(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】プロペラガード
(51)【国際特許分類】
B64D 25/00 20060101AFI20241025BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20241025BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
B64D25/00
B64C27/08
B64D45/00 Z
(21)【出願番号】P 2020166575
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100176728
【氏名又は名称】北村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】内堀 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 一旭
(72)【発明者】
【氏名】濱野 勇臣
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅史
(72)【発明者】
【氏名】荒武 淳
(72)【発明者】
【氏名】加々見 修
(72)【発明者】
【氏名】林 明
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋生
(72)【発明者】
【氏名】島本 武史
(72)【発明者】
【氏名】海老名 明弘
(72)【発明者】
【氏名】久保 聖治
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第210191837(CN,U)
【文献】特開2018-199394(JP,A)
【文献】特開2019-26244(JP,A)
【文献】特開2019-64465(JP,A)
【文献】金平徳之,林篤史,平井正之,樫本祥,“ドローンを利用した橋梁点検システムの開発 ~マルコTMの概要と今後の展開~”,JETI,日本,株式会社日本出版制作センター,2019年08月22日,Vol.67, No.9,pp.95-100,ISSN 0289-4343
【文献】谷戸善彦,稲垣裕亮,“下水道管路等閉鎖性空間に対応可能なドローンの開発”,第29回非開削技術研究発表会論文集,日本,一般社団法人日本非開削技術協会,2018年11月14日,pp.25-31,[retrieved on 2022.04.01], Retrieved from the Internet: <URL: https://ieeexplore.ieee.org/document/9081001>, <DOI: 10.1109/LifeTech48969.2020.1570619126>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 25/00,45/00,
B64C 27/08,39/02,
B64U 20/75,30/299,101/30,101/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体のプロペラを囲うように構成されるプロペラガードであって、
当該プロペラガードの最上面に設けられる上部フレームと、
前記上部フレームよりも下方に設けられる中間フレームと、
前記中間フレームよりも下方に設けられる下部フレームと、
当該プロペラガードの最下面に設けられる台座フレームと、
前記上部フレーム、前記中間フレーム、前記下部フレーム、及び前記台座フレームを連結させる連結フレームと、
前記中間フレーム及び前記下部フレームの間で、前記連結フレームの外側に設けられ、
水平方向外向きに湾曲するように構成される湾曲フレームと、を備え、
前記中間フレームの外縁は、前記上部フレームの外縁の外側に位置し、前記下部フレームの外縁は、前記台座フレームの外縁の外側に位置する、プロペラガード。
【請求項2】
前記上部フレームの外縁と、前記台座フレームの外縁との間の鉛直方向の距離は、
20cmよりも大きい、請求項1に記載のプロペラガード。
【請求項3】
前記上部フレーム、前記中間フレーム、又は前記下部フレームの外縁の形状は、円形状、正偶数角形状、又は前記プロペラの外縁に沿った形状である、請求項1又は2に記載のプロペラガード。
【請求項4】
前記上部フレームの中心から外縁までの距離と、前記中間フレームの外縁及び前記下部フレームの外縁のうち外側に位置する外縁から該外縁の中心までの距離との差は、
8cmよりも大きく、
前記台座フレームの中心から外縁までの距離と、前記中間フレームの外縁及び前記下部フレームの外縁のうち外側に位置する外縁から該外縁の中心までの距離との差は、
