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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20241025BHJP
   C08K 3/28 20060101ALI20241025BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20241025BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241025BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20241025BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20241025BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20241025BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/28
C08K7/00
C08K3/22
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/06
H01L23/36 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021172352
(22)【出願日】2021-10-21
(65)【公開番号】P2023062399
(43)【公開日】2023-05-08
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 亘
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210518(JP,A)
【文献】国際公開第2020/262449(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190189(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/137970(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
H01L 23/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性シリコーン組成物であって、
(C)平均粒子径4μm以上50μm未満の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子、
(D)平均粒子径50μm以上150μm以下の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子、
及び、
(E)平均粒子径0.1μm以上4.0μm未満の窒化アルミニウム粒子、及び酸化亜鉛粒子から選ばれる1種以上
を含有し、
前記(C)成分と前記(D)成分の合計量が、前記組成物全体の20質量%以上80質量%未満であり、
前記(E)成分の配合量が、前記組成物全体の20質量%以上50質量%未満であり、前記(C)成分と前記(D)成分の合計量に対する前記(D)成分の割合が、5質量%以上50質量%未満であることを特徴とする熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記(C)成分が、丸み状の窒化アルミニウム粒子であることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、該(C)成分150質量部と25℃での動粘度1,000mm/sのジメチルポリシロキサン100質量部とを混合してなるペーストを厚み300μmから25℃、0.1MPaで60分間加圧したときの厚みが、10μm以上100μm以下となるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項4】
前記(E)成分が、不定形酸化亜鉛粒子であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項5】
さらに、(A)25℃での動粘度が10~100,000mm/sであるオルガノポリシロキサンを含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項6】
前記(A)成分が、1分子中にケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を1個以上有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項7】
さらに、
(F)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(G)白金族金属触媒、
及び、
(H)反応制御剤
を含有するものであることを特徴とする請求項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項8】
前記(A)成分と前記(F)成分のヒドロシリル化反応物を含有するものであることを特徴とする請求項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項9】
前記(A)成分中の1分子中にケイ素原子と結合した脂肪族不飽和炭化水素基1個に対し、前記(F)成分中の1分子中にケイ素原子に結合した水素原子が4.0個~20.0個であることを特徴とする請求項又は請求項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項10】
さらに、(I)有機過酸化物を含有するものであることを特徴とする請求項から請求項のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項11】
