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特許7577167リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241025BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241025BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241025BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241025BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/36 D
H01M4/505
H01M10/052
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023120731
(22)【出願日】2023-07-25
(65)【公開番号】P2024071344
(43)【公開日】2024-05-24
【審査請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】10-2022-0151813
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】蔡 榮周
(72)【発明者】
【氏名】金 民漢
(72)【発明者】
【氏名】金 珍和
(72)【発明者】
【氏名】石 知賢
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-072092(JP,A)
【文献】特開2020-068210(JP,A)
【文献】特開2022-082508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムニッケル系複合酸化物を含み、複数の1次粒子が凝集された2次粒子および前記2次粒子の表面に位置するコバルトコーティング部を含む第1正極活物質、および
リチウムニッケル系複合酸化物を含み、単粒子および前記単粒子の表面に位置するコバルトコーティング部を含む第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
第1正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)は、第2正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)の1.45倍~1.60倍である、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
第2正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量は、39at%~42at%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
第1正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量は、61at%~63at%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
第1正極活物質は、前記2次粒子の内部の1次粒子の表面に位置する粒界コバルトコーティング部をさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
第1正極活物質の平均粒径は、5μm~25μmであり、
第2正極活物質の平均粒径は、0.1μm~10μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
第1正極活物質と第2正極活物質の総量に対して、第1正極活物質は50重量%~90重量%含まれ、第2正極活物質は10重量%~50重量%含まれる、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
第1正極活物質の前記リチウムニッケル系複合酸化物、および第2正極活物質の前記リチウムニッケル系複合酸化物は、それぞれ独立して、下記化学式1で表される、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[化学式1]
Lia1Nix1 y1 z12-b1b1
(前記化学式1で、0.9≦a1≦1.2、0.8≦x1≦1、0≦y1≦0.2、0≦z1≦0.2、0.9≦x1+y1+z1≦1.1、および0≦b1≦0.1であり、MおよびMは、それぞれ独立して、Al、B、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。)
【請求項8】
溶媒に単粒子形態の第2リチウムニッケル系複合酸化物およびコバルト原料を投入する第1工程を行い、
ここに、複数の1次粒子が凝集された2次粒子形態である第1リチウムニッケル系複合酸化物およびコバルト原料を投入する第2工程を順次に行い、
前記2次粒子の表面にコバルトコーティング部が形成された第1正極活物質および前記単粒子の表面にコバルトコーティング部が形成された第2正極活物質を収得することを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、
第1工程の所要時間(分)と第2工程の所要時間(分)との比率は、65:35~75:25である、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項9】
第1工程でコバルト原料は、第2リチウムニッケル系複合酸化物でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルト原料のコバルト含有量が0.01モル部~7モル部になるように投入される、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項10】
第2工程でコバルト原料は、第1リチウムニッケル系複合酸化物でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルト含有量が0.01モル部~7モル部になるように投入される、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項11】
第1リチウムニッケル系複合酸化物および第2リチウムニッケル系複合酸化物は、それぞれ独立して、下記化学式1で表される、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[化学式1]
Lia1Nix1 y1 z12-b1b1
(前記化学式1で、0.9≦a1≦1.2、0.8≦x1≦1、0≦y1≦0.2、0≦z1≦0.2、0.9≦x1+y1+z1≦1.1、および0≦b1≦0.1であり、MおよびMは、それぞれ独立して、Al、B、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。)
【請求項12】
第1リチウムニッケル系複合酸化物と第2リチウムニッケル系複合酸化物の重量比は、9:1~5:5である、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記リチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、第2工程の後、収得物を熱処理することをさらに含む、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記熱処理は、650℃~900℃の温度範囲で行われる、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記収得物を熱処理する時、リチウム原料をさらに投入する、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記リチウム原料は、第1リチウムニッケル系複合酸化物と第2リチウムニッケル系複合酸化物全体でリチウムと酸素を除いた元素に対するリチウムの含有量が0.1モル部~10モル部になるように投入される、請求項15に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項17】