8cmよりも大きい、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロペラガード。
【請求項5】
前記連結フレームのうち、前記中間フレーム及び前記下部フレームを連結させる連結部は、鉛直方向に直線状に延在するように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロペラガード。
【請求項6】
前記上部フレーム及び前記中間フレームの間に突設された突出フレームをさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロペラガード。
【請求項7】
前記突出フレームの外縁は、前記上部フレームの外縁外側に位置し、かつ前記中間フレームの外縁及び前記下部フレームの外縁のうち外側に位置する外縁の内側に位置する、請求項6に記載のプロペラガード。
【請求項8】
前記突出フレームの一部又は全部は弾性部材である、請求項6又は7に記載のプロペラガード。
【請求項9】
前記突出フレームは、外向きに湾曲した形状である、請求項6から8のいずれか一項に記載のプロペラガード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行体のプロペラを保護するプロペラガードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インフラ構造物の点検に、複数のプロペラの回転によって飛行する飛行体(例え
ば、ドローン、マルチコプタなど)が用いられることがある。
【0003】
非特許文献1には、地中に埋設された管路施設の点検に飛行体を用いる方法が開示され
ている。このような、周囲が壁面に囲まれた空間を飛行体が飛行する際には、壁面のよう
な物体に機体が衝突するとプロペラが破損し機体が墜落する可能性がある。そこで、プロ
ペラを保護するプロペラガードが機体に装着されることがある。
【0004】
非特許文献2には、飛行体が物体に衝突した際に、プロペラの保護、及び物体に衝突し
ても飛行体が飛行バランスを喪失して制御不能にならないようにするためのプロペラガー
ドが提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】谷戸善彦、他1名、「下水道管路等閉鎖性空間に対応可能なドローンの開発」、第29回非開削技術研究発表会、2.1、2018年
【文献】金平徳之、他3名、「ドローンを利用した橋梁点検システムの開発」、川田技報、vol.38、2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、周囲が壁面に囲まれた空間を飛行体が垂直方向に移動する際には、非特
許文献2に提案されているプロペラガードでは、ガードフレームが突起物に接触して、飛
行体が移動できなくなるおそれ、及び飛行体がバランスを崩して落下してしまうおそれが
ある。
【0007】
図16は、マンホールの断面図である。
図16に示すように、マンホール50は、地上
に設置されているマンホール蓋を開閉すると、円柱又は四角柱の構造物51(例えば、鉄
筋コンクリート管)が地中の垂直方向に延びており、途中には作業者が地下へ降りていく
、又は地上へ上がるためのステップ52が設置されている。
【0008】
図17は、マンホール50のような、周辺が壁面に囲まれた空間を、プロペラガード付
き飛行体が移動する場合の課題を示す図である。
図17Aに示すように、プロペラガード
を装着した飛行体100を構造物内で上昇させようとすると、ステップ52、マンホール
蓋の受枠53などの突起物体にプロペラガードが引っかかり、上昇できなくなる場合があ
る。また、
図17Bに示すように、飛行体が下降している場合では、同様にステップ52
、マンホール蓋の受枠53などの突起物体にプロペラガードが引っかかり、移動が妨げら
れる場合がある。
【0009】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、鉛直方向に移動している飛行体が物体に
衝突した際に飛行が停止することを抑制できるプロペラガードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係るプロペラガードは、飛行体のプロペラを囲うように構成されるプロペラガードであって、当該プロペラガードの最上面に設けられる上部フレームと、前記上部フレームよりも下方に設けられる中間フレームと、前記中間フレームよりも下方に設けられる下部フレームと、当該プロペラガードの最下面に設けられる台座フレームと、前記上部フレーム、前記中間フレーム、前記下部フレーム、及び前記台座フレームを連結させる連結フレームと、前記中間フレーム及び前記下部フレームの間で、前記連結フレームの外側に設けられ、水平方向外向きに湾曲するように構成される湾曲フレームと、を備え、前記中間フレームの外縁は、前記上部フレームの外縁の外側に位置し、前記下部フレームの外縁は、前記台座フレームの外縁の外側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、鉛直方向に移動している飛行体が物体に衝突した際に飛行が停止する
