ-1,5-ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等の0価パラジウム化合物を含むことができる。
パラジウム触媒は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
パラジウム触媒は、市販品を使用することができる。
【0076】
パラジウム触媒に、更にホスフィン化合物等の配位性化合物を共存させることができる。ホスフィン化合物は、本発明が目的とするクロスカップリング反応に使用することができれば、特に制限されることはない。
そのようなホスフィン化合物として、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリ(メシチル)ホスフィン等のアリールホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン等のアルキルホスフィン等を例示することができる。
【0077】
更にホスフィン化合物として、例えば、DavePhos(下記式参照)、tBuBrettPhos(下記式参照)、tBuXPhos(下記式参照)等のアリール基とアルキル基の両方を有するアリールアルキルホスフィンを例示することができる。尚、アルキルホスフィンは、アリールアルキルホスフィンを含み得る。更に、アルキル基は、シクロアルキル基を含む。
【化4】
【0078】
ホスフィン化合物は、アルキルホスフィンを含むことが好ましい。
ホスフィン化合物は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
ホスフィン化合物は、市販品を使用することができる。
【0079】
クロスカップリング反応を2回行う場合、1回目のクロスカップリング反応では、反応性の抑えられた、例えば、tBuXPhos, tBuBrettPhos 等のホスフィン化合物が好ましい。
2回目のクロスカップリング反応では、反応性のより高い、例えば、DavePhos 等のホスフィン化合物が好ましい。
【0080】
本発明の実施形態において、塩基は、クロスカップリング反応に使用され、本発明が目的とする無溶媒で、上述の少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と化合物(2)の間のクロスカップリング反応を進行させることができれば、特に制限されることはない。
塩基として、例えば、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の無機塩基;
ナトリウム-メトキシド、ナトリウム-エトキシド、カリウム-メトキシド、カリウム-メトキシド、カリウム-エトキシド、リチウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;
トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等の有機塩基を例示できる。
塩基は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
塩基として、市販品を使用することができる。
【0081】
本発明の実施形態において、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物の存在下で、クロスカップリング反応を行うことが好ましい。炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物とは、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合又は少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有し、鎖状でも環状でもよい化合物(芳香族を含まない)であって、本発明が目的とする無溶媒で、上述の少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と化合物(2)の間のクロスカップリング反応を促進させることができれば、特に制限されることはない。尚、上述の少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)、化合物(2)、パラジウム触媒、配位性化合物及び塩基に該当する化合物は、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物に含まれない。
【0082】
炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物は、炭素数5~24であることが、クロスカップリング反応を促進するために好ましい。炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物の炭素数は、5~18であり得、5~12であり得、6~10であり得、6~8であり得る。
1つの炭素-炭素二重結合を有する鎖状化合物として、例えば、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン等を例示できる。
1つの炭素-炭素二重結合を有する環状化合物として、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン等を例示できる。
2つの炭素-炭素二重結合を有する鎖状化合物として、例えば、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエン等を例示できる。
2つの炭素-炭素二重結合を有する環状化合物として、例えば、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、シクロデカジエン等を例示できる。
1つの炭素-炭素三重結合を有する鎖状化合物として、例えば、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、デシン等を例示できる。
1つの炭素-炭素三重結合を有する環状化合物として、例えば、シクロオクチン、シクロデシン等を例示できる。
炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物は、鎖状又は単環状であることが好ましい。
【0083】
クロスカップリング反応を2回行う場合、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物は、1回目のクロスカップリング反応で使用することが好ましく、2回目のクロスカップリング反応では、使用しても、使用しなくてもよい。一回目の反応で添加した炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物を残らせて、二回目の反応でも使用することができる。
【0084】
本発明の実施形態において、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と化合物(2)のクロスカップリング反応は、無溶媒で、パラジウム触媒、塩基及び炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物の存在下、混合して(好ましくは振とうして)、行うことができる。
