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特許7577197分析システム、分析システム用表示方法、及び、分析システム用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-24
(45)【発行日】2024-11-01
(54)【発明の名称】分析システム、分析システム用表示方法、及び、分析システム用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20241025BHJP
   G01N 30/80 20060101ALI20241025BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20241025BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20241025BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20241025BHJP
【FI】
G01N30/86 D
G01N30/80 F
G01N30/74 Z
G01N30/86 Q
G01N30/02 Z
G01N21/65
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023510258
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2021047818
(87)【国際公開番号】W WO2022209072
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2021058150
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】長井 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】辻井 貫也
(72)【発明者】
【氏名】若林 慧
(72)【発明者】
【氏名】三浦 哲三郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 裕之
(72)【発明者】
【氏名】森長 佳世
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/027652(WO,A1)
【文献】特開2004-251830(JP,A)
【文献】特開2001-165922(JP,A)
【文献】特開2014-020857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/86
G01N 30/80
G01N 30/74
G01N 30/02
G01N 21/65
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を成分ごとに分離して分析するクロマトグラフと、
前記クロマトグラフの成分検出器を通過した移動相又は前記液体試料の試料成分を含む分取液を分取するフラクションコレクタと、
前記フラクションコレクタで分取された前記分取液をラマン分光法に基づいて分析するラマン分光分析装置と、
前記クロマトグラフの分析結果である前記液体試料のクロマトグラムと、前記ラマン分光分析装置の分析結果である前記分取液のラマンスペクトルと、前記クロマトグラムと前記ラマンスペクトルに紐付けられた分析識別子と、が所定方向に並べられたデータ要素を含む分析概要画面を表示する分析概要表示部と、を備え
記分析概要表示部が、前記液体試料が同一で前記分取液がそれぞれ異なる複数の前記データ要素を前記所定方向と直交する方向に並べて前記分析概要画面に表示させる分析システム。
【請求項2】
前記分析概要表示部が、前記データ要素において、前記クロマトグラム上に前記分取液が分取されたフラクション期間を対応させて表示する請求項1記載の分析システム。
【請求項3】
前記フラクションコレクタが、複数のウエルが形成されたプレートに対して前記液体試料から分取される複数の前記分取液をそれぞれ異なるウエルに滴下するように構成されており、
前記データ要素が、前記分取液が滴下された前記プレート上のウエルの位置をさらに含み、前記分析識別子、前記クロマトグラム、前記ラマンスペクトル、前記ウエルの位置が前記所定方向に並んだ請求項1又は2いずれか一項に記載の分析システム。
【請求項4】
前記プレートが、個別のプレート名を示す識別コードを備え、
前記データ要素が、前記分取液が滴下された前記プレートのプレート名をさらに含み、前記分析識別子、前記クロマトグラム、前記ラマンスペクトル、前記プレート名が前記所定方向に並んだ請求項3に記載の分析システム。
【請求項5】
前記分析概要表示部が、前記分取液が分取された時系列順に各データ要素を前記所定方向と直交する方向に並べて前記分析概要画面を構成する請求項1乃至4いずれかに一項に記載の分析システム。
【請求項6】
前記分析概要画面に表示されている前記クロマトグラム又は前記ラマンスペクトルを選択するための選択入力を受け付ける入力受付部と、
選択された前記クロマトグラム又は前記ラマンスペクトルに対応する再解析画面を表示する再解析設定部と、をさらに備えた請求項1乃至5いずれか一項に記載の分析システム。
【請求項7】
前記クロマトグラムが再解析された場合には、前記分析概要表示部が選択された前記クロマトグラムを再解析されたクロマトグラムに変更した分析概要画面を表示するように構成された請求項6記載の分析システム。
【請求項8】
前記ラマンスペクトルが再解析された場合には、前記分析概要表示部が、新たに付与される分析識別子と、再解析されたラマンスペクトルと、再解析前の対応するクロマトグラムと、を含む新たなデータ要素を追加した分析概要画面を表示するように構成された請求項6又は7いずれか一項に記載の分析システム。
