(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法および再生材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/12 20060101AFI20241028BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20241028BHJP
C08F 214/26 20060101ALI20241028BHJP
C08J 3/24 20060101ALN20241028BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
C09K3/10 M
C08F214/26
C08J3/24 Z CEW
(21)【出願番号】P 2024054593
(22)【出願日】2024-03-28
【審査請求日】2024-05-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 仁志
(72)【発明者】
【氏名】木下 ひろみ
(72)【発明者】
【氏名】大住 直樹
(72)【発明者】
【氏名】水門 潤治
(72)【発明者】
【氏名】山根 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康正
(72)【発明者】
【氏名】青柳 将
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-211460(JP,A)
【文献】国際公開第2022/080476(WO,A1)
【文献】特開2006-070127(JP,A)
【文献】特開平10-324768(JP,A)
【文献】特開2020-200482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/12
C09K 3/10
C08F 214/26
C08J 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体が架橋した架橋パーフルオロ(共)重合体を、不活性ガス雰囲気下で熱処理することで、前記架橋サイトを再生する工程を含
み、
前記架橋サイトが、ニトリル基またはハロゲン原子である、
再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法。
【請求項2】
前記架橋サイトがニトリル基である、請求項1に記載の再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法。
【請求項3】
前記不活性ガスが、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスから選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法。
【請求項4】
前記架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体が、該(共)重合体の主鎖に炭素-水素結合を含まない(共)重合体である、請求項1に記載の再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法で得られた再生パーフルオロ(共)重合体を含む再生材形成材料を架橋する工程を含む、再生材の製造方法。
【請求項6】
前記再生材形成材料が架橋剤をさらに含む、請求項5に記載の再生材の製造方法。
【請求項7】
前記再生材形成材料が、未架橋パーフルオロ(共)重合体をさらに含む、請求項5に記載の再生材の製造方法。
【請求項8】
前記再生材形成材料中の前記再生パーフルオロ(共)重合体の含有量が、未架橋パーフルオロ(共)重合体100質量部に対し、0.5質量部以上である、請求項7に記載の再生材の製造方法。
【請求項9】
前記再生材がシール材である、請求項5に記載の再生材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法および再生材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シール材は、各種用途に幅広く使用されており、これらの用途の中でも、シール材に最も負荷のかかるシール材の用途の一例として、半導体製造装置等に使用されるシール材が挙げられる。
【0003】
このようなシール材としては、耐プラズマ性や耐ラジカル性に優れるシール材を得ることができることから、フルオロエラストマー(FKM)や、パーフルオロエラストマー(FFKM)などの架橋性フルオロエラストマーが使用されており、特に高温や過酷な化学薬品が使用される場合等においては、FFKMが使用されている。
【0004】
前記のような架橋性フルオロエラストマー製のシール材は、通常、該架橋性フルオロエラストマーに、架橋剤や架橋助剤などの添加剤を配合して得られたエラストマー組成物を用い、このエラストマー組成物を成形、架橋することでシール材として使用されている。
【0005】
前記シール材は、一般の成形品と同様に、成形時の屑(バリ)や不良品、使用済の成形品等の処理が必要になることがある。しかしながら、架橋したフルオロエラストマーは、その優れた特性がかえって化学的処理等の妨げとなり、また、燃焼させると腐食性分解物を生じ、サーマルリサイクルも容易ではないことから、これまでは埋め立て等により廃棄していた。
【0006】
しかし、近年、埋め立て量の削減等による環境保護、資源の有効活用等に対する高意識化に伴い、従来廃棄していた架橋フルオロエラストマーを再利用する方法の開発が要求されている。
【0007】
このような架橋フルオロエラストマーを再利用する方法として、例えば、特許文献1には、架橋された含フッ素ポリマーを、活性水素を有する化合物の超臨界流体または亜臨界流体中で脱架橋する方法が開示されている。
また、特許文献2には、加硫フッ素ゴムを空気中で加熱処理する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-63334号公報
【文献】特開昭61-69805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、超臨界流体または亜臨界流体を用いる前記特許文献1に記載の方法は、処理が容易ではなく、簡便に実施することができないため改良の余地があった。
