(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】濃縮システム、検査装置及び濃縮方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/02 20060101AFI20241024BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G01N1/02 B
G01N1/00 101R
(21)【出願番号】P 2021072141
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 安章
(72)【発明者】
【氏名】熊野 峻
(72)【発明者】
【氏名】師子鹿 司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 信二
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-183913(JP,A)
【文献】国際公開第2012/63796(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/64862(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/45649(WO,A1)
【文献】特開2010-139421(JP,A)
【文献】特許第7317958(JP,B2)
【文献】特開2022-75334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気流とともに回収された微粒子を遠心力によって濃縮するサイクロン濃縮部と、
前記サイクロン濃縮部の排気流路に設けられ、前記サイクロン濃縮部の内部空気を排気することで、前記サイクロン濃縮部の内部に渦巻状の気流である渦巻流を発生させる排気部と、
前記サイクロン濃縮部において前記渦巻流を停止させる気流停止部と、
前記サイクロン濃縮部で濃縮された前記微粒子を分析する分析部と、
前記分析部による分析結果に基づいて、前記気流停止部を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記分析部による所定の成分の検出によって、前記サイクロン濃縮部の内部気流を停止するよう前記気流停止部を制御する
ことを特徴とする濃縮システム。
【請求項2】
前記気流停止部は、前記排気流路に設けられるバルブであり、
前記制御部は、
前記分析部による所定の成分を検出に伴って、開弁している前記バルブを閉弁させる
ことを特徴とする請求項1に記載の濃縮システム。
【請求項3】
前記排気流路は第1の配管であり、
一方の端部が開放されており、他方の端部が前記第1の配管に接続されている第2の配管を有し、
前記気流停止部として、第1のバルブ及び第2のバルブが設けられ、
前記第1の配管において、前記第2の配管との接続部よりも、前記サイクロン濃縮部に近い側に前記第1のバルブが設けられ、
前記第2の配管に前記第2のバルブが設けられており、
前記制御部は、
前記分析部による所定の成分の検出に伴って、開弁している前記第1のバルブを閉弁すると共に、閉弁している前記第2のバルブを開弁する
ことを特徴とする請求項1に記載の濃縮システム。
【請求項4】
前記気流停止部は、前記分析部による所定の成分の検出に伴って、配管を介して接続されている前記サイクロン濃縮部と、前記排気部との間に間隙を設ける間隙部であり、
前記間隙部によって、前記間隙が設けられることで、前記間隙から前記排気部へ外気が導入される
ことを特徴とする請求項1に記載の濃縮システム。
【請求項5】
前記気流停止部は、前記制御部であり、
前記制御部は、
前記分析部による所定の成分を検出に伴って、前記排気部の駆動を停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の濃縮システム。
【請求項6】
検査対象に付着している微粒子を剥離するための圧縮空気を噴射する剥離部と、
前記圧縮空気によって前記検査対象から剥離された前記微粒子を回収する回収部と、
前記回収部によって回収された前記微粒子を濃縮する濃縮部と、
前記濃縮部によって濃縮された前記微粒子を集塵するフィルタ部と、
前記フィルタ部を加熱することで前記微粒子を加熱気化させる加熱部と、
加熱気化した前記微粒子の成分を分析する分析部と、
少なくとも前記濃縮部を制御する制御部と、
を有し、
前記濃縮部は、
気流とともに回収された微粒子を遠心力によって濃縮するサイクロン濃縮部と、
前記サイクロン濃縮部の排気流路に設けられ、前記サイクロン濃縮部の内部空気を排気することで、前記サイクロン濃縮部の内部に渦巻状の気流である渦巻流を発生させる排気部と、
前記サイクロン濃縮部において前記渦巻流を停止させる気流停止部と、
前記制御部は、
前記分析部による所定の成分の検出によって、前記サイクロン濃縮部の内部気流を停止するよう前記気流停止部を制御する
ことを特徴とする検査装置。
【請求項7】
前記気流停止部は、前記排気流路に設けられるバルブであり、
前記制御部は、
前記分析部による所定の成分を検出に伴って、開弁している前記バルブを閉弁させる
ことを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記排気流路は第1の配管であり、
一方の端部が開放されており、他方の端部が前記第1の配管に接続されている第2の配管を有し、
前記気流停止部として、第1のバルブ及び第2のバルブが設けられ、
前記第1の配管において、前記第2の配管との接続部より、前記サイクロン濃縮部に近い側に前記第1のバルブが設けられ、
前記第2の配管に前記第2のバルブが設けられており、
前記制御部は、
前記分析部による所定の成分の検出に伴って、開弁している前記第1のバルブを閉弁すると共に、閉弁している前記第2のバルブを開弁する