さらに、(B)アルコキシシリル基を含有する加水分解性オルガノポリシロキサンを含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【請求項12】
さらに、(J)縮合触媒を含有するものであることを特徴とする請求項11に記載の熱伝導性シリコーン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シリコーン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は、使用中の発熱及びそれによる性能の低下が広く知られており、これを解決するための手段として、様々な放熱技術が用いられている。一般的に、発熱部の付近に冷却部材(ヒートシンク等)を配置し、両者を密接させたうえで冷却部材から効率的に除熱することにより放熱を行っている。その際、発熱部材と冷却部材との間に隙間があると、熱伝導性の低い空気が介在することにより熱伝導率が低下し、発熱部材の温度が十分に下がらなくなってしまう。このような現象を防ぐため、熱伝導率がよく、部材の表面に追随性のある放熱材料、例えば放熱グリースや放熱シートが用いられている。
【0003】
近年サーバー向けCPUや車両駆動用のIGBTなど高品位機種の半導体に関して、ますます動作時の発熱量が増大している。発熱量の増大に伴って放熱グリースや放熱シートに要求される放熱性能も向上している。放熱グリースは接触熱抵抗が低いためこのような半導体素子の放熱材料として有用である一方、良好な塗布性能を得るために放熱グリースの粘度を低くした場合に、素子の冷熱衝撃や外部からの振動によって放熱グリースがズレ落ち、十分な放熱ができなくなる結果、素子の破損に繋がることがあった。
【0004】
特許文献1には、金属酸化物と金属窒化物を併用し耐ズレ性と塗布性能を両立した高熱伝導性グリースが提案されているが、7.5W/m・K以上の熱伝導率を有するものは開示されておらず、放熱性能は十分ではない。一方、特許文献2、3では、放熱グリースの吐出性能を向上させるため絶縁性無機フィラーを特定の割合で配合し、低粘度かつ7.5W/m・K以上の高熱伝導率を達成しているものの、流動性が高いため耐ズレ性能が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-063365号公報
【文献】特許第6246986号公報
【文献】国際公開第2020/262449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑がみなされたもので、高い熱伝導率と耐ズレ性とを両立する、熱伝導性シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、熱伝導性シリコーン組成物であって、
(C)平均粒子径4μm以上50μm未満の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子、
(D)平均粒子径50μm以上150μm以下の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子、
及び、
(E)平均粒子径0.1μm以上4.0μm未満の無機粒子
を含有し、
前記(C)成分と前記(D)成分の合計量が、前記組成物全体の20質量%以上80質量%未満であり、
前記(E)成分の配合量が、前記組成物全体の20質量%以上50質量%未満であり、前記(C)成分と前記(D)成分の合計量に対する前記(D)成分の割合が、5質量%以上50質量%未満である熱伝導性シリコーン組成物を提供する。
【0008】
この熱伝導性シリコーン組成物は、高い熱伝導率と耐ズレ性とを両立するものである。
【0009】
また、本発明では、前記(C)成分が、丸み状の窒化アルミニウム粒子であることが好ましい。
【0010】
このような(C)成分であれば、熱伝導性シリコーン組成物により高い熱伝導率を付与する事ができる。
【0011】
また、本発明では、前記(C)成分が、該(C)成分150質量部と25℃での動粘度1,000mm/sのジメチルポリシロキサン100質量部とを混合してなるペーストを厚み300μmから25℃、0.1MPaで60分間加圧したときの厚みが、10μm以上100μm以下となるものであることが好ましい。
【0012】
このような範囲であれば熱伝導性シリコーン組成物の粘度を低くすることができ、より作業性に優れるものとすることができる。
【0013】
また、本発明では、前記(E)成分が、金属酸化物粒子及び金属窒化物粒子から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0014】
このような無機粒子であると、熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導率と耐ズレ性とがより良好となる。
【0015】
この時、前記(E)成分が、アルミナ粒子、窒化アルミニウム粒子、及び酸化亜鉛粒子から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0016】
このような無機粒子であると、熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導率と耐ズレ性とがさらに良好となる。
【0017】
この時、前記(E)成分が、不定形酸化亜鉛粒子であることが好ましい。
【0018】
このような無機粒子であると、熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導率と耐ズレ性とがより一層良好となる。
【0019】
また、本発明では、さらに、(A)25℃での動粘度が10~100,000mm/sであるオルガノポリシロキサンを含有するものであることが好ましい。
【0020】
(A)成分の粘度が所定の範囲内であれば、熱伝導性シリコーン組成物からのオルガノポリシロキサンのブリードアウトを抑制し、また、熱伝導性シリコーン組成物がより展性に優れるものとなる。
【0021】
