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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022566515
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044595
(87)【国際公開番号】W WO2022118360
(87)【国際公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】児玉 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼谷 将城
(72)【発明者】
【氏名】平田 甫
(72)【発明者】
【氏名】小川 美香子
(72)【発明者】
【氏名】中島 孝平
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-043897(JP,A)
【文献】国際公開第2006/130365(WO,A2)
【文献】国際公開第2019/088940(WO,A2)
【文献】特表2007-511279(JP,A)
【文献】米国特許第05814039(US,A)
【文献】特表平08-505803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光免疫療法に必要とされる特定波長の光を患部に照射するための光照射装置であって、
光透過性の発光部を有するとともに体内に挿入されるチューブを備え、
前記発光部は、前記チューブの中心軸に沿って延びる中央ルーメンと、前記中央ルーメンの周囲に等角度間隔に配列される複数の周辺ルーメンと、前記特定波長の光を発する発光素子を実装した複数の配線基板であって、前記発光素子が前記発光部の半径方向外側を向いた状態で配置されるように前記周辺ルーメンの各々に配置される複数の配線基板と、を有することを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記中央ルーメンは、前記チューブの先端側が開口し、
前記周辺ルーメンは、前記チューブの先端側が閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記発光部は、4つの前記周辺ルーメンを有し、
4つの前記周辺ルーメンは、前記中心軸に直交する方向の断面視において、前記中央ルーメンの周囲に互いに等間隔に配列されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記周辺ルーメンの各々は、前記中心軸に沿って延びるとともに、複数の前記発光素子を収容し、
複数の前記発光素子は、各周辺ルーメン内で、前記中心軸に沿って配列されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の光照射装置。
【請求項5】
記配線基板は、陽極端子および陰極端子を有し、
光照射装置は、前記陽極端子に接続された陽極側リード線と、前記陰極端子に接続された陰極側リード線とを有することを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の光照射装置。
【請求項6】
前記チューブは、前記発光部よりも前記チューブの基端側にチューブ本体を有し、
前記チューブ本体は、前記中央ルーメンと連通するとともに前記中心軸と平行に延びる第1ルーメンと、前記第1ルーメンに沿って延びるとともに前記チューブの基端側で開口する第2ルーメンと、を有し、
前記陽極側リード線および前記陰極側リード線は、前記周辺ルーメンから前記第2ルーメンに挿入され、前記第2ルーメン内を通って前記第2ルーメンの開口から延出することを特徴とする請求項5に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記チューブは、前記発光部と前記チューブ本体との間にルーメン切替部を有し、
前記ルーメン切替部は、前記陽極側リード線および前記陰極側リード線を封止し、また前記中央ルーメンと前記第1ルーメンとを連通する連通路を有することを特徴とする請求項6に記載の光照射装置。
【請求項8】
周辺ルーメンから前記第2ルーメンに挿入された複数の前記陽極側リード線は、互いに集約されて前記第2ルーメンの開口から延出し、各周辺ルーメンから前記第2ルーメンに挿入された複数の前記陰極側リード線は、互いに集約されて前記第2ルーメンの開口から延出することを特徴とする請求項6または7に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記第1ルーメンは、前記チューブ本体の基端面において閉塞され、
前記チューブ本体は、外周面から前記第1ルーメンに至る側孔を有することを特徴とする請求項6~8の何れかに記載の光照射装置。
【請求項10】
前記チューブ本体は、前記側孔の位置を示すマークを外周面に有することを特徴とする請求項9に記載の光照射装置。
【請求項11】
前記第2ルーメンの開口から延出する前記陽極側リード線および前記陰極側リード線を内包するとともに、前記チューブに着脱可能に設けられるリード保護シースを有することを特徴とする請求項6~10の何れかに記載の光照射装置。
【請求項12】
前記チューブは、前記発光部よりも前記チューブの先端側に最先端部を有し、
前記最先端部は、前記チューブの外部と前記中央ルーメンとを連通するルーメンを有することを特徴とする請求項1~11の何れかに記載の光照射装置。
【請求項13】
前記最先端部は、前記最先端部の外周面から前記ルーメンに至る少なくとも1つの側孔を有することを特徴とする請求項12に記載の光照射装置。
【請求項14】
前記ルーメンの直径は、前記中央ルーメンの直径よりも大きく、
前記チューブは、前記発光部と前記最先端部との間にルーメン拡径部を有し、
前記ルーメン拡径部は、前記中央ルーメンと前記ルーメンとを連通する拡径連通路を有することを特徴とする請求項12または13に記載の光照射装置。
【請求項15】