また、本発明者が鋭意検討した結果、前記特許文献2に記載の方法では、加硫フッ素ゴムの脱加硫(架橋サイトの再生)が十分に起こらず、また、前記加熱処理により加硫フッ素ゴムの分解等が起こり、加熱処理前後のフッ素ゴムの質量減少率が大きくなることが分かった。
【0010】
本発明は以上のことに鑑みてなされた発明であり、架橋した架橋パーフルオロ(共)重合体の架橋サイトを再生する再生パーフルオロ(共)重合体を製造する方法であって、該架橋サイトを再生する際のパーフルオロ(共)重合体の質量減少を抑制しつつ、簡便な方法で十分に架橋サイトを再生することができる、再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0012】
[1] 架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体が架橋した架橋パーフルオロ(共)重合体を、不活性ガス雰囲気下で熱処理することで、前記架橋サイトを再生する工程を含む、再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法。
【0013】
[2] 前記架橋サイトがニトリル基である、[1]に記載の再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法。
【0014】
[3] 前記不活性ガスが、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスから選ばれる少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法。
【0015】
[4] 前記架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体が、該(共)重合体の主鎖に炭素-水素結合を含まない(共)重合体である、[1]~[3]のいずれかに記載の再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法。
【0016】
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法で得られた再生パーフルオロ(共)重合体を含む再生材形成材料を架橋する工程を含む、再生材の製造方法。
【0017】
[6] 前記再生材形成材料が架橋剤をさらに含む、[5]に記載の再生材の製造方法。
【0018】
[7] 前記再生材形成材料が、未架橋パーフルオロ(共)重合体をさらに含む、[5]または[6]に記載の再生材の製造方法。
【0019】
[8] 前記再生材形成材料中の前記再生パーフルオロ(共)重合体の含有量が、未架橋パーフルオロ(共)重合体100質量部に対し、0.5質量部以上である、[7]に記載の再生材の製造方法。
【0020】
[9] 前記再生材がシール材である、[5]~[8]のいずれかに記載の再生材の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、架橋した架橋パーフルオロ(共)重合体の架橋サイトを再生するにあたり、該架橋サイトを再生する際のパーフルオロ(共)重合体の質量減少を抑制しつつ、簡便な方法で十分に架橋パーフルオロ(共)重合体の架橋サイトを再生することができる。
このように、質量減少を抑制しつつ、十分に架橋パーフルオロ(共)重合体の架橋サイトを再生することができるため、得られる再生パーフルオロ(共)重合体を用いても、バージン品(未架橋パーフルオロ(共)重合体)を用いた場合と同程度の物性(硬度、引張強さ、破断時伸び、圧縮永久ひずみおよび耐プラズマ性)を有する成形体(再生材)を形成することができる。
このため、該再生材は、半導体製造装置用シール材、プラズマ処理装置用シール材等として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
≪再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法≫
本発明に係る再生パーフルオロ(共)重合体(以下「本再生品」ともいう。)の製造方法(以下「本再生品の製法」ともいう。)は、架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体が架橋した架橋パーフルオロ(共)重合体(以下「被再生品」ともいう。)を、不活性ガス雰囲気下で熱処理することで、前記架橋サイトを再生する工程を含む。
【0023】
被再生品に架橋サイトが再生したか否かは、例えば、FT-IRを用いて、被再生品中の架橋サイトの量と、得られた再生品中の架橋サイトの量とを測定することで判断することができる。
本再生品の製法は、得られた再生品を用いて所望の物性を有する再生材を容易に形成することができる等の点から、被再生品中の架橋サイトの含有量を100%とした場合に、得られる再生品中の架橋サイトの含有量が、好ましくは150%以上、より好ましくは200%以上となるような方法であることが望ましい。
前記架橋サイトの含有量は、FT-IRを用い、具体的には下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0024】
また、本再生品の製法は、得られた再生品を用いて所望の物性を有する再生材を容易に形成することができる等の点から、前記熱処理による質量減少率、具体的には、下記式(1)で表される質量減少率が、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下となるような方法であることが望ましい。
質量減少率(%)=[(被再生品の質量-本再生品の質量)/被再生品の質量]×100 ・・・(1)
【0025】
<被再生品>
前記被再生品は、架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体(以下「未架橋パーフルオロ(共)重合体」ともいう。)が架橋した架橋パーフルオロ(共)重合体であって、例えば、従来の未架橋パーフルオロ(共)重合体(バージン品)を用いて形成されたシール材などの(未使用)成形体、その成形体の製造時に生じた屑(バリ)や不良品、使用済の成形体などに含まれる架橋パーフルオロ(共)重合体が挙げられる。
