(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】インターポーザ基板及び該インターポーザ基板を用いたデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/11 20060101AFI20241025BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241025BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20241025BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241025BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
H05K1/11 N
H05K1/02 C
H05K3/32 C
H01L23/12 Q
H01L21/60 311S
(21)【出願番号】P 2020216194
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】509352945
【氏名又は名称】田中貴金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000268
【氏名又は名称】オリジネイト弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂入 弘一
(72)【発明者】
【氏名】小柏 俊典
(72)【発明者】
【氏名】西澤 充智
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095572(JP,A)
【文献】特開2009-295635(JP,A)
【文献】特開2003-110203(JP,A)
【文献】特開2001-007530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 1/02
H05K 3/32
H01L 23/12
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1箇所以上の接続部を有する1つ又は複数の被接合部材と重なった状態で接合され、前記被接合部材と電気的に接続されるインターポーザ基板において、
前記インターポーザ基板は、前記被接合部材の前記接続部に対応した1以上の接続領域を有する基材を備え、
前記基材の前記接続領域には、前記基材を貫通する複数の貫通孔が形成されており、
前記複数の貫通孔が相互に近接して形成されることで、前記接続のための1単位となるセグメントを構成するようになっており、前記接続領域内に1以上の前記セグメントが形成されており、
前記貫通孔には、それぞれ、前記貫通孔を貫通する貫通電極と、前記貫通電極の少なくとも一方の端部に形成された断面形状において前記貫通電極よりも幅広となっているバンプが形成されており、
前記貫通電極及び前記バンプは、純度99.9質量%以上、平均粒径が0.005μm~2.0μmである金、銀、銅から選択される一種以上の金属粉末が焼成されてなる金属粉末焼成体からな
り、
前記貫通電極の気孔率と前記バンプの気孔率とが相違していることを特徴とするインターポーザ基板。
【請求項2】
基材とバンプとが接触する領域に金属からなるメタライズ膜を備え、
前記メタライズ膜は、純度99.9質量%以上の金、銀、銅、パラジウム、白金、ニッケルのいずれかからなり、
前記メタライズ膜の厚さは、10nm以上1000nm以下である
請求項1記載のインターポーザ基板。
【請求項3】
更に、メタライズ膜と基材との間に、下地膜を備え、
前記下地膜は、チタン、クロム、タングステン、チタン-タングステン合金、ニッケルのいずれかからなり、
前記下地膜の厚さは、10nm以上1000nm以下である請求項2記載のインターポーザ基板。
【請求項4】
貫通孔内面と貫通電極との間に、前記貫通孔の孔径に対して1/1000以上1/10以下の間隔の隙間を有する請求項1~請求項3のいずれかに記載のインターポーザ基板。
【請求項5】
バンプの断面積は、貫通電極の端部の断面積に対して1.2倍以上9倍以下である請求項1~請求項4のいずれかに記載のインターポーザ基板。
【請求項6】
1のセグメントは、2個以上20個以下の貫通電極で構成されており、
前記2個以上20個以下の貫通電極の配列により形成される外郭が円形、多角形、線形となっている請求項1~請求項5のいずれかに記載のインターポーザ基板。
【請求項7】
金属粉末焼成体からなる貫通電極及びバンプの気孔率は、35%以下である請求項1~請求項6のいずれかに記載のインターポーザ基板。
【請求項8】
1以上の接続部を有する1つ又は複数の被接合部材と、1以上のインターポーザ基板とを重ねて接合することで、前記被接合部材と前記インターポーザ基板とを電気的に接続する工程を含むデバイスの製造方法であって、
前記インターポーザ基板として請求項1~請求項7のいずれかに記載のインターポーザ基板を使用し、
前記インターポーザ基板と前記被接合部材とを重ねて配置し、
前記インターポーザ基板及び/又は前記被接合部材を、一方向又は双方向から1MPa以上50MPa以下で加圧すると共に、150℃以上250℃以下で加熱して前記インターポーザ基板と前記被接合部材とを電気的に接続する工程を含むデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターポーザ基板に関する。特に、パワーデバイス等の大出力の半導体デバイスをシステム・イン・パッケージ化や積層実装するための実装技術に有用であり、デバイスの発熱や熱サイクルによる熱応力に対して耐久性を有するインターポーザ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの小型化、高集積化への要求に応えるため、半導体チップの実装技術としてインターポーザ基板を利用した2.5次元実装が実用化されている。この実装方法では、インターポーザ基板を介して半導体チップや回路基板を厚さ方向に接続し、半導体チップの高集積化を図ると共に、チップ間の信号の高速伝送が図られている。
【0003】
インターポーザ基板は、シリコンやガラス等の基材に、半導体チップのバンプ等の接続部に対応する位置に貫通電極を形成した中間基板である。そして、インターポーザ基板の貫通電極は、基材に形成された貫通孔の内部に導電体を形成して製造される。この貫通電極としては、貫通孔に銅(Cu)等の導電金属をメッキにより充填(ビアフィリング)したものや、孔全体に充填せずに孔内面を導電金属膜で被覆したもの等が知られている。
【0004】
