(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ペロブスカイト型複合酸化物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/488 20060101AFI20241028BHJP
C01G 25/00 20060101ALI20241028BHJP
C01G 25/02 20060101ALI20241028BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20241028BHJP
H01M 8/124 20160101ALI20241028BHJP
H01M 8/1253 20160101ALI20241028BHJP
【FI】
C04B35/488
C01G25/00
C01G25/02
H01M8/12 101
H01M8/124
H01M8/1253
(21)【出願番号】P 2019128535
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2022-05-23
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】永富 晶
(72)【発明者】
【氏名】碇 和正
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】河本 充雄
【審判官】小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-050180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B35/488
C04B35/50
C01G25/00
C01F17/00
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式BaZr
1-x-yCe
xM
yO
3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を含む酸性溶液にアルカリとして炭酸とアンモニアの混合液または炭酸アンモニウムを加えて中和することによって得られた固形物を
大気雰囲気中において1000~1370℃で焼成することを特徴とする、ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記酸性溶液が硝酸水溶液であることを特徴とする、請求項1に記載のペロブスカイト型複合酸化物の製造方法。
【請求項3】
組成式BaZr
1-x-yCe
xM
yO
3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であって、0.15~0.3質量%の炭素を含
み、BET比表面積が4m
2
/g以上であることを特徴とする、ペロブスカイト型複合酸化物。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型複合酸化物の結晶子径が30nm以下であることを特徴とする、請求項
3に記載のペロブスカイト型複合酸化物。
【請求項5】
組成式BaZr
1-x-yCe
xM
yO
3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であって、BET比表面積が5.2~6.9m
2/gであることを特徴とする、ペロブスカイト型複合酸化物。
【請求項6】
請求項
3乃至
5のいずれかに記載のペロブスカイト型複合酸化物を電解質の材料として用いたことを特徴とする、固体酸化物型燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペロブスカイト型複合酸化物およびその製造方法に関し、特に、固体酸化物型燃料電池の電解質の材料などに適したプロトン伝導性ペロブスカイト型複合酸化物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池は、一般に、酸化物からなる空気極と固体電解質と燃料極とからなる単セルをインターコネクタによって接続したスタック構造を採っている。
このような固体酸化物型燃料電池の電解質の材料などに適したプロトン伝導性ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法として、ペロブスカイトABO3(AはBaまたはSr、BはCe)からなる炭素を含むペロブスカイトの前駆体を真空中において500~1200℃で熱処理することにより、プロトン伝導性ペロブスカイト型複合酸化物を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-137697号公報(段落番号0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のペロブスカイト型複合酸化物の製造方法では、真空中において熱処理する必要があり、大気雰囲気中において比較的低い温度で焼成して、(固体酸化物型燃料電池の電解質の材料などに要求される)緻密な焼結体を得ることができなかった。