【請求項9】
液体試料を成分ごとに分離して分析するクロマトグラフと、前記クロマトグラフの成分検出器を通過した前記液体試料の試料成分を含む分取液を分取するフラクションコレクタと、前記フラクションコレクタで分取された前記分取液をラマン分光法に基づいて分析するラマン分光分析装置と、を備えた分析システムにおける分析結果の表示方法であって、
前記クロマトグラフの分析結果である前記液体試料のクロマトグラムと、前記ラマン分光分析装置の分析結果である前記分取液のラマンスペクトルと、前記クロマトグラムと前記ラマンスペクトルに紐付けられた分析識別子と、所定方向に並べられたデータ要素を含む分析概要画面を表示させ、
前記液体試料が同一で前記分取液がそれぞれ異なる複数の前記データ要素を前記所定方向と直交する方向に並べて前記分析概要画面に表示させることを特徴とする分析システム用表示方法。
【請求項10】
液体試料を成分ごとに分離して分析するクロマトグラフと、前記クロマトグラフの成分検出器を通過した前記液体試料の試料成分を含む分取液を分取するフラクションコレクタと、前記フラクションコレクタで分取された前記分取液をラマン分光法に基づいて分析するラマン分光分析装置と、を備えた分析システムに用いられるプログラムであって、
前記クロマトグラフの分析結果である前記液体試料のクロマトグラムと、前記ラマン分光分析装置の分析結果である前記分取液のラマンスペクトルと、前記クロマトグラムと前記ラマンスペクトルに紐付けられた分析識別子と、が所定方向に並べられたデータ要素を含む分析概要画面を表示させ、前記液体試料が同一で前記分取液がそれぞれ異なる複数の前記データ要素を前記所定方向と直交する方向に並べて前記分析概要画面に表示させる分析概要表示部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴する分析システム用プログラム。
【請求項11】
液体試料を成分ごとに分離して分析するクロマトグラフと、
前記クロマトグラフの成分検出器を通過した移動相又は前記液体試料の試料成分を含む分取液を分取するフラクションコレクタと、
前記フラクションコレクタで分取された前記分取液をラマン分光法に基づいて分析するラマン分光分析装置と、
前記クロマトグラフの分析結果である前記液体試料のクロマトグラムと、前記ラマン分光分析装置の分析結果である前記分取液のラマンスペクトルと、前記クロマトグラムと前記ラマンスペクトルに紐付けられた分析識別子と、が所定方向に並べられたデータ要素を含む分析概要画面を表示する分析概要表示部と、を備え、
前記分析概要表示部が、前記液体試料が同一で前記分取液がそれぞれ異なる複数の前記データ要素を、前記分取液が分取された時系列順に、前記所定方向と直交する方向に並べて前記分析概要画面を構成する分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィとラマン分光分析を組み合わせた分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の分析手法を組み合わせるハイフネイティッド技術の一種として、クロマトグラフィとラマン分光分析を組み合わせたものがある。特許文献1では、このような分析を行うために、液体試料を成分ごとに分離して分析するクロマトグラフと、クロマトグラフの検出器を通過した液体試料を分取するフラクションコレクタと、フラクションコレクタで分取された試料成分をラマン分光法に基づいて分析するラマン分光分析装置と、を用いている。
【0003】
これらの3つの装置は、それぞれの分析や操作等に特化したものであるため、別々のメーカで製造されていることが多い。このため、ユーザは各装置に対して個別のソフトウェアを用いて、各装置における分析や操作の設定を行ったり、得られたデータの解析を行ったりする必要がある。ラマン分光分析装置においてある試料成分のラマンスペクトルを単独で確認した後に対応する液体試料のクロマトグラムについて確認する場合には、クロマトグラフ用のソフトウェアを起動し、試料成分に対応するクロマトグラムのデータを探して別途表示することになる。
【0004】
しかしながら、このような表示方法では、クロマトグラムとラマンスペクトルを比較しにくく、それぞれのデータの対応関係を注意深く管理しなくてはならず、分析における使い勝手が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2014/027652号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は各装置が個別のソフトウェアで制御や解析を行うものであっても、対応するクロマトグラムとラマンスペクトルの比較が行いやすく、使い勝手の良い分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る分析システムは、液体試料を成分ごとに分離して分析するクロマトグラフと、前記クロマトグラフの成分検出器を通過した前記液体試料の試料成分を分取するフラクションコレクタと、前記フラクションコレクタで分取された前記分取液をラマン分光法に基づいて分析するラマン分光分析装置と、前記クロマトグラフの分析結果である前記液体試料のクロマトグラムと、前記ラマン分光分析装置の分析結果である前記分取液のラマンスペクトルと、前記クロマトグラムと前記ラマンスペクトルに紐付けられた分析識別子と、が所定方向に並べられたデータ要素を含む分析概要画面を表示する分析概要表示部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る分析システム用表示方法は、液体試料を成分ごとに分離して分析するクロマトグラフと、前記クロマトグラフの成分検出器を通過した前記液体試料の試料成分を分取するフラクションコレクタと、前記フラクションコレクタで分取された前記分取液をラマン分光法に基づいて分析するラマン分光分析装置と、を備えた分析システムにおける分析結果の表示方法であって、前記クロマトグラフの分析結果である前記液体試料のクロマトグラムと、前記ラマン分光分析装置の分析結果である前記分取液のラマンスペクトルと、前記クロマトグラムと前記ラマンスペクトルに紐付けられた分析識別子と、を所定方向に並べて表示することを特徴とする。なお、データ要素内における前記クロマトグラム、前記ラマンスペクトル、及び、前記分析識別子の前記所定方向に対する順番は、この記載の順番に限られるものではなく、様々な順番であってもよい。