収得した第1正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)は、第2正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)の1.45倍~1.60倍である、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項18】
収得した第1正極活物質は、前記2次粒子の内部の1次粒子の表面に位置する粒界コバルトコーティング部をさらに含む、請求項8に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項19】
請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質を含む正極、負極および電解質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、スマートフォンなどの移動情報端末の駆動電源として高いエネルギー密度を有しながらも携帯が容易なリチウム二次電池が主に使用されている。最近はエネルギー密度が高いリチウム二次電池をハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用電源または電力貯蔵用電源として使用するための研究が活発に行われている。
【0003】
このような用途に符合するリチウム二次電池を実現するために多様な正極活物質が検討されている。そのうち、リチウムニッケル系酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物、リチウムコバルト酸化物などが主に正極活物質として使用される。しかし、このような正極活物質は、充放電を繰り返すことによって構造が崩壊したりクラックが発生したりすることで、リチウム二次電池の長期寿命が低下し、抵抗が増加して満足するほどの容量特性を示すことができないという問題がある。そこで、高容量、高エネルギー密度を実現しながらも長期寿命特性を確保することができる新たな正極活物質の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高容量および高エネルギー密度を実現しながら、正極活物質の安定性を強化し、表面副反応を低減させることで、高温長期寿命特性および初期充放電効率を向上させ、高温貯蔵時のガス発生量を低減させたリチウム二次電池用正極活物質とその製造方法およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、リチウムニッケル系複合酸化物を含み、複数の1次粒子が凝集された2次粒子および前記2次粒子の表面に位置するコバルトコーティング部を含む第1正極活物質、およびリチウムニッケル系複合酸化物を含み、単粒子および前記単粒子の表面に位置するコバルトコーティング部を含む第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、第1正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)は、第2正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)の1.45倍~1.60倍である、リチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0006】
他の一実施形態では、溶媒に単粒子形態の第2リチウムニッケル系複合酸化物およびコバルト原料を投入する第1工程を行い、ここに、複数の1次粒子が凝集された2次粒子形態である第1リチウムニッケル系複合酸化物およびコバルト原料を投入する第2工程を順次に行い、前記2次粒子の表面にコバルトコーティング部が形成された第1正極活物質および前記単粒子の表面にコバルトコーティング部が形成された第2正極活物質を収得することを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法であって、第1工程の所要時間(分)と第2工程の所要時間(分)との比率は、65:35~75:25である、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0007】
また他の一実施形態では、前記正極活物質を含む正極と負極および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0008】
一実施形態により製造されたリチウム二次電池用正極活物質は、リチウム二次電池の高容量および高エネルギー密度を実現しながら、安定性が強化され、表面副反応が減少して高温貯蔵時のガス発生が抑制され、初期充放電効率を改善しながら高温長寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるリチウム二次電池を示す概略図である。
図2】比較例1で製造した最終正極活物質に対するSEMイメージである。
図3】比較例1の最終正極活物質のうち2次粒子形態の第1正極活物質の表面を撮影したSEMイメージである。
図4】実施例1で製造した最終正極活物質に対するSEMイメージである。
図5】実施例1の最終正極活物質のうち2次粒子形態の第1正極活物質の表面を撮影したSEMイメージである。
図6】比較例1の第1正極活物質の破断面に対するSEMイメージであり、図6の左側下段は四角形で表示した部分をSEM-EDS分析してコバルト元素をハイライトしたイメージである。
図7】実施例1の第1正極活物質の破断面に対するSEMイメージであり、図7の左側下段は四角形で表示した部分をSEM-EDS分析してコバルト元素をハイライトしたイメージである。
図8】比較例1の第2正極活物質の破断面に対してSEM-EDS分析でコバルト元素をハイライトしたイメージである。
図9】実施例1の第2正極活物質の破断面に対してSEM-EDS分析でコバルト元素をハイライトしたイメージである。
図10】実施例1、および比較例1~3のリチウム二次電池に対する高温寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な実施形態について、当該技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0011】
ここで使用される用語は、単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異に意味しない限り、複数の表現を含む。
【0012】
ここで「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0013】
ここで「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0014】
図面において、複数の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体にわたって類似の部分については同一の図面符号を付した。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるという時、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。反対に、ある部分が他の部分の「直上」にあるという時には中間にまた他の部分がないことを意味する。
【0015】
またここで「層」は、平面図で観察した時、全体面に形成されている形状だけでなく、一部面に形成されている形状も含む。
【0016】
また平均粒径は、当業者に幅広く公知された方法で測定することができ、例えば、粒度分析器で測定したり、または透過電子顕微鏡写真または走査電子顕微鏡写真で測定することもできる。他の方法では、動的光散乱法を利用して測定し、データ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウンティングした後、これから計算して平均粒径値を得ることができる。別途の定義がない限り、平均粒径は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味し得る。
【0017】
ここで「または」は、排除的な(exclusive)意味と解釈されず、例えば「AまたはB」はA、B、A+Bなどを含むものと解釈される。
【0018】
「金属」は、一般金属と遷移金属およびメタロイド(半金属)を含む概念と解釈される。
【0019】
正極活物質
