(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】流体供給装置、コンピュータ
(51)【国際特許分類】
E03B 5/00 20060101AFI20241024BHJP
F04B 49/02 20060101ALI20241024BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E03B5/00 B
F04B49/02 311
F04B49/06 321A
E03B5/00 A
(21)【出願番号】P 2021021744
(22)【出願日】2021-02-15
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100214248
【氏名又は名称】青山 純
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰雅
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝志
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256867(JP,A)
【文献】特開2020-056389(JP,A)
【文献】特開2010-174536(JP,A)
【文献】特開2019-183696(JP,A)
【文献】特開2014-206892(JP,A)
【文献】特開昭56-137475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 5/00
F04B 49/02
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータによって回転が制御されるモータと、前記モータを駆動源とし流体を移送するポンプと、を有し、建物内に設置される流体供給ユニットを1又は複数含む流体供給装置であって、
前記建物内の需要家における流体の利用動向を取得する利用動向取得部と、
前記利用動向取得部で取得される流体の利用動向に基づいて、1又は複数の流体供給ユニットの前記インバータが前記モータを制御する際のパラメーターを演算する演算部と、を含
み、
前記利用動向取得部は、流体の利用動向を直接的に計測するセンサと、流体の利用動向を間接的に計測するセンサとを含み、
前記利用動向取得部は、流体の利用動向を間接的に計測するセンサとして、電力計、又は、ガス流量計を含み、需要家における電気の使用量に関するデータ、又は、需要家におけるガスの使用量に関するデータを取得する、
流体供給装置。
【請求項2】
前記利用動向取得部は、流体の利用動向を間接的に計測するセンサとして、ドアの開閉を検知するセンサを含み、需要家空間に対する人の入退に関するデータを取得する、
請求項1に記載の流体供給装置。
【請求項3】
前記利用動向取得部は、流体の利用動向を間接的に計測するセンサとして、照明の点灯状況を検知するセンサを含み、需要家における人の活動に関するデータを取得する、
請求項1又は請求項2に記載の流体供給装置。
【請求項4】
建物内に設置される1又は複数の流体供給ユニット、及び、前記建物内の需要家における流体の利用動向を取得する利用動向取得部と、通信手段を介して接続されるコンピュータであって、
前記通信手段を介して前記利用動向取得部から建物内の需要家における流体の利用動向を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記流体の利用動向に基づいて、1又は複数の流体供給ユニットのインバータがモータを制御する際のパラメーターを演算する演算部と、
前記通信手段を介して前記複数の流体供給ユニットへ前記演算部が演算した前記パラメーターを送信する送信部と、を含
み、
前記利用動向取得部は、流体の利用動向を直接的に計測するセンサと、流体の利用動向を間接的に計測するセンサとを含み、
前記利用動向取得部は、流体の利用動向を間接的に計測するセンサとして、電力計、又は、ガス流量計を含み、需要家における電気の使用量に関するデータ、又は、需要家におけるガスの使用量に関するデータを取得する、
コンピュータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体供給装置の一例である給水装置は、例えば、マンションやオフィスビル等にて水(
流体)を供給するための装置として広く使用されている。給水装置は、一般に、水を移送
するポンプと、ポンプの運転を制御する制御部と、ポンプの吐出側の給水配管に設けられ
た圧力タンクとを備える。
【0003】