ところで、小型化や高集積化が要求される半導体デバイスの範囲は更に拡大する一方であり、パワーデバイスやLEDデバイス等の大電流・高負荷の半導体デバイスに対してもその要求が大きくなっている。近年、自動車分野におけるEV、PHEV、HEVやそれらの急速充電器等の普及、エネルギー分野における太陽光発電システムやメガソーラーシステム等の普及を背景によるパワーデバイス等の需要の高まりと共に、それらの小型化や高集積化への要求が大きくなっている。そこで、パワーデバイス等の小型化の対応として、上記したインターポーザ基板を利用した実装技術への応用が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-342888号公報
【文献】特開2000-151060号公報
【文献】特開2000-228566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のインターポーザ基板による実装技術は、メモリ(スタックメモリ)やサーバ用・グラフィック用PC等といった、比較的低電流駆動で発熱量の少ない半導体デバイスへの応用が主であった。そして、これまでのインターポーザ基板のパワーデバイス等への適用の可否については否定的な見方が多い。これは、パワーデバイス等の電力変換・制御用の半導体デバイスは、大電流で駆動し動作温度も高温となる傾向があることによる。特に、デバイスの駆動のオン・オフにより生じる熱サイクルがインターポーザ基板に与える影響は大きいと予測される。半導体デバイスにおいて、半導体チップ等の被接合部材とインターポーザ基板を構成する基材及び貫通電極とは、それぞれ、熱伝導率や熱膨張率が相違する。そして、それらの相違に起因する熱応力によって、貫通電極に破損や接続不良が発生するおそれがある。パワーデバイス等の発熱量の大きい半導体デバイスでは、その影響が特に大きくなることが予測される。そのため、パワーデバイス等に対応可能なインターポーザ基板の適用の報告例はこれまで少なく、その実装方法は従来の表面実装に依らざるを得なかった。
【0007】
そこで本発明は、半導体デバイス、特にパワーデバイス等の能動デバイスについて、システム・イン・パッケージ化や立体的な積層実装を可能とするインターポーザ基板であって、高温下や熱サイクルが過酷な状態における耐久性に優れるものを提供することを目的とする。また、このインターポーザ基板による実装方法を適用したデバイス製造方法についても開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、1箇所以上の接続部を有する1つ又は複数の被接合部材と重なった状態で接合され、前記被接合部材と電気的に接続されるインターポーザ基板において、前記インターポーザ基板は、前記被接合部材の前記接続部に対応した1以上の接続領域を有する基材を備え、前記基材の前記接続領域には、前記基材を貫通する複数の貫通孔が形成されており、前記複数の貫通孔が相互に近接して形成されることで、前記接続のための1単位となるセグメントを構成するようになっており、前記接続領域内に1以上の前記セグメントが形成されており、前記貫通孔には、それぞれ、前記貫通孔を貫通する貫通電極と、前記貫通電極の少なくとも一方の端部に形成された断面形状において前記貫通電極よりも幅広となっているバンプが形成されており、前記貫通電極及び前記バンプは、純度99.9質量%以上、平均粒径が0.005μm~2.0μmである金、銀、銅から選択される一種以上の金属粉末が焼成されてなる金属粉末焼成体からなることを特徴とするインターポーザ基板である。
【0009】
本発明者等は、半導体デバイスの熱サイクルによって生じる貫通電極が受ける熱応力に対し、2つの手段によりその影響を抑制してインターポーザ基板に耐久性を付与している。第1の手段として、本発明では、貫通電極が複数の小径の貫通電極で構成している。従来のインターポーザ基板では、半導体素子等の被接合部材が備える接続部の構造・面積等に応じて1又は複数の貫通電極が形成される。本発明では、従来技術における前記の1の貫通電極を電気的接続の1単位と称する。本発明におけるインターポーザ基板では、複数の小径の貫通電極を設定してそれらにより電気的接続の1単位を構成する。つまり、従来技術では1の貫通電極で1単位の電気的接続を構成していたが、本発明では複数の貫通電極が1単位の電気的接続を構成している。このように貫通電極を分散することで熱応力を分断し、熱応力の影響を緩和することを図っている。
【0010】
そして、本発明におけるインターポーザ基板の耐久性向上のための第2の手段は、貫通電極の構成材料の改良である。従来のインターポーザ基板においては、貫通電極がメッキ等で形成されるのが一般的である。メッキ等により形成される金属は緻密なバルク状で硬質であり、繰り返し応力によって破断のおそれがある。本発明では、所定の粒径・純度の金属粉末の焼成体で貫通電極を形成する。金属粉末の焼成体は、バルク状金属に対して材料構造・組織を異にする材料であり、柔軟性を有し、熱サイクルによる応力の緩和作用があると考えられる。このように、本発明では貫通電極の構造面からも熱サイクルに対する耐久性を付与する。
【0011】
以下、本発明に係るインターポーザ基板の構成及びその製造方法、並びに本発明に係るインターポーザ基板を適用する実装技術について説明する。本発明のインターポーザ基板の基本的構成は、基材と基材に形成された貫通孔及び貫通電極並びにバンプである。以下の説明を理解し易くするため、
図1及び
図2に本発明に係るインターポーザ基板の一例と、該インターポーザ基板を被接合部材(パワーモジュール等)に接合した状態の一例を示す。
【0012】
A 本発明に係るインターポーザ基板
(I)接合対象(被接合部材)
本発明に係るインターポーザ基板は、1又は複数の被接合部材と接合されて被接合部材と電気的に接続される。被接合部材とは、半導体デバイスを構成する半導体素子、集積回路、パワーモジュール、マルチチップモジュール、回路基板等である。1の被接合部材との接合においては、インターポーザ基板のいずれかの面の上に被接合部材を重ねて接合する。また、2以上の被接合部材との接合では、1対の被接合部材の間にインターポーザ基板を挟持して接合する。このとき、インターポーザ基板を介して被接合部材間の電気的接続が可能となる。また、インターポーザ基板の片面に複数の被接合部材を接合しても良い。
【0013】
被接合部材は、電気的接続をするための接続部を1以上有する(
図1参照)。接続部とは、被接合部材となる半導体素子、集積回路、マルチチップモジュール、回路基板等に設定形成された、電極、電極パッド(バンプ)、配線、端子等の電気的な接続をするための導体であり、その形状及び寸法は特に限定されない。
【0014】
(II)基材
基材は、1以上の被接合部材を立体的に実装するインターポーザ基板の主要な構成部材である。基材は、その表面において、上記した被接合部材の接続部と対応する位置に接続領域が設定される(