一実施形態では、リチウムニッケル系複合酸化物を含み、複数の1次粒子が凝集された2次粒子および前記2次粒子の表面に位置するコバルトコーティング部を含む第1正極活物質、およびリチウムニッケル系複合酸化物を含み、単粒子および前記単粒子の表面に位置するコバルトコーティング部を含む第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供する。第1正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)は、第2正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)の1.45倍~1.60倍であることを特徴とする。
【0020】
エネルギー密度を高め、初期効率および長期寿命特性を改善するために、2次粒子形態の正極活物質と単粒子形態の正極活物質とを混合して使用する技術が提案されてきた。また正極活物質の構造的安全性を高め、表面での副反応を抑制するために、正極活物質にコバルトなどの物質をコーティングする技術が使用されている。高容量化を実現するためにニッケルの含有量が高い正極活物質を合成する場合、陽イオン混合現象が起こり、未反応リチウム化合物が表面に残留するようになるため、合成後に水洗工程を行うことが一般的であり、水洗工程と同時にコバルトなどの化合物をコーティングする技術が使用されている。しかし、2次粒子と単粒子に対して同時にコーティングを行う場合、比表面積が比較的に高い単粒子にさらに多いコーティング物質が反応してコーティングされることで、2次粒子と単粒子間のコーティング不均衡が発生するようになる。そのために、2次粒子は十分なコーティング効果を得ることができず、構造的崩壊や表面での副反応が行われて劣化が加速化され、表面にコーティング粒子が不均一に存在してガス発生を誘発するようになり、単粒子では過多なコーティングが抵抗として作用するようになって電池性能に悪影響を及ぼすようになる。
【0021】
一実施形態では、単粒子への過多なコーティングを抑制しながら2次粒子へのコーティングを強化して、つまり、二種類の粒子のコーティング含有量関係を適切に調節することによって、高温長期寿命特性などのリチウム二次電池の性能を改善する。一実施形態により2次粒子形態の第1正極活物質のコバルトコーティング含有量が単粒子形態の第2正極活物質のコバルトコーティング含有量の1.45倍~1.60倍を満たす場合、高容量、高エネルギー密度を実現し、同時に高温長寿命特性を向上させ、高温貯蔵時のガス発生量を抑制し、初期充放電効率を改善することができる。
【0022】
第1正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)は、第2正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)の1.45倍~1.60倍であり、例えば1.45倍~1.55倍、あるいは1.50倍~1.60倍であり得る。
【0023】
第1正極活物質
第1正極活物質は、多結晶(polycrystal)形態であり、少なくとも2個以上の1次粒子が凝集された2次粒子を含む。
【0024】
一実施形態による第1正極活物質は、前記2次粒子の表面に位置するコバルトコーティング部を含む。前記コバルトコーティング部は、前記2次粒子の表面の全体、または少なくとも一部に位置することができる。第1正極活物質は、コバルトでコーティングされることによって充放電の繰り返しによる構造の崩壊が効果的に抑制されて、常温および高温寿命特性を向上させることができる。
【0025】
前記コバルトコーティング部は、コバルト含有化合物を含む。前記コバルト含有化合物は、例えばコバルト酸化物、コバルト水酸化物、コバルトカーボネート、これらの合成物またはこれらの混合物などであり得る。また前記コバルト含有化合物は、コバルト以外に他の金属や非金属元素をさらに含むことができる。例えば前記コバルト含有化合物は、リチウム、マンガン、および/またはニッケルなどをさらに含むこともできる。例えば前記コバルト含有化合物は、リチウムコバルト酸化物などであり得る。
【0026】
第1正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量は、55at%~70at%であり得、例えば55at%~68at%、55at%~65at%、55at%~63at%、57at%~70at%、59at%~70at%、60at%~70at%、60at%~65at%、あるいは61at%~63at%であり得る。第1正極活物質のコバルトコーティング含有量が前記範囲を満たしながら、第2正極活物質のコバルトコーティング含有量の1.45倍~1.60倍を満たす場合、粒子間のコーティング不均一が解消され、第1正極活物質の表面に均一なコーティングが形成されてガス発生が抑制され、初期充放電効率および長期寿命特性などが改善され得る。
【0027】
一実施形態による第1正極活物質は、前記2次粒子の内部の1次粒子の表面に位置する粒界コバルトコーティング部をさらに含むことができる。前記粒界コバルトコーティング部は、2次粒子の表面でない内部に存在するものであり、2次粒子内部の1次粒子の界面に沿ってコーティングされているといえ、そのために粒界にコーティングされたものと表現することができる。ここで2次粒子の内部とは、表面を除いた内部全体を意味し、例えば外郭表面でほぼ10nm深さから内側全体、あるいは10nm深さから約2μmの深さまでの領域を意味し得る。一実施形態による第1正極活物質は、粒界コバルトコーティング部をさらに含むことによって構造的安定性が強化され、表面に均一かつ一様なコーティングが誘導され、表面に対するコーティング含有量が適切に調節されて、抵抗増加なしに初期充放電効率と寿命特性が改善され得る。
【0028】
第1正極活物質の平均粒径、つまり、前記2次粒子の平均粒径は、5μm~25μmであり得る。例えば、7μm~25μm、10μm~25μm、15μm~25μm、または10μm~20μmであり得る。第1正極活物質の2次粒子の平均粒径は、後述する単粒子の第2正極活物質の平均粒径より大きくてもよい。一実施形態による正極活物質は、多結晶であると共に大粒子である第1正極活物質と、単粒子であると共に小粒子である第2正極活物質とを混合した形態であり得、そのために合剤密度を向上させることができ、高い容量と高いエネルギー密度を実現することができる。ここで、第1正極活物質の平均粒径は、正極活物質に対する電子顕微鏡写真で2次粒子形態の活物質30個余りを任意に選択して粒径を測定し、その粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を平均粒径として取ったものであり得る。
【0029】
第1正極活物質は、ニッケル系正極活物質であり、リチウムニッケル系複合酸化物を含む。一例として第1正極活物質は、高い含有量のニッケルを含有する高ニッケル系正極活物質であり得る。この場合、前記リチウムニッケル系複合酸化物でニッケルの含有量は、リチウムと酸素を除いた元素総量を基準に80モル%以上であり得、例えば85モル%以上、90モル%以上、91モル%以上、99.9モル%以下、または99モル%以下であり得る。このような高ニッケル系第1正極活物質は、高容量高性能を実現することができる。
【0030】
第2正極活物質
第2正極活物質は、単粒子(single particle)形態であり、これは粒子内に粒子境界(grain boundary)を有さずに単独で存在し、一つの粒子からなることを意味し、モルフォロジー上で粒子が互いに凝集しない独立した相(phase)で存在する単一粒子、モノリス(monolith)構造または単一体構造または非凝集粒子を意味し得、一例として単結晶であり得る。一実施形態による正極活物質は、このような単粒子形態の第2正極活物質を含むことによって、高容量、高エネルギー密度を実現しながら向上した寿命特性を示すことができる。
【0031】
一実施形態による第2正極活物質は、単粒子表面に位置するコバルトコーティング部を含む。第2正極活物質は、コバルトでコーティングされることによって充放電の繰り返しによる構造の崩壊が効果的に抑制されて、常温および高温寿命特性を向上させることができる。
【0032】