最近では、高層建築物への給水に直結式の給水装置が使用されつつある。このような給
水装置においては、低層階用の第1の給水ユニットと、高層階用の第2の給水ユニットと
を備えており、これらは直列に連結されている。第1の給水ユニットの吸込口は水道本管
に直結されており、建物の低層階には、この第1の給水ユニットによって水が供給される
。一方、第2の給水ユニットは建物の中間層階に配置され、第1の給水装置から供給され
た水を増圧して高層階に供給する。
【0004】
なお、給水ユニットの内部基本構成は、連結されず単独で用いられる給水装置と同様の
ものであるが、本明細書では、給水装置は直結された複数の給水ユニットによって構成さ
れているものと定義する。また、給水ユニットが直結される段数は、上記のように2段に
限らず、3段以上であってもよい。また、給水ユニットは、本明細書では流体供給ユニッ
トの一例として定義される。
【0005】
例えば、特許文献1(特開2020-45747号公報)には、複数の給水装置によっ
て建物内の給水対象に給水する給水システムにおいて、複数の給水装置は、建物の電力線
を通信回線として利用する電力線通信により互いに通信可能である給水システムが記載さ
れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の給水ユニットによって建物内に給水する給水装置においては、第1の給水ユニッ
トと第2の給水ユニットとが通信によって互いの運転状態をやりとりするように構成され
ている。これにより、それぞれの給水ユニットは互いの給水ユニットの運転状態に応じて
自己の運転制御を行うことが可能となる。特許文献1記載の発明では、通信の異常が検出
されると、第2の給水ユニットにおけるポンプが、通常の始動速度より緩やかな始動速度
で始動するように構成されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の従来技術においては、各給水ユニットは、通信回線を
介して互いのポンプの吐出側の圧力に係るデータや、ポンプを駆動するモータの回転数に
係るデータなどを交換して、自らの給水ユニット内の制御を行うようにしているが、基本
的にはそれぞれの給水ユニットは独立的に運転されているため、給水装置として全体を俯
瞰的にみた効率的な運用を可能とするものではなかった。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑み、互いの給水ユニットの運転状況に係るデータを参照す
るだけではなく、より広汎なデータを参照することで運用を行う流体供給装置を提供する
ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の態様に係る流体供給装置は、
インバータによって回転が制御されるモータと、前記モータを駆動源とし流体を移送す
るポンプと、を有し、建物内に設置される流体供給ユニットを1又は複数含む流体供給装
置であって、
前記建物内の需要家における流体の利用動向を取得する利用動向取得部と、
前記利用動向取得部で取得される流体の利用動向に基づいて、1又は複数の流体供給ユ
ニットの前記インバータが前記モータを制御する際のパラメーターを演算する演算部と、
を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流体供給装置によれば、建物内の需要家における流体の利用動向を取得する利
用動向取得部(センサ群45)で取得される流体の利用動向に基づいて、給水ユニットの
運転のための制御の設定が演算されるので、給水装置全体を俯瞰的にみた効率的な運用が
可能となる。
【0012】
上記以外の課題、構成及び効果は、後述する発明を実施するための形態にて明らかにさ
れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る給水装置10(流体供給装置)が適用された建物1の一例を示す模式図である。
【
図2】給水装置10における給水ユニットWSU
nの構造を説明する模式図である。
【
図3】コンピュータ200の一例を示すハードウエア構成図である。
【
図4】需要家に設けられる計測器・センサ等を例示するイメージ図である。
【
図5】需要家に設けられる計測器・センサ等で取得されるデータの一例を示すテーブルである。
【
図6】本発明に係る給水装置10(流体供給装置)の制御の概念を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。以下では、
本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説