前記使用済み成形体としては、半導体製造装置で使用された使用済み成形体だけでなく、化学プラント、各種産業機器などで使用された使用済み成形体等も挙げられる。
本再生品の製法において、熱処理に供される原料としては、前記架橋パーフルオロ(共)重合体自体を用いてもよく、前記(未使用)成形体、前記屑(バリ)や不良品、前記使用済の成形体を用いてもよい。
【0026】
前記被再生品における架橋パーフルオロ(共)重合体は、下記未架橋パーフルオロ(共)重合体(バージン品)を従来公知の方法で架橋した架橋体である。
前記従来公知の方法としては、架橋剤を用いた架橋が挙げられ、該架橋剤としては、用いる未架橋パーフルオロ(共)重合体に応じて適宜選択すればよいが、例えば、パーオキサイド系架橋剤、ビスフェノール系架橋剤、トリアジン系架橋剤、オキサゾール系架橋剤、イミダゾール系架橋剤、チアゾール系架橋剤、アミドキシム系架橋剤、アミドラゾン系架橋剤が挙げられる。つまり、前記被再生品としては、これらの架橋剤に由来する架橋構造およびこれらの架橋構造を形成する際の中間体構造(例:オキサゾール構造を形成する際のアミジン構造)から選ばれる少なくとも1種の架橋構造を有する架橋パーフルオロ(共)重合体が挙げられる。
なお、前記被再生品における架橋の程度は特に制限されず、シール材などの成形体を形成する際と同程度の架橋の程度であればよい。
【0027】
[未架橋パーフルオロ(共)重合体]
前記未架橋パーフルオロ(共)重合体は、架橋前の、架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体であり、「バージン品」ということもできる。
前記未架橋パーフルオロ(共)重合体としては、パーフルオロエラストマー(FFKM)が好ましい。
該FFKMとしては特に制限されないが、ポリマー主鎖(末端を除く)中に水素原子(炭素-水素結合)を含まないポリマーが好ましく、具体的には、架橋サイトを有するテトラフルオロエチレン(TFE)-パーフルオロビニルエーテル系共重合体が挙げられ、TFE由来の構成単位と、パーフルオロビニルエーテル由来の構成単位とを含み、さらに必要により架橋サイト含有モノマー由来の構成単位を含む共重合体が好ましい。
【0028】
前記パーフルオロビニルエーテルの好適例としては、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)が挙げられる。
【0029】
前記パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、該アルキル基の炭素数が、例えば、1~10である化合物が挙げられ、具体的には、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等が挙げられ、好ましくはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)である。
【0030】
前記パーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)としては、ビニルエーテル基(CF2=CFO-)に結合する基の炭素数が、例えば、3~15である化合物が挙げられ、具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
CF2=CFOCF2CF(CF3)OCnF2n+1
CF2=CFO(CF2)3OCnF2n+1
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2O)mCnF2n+1
CF2=CFO(CF2)2OCnF2n+1
これらの式において、nはそれぞれ独立に、例えば1~5であり、mは、例えば1~3である。
【0031】
前記架橋サイトとは、架橋反応可能な部位を意味し、例えば、ニトリル基、ハロゲン原子(例:I、Br)、パーフルオロフェニル基が挙げられ、これらの中でも、本発明の効果がより発揮される等の点からニトリル基が好ましい。
【0032】
架橋サイトとしてニトリル基を有する架橋サイトモノマーとしては、例えば、ニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルが挙げられ、具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)CN(nは、例えば2~4)
CF2=CFO(CF2)nCN(nは、例えば2~12)
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]m(CF2)nCN(nは、例えば1~4、mは、例えば1~5)
CF2=CFO[CF2CF(CF3)O]nCF2CF(CF3)CN(nは、例えば0~4)
CF2=CF(CF2)nCN(nは、例えば1~8の整数)
CF2=CFCF2(OCF2)nCN(nは、例えば0~5の整数)
CF2=CFCF2(OCF(CF3)CF2)m-CN(mは、例えば0~5の整数、nは、例えば0~5の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))mO(CF2)n-CN(mは、例えば0~5の整数、nは、例えば1~8の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))m-CN(mは、例えば1~5の整数)
CF2=CFOCF2(CF(CF3)OCF2)nCF(-CN)CF3(nは、例えば1~4の整数)
CF2=CFO(CF2)nOCF(CF3)-CN(nは、例えば2~5の整数)
CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF(CF3)-CN(nは、例えば1~2の整数)
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)m(CF2)n-CN(mは、例えば0~5の整数、nは、例えば1~3の整数)
CF2=CFO(CF2CF(CF3)O)mCF2CF(CF3)-CN(mは0以上の整数)
CF2=CFOCF(CF3)CF2O(CF2)n-CN(nは1以上の整数)
CF2=CFOCF2OCF2CF(CF3)OCF2-CN
【0033】