胆管癌または膵癌の光免疫療法に使用される請求項1~14の何れかに記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光免疫療法に必要とされる特定波長の光を患部に照射するための光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、レーザ発振器などの大がかりな設備を必要とせず、比較的手軽に癌の光免疫療法を施すことができる光照射装置として、光透過性の発光部を先端側に設けたチューブと、このチューブの発光部の内側に配置され、特定波長の光を照射する発光素子を実装したフレキシブル配線基板と、チューブの基端部に接続され、発光素子に電力を供給するための電源を有する本体部と、チューブ内に挿通され、一端がフレキシブル配線基板の電極に接続され、他端が電源に接続されたリード線とを有している光照射装置(発光型治療具)が紹介されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
このような光照射装置により胆管癌に対して光免疫治療を施す場合には、先ず、内視鏡(側視鏡)を患者の口から挿入してその先端部を十二指腸乳頭部に到達させ、予め胆管に挿入させたガイドワイヤに沿わせて前記チューブを胆管に挿入し、前記発光部を胆管癌に接触または近接するように配置する。次に、ガイドワイヤおよび内視鏡を抜去して、チューブのみを体内に留置する。その後、口から延出しているチューブの基端部を鼻腔を経由して鼻孔から延出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-43897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
胆管癌に対する光免疫治療においては、胆管の内壁に生成している胆管癌の全体に対して均等に光を照射することが望ましい。
しかしながら、従来の光照射装置では、発光部からの発光量(癌への光照射量)にバラツキがある。
【0006】
例えば、上記特許文献1には、一対の側部が対向して配置するように、折曲部を介して折り曲げられた形状をなし、各側部に発光素子が複数個実装されているフレキシブル配線基板がチューブの発光部の内側に配置されている光照射装置が開示されているが、そのような光照射装置では、発光部の円周方向において発光量のバラツキが生じる。
【0009】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、発光部の円周方向における発光量のバラツキがなく、体管の内壁に生成している癌に対して特定波長の光を当該体管の円周方向に均等に照射することができる光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の光照射装置は、光免疫療法に必要とされる特定波長の光を患部(癌)に照射するための光照射装置であって、
チューブ本体と、前記チューブ本体の先端側に接続された光透過性の発光部とを有するチューブと、
前記チューブの前記発光部の内部に配置され、前記特定波長の光を発する発光素子を実装した複数の配線基板と、
前記配線基板の各々の陽極端子を電源に接続するために前記チューブの内部を延在する陽極側リード線と、
前記配線基板の各々の陰極端子を前記電源に接続するために前記チューブの内部を延在する陰極側リード線とを備え、
前記発光部には、前記チューブの中心軸に沿って延びる中央ルーメンと、前記中央ルーメンの周囲に(すなわち、発光部の円周方向に沿って)等角度間隔に配列され、前記発光部の先端側において閉塞されている複数の周辺ルーメンとが形成されており、
前記発光素子が前記発光部の半径方向外側を向いた状態で配置されるように、前記配線基板が前記周辺ルーメンの各々に配置されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成の光照射装置によれば、チューブを体内に挿入し、光免疫療法の感光物質が付着された患部(癌)に対して発光部を接触または近接させるように配置し、陽極側リード線および陰極側リード線を介して複数の配線基板に通電し、配線基板の各々に実装された発光素子を発光させ、癌に付着させた感光物質等にその光を照射して、癌の光免疫療治療を施すことができる。
そして、発光部の中央ルーメンの周囲に等角度間隔に配列された複数の周辺ルーメンの各々に、発光素子が実装された配線基板が配置されていることにより、発光部の円周方向にバラツキなく特定波長の光を放射状に発することができ、発光部の周囲における患部(癌に付着させた感光物質等)に対して均等に光照射することができる。
【0012】
また、胆汁などの体液が流れる体管の狭窄部位を塞ぐようにして発光部を配置しても、発光部の中央ルーメンに体液を流通させることで当該体液を体外に排出することができる。また、中央ルーメンに体液を流通させることにより、周辺ルーメンの各々に配置されている配線基板に実装された発光素子からの光が体液によって遮られることはない。
【0013】
(2)本発明の光照射装置において、前記配線基板の各々は、複数の前記発光素子を実質的に等間隔に配置して実装しており、
複数の前記発光素子が前記発光部の半径方向外側を向いた状態で前記発光部の長さ方向に沿って配列されるように、前記配線基板が前記周辺ルーメンの各々に配置されていることが好ましい。
【0014】
このような構成の光照射装置によれば、発光部の中央ルーメンの周囲に等角度間隔に配
列された複数の周辺ルーメンの各々に、発光部の長さ方向に沿って発光素子が配列されるように配線基板が配置されていることにより、発光部の円周方向および長さ方向にバラツキなく特定波長の光を放射状に発することができ、発光部の周囲における患部(癌に付着させた感光物質等)全体に対して均等に光照射することができる。
【0015】
(3)本発明の光照射装置において、前記中央ルーメンの周囲に90°間隔で4つの前記周辺ルーメンが形成されていることが好ましい。
【0016】
このような構成の光照射装置によれば、発光部の円周方向に沿って4つの配線基板を配置することができるので、発光部の周囲における患部全体に対してムラなく均等に光照射することができる。