明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術による
ものとする。
【0015】
本発明に係る給水装置10は、例えば、マンション、オフィスビル、公共施設、商業施
設、工場等の建物や施設に設置され利用され得る。
図1は本発明に係る給水装置10が適
用された建物1の一例を示す模式図である。本発明に係る給水装置10においては、直結
式の増圧給水システムが採用されている。このような直結式の増圧給水システムは、高層
建築物(例えば、16階以上の建物)に使用されるものである。
【0016】
なお、以下の実施形態では、1棟の建物1に対して本発明に係る給水装置10を適用し
た例に基づいて説明を行うが、本発明の考え方を複数棟の建物に対して鳥瞰的に適用する
ことも可能である。また、本発明に係る概念は、給水ユニット単体における制御等にも適
用し得るものである。
【0017】
図1に示すように、この給水装置10は、水道本管2に連結された第1の給水ユニット
WSU
1と、第1の給水ユニットWSU
1に直列に連結された第2の給水ユニットWSU
2と、第2の給水ユニットWSU
2に直列に連結された第3の給水ユニットWSU
3とを
有している。第1の給水ユニットWSU
1は、グランドレベルまたは地下に設置されてお
り、第2の給水ユニットWSU
2は、例えば、建物1の16階に設置されており、第3の
給水ユニットWSU
3は、例えば、建物1の30階に設置されている。
【0018】
本実施形態では、給水装置10が
図1に示すように3段の給水ユニットWSUが連結さ
れた例にて説明するが、給水ユニットWSUの段数は2段でもよいし、4段以上であって
もよい。また、本実施形態では、給水ユニットを一般化してWSU
nとして説明すること
がある。この場合、建物1のより下層側に設置される給水ユニットWSU
nのnの数字が
小さいものとする。また、給水ユニットWSU
nの吐出側に連結される配水管には7
nの
参照符号をふり、配水管7
nから分岐し水を建物1内の各需要家へ導く管を分岐枝管9
n
と称する。
【0019】
また、本実施形態では、給水ユニットWSUnは、流体として水を供給する場合を例に
して説明するが、給水ユニットWSUnは、燃料及び薬品等の水以外の液体、並びに、ガ
ス、水素及び酸素等の気体を含む流体を供給するものでもよい。
【0020】
第1の給水ユニットWSU1の吸込口は、配水管70を介して水道本管2に接続されて
いる。この配水管70中で、 給水ユニットWSU1の吸込口の前段には減圧式逆流防止
器8が接続されている。この減圧式逆流防止器8は、水道本管2への水の逆流を確実に防
止するために設置することが義務付けられているものである。なお、減圧式逆流防止器と
は、逃し弁が配置された中間室を2つの逆止弁が挟むように配置された構成を有する逆流
防止器である。
【0021】
第1の給水ユニットWSU1の吐出口と第2の給水ユニットWSU2の吸込口とは配水
管71によって連結されており、この配水管71は、建物1の15階まで(低層階)の各
需要家に分岐枝管91を介して連通している。
【0022】
第2の給水ユニットWSU2の吐出口と第3の給水ユニットWSU3の吸込口とは配水
管72によって連結されており、この配水管72は、建物1の16階から29階まで(中
層階)の各需要家に分岐枝管92を介して連通している。
【0023】
第3の給水ユニットWSU3の吐出口には、配水管73が接続されており、この配水管
73は、建物1の30階を含め、これより高い階(高層階)の各需要家に分岐枝管93を
介して連通している。
【0024】
第1の給水ユニットWSU1は、水道本管2からの水を増圧して建物1の低層階の各需
要家に水を供給すると共に給水ユニットWSU2に水を供給し、第2の給水ユニットWS
U2は、第1の給水ユニットWSU1から移送された水を増圧して建物1の中層階の各需
要家に水を供給すると共に第3の給水ユニットWSU3に水を供給し、第3の給水ユニッ
トWSU3は、第2の給水ユニットWSU2から移送された水を増圧して建物1の高層階
の各需要家に水を供給するようになっている。
【0025】
図2は給水装置10における給水ユニットWSU
nの構造を説明する模式図である。
図2(A)は従来例に係る給水ユニットWSU
nの構造を示しており、
図2(B)は本発
明に係る給水ユニットWSU
nに好適な構造を示している。なお、
図2(A)に示す構造
の給水ユニットWSU
nも、ネットワークモジュールNWM
nに相当する構成を付加する
ことで、本発明に係る給水装置10の給水ユニットWSU