ことを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項9】
前記気流停止部は、前記分析部による所定の成分の検出に伴って、配管を介して接続されている前記サイクロン濃縮部と、前記排気部との間に間隙を設ける間隙部であり、
前記間隙が設けられることで、前記間隙から前記排気部へ外気が導入される
ことを特徴とする請求項6に記載の検査装置。
【請求項10】
前記気流停止部は、前記制御部であり、
前記制御部は、
前記分析部による所定の成分を検出に伴って、前記排気部の駆動を停止させる
ことを特徴とする請求項6に記載の検査装置
【請求項11】
気流とともに回収された微粒子を遠心力によって濃縮するサイクロン濃縮部と、
前記サイクロン濃縮部の排気流路に設けられ、前記サイクロン濃縮部の内部空気を排気することで、前記サイクロン濃縮部の内部に渦巻状の気流である渦巻流を発生させる排気部と、
前記サイクロン濃縮部において前記渦巻流を停止させる気流停止部と、
前記サイクロン濃縮部で濃縮された前記微粒子を分析する分析部と、
前記分析部による分析結果に基づいて、前記気流停止部を制御する制御部と、
を有する濃縮システムにおいて、
前記制御部が、
前記分析部による所定の成分の検出を判定する判定ステップと、
前記判定ステップによって、前記所定の成分が検出されると、前記サイクロン濃縮部の内部気流を停止するよう前記気流停止部を制御する気流停止ステップと、
を実行することを特徴とする濃縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮システム、検査装置及び濃縮方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的にテロの脅威が増している。特に爆発物は、日用品を原料とした強力な爆薬の製造方法がインターネットを介して拡散したことから、近年のテロにおいて使用されるケースが増えている。爆発物テロを防止する有効な手段の一つとして、爆発物検査機により隠蔽されている爆発物を発見することが知られている。この爆発物の検査方法として、次の2つが知られている。一方は爆発物の塊を見つけるバルク検査である。他方は微量の爆薬の痕跡を見つけるトレース検査である。
【0003】
バルク検査は、X線検査に代表される検査方法である。X線検査では、カバン内部の像が取得され、その形状や大きさ等を基に不審物が判別される。一方、トレース検査では、検査対象に付着している化学物質が化学的な分析手段により分析され、その成分が特定される。具体的には、トレース検査では、カバン等の検査対象に付着している微粒子を気流により剥離・回収し、その微粒子をサイクロンに捕集した後に分析することで爆薬の痕跡の有無が明らかにされる。そして、例えばカバンの表面から爆薬が検出された場合には、カバンの内部に爆薬が隠蔽されている可能性があると判断する。バルク検査とトレース検査は得られる情報が異なるため、その両方の検査方法を併用することによりセキュリティを向上できることが知られている。
【0004】
特許文献1には「認証対象2に付着する検出対象物質のガス及び/又は微粒子を送気部5からの気流で剥離させ、剥離した試料を吸引し、微粒子捕集部10で濃縮して捕集し、イオン源部21で試料のイオンを生成し、質量分析部23で質量分析する。得られた質量スペクトルから検出対象物質に由来する質量スペクトルの有無を判定し、その結果を表示部27に表示することで、認証対象2に付着した検出対象物質を連続的にリアルタイムで迅速かつ低誤報で検出する」分析装置及び分析方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、「筒状の微粒子保持部7と微粒子保持部の上部から吸引し、微粒子保持部内においてサイクロン現象を発生させる吸引配管801と、微粒子保持部の側面に接続して微粒子を含む試料を供給する供給配管5と、微粒子保持部の下部に接続し微粒子保持部内への気体流量を制御して、回転運動する微粒子を微粒子保持部内において所定時間保持した後に沈降させる流量制御部12と、沈降した前記微粒子を捕集し加熱する加熱捕集部9と、加熱捕集部に配管を介して接続し、加熱捕集部による加熱により微粒子から気化した物質を分析する分析部19と、を含む」物質の分析装置及び分析方法が開示されている。
【0006】
そして、特許文献3には、「ベルトコンベア12の移動に伴って被検体10がX線検査装置14の検査領域に入ったことがセンサ18aによって検知されると、危険物検知装置16内のコロナ放電用電源が一定時間オンになり、被検体10に付着されていた物質を含む気体試料が吸引部20、気体試料導入配管22を介して危険物検知装置16内に導入され、導入された気体試料がイオン化され、イオン化された気体試料が分析器28cで分析され、この分析結果を基にデータ処理装置24において気体試料に危険物が含まれているか否かの判定が行われ、判定結果が画面上に表示され、被検体10が出口用センサ18bで検知されると、コロナ放電用電源がオフになる」危険物検知システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-135329号公報
【文献】特開2014-174074号公報
【文献】特開2004-28675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
トレース検査では、爆薬の検出後、爆薬由来の信号がしばらく出現し続けるという課題がある。このため、従来のトレース検査を行う危険物検査装置では、次の検査対象の検査を始める前に、爆薬由来の信号が低減するのを待たなければならない。これにより、従来のトレース検査を行う危険物検査装置はスループットの低下が生じるという課題がある。空港等、検査数が多い検査場では、スループットが低いことにより検査待ちの行列等が生じるおそれがある。