【0009】
このようなものであれば、前記分析概要表示部が、前記分析識別子と、前記クロマトグラムと、前記ラマンスペクトルが前記所定方向に所定方向に並べて前記分析概要画面として表示するので、各装置が個別の専用ソフトウェアで動作するものであったとしても、ある試料成分について対応するクロマトグラムとラマンスペクトルを簡単に比較することが可能となる。この結果、ユーザはクロマトグラムにおけるピークにおいてどのような成分が含まれているかについてラマンスペクトルから考察したり、逆にクロマトグラムにおいてピークのない場所であれば、ラマンスペクトルから未知の成分や構造について考察したりすることが容易になる。
【0010】
前記分取液が分取されたのが前記クロマトグラム上でどの領域にあるかをわかりやすくして、前記ラマンスペクトルに基づく考察をユーザがより行いやすくするには、前記分析概要表示部が、前記データ要素において、前記クロマトグラム上に前記分取液が分取されたフラクション期間を対応させて表示するものであればよい。
【0011】
ユーザが前記クロマトグラムと前記ラマンスペクトルの比較だけでなく、前記分取液について例えば目視で状態を確認して、分析結果の妥当性等の考察をより行いやすくするには、前記フラクションコレクタが、複数のウエルが形成されたプレートに対して前記液体試料から分取される複数の前記分取液をそれぞれ異なるウエルに滴下するように構成されており、前記データ要素が、前記分取液が滴下された前記プレート上のウエルの位置をさらに含み、前記分析識別子、前記クロマトグラム、前記ラマンスペクトル、前記ウエルの位置が前記所定方向に並んだものであればよい。
【0012】
前記プレートが複数用意されている場合でも、各データの対応関係を一元管理しやすくするには、前記プレートが、個別のプレート名を示す識別コードを備え、前記データ要素が、前記分取液が滴下された前記プレートのプレート名をさらに含み、前記分析識別子、前記クロマトグラム、前記ラマンスペクトル、前記プレート名が前記所定方向に並んだものであればよい。
【0013】
前記クロマトグラムの複数のピークや領域に対応する複数のラマンスペクトル同士を比較しやすくして、前記液体試料に含まれる成分やその構造に関する考察をより行いやすくするには、前記液体試料が同一で前記分取液がそれぞれ異なる複数のデータ要素がある場合において、前記分析概要表示部が、前記分取液が分取された時系列順に各データ要素を前記所定方向と直交する方向に並べて前記分析概要画面を構成するものであればよい。
【0014】
クロマトグラムとラマンスペクトルを比較検討することで、いずれか、あるいは両方のデータについて、これまでとは異なる解析条件で再解析を行う必要が生じる場合がある。従来、各装置の専用ソフトウェアで対応するデータファイルを確認し、再解析しなくてはならず、ユーザにとってそのような操作は非常に煩雑であった。このような再解析に係る手間を軽減できるようにするには、前記分析概要画面に表示されている前記クロマトグラム又は前記ラマンスペクトルを選択するための選択入力を受け付ける入力受付部と、選択された前記クロマトグラム又は前記ラマンスペクトルに対応する再解析画面を表示する再解析設定部と、をさらに備えたものであればよい。
【0015】
前記クロマトグラムを再解析した結果と対応するラマンスペクトルとの比較検討をユーザが特別な操作をすることなく、簡単に行えるようにするには、前記クロマトグラムが再解析された場合には、前記分析概要表示部が選択された前記クロマトグラムを再解析されたクロマトグラムに変更した分析概要画面を表示するように構成されたものであればよい。
【0016】
データの妥当性を保ちながら前記ラマンスペクトルの再解析結果と対応する前記クロマトグラムの比較検討をユーザが行いやすくするには、前記ラマンスペクトルが再解析された場合には、前記分析概要表示部が、新たに付与される分析識別子と、再解析されたラマンスペクトルと、再解析前の対応するクロマトグラムと、を含む新たなデータ要素を追加した分析概要画面を表示するように構成されたものであればよい。
【0017】
既存の独立した複数の装置において、ソフトウェアのインストールのみで本発明に係る分析システムと同様の効果が享受できるようにするには、液体試料を成分ごとに分離して分析するクロマトグラフと、前記クロマトグラフの成分検出器を通過した前記液体試料の試料成分を分取するフラクションコレクタと、前記フラクションコレクタで分取された前記分取液をラマン分光法に基づいて分析するラマン分光分析装置と、を備えた分析システムに用いられるプログラムであって、前記液体試料を示す試料識別子と、前記クロマトグラフの分析結果である前記液体試料のクロマトグラムと、前記ラマン分光分析装置の分析結果である前記分取液中の試料成分のラマンスペクトルと、が所定方向に並べられたデータ要素を含む分析概要画面を表示する分析概要表示部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴する分析システム用プログラムを用いればよい。
【0018】