nとして用い得る。配管系統に
関しては、
図2(B)の構造は、
図2(A)の構造から一部の構成を省いたものとなって
いる。以下、配管系統に関しては、特に
図2(A)の構造を基本として説明する。
【0026】
図2(A)に示すように、給水ユニットWSU
nは、配水管7
n-1はを介して水道本管
2や、給水ユニットWSU
n-1と連結されるポンプP
nと、このポンプP
nを駆動する駆
動源としてのモータM
nと、モータM
nの回転速度を増減するインバータINV
nと、ポ
ンプP
nの吸込側に配置された吸込側圧力センサPS
n1と、ポンプP
nの吐出側に配置
された逆止弁CV
nと、逆止弁CV
nの吐出側に配置されたフロースイッチSW
n、吐出
側圧力センサPS
n2、および圧力タンクPT
nとを備えている。これら構成要素は、例
えば、キャビネット内に収容されている。本実施形態では、1組のポンプP
n、モータM
n、インバータINV
n、逆止弁CV
n、およびフロースイッチSW
nが配置されている
が、2組以上のポンプ、モータ、インバータ、逆止弁、およびフロースイッチを並列的に
設けてもよい。
【0027】
逆止弁CVnは、ポンプPnの吐出口に接続された吐出管に設けられており、ポンプP
nが停止したときの水の逆流を防止するための弁である。フロースイッチSWnは吐出管
を流れる水の流量が所定の値にまで低下したことを検知する流量検知器である。吸込側圧
力センサPSn1は、給水ユニットWSUnの吸込側圧力を測定するための水圧測定器で
ある。吐出側圧力センサPSn2は、給水ユニットWSUnの吐出側圧力を測定するため
の水圧測定器である。圧力タンクPTnは、ポンプPnが停止している間の吐出側圧力を
保持するための圧力保持器である。圧力タンクPTnは、容器内部を空気室と水室とに分
ける隔膜(不図示)を有している。空気室は、その内部に空気が予め封入されており、水
室は、前記吐出管に連通される。
【0028】
給水ユニットWSU
nは、給水動作を制御する制御部CU
nをさらに備えており、イン
バータINV
n、フロースイッチSW
n、吸込側圧力センサPS
n1、吐出側圧力センサ
PS
n2は、制御部CU
nに信号線を介して接続されている。図面において一点鎖線はデ
ータ通信線を示している。
図2(A)の構造の下では、フロースイッチSW
nにより水の
流量が所定の値にまで低下したことが検知されると、制御部CU
nはポンプP
nの運転速
度を一時的に上げるようインバータINV
nに指令を出し、吐出側圧力を所定の停止圧力
にまで昇圧してからポンプP
nの運転を停止させるようになっている。一方、吐出側圧力
が所定の始動圧力にまで低下すると、制御部CU
nはポンプP
nの運転を開始するようイ
ンバータINV
nに指令を出す。この始動圧力は、ポンプP
nを始動させるトリガーとな
るしきい値である。
【0029】
図2(A)の給水ユニットWSU
nにおいては、フロースイッチSW
nや吐出側圧力
センサPS
n2の出力信号に基づいて、ポンプP
nがインバータINV
nによって可変速
駆動される。ポンプP
nの運転状況は、制御部CU
nからインバータINV
nへ送信され
る制御信号(ポンプP
nのON又はOFFの制御指令値、モータM
nの回転数の制御指令
値等、モータM
nに印加する電圧とその周波数等)に基づいて取得することができる。ま
た、インバータINV
nの出力周波数からポンプP
nの運転状況を取得してもよい。また
、制御部CU
nは、他の給水ユニットWSUと制御情報を交換可能とされている。
【0030】
一般的には、吐出側圧力センサPSn2により測定された圧力信号が設定された目標圧
力と一致するようにポンプPnの運転速度を制御してポンプPnの吐出側圧力が一定にな
るように制御する吐出圧力一定制御や、ポンプPnの吐出側圧力の目標値を適切に変化さ
せることにより末端の給水栓における供給水圧を一定に制御する推定末端圧力一定制御な
どが行われる。これらの制御によれば、その時々の需要水量に見合った回転速度でポンプ
Pnが駆動されるので、省エネルギーを達成することができる。
【0031】
一方、
図2(B)の本発明の場合、制御部CU
nは、ネットワークモジュールNWM
n
とデータ通信可能に接続されており、さらにネットワークモジュールNWM
nはネットワ
ーク240とデータ通信可能とされている。これにより、例えば、制御部CU
nからコン
ピュータ200に対しては、吐出側圧力センサPS
n2による検知結果に係るデータを送
信することが可能となり、また、コンピュータ200から制御部CU
nに対しては、イン
バータINV