架橋サイトとしてハロゲン原子を有する架橋サイト含有モノマーとしては、例えば、ハロゲン基含有パーフルオロビニルエーテルが挙げられ、具体的には、前述のニトリル基含有パーフルオロビニルエーテルの具体例において、ニトリル基をハロゲン原子に置き換えた化合物等が挙げられる。また、ハロゲン原子を有する架橋サイト含有モノマーとしては、例えば、国際公開第2009/119409号、特開2002-97329号公報や特開2008-56739号公報に記載の化合物も挙げられる。
【0034】
FFKMにおける、TFE由来の構成単位の含有量は、好ましくは50.0~79.9モル%、パーフルオロビニルエーテル由来の構成単位の含有量は、好ましくは20.0~46.9モル%、架橋サイト含有モノマー由来の構成単位の含有量は、好ましくは0.1~2.0モル%である。
【0035】
<熱処理条件等>
本再生品の製法における熱処理は、不活性ガス雰囲気下で行うことを特徴とする。
熱処理を不活性ガス雰囲気下で行うことで、被再生品から再生品を得る際に、被再生品の分解等を抑制することができ、質量減少を抑制することができ、さらに、架橋サイトの再生量が多い本再生品を容易に得ることができる。
【0036】
前記不活性ガスの具体例としては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスが挙げられ、これらの中でも窒素ガスが好ましい。
前記不活性ガスは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記不活性ガスは、本発明の効果がより発揮される等の点から、酸素が含まれていないガスであるか、酸素を少量含むガスであることが好ましい。
該酸素を少量含むガスとしては、酸素の含有量が多いと被再生品の熱分解が進行しやすいため、酸素の含有量が、全体に対し、好ましくは5体積%未満、より好ましくは3体積%以下、さらに好ましくは1体積%以下であるガスであることが望ましい。
【0037】
前記熱処理の際の温度および時間としては、被再生品に架橋サイトが再生するような温度および時間であれば特に制限されない。
前記熱処理の際の温度としては、通常、前記未架橋パーフルオロ(共)重合体(バージン品)を従来公知の方法で架橋する際の温度を超える温度であり、好ましくは300~400℃、より好ましくは320~390℃、さらに好ましくは350~380℃である。
前記熱処理の際の時間としては、熱処理温度にもよるが、好ましくは30分~5時間、より好ましくは1~3時間である。
前記熱処理の際の圧力は特に制限されないが、常圧下で行なうことが好ましい。
【0038】
≪再生材の製造方法≫
本発明に係る再生材の製造方法(以下「本再生材の製法」ともいう。)は、前記本再生品の製法で得られた本再生品を含む再生材形成材料を架橋する工程を含む。
本再生材の製法では、不活性ガス雰囲気下で熱処理を行って得られた再生品を用いることで、例えば、空気中で熱処理を行って得られた再生品を用いる場合に比べ、特に耐プラズマ性に優れる再生材を形成することができる。
【0039】
<再生材形成材料>
前記再生材形成材料は、本再生品を含めば特に制限されず、実質的に本再生品のみからなる材料であってもよいが、必要に応じて、シール材等の成形体に配合されてきた従来公知のその他の成分を含んでいてもよい。
該その他の成分としては、例えば、未架橋パーフルオロ(共)重合体(バージン品);架橋剤;架橋助剤;エチレン性不飽和結合含有化合物;分子中に2個以上のヒドロシリル基を有する反応性有機珪素化合物;パーフルオロポリエーテル;フッ素オイルなどの非粘着剤;触媒;ポリオール系化合物;前記パーフルオロ(共)重合体以外の(共)重合体(例:フッ素樹脂);酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の受酸剤;アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料等の有機顔料;加工助剤;加硫促進剤;老化防止剤;酸化防止剤;無機充填材;有機充填材;が挙げられる。
前記その他の成分はそれぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0040】
[本再生品]
前記再生材形成材料に用いる本再生品は、1種でもよく、2種以上でもよい。
本再生品の使用量は、環境保護および資源の有効活用の点、ならびに、所望の物性を有する再生材を容易に形成することができる点のバランスを考慮すると、前記再生材形成材料100質量%に対し、好ましくは0.5~60質量%、より好ましくは1~50質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。
また、前記再生材形成材料に未架橋パーフルオロ(共)重合体を用いる場合、本再生品の使用量は、所望の物性を有する再生材を容易に形成することができる等の点から、未架橋パーフルオロ(共)重合体100質量部に対し、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.5~90質量部、さらに好ましくは1~80質量部、特に好ましくは10~70質量部である。
【0041】
[未架橋パーフルオロ(共)重合体]
前記再生材形成材料には、成形加工性に優れる再生材形成材料を容易に得ることができ、所望の物性(硬度、引張強さ、破断時伸び、圧縮永久ひずみおよび耐プラズマ性)を有する再生材を容易に形成することができる等の点から、未架橋パーフルオロ(共)重合体(バージン品)を用いることが好ましい。
前記未架橋パーフルオロ(共)重合体としては、前記被再生品の欄に記載の未架橋パーフルオロ(共)重合体と同様の(共)重合体が挙げられる。
なお、前記未架橋パーフルオロ(共)重合体としては、前記再生材形成材料に用いる本再生品に含まれる架橋サイトと異なる架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体を用いてもよいが、前記再生材形成材料に用いる本再生品に含まれる架橋サイトと同様の架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体を用いることが好ましい。
【0042】