なお、分析システム用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明に係る分析システムによれば、前記分析識別子と、前記クロマトグラムと、前記ラマンスペクトルが前記所定方向に並べて表示されるので、各装置が個別の専用ソフトウェアで動作するものであったとしても、ある試料成分について対応するクロマトグラムとラマンスペクトルを簡単に比較することが可能となり、分析システムの使い勝手を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態における分析システムの構成を示す模式図。
図2】同実施形態における統合管理装置、LC制御演算器、フラクション制御演算器、及び、ラマン制御演算器の構成を示す機能ブロック図。
図3】同実施形態における操作画面表示部が表示する操作画面の1つであるポータル画面。
図4】同実施形態における操作画面表示部が表示する操作画面の1つであるプレート選択画面。
図5】同実施形態における操作画面表示部が表示する操作画面の1つである滴下範囲設定画面。
図6】同実施形態における分析概要表示部が表示する分析概要画面。
図7】同実施形態における再解析設定部の動作によって表示されるクロマトグラフ再解析画面。
図8】同実施形態における再解析設定部の動作によって表示されるラマンスペクトル再解析画面。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態の分析システム100は、液体クロマトグラフィとラマン分光法との双方を利用したLC―ラマン分析を行うものであり、いわゆるハイフネイティッド技術の一種である。具体的には図1に示すように分析システム100は、クロマトグラフ10、フラクションコレクタ20、及び、ラマン分光分析装置30と、これらの動作の設定、データ解析、分析結果の表示等を統合管理する統合管理装置40と、を備えている。クロマトグラフ10、フラクションコレクタ20、及び、ラマン分光分析装置30は、それぞれのハードウェアの動作やデータ解析を行うための専用のソフトウェアである制御演算器1C、2C、3Cを備えている。統合管理装置40はオーバーレイソフトとして動作するように構成されており、統合管理装置40と各機器の制御演算器1C、2C、3Cとが連携することで、1つの分析システム100として一体的に動作する。
【0022】
各機器について詳述する。
【0023】
クロマトグラフ10は、液体クロマトグラフィにより液体試料Sを成分ごとに分離し検出するものである。
【0024】
クロマトグラフ10は、図1に示すように、貯留部11に貯留された移動相Zをポンプ12により流路13に吸い上げるとともに、その流路13に液体試料Sを注入し、移動相Zとともに液体試料Sを分離カラム14に送液することで、液体試料Sを成分ごとに分離するように構成されたものである。分離カラム14の下流側には液体試料Sの分離された成分を検出する成分検出器15が設けられている。
【0025】
なお、移動相Zは、例えば複数種類の液体が混合された混合液であり、ここでは水とエタノール等の有機溶媒との混合液である。ただし、移動相Zとしては、単一の液体からなるものであっても良いし、濃度勾配を有するグラジエント溶媒であっても良い。
【0026】
また、クロマトグラフ10は、ポンプP等の各機器の制御を司るとともに成分検出器15の出力に基づいて液体試料Sのクロマトグラムを生成するLC制御演算器1Cをさらに備えている。LC制御演算器1Cは専用又は汎用のコンピュータにより構成され、メモリに格納されているクロマトグラフ専用のプログラムが実行され、各機器が協業することによりその機能が実現される。
【0027】
より具体的には図2に示すようにLC制御演算器1Cは、統合管理装置40からクロマトグラフ設定情報を受け付けて、その情報に基づいてポンプPの移動相Zの送出速度等を制御するLC制御部1C1と、成分検出器15の出力信号に基づいて液体試料Sのクロマトグラムに関するデータを生成するクロマトグラム生成部1C2と、を少なくとも備えている。また、クロマトグラム生成部1C2は生成されたクロマトグラムに関するデータを統合管理装置40に出力する。統合管理装置40は、クロマトグラムを受け付けると、このクロマトグラムに対して液体試料Sを示す試料識別子を紐付ける。
【0028】
フラクションコレクタ20は、図1に示すように、クロマトグラフ10の成分検出器15の下流側に設けられ、成分検出器15を通過した液体試料Sを移動相Zとともに分取するものである。この実施形態では、フラクションコレクタ20は、複数のウエルWがマトリクス状に形成されたプレートPLに対して液体試料Sから分取される複数の試料成分をそれぞれ異なるウエルWに滴下するように構成されている。なお、以下ではフラクションコレクタ20によりプレートPLに分取される液体を分取液SSと言い、この分取液SSは、移動相Zに液体試料S由来の成分が含まれてなるもののみならず、移動相Zのみからなるものも含む概念である。
【0029】
ここで、プレートPLは個別のプレート名を示す識別コードを備えている。識別コードは例えばDataMatrix(登録商標)等の2次元バーコードであって、プレートPLにおいてウエルWが形成されている面に印字又は刻印されている。なお、識別コードはこれに限られるものではなく、QRコード(登録商標)や1次元のバーコードであってもよいし、プレートPLに形成されている切り欠きの固有の位置を識別コードとして用いてもよい。
【0030】
フラクションコレクタ20の構成について詳述すると、成分検出器15の出口流路に接続された移動式プローブ21を具備し、ステージ22上に載置されているプレートPLのウエルWに対して分取液SSを所定量ずつ次々に滴下するように構成されている。ここで、分取液SSがクロマトグラムにおいてピークに相当する部分が分取されている場合には、液体試料S中の試料成分が含まれているが、ピーク以外の部分に相当する分取液SSにも成分検出器15では検出できない種類の試料成分が含まれている可能性がある。
【0031】