nがモータM
nを制御する際のパラメーター(インバータのON/OFF、
モータM
nへの回転数指令値、周波数、電圧等)を送信することが可能となる。なお、コ
ンピュータ200は、汎用のものであってもよいし、本発明に係る給水装置10に特化し
た専用のものであってもよい。
【0032】
図1に示されているように、本発明に係る給水装置10を構成する給水ユニットWSU
1、給水ユニットWSU
2、給水ユニットWSU
3は全て、ネットワーク240を介して
コンピュータ200とデータ通信可能に接続されており、給水装置10はコンピュータ2
00によって制御可能とされている。なお、本実施形態では、各給水ユニットWSU
nが
ネットワーク240を介してコンピュータ200と接続する例を示しているが、各給水ユ
ニットWSU
nをネットワーク240を介することなくコンピュータ200と接続するよ
うにしてもよい。
【0033】
各需要家においては、水を含めた流体に係るデータの検出や、その他需要家における動
向などを検知することができるセンサ群45が設けられており、コンピュータ200には
これらセンサ群45で収集されたデータが、ネットワーク240を介して送信されるよう
になっている。コンピュータ200では、センサ群45で収集されたデータを受信して、
これらに基づいて、給水装置10における各給水ユニットWSUnを制御する際の設定を
演算する。
【0034】
上記のようなセンサ群45に含まれるセンサの一例を説明する。各需要家に水を供給す
る分岐枝管9nには、それぞれの供給先にて使用された水の使用量を計測する流量計47
が設けられる。複数の供給先が存在する場合、流量計47は、複数の供給先の流量を合計
した合計使用流量を測定することもできる。また、流量計47としては、例えば、水道メ
ータを使用することもできる。流量計47で計測されたデータは、ネットワーク240を
介してコンピュータ200に送信される。なお、センサ群45はこのような流量計47に
限らず、より広汎な需要家に係るデータを取得することを意図したものであり、センサ群
45の他の例については後述する。
【0035】
図3は、コンピュータ200の一例を示すハードウエア構成図である。コンピュータ2
00としては、汎用のもの、専用のものいずれも利用することができる。給水ユニットW
SU
nにおける制御部CU
nもコンピュータ200を利用することができる。
【0036】
コンピュータ200は、
図2に示すように、その主要な構成要素として、バス210、
プロセッサ212、メモリ214、入力デバイス216、表示デバイス218、ストレー
ジ装置220、通信I/F(インターフェース)部222、外部機器I/F部224、I
/O(入出力)デバイスI/F部226、及び、メディア入出力部228を備える。なお
、上記の構成要素は、コンピュータ200が使用される用途に応じて適宜省略されてもよ
い。
【0037】
プロセッサ212は、1つ又は複数の演算処理装置(CPU、MPU、GPU、DSP
等)で構成され、コンピュータ200全体を統括する制御部として動作する。メモリ21
4は、各種のデータ及びプログラム230を記憶し、例えば、メインメモリとして機能す
る揮発性メモリ(DRAM、SRAM等)と、不揮発性メモリ(ROM、フラッシュメモ
リ等)とで構成される。
【0038】
入力デバイス216は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、電子ペン等で構成さ
れる。表示デバイス218は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子
ペーパー、プロジェクタ等で構成される。入力デバイス216及び表示デバイス218は
、タッチパネルディスプレイのように、一体的に構成されていてもよい。ストレージ装置
220は、例えば、HDD、SSD等で構成され、オペレーティングシステムやプログラ
ム230の実行に必要な各種のデータを記憶する。
【0039】
通信I/F部222は、インターネットやイントラネット等のネットワーク240に有
線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って他のコンピュータとの間でデータの
送受信を行う。外部機器I/F部224は、プリンタ、スキャナ等の外部機器250に有
線又は無線により接続され、所定の通信規格に従って外部機器250との間でデータの送
受信を行う。なお、外部機器I/F部224の無線通信の手段としては、典型的には国際
規格の通信手段が用いることができる。国際規格の通信手段としては、IEEE802.