ことを抑制できるプロペラガードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】第1の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である。
【
図1B】第1の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である。
【
図2】第1の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の斜視図及びフレームの上面図の一例である。
【
図3A】第1の実施形態に係るプロペラガードのフレームの形状を正四角形状とする例を示す図である。
【
図3B】第1の実施形態に係るプロペラガードのフレームの形状を正八角形状とする例を示す図である。
【
図3C】第1の実施形態に係るプロペラガードのフレームの形状をプロペラの円周に対して弧を描く形状とする例を示す図である。
【
図4】
図1に示した距離T0の条件を説明する図である。
【
図5】
図1に示した距離B0の条件を説明する図である。
【
図6】
図1に示した距離H0の条件を説明する図である。
【
図7】第1の実施形態に係る飛行体が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した様子を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である。
【
図9】第2の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した様子を示す図である。
【
図10】第3の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である。
【
図11】第4の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である。
【
図12】第4の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した様子を示す図である。
【
図13】第4の実施形態の変形例に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である。
【
図14】第5の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である。
【
図15】第5の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した様子を示す図である。
【
図17A】従来のプロペラガード付き飛行体の課題を示す図である。
【
図17B】従来のプロペラガード付き飛行体の課題を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面は本発明を十
分に理解できる程度に概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに
限定されるものではない。また、図示の便宜上、各図面における縮尺は、実際とは異なっ
ている場合や、図面間で一致していない場合もある。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である。
図1に示すプロペラガード付き飛行体(以下、単に「飛行体」と称する。)1は、プロペ
ラガード10と、飛行体本体20と、1以上のプロペラ30と、を備える。飛行体1は、
鉛直方向の回転軸を有する1以上のプロペラによって飛行する。
【0015】
プロペラガード10は、プロペラ30を囲うように構成され、プロペラ30を保護する
。プロペラガード10は、プロペラ30だけでなく、
図1Aに示すように飛行体本体20
の全てを囲うように構成されていてもよいし、
図1Bに示すように飛行体本体20の一部
を囲うように構成されていてもよい。以下の図面においては、飛行体本体20の全てを囲
うプロペラガード10を示している。
【0016】
図1に示す例では、プロペラガード10は、連結フレーム11と、上部フレーム12と
、中間フレーム13と、下部フレーム14と、台座フレーム15と、を備える。また、連
結フレーム11及び中間フレーム13の個数は1個に限定されるものではなく、任意に定
めることができる。連結フレーム11及び中間フレーム13の個数は、飛行体1が物体に
接触した際のプロペラガードの強度に影響する。したがって、例えば飛行体1を速い速度
