(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】発光性ユウロピウム錯体
(51)【国際特許分類】
C07F 9/53 20060101AFI20241024BHJP
C07C 49/92 20060101ALI20241024BHJP
C07D 333/04 20060101ALI20241024BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241024BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20241024BHJP
C07F 5/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
C07F9/53 CSP
C07C49/92
C07D333/04
C09K11/06 660
H05B33/14 B
C07F5/00 D
(21)【出願番号】P 2021522316
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(86)【国際出願番号】 JP2020020305
(87)【国際公開番号】W WO2020241498
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2019099936
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】荒木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】本田 寛哉
(72)【発明者】
【氏名】前林 春城
(72)【発明者】
【氏名】小磯 尚之
(72)【発明者】
【氏名】仲亀 良
(72)【発明者】
【氏名】岩永 宏平
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7227789(JP,B2)
【文献】特許第7217621(JP,B2)
【文献】特開2014-197144(JP,A)
【文献】GAVRILUTA, Anatolie et al.,EuIII-Based Nanolayers as Highly Efficient Downshifters for CIGS Solar Cells,European Journal of Inorganic Chemistry,2017年,Vol. 2017, No. 44,pp. 5318-5326,ISSN 1434-1948
【文献】HASEGAWA, Yasuchika et al.,Effect of Ligand Polarization on Asymmetric Structural Formation for Strongly Luminescent Lanthanide,European Journal of Inorganic Chemistry,2013年,Vol. 2013, No. 34,pp. 5911-5918,ISSN 1434-1948
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07C
C07D
C09K
H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1-1)~(1-29)のいずれかであ
るユウロピウム錯体。
【化1】
【化2】
【請求項2】
(1-1)~(1-11)、(1-13)、(1-15)、(1-16)又は(1-20)のいずれかで表される請求項
1に記載のユウロピウム錯体。
【請求項3】
(1-1)~(1-4)、(1-6)、(1-8)~(1-11)、(1-13)、(1-15)、(1-16)又は(1-20)のいずれかで表される請求項1
又は2に記載のユウロピウム錯体。
【請求項4】
(1-1)、(1-2)、(1-6)、(1-8)、(1-9)又は(1-13)のいずれかで表される請求項1~
3のいずれかに記載のユウロピウム錯体。
【請求項5】
(1-8)、(1-9)又は(1-13)のいずれかで表される請求項1~
4のいずれかに記載のユウロピウム錯体。
【請求項6】
下記式(1)で表されるユウロピウム錯体(1)の製造方法であって、
【化3】
(式中、R
1
、R
2
及びR
3
は各々独立に、炭素数3~10の環状第二級アルキル基又は下記式(2)で表されるフェニル基を表す。但し、R
1
、R
2
及びR
3
は同時にフェニル基とならず、R
1
、R
2
及びR
3
の内1つがシクロヘキシル基、2つがフェニル基とはならない。W
1
及びW
2
は、各々独立に、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。)
【化4】
(式中、X
1
は水素原子;炭素数1~3のアルキル基;炭素数1~3のアルキルオキシ基;炭素数1~3のフルオロアルキル基又はフッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基若しくは炭素数1~3のフルオロアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。)
下記式(4)で表されるホスフィンオキシドと、下記式(3)で表されるβ-ジケトン3)と呼ぶ。)と、ユウロピウム塩と、を反応させることを特徴とする製造方法。
【化5】
(式中、R
1、R
2、R
3、W
1及びW
2は、前記式(1)のR
1、R
2、R
3、W
1及びW
2と同じ意味を表す。)
【請求項7】
下記式(1)に記載のユウロピウム錯体
(1)の製造方法であって、
【化6】
(式中、R
1
、R
2
及びR
3
は各々独立に、炭素数3~10の環状第二級アルキル基又は下記式(2)で表されるフェニル基を表す。但し、R
1
、R
2
及びR
3
は同時にフェニル基とならず、R
1
、R
2
及びR
3
の内1つがシクロヘキシル基、2つがフェニル基とはならない。W
1
及びW
2
は、各々独立に、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。)
【化7】
(式中、X
1
は水素原子;炭素数1~3のアルキル基;炭素数1~3のアルキルオキシ基;炭素数1~3のフルオロアルキル基又はフッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基若しくは炭素数1~3のフルオロアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。)
下記式(5)で表されるジケトナト錯体(5)と、下記式(4)で表されるホスフィンオキシド(4)と、を反応させることを特徴とする製造方法。
【化8】
(式中、R
1、R
2、R
3、W
1及びW
2は、前記式(1)のR
1、R
2、R
3、W
1及びW
2と同じ意味を表す。Qは配位分子を表す。mは0~3の整数を表す。)
【請求項8】
前記式(1)中、R
1
、R
2
及びR
3
が各々独立に、シクロヘキシル基、2-ビフェニル基又は2-メチルフェニル基である請求項6又は7に記載のユウロピウム錯体(1)の製造方法。
【請求項9】
Qが水である、請求項7に記載のユウロピウム錯体(1)の製造方法。
【請求項10】
請求項1~
5のいずれかに記載のユウロピウム錯
体を含む光学材料。
【請求項11】
請求項1~
5のいずれかに記載のユウロピウム錯
体を樹脂材料、無機ガラス、有機低分子材料、又は溶媒に含む請求項10に記載の光学材料。
【請求項12】
前記樹脂材料が、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、又はそれらの共重合体である請求項11に記載の光学材料。
【請求項13】
前記溶媒が、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、グリコールエーテル類、エーテル類、ケトン類、又は炭化水素類である請求項11に記載の光学材料。
【請求項14】
太陽光電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体、有機EL材料、発光材料、蛍光材料、又は波長変換材料である請求項
10~13のいずれかに記載の光学材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長波長紫外線の吸収能が高く、かつ、高い溶解性を有する発光性ユウロピウム錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信やディスプレイ等のオプトエレクトロニクスや太陽電池等のエネルギー産業は次代の基幹技術であり、それらに用いる各種の無機ガラス材料やセラミック材料、レーザー材料、有機低分子発光材料、波長変換材料等が創出されている。
【0003】
波長変換材料は、特定の波長の光を吸収し別の波長で発光する材料であり、樹脂材料に添加することで光学材料として用いることができ、特に、溶解性の高い波長変換材料は樹脂材料に高濃度に添加することが可能となる。高濃度に波長変換材料を含有する光学材料は、所望の光強度を得る為に必要な樹脂材料を減量することができる為に、光学材料の薄膜化が可能となり、乾燥工程短縮による生産性向上や光学材料の小型化が期待できる。また長波長紫外線の吸収能が高い波長変換材料は、紫外線吸収剤の代替として用いることで紫外線暴露による樹脂やデバイスの光劣化を抑制することができる。
【0004】
近年、このような波長変換材料として強発光性希土類金属錯体であるβ-ジケトナト配位子とフェナントロリン配位子をもつユウロピウム錯体(非特許文献1)やβ-ジケトナト配位子とホスフィンオキシド配位子をもつユウロピウム錯体(特許文献1及び2)が報告されている。しかしながら、特許文献1,2に記載のユウロピウム錯体は、長波長紫外線の吸収能が低いものである。
【0005】
また特許文献3、特許文献4、非特許文献2、非特許文献3及び非特許文献4の開示するユウロピウム錯体は本願記載のユウロピウム錯体と類するものが開示されているものの、これらの錯体の溶解性に関する記述は一切ない。特許文献5、非特許文献5には溶解性の高いユウロピウム錯体として、直鎖アルキルホスフィンオキシド配位子をもつユウロピウム錯体が開示されているが、これらはアモルファス性が高い為、製造工程での再結晶が困難であり、これらのユウロピウム錯体は高純度での製造が困難である。
したがって、長波長紫外線の吸収能が高い波長変換材料であって、高い溶解性を有する発光性ユウロピウム錯体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】RUB1453860
【文献】日本特開2003-81986号公報
【文献】日本特開2005-223276号公報
【文献】日本特開2014-197144号公報
【文献】日本特開2008-159604号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Chemical Communications,第43号,6649ページ(2009年)
【文献】第36回無機高分子研究討論会講演要旨集、公益社団法人 高分子学会、2017年、p.47
【文献】日本化学会第98回春季年会(2018)予稿集、公益社団法人 日本化学会、2PA-194
【文献】European Journal of Inorganic Chemistry,第3号,639ページ(2017年)
【文献】Japanese Journal of Applied Physics,第45巻,558ページ(2006年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、長波長紫外線の吸収能が高く、かつ、高い溶解性を有する発光性ユウロピウム錯体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の配位子を導入したユウロピウム錯体が長波長紫外線の吸収能が高く、かつ溶媒や樹脂材料に高い溶解性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、下記式(1)で表されるユウロピウム錯体(以下、ユウロピウム錯体(1)ともいう。)にある。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は各々独立に、炭素数3~10の環状第二級アルキル基又は下記式(2)で表されるフェニル基を表す。但し、R