15.4、IEEE802.15.1、IEEE802.15.11a、11b、11g
、11n、11ac、11ad、ISO/IEC14513-3-10、IEEE802
.15.4gなどの方式がある。また、外部機器I/F部224の無線通信の手段として
、Bluetooth(登録商標)、BluetoothLowEnergy、Wi-F
i、ZigBee(登録商標)、Sub-GHz、EnOcean(登録商標)等を用い
ることもできる。I/OデバイスI/F部226は、各種のセンサ、アクチュエータ等の
I/Oデバイス260に接続され、I/Oデバイス260との間で、例えば、センサによ
る検出信号やアクチュエータへの制御信号等の各種の信号やデータの送受信を行う。メデ
ィア入出力部228は、例えば、DVDドライブ、CDドライブ等のドライブ装置で構成
され、DVD、CD等のメディア270に対してデータの読み書きを行う。
【0040】
上記構成を有するコンピュータ200において、プロセッサ212は、プログラム23
0をメモリ214のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス210を介してコンピュ
ータ200の各部を制御する。なお、プログラム230は、メモリ214の代わりに、ス
トレージ装置220に記憶されていてもよい。プログラム230は、インストール可能な
ファイル形式又は実行可能なファイル形式でCD、DVD等の非一時的な記録媒体に記録
され、メディア入出力部228を介してコンピュータ200に提供されてもよい。プログ
ラム230は、通信I/F部222を介してネットワーク240経由でダウンロードする
ことによりコンピュータ200に提供されてもよい。また、コンピュータ200は、プロ
セッサ212がプログラム230を実行することで実現する各種の機能を、例えば、FP
GA、ASIC等のハードウエアで実現するものでもよい。
【0041】
コンピュータ200は、例えば、据置型コンピュータや携帯型コンピュータで構成され
、任意の形態の電子機器である。コンピュータ200は、クライアント型コンピュータで
もよいし、サーバ型コンピュータやクラウド型コンピュータでもよい。
【0042】
次に、需要家において各種データを取得するセンサ群45について説明する。
図4は需
要家に設けられる計測器・センサ等を例示するイメージ図であり、需要家であるマンショ
ン等の一室内を斜視的に表している。また、
図5は需要家に設けられる計測器・センサ等
で取得されるデータの一例を示すテーブルである。センサ群45において主となるものは
、流体(本実施形態では水)の流量を直接的に計測するものとなるが、これに限らず、本
発明では、各需要家における流体の利用動向を間接的にでも把握可能な計測器・センサ等
も含まれる。これらのセンサ群45を、流体の利用動向取得部とも称する。
【0043】
センサ群45として、主となるものは、各需要家の分岐枝管9nに接続されている流量
計47及び圧力計49であり、これらによって計測された計測データはコンピュータ20
0に送信される。分岐枝管9nの末端に設けられている各需要家における圧力計49で取
得される流体(水)の圧力データは、各需要家における流体(水)の出具合などの流体(
水)の使用感に直結するデータであり、センサ群45で取得され得るデータのうちでも最
も重要なもの一つである。
【0044】
また、センサ群45には、水道以外のライフラインに係るデータを取得するものを含め
ることができる。図に示す需要家には、電力供給線50、ガス配管52が通じているが、
それぞれに電力計54、ガス流量計56が取り付けられており、それぞれで取得される電
力データ、ガス流量データもコンピュータ200に送信される。着目する流体(水)以外
の使用量に関するデータ、すなわち、電力計54や、ガス流量計56で取得される電気の
使用量に関するデータや、ガスの使用量に関するデータは、需要家の流体(水)の使用量
との相関関係が大きいことという知見を得ており、本発明においては、各需要家における
流体の利用動向を把握する上でのデータとして利用している。
【0045】
さらに、センサ群45には需要内の各所における水の使用動向を検出する計測器を含め
ることができる。具体的には、センサ群45には、洗面台における水道の使用量を計測す