【0005】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、大気雰囲気中において比較的低い温度で焼成しても、緻密な焼結体を得ることができる、ペロブスカイト型複合酸化物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、組成式BaZr1-x-yCexMyO3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を含む酸性溶液にアルカリを加えて中和することによって得られた固形物を焼成することにより、大気雰囲気中において比較的低い温度で焼成しても、緻密な焼結体を得ることができる、ペロブスカイト型複合酸化物を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の製造方法は、組成式BaZr1-x-yCexMyO3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を含む酸性溶液にアルカリを加えて中和することによって得られた固形物を焼成することを特徴とする。
【0008】
このペロブスカイト型複合酸化物の製造方法において、酸性溶液が硝酸水溶液であるのが好ましく、また、アルカリがアンモニウム塩であるのが好ましく、焼成の温度が1000~1370℃であるのが好ましい。
【0009】
また、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物は、組成式BaZr1-x-yCexMyO3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であって、0.15~1.0質量%の炭素を含むことを特徴とする。
【0010】
このペロブスカイト型複合酸化物のBET比表面積が4m2/g以上であるのが好ましく、結晶子径が30nm以下であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物は、組成式BaZr1-x-yCexMyO3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であって、BET比表面積が4~14m2/gであることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明による固体酸化物型燃料電池は、上記のペロブスカイト型複合酸化物を電解質の材料として用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大気雰囲気中において比較的低い温度で焼成しても、緻密な焼結体を得ることができる、ペロブスカイト型複合酸化物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の製造方法の実施の形態では、組成式BaZr1-x-yCexMyO3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物の出発原料を含む(硝酸水溶液のような硝酸溶液などの)硝酸塩または硝酸を含む酸性溶液に(炭酸とアンモニアの混合液や炭酸アンモニウムのようなアンモニウム塩などの)アルカリを加えて中和することによって得られた固形物(中和殿物)を乾燥した後、大気雰囲気中において1000~1370℃(好ましくは1100~1350℃)で焼成する。なお、このようにして製造されたペロブスカイト型複合酸化物を加圧して成形することにより得られた(好ましくは密度2.7g/cm3以上の)ペレットを(好ましくは1450℃程度の温度で)焼成して、(固体酸化物型燃料電池の電解質の材料などに要求される)緻密な焼成体を得ることができる。
【0015】
また、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の実施の形態は、組成式BaZr1-x-yCexMyO3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であって、0.15~1.0質量%の炭素を含む。このペロブスカイト型複合酸化物のBET比表面積は、4m2/g以上であるのが好ましく、さらに4~14m2/gであるのが好ましい。さらに、このペロブスカイト型複合酸化物の結晶子径は、30nm以下であるのが好ましく、15~26nmであるのが好ましい。
【0016】
また、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の実施の形態は、組成式BaZr1-x-yCexMyO3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であって、BET比表面積が4~14m2/gである。このペロブスカイト型複合酸化物の結晶子径は、15~26nmであるのが好ましい。
【0017】
さらに、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物の実施の形態は、組成式BaZr1-x-yCexMyO3(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2)で示されるペロブスカイト型複合酸化物であって、結晶子径が15~26nmである。
【0018】
なお、上記のペロブスカイト型複合酸化物の組成式は、BaZr1-x-yCexMyO3-σ(MはY、Yb、ScおよびTmからなる群から選ばれる一種以上の元素、0≦x≦0.7、0<y≦0.2、σは酸素欠損(自然数))と表すこともできる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明によるペロブスカイト型複合酸化物およびその製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0020】
[実施例1]
バリウム(Ba)とジルコニウム(Zr)とイッテルビウム(Yb)の組成比がBa:Zr:Yb=1.0:0.8:0.2になるように、硝酸バリウム112.6gと、ZrO2で換算して20質量%のジルコニウムを含む硝酸ジルコニウム水溶液222gと、硝酸イッテルビウム3水和物33.4gとを純水1Lに溶解してBaとZrとYbの硝酸水溶液を得た。