1、R
2及びR
3は同時にフェニル基とならず、R
1、R
2及びR
3の内1つがシクロヘキシル基、2つがフェニル基とはならない。W
1及びW
2は、各々独立に、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基を表す。)
【化2】
(式中、X
1は水素原子;炭素数1~3のアルキル基;炭素数1~3のアルキルオキシ基;炭素数1~3のフルオロアルキル基又はフッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基若しくは炭素数1~3のフルオロアルキル基で置換されてもよいフェニル基を表す。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によるユウロピウム錯体(1)は、溶媒や樹脂材料等への溶解性が高く、均一に分散可能である。また、長波長紫外線の吸収能が高いため、紫外線吸収剤の代替として用いることで紫外線の暴露による樹脂やデバイスの光劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1で得たユウロピウム錯体(1-1)の励起・発光スペクトルである。
【
図2】実施例2で得たユウロピウム錯体(1-2)の励起・発光スペクトルである。
【
図3】実施例3で得たユウロピウム錯体(1-3)の励起・発光スペクトルである。
【
図4】実施例5で得たユウロピウム錯体(1-5)の励起・発光スペクトルである。
【
図5】実施例6で得たユウロピウム錯体(1-6)の励起・発光スペクトルである。
【0013】
【
図6】実施例7で得たユウロピウム錯体(1-7)の励起・発光スペクトルである。
【
図7】実施例8で得たユウロピウム錯体(1-8)の励起・発光スペクトルである。
【
図8】実施例10で得たユウロピウム錯体(1-9)の励起・発光スペクトルである。
【
図9】実施例11で得たユウロピウム錯体(1-10)の励起・発光スペクトルである。
【
図10】実施例12で得たユウロピウム錯体(1-11)の励起・発光スペクトルである。
【0014】
【
図11】実施例14で得たユウロピウム錯体(1-13)の励起・発光スペクトルである。
【
図12】実施例15で得たユウロピウム錯体(1-15)の励起・発光スペクトルである。
【
図13】実施例16で得たユウロピウム錯体(1-16)の励起・発光スペクトルである。
【
図14】実施例17で得たユウロピウム錯体(1-20)の励起・発光スペクトルである。
【
図15】実施例18で得たユウロピウム錯体(1-22)の励起・発光スペクトルである。
【0015】
【
図16】実施例19で得たユウロピウム錯体(1-23)の励起・発光スペクトルである。
【
図17】実施例20で得たユウロピウム錯体(1-25)の励起・発光スペクトルである。
【
図18】実施例21で得たユウロピウム錯体(1-26)の励起・発光スペクトルである。
【
図19】実施例23で得たユウロピウム錯体(1-28)の励起・発光スペクトルである。
【0016】
【
図20】実施例1で得たユウロピウム錯体(1-1)及び比較例2で得たユウロピウム錯体のUV-Visスペクトルである。
【
図21】実施例2で得たユウロピウム錯体(1-2)のUV-Visスペクトルである。
【
図22】実施例6で得たユウロピウム錯体(1-6)のUV-Visスペクトルである。
【
図23】実施例10で得たユウロピウム錯体(1-9)のUV-Visスペクトルである。
【
図24】実施例13で得たユウロピウム錯体(1-13)のUV-Visスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(ユウロピウム錯体(1))
本発明のユウロピウム錯体(1)を表す式(1)におけるR1、R2、R3、X1、W1及びW2の定義について説明する。
式(1)のR1、R2及びR3で表される炭素数3~10の環状第二級アルキル基としては、具体的には、シクロプロピル基、2,3-ジメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-プロピルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、2,6-ジメチルシクロヘキシル基、3,5-ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イル基、アダマンタン-2-イル基等を例示することができる。安価な点で、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、又はシクロデカニル基等が好ましく、シクロヘキシル基がさらに好ましい。
【0018】
式(2)のX1で表される炭素数1~3のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基又は1-メチルエチル基を例示することができる。
式(2)のX1で表される炭素数1~3のアルキルオキシ基としては、直鎖状又は分岐状アルキルオキシ基のいずれでもよく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基又は1-メチルエチルオキシ基を例示することができる。
【0019】
式(2)のX1で表される炭素数1~3のフルオロアルキル基としては、直鎖状又は分岐状フルオロアルキル基のいずれでもよく、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基等を例示することができる。
【0020】
式(2)のX1がフェニル基である場合、該フェニル基は、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基及び炭素数1~3のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つで置換されたフェニル基(以下、置換フェニル基ともいう。)であってもよい。該置換フェニル基として、2-フルオロフェニル基、2-メチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、2-(トリフルオロメチル)フェニル基等を例示することができる。
【0021】
式(2)のX1としては、安価な点で、水素原子、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、メトキシ基、1-メチルエチルオキシ基、炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基で置換されていてもよいフェニル基、フッ素原子で置換されていてもよいフェニル基、又は直鎖状フルオロアルキル基で置換されていてもよいフェニル基が好ましく、水素原子、メチル基又はフェニル基がさらに好ましい。
【0022】
式(1)におけるR1、R2及びR3としては、シクロヘキシル基又は式(2)で表されるフェニル基が好ましく、シクロヘキシル基、2-ビフェニル基又は2-メチルフェニル基が特に好ましい。
【0023】
式(1)のW1及びW2で表される炭素数1~6のフルオロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)プロピル基、1,2,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、1,2,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,5,5,5-デカフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ペンチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-3,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロシクロペンチルメチル基等を例示することができる。
【0024】
式(1)のW1及びW2としては、溶解性が高い点で、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基が好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、フェニル基、2-チエニル基又は3-チエニル基がさらに好ましい。
【0025】
ユウロピウム錯体(1)としては、具体的には次の(1-1)~(1-29)のいずれかで表される構造を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本明細書において、Phはフェニル基を、Cyはシクロヘキシル基を、Meはメチル基をそれぞれ表す。
【0026】
【0027】
【0028】
上記式(1-1)~(1-29)のうち、製造における収率が高い点で式(1-1)~(1-11)、(1-13)、(1-15)、(1-16)又は(1-20)で表される化合物が好ましく、合成が容易な点で式(1-1)~(1-4)、(1-6)、(1-8)~(1-11)、(1-13)、(1-15)、(1-16)又は(1-20)で表される化合物が更に好ましく、原料が容易に入手可能な点で式(1-1)、(1-2)、(1-6)、(1-8)、(1-9)又は(1-13)で表される化合物が一層好ましく、溶解性が特に高い点で式(1-8)、(1-9)又は(1-13)で表される化合物が殊更好ましい。
【0029】
(ユウロピウム錯体(1)の製造方法)
次に、ユウロピウム錯体(1)の製造方法(以下、本発明の製造方法と呼ぶ。)について説明する。
(製造方法1)
ユウロピウム錯体(1)の製造方法として、式(4)で表されるホスフィンオキシド(以下、ホスフィンオキシド(4)と呼ぶ。)と、式(3)で表されるβ-ジケトン(以下、β-ジケトン(3)と呼ぶ。)と、ユウロピウム塩とを反応させる製造方法1(以下、方法1とも呼ぶ。)を挙げることができる。
【0030】
【化5】
(式中、R
1、R
2、R
3、W
1及びW
2は、式(1)のR
1、R
2、R
3、W
1及びW
2と同じ意味を表す。)
【0031】
方法1において、式(4)のR1、R2及びR3で表される炭素数3~10の環状第ニ級アルキル基としては、具体的には、シクロプロピル基、2,3-ジメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、3-エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、4-エチルシクロヘキシル基、4-プロピルシクロヘキシル基、4,4-ジメチルシクロヘキシル基、2,6-ジメチルシクロヘキシル基、3,5-ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2-イル基、アダマンタン-2-イル基等を例示することができる。
【0032】
式(4)のR1、R2及びR3が式(2)で表される場合、X1の炭素数1~3のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれでもよく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基又は1-メチルエチル基を例示することができる。
式(4)のR1、R2及びR3が式(2)で表される場合、X1の炭素数1~3のアルキルオキシ基としては、直鎖状又は分岐状アルキルオキシ基のいずれでもよく、メトキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基又は1-メチルエチルオキシ基を例示することができる。
【0033】
式(4)のR1、R2及びR3が式(2)で表される場合、X1の炭素数1~3のフルオロアルキル基としては、直鎖状又は分岐状フルオロアルキル基のいずれでもよく、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基を例示することができる。