で移動させることが想定される場合には、プロペラガード10の強度を強めるために、連
結フレーム11の個数、及び中間フレーム13の個数を増やしてもよい。
【0017】
上部フレーム12は、プロペラガード10の最上面に設けられるフレームである。
【0018】
中間フレーム13は、上部フレーム12よりも下方に、上部フレーム12と略平行に設
けられるフレームである。中間フレーム13は、上部フレーム12及び下部フレーム14
の間の任意の高さに設けることが可能である。
【0019】
下部フレーム14は、中間フレーム13よりも下方に、上部フレーム12と略平行に設
けられるフレームである。下部フレーム14には、プロペラ30のモーター31が据え付
けられる。
【0020】
台座フレーム15は、下部フレーム14よりも下方(プロペラガード10の最下面)に
、上部フレーム12と略平行に設置され、飛行体1の着陸時に地面などの物体に接するフ
レームである。台座フレーム15は、飛行体1の着陸時に安定性を図り、飛行体1の底部
を保護する。飛行時のバランスを取るために、上部フレーム12、中間フレーム13、下
部フレーム14、及び台座フレーム15の中心点は、飛行体本体20の中心軸上に位置さ
せることが望ましい。
【0021】
連結フレーム11は、上部フレーム12、中間フレーム13、下部フレーム14、及び
台座フレーム15を連結させるフレームである。連結フレーム11は、上部フレーム12
及び中間フレーム13を連結させる第1連結部111と、中間フレーム13及び下部フレ
ーム14を連結させる第2連結部112と、下部フレーム14及び台座フレーム15を連
結させる第3連結部113と、を有する。
【0022】
図2に、
図1Aに示した飛行体1の斜視図及び各フレームの上面図を示す。中間フレー
ム13及び下部フレーム14の形状は環状であるが、上部フレーム12の形状は環状でな
くてもよい。また、台座フレーム15の形状は、環状であってもよい。本明細書において
フレームの「外縁」とは、フレームが環状である場合には環状に沿った線を意味し、フレ
ームが環状でない場合には外側の端点を結んだ線を意味する。
【0023】
図2に示す例では、上部フレーム12、中間フレーム13、及び下部フレーム14の外
縁の形状を正八角形状としているが、これらのフレームをプロペラ30の外周に位置でき
れば、円形状、任意の多角形状などの様々な形状とすることができる。水平方向移動時の
バランスをとるためには、フレームの外縁の形状は、点対称の構造が望ましい。例えば、
円形状、又は前後左右に対して線対称の形状が望ましい。なお、本明細書において「水平
方向」とは、鉛直方向に対して略直交する方向を意味する。
【0024】
例えば、フレームの外縁の形状は、
図3Aに示す正四角形状、
図3Bに示す正八角形状
などのように、前後左右のどの方向にもバランスがとれるような正偶数角形状が望ましい
。また、フレームの外縁の形状は、
図3Cに示すように、複数のプロペラ30の円周に対
して弧を描く形状(複数のプロペラ30の外縁に沿った形状)としてもよい。この場合に
は飛行体本体20の直径を最小にすることができる。
【0025】
中間フレーム13の外縁は、上部フレーム12の外縁の外側に位置する。すなわち、中
間フレーム13の外縁の面積は、上部フレーム12の外縁の面積よりも大きい。また、下
部フレーム14の外縁は、台座フレーム15の外縁の外側に位置する。すなわち、下部フ
レーム14の外縁の面積は、台座フレーム15の外縁の面積よりも大きい。
【0026】
再び
図1を参照する。
図1に示す例では、中間フレーム13と下部フレーム14の大き
さは同一であるが、異なっていてもよい。距離T0は、上部フレーム12の外縁と、中間
フレーム13の外縁及び下部フレーム14の外縁のうち外側に位置する外縁との間の距離
である。距離B0は、台座フレーム15の外縁と、中間フレーム13の外縁及び下部フレ
ーム14の外縁のうち外側に位置する外縁との間の距離である。距離H0は、上部フレー
ム12の外縁と、台座フレーム15の外縁との間の距離である。
【0027】
図4は、
図1に示した距離T0の条件を説明する図である。距離T0は、飛行体1が鉛
直上向きに移動(上昇)する際の飛行空間において、進行方向に対して垂直方向に突出し
ている突出物体の最大長Sよりも大きくなるように設定される。突出物体が構造物51の
壁面に設置されたステップ52である場合、最大長Sは一般的に8cmと規格されている
。T0≧Sとすることによって、飛行体1が鉛直上向きに移動時にプロペラガード10が
突出物体に接触しても、プロペラガード10が突出物体に対して第1連結部111に沿っ
てD1方向にスライドするため、飛行体1自体が停止することなく進行方向に進むことが
できる。
【0028】
図5は、
