(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】人数推定装置および人数推定方法
(51)【国際特許分類】
H04B 17/318 20150101AFI20241028BHJP
【FI】
H04B17/318
(21)【出願番号】P 2021051643
(22)【出願日】2021-03-25
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】大塚 信也
(72)【発明者】
【氏名】池永 全志
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 徹
(72)【発明者】
【氏名】ツシンバヤル バンディ
(72)【発明者】
【氏名】福本 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】野林 大起
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-117075(JP,A)
【文献】特開2000-295167(JP,A)
【文献】特開2017-037476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯無線端末機器における遠距離通信用の周波数帯域であり、前記携帯無線端末機器が使用するアップリンク用の周波数帯域の無線信号を受信する電波受信部と、
前記電波受信部が受信した無線信号の周波数に対する信号強度の時間的変化を解析する時間周波数解析部と、
前記時間周波数解析部での解析結果に基づいて所定時間ごとの信号強度を積算して積算値を算出する積算部、および前記携帯無線端末機器を携行する人数を、電波人数特性に基づき信号強度に対する人数を推定する推定部を有する解析評価部とを備えた人数推定装置。
【請求項2】
所定時間にて測定された積算値と、この所定時間にて計数された前記携帯無線端末機器を携行する人数とから求められた前記電波人数特性を格納する記憶部を備えた請求項1記載の人数推定装置。
【請求項3】
前記解析評価部は、前記時間周波数解析部での解析結果を示すデータをグレースケール画像に変換する画像処理部であり、測定対象の周波数帯域について、所定周波数間隔の信号強度に対応させた階調のピクセルを一列に並べた一次元データを所定時間ごとに時間方向に並べたグレースケール画像に変換する画像処理部を備え、
前記積算部は、前記グレースケール画像に基づいて、積算値を演算する請求項1または2記載の人数推定装置。
【請求項4】
前記電波受信部は、複数の周波数帯域から無線信号を受信するものであり、
前記解析評価部は、前記複数の周波数帯域に対応する積算値を合算して人数を推定する請求項1から3のいずれかの項に記載の人数推定装置。
【請求項5】
前記解析評価部は、前記時間周波数解析部での解析結果を示すデータのパターンに応じて積算値を補正する補正部を備えた請求項1から4のいずれかの項に記載の人数推定装置。
【請求項6】
前記解析評価部は、環境情報として入力された調査場所に関する環境条件に基づいて、人数を近似するための近似式を選択する選択部を備えた請求項1から5のいずれかの項に記載の人数推定装置。
【請求項7】
前記解析評価部は、前記推定部により推定された人数を、所定人数ごとの人数に変更する結果処理部を備えた請求項1から6のいずれかの項に記載の人数推定装置。
【請求項8】
前記解析評価部は、前記積算部が算出した積算値が所定値より大きいことを報知する報知部を備えた請求項1から7のいずれかの項に記載の人数推定装置。
【請求項9】
前記積算部は、前記携帯無線端末機器と通信する通信会社ごとに割り当てられた周波数帯域ごとに積算値を算出する請求項8記載の人数推定装置。
【請求項10】
前記解析評価部は、前記推定部が人の存在を検知したことを報知する報知部を備えた請求項1から9のいずれかの項に記載の人数推定装置。
【請求項11】
電波受信部が、携帯無線端末機器における遠距離通信用の周波数帯域であり、前記携帯無線端末機器が使用するアップリンク用の周波数帯域の無線信号を受信して、時間周波数解析部が、周波数に対する信号強度の時間的変化を解析するステップと、
前記時間周波数解析部での解析結果に基づいて所定時間ごとの信号強度を、積算部が積算して積算値を算出するステップと、
前記携帯無線端末機器を携行する人数を、推定部が電波人数特性に基づき信号強度に対する人数を推定するステップとを含む人数推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信する携帯無線端末機器を携行する人数を推定する人数推定装置および人数推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラ等で撮影した画像から視覚的に人数を計数することができる。しかし、プライバシー保護の観点からは個人が特定できる画像での評価は問題がある。