【0009】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、検査効率の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するため、本発明は、気流とともに回収された微粒子を遠心力によって濃縮するサイクロン濃縮部と、前記サイクロン濃縮部の排気流路に設けられ、前記サイクロン濃縮部の内部空気を排気することで、前記サイクロン濃縮部の内部に渦巻状の気流である渦巻流を発生させる排気部と、前記サイクロン濃縮部において前記渦巻流を停止させる気流停止部と、前記サイクロン濃縮部で濃縮された前記微粒子を分析する分析部と、前記分析部による分析結果に基づいて、前記気流停止部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記分析部による所定の成分の検出によって、前記サイクロン濃縮部の内部気流を停止するよう前記気流停止部を制御することを特徴とする。
その他の解決手段は実施形態中において適宜記載する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検査効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る濃縮部の構成を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る危険物探知装置の構成を示す図である。
【
図3】第1実施形態におけるトレース検査部の構成を示す図である。
【
図4】第1実施形態におけるトレース検査部の詳細な構造を示す図である
【
図5】第1実施形態におけるトレース検査システムの構成を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るトレース検査部の動作手順を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態に係る濃縮部の構成を示す図である。
【
図8】第2実施形態におけるトレース検査システムの構成を示す図である。
【
図9】第2実施形態における制御装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図10】第3実施形態に係る濃縮部の構成を示す図である。
【
図11】第3実施形態における制御装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図12】第4実施形態に係る濃縮部の構成を示す図である。
【
図13】第4実施形態に係る制御装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図14】第4実施形態における濃縮部の効果を示す図である。
【
図15】制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
[第1実施形態]
まず、
図1~
図6を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0015】
(濃縮部140)
図1は第1実施形態に係る濃縮部140の構成を示す図である。
濃縮部140は、吸気口131によって回収され、配管162を介して導入された微粒子Pを濃縮するものである。
【0016】
本実施形態では、濃縮部140に内部の渦巻流(内部渦巻流)によって微粒子Pの濃縮を行うサイクロン141が用いられる。
サイクロン141は、排気装置142により排気されている。排気装置142として、排気ファンや排気ポンプを使用することができる。特に断りがない場合、本実施形態では排気装置142として排気ファンが使用されているものとする。配管162を介して吸気された外気は、サイクロン141の内部で渦巻流を形成した後、排気装置142から排気される(
図1の白抜き矢印)。外気とともにサイクロン141に導入された微粒子Pは、遠心力と重力の効果で空気と分離し、フィルタ151に落下する。フィルタ151に落下し、集塵された微粒子Pは加熱装置152により加熱されることにより気化する。気化した微粒子Pは分析部150(
図3参照)に送られ、分析される。
【0017】
しかし、微粒子Pの粒径や比重によっては、微粒子Pがサイクロン141の内部を回転し続け、所定時間が経過してからフィルタ151に落下する場合がある。つまり、微粒子Pがサイクロン141の内部を回転し続け、容易にフィルタ151に落下しない場合がある。このような場合、吸気口131から導入された微粒子Pが少しずつフィルタ151に落下する。そのため、分析部150(
図3参照)が微粒子Pに爆薬が含まれることを検出した後、爆薬に由来する信号が出現し続けることがある。換言すれば、長い時間をかけて微粒子Pがフィルタ151に落下し続けるため、爆薬由来の信号が長時間にわたって出力され続けることになる。信号が出力され続けている間は、次の検査ができないため、検査のスループット低下が生じる。
【0018】
そこで、本実施形態では、サイクロン141と排気装置142とを接続する配管164に気流停止部180が設けられている。そして、分析部150(
図3参照)による爆薬(所定の成分)の検出をトリガとして、気流停止部180はサイクロン141の内部渦巻流を停止するよう動作する。
【0019】
第1実施形態では、気流停止部180の一例としてバルブ181が設けられている。そして、爆薬の検出をトリガとして、バルブ181が閉弁することにより、サイクロン141の排気が停止し、サイクロン141の内部渦巻流も停止する。そして、サイクロン141の内部を回転していた微粒子Pの回転が停止し、フィルタ151に速やかに落下する。
【0020】