【0017】
(4)本発明の光照射装置において、前記チューブの前記チューブ本体には、前記発光部の前記中央ルーメンと連通し、前記チューブの前記中心軸から前記チューブの半径方向に変位して前記中心軸と平行に延びる第1ルーメンと、前記第1ルーメンと平行に延びて前記チューブの基端面に開口する第2ルーメンとが形成され、
前記陽極側リード線および前記陰極側リード線は、前記周辺ルーメンの各々から前記第2ルーメンに挿入され、前記第2ルーメンに延在して、前記基端面の開口から延出していることが好ましい。
【0018】
このような構成の光照射装置によれば、チューブ本体において、陽極側リード線および陰極側リード線が第2ルーメンに延在し、患者の体液を第1ルーメンに流通させることができるので、チューブ本体の内部において、陽極側リード線および陰極側リード線に患者の体液が接触することはなく、体液との接触に起因するリード線間の短絡やリード線の汚染などを回避することができる。
また、第1ルーメンが、チューブの中心軸からチューブの半径方向に変位しているので、リード線の挿通空間である第2ルーメンの断面積を十分に確保することができるとともに、下記(7)の光照射装置のように構成して、第1ルーメンを流通させた患者の体液をチューブ本体の側周面から排出することができる。
【0019】
(5)上記(4)の光照射装置において、前記チューブは、前記発光部と前記チューブ本体との間において、前記陽極側リード線および前記陰極側リード線を封止するとともに、前記中央ルーメンと前記第1ルーメンとを連通する連通路が形成されたルーメン切替部を有していることが好ましい。
【0020】
このような構成の光照射装置によれば、ルーメン切替部の連通路により、発光部の中央ルーメンと、チューブ本体の第1ルーメンとを確実に連通させることができる。
また、ルーメン切替部において陽極側リード線および陰極側リード線が封止(ルーメン切替部の構成樹脂によって固着)されていることにより、リード線の基端部を電源に接続するときなどに、リード線が基端方向に引っ張られて当該リード線の先端部が配線基板の電極端子から離脱したり、ルーメン切替部においてリード線が絡まったりすることを確実に防止することができる。
【0021】
(6)上記(4)または(5)の光照射装置において、前記第2ルーメンに挿入された複数本の前記陽極側リード線および複数本の前記陰極側リード線は、それぞれ1本に集約されて、前記チューブの前記基端面の前記開口から延出していることが好ましい。
【0022】
このような構成の光照射装置によれば、陽極側リード線および陰極側リード線が、それぞれ1本に集約されているので、これらリード線の基端部を電源に接続する操作を簡略化することができる。
【0023】
(7)上記(4)~(6)の光照射装置において、前記第1ルーメンは、前記チューブの基端側において閉塞され、前記チューブ本体の周壁には、前記チューブ本体の外周面から前記第1ルーメンに至る側孔が形成されていることが好ましい。
【0024】
このような構成の光照射装置によれば、第1ルーメンを流通する患者の体液を当該側孔の開口から排出させる(当該開口を排液ポートとする)ことができ、チューブの基端面の開口から延出された陽極側リード線および陰極側リード線が、排出された体液と接触することを回避することができる。
【0025】
(8)上記(7)の光照射装置において、前記チューブ本体の前記外周面に、前記側孔の開口の位置を示すマーキングがなされていることが、小径の開口位置を容易に認識できることから好ましい。
【0026】
(9)本発明の光照射装置において、前記チューブの基端側には、前記チューブの前記基端面の前記開口から延出している前記陽極側リード線および前記陰極側リード線を内包し、前記チューブから容易に脱離することができるリード保護シースが装着されていることが好ましい。
【0027】
このような構成の光照射装置によれば、口から延出しているチューブの基端部を鼻腔を経由して鼻孔から延出させるときに、チューブの基端面の開口から延出しているリード線(陽極側リード線および陰極側リード線)が鼻水などで濡れてしまうことを防止することができる。そして、チューブの基端部を患者の鼻孔から延出させた後、リード保護シースをチューブから脱離することにより、濡れていない状態のリード線の基端部を電源に接続することができる。
【0028】
(10)本発明の光照射装置において、前記チューブは、前記発光部の先端側に、前記中央ルーメンに連通するルーメンが形成されたシングルルーメン構造の最先端部を有していることが好ましい。
【0029】
このような構成の光照射装置によれば、狭窄部位を塞ぐように配置した発光部の先端側における体液を最先端部のルーメンを経由して発光部の中央ルーメンに流通させて体外に排出することができる。
【0030】
(11)上記(10)の光照射装置において、前記最先端部の周壁には、前記最先端部の外周面から前記ルーメンに至る少なくとも1つの側孔が形成されていることが好ましい。
【0031】
このような構成の光照射装置によれば、最先端部の先端の開口が体管の内壁などに当接して、当該開口からルーメンに体液を流入できなくなるような場合でも、側孔から体液を流入させることができる。
【0032】
(12)上記(10)または(11)の光照射装置において、前記最先端部の前記ルーメンの直径は、前記発光部の前記中央ルーメンの直径よりも大きく、
前記チューブは、前記発光部と前記最先端部との間において、前記中央ルーメンと前記最先端部の前記ルーメンとを連通する拡径連通路が形成されたルーメン拡径部を有していることが好ましい。
【0033】
このような構成の光照射装置によれば、最先端部のルーメンへの体液の流入量、延いては、当該体液の排出量を十分に確保することができる。
【0034】
(13)本発明の光照射装置は、胆管癌または膵癌の光免疫療法に好適に使用することができる。
【0035】