この時、前記(A)成分が、1分子中にケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を1個以上有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0022】
本発明に用いる(A)成分としては、上記のようなものが好ましい。
【0023】
また、この時、さらに、
(F)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(G)白金族金属触媒、
及び、
(H)反応制御剤
を含有するものであることが好ましい。
【0024】
このような成分を含むことで、付加反応型の熱伝導性シリコーン組成物とすることができ、耐ズレ性を高めることができる。
【0025】
また、この時、前記(A)成分と前記(F)成分のヒドロシリル化反応物を含有するものであることが好ましい。
【0026】
このような成分を含有することで、耐ズレ性をより高めることができる。
【0027】
また、本発明では、前記(A)成分中の1分子中にケイ素原子と結合した脂肪族不飽和炭化水素基1個に対し、前記(F)成分中の1分子中にケイ素原子に結合した水素原子が4.0個~20.0個であることが好ましい。
【0028】
このような範囲であれば、熱伝導性シリコーン組成物の耐ズレ性をより高めることができる。
【0029】
また、本発明では、さらに、(I)有機過酸化物を含有するものであることが好ましい。
【0030】
このような(I)成分を含有することで、(A)成分同士のラジカル反応により熱伝導性シリコーン組成物の耐ズレ性をより高めることができる。
【0031】
また、本発明では、さらに、(B)アルコキシシリル基を含有する加水分解性オルガノポリシロキサンを含有するものであることが好ましい。
【0032】
本成分により、前記(C)成分、(D)成分、及び(E)成分を充填する際の流動性を高めることができる。
【0033】
この時、さらに、(J)縮合触媒を含有するものであることが好ましい。
【0034】
このような(J)成分を含有することで、(B)成分の縮合反応により熱伝導性シリコーン組成物の耐ズレ性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、高い熱伝導率を有し、かつ耐ズレ性に優れた熱伝導性シリコーン組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
上述のように、高い熱伝導率と耐ズレ性とを両立する熱伝導性シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0037】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、特定の粒子径と形状を有する窒化アルミニウム粒子及び無機粒子を含む熱伝導性シリコーン組成物が、高い熱伝導率を有し、かつ耐ズレ性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0038】
即ち、本発明は、熱伝導性シリコーン組成物であって、
(C)平均粒子径4μm以上50μm未満の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子、
(D)平均粒子径50μm以上150μm以下の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子、
及び、
(E)平均粒子径0.1μm以上4.0μm未満の無機粒子
を含有し、
前記(C)成分と前記(D)成分の合計量が、前記組成物全体の20質量%以上80質量%未満であり、
前記(E)成分の配合量が、前記組成物全体の20質量%以上50質量%未満であり、前記(C)成分と前記(D)成分の合計量に対する前記(D)成分の割合が、5質量%以上50質量%未満である熱伝導性シリコーン組成物である。
【0039】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
[熱伝導性シリコーン組成物]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、(C)平均粒子径4μm以上50μm未満の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子、(D)平均粒子径50μm以上150μm以下の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子、及び、(E)平均粒子径0.1μm以上4.0μm未満の無機粒子を含有し、前記(C)成分と前記(D)成分の合計量が、前記組成物全体の20質量%以上80質量%未満であり、前記(E)成分の配合量が、前記組成物全体の20質量%以上50質量%未満であり、前記(C)成分と前記(D)成分の合計量に対する前記(D)成分の割合が、5質量%以上50質量%未満である。また、本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、後述する(A)、(B)、(F)~(J)成分やその他の成分を含むことができる。以下各成分について説明する。
【0041】
[(C)成分]
(C)成分は、平均粒子径4μm以上50μm未満、好ましくは4μm以上30μm以下の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子である。(C)成分の形状は丸み状であることが好ましく、なお、ここでいう丸み状とは粒子の角が少なく、粒子が丸みを帯びた滑らかな状態であり、かつ、球状は含まれない。丸み状は角を有する点で球状とは明確に異なるものである。球状の窒化アルミニウムは、熱伝導性に劣るため好ましくない。
【0042】
(C)成分の平均粒子径が4μmよりも小さいと熱伝導性シリコーンの熱伝導率が低下し、50μm以上であると得られるシリコーン組成物が均一にならないおそれがある。なお、本発明において、平均粒子径はレーザー回折散乱法による体積基準の粒度分布における累積平均径D50(メディアン径)であり、例えば、日機装(株)製マイクロトラックMT330OEXにより測定できる。