前記再生材形成材料に未架橋パーフルオロ(共)重合体を用いる場合、該未架橋パーフルオロ(共)重合体の使用量は、所望の物性を有する再生材を容易に形成することができる等の点から、前記再生材形成材料100質量%に対し、好ましくは40~99.5質量%、より好ましくは50~99質量%、さらに好ましくは50~90質量%である。
【0043】
[架橋剤]
前記再生材形成材料は、架橋剤を用いなくても架橋させることはできるが、十分に架橋し、硬度、引張強さ、切断時伸び、および、100%伸びにおける引張応力(100%Mo)にバランスよく優れる再生材を容易に形成することができる等の点から、前記再生材形成材料には、用いる本再生品や未架橋パーフルオロ(共)重合体の種類に応じた架橋剤を用いることが好ましい。
【0044】
前記架橋剤としては、例えば、特許第5278312号公報に記載の架橋剤などの従来より公知の架橋剤を特に制限なく使用することができ、具体例としては、パーオキサイド系架橋剤、ビスフェノール系架橋剤、トリアジン系架橋剤、オキサゾール系架橋剤、イミダゾール系架橋剤、チアゾール系架橋剤、アミドキシム系架橋剤、アミドラゾン系架橋剤が挙げられる。
【0045】
パーオキサイド系架橋剤としては、例えば、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシベンゼン、t-ブチルパーオキシマレイン酸が挙げられる。
【0046】
ビスフェノール系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールAF、ビスフェノールSが挙げられる。
【0047】
トリアジン系架橋剤としては、例えば、2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、2-ヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ジエチルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-シクロヘキシルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-アニリノ-4,6-ジメルカプトトリアジン、2-フェニルアミノ-4,6-ジメルカプトトリアジンが挙げられる。
また、トリアジン架橋剤としては、テトラフェニルスズ、トリフェニルスズ等の有機スズ化合物のように、本再生品や未架橋パーフルオロ(共)重合体に含まれるニトリル基のみでトリアジン環を形成する触媒となり得る化合物であってもよい。
【0048】
オキサゾール系架橋剤としては、例えば、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BOAP)、4,4’-スルホニルビス(2-アミノフェノール)、9,9-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレンが挙げられる。
【0049】
イミダゾール架橋剤としては、例えば、2,2-ビス(3,4-ジアミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-メチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-エチルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-プロピルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-フェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-パーフルオロフェニルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-(N-ベンジルアミノ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
【0050】
チアゾール系架橋剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドが挙げられる。
【0051】
前記再生材形成材料に架橋剤を用いる場合、該架橋剤の使用量は、架橋反応が十分に進行し、硬度、引張強さ、切断時伸び、および、100%Moにバランスよく優れる再生材を容易に形成することができる等の点から、本再生品および未架橋パーフルオロ(共)重合体の合計100質量部に対して、好ましくは0.2~4質量部、より好ましくは0.2~2.5質量部である。
【0052】
[架橋助剤]
前記再生材形成材料では、前記架橋剤を単独で用いてもよいが、前記パーオキサイド系架橋剤等の架橋剤を用いる場合、架橋助剤を用いることが好ましい。該架橋助剤としては、架橋剤の種類に応じて公知の架橋助剤を選択すればよい。
【0053】
例えば、パーオキサイド系架橋剤を用いる場合に使用される架橋助剤の例としては、トリアリルイソシアヌレート;トリアリルシアヌレート;トリメタリルイソシアヌレート;トリアリルホルマール;トリアリルトリメリテート;N,N'-m-フェニレンビスマレイミド;ジプロパギルテレフタレート;ジアリルフタレート;テトラアリルテレフタルアミド;エチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレート;等のラジカルによる共架橋が可能な化合物(多官能性モノマー):高級カルボン酸の金属塩:多価アルコール(メタ)アクリレート:(メタ)アクリル酸金属塩が挙げられる。
これらの中では、反応性に優れ、耐熱性に優れ、高硬度で高モジュラスのシール材を容易に得ることができる等の点から、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0054】
前記再生材形成材料に架橋助剤を用いる場合、該架橋助剤の使用量は、架橋反応が十分に進行し、硬度、引張強さ、切断時伸び、および、100%Moにバランスよく優れるシール材を容易に形成することができる等の点から、本再生品および未架橋パーフルオロ(共)重合体の合計100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。
【0055】