図1参照)。基材上の接続領域は、実装時において基材と被接合部材と重ね合わせたときに、被接合部材の接続部と重畳するようになっている(
図2参照)。この接続領域は、後述する複数の貫通孔で構成されるセグメントを1以上含んでいる。接合領域とは、基板上に仮想的に設定される領域であり、基材の外観において視覚的に認識・把握されるような線引きや凹凸等で区画されている必要はない。この接合領域は、インターポーザ基板の設計において、セグメント(貫通孔・貫通電極)の配置を定めるための仮想領域であれば良い。
【0015】
基材の構成材料は、従来のインターポーザ基板と同様に、酸化膜付きシリコン、硝子、セラミック、樹脂等が挙げられる。基材は、単層で構成されていても良く、複数層が積層した構造を有していても良い。また、基材中に第1、第2被接合部材とは別に、受動素子、論理回路、アナログ回路を内蔵していても良い。
【0016】
(III)貫通孔
基材の接合領域内には、複数の貫通孔が形成される(
図1参照)。従来のインターポーザ基板では、被接合部材の接続部との電気的接続1単位に対して1つの貫通孔が形成されるのに対し、本発明のインターポーザ基板では複数の小径の貫通孔に設けられた複数の貫通電極により電気的接続の1単位を形成する。上述の通り、複数の貫通電極により熱応力を分散し緩和するためである。この電気的接続の1単位を形成する複数の貫通孔及び貫通電極の集合を本発明ではセグメントと称する。セグメントは、基材の接合領域内に1つ以上形成され、被接合部材の接続部1箇所に対し、1以上のセグメントが接合される。尚、1の接合領域内に形成されるセグメントの数及び配置パターンは特に制限はなく任意に設定可能となる。また、1のセグメントに形成される貫通孔(貫通電極)の数及び配置パターンも任意に設定可能である。
【0017】
貫通孔の孔径は、10μm以上100μmが好ましい。この孔径に関しては、従来の一般的なインターポーザ基板における貫通孔の孔径が200μm以上であることを考慮すると十分に微細なものといえる。また、1のセグメントで形成される貫通孔(貫通電極)の数は特に定めはない。被接合部材の接続部に対して必要となる接合面積と貫通孔の面積とから任意に設定できる。また、複数の貫通孔は相互に近接してセグメントを形成するが、1のセグメント内における貫通孔の間隔は、隣接する他のセグメントとの距離より短ければ特に限定されない。
【0018】
(IV)貫通電極
上述した貫通孔の内部には貫通電極が形成される(
図2参照)。この貫通電極は、純度99.9質量%以上で平均粒径が0.005μm~2.0μmである金、銀、銅から選択される一種以上の金属粉末が焼成してなる金属粉末焼成体より形成される。本発明の金属粉末焼成体により形成される貫通電極は、微小な金属粉末が塑性変形しつつ強固に結合して形成される成形体であり、電極として有効に作用する。そして、金属粉末焼成体は、比較的緻密ではあるものの、微細な気孔を有することから、負荷された応力を緩和することができる。よって、完全なバルク状金属からなる貫通電極と対比すると熱応力に対する柔軟性・耐久性を有する。本発明では、上述した複数の微小な貫通電極の設定と貫通電極の構造により、熱応力に対する耐久性を確保する。
【0019】
金属粉末焼成体を形成する金属粉末の純度及び粒径を上記の範囲とするのは、粉末の純度が低いと粉末の硬度が高くなり、焼成体形成時の粉末の変形・再結晶化が進行し難くなり緻密性が低下するからである。また、粒径に関しても、粗大粒径の粉末では、焼成後の緻密性は低下することとなる。本発明における貫通電極は、気孔を有する多孔質構造とすることによる応力緩和を狙ったものであるが、緻密性は必要である。貫通電極の気孔が粗大となり緻密性に劣っていると、導電性が低下するだけでなく本質的な強度不足が生じるおそれもある。貫通電極として要求される強度と導電性を確保しつつ、応力緩和作用を有する金属粉末焼成体を得る上で、上記した金属粉末の純度と平均粒径が必要となる。また、電極の構成金属である金属粉末の金属種を金、銀、銅とするのは、これらの金属は電極材料として好適であると共に、焼成体としたときに良好な塑性変形能を有するからである。
【0020】
上記の通り、本発明の貫通電極を構成する金属粉末焼成体は、強度を確保しつつ応力緩和作用を得るための適度な気孔を有する。その具体的な基準として、金属粉末焼成体の気孔率(空隙率)は、7%以上35%以下が好ましい。この気孔率は、任意の断面における貫通電極中の気孔の面積率で定義される。その測定は、例えば、貫通電極の任意断面を顕微鏡観察・電子顕微鏡観察し、撮像された写真を基に観察領域内における気孔部分の面積率を測定することで得ることができる。面積率測定では、適宜に画像解析のためのソフトウエアを使用することができる。
【0021】
(V)貫通電極端部のバンプ
そして、本発明においては、貫通電極の少なくとの一方の端部に、貫通電極よりも幅広の金属粉末焼成体からなるバンプを備える(
図2参照)。バンプは、被接合部材である半導体チップ、集積回路、パワーモジュール、マルチチップモジュール等と安定的な電気的接続を得るための接続部材である。更に、金属粉末焼成体は、加圧及び加熱されることで緻密化し、金属元素の拡散を伴いながら接触する材料と接合する作用を有する。つまり、バンプはインターポーザ基板と被接合部材とを接合する接合材料としても機能する。
【0022】
バンプは、上記した貫通電極と同じ金属からなる金属粉末焼成体で構成される。貫通電極と同じ金属とすることで、被接合部材と接合したときに相互に歪(熱歪)が生じないようにするためである。そして、バンプを構成する金属粉末焼成体の金属粉末の粒径及び純度は、貫通電極と同じとする。また、バンプの気孔率は、貫通電極の気孔率と同じく7%以上35%以下であることが好ましい。
【0023】
後述の通り、バンプ及び貫通電極は金属粉末を含む金属ペーストを焼成することで形成される。ここで、バンプ形成のために設定可能な焼成温度の範囲は、貫通電極形成のために設定可能な焼成温度範囲より低温とするのが好ましい。これはバンプの接合材料としての機能を考慮したからである。金属ペーストの焼成においては、焼成温度を高温にすることで、金属粉末同士の接触と気孔の結合・成長が進行する。低温での焼成では気孔は成長せずに微小な状態が維持されている。バンプの接合性、特に、比較的低温での接合性を確保するには、気孔径が小さく金属粉末同士の接触点が増加するようにした方が好ましい。そこで、バンプの焼成温度を比較的低温にして低温接合性を確保することとしている。そのため、気孔径や金属粉末の状態に関し、バンプの材料組織と貫通電極の材料組織とが相違することがある。また、バンプの気孔率に関しても、その好適範囲は貫通電極と同じであるが、インターポーザ基板の製造方法によってはバンプの気孔率と貫通電極の気孔率とが相違することがある。
【0024】