【0085】
本開示において、無溶媒とは、通常、クロスカップリング反応で使用される溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、t-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の極性溶媒等)を多くとも、化合物(1)及び化合物(2)の合計1mmol当たり、多くとも0.2mL以下用いることをいい、0.1mL以下用いることをいい、0.05mL以下用いることをいい、0.02mL以下用いることをいい、0.01mL以下用いることをいい、実質的に、積極的に溶媒を用いることなく、反応を行うことをいう。
一般にクロスカップリング反応では、反応原料の合計1mmol当たり、1~2mLの溶媒を使用するので、本発明の実施形態では、明らかに、溶媒の使用量が少ない。本発明の実施形態では、反応原料は、通常、反応開始時に、少なくとも一部、溶媒等に溶解することなく、場合によっては全てが溶媒等に溶解することなく、固体状態で存在し得る。
【0086】
クロスカップリング反応(混合する温度)は、通常、室温(例えば、5~40℃)で行うことができるが、適宜、加熱して行うことができる。
混合する方法は、振とう、擦り合わせ、押圧、分散、混練、解砕等の混合可能ないずれの方法を用いてもよい。
そのような装置として、例えば、
ボールミル、ロッドミル、ジェットミル、SAGミル等の粉砕機;
回転式石臼、擂潰機(らいかいき)等の磨砕機;
水平円筒型、V型、二重円錐型、正方立方体型、S型及び連続V型等の(水平軸回転)容器回転型混合装置;
水平円筒型、V型、二重円錐型及びボール・ミル型等の(邪魔板羽根付き)容器回転型混合装置;
ロッキング型及びクロスロータリー型等の(回転振動)容器回転型混合装置;
リボン型、パドル型、単軸ロータ型及びバグ・ミル型等の(水平軸回転)固定容器型混合装置;
リボン型、スクリュー型、遊星型、タービン型、高速流動型、回転円盤型及びマーラー型等の(垂直軸回転)固定容器型混合装置;
振動ミル型及びふるい等の(振動)固定容器型混合装置;
不均一流動層、旋回流動層、上昇管付き型及びジョットポンプ型等の(流動化)流体運動型混合装置;
重力型及びスタティックミキサー等の(重力)流体運動型混合装置等を用いて行うことができるが、クロスカップリング反応が進行する限り、その方法及び使用される装置は、特に制限されることはない。尚、混合装置について、例えば、坂下「粉体混合プロセス技術」色材、77(2)、75-85(2004)の表5及び
図9等記載の粉体混合装置を参照することができる。
混合速度も、適宜、選択することができる。
混合時間も、適宜、選択することができる。本発明の実施形態では、混合する時間は、例えば、15分以上であり得、30分以上であり得、45分以上であり得、60分以上であり得、2時間以下であり得、3時間以下であり得、5時間以下であり得、10時間以下であり得る。
【0087】
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)に対する化合物(2)の当量比(化合物(2)/少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1))は、クロスカップリング反応を進行させることができる当量比であれば特に制限されることはないが、例えば、0.6~1.6であってよく、0.8~1.4であってよく、1.0~1.2であってよい。ほぼ当量で反応させることが好ましい。
【0088】
塩基の当量は、クロスカップリング反応を進行させることができる量であれば特に制限されることはないが、例えば、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の当量を基準として、例えば、0.5以上であり得、0.8以上であり得、1.0以上であり得、1.2以上であり得、1.4以上であり得、3以下であり得、4以下であり得、5以下であり得、10以下であり得る。
【0089】
パラジウム触媒の量は、クロスカップリング反応を進行させることができる量であれば特に制限されることはないが、例えば、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)のモル数に価数をかけて得たモル数を基準(100%)として、例えば、0.5モル%以上であり得、0.1モル%以上であり得、0.5モル以上であり得、1モル%以上であり得、25モル%以下であり得、20モル%以下であり得、15モル%以下であり得、10モル%以下であり得る。
【0090】
ホスフィン化合物をパラジウム触媒と共存させる場合、ホスフィン化合物とパラジウム触媒のモル比(ホスフィン化合物/パラジウム触媒)は、クロスカップリング反応を進行させることができるモル比であれば特に制限されることはないが、例えば、10/1~1/10であってよく、5/1~1/5であってよく、3/1~1/3であってよく、2/1~1/2であってよい。
【0091】
炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する化合物の添加量は、クロスカップリング反応を進行させることができる量であれば特に制限されることはないが、クロスカップリング反応を行うために加えた全ての原料(例えば、ジハロゲン化芳香族化合物(1)、化合物(2)、パラジウム触媒、塩基及び、ホスフィン化合物を加える場合ホスフィン化合物)の質量の総和を基準として、例えば、0.01~3microL/mg加えることができ、0.05~1microL/mg加えることができ、0.1~0.5microL/mg加えることができる。
【0092】
本開示のクロスカップリング反応に、従来既知のクロスカップリング反応の促進剤を追加使用することができる。そのような促進剤として、例えば、水等を例示することができる。追加の促進剤の添加量は、クロスカップリング反応を進行させることができる量であれば特に制限されることはない。
【0093】
得られたモノクロスカップリング芳香族化合物(又はモノカップリング生成物)(3-1)は、適宜、精製することができる。モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を精製することができる限り、精製方法は、特に制限されることはない。精製方法として、例えば、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の常套の方法を利用することができる。
【0094】
本発明の実施形態において、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と、芳香族ボロン酸類(2-1)、芳香族アミノ化合物(2-2)、ジボロン酸エステル類(2-3)、水酸基を有する芳香族化合物(2-4)又はチオール基を有する芳香族化合物(2-5)との反応で得られ、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)は、下記一般式(III-1-1)~(III-1-5)で示されるモノクロスカップリング芳香族化合物から選択される、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法を提供する。