前記再生材形成材料に架橋剤および架橋助剤を用いる場合、前記再生材形成材料中の架橋剤の含有量に対する架橋助剤の含有量の質量比(架橋助剤の含有量/架橋剤の含有量)は、架橋剤を過不足なく反応させ、所望の物性を示す再生材を容易に形成することができる等の点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは30以下、より好ましくは20以下である。
【0056】
[エチレン性不飽和結合含有化合物]
前記エチレン性不飽和結合含有化合物としては、例えば、国際公開第2022/065054号、特開2003-183402号公報、特開平11-116684号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0057】
[反応性有機珪素化合物]
前記反応性有機珪素化合物としては、例えば、特開2003-183402号公報、特開平11-116684号公報等に記載の有機ケイ素化合物と同様の化合物が挙げられる。
【0058】
[触媒]
前記触媒としては、例えば、特開2003-183402号公報、特開平11-116684号公報等に記載の触媒と同様の触媒が挙げられる。
【0059】
[有機顔料]
前記有機顔料としては、例えば、国際公開第2016/043100号、特許第4720501号公報、国際公開第2004/094527号、特許第5278312号公報等に記載の有機顔料と同様の有機顔料が挙げられる。
【0060】
[充填材]
前記無機充填材としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの粒子状(粉末状)の無機材料が挙げられる。
前記有機充填材としては、例えば、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF等のフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、シリコーン樹脂、メラミン樹脂などの粒子状(粉末状)の有機材料が挙げられる。
【0061】
[再生材形成材料の調製方法]
前記再生材形成材料は、本再生品と、必要により前記その他の成分とを混合(混練)することで調製することができる。
本再生品と、前記その他の成分とを混合する場合、その混合順は特に制限されず、任意の順番で順次混合(混練)してもよく、これらを一括混合(混練)してもよいが、各成分が均一になるように、順次混合(混練)することが好ましい。
【0062】
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合(混練)機を用いることができ、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、二軸ロール、ニーダーが挙げられる。
また、前記混合(混練)の際には、混合(混練)機に応じて、必要により、加熱下または冷却下で混合(混練)してもよい。
【0063】
<再生材形成材料を架橋する工程>
本再生材の製法は、前記再生材形成材料を架橋する工程を含めば特に制限されない。
【0064】
前記再生材形成材料から再生材を形成する際には、成形作業の効率を向上させるためや、不良率を低減するためなどの点から、分出し工程を行うことが好ましい。この分出し工程は、通常、ロールなどを使用して行われ、通常、前記再生材形成材料をシート状に予備的に成形する工程でもある。
【0065】
前記分出し工程で得られたシートは、前記架橋工程の前に、所望の再生材の形状に予備成形することが好ましい。
この予備成形は、分出し工程で得られたシートから直接所望の再生材形状を形成してもよく、分出し工程で得られたシートを、裁断や押出成形等により、ロープ状(リボン状、うどん状等も同義である。)等の形状にし、得られたロープ状物を所望の再生材形状にしてもよい。
【0066】
前記架橋工程は、一次架橋工程および二次架橋工程を含むことがより好ましい。
前記架橋工程は、前記予備成形で得られた所望の再生材形状の予備成形体を用いて行うことが好ましい。
【0067】
前記一次架橋工程としては、前記予備成形で得られた所望の再生材形状の予備成形体を加熱加圧する工程であることが好ましく、具体例としては、前記予備成形体を金型に投入し、加熱プレス機等によって2~15MPa程度の加圧下、例えば150~200℃の温度で、例えば5分~1時間程度架橋する工程が挙げられる。
【0068】
前記二次架橋工程としては、前記一次架橋工程で得られた成形体を加熱する工程であることが好ましく、具体的には、常圧~減圧下で各種オーブン、好ましくは真空オーブンを用いて、例えば150~300℃の温度で、1~48時間、より好ましくは3~24時間程度加熱する工程が挙げられる。
この二次架橋工程により、架橋を促進させたり、前記一次架橋工程後に未反応成分が残存していたとしても、該未反応成分を分解揮散させることができ、より放出ガス発生の少ない再生材を形成することができる。
【0069】
本再生材の製法では、プラズマ雰囲気下等において、再生材に生じ得るクラックをより容易に抑制できる等の点から、前記架橋工程の後、放射線を照射する工程(放射線照射工程)を行ってもよい。この放射線照射工程を経て得られる再生材は、放射線処理物であるといえる。
【0070】
前記放射線照射工程において照射する放射線としては特に制限されないが、例えば、X線、ガンマ線、電子線、陽子線、中性子線、重粒子線、アルファー線、ベータ線が挙げられ、これらの中でも、ガンマ線、電子線が好ましい。
照射する放射線は、1種単独でもよく、2種以上でもよい。
【0071】
放射線を照射する際には、吸収線量が、好ましくは1~120kGy、より好ましくは20~100kGyとなるように放射線を照射することが望ましい。このような量で放射線を照射すると、パーティクルや放出ガスとなり得る未反応成分を低減することができ、本再生品および未架橋パーフルオロ(共)重合体を過度に低分子量化せず、耐プラズマ性、耐クラック性等に優れる再生材を容易に形成することができる。
なお、前記放射線照射工程は、条件を変更して、2段階以上に分けて行ってもよい。
【0072】
放射線を照射する際には、空気中で照射してもよいが、放射線照射時に酸素が存在すると、架橋反応が阻害され、得られる再生材の機械的強度の低下や、得られる再生材の表面にベタツキが生じる恐れがある。このため、前記放射線照射工程は、窒素やアルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0073】