このような構成の光照射装置によれば、胆管の内壁に生成している胆管癌や膵管の内壁に生成している膵癌に対して特定波長の光を、胆管や膵管の円周方向に均等に照射することができ、胆管癌または膵癌による狭窄部位を塞ぐように発光部を配置しても胆汁の排出を行うことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の光照射装置によれば、発光部の円周方向における発光量のバラツキがなく、体管の内壁に生成している癌に対して特定波長の光を当該体管の円周方向に均等に照射することができる。
また、螺旋状となるように捩られた形状をなし、その外面に発光素子が複数個実装されているフレキシブル配線基板がチューブの発光部の内側に配置されている光照射装置では、発光部の長さ方向においても発光量にバラツキが生じる。このため、発光部の円周方向および長さ方向における発光量のバラツキがなく、体管の内壁に生成している癌全体に対して特定波長の光を均等に照射することができる光照射装置の提供が求められ得る。これに対し、本発明の光照射装置によれば、配線基板の各々が、複数の発光素子を実質的に等間隔に配置して実装しており、複数の発光素子が発光部の半径方向外側を向いた状態で当該発光部の長さ方向に沿って配列されるように、配線基板が前記周辺ルーメンの各々に配置されていることにより、発光部の円周方向および長さ方向における発光量のバラツキがなく、体管の内壁に生成している癌全体に対して特定波長の光を均等に照射することができる。
また、胆管癌に対する光免疫治療においては、胆管を狭窄している胆管癌に対して光照射装置の発光部を位置させ、長時間(約2週間程度)にわたり光を照射する必要がある。然るに、胆管癌に対して光照射しているときには、胆管癌により狭窄されている胆管を光照射装置の発光部が塞いでしまい、これにより胆汁が胆嚢に溜まり、患者が黄疸を起こしてしまうことがある。このため、光免疫治療中に、癌による狭窄部位を塞ぐように発光部を配置しても体液の排出(ドレナージ)を行うことができる光照射装置の提供が求められ得る。これに対し、本発明の光照射装置によれば、体管の狭窄部位を塞ぐように発光部を配置した場合でも、発光部の中央ルーメンに当該体液を流通させることで体液の排出(ドレナージ)を行うことができる。
さらに、中央ルーメンに体液を流通させることにより、配線基板に実装された発光素子からの光が体液により遮られることはなく、発光部の発光量が体液に遮断されて低下するようなことはない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の光照射装置の一実施形態を示す平面図である。
図2A図1のIIA-IIA端面図(最先端部の端面図)である。
図2B図1のIIB-IIB端面図(発光部の端面図)である。
図2C図1のIIC-IIC端面図(発光部の端面図)である。
図2D図1のIID-IID端面図(チューブ本体の端面図)である。
図2E図1のIIE-IIE端面図(チューブ本体およびリード保護シースの端面図)である。
図2F図1のIIF-IIF端面図(リード保護シースの端面図)である。
図2G図1のIIG部の詳細図である。
図3図1に示した光照射装置において、発光部の周辺ルーメンの各々から延出したリード線がチューブ本体の第2ルーメンに挿入される状態を示す斜視図である。
図4A図1に示した光照射装置において、発光部の周辺ルーメンの各々から延出したリード線がチューブ本体の第2ルーメンに挿入される状態を基端側から見た斜視図である。
図4B図1に示した光照射装置において、発光部の周辺ルーメンの各々から延出したリード線がチューブ本体の第2ルーメンに挿入される状態を先端側から見た斜視図である。
図5図1に示した光照射装置の模式図である。
図6】光照射装置のリード線が接続される電源装置の模式図である。
図7A図1に示した光照射装置を構成する配線基板の平面図である。
図7B図1に示した光照射装置を構成する配線基板の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<実施形態>
図1図5に示す本実施形態の光照射装置100は、胆管癌の光免疫療法に必要とされる近赤外光を胆管癌に照射するための光照射装置であって、
チューブ本体11と、ルーメン切替部12を介して、チューブ本体11の先端側に接続された光透過性の発光部13と、ルーメン拡径部14を介して、発光部13の先端側に接続された最先端部15とを有するチューブ10と、
チューブ10の発光部13の内部に配置され、近赤外光を発する7個の発光素子35を等間隔に配置して実装した4つの配線基板30と、
配線基板30の各々の陽極端子36を電源に接続するためにチューブ10の内部を延在する4本の陽極側リード線51と、
配線基板30の各々の陰極端子37を電源に接続するためにチューブ10の内部を延在する4本の陰極側リード線52と、
チューブ10の基端側に装着されたリード保護シース70とを備え;
チューブ10の発光部13には、チューブ10の中心軸に沿って延びる中央ルーメン131と、この中央ルーメン131の周囲に90°間隔に配列され、発光部13の両端側において閉塞されている周辺ルーメン132~135とが形成され;
チューブ10のチューブ本体11には、発光部13に形成された中央ルーメン131と連通し、チューブ10の中心軸からチューブ10の半径方向に変位して延びる第1ルーメン111と、第1ルーメン111と平行に延びる第2ルーメン112とが形成され、
第1ルーメン111は、チューブ本体11の基端側において閉塞されており、チューブ本体11の周壁には、チューブ本体11の外周面から第1ルーメン111に至る側孔113が形成され、
第2ルーメン112は、チューブ本体11の先端側において閉塞されており、チューブ10の基端面において開口114を有し;
チューブ10の最先端部15には、発光部13の中央ルーメン131の直径より大きな直径を有し、ルーメン拡径部14の拡径連通路141を介して中央ルーメン131と連通するルーメン151が形成され、
最先端部15のルーメン151は、チューブ10の先端面において開口152を有しているとともに、最先端部15の周壁には、最先端部15の外周面からルーメン151に至る複数の側孔153が形成されており;