【0034】
式(4)のR1、R2及びR3が式(2)で表される場合、X1のフェニル基は、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、及び炭素数1~3のフルオロアルキル基からなる群から選択される少なくとも1つで置換された置換フェニル基であってもよい、該置換フェニル基として、2-フルオロフェニル基、2-メチルフェニル基、2-メトキシフェニル基、2-フェノキシフェニル基、2-(トリフルオロメチル)フェニル基等を例示することができる。
【0035】
式(4)のR1、R2及びR3が式(2)で表される場合、X1で表される置換基として、安価な点で、フッ素原子、炭素数1~3のアルキル基、メトキシ基、1-メチルエチルオキシ基、炭素数1~3のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基で置換されていてもよいフェニル基、フッ素原子で置換されていても良いフェニル基又は直鎖状フルオロアルキル基で置換されていてもよいフェニル基が好ましく、メチル基、1-メチルエチル基、メトキシ基及び1-メチルエチルオキシ基がさらに好ましい。
【0036】
方法1に用いるホスフィンオキシド(4)は、Chemical Reviews,第60巻,243-260ページ,1960年に記載の方法などによって入手することができる。
方法1に用いるホスフィンオキシド(4)としては、具体的には、次の式(4-1)~(4-11)のいずれかを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
【0038】
上記式(4-1)~(4-11)で表される化合物のうち、ホスフィンオキシド(4)としては、式(4-1)~(4-3)、又は(4-7)で表される化合物が、反応収率が良い点で好ましい。
【0039】
方法1において、式(3)のW1及びW2で表される炭素数1~6のフルオロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれでもよい。具体的には、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペルフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル基、ペルフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-(トリフルオロメチル)プロピル基、1-メチル-3,3,3-トリフルオロプロピル基、ペルフルオロペンチル基、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロペンチル基、4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、1,2,2,3,3,3-ヘキサフルオロ-1-(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)プロピル基、1,2,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロヘキシル基、1,2,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-1-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-(トリフルオロメチル)ペンチル基、1,1,2,2,3,3,4,5,5,5-デカフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ペンチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,1-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,2-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,2,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、1,1,2,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-3,3-ビス(トリフルオロメチル)ブチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基、ペルフルオロシクロペンチルメチル基等を例示することができる。
【0040】
方法1において、式(3)のW1及びW2で表される置換基として、溶解性の良い点で、炭素数1~6のフルオロアルキル基、フェニル基又はチエニル基が好ましく、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、フェニル基又はチエニル基がさらに好ましい。
【0041】
方法1に用いるβ-ジケトン(3)としては、具体的には、4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオン、4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオン、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオン、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニル-1,3-ヘキサンジオン、1,3-ジ-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン、1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン、1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン、4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオン、1,3-ジ-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオン、1-(2-チエニル)-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオン、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ヘキサンジオン、1-フェニル-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオン等を例示することができる。
【0042】
方法1に用いるβ-ジケトン(3)は、例えば、Journal of the American Chemical Society,第66巻,1220-1222ページ,1944年などに記載の方法によって得ることができる。また、市販品を用いてもよい。
β-ジケトン(3)は活性な水素原子を有しており、水素イオンが失われて陰イオン性配位子となる。
【0043】
β-ジケトン(3)は、異性化を起こしてエノール(3a)又はエノール(3b)を形成しうるが、β-ジケトン(3)は、いずれのエノールを含むものである。本明細書においては、β-ジケトン(3)を式(3)として表記する。同様に、ユウロピウム錯体(1)は異性化を起こしてユウロピウム錯体(1a)を形成しうるが、ユウロピウム錯体(1)はユウロピウム錯体(1a)を含むものである。本明細書においては、ユウロピウム錯体(1)を式(1)として表記する。
【化7】
【0044】
方法1で用いられるユウロピウム塩としては、例えば、フッ化ユウロピウム(III)、塩化ユウロピウム(III)、臭化ユウロピウム(III)、ヨウ化ユウロピウム(III)等のハロゲン化物塩若しくはその水和物;シュウ酸ユウロピウム(III)、酢酸ユウロピウム(III)、トリフルオロ酢酸ユウロピウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸ユウロピウム(III)等の有機酸塩若しくはそれらの水和物;トリス[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド]ユウロピウム(III)、ユウロピウム(III)トリメトキシド、ユウロピウム(III)トリエトキシド、ユウロピウム(III)トリ(2-プロポキシド)等の金属アルコキシド;リン酸ユウロピウム(III)、硫酸ユウロピウム(III)、硝酸ユウロピウム(III)等の無機酸塩若しくはそれらの水和物を挙げることができる。中でも反応収率が良い点で、塩化ユウロピウム(III)、硝酸ユウロピウム(III)又はシュウ酸ユウロピウム(III)、酢酸ユウロピウム(III)、トリフルオロ酢酸ユウロピウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸ユウロピウム(III)等の有機酸塩が好ましく、酢酸ユウロピウム(III)、塩化ユウロピウム(III)、又は硝酸ユウロピウム(III)がさらに好ましい。
【0045】
方法1において、ユウロピウム錯体(1)の反応収率が良い点で、溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、1-メチルエチルアルコール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;tert-ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類又は水を挙げることができる。これら溶媒を単独、又は二種類以上を任意の比率で混合して用いることもできる。ユウロピウム錯体(1)の反応収率が良い点で、溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、メタノール又はエタノールが好ましい。
【0046】
次に、方法1における、ユウロピウム塩及びホスフィンオキシド(4)のモル比に関して説明する。ユウロピウム塩1モルに対して0.5~5.0モル、更に好ましくは1.0~3.0モルのホスフィンオキシド(4)を用いることが好ましい。
方法1における、ユウロピウム塩及びβ-ジケトン(3)のモル比に関して説明する。ユウロピウム塩1モルに対して1.0~10モル、更に好ましくは2.0~8.0モルのβ-ジケトン(3)を用いることが好ましい。
【0047】
方法1において、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることができる。具体例としては、-80℃~120℃の反応温度において、1分間~120時間の反応時間を選択することによってユウロピウム錯体(1)を収率よく製造することができる。
方法1で製造したユウロピウム錯体(1)は当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィーなどを挙げることができる。
【0048】
(製造方法2)
本発明のユウロピウム錯体(1)の製造方法として、下記式(5)で表されるジケトナト錯体(5)と、下記(5)で表されるホスフィンオキシド(4)とを反応させる製造方法2(以下、方法2とも呼ぶ。)も挙げることができる。
【化8】
(式中、R
1、R
2、R
3、W
1及びW
2は式(1)のR
1、R
2、R
3、W
1及びW
2と同じ意味を表す。Qは配位分子を表す。mは0~3の整数を表す。)
【0049】
方法2において、Qで表される配位分子としては、具体的には、水、重水、テトラヒドロフラン、ピリジン、イミダゾール、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、1-メチルエチルアルコールのほか、アセトニトリルやプロピオニトリルなどのニトリル類、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアミン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類などを例示することができ、ジケトナト錯体(5)の合成が容易な点で水が好ましい。