前記コバルトコーティング部は、コバルト含有化合物を含む。前記コバルト含有化合物は、例えばコバルト酸化物、コバルト水酸化物、コバルトカーボネート、これらの合成物またはこれらの混合物などであり得る。また前記コバルト含有化合物は、コバルト以外に他の金属や非金属元素をさらに含むことができる。例えば前記コバルト含有化合物は、リチウム、マンガン、および/またはニッケルなどをさらに含むこともできる。例えば前記コバルト含有化合物は、リチウムコバルト酸化物などであり得る。
【0033】
第2正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量は、39at%~45at%であり得、例えば39at%~44at%、39at%~43at%、39at%~42at%、40at%~45at%、または41at%~45at%であり得る。第2正極活物質のコバルトコーティング含有量が前記範囲を満たしながら、これに対する第1正極活物質のコバルトコーティング含有量の比率が1.45~1.60を満たす場合、粒子間のコーティング不均一が解消され、第2正極活物質への過多なコーティングが抑制され、均一なコーティングが誘導されて抵抗が減少し、初期充放電効率および長期寿命特性などが改善され得る。
【0034】
一方、一実施形態で正極活物質の表面でのニッケルとコバルト総量に対するコバルトの含有量を測定する方法は、正極活物質表面に対する走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光分析(SEM-EDS)を実施し、定量分析を通じてニッケル、コバルトそれぞれの含有量を求めた後、その合計に対するコバルト含有量の比率を計算して得るものであり得る。コバルト含有量を測定する方法としては、SEM-EDS以外にも誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry;ICP-MS)、あるいは誘導結合プラズマ発光分光法(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy;ICP-OES)などを使用することができる。
【0035】
第2正極活物質の平均粒径、つまり、単粒子の平均粒径は、0.1μm~10μmであり得、例えば0.1μm~7μm、0.5μm~6μm、または1μm~5μmであり得る。第2正極活物質の粒径は、第1正極活物質より小さくてもよく、そのために正極活物質の密度を一層高めることができる。ここで、第2正極活物質の平均粒径は、正極活物質に対する電子顕微鏡写真で単粒子形態の活物質30個余りを任意に選択して粒径を測定し、その粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を平均粒径として取ったものであり得る。
【0036】
第2正極活物質は、ニッケル系活物質であり、リチウムニッケル系複合酸化物を含む。一例として第2正極活物質は、高い含有量のニッケルを含有する高ニッケル系正極活物質であり得る。この場合、前記リチウムニッケル系複合酸化物でニッケルの含有量は、リチウムと酸素を除いた元素総量を基準に80モル%以上であり得、例えば85モル%以上、90モル%以上、91モル%以上、99.9モル%以下、または99モル%以下であり得る。このような高ニッケル系第2正極活物質は、高容量高性能を実現することができる。
【0037】
具体的に、第1正極活物質と第2正極活物質は、それぞれ独立して、下記化学式1で表されるリチウムニッケル系複合酸化物を含むことができる。
【0038】
[化学式1]
Lia1Nix1 y1 z12-b1b1
【0039】
前記化学式1で、0.9≦a1≦1.8、0.8≦x1≦1、0≦y1≦0.2、0≦z1≦0.2、0.9≦x1+y1+z1≦1.1、および0≦b1≦0.1であり、MおよびMは、それぞれ独立して、Al、B、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。
【0040】
前記化学式1で、0.85≦x1≦1、0≦y1≦0.15、および0≦z1≦0.15であるか、または0.9≦x1≦1、0≦y1≦0.1、および0≦z1≦0.1であり得る。
【0041】
例えば第1正極活物質と第2正極活物質は、それぞれ独立して、下記化学式2で表されるリチウムニッケル系複合酸化物を含むことができる。化学式2で表される化合物は、リチウムニッケルコバルト系複合酸化物であるといえる。
【0042】
[化学式2]
Lia2Nix2Coy2 z22-b2b2
【0043】
前記化学式2で、0.9≦a2≦1.8、0.8≦x2<1、0<y2≦0.2、0≦z2≦0.2、0.9≦x2+y2+z2≦1.1、および0≦b2≦0.1であり、Mは、Al、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。
【0044】
前記化学式2で0.85≦x2≦0.99、0.01≦y2≦0.15、および0.01≦z2≦0.15であるか、または0.9≦x2≦0.99、0.01≦y2≦0.1、および0.01≦z2≦0.1であり得る。
【0045】
一例として第1正極活物質と第2正極活物質は、それぞれ独立して、下記化学式3で表示されるリチウムニッケル系複合酸化物を含むことができる。化学式3の化合物は、リチウムニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物、あるいはリチウムニッケル-コバルト-マンガン酸化物であるといえる。
【0046】
[化学式3]
Lia3Nix3Coy3 z3 w32-b3b3
【0047】
前記化学式3で、0.9≦a3≦1.8、0.8≦x3≦0.98、0.01≦y3≦0.19、0.01≦z3≦0.19、0≦w3≦0.19、0.9≦x3+y3+z3+w3≦1.1、および0≦b3≦0.1であり、Mは、Al、およびMnからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、Mは、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。
【0048】
前記化学式3で0.85≦x3≦0.98、0.01≦y3≦0.14、0.01≦z3≦0.14、および0≦w3≦0.14であるか、または0.9≦x3≦0.98、0.01≦y3≦0.09、0.01≦z3≦0.09、および0≦w3≦0.09であり得る。
【0049】
一例として、第1正極活物質と第2正極活物質は、それぞれ独立して、下化学式4で表されるリチウムニッケル系複合酸化物を含むことができる。化学式4の化合物は、コバルトフリーリチウムニッケル-マンガン系酸化物であるといえる。
【0050】
[化学式4]
Lia4Nix4Mny4 z42-b4b4
【0051】
前記化学式4で、0.9≦a4≦1.8、0.8≦x4<1、0<y4≦0.2、0≦z4≦0.2、0.9≦x4+y4+z4≦1.1、および0≦b4≦0.1であり、Mは、Al、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、XはF、PおよびSからなるグループより選択される一つ以上の元素である。
【0052】
一実施形態による正極活物質で、第1正極活物質と第2正極活物質の総量に対して、第1正極活物質は50重量%~90重量%で含まれ、第2正極活物質は10重量%~50重量%で含まれ得る。第1正極活物質は、例えば60重量%~90重量%、または70重量%~90重量%で含まれ、第2正極活物質は10重量%~40重量%、または10重量%~30重量%で含まれ得る。第1正極活物質と第2正極活物質の含有量の比率が前記のような場合、これを含む正極活物質は、高い容量を実現し、合剤密度が向上し、高いエネルギー密度を示すことができる。
【0053】
正極活物質の製造方法
一実施形態では、溶媒に単粒子形態の第2リチウムニッケル系複合酸化物およびコバルト原料を投入する第1工程を行い、ここに複数の1次粒子が凝集された2次粒子形態である第1リチウムニッケル系複合酸化物およびコバルト原料を投入する第2工程を順次に行い、前記2次粒子の表面にコバルトコーティング部が形成された第1正極活物質および前記単粒子の表面にコバルトコーティング部が形成された第2正極活物質を収得することを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。ここで第1工程の所要時間(分;minute)と第2工程の所要時間(分;minute)との比率は、65:35~75:25であることを特徴とする。このような方法によれば、単粒子への過多なコーティングが抑制されて2次粒子へのコーティングが強化され、つまり、二種類の粒子のコーティング含有量の関係が適切に調節されることによって、高温長期寿命特性、初期充放電効率、高温貯蔵性能などのリチウム二次電池の性能が改善され得る。例えば、前記製造方法によれば、前述のように第1正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)が、第2正極活物質のコバルトコーティング部でニッケルおよびコバルト総量に対するコバルトの含有量(at%)の1.45倍~1.60倍を満たす正極活物質を製造することができ、前述した正極活物質を収得することができる。