図1に示した距離B0の条件を説明する図である。距離B0は、飛行体1が鉛
直下向きに移動(下降)する際の飛行空間において、進行方向に対して垂直方向に突出し
ている突出物体の最大長Sよりも大きくなるように設定される。突出物体が構造物51の
壁面に設置されたステップ52である場合、最大長Sは一般的に8cmと規格されている
。B0≧Sとすることによって、飛行体1が鉛直下向きに移動時にプロペラガード10が
突出物体に接触しても、プロペラガード10が突出物体に対して第3連結部113に沿っ
てD2方向にスライドするため、飛行体1自体が停止することなく進行方向に進むことが
できる。
【0029】
図6は、
図1に示した距離H0の条件を説明する図である。距離H0は、飛行体1が鉛
直上向き又は鉛直下向きに移動(上昇又は下降)する際の飛行空間において、進行方向に
対して垂直方向に隣接して突出しているステップ52などの突出物体の最大間隔L1より
も大きくなるように設定される。突出物体が構造物51の壁面に設置されたステップ52
である場合、最大間隔L1は一般的に20cmと規格されている。
図6に示す例では、ス
テップ52の間隔L1は、マンホール蓋の受枠53及びステップ52の間隔L2よりも大
きいものとする。L2は、一般的には16cm以下である。H0≧L1とすることによっ
て、飛行体1が飛行中に水平方向にブレを起こしても、突出物体の間に挟まることを防止
することができる。
【0030】
このように、本実施形態によれば、飛行体1を用いて、マンホールのように周囲を壁面
に囲まれた空間を点検する場合に、プロペラガード10が壁面の突起物などの突出物体に
衝突した際に、飛行が停止したり、バランスを崩して落下したりすることを抑制すること
ができる。
【0031】
次に、プロペラガード10と壁面との接触について検討する。飛行体1は飛行中に水平
方向にブレを起こして壁面などの物体に接触することがある。構造物51が鉄筋コンクリ
ートなどで出来ている場合、表面は一様に滑らかではなく、細骨材などにより凹凸が発生
する。このような滑らかではない物体にプロペラガード10が接触すると、プロペラガー
ド10が引っかかるおそれがある。飛行体1が鉛直下向きに移動時に壁面に接触した場合
には、プロペラガード10の水平方向に最も外側の縁が支点となり飛行体1が進行方向(
下降方向)に回転するが、飛行体1のバランスが崩れるため、飛行体1の自動制御により
水平に戻ろうとする制御と、プロペラ30の下部からの風の吐き出しにより、壁面に吸い
付いて飛行バランスを喪失する可能性は少ない。
【0032】
図7は、第1の実施形態に係る飛行体1が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した様子を
示す図である。飛行体1が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した場合には、飛行体1は進
行方向(上昇方向)に運動状態であるため、
図7に示すようにプロペラガード10の水平
方向に最も外側の縁P1が支点となって飛行体1がR方向に回転し、飛行バランスを喪失
し落下してしまうおそれがある。さらに、飛行体1は機体を空中に浮遊させるためにプロ
ペラ30の上部から風を吸い込んで、下部から吐き出しているため、飛行体1の上部が壁
面に近づくと、プロペラ30が発生した風により飛行体1が垂直の壁面に吸い付いてしま
うおそれがある。そこで、以下の実施形態では、さらにこの課題も解決することが可能な
プロペラガードについて説明する。
【0033】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である。
図8に示す飛行体2は、プロペラガード10aと、飛行体本体20と、1以上のプロペラ
30と、を備える。プロペラガード10aは、連結フレーム11と、上部フレーム12と
、中間フレーム13と、下部フレーム14と、台座フレーム15と、を備える。連結フレ
ーム11は、上部フレーム12及び中間フレーム13を連結させる第1連結部111と、
中間フレーム13及び下部フレーム14を連結させる第2連結部112と、下部フレーム
14及び台座フレーム15を連結させる第3連結部113と、を有する。
【0034】
プロペラガード10aが第1の実施形態に係るプロペラガード10と相違する点は、中
間フレーム13及び下部フレーム14の大きさを略同一として、中間フレーム13及び下
部フレーム14を連結させる第2連結部112を鉛直方向に直線状に延在するように構成
した点である。さらに、第2連結部112の長さを、第2連結部112が物体に接触した
際に、回転モーメント以上の反力が発生する長さとなるように構成した点である。
【0035】
図9は、飛行体2が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した様子を示す図である。第2連