4つの配線基板30は、それぞれ、発光素子35が発光部13の半径方向外側を向いた状態で、発光部13の長さ方向に沿って配列されるように、周辺ルーメン132~135の各々に配置されており;
4本の陽極側リード線51は、発光部13の周辺ルーメン132~135の各々から、ルーメン切替部12の内部を通ってチューブ本体11の第2ルーメン112に挿入され、第2ルーメン112に延在し、第2ルーメン112の途中で1本に纏められて集約リード線51Gとなり、この集約リード線51Gが開口114からチューブ10の外部に延出し、
4本の陰極側リード線52も、発光部13の周辺ルーメン132~135の各々から、ルーメン切替部12の内部を通ってチューブ本体11の第2ルーメン112に挿入され、第2ルーメン112に延在し、第2ルーメン112の途中で1本に纏められて集約リード線52Gとなり、この集約リード線52Gが開口114からチューブ10の外部に延出しており;
リード保護シース70は、チューブ10の基端面における開口114から延出している陽極側リード線51Gおよび陰極側リード線52Gを内包するように装着されている。
【0039】
本実施形態の光照射装置100は、胆管内壁に生成している胆管癌に発光部13を密着させ、癌組織に選択的に付着させた感光物質に発光素子35からの感光性の光を照射することで治療を行う光免疫療法に使用される。ここに、感光物質としては、例えば、IR700を挙げることができる。
【0040】
この実施形態の光照射装置100は、チューブ10と、4つの配線基板30と、4本の陽極側リード線51(これらが集約された1本の集約リード線51G)と、4本の陰極側
リード線52(これらが集約された1本の集約リード線52G)と、リード保護シース70とを備えてなる。
【0041】
図1および図5に示すように、光照射装置100を構成するチューブ10は、基端側から先端側に向かって順に、チューブ本体11と、ルーメン切替部12と、発光部13と、ルーメン拡径部14と、最先端部15とにより構成されている。
【0042】
チューブ10の外径は、通常1.5~15mmとされ、好適な一例を示せば2.3mmである。
チューブ10の長さ(有効長)は通常300~5000mmとされ、好適な一例を示せば1500mmである。
【0043】
チューブ10の発光部13は光透過性を有し、発光部13には、中央ルーメン131と、中央ルーメン131の周囲において、発光部13の円周方向に沿って90°間隔に配列された4つの周辺ルーメン132~135とが形成されている。
【0044】
図2B図2C図3および図4Aに示すように、中央ルーメン131は、円形の断面を有し、チューブ10の中心軸に沿って延びている。
中央ルーメン131は、発光部13における胆汁の流通ルーメンであり、発光部13の先端側および基端側において開放されている。
中央ルーメン131の直径は、通常0.1~13mmとされ、好適な一例を示せば0.7mmである。
【0045】
周辺ルーメン132~135は、アール(曲線)を四隅に有する矩形断面を有している。周辺ルーメン132~135は、配線基板30を収容するためのルーメンであり、発光部13の基端側において、ルーメン切替部12を構成する樹脂によって閉塞され、発光部13の先端側において、ルーメン拡径部14を構成する樹脂によって閉塞されている。
周辺ルーメン132~135の断面のサイズ(縦×横)は、通常(0.3mm×0.3mm)~(3mm×3mm)とされ、好適な一例を示せば(0.6mm×0.9mm)である。
【0046】
発光部13の長さは、通常3~500mmとされ、好適な一例を示せば40mmである。
発光部13は、光透過性を有する材料から構成されている。そのような材料としては、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などの透明な樹脂材料を挙げることができる。
【0047】
チューブ10のチューブ本体11は、ルーメン切替部12を介して、発光部13の基端側に接続されている。
このチューブ本体11には、第1ルーメン111と、第2ルーメン112とが形成されている。
【0048】
図2D図2E図3および図4Bに示すように、第1ルーメン111は、円形の断面を有し、チューブ10の中心軸から半径方向に変位して、当該中心軸と平行に延びている。
第1ルーメン111は、チューブ本体11における胆汁の流通ルーメンであり、チューブ本体11の先端側において開放され、ルーメン切替部12に形成された連通路121を介して、発光部13の中央ルーメン131と連通している。
第1ルーメン111の直径は、通常0.4~13mmとされ、好適な一例を示せば0.85mmである。
【0049】
第1ルーメン111は、チューブ本体11の基端側において閉塞されており、第1ルーメン111を流通する胆汁は、チューブ10の基端面から排出されることはない。
このため、第1ルーメン111を流通する胆汁の排出路として、チューブ本体11の周壁には、当該チューブ本体11の外周面から第1ルーメン111に至る側孔113が形成され、チューブ本体11の外周面における側孔113の開口は、第1ルーメン111を流通する胆汁の排出ポートとなっている。
側孔113の開口形状は、例えばカプセル型(小判型)とされ、開口のサイズ(短径×長径)の好適な一例を示せば0.8mm×10mmである。
なお、このような小径の開口の位置をオペレータが容易に把握できるよう、開口の周囲に塗料を塗布しておくなど、チューブ本体11の外周面に、開口位置を示すマーキングがなされていることが好ましい。
【0050】
第2ルーメン112はカプセル型(小判型)の断面を有し、チューブ10の中心軸から半径方向(第1ルーメン111が変位している方向とは反対方向)に変位して、当該中心軸および第1ルーメン111と平行に延びている。
【0051】
第2ルーメン112は、チューブ本体11の先端側において、ルーメン切替部12を構成する樹脂によって閉塞されている。
第2ルーメン112は、チューブ本体11の基端側において開放されており、チューブ10(チューブ本体11)の基端面に開口114を有している。