Xn-1-A1-A2 :III-1-1
Xn-1-A1-N(A3)A4 :III-1-2
Xn-1-A1-B(OR3)OR4 :III-1-3
Xn-1-A1-O-(CmH2m)-A5 :III-1-4
Xn-1-A1-S-(CpH2p)-A6 :III-1-5
[A1~A6、R5~R6、m、p、Xについては、上述の一般式(I)、(II-1)~(II-5)に記載の通りである。]
【0095】
本発明の実施形態において、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点より、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点が高く、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点と、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点の差が、10℃以上である、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法を提供する。
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点と、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点の差は、例えば10℃以上であり、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更により好ましく、50℃以上であることが特に好ましく、60℃以上であることが極めて好ましい。
【0096】
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点より、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点が高い場合、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と比較してモノクロスカップリング芳香族化合物(2)の反応速度の低下を生じえるので、好ましい。
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点と、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点の差が、10℃以上である場合、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)とモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)との反応速度の差をより生じえるので好ましい。
【0097】
本発明の実施形態において、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点より、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点が高く、クロスカップリング反応の反応温度が、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点と、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点の間にある、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法を提供する。
【0098】
クロスカップリング反応の反応温度が、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)の融点と、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の融点の間にある場合、反応系内において、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は液体であり、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)は液体ではない流動性を失った状態、好ましくは固体であると考えられる。この場合、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)と、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の反応性は、より明確に相違しえるので、好ましい。
【0099】
本発明の実施形態のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法は、(ii)反応系内で、液体の少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)から、固体のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を生成することを含むことができる。
本発明の実施形態において、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法は、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)は、流動性を失った状態であればよく、必ずしも結晶であることを要しない。モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の固体は、反応系内で生ずればよく、反応初期から生じ、反応の進行に応じて、増加してもよい。
【0100】
本発明の実施形態のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法において、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)が得られる際に同時に生成する、2回クロスカップリング反応した生成物(ジクロスカップリング芳香族化合物)(3-2)について、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)とジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)との比(モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)/ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)は、1より大きい、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法を提供する。
【0101】