また、移動式プローブ21にはプレートPLに付与されている識別コードを読み取るための第1コードリーダ23が取り付けられている。ステージ22にプレートPLが載置されている状態で移動式プローブ21が初期位置に移動した際にプレートPLの識別コードが第1コードリーダ23で読み取られて、プレートPLのプレート名が取得されるよう構成されている。
【0032】
また、フラクションコレクタ20は、複数枚のプレートPLが格納されるスタッカ24を備えている。このスタッカ24は、ウエルWに対して分取液SSが滴下される前のプレートPLや分取液SSがウエルWに滴下された後に乾燥(乾固)するまでプレートPLを待機させるためのものである。スタッカ24の3段のラックA、B、Cに対してそれぞれ最大で3枚のプレートを載置できる。スタッカ24とステージ22との間のプレートPLの移動は図示しない搬送機構によって行われる。後述するようにスタッカ24内にある既にウエルWに対して分取液SSの滴下が行われたプレートPLについて乾燥が完了してすでに搬送可能な状態であるか、又は、乾燥が完了して搬送可能になるまでの乾燥時間が統合管理装置40によってディスプレイに表示される。
【0033】
加えて、フラクションコレクタ20は、移動式プローブ21等の制御や各プレートPLの各ウエルWへの分取液SSの滴下状態等に関する情報であるフラクション情報を生成するフラクション制御演算器2Cをさらに備えている。
【0034】
フラクション制御演算器2Cは、専用又は汎用のコンピュータにより構成され、メモリに格納されているフラクションコレクタ専用のプログラムが実行され、各機器が協業することによりその機能が実現される。
【0035】
より具体的には図2に示すようにフラクション制御演算器2Cは、移動式プローブ21の位置や移動式プローブ21からプレートPLに分取される分取液の分取条件(分取流量、分取時間等)の制御をするフラクション制御部2C1を少なくとも備えている。また、フラクション制御演算器2Cは、統合管理装置40から入力されるフラクション設定情報に基づいて分取液SSの滴下を行った場合のプレートPLにおけるウエルWの使用範囲である予測フラクション結果や、実際プレートPLに対して分取液SSの滴下を行った場合のフラクション結果等のフラクション情報を生成するフラクション情報生成部2C2をさらに備えている。フラクション情報生成部2C2で生成されるフラクション情報に関するデータは統合管理装置40に送信され、統合管理装置40において、分取されている液体試料Sに対応する試料識別子にフラクション情報が紐付けられる。また、統合管理装置40内では、フラクション情報に含まれるプレートPLのプレート名とウエルWの各位置に対して、分析識別子である固有のシーケンスIDを付与する。この時点では、各分析識別子に対しては、プレート名、ウエルWの位置、液体試料Sを示す試料識別子、及び、液体試料Sのクロマトグラムが紐付けられることになる。さらに、統合管理装置40では、分取液SSが滴下されたプレートPLにおけるウエルWの位置とクロマトグラム上における領域との対応関係が生成されて記憶される。
【0036】
次にラマン分光分析装置30について説明する。ラマン分光分析装置30は、プレートPL上のウエルWに滴下された移動相Zを乾燥させて分画された分取液SSを乾燥させた状態で、分取液SSに含まれる試料成分をラマン分光法に基づいて分析するものである。なお、プレートPLについてはフラクションコレクタ20において乾燥が終了した状態のものをユーザがラマン分光分析装置30に運び設置しているが、フラクションコレクタ20とラマン分光分析装置30との間でオートワークチェンジャによってプレートPLが搬送されるようにしてもよい。
【0037】
ラマン分光分析装置30は、図1に示すように、分取液SSを保持するプレートPL上のウエルWにレーザ光等の励起光を照射する光照射器31と、励起光が照射されることにより試料成分から発生するラマン散乱光を分光する分光器32と、分光されたラマン散乱光を検出するラマン散乱光検出器33と、光を照射しているウエルWの顕微鏡写真を撮像するカメラ34と、プレートPLに付与されている識別コードを読み取るための第2コードリーダ35と、を備えている。
【0038】
加えて、ラマン分光分析装置30は、光照射器31が射出するレーザ光がプレートPL上において照射される位置の制御等やラマン散乱光検出器33の出力に基づいてラマンスペクトルを生成するラマン制御演算器3Cをさらに備えている。
【0039】
ラマン制御演算器3Cは、専用又は汎用のコンピュータにより構成され、メモリに格納されているラマン分光分析装置専用のプログラムが実行され、各機器が協業することによりその機能が実現される。
【0040】
より具体的には図2に示すようにラマン制御演算器3Cは、統合管理装置40からラマン分光分析設定情報を受け付けて、その情報に基づいて各機器を制御し、プレートPL上に保持されている各ウエルW上の試料成分についてラマン分光分析を実行するラマン制御部3C1と、各ウエルWの試料成分から得られたラマン散乱光検出器33からの出力に基づいてそれぞれラマンスペクトルに関するデータを生成するラマンスペクトル生成部3C2と、を備えている。
【0041】
ラマン制御部3C1はラマン分光分析設定情報に基づいて分析対象となる複数のウエルWに対して順次レーザ光を照射する。ラマンスペクトル生成部3C2は、各ウエルWの試料成分から得られたラマンスペクトルについて、第2コードリーダ35で読み取られたプレートPLのプレート名と、レーザ光を照射したウエルWの位置情報と、カメラ34で撮像されたウエルWの顕微画像データと、を組にして統合管理装置40に送信する。一方、統合管理装置40はラマンスペクトルが測定されたプレートPLのウエルWに対応する分析識別子に対して、ラマンスペクトルをさらに紐付ける。すなわち、ラマン分光分析が終了した時点では、各分析識別子に対しては、プレート名、ウエルWの位置、液体試料Sを示す試料識別子、液体試料Sのクロマトグラム、及び、分取液SSのラマンスペクトルが紐付けられた状態となる。