【0052】
第2ルーメン112は、リード線(陽極側リード線51、集約リード線51G、陰極側リード線52、集約リード線52G)を挿通させるためのルーメンである。
第2ルーメン112の断面のサイズ(短径×長径)は、通常(0.3mm×0.3mm)~(5mm×5mm)とされ、好適な一例を示せば(0.7mm×1.1mm)である。
【0053】
チューブ本体11の長さは、通常500~4960mmとされ、好適な一例を示せば1400mmである。
チューブ本体11は樹脂から構成されている。かかる樹脂材料としては、PEBAX、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂を挙げることができる。
【0054】
チューブ10のルーメン切替部12は、発光部13とチューブ本体11との間に介在している。
このルーメン切替部12には、胆汁の流通路として、発光部13の中央ルーメン131と、チューブ本体11の第1ルーメン111とを連通する連通路121が形成されている。
【0055】
ルーメン切替部12の長さは、通常1~100mmとされ、好適な一例を示せば10mmである。
ルーメン切替部12は樹脂から構成されており、ルーメン切替部12を構成する樹脂によって、発光部13の周辺ルーメン132~135の基端およびチューブ本体11の第2ルーメン112の先端が閉塞されている。
ルーメン切替部12を構成する樹脂材料としては、チューブ本体11を構成するものとして例示した樹脂を挙げることができる。
【0056】
チューブ10の最先端部15は、ルーメン拡径部14を介して、発光部13の先端側に接続されている。
この最先端部15にはルーメン151が形成されている。
図2Aに示すように、ルーメン151は、円形の断面を有し、チューブ10の中心軸に沿って延びている。
ルーメン151は、最先端部15の基端側において開放されており、ルーメン拡径部14に形成された拡径連通路141を介して、発光部13の中央ルーメン131と連通している。
【0057】
ルーメン151は、最先端部15の先端側においても開放されており、チューブ10の先端において開口152を有している。
また、最先端部15の周壁には、最先端部15の外周面からルーメン151に至る複数の側孔153が複数形成されている。
【0058】
チューブ10の最先端部15は、発光部13の先端側に溜まった胆汁をルーメン151に流入させて体外に排出するためのドレナージチューブであり、開口152および側孔153の開口は、胆汁の流入ポートである。
【0059】
ルーメン151の直径は、中央ルーメン131の直径より大きく、通常0.5~14mmとされ、好適な一例を示せば1.7mmである。
これにより、ルーメン151への胆汁の流入量、延いては、当該胆汁の排出量を十分に確保することができる。
【0060】
図1に示すように、最先端部15は、J字状に湾曲した形状を記憶している。この湾曲形状は、外力を加えれば容易に変形(例えば、直線状に変形)するが、外力を取り除けば当該湾曲形状に戻る。このような湾曲形状の最先端部15によれば、胆管内壁に係止させて、光照射装置100を所定の位置に配置することができる。
なお、最先端部(ドレナージチューブ)の係止を容易にするための形態はこれに限定されるものではないことは勿論である。
最先端部15の長さは、通常10~100mmとされ、好適な一例を示せば40mmである。
【0061】
チューブ10のルーメン拡径部14は、発光部13と最先端部15との間に介在している。
このルーメン拡径部14には、胆汁の流通路として、発光部13の中央ルーメン131と、最先端部15のルーメン151とを連通する拡径連通路141が形成されている。
拡径連通路141は円錐台形の空間であって、ルーメン拡径部14の基端における直径は中央ルーメン131の直径と同一であり、ルーメン拡径部14の先端における拡径連通路141の直径はルーメン151の直径と同一である。
拡径連通路141の長さは、通常1~30mmとされ、好適な一例を示せば10mmである。
【0062】
ルーメン拡径部14は樹脂から構成されており、ルーメン拡径部14を構成する樹脂によって、発光部13の周辺ルーメン132~135の先端が閉塞されている。
ルーメン拡径部14を構成する樹脂材料としては、チューブ本体11を構成するものとして例示した樹脂を挙げることができる。
【0063】
胆管の狭窄部位を塞ぐように発光部13を配置した場合において、最先端部15の周囲に溜まっている患者の胆汁は、最先端部15の先端の開口152および側孔153の開口からルーメン151に流入される。
最先端部15のルーメン151に流入した胆汁は、当該ルーメン151、ルーメン拡径部14の拡径連通路141、発光部13の中央ルーメン131、ルーメン切替部12の連
通路121およびチューブ本体11の第1ルーメン111を流通し、チューブ本体11の周壁に形成された側孔113の開口(排出ポート)から体外に排出される。
【0064】
図2B図2C図3および図4Aに示すように、チューブ10の発光部13の周辺ルーメン132~135には、それぞれ、配線基板30が配置されている。
【0065】
図7Aおよび図7Bに示すように、光照射装置100を構成する配線基板30は、細長く延びる板状をなしている。
配線基板30の一面には、近赤外光(例えば波長680~700nm)を発するLEDからなる7個の発光素子35が当該配線基板30の長さ方向に沿って等間隔に配置されることにより実装されている。
配線基板30の基端側には、陽極端子36および陰極端子37が配置されている。
【0066】
配線基板30の長さとしては、通常3~450mmとされ、好適な一例を示せば40mmである。
配線基板30の幅としては、通常0.3~12.5mmとされ、好適な一例を示せば0.55mmである。
発光素子35の実装領域の長さ(図7AのL35)としては、通常5~455mmとされ、好適な一例を示せば30mmである。
【0067】
配線基板30は、実装している光素子35が発光部13の半径方向外側を向いた状態で当該発光部13の長さ方向に沿って配列されるように周辺ルーメン132~135の各々に配置されている。