フィルタ151は分析部150(
図3参照)と接続している加熱装置152の内部に、落下した微粒子Pを捕集可能に設置されている。フィルタ151に落下した微粒子Pは加熱装置152によって200℃程度に加熱され、気化した後、配管163を介して分析部150(
図3参照)へ送られる。
【0021】
前記したように、爆薬の検出をトリガとして、バルブ181が閉弁することにより、サイクロン141の内部渦巻流も停止する。この停止にともなって、内部渦巻流による回転エネルギを失った微粒子Pは、速やかにフィルタ151へ落下する。これにより、爆薬に由来する信号を速やかに低減することができる。この結果、速やかに次の検査対象の検査を行うことができ、検査のスループットを向上させることができる。なお、内部渦巻流の強制停止によってフィルタ151に落下しきれなかった微粒子Pがサイクロン141の内部に付着する可能性がある。しかし、サイクロン141の内部傾斜は大きいため、サイクロン141の内部に付着する微粒子Pの量は極微量であり、検査結果に影響を与えるものではない。
(危険物検査装置1)
図2は、第1実施形態に係る危険物検査装置1の構成を示す図である。
危険物検査装置1は、トレース検査装置100と、バルク検査装置201とを備えている。
まず、検査対象である荷物Bが、ベルトコンベアに代表される搬送部202の上に載置される。すると、搬送部202によって、載置された荷物Bが危険物検査装置1の内部へと搬送される。
図2に示すように、危険物検査装置1の内部にはトレース検査を行うためのトレース検査装置100が設けられている。そして、トレース検査装置100によって荷物Bの表面に付着した微粒子Pの成分が分析される。トレース検査装置100の詳細については後記する。
【0022】
また、
図2に示す例では、搬送部202に載せられた荷物Bが搬送される方向に沿って、バルク検査を行うためのバルク検査装置201が、トレース検査装置100と直列に設けられている。バルク検査装置201は、例えば、X線検査装置で構成される。このような構成とすることにより一度の検査で、荷物Bに付着した微粒子Pのトレース検査と、バルク検査による荷物Bの内部の検査とを略同時に行うことができる。なお、トレース検査とバルク検査の順番は、どちらが先に実施されてもよい。つまり、トレース検査装置100、及び、バルク検査装置201の設置順は
図2の通りでなくてもよい。また、バルク検査装置201はX線検査装置に限らない。さらに、バルク検査装置201(X線検査装置)は設置されなくてもよい。
【0023】
(トレース検査装置100の構成)
図3は、第1実施形態におけるトレース検査装置100の構成を示す図である。
トレース検査装置100は、剥離部110、圧縮空気供給部120、回収部130、濃縮部140、分析部150を有する。
前記したように、荷物Bが搬送部202に載置されると荷物Bがトレース検査装置100の内部に搬送される。トレース検査装置100の入り口付近には、荷物Bの接近を検知するセンサ101a,101b、が設けられている。なお、本実施形態では、センサ101a,101bのいずれか一方が発光部であり他方が受光部である分離型フォトセンサが想定されているが、反射型フォトセンサ等が用いられてもよい。後記するセンサ101c、101dも同様である。
【0024】
センサ101a,101bの間に荷物Bの先端が到達すると、センサ101a,101bが荷物Bを検知する。これによって、剥離部110に備えられているノズル111(
図4参照)による圧縮空気W(
図4参照)の噴射が開始される。荷物Bの表面に付着した微粒子P(
図1参照)をサンプリングするため、荷物Bは剥離部110と回収部130との間に搬送される。
【0025】
剥離部110は、配管161を介して、コンプレッサやガス配管等で構成される圧縮空気供給部120に接続されている。剥離部110は、剥離部110に備えられているノズル111(
図4参照)から荷物Bの表面に圧縮空気Wを噴射する。これにより荷物Bの表面に付着している微粒子P(
図1参照)が吹き飛ばされることにより、剥離される。
【0026】
剥離された微粒子Pは、回収部130から回収され、配管162を介して濃縮部140に送られる。濃縮部140は送られた微粒子Pを濃縮する。ここで、濃縮とは、単位体積当たりに対する微粒子Pの割合を増加させることである。具体的には、サイクロン141による遠心分離によって単位体積当たりに対する微粒子Pの割合が増加される。濃縮部140で濃縮された微粒子Pは配管163を介して分析部150に送られ分析される。
【0027】
また、剥離部110及び回収部130に対して出口側にもセンサ101c,101dが設けられている。荷物Bの先端がセンサ101c,101dの間に到達するとノズル111による圧縮空気Wの噴射が停止される。このようにすることで圧縮空気Wの消費量を低減することができる。
【0028】
(トレース検査装置100)
図4は、第1実施形態におけるトレース検査装置100の詳細な構造を示す図である
図4はトレース検査装置100を荷物Bの挿入方向から見た図である。なお、
図4において、
図1及び
図3と同様の構成については同一の符号を付している。
図4に示すように、剥離部110はノズル111を備えている。ノズル111は、配管161を介して圧縮空気供給部120(
図3参照)に接続されている。また、回収部130は吸気口131を備えている。そして、濃縮部140はサイクロン141、排気装置142、気流停止部180(第1実施形態ではバルブ181)を備えていている。吸気口131は配管162によってサイクロン141と接続している。また、排気装置142は配管164(
図1参照)によってサイクロン141と接続し、配管164には気流停止部180が設けられている。
【0029】