図3を参照しつつ本発明におけるバンプ及び貫通電極の外観を説明する。バンプは、貫通電極と接触する面において、貫通電極よりも幅広であることを要する。貫通電極は微細な気孔を有するポーラスな構造である。被接合部材とインターポーザ基板との接合の際、荷重を貫通電極の端面全体に均等に伝達させるため、バンプ幅を貫通電極の端部径より大きくすることが好適だからである。尚、ここでの貫通電極及びバンプの幅とは、基板に対する垂直方向の断面形状について求められる。そして、バンプの断面積(貫通電極と境界面における水平方向の断面積)は、貫通電極の端部の水平方向の断面積に対して1.2倍以上9倍以下であることが好ましい。
【0025】
バンプの垂直方向及び水平方向における形状については特に制限はない。垂直方向断面において、幅が均一な四角形状であっても良いし、幅が変動する台形状又は逆台形状或いは円弧形状であっていても良い。また、平面方向断面における形状も、円形であっても良いが、他の形状であっても良い。
【0026】
(VI)セグメント
以上説明した貫通孔とバンプを備える貫通電極が複数集まることでセグメントが形成される。1のセグメントに形成される貫通孔(貫通電極)の配置パターンは、任意に設定可能である。
図4(a)に1のセグメントにおける貫通孔の配置パターンの例を示す。
図4(a)に示す通り、貫通孔の外郭が概略で円形、多角形等の図形若しくは線形(直線、曲線、らせん)を描くように貫通孔を配置することができる。また、セグメントを構成する複数の貫通電極とバンプは電気的接続の一単位を形成するものであるので、隣接するバンプが連結していても良い(
図4(b))。
【0027】
(VII)その他の任意的構成
(VII-1)メタライズ膜
上記したバンプを形成するとき、基材表面の基材とバンプとが接触する領域について、金属からなるメタライズ膜を形成することが好ましい。上記の通り、バンプを構成する金属粉末焼成体は、基材と被接合部材とを接合するための接合材料として作用する。この接合作用は、加圧及び加熱による金属粉末の接触と接触部における金属元素の拡散によって生じる。基材とバンプとの接触面にメタライズ膜を形成することで、金属粉末焼成体とメタライズ膜との接合界面で熱拡散による高度な密着が生じ、前記の接合作用を高めることができる。また、メタライズ膜は、バンプの構成金属(金等)の基板への拡散を抑制する作用や、後述する下地膜がある場合に、下地膜の構成金属(チタン等)のバンプへの拡散を抑制する作用もある。これらの作用を考慮して、異なる金属からなる金属膜を2層以上形成してメタライズ膜としても良い。
【0028】
メタライズ膜は、純度が99.9質量%以上の金、銀、銅、パラジウム、白金、ニッケルのいずれかよりなるものが好ましい。メタライズ膜の金属純度を99.9質量%以上とするのは、純度の低い金属は不純物が酸化膜となってメタライズ膜表面に拡散して接合を阻害するおそれがあるからである。メタライズ膜は、より好ましくは、バンプ及び貫通電極を構成する金属粉末の金属と同材質の金属が好ましい。また、単層又は複数層のメタライズ膜の厚さは、10nm~1000nmとするのが好ましい。
【0029】
メタライズ膜は、バンプに対する密着性確保のためバルク体の金属からなるのが好ましく、メッキ(電解メッキ、無電解メッキ)、スパッタリング、蒸着、CVD法等により形成されたものが好ましい。尚、メタライズ膜は1層のみからなるもので良いが、多層構造を有しても良い。例えば、基材側に白金膜を形成し、その上(バンプ側)に金膜を形成しても良い。多層構造とする場合、バンプ側のメタライズ膜は、貫通電極を構成する金属粉末の金属と同材質で形成するのが好ましい。
【0030】
また、メタライズ膜は、基材上に直接成膜されていても良いが、下地膜を介して成膜されたものであっても良い。下地膜は、メタライズ膜と基板との密着性を向上させるために形成される。下地膜としては、チタン、クロム、タングステン、チタン-タングステン合金、ニッケルからなるものが好ましい。下地膜も、メッキ、スパッタリング、蒸着、CVD法等により形成されたものが好ましく、10nm~1000nmの厚さのものが好ましい。
【0031】
メタライズ膜及び下地膜は、少なくとも、バンプと基材との接触面に形成されていればよい。上記のとおり、メタライズ膜はバンプと基材との接合性を高めるためのものだからである。但し、電気的絶縁が要求される部分を除き、バンプと基材との接触面を越えて広範囲にメタライズ膜を形成しても良い。例えば、セグメントとなる領域内にメタライズ膜を形成しても良い。また、貫通孔の内面にメタライズ膜及び下地膜が形成されていても良い。上記したように、これらの金属薄膜はスパッタリングやCVD法等で形成されることがあり、バンプとの接触面への成膜の際に同時に貫通孔内面にも成膜されることがある。バンプと基材との接触面以外の領域にメタライズ膜及び下地膜が形成される場合についても、上記した各金属膜の厚さの範囲内とする。尚、メタライズ膜や下地膜の厚さについては、インターポーザ基板断面を顕微鏡観察(SEM等)することで確認し測定することができる。
【0032】
(VII-2)貫通電極と貫通孔内面との隙間
また、貫通電極と貫通孔内面とは密着していても良いが、貫通孔内面と貫通電極との間に隙間があっても良い(
図3参照)。隙間によって、基材と貫通電極との熱膨張率差による影響を緩和できることがある。具体的には、貫通孔の孔径に対して1/1000以上1/10以下の間隔の隙間を有することが許容される。隙間の間隔は、貫通孔の長さ方法で完全に一定である必要はなく、間隔が前記範囲内であれば良い。尚、この場合の貫通孔内面とは、貫通孔の内側の最表面であり、貫通孔内壁に金属膜が形成されている場合には、金属膜の表面と貫通電極との間隔が前記範囲内であることを要する。また、孔径とは貫通孔自体の直径であり、貫通孔内壁にメタライズ膜や下地膜が形成されていた場合にはそれらの厚さは含まれない。
【0033】
B 本発明に係るインターポーザ基板の製造方法
次に、本発明に係るインターポーザ基板の製造方法について説明する。これまで述べた通り、本発明に係るインターポーザ基板は、1つの電気的接続について複数の貫通電極を形成する点と、貫通電極及びその端部にあるバンプの構成材料を金属粉末の焼成体とすることを特徴とする。この点、貫通孔の形成方法自体は、従来のインターポーザ基板の貫通孔の形成方法と同様である。即ち、本発明に係るインターポーザ基板の製造方法においては、貫通電極及びバンプの形成方法において特徴を有する。他の工程に関しては、基本的に通常のインターポーザ基板と同様となる。
【0034】
貫通電極の形成工程は、貫通孔を有する基板に対し金属粉末を含む金属ペーストを塗布・充填した後、金属粉末ペーストを乾燥、焼成する工程である。また、貫通電極端部のバンプの形成についても、貫通電極と同時又は貫通電極の形成後、貫通電極の端面に金属ペーストを塗布し、金属粉末ペーストを乾燥、焼成する。以下の説明においては、金属ペーストの構成を説明し、その上で金属ペーストを適用した具体的なインターポーザ基板の製造方法を説明する。