【0068】
これにより、発光部13の円周方向に沿って90°間隔に4つの配線基板30が配置され、これら配線基板30の各々には、発光部13の長さ方向に沿って7個の発光素子35が等間隔に配列しているので、当該発光素子35からの近赤外光を、発光部13の円周方向および長さ方向にバラツキなく放射状に発することができ、発光部13の周囲における胆管癌(これに付着させた感光物質等)の全体に対して均等に近赤外光を照射することができる。
【0069】
なお、配線基板30が配置された周辺ルーメン132~135の各々に透明な樹脂材料(例えば、発光部を構成するものと同一の樹脂)を充填し、発光部13の内部に配線基板30を埋設してもよい。
これにより、配線基板30の位置ずれや光の散乱などを防止することができる。
【0070】
図3図4Aおよび図5に示すように、配線基板30の陽極端子36および陰極端子37には、それぞれ、陽極側リード線51の先端部および陰極側リード線52の先端部が接続されている。なお、図5においては、4つの配線基板30のうちの2つのみを図示している。
【0071】
光照射装置100を構成する4本の陽極側リード線51は、それぞれの先端部が接続されている陽極端子36を備えた配線基板30が配置されている発光部13の周辺ルーメン132~135の各々から、ルーメン切替部12の内部を通って、チューブ本体11の第2ルーメン112に挿入され、第2ルーメン112に延在し、第2ルーメン112の途中で1本に纏められて集約リード線51Gとなり、この集約リード線51Gが開口114からチューブ10の外部に延出している。
【0072】
光照射装置100を構成する4本の陰極側リード線52は、陽極側リード線51と同様に、それぞれの先端部が接続されている陰極端子37を備えた配線基板30が配置されて
いる発光部13の周辺ルーメン132~135の各々から、ルーメン切替部12の内部を通って、チューブ本体11の第2ルーメン112に挿入され、第2ルーメン112に延在し、第2ルーメン112の途中で1本に纏められて集約リード線52Gとなり、この集約リード線52Gが開口114からチューブ10の外部に延出している。
【0073】
上記のように、4本の陽極側リード線51を集約して1本の集約リード線51Gとし、4本の陰極側リード線52を集約して1本の集約リード線52Gとし、集約リード線51Gおよび集約リード線52Gをチューブ10の外部に延出させる構成によれば、電源への接続操作を、陽極側および陰極側でそれぞれ1回行うだけでよく、電源への接続操作の簡略化を図ることができる。
【0074】
図3図4A図4Bおよび図5に示すように、ルーメン切替部12の内部において、4本の陽極側リード線51および4本の陰極側リード線52は、ルーメン切替部12を構成する樹脂材料によって固着(封止)されている。
【0075】
このような構成によれば、集約リード線51Gまたは集約リード線52Gの基端部を電源に接続するときに、リード線が基端方向に引っ張られ、陽極側リード線51または陰極側リード線52の先端部が、配線基板30の陽極端子36または陰極端子37から離脱したり、ルーメン切替部において、複数本のリード線(陽極側リード線51および/または陰極側リード線52)が絡まったりすることを確実に防止することができる。
【0076】
図5に示すように、集約リード線51Gの基端部および集約リード線52Gの基端部は、それぞれ、装置側コネクタ55に接続されている。
装置側コネクタ55を、図6に示す電源装置90の電源側コネクタ95に接続することにより、集約リード線51Gの基端部および集約リード線52Gの基端部は、それぞれ、電源装置90の電源91(陽極および陰極)に接続される。
【0077】
これにより、配線基板30の各々の陽極端子36と、電源装置90の電源91(陽極)とが、陽極側リード線51(集約リード線51G)を介して電気的に接続され、配線基板30の各々の陰極端子37と、電源装置90の電源91(陰極)とが、陽極側リード線52(集約リード線52G)を介して電気的に接続される。
【0078】
電源装置90を構成する電源91は、特に限定されるものではないが、例えばボタン型電池からなる。
電源装置90は、電源91のON-OFFスイッチ93と、発光素子35からの発光量を調整するために電源91からの電流を変化させる可変抵抗97とを備えている。
【0079】
図1図2E図2Fおよび図5に示すように、チューブ10の基端側にはリード保護シース70が装着されている。
光照射装置100を構成するリード保護シース70は、チューブ10の基端面における開口114から延出している集約リード線51Gおよび集約リード線52Gを完全に内包するように装着されている。
【0080】
リード保護シース70は、その基端部に切れ目75が形成されたピールアウエイシースからなり、切れ目75を利用して引き裂くことにより、チューブ10から容易に除去することができる。
リード保護シース70の長さは、通常10~3000mmとされ、好適な一例を示せば1100mmである。
【0081】
この実施形態では、チューブ10の基端部(例えば、基端から60~100mm、好適
な一例として、基端から80mmまでの部分)に、リード保護シース70の先端部71をオーバーラップさせて仮着することにより、チューブ10の基端側にリード保護シース70が装着されている。
【0082】
本実施形態の光照射装置100を使用して、下記(1)~(8)のようにして胆管癌に対する光免疫治療を施すことができる。
【0083】
(1)抗体と感光物質(例えば、IR700)との結合体を、静脈注射などにより体内に投与して、この結合体を胆管癌の癌組織に付着させる。
(2)内視鏡(側視鏡)のワーキングルーメンに、光照射装置100のチューブ10を挿入する。
(3)内視鏡を患者の口から挿入して、内視鏡の先端部を十二指腸乳頭部に到達させる。
(4)チューブ10の内部(第1ルーメン111,連通路121,中央ルーメン131,拡径連通路141およびルーメン151)に挿通させたガイドワイヤを、胆管内に挿入する。