結部112が壁面に接触した場合、第2連結部112が支点となり、飛行体2にはR方向
に回転の力が加わるが、第2連結部112に回転モーメント以上の反力F1が加わるため
、R方向に回転しなくなる。したがって、本実施形態によれば、飛行体2が壁面のような
物体に接触した場合であっても、飛行体2が回転して壁面に吸い付くことを防止すること
ができる。
【0036】
(第3の実施形態)
図10は、第3の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である
。
図10に示す飛行体3は、プロペラガード10bと、飛行体本体20と、1以上のプロ
ペラ30と、を備える。プロペラガード10bは、連結フレーム11と、上部フレーム1
2と、中間フレーム13と、下部フレーム14と、台座フレーム15と、湾曲フレーム1
8と、を備える。連結フレーム11は、上部フレーム12及び中間フレーム13を連結さ
せる第1連結部111と、中間フレーム13及び下部フレーム14を連結させる第2連結
部112と、下部フレーム14及び台座フレーム15を連結させる第3連結部113と、
を有する。
【0037】
プロペラガード10bが第1の実施形態に係るプロペラガード10と相違する点は、プ
ロペラガード10bがさらに湾曲フレーム18を備える点である。湾曲フレーム18は、
連結フレーム11の外側に設けられ、水平方向外向き(プロペラガード10bからみて飛
行体本体20が存在しない方向)に湾曲した構造(形状)を有するフレームである。
【0038】
湾曲フレーム18は、例えば
図10に示すように、中間フレーム13及び下部フレーム
14の間で水平方向外向きに凸形状に湾曲するように構成される。湾曲フレーム18を備
えることにより、第1連結部111と第2連結部112の接続点(連結フレーム11と中
間フレーム13の接続点)、及び第2連結部112と第3連結部113の接続点(連結フ
レーム11と下部フレーム14の接続点)に発生する角(エッジ)を削除することができ
る。したがって、本実施形態によれば、飛行体3が壁面のような物体に接触した場合であ
っても、角による引っかかりを防止し、飛行体3が回転して飛行バランスを喪失すること
を防ぐことができる。
【0039】
(第4の実施形態)
図11は、第4の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である
。
図11に示す飛行体4は、プロペラガード10cと、飛行体本体20と、1以上のプロ
ペラ30と、を備える。プロペラガード10cは、連結フレーム11と、上部フレーム1
2と、中間フレーム13と、下部フレーム14と、台座フレーム15と、第1の突出フレ
ーム16と、を備える。連結フレーム11は、上部フレーム12及び中間フレーム13を
連結させる第1連結部111と、中間フレーム13及び下部フレーム14を連結させる第
2連結部112と、下部フレーム14及び台座フレーム15を連結させる第3連結部11
3と、を有する。
【0040】
プロペラガード10cが第1の実施形態に係るプロペラガード10と相違する点は、さ
らに第1の突出フレーム16を備える点である。第1の突出フレーム16は、上部フレー
ム12及び中間フレーム13の間に突設され、水平方向外向きに突出した構造(形状)を
有するフレームである。第1の突出フレーム16の外縁は、上部フレーム12の外縁外側
に位置し、かつ中間フレーム13の外縁及び下部フレーム14の外縁のうち外側に位置す
る外縁の内側に位置する。
図11に示す例では、第1の突出フレーム16は、上部フレー
ム12に接続されている。
【0041】
距離T0は、上部フレーム12の外縁と、中間フレーム13の外縁及び下部フレーム1
4の外縁のうち外側に位置する外縁との間の距離である。T1は、第1の突出フレーム1
6の外縁と、中間フレーム13の外縁及び下部フレーム14の外縁のうち外側に位置する
外縁との間の距離である。第1の実施形態においてT0≧Sであることを説明したが、同
様に本実施形態においてはT1≧Sとなるように設定される。T1≧Sとすることによっ
て、飛行体4が鉛直上向きに移動時にプロペラガード10cが突出物体に接触しても、プ
ロペラガード10cが突出物体に対して第1連結部111に沿ってスライドするため、飛
行体4自体が停止することなく進行方向に進むことができる。
【0042】
図12は、飛行体4が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した様子を示す図である。飛行
体4が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した場合、
図12に示すようにまず中間フレーム
13又は下部フレーム14の外縁が支点(第1接触点)P1となり、飛行体4がR方向に