【0043】
(C)成分及び後述する(D)成分の窒化アルミニウム粒子は、公知の直接窒化法、還元窒化法等により合成でき、粉砕等により任意の粒子径範囲にすることができる。また、不定形又は多面体状の窒化アルミニウムを1,600℃~2,000℃の非酸化性雰囲気下で熱処理することで丸み状の窒化アルミニウム粒子を得ることができる。
【0044】
(C)成分は、(C)成分150質量部と25℃での動粘度1,000mm/sのジメチルポリシロキサン100質量部とを混合してなるペーストを厚み300μmから25℃、0.1MPaで60分間加圧したときの厚みが、10μm以上100μm以下となるものであることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。(C)成分がこの範囲のものであれば、熱伝導性シリコーン組成物の粘度を低減し、より作業性を向上することができる。
【0045】
(C)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0046】
[(D)成分]
(D)成分は、平均粒子径50μm以上150μm以下、好ましくは60μm以上120μm以下、より好ましくは70μm以上120μm以下の不定形、丸み状、及び多面体状から選ばれる1種以上の窒化アルミニウム粒子である。球状の窒化アルミニウムは、熱伝導性に劣るため好ましくない。
【0047】
(D)成分の平均粒子径が50μm未満であると得られる熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導率が低下してしまい、150μmを超えると得られる熱伝導性シリコーン組成物が不均一になりやすい。
【0048】
(D)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0049】
(C)成分と(D)成分との合計量は、組成物全体に対し20質量%以上80質量%未満であり、50~80質量%未満が好ましい。(C)成分と(D)成分との合計量が20質量%未満であると、得られる熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導率が低下する。(C)成分と(D)成分との合計量が80質量%以上であると、熱伝導性シリコーン組成物が均一にならない。
【0050】
また、(C)成分と(D)成分の合計量に対する(D)成分の割合が、5質量%以上50質量%未満である。5質量%未満であると、熱伝導性シリコーン組成物の熱伝導率が劣るものとなり、50質量%以上であると、熱伝導性シリコーン組成物の耐ズレ性が劣るものとなる。
【0051】
[(E)成分]
(E)成分は、平均粒子径0.1μm以上4.0μm未満、好ましくは0.4μm以上2.0μm以下の無機粒子である。0.1μm未満であると熱伝導性シリコーン組成物の粘度が上昇し取り扱い性に劣り、4.0μm以上であると熱伝導性シリコーン組成物が均一にならない。
【0052】
無機粒子としては、金属酸化物粒子または金属窒化物粒子であることが好ましく、具体的には酸化アルミニウム粒子、窒化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子等が使用でき、酸化アルミニウム粒子、窒化アルミニウム粒子、及び酸化亜鉛粒子から選ばれる1種以上であることが好ましい。特に好ましくは不定形酸化亜鉛粒子である。
【0053】
(E)成分の配合量が、熱伝導性シリコーン組成物全体の20質量%以上50質量%未満であり、25~40質量%が好ましい。(E)成分が20質量%未満であると熱伝導性シリコーン組成物が均一にならず、50質量%以上であると熱伝導性シリコーン組成物の粘度が上昇し取り扱い性に劣る。
【0054】
(E)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0055】
[(A)成分]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、さらに、(A)25℃での動粘度が10~100,000mm/s、好ましくは30~10,000mm/s、更に好ましくは100~8,000mm/sであるオルガノポリシロキサンを含むことが好ましい。粘度が所定の範囲内であれば、熱伝導性シリコーン組成物からのオルガノポリシロキサンのブリードアウトを抑制し、また、熱伝導性シリコーン組成物がより展性に優れるものとなる。なお、本発明において、動粘度はオストワルド粘度計で測定した25℃の値である。
【0056】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状、環状等のいずれであってもよい。特には、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状構造を有するのがよい。該オルガノポリシロキサンは、1種単独でも、2種以上の組合せであってもよい。
【0057】
該オルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で表すことができる。
SiO(4-a)/2 (1)
【0058】
上記平均組成式(1)において、Rは、互いに独立に、炭素原子数1~18、好ましくは1~14の、飽和又は不飽和の、非置換又は置換の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、及びオクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基、フェニル基、及びトリル基等のアリール基、2-フェニルエチル基、及び2-メチル-2-フェニルエチル基等のアラルキル基、又は、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、3,3,3-トリフロロプロピル基、2-(パーフロロブチル)エチル基、2-(パーフロロオクチル)エチル基、p-クロロフェニル基等が挙げられ、メチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