<再生材>
本再生材の製法で得られる再生材は特に制限されないが、例えば、種々の部材のガスケットやパッキンとして使用することができ、特に、半導体製造装置用シール材や、プラズマ処理装置用シール材、特に、プラズマ処理チャンバーユニットの開口部に使用されるゲートバルブをはじめとした駆動部用シール材として好適に使用することができる。
前記再生材としては、シール材が好ましく、該シール材としては、例えば、O-リング、角-リング、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベアリングシール、リップシールが挙げられる。
前記再生材の形状等は、用いる用途に応じて適宜選択すればよい。
【0074】
なお、前記半導体製造装置は、特に半導体を製造するための装置に限られるものではなく、広く、液晶パネルやプラズマパネル等を製造するための装置など、高度なクリーン度が要求される半導体分野において用いられる製造装置全般を含み、具体例としては、特許第5278312号公報等に記載の装置が挙げられる。
【0075】
前記再生材のJIS K 6253-2:2012に基づいて測定されたIRHDは、好ましくは45以上、より好ましくは50以上である。
前記再生材の下記実施例に記載の方法で測定された引張強さは、好ましくは7MPa以上、より好ましくは8MPa以上である。
前記再生材の下記実施例に記載の方法で測定された切断時伸びは、好ましくは120%以上、より好ましくは130%以上である。
前記再生材の下記実施例に記載の方法で測定された質量減少率は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下であり、その下限は特に制限されないが、例えば0%である。
【実施例】
【0076】
次に、本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
【0077】
<架橋パーフルオロ(共)重合体(被再生品)>
下記実施例および比較例で用いた架橋パーフルオロ(共)重合体(被再生品)は、以下の通りである。
・「架橋パーフルオロ(共)重合体-1」:パーフルオロエラストマー(PFE131T[3M社製]、架橋サイトがニトリル基であるパーフルオロ(共)重合体)100質量部と、オキサゾール系架橋剤(BOAP、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、東京化成工業(株)製)0.5質量部とを、オープンロールで混練後、得られた塊状のエラストマー組成物を、Oリング形状の金型に充填し、圧縮真空プレス機を用い、5MPaの加圧下、180℃で30分間プレス成形(一次架橋)し、次いで、プレス成形後のシートを、オーブン中、250℃で24時間加熱(二次架橋)することで製造された成形体(Oリング)(未使用または使用済み成形体に相当)。
・「架橋パーフルオロ(共)重合体-2」:パーフルオロエラストマー(テクノフロンPFR94[Solvay社製]、架橋サイトがハロゲン原子であるパーフルオロ(共)重合体)100質量部と、TAIC(三菱ケミカル(株)製、トリアリルイソシアヌレート)1質量部と、パーヘキサ25B(日油(株)製)0.5質量部とをオープンロールで混練後、得られた塊状のエラストマー組成物を、Oリング形状の金型に充填し、圧縮真空プレス機を用い、5MPaの加圧下、170℃で10分間プレス成形(一次架橋)し、次いで、プレス成形後のシートを、オーブン中、200℃で4時間加熱(二次架橋)することで製造された成形体(Oリング)(未使用または使用済み成形体に相当)。
【0078】
[実施例1]
架橋パーフルオロ(共)重合体-1(被再生品)を、ヤマト科学(株)製のKDF-75Plusに入れ、窒素雰囲気下、380℃、1気圧で1時間熱処理することで、再生パーフルオロ(共)重合体-1(再生品)を得た。
【0079】
[実施例2]
架橋パーフルオロ(共)重合体-1の代わりに架橋パーフルオロ(共)重合体-2(被再生品)を用いた以外は実施例1と同様にして、再生パーフルオロ(共)重合体-2(再生品)を得た。
【0080】
[実施例3]
架橋パーフルオロ(共)重合体-1(被再生品)を、ヤマト科学(株)製のKDF-75Plusに入れ、ヘリウムガス雰囲気下、370℃、1気圧で1時間熱処理することで、再生パーフルオロ(共)重合体-3(再生品)を得た。
【0081】
[実施例4]
架橋パーフルオロ(共)重合体-1(被再生品)を、ヤマト科学(株)製のKDF-75Plusに入れ、アルゴンガス雰囲気下、370℃、1気圧で1時間熱処理することで、再生パーフルオロ(共)重合体-4(再生品)を得た。
【0082】
[比較例1]
架橋パーフルオロ(共)重合体-1(被再生品)を、ヤマト科学(株)製のKDF-75Plusに入れ、空気中、380℃、1気圧で1時間熱処理することで、再生パーフルオロ(共)重合体-c1(再生品)を得た。
【0083】
[比較例2]
架橋パーフルオロ(共)重合体-1の代わりに架橋パーフルオロ(共)重合体-2(被再生品)を用いた以外は比較例1と同様にして、再生パーフルオロ(共)重合体-c2(再生品)を得た。
【0084】
<架橋サイトの含有量>
FT-IR(ブルカー社製、HYPERION3000)を用いて、分解能:4cm-1、スキャン数:32回、透過法、測定範囲:400~4000cm-1の条件で、前記架橋パーフルオロ(共)重合体(被再生品)および再生パーフルオロ(共)重合体(再生品)中の架橋サイトの含有量を測定した。結果を表1に示す。
具体的には、2230-2290cm-1の強度を結んでベースラインとした時の最大強度を、2200-2700cm-1の強度を結んでベースラインとした時の2500cm-1における強度で割った値を架橋サイト(ニトリル基)の含有量とした。但し、この計算結果(架橋サイト(ニトリル基)の含有量)が、0.01を下回った場合には、架橋サイト(ニトリル基)の含有量は、0.01とした。
【0085】
なお、下記表1の実施例2の欄では、架橋サイトの含有量は、「-」になっているが、実施例2では、下記式の右側の架橋サイト(C=C結合)の再生が十分に起こっていると考えられる。
【0086】
【0087】
<質量減少率>