【0042】
次に統合管理装置40について説明する。統合管理装置40は専用又は汎用のコンピュータにより構成され、メモリに格納されている統合管理装置用のプログラムが実行され、各機器が協業することによりその機能が実現される。また、統合管理装置40はLC制御演算器1C、フラクション制御演算器2C、ラマン制御演算器3Cと有線又は無線のネットワークで接続されており、統合管理装置40は各制御演算器1C、2C、3Cに対して分析に関するパラメータ等を設定するためのクロマトグラフ設定情報、フラクション設定情報、ラマン分光分析設定情報をそれぞれ送信する。また、統合管理装置40は、各制御演算器1C、2C、3Cから得られた分析結果やプレートPLに対して行った動作結果等に関する情報を受信する。
【0043】
具体的には図2に示すように統合管理装置40は、ユーザからの入力を受け付ける入力受付部41と、各装置10、20、30に関する操作画面をディスプレイDPに表示する操作画面表示部42と、操作画面に対するユーザからの入力に基づいて分析に関するクロマトグラフ設定情報、フラクション設定情報、ラマン分光分析設定情報を生成し、各装置10、20、30に対して送信する設定情報生成部43と、設定情報生成部43で生成されたクロマトグラフ設定情報、フラクション設定情報、ラマン分光分析設定情報、各装置10、20、30から受信された分析結果や操作結果に関する情報、使用されているプレートPLに関する情報等を記憶するデータベース44と、データベース44に記録されている情報に基づいて統合された分析概要画面をディスプレイDPに表示する分析概要表示部45と、分析概要画面に対するユーザからの入力に基づいて対応する再解析画面をディスプレイDPに表示する再解析設定部46と、を少なくとも備えている。
【0044】
入力受付部41は、ユーザからキーボードやマウス等の入力デバイスによる操作画面や分析概要画面等に入力を受け付ける。
【0045】
操作画面表示部42は、図3乃至図5に示すような分析の設定又は分析結果の表示を行うための操作画面をディスプレイDPに表示する。図3に示す操作画面はクロマトグラフ10、フラクションコレクタ20、ラマン分光分析装置30のいずれかの分析に関する設定、又は、データベース44に記憶されている分析結果の表示を選択するためのポータル画面SC1である。具体的にはポータル画面SC1の左側欄にはクロマトグラフ10の設定等を行うための入口となるLC領域R1、フラクションコレクタ20の設定等を行うための入口となるフラクション領域R2、ラマン分光分析装置30の設定などを行うための入口となるラマン領域R3、及び、統合された分析結果を表示するための分析概要画面の入口となるデータビューア領域R4とが設定されている。各領域の該当箇所をユーザがクリックすることで対応する画面のウインドウがポータル画面SC1の右側のウインドウ表示領域に表示される。
【0046】
図4及び図5は、例えばフラクション領域R2がユーザによって選択された場合にウインドウとして表示されるフラクションコレクタ20の操作画面の一例である。
【0047】
図4はスタッカ24内にセットされているいずれのプレートPLを用いて液体試料Sの分取を行うかを設定するためのプレート選択画面SC2である。また、読み取りボタンが選択されることでフラクションコレクタ20の第1コードリーダ23により選択されたプレートPLの識別コードが読み込まれる。そして、クロマトグラフ10で分析されている液体試料Sと分取に使用されるプレートPLのプレート名が紐付けられてデータベース44に記憶される。
【0048】
図5はプレートPLに対する分取液SSの滴下範囲を設定用クロマトグラムに基づいて設定する滴下範囲設定画面SC3である。設定用クロマトグラムを参照しながらクロマトグラフ10の成分検出器15から導出される分取液SSをどのようなフラクション期間で分取するかについて、ユーザは設定用クロマトグラム上に表示されるバーを移動させることで選択する。あるいは、ユーザは開始時間、終了時間を数値として入力することでもフラクション期間を設定できる。また、ユーザは滴下量として移動式プローブ21から各ウエルWへの滴下時間を設定する。これらの設定が行われると、設定情報生成部43は設定情報をフラクション制御演算器2Cのフラクション情報生成部2C2に送信する。そして、フラクション情報生成部2C2で演算された滴下を開始するウエルWの位置からどの範囲まで滴下されるかの予測結果を統合管理装置40が受信し、操作画面表示部42は滴下範囲設定画面SC3におけるプレートPLのイメージ上に表示する。
【0049】
最終的に滴下に関する設定がユーザによって承認されると、設定情報生成部43は、フラクションコレクタ20に送信する分取パラメータ等のフラクション設定情報を生成する。そして、生成された設定情報は統合管理装置40からフラクション制御演算器2Cに送信され、フラクション制御部2C1によってフラクションコレクタ20の各機器が制御されて実際のプレートPLに対して試料成分の分取が行われる。
【0050】
なお、操作画面表示部42により表示される操作画面はフラクションコレクタ20に限られるものではなく、図3のポータル画面SC1においてLC領域R1がユーザにより選択された場合にはクロマトグラフ10の操作画面が表示され、ポータル画面SC1のラマン領域R3がユーザにより選択された場合にはラマン分光分析装置30の操作画面が表示される。各操作画面に対するユーザからの入力に基づいて設定情報生成部43はクロマトグラフ10又はラマン分光分析装置30に用いられるクロマトグラフ設定情報又はラマン分光分析設定情報が生成され、対応する装置10、30に送信される。また、各装置10、30において必要なデータ処理が行われて、その結果が統合管理装置40へと送信され、その結果が各操作画面上に表示される。このように統合管理装置40に対する入力のみで分析を開始するために必要な設定を行うことができ、各装置10、20、30の専用のソフトウェアを操作することなく、一連の分析を行うことができる。