更に、分析部150はフィルタ151、加熱装置152、ヒータ153、質量分析計154を備えている。加熱装置152と質量分析計154は配管163で接続されている。加熱装置152の内部にはフィルタ151が設けられている。そして、加熱装置152から質量分析計154側の配管163の周囲にはヒータ153が覆設されている。
【0030】
なお、
図4に示すように、剥離部110と回収部130の間の気流が乱れないようドーム状の覆い(ドーム171と称する)が設けられている。この場合、
図4に示すようにノズル111はノズル支持部172によりドーム171に固定されるのが好ましい。なお、この例では、ドーム171は、危険物検査装置1の筐体とは別に設置されているものである。
【0031】
搬送部202により、検査対象である荷物Bの先端が剥離部110と回収部130との間に到達すると、剥離部110に設けられたノズル111から圧縮空気Wが噴射される。前記したように、圧縮空気Wの噴射は、センサ101a,101b(
図3参照)が荷物Bを検知することによって行われる。荷物Bの上面や取っ手B1に付着している微粒子Pは、圧縮空気Wにより吹き飛ばされ、回収部130に設けられた吸気口131から吸い込まれる。吸い込まれた微粒子Pは、配管162を介して濃縮部140に導入される。濃縮部140を構成するサイクロン141、排気装置142、バルブ181(気流停止部180)については説明済みであるため、ここでの説明を省略する。同様に、フィルタ151、及び、加熱装置152についても説明済みであるため、ここでの説明を省略する。
【0032】
加熱装置152よって気化された微粒子Pの化学物質はヒータ153により180℃程度に加熱されている配管163を介して質量分析計154に導入される。質量分析計154では、気化した化学物質の分析が行われ、爆薬が検出された場合、制御装置3が発報部190(
図5参照)にアラームを発報する等の処理を行わせる。
【0033】
(トレース検査システムZ)
図5は、第1実施形態におけるトレース検査システムZの構成を示す図である。適宜、
図4を参照する。
図5に示すように、トレース検査システムZにおいて、制御装置3は信号ライン31を介して、トレース検査装置100のセンサ101a~101dによる荷物Bの検出信号を受信する。また、制御装置3は、剥離部110、圧縮空気供給部120、濃縮部140を制御する。また、制御装置3は分析部150による分析結果を受け取る。さらに、制御装置3は、気流停止部180(第1実施形態ではバルブ181)、発報部190、搬送部202を制御する。
【0034】
制御装置3からの指示により、各部は所望のタイミングで所望の動作をするよう制御されている。
即ち、制御装置3が圧縮空気供給部120の制御を行うことで、剥離部110を構成するノズル111による圧縮空気Wの噴射の制御が行われる。例えば、制御装置3は、ノズル111に付随するバルブ(不図示)の開閉を制御することで剥離部110の制御を行う。
また、制御装置3は排気装置142を制御することにより、サイクロン141の内部渦巻流の制御を行う。
そして、制御装置3は分析部150による微粒子Pの成分の分析結果を受け取る。さらに、制御装置3は、微粒子Pの成分に爆薬成分(所定の成分)が検出されると、気流停止部180(第1実施形態ではバルブ181)を制御することで、サイクロン141の内部渦巻流を停止する。
【0035】
また、発報部190は、分析部150が爆薬を検出した場合に、制御装置3の指示により発報を行う。発報部190は、光、音、図示しないモニタへの表示等で検査員に爆薬の検出を通知する。
さらに、制御装置3は搬送部202の駆動のON・OFF等を制御する。
【0036】
(フローチャート)
図6は、第1実施形態に係るトレース検査装置100の動作手順を示すフローチャートである。適宜、
図1、
図4及び
図5を参照する。
まず、制御装置3はバルブ181が閉弁状態であれば、バルブ181を開弁する(S101)。なお、ステップS101の段階では排気装置142は停止している。
そして、搬送部202は荷物Bを搬送する(S102)。
続いて、制御装置3はセンサ101a,101bが荷物Bを検知したか否かを判定する。つまり、制御装置3は荷物Bが剥離部110と回収部130との間に接近しているか否かを判定する(S103)。
センサ101a,101bが荷物Bを検知していない場合(S103→No)、制御装置3はステップS103へ処理を戻す。
【0037】
センサ101a,101bが荷物Bを検知した場合(S103→Yes)、制御装置3が排気装置142を動作させることで、吸気口131による外気の吸気が開始される(S104)。
そして、制御装置3はノズル111から圧縮空気Wを噴射させる(S105)。なお、ステップS104とステップS105は同時に行われてもよいし、どちらかが先に行われてもよい。
【0038】
そして、制御装置3は分析部150によって爆薬(所定の成分)が検出されたか否かを判定する(S106)。つまり、制御装置3は、分析部150によって微粒子Pの成分から爆薬成分が検出されたか否かを判定する。
分析部150によって爆薬が検出された場合(S106→Yes)、制御装置3はバルブ181を閉弁する(S111)。ステップS111の段階で排気装置142は駆動したままであってもよいし、排気装置142を停止してもよい。
【0039】
ステップS111と略同時に、制御装置3はノズル111による圧縮空気Wの噴射を停止させる(S112)。
そして、制御装置3は発報部190による発報を行う(S113)。
なお、ステップS111~S113は略同時に行われることが望ましいが、所定時間の間隔で行われてもよい。また、ステップS111~S113が行われる順番は
図6に示す順番でなくてもよい。
【0040】
その後、作業員は、爆薬が検出された荷物Bに対し、再検査、開封検査、隔離等の適切な処理を行う(S114)。例えば、作業員は爆薬が検出された荷物Bを頑丈な容器に収容する。