本発明の実施形態において、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)と、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)が得られる際に生成するジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)との比(モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)/ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2))は、1より大きいことが好ましく、2より大きいことがより好ましく、3より大きいことが更により好ましく、4より大きいことが特に好ましい。
モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)/ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)が、1より大きい場合、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)がジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)より優先的に得られており好ましい。
【0102】
本発明の好ましい要旨において、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)の製造方法を含み、
モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を、2回目のクロスカップリング反応させることを含む、2回クロスカップリング反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造方法を提供する。
【0103】
本開示で製造可能なモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)は、更に、クロスカップリング反応させて、2回クロスカップリング反応させたジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を製造するために使用することができる。2回目のクロスカップリング反応は、1回目と異なる反応であってよく、2回目に使用する化合物(2)は、1回目の化合物(2)と異なってよい。したがって、本発明の実施形態において、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)に異なる2種類の化合物(2)をより選択的に反応させることができ、そのようなジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を製造することができる。
【0104】
本発明の実施形態において、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を、無溶媒で2回目のクロスカップリング反応させることを含む、2回クロスカップリング反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造方法を提供する。
2回目のクロスカップリング反応を、無溶媒で行うことが好ましい。
【0105】
本発明の実施形態において、1回目のクロスカップリング反応に用いる化合物(2)と、2回目クロスカップリング反応に用いる化合物(2)が異なる、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造方法を提供する。
【0106】
本発明の実施形態において、1回目のクロスカップリング反応生成物(3-1)を精製することなく、そのまま使用して2回目のクロスカップリング反応を行う、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造方法を提供する。
【0107】
2回目のクロスカップリングを行う際に、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を精製後に使用してよく、精製しないまま使用してもよい。モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を精製しない場合、ワンポットでジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を製造してもよい。
【0108】
1回目のカップリング反応と2回目のクロスカップリング反応の反応条件は、上述したように無溶媒で行う限り、特に制限されることはないが、上述したように各々適宜調整することができる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0110】
本実施例で使用した化合物は、下記の実施例で具体的に例示した。
少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)とクロスカップリング反応可能な化合物(2)、パラジウム化合物、ホスフィン化合物、炭素-炭素二重結合又は三重結合を有する化合物等の、本実施例で使用した化合物は、特に記載しない限り、市販品をそのまま精製することなく使用した。
【0111】
クロスカップリング反応は、レッチェ社(Retsch)(社名変更により、現在、ヴァーダー・サイエンティフィック社: Verder Scientific Co., Ltd.)製のボールミルMM400型を使用して、室温で行った。
【0112】
実施例1
直径3 mmのステンレス製ボールの入った1.5 mLステンレス製ボールミルジャーに、空気下で、1,2-ジブロモベンゼン(1a)(0.30 mmol, 1.0 equiv)、[4-(ジメチルアミノ)フェニル]ボロン酸(2a)(0.36 mmol, 1.2 equiv)、酢酸パラジウム(0.009 mmol, 3 mol %)を加えた。ボールミルジャーをグローブボックスに移し、アルゴン雰囲気下で、tBuXPhos (0.0135 mmol, 4.5 mol %)、CsF (0.9 mmol, 3.0 equiv)を加えた。ボールミルジャーをグローブボックスから取り出し、再び空気下で1,5-シクロオクタジエン(4a)(1,2-ジブロモベンゼン、[4-(ジメチルアミノ)フェニル]ボロン酸、酢酸パラジウム、tBuXPhos及びCsFの合計の質量を基準として0.20 microL/mg)、水(20 microL)を加えた。ボールミルジャーのフタを閉め、ボールミル(Retsch社製 MM400型)に装着し、99分間振とうして攪拌(25 Hz)した。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルでショートシリカゲルカラムクロマトグラフィーに通すことで触媒及び無機塩を除いた。エバポレーターで酢酸エチルを除いたのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することでクロスカップリング生成物を得た(収率78%)。1H-NMRで分析すると、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1a)とジクロスカップリング芳香族化合物(3-1b)の比は、92:8であった。