ジケトナト錯体(5)のmは0~3を表し、合成容易な点で好ましくは2である。
【0050】
方法2に用いるジケトナト錯体(5)は、後記する参考例1に記載の方法やJournal of the American Chemical Society,第87巻,5254-5256ページ,1965年などに記載の方法によって入手することができる。
【0051】
方法2に用いるジケトナト錯体(5)の具体的な例としては、トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)、トリス[4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニル-1,3-ヘキサンジオナト)ユウロピウム(III)、トリス[1,3-ジ-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)ユウロピウム(III)、トリス[1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス[4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ヘキサンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス[1-(2-チエニル)-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)、トリス[1-フェニル-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)、又はそれらの水和物などを例示することができる。
【0052】
方法2に用いるホスフィンオキシド(4)は、後記する参考例3に記載の方法、Chemical Reviews,第60巻,243-260ページ,1960年及びOrganic Letters,第13巻,3478-3481ページ,2011年などに記載の方法によって入手することができる。
方法2に用いるホスフィンオキシド(4)としては、上記方法1の説明にて例示したものと同様のものを例示することができる。
【0053】
方法2において、ユウロピウム錯体(1)の反応収率が良い点で、溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、1-メチルエチルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル類;tert-ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、又は水を挙げることができる。これら溶媒を単独又は2種類以上を任意の比率で混合して用いることができる。ユウロピウム錯体(1)の反応収率が良い点で、溶媒としてはジクロロメタン、クロロホルム、メタノール又はエタノールが好ましい。
【0054】
次に、方法2を実施するときのジケトナト錯体(5)及びホスフィンオキシド(4)のモル比に関して説明する。ジケトナト錯体(5)1モルに対して0.5~5.0モル、更に好ましくは1.0~3.0モルのホスフィンオキシド(4)を用いることが好ましい。
また、方法2において、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることができる。具体例としては、-80℃~120℃の反応温度において、1分間~120時間の反応時間を選択することによってユウロピウム錯体(1)を反応収率よく製造することができる。
方法2で製造したユウロピウム錯体(1)は、当業者が金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することができる。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、デカンテーション、蒸留、昇華、結晶化、カラムクロマトグラフィーなどを挙げることができる。
また、ジケトナト錯体(5)についても、ユウロピウム錯体(1)と同様の異性化を起こす。本明細書においては、ジケトナト錯体(5)を式(5)として表記する。
【0055】
(ユウロピウム錯体(1)の特性など)
本発明のユウロピウム錯体(1)は溶解性が高く、溶媒、樹脂材料等への溶解が容易であり、均一に分散可能であり、かつ長波長、特に、波長が320~400nm、更には360~400nmの紫外線の吸収能が高い。そのため、ユウロピウム錯体(1)を含む光学材料として有用であり、該光学材料としては、太陽光電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体、有機EL材料、セキュリティインクなどの発光材料やそれらに用いられる波長変換材料が特に有用である。
【0056】
また、本発明のユウロピウム錯体(1)は、樹脂材料、無機ガラス、有機低分子材料から選ばれる1種以上を含む光学材料として用いることができ、分散性が高いことから、樹脂材料を含む光学材料とすることが特に好ましい。該樹脂材料として、例えばポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリメチルメタクリレート、含フッ素ポリエチルメタクリレート、含フッ素ポリプロピルメタクリレート、含フッ素ポリイソプロピルメタクリレート、含フッ素ポリブチルメタクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルメタクリレート、含フッ素ポリイソブチルメタクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルメタクリレート等のポリメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、含フッ素ポリメチルアクリレート、含フッ素ポリエチルアクリレート、含フッ素ポリプロピルアクリレート、含フッ素ポリイソプロピルアクリレート、含フッ素ポリブチルアクリレート、含フッ素ポリsec-ブチルアクリレート、含フッ素ポリイソブチルアクリレート、含フッ素ポリtert-ブチルアクリレート等のポリアクリレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、含フッ素ポリエチレン、含フッ素ポリプロピレン、含フッ素ポリブテン等のポリオレフィン、ポリビニルエーテル、含フッ素ポリビニルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、又はそれらの共重合体、セルロース、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネイト、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、ナフィオン、石油樹脂、ロジン、ケイ素樹脂などが例示される。
【0057】
その中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリsec-ブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリtert-ブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリsec-ブチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリtert-ブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、又はそれらの共重合体等が好ましい。ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、又はそれらの共重合体が特に好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせたものであってもよい。
本発明のユウロピウム錯体(1)と樹脂材料を含む光学材料における該ユウロピウム錯体(1)の含有割合は、好ましくは0.001~99重量%、更に好ましくは0.01~50重量%である。
【0058】
無機ガラスとして、当業者が通常用いるものでよく、例えば、ソーダガラス、クリスタルガラス、硼珪酸ガラスなどが挙げられる。
有機低分子材料して、当業者が通常用いるものでよく、例えば、アミルトリエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラアミルアンモニウムクロリド等のイオン液体、ペンタデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、パラフィン等の炭化水素類などが挙げられる。
【0059】
本発明のユウロピウム錯体(1)を含む光学材料を得る方法としては、ユウロピウム錯体(1)を単独で用い光学材料とする方法、ユウロピウム錯体(1)を、樹脂材料、無機ガラス、及び有機低分子材料から選ばれる1種以上を含む光学材料に含有させ光学材料とする方法、上記樹脂材料を重合する際に相当するモノマーとユウロピウム錯体(1)を混合し該モノマーを重合することにより光学材料とする方法、該ユウロピウム錯体(1)を溶媒に溶解、分散させ光学材料とする方法等が挙げられる。
【0060】
本発明のユウロピウム錯体(1)を溶媒に溶解、分散させ光学材料とする場合、用いることが出来る溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル等のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン等のエーテル類;tert-ブチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、又は水を挙げることができる。これら溶媒を単独又は2種類以上を任意の比率で混合して用いることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例、比較例及び評価実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0062】
ユウロピウム錯体(1)の同定には、以下の分析方法を用いた。
1H-NMR、19F-NMR及び31P-NMRの測定には、BRUKER社製 ULTRASHIELD PLUS AVANCE III(400MHz、376MHz及び162MHz)とASCEND AVANCE III HD(400MHz、376MHz及び162MHz)を用いた。1H-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。19F-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)、重ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)及び重アセトン(Acetone-d6)を測定溶媒として測定した。31P-NMRは、重クロロホルム(CDCl3)を用いて測定した。
【0063】
質量分析の測定には、waters社製 waters2695-micromassZQ4000を用いて行った。
励起・発光スペクトルの測定には分光光度計(日本分光社製、FP-6500)を用いて測定した。
UV-Visスペクトルの測定には紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V-670)を用いて測定した。
発光量子収率の測定には絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920-03)を用いて測定した。
熱分解温度の測定には示差走査熱量計(SIIナノテクノロジーズ社製、EX STAR7020)を用いて測定した。
また、試薬類は市販品を用いた。
【0064】
(参考例1)
【化9】