そこで、大半の人が携行する携帯無線端末機器(携帯電話機)が基地局と通信することから、基地局側で得られた情報から人数を推定するサービスが知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1に記載のサービスでは、NTTドコモ社が運営する通信サービスを利用する携帯端末装置と基地局との通信により、「性別」「年代」「居住エリア」「国・地域」などの切り口から人口を分析したり、エリアの特徴(分布)や人々の動き(移動)を、時間帯ごと(推移)に継続して把握したりできる、統計的データを提供するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】’モバイル空間統計|位置情報などのビッグデータを利用した人口統計情報’,[online],株式会社NTTドコモ,[令和3年3月5日検索],インターネット <URL:https://www.nttdocomo.co.jp/utility/privacy/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載のサービスでは、基地局との通信に基づいて人数を推定するため、迅速に、かつ正確に把握することができる。
しかし、非特許文献1に記載のサービスでは、サービスを提供する特定の携帯電話会社を利用する携帯無線端末機器しか計数することができない。また、基地局との通信は、携帯無線端末機器を特定する情報が含まれており、携帯無線端末機器が特定できれば、携帯無線端末機器を携行する所有者の国籍、性別、年齢などの個人情報も特定できる。そのため、通信の秘密という観点から、また、プライバシー保護の観点から問題がある。
【0006】
そこで本発明は、プライバシーや通信の秘密を保持しつつ、時間毎の人数を評価することで、人の流れや滞留状況を評価できる人数推定装置および人数推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の人数推定装置は、携帯無線端末機器における遠距離通信用の周波数帯域であり、前記携帯無線端末機器が使用するアップリンク用の周波数帯域の無線信号を受信する電波受信部と、前記電波受信部が受信した無線信号の周波数に対する信号強度の時間的変化を解析する時間周波数解析部と、前記時間周波数解析部での解析結果に基づいて所定時間ごとの信号強度を積算して積算値を算出する積算部、および前記携帯無線端末機器を携行する人数を、電波人数特性に基づき信号強度に対する人数を推定する推定部を有する解析評価部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の人数推定装置は、電波受信部が、携帯無線端末機器における遠距離通信用の周波数帯域であり、前記携帯無線端末機器が使用するアップリンク用の周波数帯域の無線信号を受信して、時間周波数解析部が、周波数に対する信号強度の時間的変化を解析するステップと、前記時間周波数解析部での解析結果に基づいて所定時間ごとの信号強度を、積算部が積算して積算値を算出するステップと、前記携帯無線端末機器を携行する人数を、推定部が電波人数特性に基づき信号強度に対する人数を推定するステップとを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、電波受信部が、携帯無線端末機器が使用するアップリンク用の周波数帯域の無線信号を受信し、時間周波数解析部が、周波数に対する信号強度の時間的変化を解析すると、解析評価部の積算部が、時間周波数解析部での解析結果に基づいて所定時間ごとの信号強度を積算して積算値を算出し、推定部が、携帯無線端末機器を携行する人数を、電波人数特性に基づいて推定する。無線信号の信号強度に基づいて人数を把握するため、時間ごとに人数を評価しても携帯無線端末機器を携行する個人が特定されない。
【0010】
所定時間にて測定された積算値と、この所定時間にて計数された前記携帯無線端末機器を携行する人数とから求められた前記近似式を格納する記憶部を備えたものとすることができる。
所定時間にて測定された積算値と、この所定時間にて計数された携帯無線端末機器を携行する人数とから求められた近似式であり、記憶部に格納された近似式により、無線信号の信号強度に基づいて人数を把握することができる。
【0011】
前記解析評価部は、前記時間周波数解析部での解析結果を示すデータをグレースケール画像に変換する画像処理部であり、測定対象の周波数帯域について、所定周波数間隔の信号強度に対応させた階調のピクセルを一列に並べた一次元データを所定時間ごとに時間方向に並べたグレースケール画像に変換する画像処理部を備え、前記積算部は、前記グレースケール画像に基づいて、積算値を演算するものとすることができる。
解析結果を示すデータをグレースケール画像とすることで、データ量を抑えることにより高速に処理することができるので、データ抜けを防止することができる。
【0012】
前記電波受信部は、複数の周波数帯域から無線信号を受信するものであり、前記解析評価部は、前記複数の周波数帯域に対応する積算値を合算して人数を推定するものとすることができる。
そうすることで、電波受信部が、様々な周波数帯域を使用している携帯無線端末機器からの無線信号を受信して、解析評価部が複数の周波数帯域に対応する積算値を合算することができるので、測定範囲の様々な周波数帯域を使用する携帯無線端末機器を網羅して人数の精度を高めることができる。
【0013】
前記解析評価部は、前記時間周波数解析部での解析結果を示すデータのパターンに応じて積算値を補正する補正部を備えたものとすることができる。補正部が、解析結果を示すデータのパターンによって変わる信号強度に応じた補正値に基づいて積算値を補正することで、推定される人数の精度を高めることができる。
【0014】
前記解析評価部は、環境情報として入力された調査場所に関する環境条件に基づいて、人数を近似するための近似式を選択する選択部を備えたものとすることができる。
選択部が、環境条件(環境情報)から近似式を選択するので、推定部は調査場所に応じた最適な近似式により、人数を推定することができる。
【0015】