実施例1の結果は、表1にも示した。
尚、同様の反応を、有機溶媒(トルエン)を使用して、0.1モル/Lの濃度で、50℃で24時間行うと、収率は43%であり、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1a)とジクロスカップリング芳香族化合物(3-1b)の比は、30:70であった。この結果も、同様に表1の()sol内に示した。
【0113】
実施例2~8
実施例1の1,2-ジブロモベンゼン(1a)及び/又は[4-(ジメチルアミノ)フェニル]ボロン酸(2a)を、表1及び2に記載の化合物に変更したことを除いて(更に、実施例2では、[4-(メトキシ)フェニル]ボロン酸(2b)を、2.0 equiv 使用したことを除いて)、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、実施例2~8の反応を行って、クロスカップリング反応生成物を得た。実施例2~8及び対応する有機溶媒を使用して行った結果を、表1及び2に示した。
【0114】
実施例11~14
実施例1の1,2-ジブロモベンゼン(1a)及び/又は[4-(ジメチルアミノ)フェニル]ボロン酸(2a)を、表3に記載の化合物に変更したこと、1,5-シクロオクタジエンを0.40 microL/mg使用したことを除いて(更に、実施例12では、1,5-シクロオクタジエンを0.10 microL/mg使用したことを除いて、更に、実施例14では、1,5-シクロオクタジエンを0.80 microL/mg使用したこと及び3時間振とうしたことを除いて)、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、実施例11~14の反応を行って、クロスカップリング反応生成物を得た。実施例11~14及び対応する有機溶媒を使用して行った結果を、表3に示した。
【0115】
実施例15~18
実施例1の1,2-ジブロモベンゼン(1a)及び/又は[4-(ジメチルアミノ)フェニル]ボロン酸(2a)を、表4に記載の化合物に変更したこと、1,5-シクロオクタジエンを0.40 microL/mg使用したこと、リン化合物として、t-Bu3Pを使用したことを除いて、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、実施例15~18の反応を行って、クロスカップリング反応生成物を得た。実施例15~18及び対応する有機溶媒を使用して行った結果を、表4に示した。尚、実施例18について、ボロン酸(2b)を2当量使用し、リン化合物として、t-BuXPhosを用いた。実施例15~18及び対応する有機溶媒を使用して行った結果を、表3に示した。
【0116】
実施例21~24
実施例21~24では、以上の実施例1~17の結果に基づいて、二回のクロスカップリング反応が相違するジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造例を示す。
実施例21では、実施例4で得たモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1d)を使用して、ボロン酸(2i)とDavePhosを用いたこと、1,5-シクロオクタジエンを用いなかったことを除いて、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、更に2回目のクロスカップリング反応を行って、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2q)を得た。1回目と2回目の全体で収率67%であった。
実施例22では、実施例15で得たモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1n)を使用して、ボロン酸(2j)とDavePhosを用いたこと、1,5-シクロオクタジエンを用いなかったことを除いて、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、更に2回目のクロスカップリング反応させて、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2r)を得た。1回目と2回目の全体で収率51%であった。
実施例23では、実施例16で得たモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1o)を使用して、ボロン酸(2i)とDavePhosを用いたこと、1,5-シクロオクタジエンを用いなかったことを除いて、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、更に2回目のクロスカップリング反応させて、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2s)を得た。1回目と2回目の全体で収率48%であった。
実施例24では、実施例13で得たモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1k)を使用して、ボロン酸(2k)とDavePhosを用いたこと、1,5-シクロオクタジエンを用いなかったことを除いて、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて、更に2回目のクロスカップリング反応させて、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2t)を得た。1回目と2回目の全体で収率42%であった。
実施例21~24の結果を、表5に示した。
【0117】
実施例25
実施例25では、異なるクロスカップリング反応を二回ワンポットで連続して行うジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の製造例を示す。
実施例25では、実施例1の1,2-ジブロモベンゼン(1a)をジブロモチオフェン(1f))に変更し、ボロン酸(2h)とt-BuBrettPhosを用いたこと、精製しなかったことを除いて、実施例1に記載した方法と同様の方法を用いて1回目のクロスカップリング反応を行った。引き続き、粗生成物を精製することなく、ボロン酸(2b)とDavePhosを用いたこと、1,5-シクロオクタジエンを用いなかったことを除いて、1回目のクロスカップリング反応と同様の方法を用いて、更に2回目のクロスカップリング反応を行って、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2u)を得た。1回目と2回目の全体で収率54%であった。
実施例25の結果を、表6に示した。
【0118】
粉末X線回折を使用する反応の観察