【0054】
具体的に、混合器に溶媒を投入した後、ここに単粒子形態の第2リチウムニッケル系複合酸化物とコバルト原料を投入して混合して第1工程を行う。第1工程を一定時間行って第1混合物を収得し、第1混合物に2次粒子形態の第1リチウムニッケル系複合酸化物とコバルト原料を投入して混合する第2工程を順次に行う。つまり、単粒子と2次粒子を同時に水洗しながらコーティングするのではなく、単粒子を水洗しながらコーティングする第1工程を先に行い、2次粒子を水洗しながらコーティングする第2工程を順次に行うことによって、二種類の粒子に均一なコーティングを誘導することができる。
【0055】
ここで第1工程の所要時間と第2工程の所要時間との比率を適切に調節することにより単粒子と2次粒子のコーティング不均一が解消され、それぞれが適切な比率でコーティングされることによって抵抗が抑制され、ガス発生が抑制され、長期寿命特性および初期充放電効率などが改善され得る。第1工程と第2工程の全体所要時間(分)に対する第1工程の所要時間(分)の比率が0.65より小さい場合、単粒子形態の第2正極活物質表面のコーティング量が過度に減少するようになり、そのために第2正極活物質の構造的安定性が低下し、結局、長寿命特性が低下することがある。また第1工程と第2工程の全体所要時間(分)に対する第1工程の所要時間(分)の比率が0.75より大きい場合、第2正極活物質に対するコーティング量が過多になるため表面抵抗が増加し、結局、寿命低下につながることがある。
【0056】
第1工程では、一例として、コバルト原料を投入した後、第2リチウムニッケル系複合酸化物を順次に投入することができ、第2工程でもコバルト原料を投入した後、第1リチウムニッケル系複合酸化物を順次に投入することができる。
【0057】
第1リチウムニッケル系複合酸化物と第2リチウムニッケル系複合酸化物は、前述した化学式1で表される化合物であり得、例えば化学式2、または化学式3、または化学式4で表される化合物であり得る。
【0058】
前記コバルト原料は、例えば水酸化コバルト、炭酸コバルト、硫酸コバルト、酸化コバルト、硝酸コバルトなどであり得る。
【0059】
第1工程でコバルト原料は、第2リチウムニッケル系複合酸化物でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルト含有量が0.01モル部~7モル部になるように投入することができ、例えば0.01モル部~5モル部、または0.1モル部~3モル部などになるように投入することができる。この場合、適切な含有量のコバルトコーティング部を形成することができる。
【0060】
同様に、第2工程でコバルト原料は、第1リチウムニッケル系複合酸化物でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルト含有量が0.01モル部~7モル部になるように投入することができ、例えば0.01モル部~5モル部、または0.1モル部~3モル部などになるように投入することができる。この場合、適切な含有量のコバルトコーティング部を形成することができる。
【0061】
第2工程で第1リチウムニッケル系複合酸化物を投入する時、第1リチウムニッケル系複合酸化物と第2リチウムニッケル系複合酸化物との重量比が9:1~5:5になるように投入することができ、例えば8:2~6:4になるように投入することができる。このような比率で混合する場合、エネルギー密度を極大化することができる。
【0062】
第1工程と第2工程で、必要に応じて沈殿剤、pH調節剤などをさらに投入することもできる。
【0063】
一実施形態による正極活物質の製造方法では、第2工程を一定時間行って第2混合物を得、これをフィルタリングして溶媒を除去した後に乾燥する過程をさらに含むことができる。この時、乾燥は、例えば100℃~300℃の温度範囲で5時間~15時間行うことができる。また乾燥して得られた収得物を熱処理することができる。前記熱処理は、酸素または空気雰囲気などの酸化性ガス雰囲気で行うことができ、650℃~900℃、または650℃~800℃で実施することができる。前記熱処理時間は、熱処理温度などにより可変的であるが、例えば5~30時間または10~24時間実施することができる。
【0064】
前記収得物を熱処理する時、リチウム原料をさらに投入して熱処理することもできる。リチウム原料は、例えばLiCO、LiOH、これらの水和物、またはこれらの組み合わせであり得る。前記リチウム原料は、第1リチウムニッケル系複合酸化物と第2リチウムニッケル系複合酸化物全体でリチウムと酸素を除いた元素に対するリチウムの含有量が0.1モル部~10モル部になるように投入することができ、例えば0.1モル部~8モル部、または1モル部~6モル部投入することができる。前述の溶媒で水洗する過程でリチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面に損傷が発生して容量とレート特性が低下し、高温貯蔵時に抵抗が増加する問題が発生することがあるが、このように熱処理時にリチウム原料を投入することによって表面の損傷を修復し、容量およびレート特性などを改善することができる。
【0065】
正極
リチウム二次電池用正極は、集電体、およびこの集電体上に位置する正極活物質層を含むことができる。前記正極活物質層は、正極活物質を含み、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0066】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
前記正極活物質層でバインダーの含有量は、正極活物質層全体重量に対してほぼ1重量%~5重量%であり得る。
【0068】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含有し、金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0069】
前記正極活物質層で導電材の含有量は、正極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であり得る。
【0070】
前記正極集電体としては、アルミニウム箔を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0071】
負極
リチウム二次電池用負極は、集電体、およびこの集電体上に位置する負極活物質層を含む。前記負極活物質層は、負極活物質を含み、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0072】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0073】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質としては、炭素系負極活物質であって、例えば結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを含むことができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状型、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0074】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金を使用することができる。