回転する。次に、第1の突出フレーム16の外縁が第2接触点P2となり、壁面に接触し
た際には反発力F2が発生する。したがって、本実施形態によれば、飛行体4が鉛直上向
きに移動中に壁面に接触しても、飛行体4を壁面から離れさせることができ、壁面に張り
付いて動けなくなることを防止することができる。
【0043】
図13は、第4の実施形態の変形例に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一
例である。
図13に示すように、第1の突出フレーム16は、突起の先端にバネなどの弾
性部材161を有していてもよい。あるいは、第1の突出フレーム16全体が弾性部材で
構成されていてもよい。すなわち、第1の突出フレーム16の一部又は全部は弾性部材で
あってもよい。第1の突出フレーム16が弾性部材を有することにより、
図12における
第2接触点P2において、壁面に接触する際の反発力を高めることができる。
【0044】
(第5の実施形態)
図14は、第5の実施形態に係るプロペラガードを備える飛行体の側面図の一例である
。
図14に示す飛行体5は、プロペラガード10dと、飛行体本体20と、1以上のプロ
ペラ30と、を備える。プロペラガード10dは、連結フレーム11と、上部フレーム1
2と、中間フレーム13と、下部フレーム14と、台座フレーム15と、第2の突出フレ
ーム17と、を備える。連結フレーム11は、上部フレーム12及び中間フレーム13を
連結させる第1連結部111と、中間フレーム13及び下部フレーム14を連結させる第
2連結部112と、下部フレーム14及び台座フレーム15を連結させる第3連結部11
3と、を有する。
【0045】
プロペラガード10dが第1の実施形態に係るプロペラガード10と相違する点は、さ
らに第2の突出フレーム17を備える点である。第2の突出フレーム17は、上部フレー
ム12及び中間フレーム13の間に突設され、水平方向外向きに突出し、かつ湾曲した構
造(形状)を有するフレームである。第2の突出フレーム17の外縁は、上部フレーム1
2の外縁の外側に位置し、中間フレーム13の外縁及び下部フレーム14の外縁のうち外
側に位置する外縁の内側に位置する。
図14に示す例では、第2の突出フレーム17は、
上部フレーム12に接続される。
【0046】
距離T0は、上部フレーム12の外縁と、中間フレーム13の外縁及び下部フレーム1
4の外縁のうち外側に位置する外縁との間の距離である。距離T2は、第2の突出フレー
ム17の外縁と、中間フレーム13の外縁及び下部フレーム14の外縁のうち外側に位置
する外縁との間の距離である。第1の実施形態においてT0≧Sであることを説明したが
、本実施形態においては、少なくともT2≧SとすればT0≧Sとなる。また、第2の突
出フレーム17は湾曲しているため、T2≧Sでなくても、T0≧Sであればよい。
【0047】
図15は、飛行体5が鉛直上向きに移動時に壁面に接触した様子を示す図である。第2
の突出フレーム17は、
図15に示すようにステップ52のような物体に接触しても湾曲
しているため、T0≧Sであれば飛行体5をD3方向にスライドさせることができる。ま
た、T0≧Sであればよいため、第4の実施形態に係る飛行体4と比較して、飛行体5の
高さH0を低くすることが可能となる。飛行体5の高さH0を低くすることにより、飛行
体5の鉛直方向に対する水平方向の比が大きくなるので、飛行時における安定性を向上さ
せることができる。
【0048】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変
更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形
態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、
種々の変形や変更が可能である。例えば、第3の実施形態に記載のプロペラガード10b
が、第4の実施形態に記載の第1の突出フレーム16、又は第5の実施形態に記載の第2
の突出フレーム17を備えていてもよい。また、第4の実施形態に記載の第1の突出フレ
ーム16の形状が、第5の実施形態に記載の第2の突出フレーム17のように湾曲してい
てもよい。
【符号の説明】
【0049】
1,2,3,4,5 飛行体
10,10a,10b,10c,10d プロペラガード
11 連結フレーム
12 上部フレーム
13 中間フレーム
14 下部フレーム
15 台座フレーム
16 第1の突出フレーム
17 第2の突出フレーム
18 湾曲フレーム
20 飛行体本体
30 プロペラ
31 モーター
50 マンホール
51 構造物
52 ステップ
53 マンホール蓋の受枠
111 第1連結部
112 第2連結部
113 第3連結部