前記実施例または比較例で用いた熱処理前の架橋パーフルオロ(共)重合体(被再生品)の質量を測定し、また、得られた再生パーフルオロ(共)重合体(再生品)の質量を測定した。
下記式により、質量減少率(%)を求めた。結果を表1に示す。
質量減少率(%)=[(被再生品の質量-再生品の質量)/被再生品の質量]×100
【0088】
【0089】
<未架橋パーフルオロ(共)重合体(バージン品)>
下記実施例および比較例で用いた未架橋パーフルオロ(共)重合体(バージン品)は、以下の通りである。
・「未架橋パーフルオロ(共)重合体-1」:PFE131T(3M社製)
・「未架橋パーフルオロ(共)重合体-2」:テクノフロンPFR94(Solvay社製)
【0090】
[実施例5]
60質量部の未架橋パーフルオロ(共)重合体-1(バージン品)と、40質量部の再生パーフルオロ(共)重合体-1(再生品)と、0.5質量部のオキサゾール系架橋剤(BOAP、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、東京化成工業(株)製)とを、オープンロールで混練することで塊状のエラストマー組成物を得た。
得られた塊状のエラストマー組成物を、Oリング形状の金型に充填し、圧縮真空プレス機を用い、5MPaの加圧下、180℃で30分間プレス成形(一次架橋)し、次いで、プレス成形後のシートを、オーブン中、250℃で24時間加熱(二次架橋)することで成形体(Oリング)を得た。
【0091】
[比較例3~4]
実施例5において、未架橋パーフルオロ(共)重合体および再生パーフルオロ(共)重合体として、表2に記載の種類および量(数値、質量部)の(共)重合体を用いた以外は、実施例5と同様にして、成形体を得た。
【0092】
[実施例6]
60質量部の未架橋パーフルオロ(共)重合体-2(バージン品)と、40質量部の再生パーフルオロ(共)重合体-2(再生品)と、10質量部のPTFE粒子(ルブロンL5(ダイキン工業(株)製))と、0.5質量部のパーヘキサ25B(日油(株)製)と、1質量部のTAIC(トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル(株)製)とを、オープンロールで混練することで塊状のエラストマー組成物を得た。
得られた塊状のエラストマー組成物を、Oリング形状の金型に充填し、圧縮真空プレス機を用い、5MPaの加圧下、170℃で10分間プレス成形(一次架橋)し、次いで、プレス成形後のシートを、オーブン中、200℃で4時間加熱(二次架橋)することで成形体(Oリング)を得た。
【0093】
[比較例5~6]
実施例6において、未架橋パーフルオロ(共)重合体および再生パーフルオロ(共)重合体として、表2に記載の種類および量(数値、質量部)の(共)重合体を用いた以外は、実施例6と同様にして、成形体を得た。
【0094】
<IRHD>
JIS K 6253-2:2012に従い、IRHD硬度測定装置により、23℃において、得られた成形体の硬度を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
<引張強さおよび切断時伸び>
得られた成形体(Oリング)を、500mm/分で引張し、23℃において、引張強さおよび切断時伸びを、ショッパー式引張試験機を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0096】
<圧縮永久ひずみ>
JIS K 6262:2013に準拠してシール材の圧縮永久ひずみを求めた。
得られた成形体を、200℃×72時間、圧縮率25%で保持した後、圧力を解放し、試験室の標準温度で30分間放冷した後に、成形体の厚みを測定した。
また、得られた成形体を、260℃×72時間、圧縮率20%で保持した後、圧力を解放し、試験室の標準温度で30分間放冷した後に、成形体の厚みを測定した。
圧縮永久ひずみ率(Compression Set、CS)は下記式に基づいて算出した。結果を表2に示す。
圧縮永久ひずみ率(%)={(h0-h1)/(h0-h2)}×100
[h0:圧縮する前の成形体の厚み(mm)、h1:30分間放冷後の成形体の厚み(mm)、h2:スペーサーの厚み(高さ)(mm)]
【0097】
<質量減少率(耐プラズマ性)>
得られた成形体について、耐プラズマ性(質量減少率)を測定した。具体的には以下の通り測定した。結果を表2に示す。
下記条件で、リモートプラズマによってNF3から発生させたフッ素ラジカルに、得られた成形体(Oリング)を暴露させる、フッ素ラジカル暴露試験を行った。試験前後の成形体(Oリング)の質量を測定し、下記式に従って質量減少率を求めることで、耐プラズマ性を評価した。質量減少率が小さいほど耐プラズマ性に優れるといえる。
質量減少率(%)={(試験前の質量-試験後の質量)/(試験前の質量)}×100
【0098】
(条件)
・プラズマソース(プラズマ源):リモートプラズマソース
・プラズマ出力:5000W
・ガス流量:NF3;1.5SLM、アルゴン;1.5SLM
・真空度:7torr
・試験温度:250℃
・試験時間:5時間
【0099】
【0100】
実施例5では、バージン品のみを用いた比較例4と同様のIRHDおよび切断時伸びを有する成形体を得ることができ、比較例3に比べ圧縮永久ひずみが小さく、耐プラズマ性に優れる(質量減少率が少ない)成形体を得ることができた。
また、実施例6では、バージン品のみを用いた比較例6と同様のIRHDおよび引張強さを有する成形体を得ることができ、比較例5に比べ、200℃×72時間、圧縮率25%で保持した際の圧縮永久ひずみが小さく、耐プラズマ性に優れる(質量減少率が少ない)成形体を得ることができた。
【要約】
【課題】架橋した架橋パーフルオロ(共)重合体の架橋サイトを再生する再生パーフルオロ(共)重合体を製造する方法であって、該架橋サイトを再生する際のパーフルオロ(共)重合体の質量減少を抑制しつつ、簡便な方法で十分に架橋サイトを再生することができる、再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】架橋サイトを有するパーフルオロ(共)重合体が架橋した架橋パーフルオロ(共)重合体を、不活性ガス雰囲気下で熱処理することで、前記架橋サイトを再生する工程を含む、再生パーフルオロ(共)重合体の製造方法。
【選択図】なし