【0035】
(1)貫通電極及びバンプ形成のための金属ペーストの構成
貫通電極及びバンプを形成するための金属ペーストは、純度が99.9質量%以上であり、平均粒径が0.005μm~2.0μmである金、銀、銅から選択される一種以上の金属粉末と有機溶剤とからなるものが基本構成となる。金属粉末の純度を99.9%以上とするのは、上記の通り、焼成体としたときの変形能や焼結性を考慮したことに加え、導電性の確保も考慮するものである。また、金属粉末の平均粒径を0.005μm~2.0μmとするのは、2.0μmを超える粒径の金属粉は、微小な貫通孔に充填したときに大きな金属粉末間の距離が大きくなり、最終的に必要な通電性を確保し難くなるからである。また、金属粉末間の距離が大きいと接合強度の確保も難しくなる。一方、0.005μm未満の粒径の金属粉末は、ペースト中で凝集して分散し難くなり、また、焼成時の収縮率が大きくなり貫通孔を充填することが困難となる。尚、本発明において金属粉末の平均粒径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布における積算値50%粒径や、顕微鏡観察(SEM)により複数の金属粉末を観察し二軸法で測定した粒径の平均値を求めることで得ることができる。
【0036】
金属ペーストで用いる有機溶剤としては、エステルアルコール、ターピネオール、パインオイル、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、カルビトール、パークロール、メンタノールが好ましい。これらの溶剤は、レジストへの攻撃性も低く、且つ、比較的低温(50℃未満)でも揮発可能であり、金属ペースト塗布後の乾燥を容易なものとすることができる。特に、パークロールは室温での乾燥が可能であり特に好ましい。
【0037】
金属ペーストの金属粉末と有機溶剤との配合割合については、金属粉末を60以上99質量%以下とし有機溶剤を1以上20質量%以下として配合するのが好ましい。かかる割合にするのは、金属粉末の凝集を防ぎ、且つ電極を形成するのに十分な金属粉末を供給できるようにするためである。この金属粉末の配合割合は、焼成前後の貫通電極の体積差に影響する。上記した貫通孔内面と貫通電極との隙間は、金属ペーストの金属粉末の配合割合と焼成条件に影響する。好適な隙間を形成する上では、金属粉末の配合割合は、70質量%以上98質量%以下がより好ましい。
【0038】
尚、本発明で使用する金属ペーストは、添加剤を含んでも良い。この添加剤としては、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、アルキッド樹脂から選択される一種以上がある。例えば、アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル重合体を、セルロース系樹脂としては、エチルセルロースを、アルキッド樹脂としては、無水フタル酸樹脂を、それぞれ挙げることができる。これらの添加剤は、金属ペースト中での金属粉末の凝集を抑制する作用を有し、金属ペーストを均質なものとする。添加剤の添加量は、金属ペーストに対して2質量%以下の割合とすることが好ましい。安定した凝集抑制効果を維持しつつ、金属粉含有量を貫通孔充填に十分な範囲内とすることができる。
【0039】
但し、本発明で使用する金属ペーストは、基板表面の配線電極・配線パターン形成等で広く用いられている一般的な金属ペーストと相違し、ガラスフリットは含まない。金属ペーストにガラスフリットを混合しないのは、緻密な貫通電極を形成すると共に、電極中に再結晶化を阻害しうる不純物を残留させないためである。尚、金属ペーストを構成する有機溶剤や任意に添加される上記の添加剤等の金属粉末以外の成分は、充填後の乾燥、焼成工程で消失するので、ガラスフリットのような阻害要因とはならない。
【0040】
(2)金属ペーストを適用した本発明に係るインターポーザ基板の製造方法
ここで、上記した金属ペーストを適用したインターポーザ基板の製造プロセスについて、具体的且つ好適な2つの態様を説明する。
【0041】
(2-1)本発明に係るインターポーザ基板の製造方法の第1の態様
この製造プロセスでは、基材への貫通孔の形成(孔あけ)後、貫通電極及びバンプを同時に形成する工程である。
図5(a)~(e)は、この製造プロセスの概略を説明する図である。このプロセスについて、上記した金属ペーストの好適な塗布方法・焼成条件と共に説明する。
【0042】
(a)基材への貫通孔形成
基材について、接合領域及びセグメントを設定し、セグメント毎に複数の貫通孔を形成する。貫通孔の形成方法としては、従来のインターポーザ基板と同様に、レーザー加工、ドライエッチング、ウエットエッチング、超音波加工、ドリルによる穴あけ加工、サンドブラスト等が適用できる。本発明においては、シリコンやガラスからなる基板に微小な貫通孔を近接しつつ複数形成することを要するため、レーザー加工、ドライエッチング、ウエットエッチングが好ましい。また、基材としてシリコン基材を使用する場合、貫通孔形成後に熱酸化膜等の絶縁層を形成することが好ましい。
【0043】
(b)バンプ形成のためのマスクパターン形成
貫通孔形成後は、必要に応じて基材上にメタライズ膜を形成する。メタライズ膜の形成方法としては、メッキ、スパッタリング、蒸着、CVD法等によることができる。尚、この段階で、基板表面と共に貫通孔の内壁に金属膜が形成されることもある。
【0044】
この第1の態様においては、バンプ形成のためのマスキングによるパターン形成を行う。マスクパターンの作成は、感光性フィルムやフォトレジスト等の感光性マスキング材の塗布とフォトエッチングが好適である。
【0045】
(c)金属ペーストの塗布充填
次に、上述した金属粉末を含む金属ペーストを基材上に塗布し、貫通孔内部及びマスクパターンのバンプに対応する凹部に金属ペーストを充填する。金属ペーストの塗布は、基板上に金属ペーストを適切な量で供給する。スピンコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等によりペーストを塗布する方法や、適当量の金属ペーストを供給後ヘラ等で広げる方法等が適用できる。また、貫通孔への充填を好適に行うため、適当量の金属ペーストを供給後、金属ペーストに所定周波数の機械的振動を与えても良い。本発明で適用される金属ペーストは、有機溶剤に金属粉末のみが分散したものが基本形態であって、流動性に乏しいことがある。そのため、貫通孔に間隙なく金属ペーストを充填するためには、機械的振動の印加が好ましい。金属ペーストに印加する機械的振動の周波数は60Hz~300kHzとするのが好ましい。この範囲での振動により、金属ペーストの流動性を向上させることができる。