4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオン(999mg,4.50mmol)にエタノール(20mL)と1Mの水酸化ナトリウム水溶液(4.5mL,4.5mmol)を加えた。この混合物に塩化ユウロピウム六水和物(550mg,1.50mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この反応液に水(150mL)を加え、60℃でさらに30分間撹拌した。生じた固体をろ取し、水で洗浄することで、ジアクアトリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)の白色固体を得た(収量695mg,収率54%)。
19F-NMR(376MHz,DMSO-d
6)δ(ppm):-78.4(brs).ESIMS(m/z):839.1[M+Na]
+。
【0065】
(参考例2)
【化10】
4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオン(973mg,4.50mmol)にエタノール(20mL)と1Mの水酸化ナトリウム水溶液(4.5mL,4.5mmol)を加えた。この混合物に塩化ユウロピウム六水和物(550mg,1.50mmol)を加え、室温で30分間撹拌した。この反応液に水(150mL)を加え、60℃でさらに30分間撹拌した。生じた固体をろ取し、水で洗浄することで、ジアクアトリス(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)の白色固体を得た(収量1.17g,収率98%)。
19F-NMR(376MHz,DMSO-d
6)δ(ppm):-78.3(brs).ESIMS(m/z):821.2[M+Na]
+。
【0066】
(参考例3)
【化11】
トリシクロヘキシルホスフィン(1.66g,5.9mmol)をジクロロメタン(10mLに溶解し、30%過酸化水素水(3.0mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に水(15mL)を入れ、有機層を分離後、水層にクロロホルム(15mL)を加え、クロロホルム層を分離した。この操作を2回繰り返した。有機層を併せ、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール)により精製することで、トリシクロヘキシルホスフィンオキシドの白色固体を得た(収量1.24g,収率71%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3),δ(ppm):1.94~1.73(m,18H),1.48~1.25(m,15H).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3),δ(ppm):50.0(s)。
【0067】
(参考例4)
【化12】
トリ(o-トリル)ホスフィン(25.3g,83.1mmol)をジクロロメタン(200mL)に溶解し、0℃で30%過酸化水素水(28mL)をゆっくり加え、0℃で2時間撹拌した。反応混合物に水(100mL)を入れ、有機層を分離後、水層にクロロホルム(80mL)を加え、クロロホルム層を分離した。この操作を2回繰り返した。有機層を併せ、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール)により精製することで、トリ(o-トリル)ホスフィンオキシドの白色固体を得た(収量28.9g,収率>99%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3),δ(ppm):7.43(brdd,J=7.5,7.4Hz,3H),7.32(brdd,J=7.5,4.1Hz,3H),7.19~7.05(m,6H),2.50(s,9H).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3),δ(ppm):37.1(s)。
【0068】
(参考例5)
【化13】
2-(ビフェニル)ジフェニルホスフィン(2.21g,6.54mmol)をジクロロメタン(30mL)に溶解し、0℃で30%過酸化水溶液(1.8mL)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物に水(30mL)を入れ、有機層を分離後、水層にクロロホルム(30mL)を加え、クロロホルム層を分離した。この操作を2回繰り返した。有機層を併せ、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール)により精製することで、2-(ビフェニル)ジフェニルホスフィンオキシドの白色固体を得た(収量2.89g,収率>99%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):7.61~7.52(m,5H),7.45~7.27(m,9H),7.23~7.19(m,2H),7.09~7.01(m,3H).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):27.7(s)。
【0069】
(参考例6)
【化14】
アセトフェノン(3.5mL,30.0mmol)をエタノール(16.6mL)に溶解し、10重量%ナトリウムエトキシドのエタノール溶液(13.4mL,36mmol)とヘプタフルオロ酪酸エチル(5.2mL,30.0mmol)を加え、加熱還流下に21時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却後、10%硫酸を入れて酸性にした後、水層をジエチルエーテルで3回抽出した。有機層を併せ、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を減圧下クーゲルロール蒸留により精製することで、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニル-1,3-ヘキサンジオンの無色油状物を得た(収量5.9g,収率62%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):15.3(brs,1H),7.97(brd,J=8.2Hz,2H),7.64(tt,J=7.4,1.3Hz,1H),7.52(brdd,J=8.2,7.4Hz,2H),6.62(brs,1H).
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.5(t,J=9.5Hz,3F),-126.1(m,2F),-126.8(brs,2F)。
【0070】
(参考例7)
【化15】
水素化ナトリウム(流動パラフィン分散物,水素化ナトリウムとして55%以上含有,1.79g,41.0mmol)をテトラヒドロフラン(140mL)に懸濁し、0℃に冷却した。この懸濁液に2-アセチルチオフェン(4.3mL,39.9mmol)と2-チオフェンカルボン酸エチル(5.4mL,40.0mmol)を加え、室温に昇温させながら19時間撹拌した。反応混合物に1M塩酸(50mL)を入れ、有機層を分離後、水層をジエチルエーテル(50mLx2)で抽出した。有機層を併せ、水(50mL)と飽和食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をヘキサンで洗浄後、減圧下50℃にて1時間加熱乾燥することで、1,3-ジ(2-チエニル)-1,3-プロパンジオンの黄褐色固体を得た(収量7.23g,収率77%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):16.2(brs,1H),7.78(dd,J=3.8,1.2Hz,2H),7.62(dd,J=5.0,1.2Hz,2H),7.17(dd,J=5.0,3.8Hz,2H),6.54(brs,1H)。
【0071】
(参考例8)
【化16】
水素化ナトリウム(流動パラフィン分散物,水素化ナトリウムとして55%以上含有,713mg,16.3mmol)をテトラヒドロフラン(55mL)に懸濁し、0℃に冷却した。この懸濁液に2-アセトフェノン(1.8mL,15.4mmol)と2-チオフェンカルボン酸エチル(2.1mL,15.6mmol)を加え、室温に昇温して18時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、1M塩酸(20mL)を入れ、有機層を分離した。水層をジエチルエーテル(30mLx2)で抽出し、有機層を併せ、水(20mL)と飽和食塩水(20mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にて精製することで、1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオンの薄黄色固体を得た(収量2.47g,収率70%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):16.3(brs,1H),7.95(dd,J=8.2Hz,2H),7.82(dd,J=3.8,1.2Hz,1H),7.65(dd,J=4.9,1.1Hz,1H),7.55(brt,J=7.5Hz,1H),7.49(brt,J=8.2,7.5Hz,2H),7.18(dd,J=4.9,3.8Hz,1H),6.69(brs,1H)。
【0072】
(参考例9)
【化17】
水素化ナトリウム(流動パラフィン分散物,水素化ナトリウムとして55%以上含有,1.76g,40.3mmol)をテトラヒドロフラン(135mL)に懸濁し、0℃に冷却した。この懸濁液に3-アセチルチオフェン(5.05g,40.0mmol)と2-チオフェンカルボン酸エチル(5.4mL,40.0mmol)を加え、室温に昇温して14時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、1M塩酸(45mL)を入れ、有機層を分離後、水層をジエチルエーテル(50mLx2)で抽出した。有機層を併せ、0.5M塩酸(50mL)と飽和食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、精製物をヘキサンで洗浄することで、1-(2-チエニル)-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオンの黄白色固体を得た(収量5.03g,収率53%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):16.1(brs,1H),7.78(dd,J=3.8,1.2Hz,2H),7.62(dd,J=5.0,1.2Hz,2H),7.17(dd,J=5.0,3.8Hz,2H),6.54(brs,1H)。
【0073】
(参考例10)
【化18】
水素化ナトリウム(流動パラフィン分散物,水素化ナトリウムとして55%以上含有,2.24g,51.3mmol)をテトラヒドロフラン(170mL)に懸濁し、0℃に冷却した。この懸濁液に3-アセチルチオフェン(6.31g,50.0mmol)とトリフルオロ酢酸2,2,2-トリフルオロエチル(6.8mL,51.0mmol)を加え、室温に昇温しながら12時間撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、1M塩酸(60mL)を入れ、有機層を分離後、水層をジエチルエーテル(50mLx2)で抽出した。有機層を併せ、水(50mL)と飽和食塩水(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を減圧下クーゲルロール蒸留し、続いて―78℃下ヘキサン/クロロホルムで再結晶して精製することで、4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオンの黄色固体を得た(収量4.21g,収率38%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3)δ(ppm):14.90(brs,1H),8.19(dd,J=3.0,1.3Hz,1H),7.52(dd,J=5.1,1.3Hz,1H),7.43(dd,J=5.1,3.0Hz,1H),6.39(brs,1H).