制御装置3は、分析部150による爆薬の信号をモニタし、爆薬の信号が所定の値未満となったか否かを判定する(S115)。
爆薬の信号が所定の値以上である場合(S115→No)、制御装置3はステップS115へ処理を戻す。
爆薬の信号が所定の値未満である場合(S115→Yes)、制御装置3は処理を終了する。これによって、次の荷物Bの検査が可能になる。なお、ステップS115の処理が行われるまでに制御装置3は排気装置142を停止する。
【0041】
一方、ステップS106において、分析部150で爆薬が検出されない場合(S106→No)、制御装置3は、センサ101c,101dが荷物Bを検出したか否かを判定する。つまり、制御装置3は、荷物Bが剥離部110と回収部130との間を通過したか否かを判定する(S121)。
センサ101c,101dが荷物Bを検出していない場合(S121→No)、制御装置3はステップS121へ処理を戻す。
センサ101c,101dが荷物Bを検出した場合(S121→Yes)、制御装置3は吸気口131による吸気を停止する(S122)。具体的には制御装置3が排気装置142の動作を停止させる。
そして、制御装置3はノズル111による圧縮空気Wの噴射を停止する(S123)。ステップS122,S123は同時に行われてもよいし、どちらかが先に行われてもよい。
その後、荷物Bの所有者が搬送部202から荷物Bを取り出す(S124)。そして、制御装置3は処理を終了する。
【0042】
第1実施形態によれば、分析部150が爆薬を検出すると、気流停止部180によってサイクロン141の内部渦巻流が停止される。サイクロン141の内部渦巻流が停止することにより、サイクロン141の内部を回転している微粒子Pが回転エネルギを失い、フィルタ151に速やかに落下する。従って、爆薬検出後、微粒子Pに由来する信号が速やかに減衰する。これにより、第1実施形態に係るトレース検査装置100は、荷物Bの検査間の時間を短縮することができ、検査のスループット(即ち、検査効率)を大幅に向上することができる。
【0043】
さらに、第1実施形態によれば、サイクロン141と排気装置142とを接続する配管164に備えられているバルブ181が気流停止部180として設けられている。このような構成とすることで、既存のトレース検査装置100に対し容易に気流停止部180を追加することができる。
【0044】
[第2実施形態]
次に、
図7~
図9を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
図7は、第2実施形態に係る濃縮部140aの構成を示す図である。
図7において、
図1と同様の構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図7において、
図1と異なる点は配管164にバルブ181が設けられていない点である。
第2実施形態における濃縮部140aの動作については、
図8及び
図9を参照して説明する。
【0045】
(トレース検査システムZa)
図8は、第2実施形態におけるトレース検査システムZaの構成を示す図である。なお、
図8において、
図5と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図8に示すトレース検査システムZaにおいて、
図5と異なる点は、制御装置3aが気流停止部180の機能を有し、制御装置3aの制御対象としての気流停止部180が省略されている点である。
第2実施形態のトレース検査装置100aでは、分析部150によって爆薬が検出されると、気流停止部180としての制御装置3aが排気装置142の駆動を強制停止する。
【0046】
(フローチャート)
図9は第2実施形態における制御装置3aの動作手順を示すフローチャートである。
図9において、
図6と同様の処理については同一の符号を付して説明を省略する。また、適宜、
図5及び
図8を参照する。
まず、
図9に示すフローチャートはステップS101が省略されている点が
図6に示すフローチャートと異なっている。
そして、分析部150が爆薬を検出すると(S106→Yes)、この検出をトリガとして制御装置3aは速やかに排気装置142を強制停止する(S111a)。具体的には、排気装置142の電源をOFFにする等の方法で排気ファンを停止させる。排気装置142が排気ポンプで構成されている場合、制御装置3aは排気ポンプの電源をOFFにする。その他の処理は
図6と同様である。
【0047】
第2実施形態の濃縮部140によれば、第1実施形態と比較して部品数を減らすことができる。これにより、第1実施形態における濃縮部140よりも堅牢性、生産コストに優れた濃縮部140aを提供することができる。
【0048】
排気装置142の排気ファン(不図示)は駆動停止しても、すぐに回転速度が0にならない。そこで、制御装置3aは排気装置142の排気ファンの駆動停止を行った後、排気ファンに対して逆向きの弱い回転力を加えることで速やかに排気ファンが停止するような構成としてもよい。また、排気ファンを駆動させるモータを発電機として機能させることで排気ファンを停止させてもよい。この際、発電した電力は電池に蓄電するか抵抗で熱として消費するようにしてもよい。
【0049】
[第3実施形態]
次に、
図10及び
図11を参照して本発明の第3実施形態を説明する。
図10は、第3実施形態に係る濃縮部140bの構成を示す図である。
図10において、
図1と同様の構成と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
図10に示す濃縮部140bでは気流停止部180として第1バルブ182aが配管164に備えられている。また、配管165は一方の端部が開口しており、他方の端部が配管164に合流している。そして、配管165には気流停止部180である第2バルブ182bが備えられている。配管165は第1バルブ182aよりも下流側(排気装置142側)で配管164に合流している。なお、