前記解析評価部は、前記推定部により推定された人数を、所定人数ごとの人数に変更する結果処理部を備えたものとすることができる。推定された人数が一人であっても、携帯無線端末機器を携行する者が特定されてしまうことを抑止することができる。
【0016】
前記解析評価部は、前記積算部が算出した積算値が所定値より大きいことを報知する報知部を備えたものとすることができる。積算部が算出した積算値が所定値より大きいことは、測定範囲が混雑している状況であることを示している。従って、報知部が、混雑状況を報知することで、蜜となる状況に警告を発することができる。また、周波数帯域の混雑状況も把握するこができる。
【0017】
前記積算部は、前記携帯無線端末機器と通信する通信会社ごとに割り当てられた周波数帯域ごとに積算値を算出するものとすることができる。このように所定に割り当てられた周波数帯域ごとに積算値を算出し、報知部が、積算値が所定値より大きいことを報知することで、報知部を備えたものとすることができる。そうすることで、携帯無線端末機器が通信する通信周波数帯の混雑度合いを把握することができる。
【0018】
前記解析評価部は、前記推定部が人の存在を検知したことを報知する報知部を備えたものとすることができる。測定範囲が、そもそも携帯無線端末機器の使用が禁止されているものであれば、報知部が人の存在を検知したことを報知するため、携帯無線端末機器の使用を禁止させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、時間ごとに人数を評価しても携帯無線端末機器を携行する個人が特定されないので、プライバシーや通信の秘密を保持しつつ、時間毎の人数を評価することで、人の流れや滞留状況を評価、把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係る人数推定装置を示す図である。
【
図2】
図1に示す人数推定装置が動作する人数推定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】アップリンクの周波数帯域を説明するための図である。
【
図4】
図3に示す周波数帯域のスペクトルデータであるカラー画像を説明するための図である。
【
図5】測定画像から数値化された測定データに変換するまでを示すフローチャートである。
【
図6】測定画像から数値化された測定データに変換するまでの流れを画像によって説明するための図である。
【
図7】スペクトルデータを示す図であり、(A)は通話状態のスペクトルデータ。(B)は、待ち受け時(アイドル状態)のスペクトルデータであり、(C)はインターネットを介して動画サイトをアクセスしているときのスペクトルデータである。
【
図8】横軸に人数、縦軸に信号強度の積算値としたグラフである。
【
図9】(A)は横軸に時間、縦軸に信号強度の積算値および人数としたグラフであり、測定された信号強度の積算値と、計数された人数との関係を示すグラフ、(B)は(A)による信号強度の積算値と、計数された人数とから得られる近似線を示すグラフである。
【
図10】(A)は小倉駅1階での人数を推定したグラフ、(B)は小倉駅2階での人数を推定したグラフ、(C)小倉駅3階での人数を推定したグラフ、(D)はスペースワールド駅での人数を推定したグラフである。
【
図11】
図10(A)~同図(D)の推定された人数と計数された人数を比較するためのグラフである。
【
図12】遠距離通信により推定された人数と近距離通信により推定された人数との関係を説明するためのグラフである。
【
図13】
図1に示す人数推定装置の変形例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態に係る人数推定装置を図面に基づいて説明する。
図1に示す人数推定装置1は、携帯無線端末機器と通信する通信会社、例えば、携帯電話会社(キャリア)が設置した基地局等と無線通信する携帯無線端末機器における遠距離通信用の周波数帯域であり、携帯無線端末機器が使用するアップリンク用の周波数帯域の無線信号を受信して、その周波数帯域の強度(スペクトラム強度)の時間変化特性を解析評価することで人数を評価、把握するものである。
この遠距離通信とは、LTE(Long Term Evolution)や4G、5G、それ以降の通信規格で通信するものを指す。
【0022】
(人数推定装置の構成の説明)
人数推定装置1は、電波受信部10と、時間周波数解析部20と、解析評価部30と、記憶部40と、入力部50と、表示部60と、人数線生成部70と、近距離通信用処理部80とを備えている。
【0023】
電波受信部10は、携帯無線端末機器が使用するアップリンク用の周波数帯域の無線信号をアンテナにより受信する。電波受信部10は、測定対象の周波数帯域の数に応じた数(第1電波受信部10-1から第n電波受信部10-n)が設けられている。
【0024】
周波数帯域は、例えば、
図3に示すように、バンド1には718MHz~748MHzが含まれる。バンド2には、815MHz~845MHzと900MHz~915MHzが含まれる。バンド3には、1428MHz~1463MHzが含まれる。バンド4には、1710MHzから1785MHzが含まれる。バンド5には、1920MHz~1980MHzが含まれる。測定対象となる周波数帯域は、これらの5つのバンドである。
従って、電波受信部10は、各バンドに対応するように5つ設けられている。
【0025】
時間周波数解析部20は、電波受信部10からのアンテナ信号の周波数に対する信号強度の時間的変化を解析して、スペクトルデータとして出力する。