【0046】
機械的振動を付与しつつ金属ペーストを塗布する具体的な手法としては、基板に金属ペーストを供給後或いは供給しながら、上記周波数で振動させたブレード(ヘラ)を金属ペーストに接触させながら基板全体に塗り広げることが好ましい。金属ペーストに対し直接機械的振動を与えることにより、金属ペースト中の金属粉末に振動が加わり、流動性が向上する。
【0047】
更に、金属ペーストを貫通孔内部に完全に侵入させる上でより好ましい態様としては、貫通孔を減圧しても良い。貫通孔の減圧方法としては、減圧したチャンバー内で塗布を行うことや、基板の裏面(金属ペーストを塗布する面の反対)を減圧するのが好ましく、貫通孔内部が-10kPa~-90kPaとなるようにするのが好ましい。以上の金属ペーストに対する機械的振動及び貫通孔の減圧により貫通孔に十分に金属ペーストが充填することができる。
【0048】
(d)金属粉末の焼成
金属ペーストの塗布後は、任意に金属ペーストの乾燥を行うことができる。金属ペーストの塗布・充填後に直ちに焼成を行うと、有機溶剤揮発による急激なガス発生によりボイドが発生し焼成体の形状に影響が生じることがある。また、一旦乾燥を行うことで、貫通孔中の金属粉末を仮固定することができる。乾燥を行う場合、乾燥温度は80℃未満が好ましく、室温程度でも可能である。
【0049】
金属ペーストを焼成するときの加熱温度は80℃以上100℃以下とするのが好ましい。このような温度範囲とするのは、80℃未満では金属粉末の焼成が進行せず、ある程度の緻密性を有する貫通電極及びバンプを形成することができないからである。また、この第1の態様の焼成工程は、貫通電極とバンプとを同時に焼成する工程である。この焼成工程で100℃を超える焼成温度とすると、上述した気孔の成長等がバンプとなる焼成体に生じて接合性が損なわれる。これに加えて、高温の焼成は、レジスト等のマスクパターンへのダメージを与えることが懸念される。これらを考慮して、第1の態様では焼成温度の上限を100℃とする。尚、この焼成工程における焼成時間は、10分以上2時間以下とするのが好ましい。
【0050】
(e)その他の工程
上記の焼成工程により金属粉末は焼成され固化し、貫通電極及びバンプが形成される。その後は、マスクパターンの除去により、インターポーザ基板の基本的な形態ができる。バンプを片面のみに形成した場合には、他方の面についてメタライズ膜を形成しても良い。また、製造したインターポーザ基板について樹脂等による気密封止処理を行っても良い。
【0051】
(2-2)本発明に係るインターポーザ基板の製造方法の第2の態様
この製造プロセスは、貫通電極の形成とバンプの形成とを別々に行う工程である。そのため、金属ペーストの焼成工程は2回行われる。
図6(a)~(e)は、この製造プロセスの概略を説明する図である。以下、各工程を説明する。
【0052】
(a)基材への貫通孔形成
第2の態様でも、最初に基材への貫通孔の形成と必要に応じてメタライズ膜形成を行う。貫通孔の形成方法等の好適な工程については、上記第1の態様と同様である。
【0053】
(b)金属ペーストの塗布充填と焼成(第1の焼成工程)
この第2のプロセスでは、基材に貫通孔と必要に応じて絶縁層を形成した後、金属ペーストを基材上に塗布し、貫通孔に金属ペーストを充填する。また、基材上にメタライズ膜を形成する場合には、金属ペースト塗布前に成膜処理を行う。金属ペーストの塗布方法や好適な具体的条件は、上記第1の態様と同様である。
【0054】
そして、貫通孔への金属ペースト充填後、貫通電極形成のための焼成を行う。この第2の態様では、貫通電極形成とバンプ形成のそれぞれで焼成を行い、ここでの焼成工程は第1の焼成工程となる。この第1の焼成工程における金属粉末の焼成温度は、上記第1の態様と同様の温度範囲(80℃~100℃)としても良いが、それよりも高温での焼成処理も可能である。第2の態様では、貫通電極とバンプとを別々に製造するプロセスであり、第1の焼成工程では貫通電極の焼成のみを行うので、バンプの接合性の低下を考慮する必要はない。また、この段階では基材上にレジスト等によるマスクパターンがないので、そのダメージを考慮する必要もない。そのため、第1の焼成工程では焼成温度を比較的高温とすることができる。具体的には、焼成温度を100℃以上300℃以下とすることができる。このように焼成温度を高温にすることで、金属粉末の焼成をより深度まで進行させることができ、強度のある貫通電極を形成することができる。
【0055】
(c)バンプ形成(マスクパターン形成と金属ペースト充填)
貫通電極が形成された後、その上にバンプを形成する。上記第1の態様と同様にして貫通電極が形成された基材の上にレジスト等でパターニングした後、金属ペーストを塗布する。この際の金属ペースト塗布の際にも、減圧下での塗布や機械的振動の付与ができる。
【0056】
(d)バンプの焼成(第2の焼成工程)
マスクパターンに金属ペーストを塗布した後、適宜に乾燥を行い、バンプを形成するため第2の焼成工程を行う。これまで述べた通り、バンプの焼成においては接合性(低温接合性)を確保するため、比較的低温での焼成が好ましい。そのため、この第2の焼成工程の焼成温度は、第1の態様におけるバンプの焼成温度と同じく80℃以上100℃以下とすることが好ましい。焼成時間は第1の態様と同様とするのが好ましい。
【0057】
(e)その他の工程
以上の工程により、バンプの金属粉末が焼成される。その後は、マスクパターンの除去により、インターポーザ基板の基本的な形態ができる。この態様においても基材の一方の面についてのメタライズ膜形成や気密封止処理を行うことができる。
【0058】
C 本発明に係るインターポーザ基板による半導体デバイスの製造方法
以上説明した本発明に係るインターポーザ基板は、半導体素子、集積回路、マルチチップモジュール、回路基板等を被接合部材とした半導体デバイスの製造に好適である。即ち、この半導体デバイスの製造方法は、1以上の接続部を有する1つ又は複数の被接合部材と、1以上のインターポーザ基板とを重ねて接合することで、前記被接合部材と前記インターポーザ基板とを電気的に接続する工程を含むデバイスの製造方法であって、前記インターポーザ基板としてこれまで述べたインターポーザ基板を使用し、前記インターポーザ基板と前記被接合部材とを重ねて配置し、前記インターポーザ基板及び/又は前記被接合部材を、一方向又は双方向から1MPa以上50MPa以下で加圧すると共に、150℃以上250℃以下で加熱して前記インターポーザ基板と前記被接合部材とを電気的に接続する工程を含むデバイスの製造方法である。
【0059】
本発明に係るインターポーザ基板のバンプを構成する金属粉末焼成体は、加圧及び加熱されることで、金属粉末同士の接触と金属元素の拡散により焼結すると共に、接触する材料と密着し接合する。この金属粉末の焼結と接合は、加圧時に優先的に圧縮されるバンプの外周部分で特に効果的に発現する。そして、この接合により、被接合部材の接続部とインターポーザ基板のバンプとの間に電気的接続が確立される。