【0051】
次に分析結果の表示について説明する。
【0052】
ユーザがポータル画面SC1におけるデータビューア領域R4を選択すると、分析概要表示部45はデータベース44に記録されている各装置10、20、30から受信した分析結果及び操作結果を参照して図6に示す分析概要画面SC4を生成してウインドウとして表示する。分析概要画面SC4は、クロマトグラフ10の分析結果である試料のクロマトグラムと、ラマン分光分析装置30の分析結果である分取液SS(試料成分)のラマンスペクトルと、クロマトグラムとラマンスペクトルが紐付けられた分析識別子であるシーケンスIDが横方向に並べられたデータ要素DEを複数縦方向に並べたものである。また、データ要素DEはさらに試料成分が分取されたプレートPLのプレート名と、ラマン分光分析が行われた試料成分が滴下されたウエルWの位置を含む。本実施形態では1つのウエルW上に分取された試料成分の分析結果を1行のデータ要素DEとして表示するように構成されている。具体的にはデータ要素DEは左側から右側に向かって以下の項目に関する情報を含む。すなわち、一連の分析を管理するためのシーケンスID、プレート名であるプレートID、ラマン分光分析が行われたウエルWの位置を示すウエルナンバー、試料識別子であるサンプルID、クロマトグラフ10の分析のために設定されたサンプルネーム、クロマトグラフ10による分析操作を行ったオペレータを示す第1オペレータID、クロマトグラフによる分析の実施日、サンプルIDの示す液体試料Sで得られたクロマトグラム、ラマン分光分析装置30での分析のために設定されたサンプルネーム、ラマン分光分析装置30による分析操作を行ったオペレータを示す第2オペレータID、ラマン分光分析を行った実施日、プレートIDの示すプレートPLにおけるウエルナンバーの示すウエル位置でのラマン分光分析で得られたラマンスペクトルが横方向に一列に並んでデータ要素DEを構成する。
【0053】
また、分析概要表示部45は分析概要画面SC4においてラマン分光分析が行われたウエルWに分取された試料成分のフラクション期間をクロマトグラム上に重ねて表示する。本実施形態ではクロマトグラム上において分取液SSが分取されたフラクション期間に相当する時間領域には網掛け状の帯がオーバーラップされる。さらに、複数のデータ要素DEにおいて同じ液体試料Sについて異なるウエル位置に対してラマン分光分析を行った結果については1~3行目の各データ要素DEに示されるように、隣接させて表示される。より具体的には上側から下側に向かって分取液SSが分取された時系列順に各データ要素DEが隣接して配置される。このように分析概要表示部45が表示する分析概要画面SC4には、左側欄には上下方向に延びるプレートPLに関する情報が表示されるプレート情報領域R5が形成され、中央欄には上下方向に延びるクロマトグラム及び分取に関する情報が表示されるLC情報領域R6が形成され、右側欄には上下方向に延びるラマンスペクトルに関する情報が表示されるラマン情報領域R7が形成される。
【0054】
このように分析概要画面SC4では、クロマトグラムとラマンスペクトルが横一列に並んで表示されるので、クロマトグラムとラマンスペクトルを簡単に比較することが可能となる。例えばユーザはクロマトグラムにおけるピークにおいてどのような成分が含まれているかについてラマンスペクトルから考察しやすい。また、逆にクロマトグラムにおいてピークのない場所であれば、ラマンスペクトルから未知の成分や構造について考察したりすることが容易になる。さらに、クロマトグラム上において分取液SSが分取された領域が表示されているので、それぞれの対応関係についてもユーザは把握しやすい。加えて、クロマトグラフ10による分析操作とラマン分光分析装置30による分析装置を行ったオペレータをそれぞれ別々に登録できるので、それぞれの装置10、30の操作に習熟したオペレータによって分析が行われたかどうかについても厳密に確認でき、分析の信頼性を担保しやすい。また、シーケンスID、プレートID、ウエルナンバー、サンプルIDが近接させて並べられているので、例えばよく似たクロマトグラムが上下方向に並んでいたとしても、同一の液体試料Sを分取して得られた結果なのか、別の液体試料Sを分取して得られた結果なのかについても確認しやすい。
【0055】
次に分析結果の再解析について説明する。
【0056】
分析概要画面SC4においてユーザがいずれかのクロマトグラム又はラマンスペクトルをマウス操作等で選択すると、再解析設定部46は、選択されたクロマトグラム又はラマンスペクトルに対応する図7又は図8に示すような再解析画面を表示する。より具体的には分析概要画面SC4においていずれかのクロマトグラムが選択された場合には、再解析設定部46はLC制御演算器1Cにアクセスし、クロマトグラム生成部1C2に再解析用のプログラムを実行させる。そして、再解析設定部46は図7のクロマトグラム再解析画面SC5を統合管理装置40のディスプレイDPに表示させる。すなわち、クロマトグラフ10を単体で使用している場合の専用ソフトウェアが自動的に起動されて、統合管理装置40において使用できるようになる。また、クロマトグラム生成部1C2はデータベース44にアクセスして、ユーザにより選択されたクロマトグラム及びそれに関連する設定情報等を取得する。この読み込まれた情報がクロマトグラム再解析画面SC5には自動的に反映されるように構成されている。
【0057】
図7のクロマトグラム再解析画面SC5では例えばデータとして使用するチャンネルや周波数等を設定することができ、クロマトグラム生成部1C2はその設定変更に応じたクロマトグラムの再解析結果を出力する。再解析されたクロマトグラムはデータベース44へと送信されて、分析概要表示部45は再解析前のクロマトグラムを再解析した後のクロマトグラムに変更して分析概要画面SC4を更新する。すなわち、クロマトグラムについては再解析を行っても、分析識別子に紐付けられているクロマトグラムが再解析後のクロマトグラムに更新されるだけであり、分析概要画面SC4におけるデータ要素DEの個数や表示される行数は変化しない。