【0026】
解析評価部30は、画像処理部31と、積算部32と、補正部33と、選択部34と、推定部35と、結果処理部36と、報知部37とを備えている。
画像処理部31は、スペクトルデータを、周波数ごとの信号強度に対応させた階調のピクセルを周波数ごとに一列に並べた一次元データを時間経過と共に時間方向に並べたグレースケール画像に変換する。
積算部32は、電波受信部10から、または画像処理部31からのスペクトルデータに基づいて所定時間ごとの信号強度を積算して積算値を算出する。
【0027】
補正部33は、スペクトルデータのパターンに応じて積算値を補正する。
選択部34は、操作者が測定場所の環境に基づいて、複数用意された近似式の中から入力部50を操作して選択された近似式を、推定部35にして使用される近似式に指定する。
推定部35は、信号強度に対する人数を電波人数特性に基づき携帯無線端末機器を携行する人数を推定する。また、推定部35は、信号強度の積算値が得られなかった時間の人数を、近距離通信用処理部80からの人数により補う。
結果処理部36は、推定部35により推定された人数を、所定人数ごとの人数に変更する。この所定人数は、記憶部40に格納された設定(単位人数)により決定される。
報知部37は、積算部32が算出した積算値が所定値より大きいことを報知する。
【0028】
記憶部40は、測定対象となる周波数帯域、測定時間間隔、スペクトルデータ、画像データ、環境別の近似式、通信種別別のスペクトルのパターンデータ、補正値、単位人数などが格納される。
入力部50は、操作者が操作してデータを入力するものであり、キーボードやマウス、タッチパネルとすることができる。
表示部60は、人数推定装置1を操作するための画面や、測定結果などを表示するための画面であり、LCDや有機ELディスプレイなどとすることができる。
【0029】
近距離通信用処理部80は、近距離通信用の無線通信に使用される無線信号を使用して人数を推定するものである。近距離通信は、例えば、WiFi(登録商標)とすることができる。
【0030】
(人数推定装置の動作および使用状態の説明)
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る人数推定装置の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。
まず、操作者は、入力部50を操作して、
図1に示す解析評価部30の選択部34が、表示部60に表示した入力画面に基づいて、調査場所に関する環境条件を環境情報として入力する(
図2に示すステップS10参照)。
環境情報は、例えば、「壁と天井に囲まれた空間である」、「開放された空間である」などのメニューから選択したり、場所の広さ、壁の有無、天井の有無、柱の有無、電波が反射しやすさの目安になる建築材料の種類などとしたりすることができる。
【0031】
選択部34は、操作者により選択された環境情報に応じた近似式を記憶部40から読み込み推定部35に通知する。例えば、調査場所が開放された空間と、調査場所が閉鎖された空間とでは、壁や天井あるいは柱などの建物は電波経路上の障害物となりうるため、信号強度が影響を受ける。そのため、開放された空間と閉鎖された空間との違いを考慮する必要がある。そこで、環境情報に基づいて近似式を選択することで、人数の推定精度を向上させることができる。この近似式については、後述する。
【0032】
次に、
図1に示す電波受信部10が、記憶部40に設定された周波数帯域および測定時間間隔に基づいて、第1電波受信部10-1から第n電波受信部10-nに対応したバンド1からバンド5による周波数帯域ごとに無線信号を受信する(ステップS20参照)。
電波受信部10が、様々な周波数帯域を使用している携帯無線端末機器からの無線信号を受信するので、測定範囲の携帯無線端末機器を網羅して人数の精度を高めることができる。
【0033】
そして、時間周波数解析部20が、電波受信部10が受信した無線信号(アンテナ信号)の信号強度を所定時間ごとに測定して、スペクトルデータとして出力する(ステップS30参照)。本実施の形態では、時間周波数解析部20が、各バンドの中から40MHzを測定対象の周波数帯域として選択して測定している。
【0034】
図3および
図4に示すように、例えば、バンド1では、718MHz~748MHzのうち、710MHzから750MHzを対象としている。バンド2では、815MHz~845MHzと900MHz~915MHzとのうち、810MHzから850MHzを対象としている。バンド3では、1428MHz~1463MHzのうち、1425MHzから1465MHzを対象としている。バンド4では、1710MHzから1785MHzのうち、1745MHzから1785MHzを対象としている。更に、バンド5では、1920MHz~1980MHzのうち、1920MHz~1960MHzを対象としている。
【0035】
この測定対象の周波数帯域の幅は、時間周波数解析部20の性能に応じて適宜変更することができるが、バンドに含まれる周波数全部をカバーするのが、正確性が向上するので望ましい。
【0036】
電波受信部10は、測定対象の周波数帯域について、所定周波数間隔の信号強度を示す数値データを、所定時間ごとにスペクトルデータとして出力する第1モードを有する。また、電波受信部10は、測定対象の周波数帯域について、所定周波数間隔の信号強度に対応させた色相のピクセルを一列に並べた一次元データを所定時間ごとに時間方向に並べた色画像にして、スペクトルデータとして出力する第2モードを有する。