【0075】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si系負極活物質またはSn系負極活物質を使用することができ、前記Si系負極活物質としては、シリコン、シリコン-炭素複合体、SiO(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、前記Sn系負極活物質としては、Sn、SnO、Sn-R合金(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素、第15族元素、第16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiOを混合して使用することもできる。前記元素QおよびRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0076】
前記シリコン-炭素複合体は、例えば結晶質炭素およびシリコン粒子を含むコア、およびこのコア表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むシリコン-炭素複合体であり得る。前記結晶質炭素は、人造黒鉛、天然黒鉛またはこれらの組み合わせであり得る。前記非晶質炭素前駆体としては、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油またはフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子樹脂を使用することができる。この時、シリコンの含有量は、シリコン-炭素複合体全体重量に対して10重量%~50重量%であり得る。また、前記結晶質炭素の含有量は、シリコン-炭素複合体全体重量に対して10重量%~70重量%であり得、前記非晶質炭素の含有量は、シリコン-炭素複合体全体重量に対して20重量%~40重量%であり得る。また、前記非晶質炭素コーティング層の厚さは、5nm~100nmであり得る。前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は、10nm~20μmであり得る。前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は、好ましくは10nm~200nmであり得る。前記シリコン粒子は、酸化された形態で存在することができ、この時、酸化程度を示すシリコン粒子内Si:Oの原子含有量の比率は、99:1~33:67であり得る。前記シリコン粒子は、SiO粒子であり得、この時、SiOでxの範囲は、0超過、2未満であり得る。本明細書で、別途の定義がない限り、平均粒径(D50)は、粒度分布で累積体積が50体積%の粒子の直径を意味する。
【0077】
前記Si系負極活物質またはSn系負極活物質は、炭素系負極活物質と混合して使用することができる。Si系負極活物質またはSn系負極活物質と炭素系負極活物質とを混合使用する時、その混合比は、重量比で1:99~90:10であり得る。
【0078】
前記負極活物質層で負極活物質の含有量は、負極活物質層全体重量に対して95重量%~99重量%であり得る。
【0079】
一実施形態で、前記負極活物質層は、バインダーをさらに含み、選択的に導電材をさらに含むことができる。前記負極活物質層でバインダーの含有量は、負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であり得る。また導電材をさらに含む場合、前記負極活物質層は、負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%含むことができる。
【0080】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0081】
前記非水溶性バインダーとしては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化ポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0082】
前記水溶性バインダーとしては、ゴム系バインダーまたは高分子樹脂バインダーが挙げられる。前記ゴム系バインダーは、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、アクリロニトリル-ブタジエンラバー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、およびこれらの組み合わせから選択されるものであり得る。前記高分子樹脂バインダーは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせから選択されるものであり得る。
【0083】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系化合物をさらに含むことができる。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としては、Na、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤の使用含有量は、負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であり得る。
【0084】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含み、金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0085】
前記負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0086】
リチウム二次電池
他の一実施形態は、正極、負極、前記正極と前記負極との間に位置するセパレータ、および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0087】
図1は一実施形態によるリチウム二次電池を示す概略図である。図1を参照すれば、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極114、正極114と対向して位置する負極112、正極114と負極112との間に配置されているセパレータ113、および正極114、負極112およびセパレータ113を含浸するリチウム二次電池用電解質を含む電池セルと、前記電池セルを含んでいる電池容器120と、前記電池容器120を密封する密封部材140とを含む。
【0088】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0089】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たす。非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができ、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどを使用することができる。また前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非プロトン性溶媒としては、R-CN(ここで、Rは、C2~C20直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香環、またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0090】
前記非水性有機溶媒は、単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能により適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には幅広く理解され得る。
【0091】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートとを混合して使用することができる。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用する場合、電解液の性能が優れるように現れ得る。
【0092】
前記非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、約1:1~約30:1の体積比で混合され得る。
【0093】
前記芳香族炭化水素系溶媒としては、下記化学式Iの芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【0094】
【化1】
【0095】