実施例5の反応を、粉末X線回折(powder X-ray diffraction: PXRD)で観察した。
図1は、粉末X線回折による、実施例5のカップリング反応の観察を示す。反応後の粗生成物には、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1d)に基づく新たなピークが、主として観察された。このことは、この反応が、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1d)が生成するが、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2d)をあまり生成しないことを示す。
【表1】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
実施例1~17のクロスカップリング反応では、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は室温で液体である。少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)とクロスカップリング反応可能な化合物(2)との反応は、溶媒を使用しなくても十分に進行し、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)をより多く与えた。同時に二回クロスカップリング反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)も生成したが、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)より少なかった。モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)は、いずれも室温で固体なので、拡散律速のために、液体の少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)より、反応速度が低下して、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を生成し難かったと考えられる。少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1a)の融点は4~6℃である。実施例1、2、4、5、6、8のモノクロスカップリング芳香族化合物(3-1a)、(3-1b)、(3-1d)、(3-1e)、(3-1f)及び(3-1h)の融点は、表1及び2中に示すように、いずれも少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1a)の融点より高かった。
【0125】
同様の反応を、有機溶媒を使用して得た結果を表1~4中に示した。有機溶媒を使用した場合、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)の方が多く得られた。このことは、実施例1~17の溶媒を使用しない反応と対照的である。
【0126】
実施例18のクロスカップリング反応では、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)は室温で固体である。少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)とクロスカップリング反応可能な化合物(2)との反応は、溶媒を使用しなくても十分に進行し、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)をより多く与えた。同時に二回クロスカップリング反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)も生成したが、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)より少なかった。モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)は、室温で固体であり、より高い融点を有する。よりしっかりした固体構造を有するので、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)より、反応速度が低下して、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を生成し難かったと考えられる。
【0127】
実施例21~25のクロスカップリング反応では、2回クロスカップリング反応を行うことで、異なる2種類の化合物(2)と反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を、比較的良好な収率で容易に得られることを示す。
実施例21~24では、1回目の反応で、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を得て精製後、2回目の反応で、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を1回目の反応の化合物(2)と別の化合物(2)と反応させて、異なる2種類の化合物(2)と反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を与えた。
実施例25では、1回目の反応で、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を得て、そのまま精製することなく、2回目の反応で、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を1回目の化合物(2)と別の化合物(2)と反応させて、異なる2種類の化合物(2)と反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を与えた。実施例25は、ワンポットで、2種類の化合物(2)と反応したジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を得られることを示した。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の実施形態の製造方法を用いると、少なくとも二つの脱離基を有する芳香族化合物(1)から、より選択的に、より効率的に、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を製造することができる。更に、本発明の実施形態において、モノクロスカップリング芳香族化合物(3-1)を、更にクロスカップリング反応させて、ジクロスカップリング芳香族化合物(3-2)を製造することができる
[関連出願]
本出願は、2020年3月2日に日本国でされた特願2020-35093を基礎出願とするパリ条約第4条又は日本国特許法第41条に基づく優先権を主張する。この基礎出願の内容は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。