図10に示す第1バルブ182aは、
図1に示すバルブ181に相当するものである。
【0051】
第1実施形態では、爆薬の信号が検出された際、分析部150による爆薬の検出をトリガとして、サイクロン141と排気装置142とを接続する配管164に設けられているバルブ181が閉弁する。また、第2実施形態では、分析部150による爆薬の検出をトリガとして、排気装置142が強制停止される。このようにすることで、爆薬の信号を迅速に低減することができる。
【0052】
しかし、第1実施形態では、バルブ181を閉弁する際に排気装置142の一次側(サイクロン141側)の圧力が急に低下する(負圧になる)。これにより、排気装置142の部品であるポンプやモータに大きな負荷がかかるおそれがある。また、第2実施形態のように、排気装置142を急停止すると、排気装置142の部品であるポンプやモータを痛めるおそれがある。
【0053】
そこで、排気装置142の寿命を長くするため、第3実施形態では
図10に示すように、第1バルブ182aと排気装置142との間に外気取り入れ制御用の第2バルブ182bが設けられる。第1バルブ181a及び第2バルブ182bの動作については、
図11のフローチャートで説明する。
【0054】
(フローチャート)
図11は、第3実施形態に係る制御装置3の動作手順を示すフローチャートである。
図11において、
図6と同様の処理については同一のステップ番号を付して説明を省略する。適宜、
図5及び
図10を参照する。
まず、制御装置3は、第1バルブ182aが閉弁しており、第2バルブ182bが開弁している場合、第1バルブ182a開弁すると共に、第2バルブ182bを閉弁する(S101b)
そして、制御装置3は、分析部150による爆薬の検出をトリガとして第1バルブ182aを閉弁すると同時に第2バルブ182bを開弁する(S111b)。第1バルブ182aが閉弁することによりサイクロン141内の空気が排気装置142によって吸引されることがなくなるため、サイクロン141の内部渦巻流が停止する。サイクロン141の内部渦巻流が停止することにより、サイクロン141の内部を回転していた微粒子Pが回転エネルギを失い、フィルタ151に落下する。
【0055】
また、第1バルブ182aが閉弁するとともに第2バルブ182bが開弁する。これにより、第2バルブ182bを介して外気が排気装置142に送られるため、排気装置142の一次側(サイクロン141側)が負圧になることを防止する。このようにすることで、排気装置142の部品に与える負荷の変動を小さくすることができる。従って、排気装置142の寿命の向上を期待することができる。
【0056】
[第4実施形態]
次に、
図12~
図14を参照して本発明の第4実施形態について説明する。
図12は、第4実施形態に係る濃縮部140cの構成を示す図である。
図12において
図1と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図12に示すように、気流停止部180として、排気装置側フランジ183a、サイクロン側フランジ183bを有している。さらに、気流停止部180は、さらに、サイクロン側フランジ183bを上下方向に駆動可能(白抜き矢印)な駆動部184を有する。排気装置側フランジ183a、及び、サイクロン側フランジ183bは、サイクロン141と排気装置142とを接続する配管164cに設けられている。また、配管164cは、蛇腹状となっていることで長さの調節が可能なフレキシブル管が用いられるとよい。ただし、長さの調節が可能であれば、配管164cは必ずしも蛇腹状となっていなくてもよい。また、駆動部184にはエアーシリンダやモータを用いることができる。
【0057】
駆動部184がサイクロン側フランジ183bを下方(サイクロン141側)に下げることで、排気装置142と、サイクロン141との間に間隙Gが生じる。この際、排気装置142を駆動している状態とすることで、間隙Gから排気装置142に外気が導入される。そして、サイクロン141の内部の空気が排気装置142によって吸引されることがなくなるため、サイクロン141の内部渦巻流が停止する。これにより、サイクロン141の内部を回転していた微粒子Pは回転エネルギを失い、速やかにフィルタ151へと落下する。
【0058】
(フローチャート)
図13は第4実施形態に係る制御装置3の動作手順を示すフローチャートである。適宜、
図5及び
図12を参照する。
図13について、
図6と同様の処理については同一の符号を付して説明を省略する。
まず、制御装置3は、駆動部184を排気装置側フランジ183aとサイクロン側フランジ183bとが離間しているか否かをチェックする。そして、排気装置側フランジ183aとサイクロン側フランジ183bとが離間している場合、駆動部184を制御して排気装置側フランジ183aとサイクロン側フランジ183bとを着接させる着接処理を行う(S101c)
そして、分析部150が爆薬を検出すると(S106→Yes)、この検出をトリガとして、制御装置3は駆動部184を駆動させ、サイクロン側フランジ183bを下方へ移動させる。これによって、排気装置側フランジ183とサイクロン側フランジ183bとを離間させる離間処理が行われる(S111c)。この際、排気装置142は駆動したままである。このようにすることで排気装置側フランジ183a及びサイクロン側フランジ183bの周囲に存在する外気が、排気装置側フランジ183aとサイクロン側フランジ183bとの間から吸気される。これにより、サイクロン141の内部の空気が排気装置142によって排気されることがなくなるため、サイクロン141内の内部渦巻流が停止する。第4実施形態の場合でも、第3実施形態と同様に、サイクロン141の内部気流を停止しても排気装置142の負荷が変わらないので、排気装置142の寿命の向上が期待できる。