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-76.4(s)。
【0074】
(参考例11)
【化19】
1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオン(3.68g,16.4mmol)にエタノール(41mL)と塩化ユウロピウム六水和物(2.00g,5.46mmol)の水溶液(54mL)を加えた。反応混合物に1Mの水酸化ナトリウム水溶液(16.0mL,16.0mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。生じた固体をろ取し、水とエタノールで洗浄し、減圧下50℃で加熱乾燥した。得られた粗生成物にアセトンを入れ、不溶物をろ過にて除去し、ろ液を濃縮することで、ジアクアトリス(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)の黄色固体を得た(収量2.76g,収率59%)。ESIMS(m/z):634.0[M-(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)]
+。
【0075】
(参考例12)
【化20】
2-ビフェニル(ジシクロヘキシル)ホスフィン(5.19g,14.8mmol)をジクロロメタン(70mL)に溶解し、0℃で30%過酸化水素水(4.4mL)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物に水(70mL)を入れ、有機層を分離後、水層にクロロホルム(70mL)を加え、クロロホルム層を分離した。この操作を2回繰り返した。有機層を併せ、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:クロロホルム/メタノール)により精製することで、2-ビフェニル(ジシクロヘキシル)ホスフィンオキシドを白色固体として得た(5.96g,収率>99%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl
3),δ(ppm):8.11(m,1H),7.53~7.46(m,2H),7.45~7.33(m,3H),7.25~7.19(m,3H),1.88~1.78(m,2H),1.78~1.46(m,8H),1.45~0.96(m,12H).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3),δ(ppm):48.3(s)。
【0076】
(実施例1)
【化21】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として5.62g,15mmol)と参考例3で得たトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(8.89g,30mmol)にメタノール(150mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオン(10.0g,45mmol)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で13時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、アセトン/水で再沈殿した。析出した粉末を、アセトン、水で洗浄することでビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1-1)の白色固体を得た(収量18.6g,収率88%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-79.1(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-59.2(brs).ESIMS(m/z):1185.7[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト)]
+。発光量子収率:84%(380nm励起)。熱分解温度:354℃。
【0077】
(実施例2)
【化22】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.12g,3.0mmol)と参考例3で得たトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(1.78g,6.0mmol)にメタノール(15mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオン(1.94g,9.0mmol)を加えた。アンモニア水を反応液がpH8になるまで数滴滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、ジクロロメタン/メタノールで再結晶することでビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)(1-2)の白色固体を得た(収量2.58g,収率62%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-78.7(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-57.9(brs).ESIMS(m/z):1173.6[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)]
+。発光量子収率:76%(380nm励起)。熱分解温度:338℃。
【0078】
(実施例3)
【化23】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として374mg,1.0mmol)と参考例3で得たトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(593mg,2.0mmol)にメタノール(5mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオン(967mg,3.0mmol)/メタノール(2mL)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、ヘキサン/メタノールで再結晶した。析出した粉末を、メタノールで洗浄することでビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス[4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオナト]ユウロピウム(III)(1-3)の白色固体を得た(収量740mg,収率43%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.7(brt,J=8.5Hz,9F),-124.5(brq,J=8.5Hz,6F),-127.5(brs,6F).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-53.6(brs).ESIMS(m/z):1384.9[M-(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオナト)]
+。
【0079】
(実施例4)
【化24】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.12g,3.0mmol)と参考例3で得たトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(1.78g,6.0mmol)にメタノール(30mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例6で得た4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニルヘキサン-1,3-ジオン(2.84g,9.0mmol)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で17時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、メタノールで洗浄することで、ビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニルヘキサン-1,3-ジオナト)ユウロピウム(III)(1-4)の白色固体を得た(収量1.42g,収率28%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.6(brt,J=8.2Hz,9F),-124.3(brs,6F),-127.6(brs,6F).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-49.1(brs).ESIMS(m/z):1373.6[M-(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニルヘキサン-1,3-ジオナト)]
+。
【0080】
(実施例5)
【化25】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.06g,2.8mmol)と参考例3で得たトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(1.67g,5.6mmol)にメタノール(14mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例7で得た3-ジ(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン(2.0g,8.5mmol)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、メタノールで洗浄することで、ビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス[1,3-ジ(2-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)(1-5)の黄色固体を得た(収量2.52g,収率62%)。
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-33.0(brs).ESIMS(m/z):1213.1[M-(1,3-ジ(2-チエニル)-1,3-プロパンジオナト)]
+。
【0081】
(実施例6)
【化26】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.12g,3.0mmol)と参考例3で得たトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(1.78g,6.0mmol)にメタノール(20mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン(2.02g,9.0mmol)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、ジクロロメタンで抽出した。濃縮後、メタノールで洗浄することでビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)ユウロピウム(III)(1-6)の白色固体を得た(収量764mg,収率18%)。
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-24.9(brs).ESIMS(m/z):1189.7[M-(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)]
+。
【0082】
(実施例7)
【化27】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.20g,3.2mmol)と参考例3で得たトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(1.88g,6.4mmol)にメタノール(16mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例8で得た1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオン(2.21g,9.6mmol)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、ジクロロメタン/メタノールで再結晶することでビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス[1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)(1-7)の黄色固体を得た(収量1.52g,収率33%)。
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-42.3(brs).ESIMS(m/z):1202.3[M-(1-フェニル-3-(2-チエニル)-1,3-プロパンジオナト)]
+。
【0083】
(実施例8)