【0059】
上記平均組成式(1)において、aは1.8~2.2の範囲、特には1.9~2.1の範囲にある数である。aが上記範囲内にあることにより、得られる熱伝導性シリコーン組成物は良好な粘度を有することができる。
【0060】
上記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、下記式(2)で表される直鎖状オルガノポリシロキサンが好ましい。
【化1】
【0061】
上記式においてRはお互い独立な炭素原子数1~18、好ましくは1~14の、飽和又は不飽和の、非置換又は置換の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、上述した基が挙げられる。さらに、少なくとも一つのRがビニル基であることが好ましい。mは、該オルガノポリシロキサンの25℃での動粘度が10~100,000mm/s、好ましくは30~10,000mm/s、更に好ましくは100~8,000mm/sとなる数である。
【0062】
(A)成分の配合量は、組成物全体の0.1~60質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。また、(A)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合してよい。
【0063】
また、前記(A)成分が、1分子中にケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を1個以上有するオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0064】
[(B)成分]
(B)成分は、アルコキシシリル基を含有する加水分解性オルガノポリシロキサンである。(B)成分は、上記(C)~(E)成分の表面処理剤として作用する。そのため、(B)成分を添加することで、(C)~(E)成分を組成物に多量に充填しても、熱伝導性シリコーン組成物が流動性を保つことができる。同時に、経時でのオイル分離やポンプアウトに起因する放熱性能の低下も抑えることができる。(B)成分としては、例えば下記一般式(3)で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。中でも、3官能の加水分解性オルガノポリシロキサンを含有することが好ましい。
【化2】
(式中、Rは独立に非置換又は置換の1価炭化水素基である。X、X、XはR又は-(R-SiR (OR3-dで示される基であり、それぞれ異なってもよいが、少なくとも1つは-(R-SiR (OR3-dである。Rは酸素原子又は炭素数1~4のアルキレン基、Rは独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、Rは独立に炭素数1~4のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基又はアシル基であり、nは0又は1、dは0~2の整数である。b及びcはそれぞれ1≦b≦1,000、0≦c≦1,000である。)
【0065】
上記一般式(3)中、Rは独立に非置換又は置換の、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3の1価炭化水素基であり、その例としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、環状アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基が挙げられる。分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基が挙げられる。環状アルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、2-フェニルエチル基、2-メチル-2-フェニルエチル基が挙げられる。ハロゲン化アルキル基としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-(ノナフルオロブチル)エチル基、2-(ヘプタデカフルオロオクチル)エチル基が挙げられる。Rとして、メチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
【0066】
、X、XはR又は-(R-SiR (OR3-dで示される基であり、それぞれ異なってもよいが、少なくとも1つは-(R-SiR (OR3-dである。
【0067】
は酸素原子又は炭素数1~4のアルキレン基であり、Rの炭素数1~4のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。Rは独立に脂肪族不飽和結合を含有しない、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3の非置換又は置換の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、ならびにこれらの基の炭素原子が結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換された基等が挙げられる。
【0068】
上記Rは独立に炭素数1~4のアルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。上記Rのアルキル基としては、例えば、Rについて例示したものと同様の、炭素数1~4のアルキル基等が挙げられる。アルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシエチル基、メトキシプロピル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基が挙げられる。上記Rのアシル基としては、例えば、炭素数2~8のものが好ましく、アセチル基、オクタノイル基等が挙げられる。Rはアルキル基であることが好ましく、特にはメチル基、エチル基であることが好ましい。