色画像は、例えば、信号強度が低い方から高い方へ向けて、青色から緑色、そして赤色へと連続的に変化させたカラー画像の他、単色画像がある。
【0037】
本実施の形態では、電波受信部10は第2モードのカラー画像を測定画像として出力するように設定されている。電波受信部10は測定画像を記憶部40に格納する。測定画像は、例えば、縦方向(縦ピクセル)が時間、横方向(横ピクセル)が周波数を示す矩形状の画像である。なお、電波受信部10から出力される第2モードによる画像は、所定時間分の静止画像でも、連続的に出力される動画を所定時間分切り取った静止画像でもよい。
【0038】
画像処理部31は、記憶部40から、測定画像を取り出す(
図5のステップS110参照)。
次に、測定画像の縦ピクセル位置の時間に対応する横ピクセル位置の周波数を数値化する(ステップS120参照)。また、ピクセルの階調を信号強度として数値化する(ステップS130参照)。そして、時間および周波数に関連付け、記憶部40に格納する(ステップS140参照)。
【0039】
具体的には、まず、電波受信部10からスペクトルデータとして出力された、
図6に示すカラー画像P1の各ピクセルを、色相(信号強度)に対応させた階調に変換してグレースケール画像P2とする。そうすることで、所定周波数間隔の信号強度に対応させた階調のピクセルを一列に並べた一次元データを、所定時間ごとに時間方向に並べたグレースケール画像P3が得られる。
【0040】
画像処理部31は、グレースケール画像を、圧縮された画像ファイル形式により記憶部40に格納する。例えば、PNG形式、TIFF形式、GIF形式、SVG形式などのファイル形式とすることができるが、本実施の形態では、高画質で圧縮率が高いJPEG形式のグレースケール画像としており、階調は8bitの256段階であり、10分間のスペクトルデータをグレースケール画像に変換する。
そして、電波受信部10は、時間ごとの周波数に対応するピクセルの階調を示す信号強度を、数値化された測定データD1(
図6参照)として記憶部40に格納する。
【0041】
第1モードでは、測定時間に応じた処理時間が掛かる。例えば、周波数帯域40MHzを0.434μsごとに測定すると、測定時間50msに対してデータの処理時間に600msが掛かる。従って、時間軸で測定時間50msと処理時間600msとが交互に繰り返す測定によるデータの取得が可能である。また、1分で500MB、10分では5GBのデータ容量となる。
第1モードに比して第2モードでは画像として測定していくことで25msの時間幅での測定となるが連続して測定でき、データ容量も小さくでき、1分間で4MB、10分では40MBのデータ量となる。そのため、データ量の大幅な縮小を図ることができつつ、データ抜けも防止することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、画像処理部31がデータ量の圧縮、処理時間の短縮を行っている。しかし、積算部32は、時間周波数解析部20から、直接、第1モードにより所定時間ごとにスペクトルデータとして出力された数値データを処理するようにしてもよい。積算部32が、時間周波数解析部20から第1モードにより数値データを入力することにより、画像処理部31による画像への変換が不要である。
【0043】
次に、積算部32は、数値データである測定データを記憶部40から読み込み、測定データに基づいて所定時間ごとの信号強度を積算して積算値を算出する。または、画像データとなった測定データを記憶部40から読み込み、信号強度を示す階調を積算して積算値を算出する(
図2のステップS50参照)。本実施の形態では、積算部32は、10分間の測定データを1分間分ずつ区切って読み込み信号強度を積算している。また、積算部32は、複数の周波数帯域(バンド1からバンド5)の信号強度の積算値を合算する。
そうすることで、測定範囲の様々な周波数帯域を使用する携帯無線端末機器を網羅して人数の精度を高めることができる。
【0044】
補正部33は、画像処理部31が生成した測定画像(グレースケール画像)を調査対象パターンとして、この調査対象パターンに基づいて、記憶部40に格納された通信種別ごとのスペクトルのパターンデータを参照パターンとして参照して、調査対象パターンに近似するパターンデータを選択して、このパターンデータに関連付けられた補正値を記憶部40から読み出す。
【0045】
例えば、
図7(A)では、通話状態のときに測定されたスペクトルデータである。
図7(B)では、待ち受け時(アイドル状態)のときに測定されたスペクトルデータである。
図7(C)では、インターネットを介して動画サイトをアクセスしているときに測定されたスペクトルデータである。このように、携帯無線端末機器の通信状態によってスペクトルデータが異なる。
【0046】
図7(A)における通話を示すスペクトルデータでは、輪郭がはっきりしないことから周波数が幅広く分散した電波であり、スペクトルの輝度が低いことから信号強度が弱い電波であることが判る。
図7(B)および同図(C)におけるデータ通信を示すスペクトルデータでは、輪郭がはっきりした矩形状の周波数帯域を使用しており、スペクトルの輝度が高いことから信号強度が高いことが判る。
【0047】
このような、