【0060】
上記の通り、接合時の加圧及び加熱の条件は、1MPa以上50MPa以下とし150℃以上250℃以下とする。1MPa未満或いは150℃未満であると金属粉末焼成体の焼結が生じ難く密着性も乏しくなり、接合強度が不足するおそれがある。一方、50MPa超或いは250℃超で加圧・加熱すると、被接合部材である半導体素子等における機械的・熱的ダメージが懸念される。この接合処理に要する時間は、1分以上60分以下とするのが好ましい。尚、上記条件における加圧力とは、インターポーザ基板上に形成されたバンプであって、接合工程で加圧される全てのバンプに対する加圧力である。即ち、加圧力を設定するために基準となる面積は、加圧されるバンプの面積の合計面積が適用される。
【0061】
上記接合工程を経ることで、バンプを構成する金属粉末焼成体は十分に圧縮変形し、インターポーザ基板と被接合部材とが接合される。この状態で接合を完了しても良いが、より強固な接合強度を得るため、接合工程後にバンプを加熱する後熱処理を行っても良い(ポストシンタリング)。ポストシンタリングは、主に、金属粉末を追加的に焼結すること目的とする処理である。この処理によりバンプ内の気孔を略消滅させて更なる緻密化を図ることができる。
【0062】
ポストシンタリングを行う場合の加熱温度は、100℃以上250℃以下が好ましい。100℃未満では焼結及び緻密化の進行が期待できない。250℃を超えるとデバイスへのダメージが懸念されると共に、焼結が過度に進行しバンプが硬過ぎる状態となるからである。ポストシンタリングの加熱時間は、10分以上120分以下とすることが好ましい。ポストシンタリングは、無加圧で行っても良く、加圧下で行っても良い。加圧する場合は、10MPa以下とすることが好ましい。
【0063】
ポストシンタリングは、バンプと被接合部材との接合強度の向上に加えて、接合工程における処理時間を短縮するメリットがある。接合工程における金属粉末の焼結のための加熱にはある程度の時間が必要である。接合工程では加圧も同時に行うが、加圧についてはさほどの時間を要しない。ポストシンタリングの実施を予定すれば、接合工程では加圧を優先して短時間で処理し、加熱に不足があったとしてもこれを補うことができる。
【0064】
以上の接合方法と任意的工程であるポストシンタリングを経て、インターポーザ基板と被接合部材を強固に接合することができ、同時に電気的接続も確立される。
【発明の効果】
【0065】
以上説明したように、本発明に係るインターポーザ基板は、金属粉末焼成体からなる小径の貫通電極を複数設定することにより、熱応力を分散・緩和し耐久性が向上されている。本発明は、特に、発熱が大きいパワーデバイス等の半導体デバイスの実装に適用することができる。そして、基板構成の多層化、素子の配線長の短縮化を図ることができ、半導体素子の電気特性を有効に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】本発明に係るインターポーザ基板と被接合部材の一例を説明する図。
【
図2】インターポーザ基板を被接合部材(パワーモジュール等)に接合した状態
【
図3】本発明に係るインターポーザ基板の貫通電極端部の周囲及びバンプの態様を説明する図。
【
図4】本発明に係るインターポーザ基板の1のセグメントにおける貫通孔・貫通電極の配置パターンの例及びバンプの他の態様の例を示す図。
【
図5】本発明に係るインターポーザ基板の製造方法の第1の態様の概略を説明する図。
【
図6】本発明に係るインターポーザ基板の製造方法の第2の態様の概略を説明する図。
【
図7】本実施形態で製造したインターポーザ基板のセグメント及び貫通孔の配置パターンを示す図。
【
図8】本実施形態で製造したインターポーザ基板の貫通電極及びバンプの断面組織の写真。
【
図9】本実施形態で製造したインターポーザ基板の貫通孔内面と貫通電極との境界付近の拡大写真。
【
図10】冷熱サイクル試験後のインターポーザ基板及び半導体チップの表面の写真。
【
図11】冷熱サイクル負荷後にシェア強度を測定した後のインターポーザ基板及び半導体チップの表面の1セグメント部分の拡大写真。
【発明を実施するための形態】
【0067】
第1実施形態:以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本実施形態では、金属粉末として金粉末を用いた金属ペーストを用意しつつ、上記した第2の態様(
図6)に基づきインターポーザ基板を製造した。そして、このインターポーザ基板を用いた半導体チップの接合強度の評価試験を行った。
【0068】
まず、基材としてSiウエハ(寸法:4インチ、厚さ300μm)を用意し、所定のパターンで貫通孔を形成した(
図6(a)参照)。ここでは、
図7のように、1セグメントおける貫通孔を7個とし、それらの外郭が6角形となるようなパターンとした。そして、このセグメントを7列構成(1列当たりのセグメント数:3-4-3-4-3-4-3)で形成した箇所と、独立した1のセグメントを2箇所形成し箇所を接合領域と仮定した(貫通電極の数:182本)。貫通孔の形成は、フォトレジストでパターンを形成してドライエッチングで加工した。貫通孔の形状は垂直孔とし、孔径を50μmとした。貫通孔形成後、シリコン基材を大気中で熱処理して熱酸化膜を形成した。
【0069】
貫通孔を形成したシリコン基材の片面に下地膜を形成した。下地膜として、スパッタリング法によりTi(50nm)を成膜し、次いで金(300nm)のメタライズ膜を成膜した(
図6(b)参照)。このとき基材表面と共に、貫通孔の内壁にもこれらの金属膜が形成された。
【0070】
そして、基材に金属ペーストを塗布して貫通孔に金属ペーストを充填した(
図6(c)参照)。本実施形態では、湿式還元法により製造された純度99.99質量%の金粉末(SEM観察により計測される平均粒径:0.3μm)を、有機溶剤としてテトラクロロエチレン(製品名:アサヒパークロール)に混合した金属ペースト(金粉末含有量:90質量%)を使用した。金属ペーストの塗布は、基板上に上記の金属ペーストを滴下し、周波数200Hzで振動するウレタンゴム製ブレード(ブレード幅30mm)で基板全面に金属ペーストを塗り広げた。また、この金属ペーストの塗布工程では、基板の裏面を減圧雰囲気(-10kPa~-90kPa)とし、基板塗布面のペーストが貫通孔に吸引されるようにした。金属ペースト塗布後、基板全体を70℃で1時間乾燥し、その後200℃で30分間加熱して金属粉末を焼成して貫通電極を形成した。
【0071】
次に、貫通電極の上にバンプを形成した。基材の片面にフォトレジスト(40μm)を塗布し、その後に貫通電極周囲を露光(波長405nmの直描露光機で750mJ/cm