【0069】
b及びcはそれぞれ1≦b≦1,000、0≦c≦1,000であるが、好ましくはb+cが10~1,000であり、より好ましくは10~300である。nは0又は1であり、dは0~2の整数であり、好ましくは0である。なお、分子中にOR基は1~6個、特に3又は6個有することが好ましい。なお、括弧内に示される各シロキサン単位の結合順序は、下記に制限されるものではない。
【0070】
(B)成分の好適な具体例としては、下記のものを挙げることができる。
【化3】
【0071】
(B)成分の配合量は、組成物全体の0.1~60質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。また、(B)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合してよい。
【0072】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物において、上記(A)成分が、1分子中にケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を1個以上有するオルガノポリシロキサンである場合、さらに、下記(F)~(H)成分を添加することにより、付加反応型の熱伝導性シリコーン組成物とすることができる。
【0073】
[(F)成分]
(F)成分は、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上40個未満のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、即ち1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、分子中のケイ素原子に結合した水素原子が、組成物中の脂肪族不飽和炭化水素基と後述する白金族金属触媒の存在下において付加反応し、架橋構造を形成する。
【0074】
(F)成分の分子構造は特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、下記平均組成式(4)で示すものを用いることができる。
SiO(4-e-f)/2 (4)
【0075】
平均組成式(4)中、Rは、独立に、脂肪族炭化水素基を除く、炭素原子数1~18、好ましくは1~14の、飽和又は不飽和の、非置換又は置換の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、及びオクタデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、及びアリル基等のアルケニル基、フェニル基、及びトリル基等のアリール基、2-フェニルエチル基、及び2-メチル-2-フェニルエチル基等のアラルキル基、又は、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えば、3,3,3-トリフロロプロピル基、2-(パーフロロブチル)エチル基、2-(パーフロロオクチル)エチル基、p-クロロフェニル基等が挙げられる。Rとして、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0076】
eは1.0~3.0、好ましくは0.5~2.5、fは0.005~2.0、好ましくは0.01~1.0であり、かつe+fは0.5~3.0、好ましくは0.8~2.5を満たす正数である。
【0077】
(F)成分の配合量は、(A)成分中の1分子中にケイ素原子と結合した脂肪族不飽和炭化水素基1個に対し、(F)成分中の1分子中にケイ素原子に結合した水素原子が4.0個~20.0個であることが好ましく、より好ましくは8.0~20.0個となる量である。このような範囲であれば、耐ズレ性がより良好なものとなる。また、(F)成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて配合してよい。
【0078】
また、本発明では、前記(A)成分と前記(F)成分のヒドロシリル化反応物を含有するものであることが好ましい。このような成分を含有することで、耐ズレ性をより高めることができる。
【0079】
[(G)成分]
(G)成分は、白金族金属触媒であり、(A)成分中のケイ素原子と結合した脂肪族不飽和炭化水素基と(F)成分中のSiH基とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。白金族金属触媒は、付加反応に用いられる従来公知のものを使用することができる。例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系の触媒が挙げられるが、中でも比較的入手しやすい白金または白金化合物が好ましい。例えば、白金の単体、白金黒、塩化白金酸、白金-オレフィン錯体、白金-アルコール錯体、白金配位化合物等が挙げられる。
【0080】
(G)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサンに対し白金族金属原子の質量換算で1~2,000ppm、好ましくは2~1,000ppmの範囲とすることが好ましい。この範囲であれば、付加反応の反応速度が適切なものとなる。
【0081】
(G)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0082】
[(H)成分]
(H)成分は、室温でのヒドロシリル化反応の進行を抑える反応制御剤であり、シェルフライフ、ポットライフを延長させる為に機能する。該反応制御剤は、付加硬化型シリコーン組成物に使用される従来公知の反応制御剤を使用することができる。例えば、アセチレンアルコール類(例えば、エチニルメチルデシルカルビノール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール)等のアセチレン化合物、トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等の各種窒素化合物、トリフェニルホスフィン等の有機リン化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物等が挙げられる。