(5)ガイドワイヤに沿わせてチューブ10を胆管内に挿入して、発光部30を胆管癌に接触させるように(すなわち、胆管癌による狭窄部位を発光部30によって塞ぐように)配置する。
(6)ガイドワイヤおよび内視鏡を抜去して、チューブ10のみを体内に留置する。
(7)口から延出しているチューブ10の基端部を鼻腔を経由して鼻孔から延出させる。
(8)電源装置90のスイッチ93をONにして電源91からの電力を配線基板30の発光素子35に供給し、発光素子35を発光させ、発光部13の周囲にある胆管癌に照射する。これにより、癌組織に付着させた感光物質を反応させることで光免疫療法を施すことができる。
【0084】
この実施形態の光照射装置100によれば、発光部13の中央ルーメン131の周囲に90°間隔に配列された4つの周辺ルーメン132~135の各々に、発光部13の長さ方向に沿って7個の発光素子35が等間隔に配列されるよう配線基板30が配置されていることにより、発光部13の円周方向および長さ方向にバラツキなく、近赤外光を放射状に発することができ、発光部13の周囲における胆管癌全体に対して均等に光照射することができる。
【0085】
また、胆管の狭窄部位を塞ぐようにして発光部13を配置しても、ドレナージチューブである最先端部15のルーメン151に胆汁を流入させ、ルーメン拡径部14の拡径連通路141、発光部13の中央ルーメン131、ルーメン切替部12の連通路121およびチューブ本体11の第1ルーメン111に胆汁を流通させて、チューブ本体11の周壁に形成された側孔113の開口から体外に排出することができる。
また、周辺ルーメン132~135の各々に配置されている配線基板30に実装された発光素子35からの近赤外光は、中央ルーメン13を流通する胆汁によって遮られることはない。
【0086】
また、チューブ本体11において、陽極側リード線51(集約リード線51G)および陰極側リード線52(集約リード線52G)が第2ルーメン112に延在し、患者の胆汁を第1ルーメン111に流通させることができるので、これらのリード線に患者の胆汁が接触することはなく、胆汁との接触に起因する陽極側リード線51と陰極側リード線52との間の短絡やリード線の汚染などを回避することができる。
【0087】
また、集約リード線51Gおよび集約リード線52Gがチューブ10の基端面における
第2ルーメン112の開口114から延出し、第1ルーメン111を流通させた胆汁を、チューブ本体11の周壁に形成された側孔113から体外に排出することができるので、開口114から延出している集約リード線51Gおよび集約リード線52Gが胆汁と接触することを回避することができる。
【0088】
また、ルーメン切替部12の内部において、陽極側リード線51および陰極側リード線52が、ルーメン切替部12を構成する樹脂材料によって封止(結着)されていることにより、集約リード線51Gまたは集約リード線52Gの基端部を電源に接続するときに、リード線が基端方向に引っ張られ、陽極側リード線51または陰極側リード線52の先端部が、配線基板30の陽極端子36または陰極端子37から離脱したり、ルーメン切替部において複数本のリード線(陽極側リード線51および/または陰極側リード線52)が絡まったりすることを確実に防止することができる。
【0089】
また、チューブ本体11の第2ルーメン112において、4本の陽極側リード線51を集約して1本の集約リード線51Gとし、4本の陰極側リード線52を集約して1本の集約リード線52Gとし、集約リード線51Gおよび集約リード線52Gをチューブ10の外部に延出させることによれば、電源への接続操作を、陽極側および陰極側でそれぞれ1回行うだけでよく、電源への接続操作の簡略化を図ることができる。
【0090】
また、第2ルーメン112の開口114から延出している集約リード線51Gおよび集約リード線52Gを内包するように、ピールアウエイシースからなるリード保護シース70がチューブ本体11の基端側に装着されていることにより、チューブ10の基端部を患者の鼻腔を経由して鼻孔から延出させるときに、集約リード線51Gおよび52Gが鼻水などで濡れてしまうことを防止することができ、チューブ10の基端部を患者の鼻孔から延出させた後、リード保護シース70を脱離することにより、濡れていない状態の集約リード線51Gおよび52Gを電源に接続することができる。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものでなく、適宜変更が可能である。
例えば、発光部において配線基板が配置される周辺ルーメンの数は4に限定されず、3~6であってもよい。
但し、配線基板の数が4未満(配置角度間隔が90°を超える)場合には、発光部の円周方向において、十分な発光量の得られない領域が発生することがあり、かかる観点から4~6であることが好ましく、4であることが最も好ましい。
【0092】
本発明の光照射装置による光免疫療法を施す対象となる癌は、胆管癌に限定されるものではなく、膵癌、肺癌、食道癌、大腸癌、胃癌、膀胱癌、前立腺癌などに対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
100 光照射装置
10 チューブ
11 チューブ本体
111 第1ルーメン
112 第2ルーメン
113 側孔
114 開口(チューブの基端)
12 ルーメン切替部
121 連通路
13 発光部
131 中央ルーメン
132~135 周辺ルーメン
14 ルーメン拡径部
141 拡径連通路
15 最先端部
151 最先端部のルーメン
152 開口(チューブの先端)
153 側孔
30 配線基板
35 発光素子
36 陽極端子
37 陰極端子
51 陽極側リード線
51G 集約リード線
52 陰極側リード線
52G 集約リード線
55 装置側コネクタ
70 リード保護シース
71 リード保護シースの先端部
75 切れ目
90 電源装置
91 電源
93 ON-OFFスイッチ
95 電源側コネクタ
97 可変抵抗
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B