【化28】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として3.74g,10.0mmol)と参考例4で得たトリ(o-トリル)ホスフィンオキシド(6.40g,20.0mmol)にメタノール(50mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオン(6.66g,30.0mmol)を加えて室温で3時間撹拌した。反応液を水中にあけ、析出した固体を吸引濾取後水洗した。この固体をシクロペンチルメチルエーテルに溶解し、50%(v/v)メタノール水溶液で洗浄した後にシクロペンチルメチルエーテル層を減圧濃縮することでビス[トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド]トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1-8)の淡黄色固体を得た(収量4.46g,収率31%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.6(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-83.8(brs).ESIMS(m/z):1235.3[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト)]
+。発光量子収率:52%(380nm励起)。
【0084】
(実施例9)
【化29】
ジアクアトリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(214mg,0.251mmol)と参考例4で得たトリ(o-トリル)ホスフィンオキシド(163mg,0.509mmol)にアセトン(50mL)を加え、加熱還流下で15時間撹拌した。反応混合物を室温に放冷後、反応液を減圧濃縮し、ヘキサン/クロロホルムで洗浄することでビス[トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド]トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1-8)の白色固体を得た(収量313mg,収率86%)。
【0085】
(実施例10)
【化30】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として3.74g,10mmol)と参考例4で得たトリ(o-トリル)ホスフィンオキシド(6.40g,20mmol)にメタノール(50mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオン(6.48g,30mmol)を加えて室温で3時間撹拌した。反応液を水中にあけ、析出した固体をろ取後水洗した。この固体をヘキサンに溶解し、60%(v/v)メタノール水溶液で洗浄した後にヘキサン層を減圧濃縮することでビス[トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド]トリス(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)(1-9)の淡黄色固体を得た(収量10.6g,収率74%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.2(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-87.7(brs).ESIMS(m/z):1223.1[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)]
+。発光量子収率:49%(380nm励起)。
【0086】
(実施例11)
【化31】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.12g,3.0mmol)と参考例4で得たトリ(o-トリル)ホスフィンオキシド(1.92g,6.0mmol)にメタノール(5mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオン(2.90g,9.0mmol)/メタノール(2mL)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で13時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水、メタノール/水混合溶媒で洗浄することでビス[トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド]トリス[4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオナト]ユウロピウム(III)(1-10)の白色固体を得た(収量3.28g,収率62%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.9(brt,J=8.0Hz,9F),-125.4(brs,6F),-128.1(brs,6F).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-95.5.ESIMS(m/z):1432.9[M-(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ヘキサンジオナト)]
+。
【0087】
(実施例12)
【化32】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.12g,3.0mmol)と参考例4で得たトリ(o-トリル)ホスフィンオキシド(1.92g,6.0mmol)にメタノール(15mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例6で得た4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニル-1,3-ヘキサンジオン(2.85g,9.0mmol)を加えて室温で3時間撹拌した。反応液を水中にあけ、析出した固体を吸引濾取後水洗した。この固体をヘキサンに溶解し、60%(v/v)メタノール水溶液で洗浄した後にヘキサン層を減圧濃縮することでビス[トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド]トリス(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニル-1,3-ヘキサンジオナト)ユウロピウム(III)(1-11)の淡黄色固体を得た(収量2.99g,収率57%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.9(t,J=8.4Hz),-125.1(brs),-128.2(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-94.7(brs).ESIMS(m/z):1423.4[M-(4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-フェニル-1,3-ヘキサンジオナト)]
+。
【0088】
(実施例13)
【化33】
参考例11で得たジアクアトリス(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)(1.41g,1.65mmol)にアセトン(220mL)に溶解し、参考例4で得たトリ(o-トリル)ホスフィンオキシド(1.89g,5.90mmol)を加えて、室温で4時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、ヘキサン/アセトンで再沈殿することで、ビス[トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド]トリス(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)(1-13)の黄白色固体を得た(収量2.27g,収率94%)。
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-76.6(brs).ESIMS(m/z)1237.9[M-(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)]
+。発光量子収率:57%(380nm励起)。熱分解温度:396℃。
【0089】
(実施例14)
【化34】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として374mg,1.0mmol)と参考例4で得たトリ(o-トリル)ホスフィンオキシド(640mg,2.0mmol)にメタノール(5mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオン(673mg,3.0mmol)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で13時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、メタノールで抽出した。濃縮後、メタノール/ヘキサンで再沈殿することで、ビス[トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド]トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)ユウロピウム(III)(1-13)の紅白色固体を得た(収量740mg,収率51%)。
【0090】
(実施例15)
【化35】
参考例1で得たジアクアトリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(851mg,1.00mmol)と参考例5で得た2-(ジフェニルホスフィノオキシド)ビフェニル(709mg,2.00mmol)にアセトン(100mL)を加え、室温で3.5時間撹拌した。ろ過により不溶物を除去した後、反応液を減圧濃縮し、メタノールとアセトンでそれぞれ再結晶することで、ビス[2-(ジフェニルホスフィノオキシド)ビフェニル]トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1-15)の白橙色固体を得た(収量1.23g,収率81%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-79.9(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-78.7(brs).ESIMS(m/z)1303.7[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト)]
+。
【0091】
(実施例16)
【化36】
参考例2で得たジアクアトリス(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)(833mg,1.00mmol)と参考例5で得た2-(ジフェニルホスフィノオキシド)ビフェニル(709mg,2.00mmol)にアセトン(100mL)を加え、室温で3.5時間撹拌した。ろ過により不溶物を除去した後、反応液を減圧濃縮し、メタノールで再結晶することで、ビス[2-(ジフェニルホスフィノオキシド)ビフェニル]トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1-16)の紅白色固体を得た(収量1.29g,収率86%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-79.8(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-75.9(brs).ESIMS(m/z)1291.6[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)]
+。
【0092】
(実施例17)
【化37】
参考例11で得たジアクアトリス(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)(858mg,1.00mmol)と参考例5で得た2-(ビフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(709mg,2.00mmol)にアセトン(100mL)を加え、室温で17.5時間撹拌した。ろ過により不溶物を除去した後、反応液を減圧濃縮し、ヘキサン/アセトンで再沈殿し、残渣をヘキサンで洗浄して減圧乾燥することで、ビス[2-(ビフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド]トリス(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)(1-20)の黄白色固体を得た(収量1.24g,収率81%)。
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-48.3(brs).ESIMS(m/z)1305.3[M-(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)]