図7(B)および同図(C)に示すデータ通信の信号強度のパターンでは、信号強度の積算値を算出したときに高く評価される傾向にある。従って、補正部33は、積算値が高く評価されるパターンに、調査対象パターンが属すると判定したときには、補正値により積算値を減算し、積算値が低く評価されるパターンのときには補正値を積算値に加算する。補正部33は、補正された積算値を記憶部40に格納する。このように、測定画像(スペクトルデータ)のパターンによって変わる信号強度に応じた補正値に基づいて積算値を補正することで、推定される人数の精度を高めることができる(ステップS60参照)。
【0048】
また、この測定画像と参照パターンとの比較については、例えば、測定画像を学習して構築した深層学習モデルを設け、このモデルを参照パターンとして、この参照パターンに基づいて測定画像との一致を評価することも可能である。
なお、この補正部33は、時間周波数解析部20から第1モードにより入力した数値データを調査対象パターンとすることもできる。この場合、参照パターンも第1モードに対応する数値データとすることで、調査対象パターンに近似する参照パターンを選択することができる。
また、本実施の形態では、積算部32が算出した積算値を補正部33により補正しているが、積算部32が算出した積算値をそのまま推定部35に出力するようにしてもよい。
【0049】
次に、推定部35は、記憶部40から積算値を読み出し、近似式による電波人数特性を示し、想定される人数を表す線(以下、人数線と称す。)に基づいて人数を推定する(ステップS70参照)。
【0050】
ここで、上記の電波人数特性について詳細に説明する。
事前に、特定の場所(以下、「調査場所」とも称する)にて、携帯無線端末機器のアップリンク用の周波数帯域の無線信号を測定して、所定時間ごとの信号強度の積算値を算出する。この積算値の算出は、
図2に示すステップS20からステップS50までの処理によるものである。そして、同時に、無線信号の測定範囲における人数を計数する。
このようにして得られた信号強度の積算値と人数によりグラフを描画する。
【0051】
予め生成される上記の電波人数特性に関しては、信号強度を計測する上記特定の場所における人の流れ(人流)と、空間における壁や柱等の、建物の配置に影響する。上記特定の場所を含め、一般に、調査するエリア(場所)には、人がその場所に入ってくる位置(以下、「入口」とも称する)と出ていく位置(以下、「出口」とも称する)が存在し、その夫々の位置を中心としてある一定の人流が生じる。その際、1つの電波が携帯無線端末機器ごとに発信されているため、その信号強度を積算することでその場所に存在する人流を推定することが可能になる。また、一方、信号強度を形成する電磁波には、直達波やその空間に存在する建造物による反射波や回折波が含まれるため、計測される信号強度への影響が考えられる。
【0052】
この影響に関して、発明者のこれまでの鋭意研究の成果に基づき電磁波の挙動を考慮し、本発明では、反射波や回折波の影響が小さくなるように計測を行っている。つまり、このような電磁波の挙動は信号強度が計測される時間に比べ、非常に短時間で生じるものであり、また通常、反射や回折により減衰しそのレベルは対数的に変化する。そのため、計測されるデータにはこれらの電磁波による信号強度が含まれるが、直接、受信される電波(例えば、直達波)による信号強度が支配的であると推定している。そこで本発明では、主に、調査場所における人流を把握することで、電波人数特性を設定することが可能となり、携帯無線端末機器毎の1つの電波を捉えることができる。
【0053】
また直接、受信される電波への、障害物となりうる上記の建物の影響や、電波を受信する距離の影響については、得られた計測結果に基づく解析・分析により補正係数等を定め設定することが可能である。これにより電波人流特性がその特性を得たある特定の場所にのみ適用されるものに限らず、例えば、後述するように、調査場所の人流の状態と、建物の配置を入力することで近似式を補正して汎用性の高い特性とすることが可能である。
または、その特定の場所における推定精度を高めるために、調査場所における様々な位置にて電波人数特性を得て、最も推定精度が高くなる位置を見つけてセンサを配置することも可能である。
【0054】
近似式について説明する。例えば、
図8には、横軸に人数、縦軸に信号強度の積算値としたグラフ上に人数と信号強度との関係を示す近似線を描く近似式を示す。
この近似式については、前述したように、主に、特定の場所における人流と建物の配置を考慮して設定しており、予め、記憶部40に格納されている。
【0055】
この近似式は、一次式や二次関数などのn次関数とすることができ、いくつかの近似式を組み合わせて設定することができる。
例えば、人数が多いと信号強度の積算値が飽和曲線を描くため、人数が少ない範囲を一次式、人数が多い範囲を累乗式とすることが可能である。
このような近似式により近似線が電波人数特性を示す人数線となる。
【0056】
また、このような近似式を、人数線生成部70を設け、生成することも可能である。例えば、
図1に示す電波受信部10と、時間周波数解析部20と、解析評価部30とにより無線信号を測定しながら、操作者が計測した人数とその調査場所での、人流を生じさせる入口・出口等の配置(以下「人流条件」という。)と信号強度に影響する、壁や柱等の建物の配置(「配置条件」という。)を入力部50により入力し、後述する補正値で補正することで、人数線生成部70が電波人数特性を示す人数線を得ることより近似式を求めることができる。
その他の方法としてこの近似式は、様々な測定場所での近似式を学習して構築した深層学習モデルに基づいて評価して、求めることもができる。
【0057】