【0059】
なお、第4実施形態では、サイクロン側フランジ183bが下方に移動することによって、排気装置側フランジ183とサイクロン側フランジ183bとが離間している。しかし、これに限らず、排気装置側フランジ183aが上方に移動することによって、排気装置側フランジ183とサイクロン側フランジ183bとが離間してもよい。
【0060】
(効果)
図14は、第4実施形態における濃縮部140cの効果を示す図である。
図14において、実線L1はこれまでの(第1~第4実施形態のいずれも適用されていない)危険物検査装置で取得したデータである。
図14において、時刻t0は圧縮空気W(
図4参照)が噴射された時刻であり、時刻t1は爆薬が検出された時刻である。なお、時刻t0,t1は実線L1、破線L2に対し共通である。
【0061】
実線L1は、気流停止部180を備えていない危険物検査装置で荷物Bに爆薬の微粒子Pを付着させて、爆薬成分の検出試験を行った結果である。すると、実線L1に示すように圧縮空気Wの噴射(時刻t0)から約2秒で爆薬に由来する信号が得られた(時刻t1)。そして、実線L1に示すように信号は、約5秒間、強い状態が続き、その後、徐々に弱くなった。
【0062】
一方、破線L2は、第4実施形態で示す濃縮部140cを備えた危険物検査装置1で取得したデータである。時刻t0で分析部150が爆薬を検出した直後に駆動部184により排気装置側フランジ183aと、サイクロン側フランジ183bとが離間された。破線L2でも、実線L1と略同様、圧縮空気Wの噴射(時刻t0)から約2秒後に爆薬に由来する信号が得られた(時刻t1)。
しかし、時刻t1における爆薬に由来する信号が得られた時刻の約2秒後から信号強度が下がっており、実線L1に示す、気流停止部180を備えない危険物検査装置よりも迅速に信号を低減できた。つまり、濃縮部140cを備える危険物検査装置1は、次の荷物B(検査対象)の検査を速やかに開始することができ、検査全体のスループットを向上させることができる。
【0063】
なお、
図14は、第4実施形態で示す濃縮部140cを備える危険物検査装置1による結果を示している。しかし、第1~第3実施形態で示す濃縮部140,140a,140bを備える危険物検査装置1でも同様の結果が得られる。
【0064】
なお、本実施形態の検査対象は荷物Bに限らない。本実施形態の濃縮部140,140a~140cは、例えば人を検査する場合には、エアーシャワーのような機構により人に風を当て、人や服に付着している微粒子Pを剥離・回収して検査する装置に適用されてもよい。検出対象も爆薬に限らない。密輸される違法薬物等が検出対象でもよい。
【0065】
[ハードウェア構成]
図15は、制御装置3,3aのハードウェア構成を示す図である。
制御装置3,3aはメモリ301、CPU(Central Processing Unit)302、通信装置303、HD(Hard Disk)等の記憶装置304を有している。
そして、記憶装置304に格納されているプログラムがメモリ301にロードされ、CPU302によって実行されることで、制御装置3,3aの各機能が具現化する。そして、制御装置3,3aは、通信装置303を介して、センサ101a~101dや、分析部150から信号を受信したり、気流停止部180への制御指示を行ったりする。
【0066】
なお、第1~第4実施形態に示す危険物検査装置1はクラウドサーバによる制御が行われてもよい。
【0067】
本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を有するものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0068】
また、前記した各構成、機能、各部、記憶装置304等は、それらの一部又はすべてを、例えば集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、
図15に示すように、前記した各構成、機能等は、CPU302等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HDに格納すること以外に、メモリ301や、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カードや、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。
また、各実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0069】
1 危険物検査装置(検査装置)
3,3a 制御装置(制御部)
100,100a トレース検査装置
101a~101d センサ
110 剥離部
111 ノズル
120 圧縮空気供給部
130 回収部
131 吸気口
140,140a~140c 濃縮部
141 サイクロン(サイクロン濃縮部)
142 排気装置(排気部)
150 分析部
151 フィルタ(フィルタ部)
152 加熱装置(加熱部)
153 ヒータ
154 質量分析計
161~163 配管
164 配管(排気流路、第1の配管)
165 配管(第2の配管)
180 気流停止部
181 バルブ
182a 第1バルブ(第1のバルブ)
182b 第2バルブ(第2のバルブ)
183a 排気装置側フランジ(間隙部)
183b サイクロン側フランジ(間隙部)
184 駆動部(間隙部)
190 発報部
161~165 配管
201 バルク検査装置
202 搬送部
B 荷物
G 間隙
P 微粒子
W 圧縮空気
Z,Za トレース検査システム(濃縮システム)
S106 爆薬が検出されたか否か(判定ステップ)
S111 バルブ閉弁(気流停止ステップ)