+。
【0093】
(実施例18)
【化38】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.12g,3.0mmol)と参考例3で得たトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(1.78g,6.0mmol)にメタノール(30mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例10で得た4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオン(2.00g,9.0mmol)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で18時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、メタノールで洗浄し、ヘキサン/アセトンから再結晶にて精製することで、ビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1-22)の白色固体を得た(収量923mg,収率22%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-79.0(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-58.8(brs).ESIMS(m/z):1187.8[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオナト)]
+。
【0094】
(実施例19)
【化39】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.12g,3.0mmol)と参考例4で得たトリ(o-トリル)ホスフィンオキシド(1.92g,6.0mmol)にメタノール(15mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例10で得た4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオン(2.00g,9.0mmol)を加えて室温で3時間撹拌した。反応液を水中にあけ、析出した固体を吸引ろ取後水洗した。この固体をシクロペンチルメチルエーテルに溶解し、50%(v/v)メタノール水溶液で洗浄した後にシクロペンチルメチルエーテル層を減圧濃縮することでビス[トリ(o-トリル)ホスフィンオキシド]トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1-23)の淡黄色固体を得た(収量3.56g,収率82%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.1(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-87.9(brs).ESIMS(m/z):1235.7[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-(3-チエニル)-1,3-ブタンジオナト)]
+。
【0095】
(実施例20)
【化40】
参考例1で得たジアクアトリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1.70g,2.00mmol)と参考例12で得た2-ビフェニル(ジシクロヘキシル)ホスフィンオキシド(1.47g,4.00mmol)にアセトン(200mL)を加え、室温で4時間撹拌した。ろ過により不溶物を除去した後、反応液を減圧濃縮し、ヘキサン/アセトンで再沈殿し、残渣をヘキサンで洗浄して減圧乾燥することで、ビス[2-ビフェニル(ジシクロヘキシル)ホスフィンオキシド]トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1-25)の橙白色固体を得た(収量2.69g,収率87%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.0(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-66.8(brs).ESIMS(m/z)1326.5[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-1,3-ブタンジオナト)]
+。
【0096】
(実施例21)
【化41】
参考例2で得たジアクアトリス[4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1.67g,2.00mmol)と参考例12で得た2-ビフェニル(ジシクロヘキシル)ホスフィンオキシド(1.47g,4.00mmol)にアセトン(200mL)を加え、室温で4時間撹拌した。ろ過により不溶物を除去した後、反応液を減圧濃縮し、ヘキサン/アセトンで再沈殿し、残渣をヘキサンで洗浄して減圧乾燥することで、ビス[2-ビフェニル(ジシクロヘキシル)ホスフィンオキシド]トリス[4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト]ユウロピウム(III)(1-26)の白橙色固体を得た(収量2.43g,収率79%)。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3)δ(ppm):-80.2(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-64.9(brs).ESIMS(m/z)1314.3[M-(4,4,4-トリフルオロ-1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)]
+。
【0097】
(実施例22)
【化42】
参考例11で得たジアクアトリス(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)(1.72g,2.00mmol)と参考例12で得た2-ビフェニル(ジシクロヘキシル)ホスフィンオキシド(1.47g,4.00mmol)にアセトン(200mL)を加え、室温で17.5時間撹拌した。ろ過により不溶物を除去した後、反応液を減圧濃縮し、ヘキサン/アセトンで再沈殿し、残渣をヘキサンで洗浄して減圧乾燥することで、ビス[2-ビフェニル(ジシクロヘキシル)ホスフィンオキシド]トリス(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)ユウロピウム(III)(1-27)の黄白色固体を得た(収量2.56g,収率82%)。
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-32.8(brs).ESIMS(m/z)1329.8[M-(1,3-ジフェニル-1,3-ブタンジオナト)]
+。
【0098】
(実施例23)
【化43】
酢酸ユウロピウムn水和物(2.5水和物として1.12g,3.0mmol)と参考例4で得たトリシクロヘキシルホスフィンオキシド(2.12g,6.0mmol)にメタノール(30mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応混合物に参考例9で得た1-(2-チエニル)-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオン(2.12g,9.0mmol)を加えた。アンモニア水を反応液がpH7になるまで数滴滴下し、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、水で洗浄した後、ヘキサンで洗浄した。得られた粗生成物をヘキサン/アセトンで再結晶し、続いて少量のメタノールで洗浄した。得られた固体にジエチルエーテルを加え、不溶物を吸引ろ過にて除去し、ろ液を濃縮することで、ビス(トリシクロヘキシルホスフィンオキシド)トリス[1-(2-チエニル)-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオナト]ユウロピウム(III)(1-28)の黄色固体を得た(収量584mg,収率13%)。
31P-NMR(162MHz,CDCl
3)δ(ppm):-30.2(brs).ESIMS(m/z):1213.9[M-(1-(2-チエニル)-3-(3-チエニル)-1,3-プロパンジオナト)]
+。
【0099】
(比較例1)
【化44】
酢酸ユウロピウムn水和物(8.0g,2.5水和物として21mmol)に純水(100mL)を加え、室温で10分撹拌した。反応混合物にヘキサフルオロアセチルアセトン(16.7g,80.2mmol)を滴下後、50℃で3時間撹拌した。得られた白色懸濁液をろ別し、得られた白色固体を水(200mL)、トルエン(200mL)で洗浄することで、ジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)を白色固体として得た(収量11.6g,酢酸ユウロピウム2.5水和物を21mmol使用したとして収率68%)。
19F-NMR(376MHz,Acetone-d
6),δ(ppm):-81.2(brs).ESIMS(m/Z):566.8[M-(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)]
+。
【0100】
(比較例2)
【化45】
アルゴン雰囲気下、比較例1で得たジアクアトリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)(5.0g,6.18mmol)とトリフェニルホスフィンオキシド(3.4g,12.4mmol)にエタノール(200mL)を加え、65℃で3時間撹拌した。反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮し、メタノールで再結晶することで、ビス(トリフェニルホスフィンオキシド)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)ユウロピウム(III)の白色固体を得た(収量4.8g,収率58%)。なお、この化合物は、RUB1453860及び日本特開2003-81986号公報に具体的に記載されている化合物である。
19F-NMR(376MHz,CDCl
3),δ(ppm):-79.0(brs).
31P-NMR(162MHz,CDCl
3),δ(ppm):-91.3(brs).ESIMS(m/z):1123.4[M
【0101】
(評価実施例)
実施例で得たユウロピウム錯体の励起・スペクトル測定用サンプルは、ユウロピウム錯体の粉末を乳鉢で微粉末となるまで破砕し、粉末セル(日本分光社製、PSH-002)に充填することで作製した。
実施例で得たユウロピウム錯体の励起・発光スペクトルの測定結果を
図1~19に表す。励起スペクトルの測定条件は、発光検出波長615nm、励起側スリット5nm、蛍光側スリット5nmとし、検出器側に420nmのシャープカットフィルタを用いた。発光スペクトルの測定条件は、励起光380nm、励起側スリット1nm、蛍光側スリット1nmとした。Eu(III)錯体に特徴的なf-f電子遷移に基づく約593nm、615nm、653nm及び699nmの発光が観察された。
【0102】
ユウロピウム錯体の溶解性試験は、飽和溶解濃度を試験することにより評価した。クロロホルム5mLに対して過剰量のユウロピウム錯体を添加し、20℃で10分間撹拌した。この飽和溶液の上澄みを一定量(0.5mL)とり、85℃のホットプレート上で60分間加熱し溶媒を蒸発した。その後、減圧下、60℃で60分間乾燥させた。乾燥前の溶液質量と乾燥後の溶質質量から飽和溶解濃度を算出した結果を表1に表した。
飽和溶解濃度(%)=(乾燥後の溶質質量)/(乾燥前の溶液質量)×100
【0103】
【表1】
表1に表したように、本発明のユウロピウム錯体(1)は、高い溶解性を有することがわかった。
【0104】
本発明のユウロピウム錯体のUV-Visスペクトル測定用サンプルは、実施例で得たユウロピウム錯体を分光分析用クロロホルムに所定の濃度で溶解させ、1cm分光分析用石英セルに充填することで作製した。
実施例で得たユウロピウム錯体のUV-Visスペクトル測定結果を
図20~24に表す。図中、右上の挿入図は所定の濃度のUV-Visスペクトルの吸収端近傍を表す。
また、
図20には、比較例2の結果も併せて表す。比較例2の錯体は、本発明のユウロピウム錯体よりも長波長紫外線の吸収能に劣るものである。
つまり、本発明のユウロピウム錯体は、長波長紫外線の吸収能が高く,高い溶解性を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のユウロピウム錯体(1)は、太陽光電池用フィルム、農業用フィルム、LED蛍光体、有機EL材料、セキュリティインクなどの発光材料やそれらに用いられる波長変換材料として有用である。
【0106】
なお、2019年5月29日に出願された日本特許出願2019-099936号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。