人数線生成部70は、場所の属性(環境情報)と共に、近似式及び、これら近似式をベースとして調査する場所の近似式を、補正により推定する補正値を記憶部40に格納する。場所の属性(環境情報)は、例えば、格納する近似式の人流条件、配置条件、調査場所が開放された空間と、調査場所が閉鎖された空間となどを定義するものである。
【0058】
推定部35は、信号強度の積算値と電波人数特定とから人数を推定する(ステップS70参照)。この電波人数特定について、
図2に示すステップS10にて、
図1に示す選択部34が、環境条件(環境情報)から近似式を選択しているので、推定部35は調査場所に応じた最適な近似式により、人数を推定することができる。
【0059】
人数を推定することができれば、時間ごとの、携帯無線端末機器からの信号強度を計測することで時間帯ごとの人出の増減を計測したり、複数箇所で人数を計測することで人の移動や滞留を計測したりすることができる。
【0060】
ここで、実施例を
図9に基づいて説明する。実施例では、小倉駅の1階にて測定した信号強度の積算値と、計数した人数とを比較した。
図9(A)に示すように、信号強度の積算値を示す折れ線L1と、計数した人数を示す折れ線L2とは、同じ傾向にあり、相関関係があることが判る。
そこで、
図9(A)に示すグラフに基づいて、
図9(B)に示すように、横軸に人数とし、縦軸に信号強度としたグラフに、信号強度の積算値と信号強度を測定した時間に計数した人数をプロットした。
このグラフの各点から最小二乗法により近似線L3(電波人数特性を示す人数線)を描き、この近似線L3を示す近似式を得た。
【0061】
このようにして得た近似線を示す近似式を用いて、複数箇所の信号強度を測定して、この信号強度の積算値に基づいて人数を推定した。測定箇所は、小倉駅と、スペースワールド駅である。
本実施例では、
図1に示す積算部32から補正部33による補正を行わずに推定部35により人数の推定を行った。また、信号強度を2回測定した。更に、比較のために人数を目視により計数した。人数は、目視で人を確認しながら数取器(度数計)により計数した。
なお、各箇所においても、
図9(A)および同図(B)にて説明したように、予め信号強度を測定して近似線を示す近似式を得ており、この近似式に基づいて人数を推定した。
【0062】
結果を
図10(A)から同図(D)と、
図11とに示す。
図10(A)は、小倉駅の1階の改札口付近である。
図10(B)は、小倉駅の2階(ペデストリアンデッキ)である。
図10(C)は、小倉駅の3階の改札口付近である。
図10(D)は、スペースワールド駅の改札口付近である。
【0063】
図11は、
図10(A)~同図(D)の結果をまとめたもので、棒グラフの高さが、2回信号強度を測定したことで推定された人数の平均値、エラーバーの上端が最大値、エラーバーの下端が最小値である。
図11からも判るように、2回の計測の平均値はほぼ近い値であると共に、最大値と最小値においても大きくずれることなく人数が推定されていることが判る。
これらの結果から、信号強度の積算値は、携帯電話機などの携帯無線端末機器を携行する人数を推定できることが判る。
【0064】
また、
図10(A)~同図(C)から、小倉駅はフロアーにより人流が異なることが判る。例えば、小倉駅の3階と2階は人数が多いが、2階はほぼ一定で変化が少ない人流に対して3階はピークの人数(最大人数)が多く、最大と最小の差、すなわち人流の変化が大きい。1階は3階と2階とに比べて相対的に人数は少ないが、最大と最小の差、すなわち人流の変化は3階と同様に大きい。
【0065】
これは、小倉駅3階と1階、およびスベースワールド駅では改札口付近で測定しているため列車の発着に対応して人流のピークが現れており、小倉駅2階は駅との連絡だけでなく商業施設や商店街との連絡通路でもあるため、列車の発着と無関係に人の行き来が行われていたと思われる。また、小倉駅3階は、在来線だけでなく新幹線の改札とも繋がっており、モノレールの改札口もあるため、在来線の改札しかない1階と人数が異なっていたと思われる。
また、
図10(D)から、スペースワールド駅は人数が少なく、人通りがない時間が存在することや、最大人数と最小人数の差、すなわち人流の変化が小さいことが判る。
このように時系列的に人数を推定することで、場所ごとに(特有の)人流の変化や方向なども判別することができる。
【0066】
このようにして、推定部35が電波人数特性から人数を推定すると表示部60に結果表示する。このとき、結果処理部36が、推定部35により推定された人数を、所定人数ごとの人数に変更する。例えば、5人ごとであれば、1人~5人は5人、6人から10人は10人とすることができる。
そうすることで、人数が1人のときでも、5人とカウントされるため、そこにいた人が特定されてしまうことを防止することができる。
【0067】
以上のように本実施の形態に係る人数推定装置1によれば、電波受信部10が、携帯無線端末機器が使用するアップリンク用の周波数帯域の無線信号を受信し、時間周波数解析部20が、周波数に対する信号強度の時間的変化をスペクトルデータとして出力すると、解析評価部30の積算部32が、スペクトルデータに基づいて所定時間ごとの信号強度を積算して積算値を算出し、推定部35が、携帯無線端末機器を携行する人数を、信号強度に対する人数を電波人数特性に基づき推定する。無線信号の信号強度に基づいて人数を推定しているため、時間ごとに人数を評価しても携帯無線端末機器を携行する個人が特定されない。
従って、人数推定装置1は、プライバシーや通信の秘密を保持しつつ、時間毎の人数を評価することで、人の流れや滞留状況を評価、把握することができる。
【0068】