【0058】
一方、ユーザが分析概要画面SC4においていずれかのラマンスペクトルを選択した場合には、再解析設定部46はラマン制御演算器3Cにアクセスし、ラマンスペクトル生成部3C2に再解析用のプログラムを実行させる。そして、再解析設定部46は図8のラマンスペクトル再解析画面SC6を統合管理装置40のディスプレイDPに表示させる。すなわち、ラマン分光分析装置30を単体で使用している場合の専用ソフトウェアが自動的に起動されて、統合管理装置40において使用できるようになる。また、ラマンスペクトル生成部3C2はデータベース44にアクセスして、ユーザにより選択されたラマンスペクトル及びそれに関連するラマン分光分析設定情報等を取得する。この読み込まれた情報がラマンスペクトル再解析画面SC6には自動的に反映されるように構成されている。
【0059】
図8のラマンスペクトル再解析画面SC6で解析に関わるパラメータ等が変更されると、ラマンスペクトル生成部3C2はその設定変更に応じたラマンスペクトルの再解析結果を出力する。再解析されたラマンスペクトルはデータベース44へと送信されて、再解析前のラマンスペクトルと対になっていたクロマトグラムと、再解析されたラマンスペクトルに対して新たな分析識別子が紐付けられる。そして、分析概要表示部45は再解析前のラマンスペクトルと対になっていたクロマトグラムと、再解析されたラマンスペクトル、及び、新たな分析識別子が横一列に並べられた新たなデータ要素DEを分析概要画面SC4内に追加する。
【0060】
このように再解析設定部46が構成されているので、従来のように再解析が必要となった場合にクロマトグラフ10やラマン分光分析装置30に直接アクセスして専用ソフトウェアを別途実行し、さらには再解析したいデータを選択する必要がない。すなわち、統合管理装置40での操作だけで分析概要画面SC4から対象となるクロマトグラム又はラマンスペクトルを選択するだけで、自動的に再解析に必要なデータの選択やソフトウェアの起動が完了する。したがって、ユーザは分析概要画面SC4におけるクロマトグラフとラマンスペクトルの比較から注目したデータについて再解析で詳細に検討しやすい。また、再解析が終わると分析概要表示部45が自動的に分析概要画面SC4の構成を更新するので、例えば再解析の妥当性を他のデータ要素DE等と見比べることで判断しやすい。
【0061】
その他の実施形態について説明する。
【0062】
分析概要画面SC4の構成は図6に示す構成に限られない。例えば対となるクロマトグラムとラマンスペクトルを縦方向に一列に並べてデータ要素を構成し、各データ要素を横方向に並べる構成でもよい。
【0063】
データ要素は液体試料の識別子、その液体試料について分析を行ったクロマトグラム、及び、ラマンスペクトルを少なくとも含むものであればよい。実施形態において説明した項目以外についてもデータ要素が含んでいてもよい。
【0064】
クロマトグラムが再解析された場合にも、新たなデータ要素を追加して分析概要画面を更新してもよいし、逆にラマンスペクトルを再解析した場合に元のラマンスペクトルを上書きして分析概要画面を更新してもよい。
【0065】
統合管理装置を構成する各部については、通常のコンピュータによってその機能が実現されるものに限られない。例えばタブレット端末やスマートフォン等の携帯端末に統合管理装置用ソフトウェアをインストールし、各装置と電子端末間で無線通信によるデータの授受を行うことにより実施形態で説明した各部の機能が実現されるようにしてもよい。また、携帯端末上では実質的な演算を行わずにサーバにおいて各部の機能が実現されるようにし、分析概要表示部が生成する分析概要画面や操作画面表示部で生成される操作画面が携帯端末上で表示されるようにしてもよい。
【0066】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、ある試料成分について対応するクロマトグラムとラマンスペクトルを簡単に比較できる、使い勝手の良い分析システムを提供できる。
【符号の説明】
【0068】
100 :分析システム
10 :クロマトグラフ
11 :貯留部
12 :ポンプ
13 :流路
14 :分離カラム
15 :成分検出器
Z :移動相
S :液体試料
SS :分取液
1C :LC制御演算器
1C1 :LC制御部
1C2 :クロマトグラム生成部
2C :フラクション制御演算器
2C1 :フラクション制御部
2C2 :フラクション情報生成部
3C :ラマン制御演算器
3C1 :ラマン制御部
3C2 :ラマンスペクトル生成部
20 :フラクションコレクタ
21 :移動式プローブ
22 :ステージ
23 :第1コードリーダ
24 :スタッカ
30 :ラマン分光分析装置
31 :光照射器
32 :分光器
33 :ラマン散乱光検出器
34 :カメラ
35 :第2コードリーダ
40 :統合管理装置
41 :入力受付部
42 :操作画面表示部
43 :設定情報生成部
44 :データベース
45 :分析概要表示部
46 :再解析設定部
DP :ディスプレイ
W :ウエル
SC1 :ポータル画面
DE :データ要素
R1 :LC領域
R2 :フラクション領域
R3 :ラマン領域
R4 :データビューア領域
SC2 :プレート選択画面
SC3 :滴下範囲設定画面
SC4 :分析概要画面
R5 :プレート情報領域
R6 :LC情報領域
R7 :ラマン情報領域
SC5 :クロマトグラム再解析画面
SC6 :ラマンスペクトル再解析画面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8