前記化学式Iで、R~Rは、互いに同じかまたは異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0096】
前記芳香族炭化水素系溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0097】
前記電解液は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式IIのエチレンカーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含むこともできる。
【0098】
【化2】
【0099】
前記化学式IIで、R10およびR11は、互いに同じかまたは異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択され、前記R10およびR11のうちの少なくとも一つは、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択されるが、ただし、R10およびR11は同時に水素ではない。
【0100】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適切に調節することができる。
【0101】
前記リチウム塩は、非水性有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0102】
リチウム塩の代表的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiN(SO、Li(FSON(リチウムビスフルオロスルホニルイミド;lithium bis(fluorosulfonyl)imide;LiFSI)、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiPO、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば、1~20の整数である)、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート(lithium difluoro(bisoxalato) phosphate)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビス(オキサラト)ボレート;lithium bis(oxalato) borate;LiBOB)、およびリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上が挙げられる。
【0103】
リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0M範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度および粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0104】
セパレータ113は、正極114と負極112を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウムイオン電池で通常使用されるものであれば全て使用することができる。つまり、電解質のイオン移動に対して低い抵抗を有すると共に電解液含湿能力に優れたものを使用することができる。例えば、セパレータ113は、ガラス繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはこれらの組み合わせなどを含むことができ、不織布または織布形態であり得る。例えば、リチウムイオン電池にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度の確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれているコーティングされたセパレータを使用することもでき、選択的に単層または多層構造で使用することができる。
【0105】
リチウム二次電池は、使用するセパレータと電解質の種類によりリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類することができ、形態により円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによりバルクタイプと薄膜タイプに分類することができる。これらの電池の構造と製造方法は、当該分野において広く知られているため、詳細な説明は省略する。
【0106】
一実施形態によるリチウム二次電池は、高容量を実現し、高温で貯蔵安定性、寿命特性および高レート特性などに優れて電気自動車(electric vehicle、EV)に使用することができ、プラグインハイブリッド車両(plug-in hybrid electric vehicle、PHEV)などのハイブリッド車両に使用することができ、携帯用電子機器などに使用することもできる。
【0107】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。下記の実施例は、本発明の一例に過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0108】
実施例1
1.2次粒子形態の第1リチウムニッケル系複合酸化物の製造
金属原料として硫酸ニッケル(NiSO・6HO)、硫酸コバルト(CoSO・7HO)および硫酸マンガン(MnSO・HO)を95:4:1モル比になるように溶媒である蒸留水に溶かして混合溶液を準備し、錯化合物の形成のためにアンモニア水(NHOH)と沈殿剤として水酸化ナトリウム(NaOH)を準備した。
【0109】
連続式反応器にアンモニア水希釈液を投入した後、金属原料混合溶液を連続的に投入し、反応器内部のpHを維持するために水酸化ナトリウムを投入する。ほぼ80時間ゆっくり反応を行い、反応が安定化されるとオーバーフローされる生成物を収集して洗浄および乾燥工程を行って最終前駆体を得る。これにより1次粒子が凝集された2次粒子形態である第1ニッケル系水酸化物(Ni0.95Co0.04Mn0.01(OH))を収得して洗浄および乾燥を行う。
【0110】
第1ニッケル系水酸化物の金属総量に対するリチウムのモル比率が1.04になるように、第1ニッケル系水酸化物とLiOHを混合し、酸素雰囲気で約750℃で15時間第1熱処理することによって、第1ニッケル系酸化物(LiNi0.95Co0.04Mn0.01)を得る。得られた第1ニッケル系酸化物の平均粒径は、ほぼ15μmであり、1次粒子が凝集された2次粒子形態である。
【0111】
2.単粒子形態の第2リチウムニッケル系複合酸化物の製造
硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを95:4:1モル比になるように溶媒である蒸留水に溶かして混合溶液を準備する。錯化合物の形成のためにアンモニア水(NHOH)希釈液と、沈殿剤として水酸化ナトリウム(NaOH)を準備する。その後、反応器に金属原料混合溶液、アンモニア水、水酸化ナトリウムをそれぞれ反応器内部に投入する。次に、攪拌を行いながら約20時間反応を行う。その後、反応器内のスラリー溶液を濾過および高純度の蒸留水で洗浄後、24時間乾燥して第2ニッケル系水酸化物(Ni0.95Co0.04Mn0.01(OH))粉末を得る。得られた第2ニッケル系水酸化物粉末は平均粒径が約4.0μmであり、BET測定法により測定される比表面積は約15m/gである。
【0112】
収得した第2ニッケル系水酸化物と、Li/(Ni+Co+Mn)=1.05を満たすLiOHと、第2ニッケル系水酸化物の全金属100モル部に対して、ドーパントとしてAlを1モル部、Zrを0.2モル部、Mgを0.1モル部共に混合して焼成炉に投入し、酸素雰囲気で820℃で10時間第2熱処理を施す。その後、収得物を約30分間粉砕して、単粒子形態を有する多数の第2ニッケル系酸化物に分離/分散させる。収得した単粒子形態の第2ニッケル系酸化物の平均粒径は約3.7μmである。
【0113】
3.コバルトコーティングおよび最終正極活物質の製造
混合器に蒸留水溶媒および硫酸コバルトを投入し、製造した第2リチウムニッケル系複合酸化物を投入して混合する第1工程を行う。前記硫酸コバルトは、第2リチウムニッケル系複合酸化物でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルト含有量が2.5モル部になるように投入する。第1工程で、第2リチウムニッケル系複合酸化物を投入した後、沈殿剤とpH調節剤の役割を果たす水酸化ナトリウムを共に投入して混合する。