【0083】
[(I)成分]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物において、上記(A)成分が、1分子中にケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を1個以上有するオルガノポリシロキサンである場合、(I)有機過酸化物を含有することにより、(A)成分同士のラジカル反応により組成物の耐ズレ性をより高めることができる。
【0084】
有機過酸化物としては、ラジカル反応に用いられる公知のものを使用することができる。例えば、ベンゾイルペルオキシド、ビス(p-メチルベンゾイル)ペルオキシドのようなアシル系有機過酸化物、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシドのようなアルキル系有機過酸化物、tert-ブチルペルベンゾアートのようなエステル系有機過酸化物が挙げられる。
【0085】
[(J)成分]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物において、上記(B)成分を含む場合、さらに、(J)縮合触媒を含有することにより、縮合反応型の熱伝導性シリコーン組成物とすることができ、(B)成分の縮合反応により熱伝導性シリコーン組成物の耐ズレ性をより高めることができる。
【0086】
縮合触媒としては、縮合反応に用いられる公知のものを使用することができる。例えば、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート等のチタン系エステル類;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート等の有機スズ化合物類;オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ラウリン酸スズ、フェルザチック酸スズ等のカルボン酸スズ塩類;ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物;ジブチルスズジアセチルアセトナート;アルミニウムトリアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等の有機アルミニウム化合物類;ジイソプロポキシ-ビス(アセト酢酸エチル)チタン、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナート等のキレート化合物類;オクチル酸鉛;ナフテン酸鉄;ビスマス-トリス(ネオデカノエート)、ビスマス-トリス(2-エチルヘキソエート)等のビスマス化合物のような金属系触媒を例示することができる。更に、ラウリルアミン等の公知のアミン系触媒を使用してもよい。これらの中でも、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ラウリン酸スズ、フェルザチック酸スズ等のカルボン酸スズ塩又は有機スズ化合物類;ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物;ジブチルスズジアセチルアセトナート等のスズ系触媒;ジイソプロポキシ-ビス(アセト酢酸エチル)チタン等のキレート化合物類が特に好ましい。
【0087】
[その他の成分]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は、弾性率や粘度を調整する目的でメチルポリシロキサン等の反応性を有しないオルガノ(ポリ)シロキサンを含有してもよい。また、熱伝導性シリコーン組成物の劣化を防ぐために、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等の公知の酸化防止剤を必要に応じて含有してもよい。さらに、染料、顔料、難燃剤、沈降防止剤、又はチクソ性向上剤等を、必要に応じて配合することができる。
【0088】
[熱伝導率]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物のISO 22007-2準拠のホットディスク法による熱伝導率は7.5W/m・K以上であることが好ましい。熱伝導率の上限は限定されないが、13.0W/m・K以下であることが好ましい。なお、熱伝導率の測定方法は後述する実施例の方法である。
【0089】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物は耐ズレ性を持つため、熱伝導性シリコーン組成物として最適である。なお、耐ズレ性の測定方法は後述する実施例の通りである。
【0090】
[熱伝導性シリコーン組成物の製造方法]
本発明の熱伝導性シリコーン組成物の製造方法について説明するが、これらに限定されるものではない。
【0091】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物を製造する方法は、従来の熱伝導性シリコーン組成物の製造方法に従えばよく、特に制限されるものでない。例えば、上記(A)~(J)成分、及び必要に応じてその他の任意成分を混合することにより得ることができる。混合装置としては特に限定されず、トリミックス、ツウィンミックス、プラネタリーミキサー(いずれも井上製作所(株)製混合機の登録商標)、ウルトラミキサー(みずほ工業(株)製混合機の登録商標)、ハイビスディスパーミックス(特殊機化工業(株)製混合機の登録商標)等の混合機を用いることができる。また、熱伝導性充填剤である(C)成分(D)成分及び(E)成分の凝集を解砕するために3本ロール仕上げ処理などを施してもよい。
【0092】