2)し、現像して開口した。このとき、バンプの直径が80μmとなるようにした。このマスキング処理の後、貫通電極と同じ金属ペースト塗布した。塗布方法は、基本的に上記と同じであるが、-65kPaに減圧したチャンバー内で振動周波数170Hzのブレードを用いて塗布した。金属ペーストをバンプとなる空隙に充填後、貫通電極の際と同様に乾燥した後、100℃で1時間焼成処理をした(
図6(d)参照)。
【0072】
焼成処理によりバンプを形成した後、フォトレジストを除去して本実施形態に係るインターポーザ基板とした(
図6(e)参照)。尚、本実施形態では、最後に基材の裏面にスパッタリング法によりTi及びAuで金属膜を形成している。
【0073】
図8に、本実施形態で製造したインターポーザ基板の貫通電極及びバンプの断面組織のSEM写真を示す。また、
図9に貫通孔内面と貫通電極との境界付近を拡大したSEM写真を示す。これらから、貫通電極及びバンプは微細な気孔を有する材料組織を有することが分かる。また、貫通孔内面と貫通電極との間には約0.5μmの隙間があることが確認された。この隙間は、2度の焼成工程で金属粉末を焼成した結果、僅かな収縮が生じたためによるものと考えられる。更に、この貫通電極とバンプについて気孔率を測定した。この測定は、貫通電極及びバンプの写真(倍率5000倍)を画像解析ソフトウエア(名称ImageJ)で処理し、気孔の総面積を測定して行った。その結果、貫通電極の気孔率は15%であり、バンプの気孔率は11%であった。本実施形態では、貫通電極とバンプとを別々に形成しており、貫通電極は230℃の高温で焼成され、バンプは100℃の低温で焼成されている。この焼成温度の相違から、気孔率や気孔径が相違していると考えられる。
【0074】
[冷熱サイクル試験]
上記で製造したインターポーザ基板に、半導体チップを接合して評価用サンプルを製造し、熱サイクル負荷に対する耐久性を評価した。製造したインターポーザ基板を切断してサンプル(
図7参照)を作製し、サンプルのバンプ形成面に半導体チップ(Ti/Auメタライズ膜を有するSiウエハ:寸法10mm×10mm)を載置し、加熱及び加圧して半導体チップをインターポーザ基板に接合した。接合条件は、加熱温度を250℃とし、荷重を3MPa、5MPa、10MPaとして3種のサンプルを製造した。
【0075】
製造したサンプルは熱サイクル試験機で-50℃と150℃の冷熱サイクルを負荷し、1000サイクル負荷後の接合強度を測定した。接合強度は、せん断応力を示すシェア強度を測定することとした。サンプルをシェア強度試験装置(ボンドテスター)にセットし、シェア速度100μm/secとしてシェア強度を測定した。
【0076】
図10に、各サンプルのシェア強度測定後のインターポーザ基板及び半導体チップの表面の写真を示す。また、
図11は、シェア強度測定後のインターポーザ基板及び半導体チップの拡大写真である。
図10から、接合時の加圧力の増大に伴い、バンプを構成していた金属粉末が半導体チップへ転移する量が多くなっていることがわかる。また、
図11でシェア強度測定後のインターポーザ基板のバンプの表面形状、及び半導体チップ側に転移した金属粉末の形状を参照すると、主にバンプの外周部分で接合が生じていたことが推定される。
【0077】
次に、上記各サンプル(接合荷重:3MPa、5MPa、10MPa)について、インターポーザ基板と半導体チップとの接合強度を評価した。この評価では、上記の通り、インターポーザ基板と半導体チップとの接合が主にバンプ外周部で生じていたことを考慮して、バンプ全体の面積から中心部分の貫通電極の面積を差し引いたバンプ外周面積を接合に寄与した接合面積とした。そして、前記バンプ外周面積にサンプル内の貫通電極の数(182本)を乗じた面積(0.54mm2)を接合面積とした。インターポーザ基板と半導体チップとの接合強度は、シェア強度試験での測定値を前記接合面積で乗じた値とした。
【0078】
上記各サンプルにおいて、接合荷重を3MPa、5MPa、10MPaとしたサンプルの測定値であるシェア強度と、このシェア試験から算出される接合強度は、それぞれ、6.8N(12.6N/mm2)、8.0N(14.8N/mm2),17.4N(32.2N/mm2)であった。インターポーザ基板と半導体チップとの接合強度に関しては、10N/mm2(10MPa)以上あれば十分な接合強度ということができる。そして、これを合格基準として評価すれば、各サンプルのいずれも十分な接合強度を発揮していたといえる。以上の試験結果より、本実施形態で製造したインターポーザ基板は、熱サイクル負荷を受けても接合強度を維持でき、良好な耐久性を有することが確認された。
【0079】
第2実施形態:本実施形態では、貫通電極及びバンプを形成する金属粉末の金属種と粒径を変更し、金属ペーストを製造した後、第1実施形態と同様にして第2の態様に基づきインターポーザ基板を製造した。金属ペースト製造の条件と貫通電極及びバンプの製造条件は基本的に第1実施形態と同じとした。但し、下地膜の構成については適宜に変更した。インターポーザ基板を製造した後、第1実施形態と同様に、冷熱サイクル(1000回)を負荷した後の接合強度試験を行った。この接合強度試験では、接合荷重を0.8MPa、1.0MPa、10MPaとし、冷熱サイクル負荷前後の接合強度を測定し、負荷後の接合強度が10N/mm2以上であった場合を合格と判定した。この試験結果を表1に示す。
【0080】
【0081】
表1から、適切な粒径の金、銀、銅の金属粉末から貫通電極及びバンプを形成したインターポーザ基板において、良好な接合力と耐久性を得ることが確認できる。金属粉末の粒径が2.0μmを超える場合においては、冷熱サイクルの負荷後において10N/mm2未満の接合強度となり、接合荷重が低い場合には冷熱サイクル負荷前(接合直後)の段階で強度が不十分なものもあった。これは、金属粉末の粒径が過大となると、金属粉末焼成体の内部に隙間が生じ、接合後も残存していたため接合部の強度が低くなったためと考察される。尚、接合工程の荷重については、1.0MPa未満とすると、一部では接合強度が得られる場合があっても、全体的に接合強度が低くなる傾向がある。安定した接合強度を得る上では、接合荷重は1.0MPa以上とすることが必要である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、半導体デバイスのシステム・イン・パッケージ化や2.5次元実装等の積層実装に適したインターポーザ基板であり、熱サイクルによる熱応力に対する耐久性に優れている。本発明は、半導体デバイス、特に、パワーデバイスやLEDデバイス等の大電流・高負荷の半導体デバイスにおける小型化・高集積化への要求に応えることができる。よって、本発明は、パワーデバイス等が使用される自動車分野やエネルギー分野における貢献が期待される。