ここまで、携帯無線端末機器は4GやLTEなどの遠距離通信用の周波数帯域による無線信号に基づいて人数を推定していたが、何らかの理由により遠距離通信用の周波数帯域が測定できなかった時間帯があり、人数の把握ができなかったとする。
そこで、本実施の形態に係る人数推定装置1では、近距離通信用処理部80により推定された人数により、測定できなかった時間帯を補間する。
近距離通信用処理部80が測定する無線信号は、WiFiであれば携帯無線端末機器を識別する識別情報の一種であるMAC(Media Access Control address)アドレスとすることができる。
【0069】
例えば、
図10に示すグラフから、時間の推移による、携帯無線端末機器が使用する近距離通信であるWiFiから推定された台数(人数)の変化と、携帯無線端末機器が使用する遠距離通信である4GやLTEなどから推定された台数(人数)の変化とが、同様の傾向を示すことが判る。
従って、推定部35は、人数が4GやLTEなどから推定できなかった11時27分の人数を、WiFiから推定された人数とすることができる。また、WiFiから推定された人数に定数を乗算した補正した人数とすることができる。
このように、電波受信部10により4GやLTEが受信できなくても近距離通信用処理部80がWiFiにより推定された人数により補間するので、調査の連続性を確保することができる。
【0070】
また、人数を補間することの他に、例えば、WiFiにより推定された人数と、4GやLTEなどから推定された人数とを加算して「2」により除算することで、平均値を推定された人数とすることができる。
【0071】
なお、本実施の形態では、人数を推定するだけでなく、人出の混雑状況や携帯電話会社ごとの使用状況、使用禁止領域での使用状態などを把握することができる。
【0072】
例えば、積算部32が算出した積算値が所定値より大きいことは、測定範囲に、携帯無線端末機器を携行する人が大勢いて混雑している状況であることを示している。従って、積算値が所定値より大きいことを、報知部37が報知することにより、混雑状況を報知することができるので、感染症を罹患することが心配される蜜となる状況に警告を発することができる。
報知部37は、表示部60に表示することができる。また、報知部37は、音や発光により報知することができる。
【0073】
また、積算部32が、
図3に示すような携帯電話会社(A社,N社,Y社)に割り振られた周波数帯域ごとに積算値を算出する。そうすることで、携帯電話会社ごとの信号強度の強さを検出することができ、周波数帯域の混雑状況も把握するこができる。
従って、積算値が所定値より大きいことを、報知部37が報知することにより、携
帯無線端末機器が通信する携帯電話会社ごとの混雑状態を把握することができるので、混雑状態の携帯電話会社と通信する携帯無線端末機器を携行する使用者は、他の場所に移動して、接続する基地局を変更するような行動を取ることができる。
【0074】
更に、推定部35が人の存在を検知したことを報知部37が報知することで、携帯無線端末機器の電源が投入状態で、基地局と無線通信していることを把握することができる。
例えば、医療施設や映画館、試験会場、航空機内の離発着時などの各種施設や乗り物では、携帯無線端末機器の使用が禁止される。そこで、推定部35が人の存在を検知すると、報知部37が、電源が投入状態の携帯無線端末機器が有る旨の表示を行う。
そうすることで、操作者は、携帯無線端末機器を操作する者を含む調査場所に所在する者に警告を発することができる。
【0075】
(人数推定装置の変形例)
図1に示す人数推定装置1の変形例を図面に基づいて説明する。なお、
図11においては
図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
図1に示す人数推定装置1では、電波受信部10(第1電波受信部10-1~第n電波受信部10-n)は狭帯域の無線信号を受信するものであったため、バンドごとに電波受信部10が設けられている。また、第1電波受信部10-1~第n電波受信部10-nからの信号を時間周波数解析部20が切り替えている。
【0076】
図11に示す人数推定装置1xでは、広帯域の無線信号を受信する電波受信部10xとし、時間周波数解析部20xのそれぞれが、周波数帯域に対応する電波受信部10xからのアンテナ信号を入力するものとしている。
このように、広帯域の無線信号を受信する電波受信部10xであっても、周波数帯域ごとに時間周波数解析部20xを設けたり、アンテナ信号を切り替える、
図1に示す時間周波数解析部20を設けたりすることで、解析評価部30によりスペクトルデータに基づいて人数を推定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、屋内外の人の数や人の流れ、滞留状態を、プライバシーを保護しつつ評価することができるので、コロナ禍の蜜の評価や抑制と共に、イベントや非常事態時の人の流れを可視化したり、混雑を緩和したり、抑制したりすることにも利用できる。
【符号の説明】
【0078】
1,1x 人数推定装置
10,10x 電波受信部
10-1~10-n 第1電波受信部~第n電波受信部
20,20x 時間周波数解析部
30 解析評価部
31 画像処理部
32 積算部
33 補正部
34 選択部
35 推定部
36 結果処理部
37 報知部
40 記憶部
50 入力部
60 表示部
70 人数線生成部
80 近距離通信用処理部
A~C 近似線
P1 カラー画像
P2,P3 グレースケール画像
D1 測定データ
L1 近似線
L2,L3 折れ線