本発明の熱伝導性シリコーン組成物が、上記(A)成分が、1分子中にケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を1個以上有するオルガノポリシロキサンであり、かつ、(F)成分及び(G)成分を含む場合、100℃以上の温度で30分以上撹拌することが好ましく、これにより、(A)成分と(F)成分とが十分にヒドロシリル化反応によって架橋し、熱伝導性シリコーン組成物をより適切な粘度とすることができる。
【実施例
【0093】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記において動粘度はオストワルド粘度計(柴田科学社製)により25℃で測定した値である。(C)成分の加圧後の厚みは、(C)成分150質量部と25℃での動粘度1,000mm/sのジメチルポリシロキサン100質量部とを混合してなるペースト(厚み300μm)を直径12.6mm,厚み1mmの円形アルミニウム板2枚で挟み、25℃、0.1MPaで60分間加圧した後の厚みをマイクロメータ(株式会社ミツトヨ製)で測定し、アルミニウム板の厚みを差し引いて測定した値である。
【0094】
使用した成分は以下のとおりである。
[(A)成分]
A-1:両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃における動粘度が5,000mm/sのジメチルポリシロキサン
A-2:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における動粘度が600mm/sのジメチルポリシロキサン(ビニル基量0.015mol/g)
A-3:末端がジメチルビニルシリル基とトリメチルシリル基でそれぞれ封鎖され、25℃における動粘度が700mm/sのジメチルポリシロキサン(ビニル基量0.005mol/g)
【0095】
[(B)成分]
B-1:下記式で示される加水分解性オルガノポリシロキサン
【化4】
【0096】
[(C)成分]
C-1:D50が20.0μmである丸み状の窒化アルミニウム粒子
(加圧後の厚み54μm)
C-2:D50が11.0μmである丸み状の窒化アルミニウム粒子
(加圧後の厚み32μm)
C-3:D50が5.0μmである丸み状の窒化アルミニウム粒子
(加圧後の厚み14μm)
C-4:D50が10.0μmである球状のアルミナ粒子
(加圧後の厚み25μm)(比較成分)
【0097】
[(D)成分]
D-1:D50が70.0μmである丸み状の窒化アルミニウム粒子
D-2:D50が100.0μmである丸み状の窒化アルミニウム粒子
D-3:D50が120.0μmである丸み状の窒化アルミニウム粒子
D-4:D50が60.0μmである球状の窒化アルミニウム粒子(比較成分)
D-5:D50が100.0μmである球状のアルミナ粒子(比較成分)
【0098】
[(E)成分]
E-1:D50が1.2μmである不定形の酸化亜鉛粒子
E-2:D50が0.4μmである不定形の酸化亜鉛粒子
E-3:D50が0.7μmである丸み状の窒化アルミニウム粒子
E-4:D50が1.3μmである不定形のアルミナ粒子
【0099】
[(F)成分]
F-1:両末端がトリメチルシリル基で封鎖され、25℃での動粘度が100mm/sでSiH含有量が0.0055mol/gのオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【0100】
[(G)成分]
G-1:白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体を上記A-2と同じジメチルポリシロキサンに溶解した溶液(白金原子含有量:1質量%)
【0101】
[(H)成分]
H-1:エチニルシクロヘキサノール
【0102】
[実施例1~14、比較例1~5]
〈熱伝導性シリコーン組成物の調製〉
上記(A)~(H)成分を、下記表1~3に示す配合量に従い、下記に示す方法で配合して熱伝導性シリコーン組成物を調製した。
5リットルのプラネタリーミキサー(井上製作所(株)製)に(A)~(H)成分を加え、150℃で4時間混合した。その後25℃になるまで冷却し熱伝導性シリコーン組成物を調製した。上記方法で得られた各組成物について、下記の方法に従い、粘度、熱伝導率及び耐ズレ性を評価した。結果を表1~3に示す。
【0103】
[粘度]
熱伝導性シリコーン組成物の粘度は(株)マルコム製スパイラル粘度計(タイプPC-1T)により測定した25℃の値である(ロータAで10rpm、ズリ速度6[1/s])。
【0104】
[熱伝導率]
各組成物をキッチンラップで包み巾着状にしたものの熱伝導率を京都電子工業(株)製TPA-501で測定した。
【0105】
[耐ズレ性]
1.0gの組成物を60mm×60mmのアルミ板とガラス板との間に厚さ0.5mmとなるようにスペーサーを用い挟み、試験片を作成した。その試験片を25℃で垂直に12時間静置した後、組成物が移動しているものを×とし、移動していないものを〇とした。さらに、-40℃30分間、120℃30分間を1サイクルとする冷熱試験機に試験片を垂直に置き、1,000サイクル後に組成物が移動していないものを◎とした。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
表1~3の結果より、本発明の要件を満たす実施例1~14の熱伝導性シリコーン組成物では、高い熱伝導性及び冷熱衝撃に対する耐ズレ性の両立が可能であった。
【0110】
一方、(C)成分と(D)成分の合計量に対する(D)成分の割合が、50質量%以上である比較例1は、耐ズレ性に劣るものとなった。また、本発明の(C)成分に代えて球状の粒子を用いた比較例2、並びに、本発明の(D)成分に代えて球状の粒子を用いた比較例3及び4では、熱伝導性に劣り、本発明の(E)成分を含まない比較例5では組成物が均一とならず取り扱い性に著しく劣るものであった。
【0111】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。