る洗面台水道流量計61、洗濯機における水道の使用量を計測する洗濯機水道流量計62
、浴室における水道の使用量を計測する浴室水道流量計63、台所における水道の使用量
を計測する台所水道流量計64、トイレにおける水道の使用量を計測するトイレ水道流量
計65などの計測器を含めることができる。これらで計測される流量データについても、
コンピュータ200に送信される。
【0046】
さらに、センサ群45には需要内の各所におけるドア等の開閉を検知するセンサを含め
ることができる。具体的には、センサ群45には、玄関のドアの開閉を検知する玄関ドア
開閉センサ67、浴室のドアの開閉を検知する浴室ドア開閉センサ(不図示)、シャワー
カーテンの開閉を検知するシャワーカーテンセンサ(不図示)、トイレのドアの開閉を検
知するトイレドア開閉センサ(不図示)を含めることができる。これらで取得される検知
データについても、コンピュータ200に送信される。例えば、浴室のドアの開閉に基づ
いて、人の入退室記録が把握できれば、その入退室記録から流体の使用流量を推測するこ
とが可能となる。本発明においては、玄関ドア開閉センサ67などの上記各センサで取得
され得る管理情報を、需要家空間に対する人の入退に関するデータと称する。
【0047】
さらに、センサ群45には需要内の各所における照明の点灯状況を検知するセンサを含
めることができる。具体的には、センサ群45には、浴室照明の点灯状態を検出する浴室
照明スイッチ状態検出センサ(不図示)、トイレの照明の点灯状態を検出するトイレ照明
スイッチ状態検出センサ(不図示)を含めることができる。これらで取得される検出デー
タについても、コンピュータ200に送信される。例えば、トイレの照明が点灯したこと
を把握できれば、それによりトイレにおける使用流量を推測することが可能となる。上記
のような照明の点灯状況を検出するセンサで取得されるデータは、需要家における人の活
動に関するデータとして、把握することができる。
【0048】
さらに、センサ群45には、需要家における流体の利用動向を間接的に推測可能な、図
4及び
図5に示されないものを含めることができる。例えば、流体の利用可能性がある各
室、すなわち、トイレ、浴室、台所等に人感センサを取り付け、その人感センサの検出結
果から使用流量を推測することができる。さらに、各室に設けられた電気メータによる電
気使用量又はガスメータによるガス使用量から使用流量を推測することも可能である。
【0049】
以上のように構成される本発明に係る給水装置10(流体供給装置)における制御につ
いて
図6を参照して説明する。
図6は給水装置10の主要構成を抜き出して示したもので
ある。
【0050】
これまで説明したようなセンサ群45によって収集された需要家における流体(本実施
形態では水)の利用動向はコンピュータ200に送信される。これに基づいてコンピュー
タ200は、それぞれの給水ユニットWSUnにおけるインバータINVnがモータMn
を制御する際のパラメーターを演算する。ここで、当該パラメーターとは、モータMnに
対する回転数指令値、周波数、電圧等を挙げることができる。先の演算結果は各給水ユニ
ットWSUnに送信される。
【0051】
図6の本実施形態の例では、インバータINV
1がモータM
1を制御する際のパラメー
ター、インバータINV
2がモータM
2を制御する際のパラメーター、インバータINV
3がモータM
3を制御する際のパラメーターが、コンピュータ200によって演算され、
演算された各パラメーターが、給水ユニットWSU
1、WSU
2、WSU
3に送信され、
各給水ユニットWSUにおけるインバータINVの制御に供される。なお、ここでは、3
つの給水ユニットWSUについての関係を説明したが、特許請求の範囲では複数の給水ユ
ニット(流体供給ユニット)の関係を表している。
【0052】
また、コンピュータ200は、受信したセンサ群45による計測データや検出結果に基
づいて、それぞれの給水ユニットWSUnにおけるインバータINVnの起動/停止のタ
イミングを演算して、演算の結果を各給水ユニットWSUnに送信する。インバータIN
Vnの起動/停止のタイミング例を説明する。本実施形態では、建物1が低層階、中層階
、高層階に分けられていることを説明したが、例えば、センサ群45により、高層階にお