【0114】
第1工程を70分間行った後、ここに硫酸コバルトを投入し、その後第1リチウムニッケル系複合酸化物を投入して混合する第2工程を行う。第1リチウムニッケル系複合酸化物と先に投入した第2リチウムニッケル系複合酸化物との重量比が7:3になるように第1リチウムニッケル系複合酸化物を投入する。前記硫酸コバルトは、第1リチウムニッケル系複合酸化物でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルト含有量が2.5モル部になるように投入する。第2工程でも、第1リチウムニッケル系複合酸化物の投入後、水酸化ナトリウムを投入して共に混合する。
【0115】
第2工程を30分間行った後、フィルタリングして200℃で10時間乾燥させる。その後、収得物とリチウム原料を混合して焼成炉に投入し、酸素雰囲気で約710℃で15時間熱処理する。この時、リチウム原料は、収得物でリチウムと酸素を除いた元素全体に対してリチウム含有量が5モル部になるように投入する。その後、焼成炉を室温で冷却して、2次粒子形態の第1リチウムニッケル系複合酸化物の表面にコバルトコーティング部が形成された第1正極活物質、および単粒子形態の第2リチウムニッケル系複合酸化物の表面にコバルトコーティング部が形成された第2正極活物質が混合された最終正極活物質を収得する。
【0116】
4.正極の製造
最終正極活物質95重量%、ポリフッ化ビニリデンバインダー3重量%および炭素ナノチューブ導電材2重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して正極活物質スラリーを製造する。アルミニウム集電体に前記正極活物質スラリーを塗布し乾燥させた後、圧延して正極を準備する。
【0117】
5.リチウム二次電池の製造
準備した正極とリチウム金属対極を使用し、その間にポリエチレンポリプロピレン多層構造のセパレータを介し、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを50:50体積比で混合した溶媒に1.0MのLiPFリチウム塩を添加した電解液を注入して、コインハーフセルを製造する。
【0118】
比較例1
実施例1の「3.コバルトコーティングおよび最終正極活物質の製造」で、第1工程と第2工程を別途に行わずに同時コーティングを行う。つまり、溶媒に第1リチウムニッケル系複合酸化物と第2リチウムニッケル系複合酸化物およびコバルト原料を投入して100分間混合した後、フィルタリングし乾燥させて最終正極活物質を収得する。ここでコバルト原料は、第1リチウムニッケル系複合酸化物と第2リチウムニッケル系複合酸化物全体でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するコバルトの含有量が2.5モル部になるように投入する。
【0119】
その他は実施例1と同様の方法で正極活物質、正極およびリチウム二次電池を製造する。
【0120】
比較例2
実施例1の「3.コバルトコーティングおよび最終正極活物質の製造」で、第1工程を80分間行い、第2工程を20分間行うことを除いては、実施例1と同様の方法で正極活物質、正極およびリチウム二次電池を製造する。
【0121】
比較例3
実施例1の「3.コバルトコーティングおよび最終正極活物質の製造」で、第1工程を60分間行い、第2工程を40分間行うことを除いては、実施例1と同様の方法で正極活物質、正極およびリチウム二次電池を製造する。
【0122】
評価例1:正極活物質表面に対する分析
図2は比較例1で製造した最終正極活物質に対するSEMイメージであり、図3は比較例1の最終正極活物質のうち2次粒子形態の第1正極活物質の表面を撮影したSEMイメージである。
【0123】
図4は実施例1で製造した最終正極活物質に対するSEMイメージであり、図5は実施例1の最終正極活物質のうち2次粒子形態の第1正極活物質の表面を撮影したSEMイメージである。
【0124】
比較例1の図2図3と実施例1の図4図5を比較してみれば、実施例1の場合、第1正極活物質の表面がより均一かつ薄くコーティングされていることを確認できる。
【0125】
評価例2:正極活物質の破断面に対する分析
図6は比較例1の第1正極活物質の破断面に対するSEMイメージであり、図6の左側下段は四角形で表示した部分をSEM-EDS分析してコバルト元素をハイライトしたイメージである。図7は実施例1の第1正極活物質の破断面に対するSEMイメージであり、図7の左側下段は四角形で表示した部分をSEM-EDS分析してコバルト元素をハイライトしたイメージである。
【0126】
図6図7を比較してみれば、比較例1の場合、第1正極活物質2次粒子の表面にだけコーティング物質が厚く形成される反面、実施例1の場合、第1正極活物質2次粒子の表面だけでなく、内部の1次粒子の表面の粒界にもコバルトコーティングされていることを確認できる。
【0127】
図8は比較例1の第2正極活物質の破断面に対してSEM-EDS分析でコバルト元素をハイライトしたイメージであり、図9は実施例1の第2正極活物質の破断面に対してSEM-EDS分析でコバルト元素をハイライトしたイメージである。
【0128】
図8図9を比較してみれば、比較例1に比べて実施例1の場合、第2正極活物質である単粒子の表面にコバルトコーティングがより均一かつ一様に形成されたことを確認できる。
【0129】
評価例3:正極活物質のコバルトコーティング含有量の分析
前記評価例2で実施したSEM-EDS分析を通じて第1正極活物質と第2正極活物質それぞれの表面でのコバルト含有量(Co/(Ni+Co)、at%)を測定し、その結果を下記表1に示した。表1のデータは、ノイズ除去のために第1正極活物質と第2正極活物質全体コバルトコーティング含有量を実施例1の値で同一に補正した値である。
【0130】
【表1】
【0131】
評価例4:電池高温寿命特性の評価
実施例1、および比較例1~3で製造したリチウム二次電池を定電流(0.2C)および定電圧(4.25V、0.05C cut-off)条件で初期充電し、10分間休止した後、定電流(0.2C)条件下で3.0Vになるまで放電させて初期充放電を行う。その後、45℃で0.5C/0.5Cで150回充放電を繰り返す。初期放電容量に対する各サイクルでの放電容量の比率である容量維持率、つまり、高温寿命特性を評価し、その結果を図10に示した。
【0132】
前記表1と図10を参照すれば、同時コーティングを行った比較例1の場合、表面積が高い第1正極活物質の表面に過量のコバルトコーティングが行われ、図10で高温寿命特性が実施例1に比べて落ちたが、これは第1正極活物質と第2正極活物質間のコーティング不均一が発生し、そのために長寿命時、第1正極活物質の劣化が加速されて性能が低下したためと理解される。
【0133】
比較例2は、第1工程と第2工程を順次に行うが、全体工程のうち第1工程所要時間の比率が高くなった場合であり、第2正極活物質表面に過量のコーティングが行われ、これがむしろ抵抗として作用し、また第1正極活物質表面のコーティングは不足して表面での副反応が高いため、結局、長寿命特性が減少したと確認される。
【0134】
比較例3は、第1工程と第2工程を順次に行うが、全体工程のうち第1工程所要時間の比率が低くなった場合であり、第2正極活物質表面のコーティング含有量が減少して表面安定化効果が低下したため、長寿命特性が減少したと理解される。
【0135】
反面、実施例1の場合、第1正極活物質と第2正極活物質のコーティング不均一が解消されながら、コーティングによる抵抗が減少し、コーティングにより表面が安定化する効果が極大化され、結局、高温長寿命特性が向上することを確認できる。
【0136】
以上、好適な実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義している基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0137】
100:リチウム二次電池
112:負極
113:セパレータ
114:正極
120:電池容器
140:密封部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10