ける流体の利用動向が上昇傾向にあることが判明した場合には、低層階や中層階における
給水ユニットWSU1、WSU2のインバータINV1、INV2を予め段階的に起動し
、給水ユニットWSU3への水の移送準備を行い、その後所定時間後に、給水ユニットW
SU3のインバータINV3を最大の設定で起動することなどを挙げることができる。ま
た、例えば、センサ群45により、低層階だけの流体の利用動向が上昇傾向にあることが
判明した場合には、給水ユニットWSU1のインバータINV1のみの起動を開始するこ
となどを挙げることができる。
【0053】
図6の本実施形態の例では、インバータINV
1、インバータINV
2、インバータI
NV
3それぞれが起動するタイミング、及び、停止するタイミングを演算し、それぞれを
給水ユニットWSU
1、WSU
2、WSU
3に送信する。給水ユニットWSU
1、WSU
2、WSU
3は、受信した起動/停止のタイミングに基づいて、インバータINV
1、イ
ンバータINV
2、インバータINV
3の起動/停止を行う。なお、ここでは、3つの給
水ユニットWSUについての関係を説明したが、特許請求の範囲では複数の給水ユニット
(流体供給ユニット)の関係を表している。
【0054】
また、コンピュータ200は、受信したセンサ群45による計測データや検出結果に基
づいて、それぞれのポンプPnの吐出側圧力センサPSn2の目標値を演算して、演算の
結果を各給水ユニットWSUnに送信する。
【0055】
図6の本実施形態の例では、吐出側圧力センサPS
12、吐出側圧力センサPS
22、
吐出側圧力センサPS
32の目標値がコンピュータ200で演算され、それぞれを給水ユ
ニットWSU
1、WSU
2、WSU
3に送信する。。給水ユニットWSU
1、WSU
2、
WSU
3は、吐出側圧力センサPS
12、吐出側圧力センサPS
22、吐出側圧力センサ
PS
32の目標値に基づいて、インバータINV
1、インバータINV
2、インバータI
NV
3の制御パラメーターを補正することなどができる。なお、ここでは、3つの給水ユ
ニットWSUにおける吐出側圧力センサPS
n2の関係を説明したが、特許請求の範囲で
は複数の給水ユニット(流体供給ユニット)の関係を表している。
【0056】
以上、本発明の流体供給装置(給水装置10)によれば、建物1内の需要家における流
体の利用動向を取得する利用動向取得部(センサ群45)で取得される流体の利用動向に
基づいて、給水ユニットの運転のための制御の設定が演算されるので、給水装置全体を俯
瞰的にみた効率的な運用が可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・建物
2・・・水道本管
7n・・・配水管
8・・・減圧式逆流防止器
9n・・・分岐枝管
10・・・給水装置(流体供給装置の一例)
45・・・センサ群
47・・・流量計
49・・・圧力計
50・・・電力供給線
52・・・ガス配管
54・・・電力計
56・・・ガス流量計
61・・・洗面台水道流量計
62・・・洗濯機水道流量計
63・・・浴室水道流量計
64・・・台所水道流量計
65・・・トイレ水道流量計
67・・・玄関ドア開閉センサ
200・・・コンピュータ
210・・・バス
212・・・プロセッサ
214・・・メモリ
216・・・入力デバイス
218・・・表示デバイス
220・・・ストレージ装置
222・・・通信I/F(インターフェース)部
224・・・外部機器I/F部
226・・・I/O(入出力)デバイスI/F部
228・・・メディア入出力部
230・・・プログラム
240・・・ネットワーク
250・・・外部機器
260・・・I/Oデバイス
270・・・メディア
WSUn(例:n=1,2,3)・・・給水ユニット(流体供給ユニットの一例)
NWMn(例:n=1,2,3)・・・ネットワークモジュール
CUn(例:n=1,2,3)・・・制御部
INVn(例:n=1,2,3)・・・インバータ
Mn(例:n=1,2,3)・・・モータ
Pn(例:n=1,2,3)・・・ポンプ
PSn1(例:n=1,2,3)・・・ポンプPnの吸込側圧力センサ
PSn2(例:n=1,2,3)・・・ポンプPnの吐出側圧力センサ
CVn(例:n=1,2,3)・・・逆止弁
SWn(例:n=1,2,3)・・・フロースイッチ
PTn(例:n=1,2,3)・・・圧力タンク