【0021】
また、炭酸アンモニウム344gを純水2.2Lに溶解に溶解した炭酸アンモニウム水溶液を得た。
【0022】
次に、上記の炭酸アンモニウム水溶液を撹拌しながら、上記の硝酸水溶液を(中和後にpHが8付近になるように)炭酸アンモニウム水溶液に添加して中和することにより中和殿物を生成した後、固液分離して得られた固形物を回収した。この固形物を乾燥した後、大気雰囲気中において1350℃で焼成して、ペロブスカイト型複合酸化物を得た。
【0023】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、ICP発光分光分析法により、BaとZrとYbの組成分析を行ったところ、Ba:Zr:Yb=1:0.8:0.2であり、得られたペロブスカイト型複合酸化物の組成は、BaZr1-x-yCexMyO3(M=Yb、x=0、y=0.2)(BaZr0.8Yb0.2O3)であった。また、ペロブスカイト型複合酸化物中の炭素量を炭素・硫黄分析装置(株式会社堀場製作所製のEMIA-920V2)により測定したところ、0.30質量%であった。
【0024】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物をメノウ乳鉢で粉砕し、このペロブスカイト型複合酸化物のBET比表面積をBET比表面積測定器(ユアサアイオニクス株式会社製の4ソーブUS)を使用してBET1点法により測定したところ、ペロブスカイト型複合酸化物のBET比表面積は6.9m2/gであった。
【0025】
また、得られたペロブスカイト型複合酸化物について、X線回折(XRD)装置(株式会社リガク製の試料水性型多目的X線回折装置UltimaIV)を使用し、X線管球としてCuKα管球を使用し、X線管球出力40kV/40mAでX線回折(XRD)測定を行って、X線回折パターンを得た。このX線回折パターンに基づいて、得られたペロブスカイト型複合酸化物の結晶相を同定したところ、単相のペロブスカイト構造を有することが確認された。また、X線回折パターンから得られたペロブスカイト相の(110)面の半価幅βを用いて、Scherrerの式D=(K・λ)/(β・cosθ)から結晶子径(Dx)を算出したところ、結晶子径(Dx)は25.1nmであった。なお、Scherrerの式において、Dは結晶子径(nm)、λは測定X線波長(nm)、βは結晶子による回折幅の広がり、θは回折角のブラッグ角、KはScherrer定数を示し、この式中の測定X線波長λをCu-Kα線波長、Scherrer定数Kを0.9とした。
【0026】
次に、得られたペロブスカイト型複合酸化物0.25gを秤量してφ5mmの成形器に充填し、油圧式手動プレス機により1623Nの荷重を加えて10秒間保持することにより、ペレットを成形した。このペレットに98mNの荷重を加えながら、室温から1450℃まで昇温して焼結体を得た。この焼結体の質量と直径と高さを測定することにより、焼結体の密度を算出したところ、2.93g/cm2であった。
【0027】
この焼結体について、JIS R1634(1998)(ファインセラミックスの焼結体密度・開き効率の測定方法)に準じて、開気孔率を測定した。具体的には、この焼結体の質量を乾燥質量W1として測定した後、この焼結体を容器内に入れ、真空ポンプにより2.0kPa以下で15分間吸引し、焼結体の細孔中の空気を十分に排除した。次いで、焼結体が完全に浸るまで水を注入し、容器に設けられたコックを徐々に開いて容器内を大気圧に戻した後、30分間放置した。なお、真空ポンプは水を注入中は作動させておき、注入後に停止した。このように水中に浸した焼結体を針金で懸架し、この状態で水中の焼結体の質量を測定し、針金により懸架される分を補正した質量を水中質量W2とした。次いで、焼結体を水中から取り出し、その表面を湿ったガーゼで手早く拭って水滴を除去した後、その質量を測定して飽和質量W3とした。なお、ガーゼは、十分に水を含ませた後に、水中から取り出した焼結体の表面の水滴だけを拭う程度に絞って用いた。このようにして得られた質量W1~W3を用いて、焼結体の開気孔率P0を、P0=(W3-W1)×100/(W3-W2)から算出した。その結果、焼結体の開気孔率は51%であった。
【0028】
[実施例2]
バリウム(Ba)とジルコニウム(Zr)とイットリウム(Y)の組成比がBa:Zr:Y=1.0:0.8:0.2になるように、硝酸バリウム112.6gと、ZrO2で換算して20質量%のジルコニウムを含む硝酸ジルコニウム水溶液222gと、硝酸イットリウム6水和物31.0gとを純水1Lに溶解してBaとZrとYの硝酸水溶液を得た。
【0029】
次に、実施例1と同様の炭酸アンモニウム水溶液を撹拌しながら、上記の硝酸水溶液を(中和後にpHが8付近になるように)炭酸アンモニウム水溶液に添加して中和することにより中和殿物を生成した後、固液分離して得られた固形物を回収した。この固形物を乾燥した後、大気雰囲気中において1350℃で焼成して、ペロブスカイト型複合酸化物を得た。
【0030】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、ICP発光分光分析法により、BaとZrとYの組成分析を行ったところ、Ba:Zr:Y=1:0.8:0.2であり、得られたペロブスカイト型複合酸化物の組成は、BaZr1-x-yCexMyO3(M=Y、x=0、y=0.2)(BaZr0.8Y0.2O3)であった。
【0031】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法により、炭素量およびBET比表面積を測定したところ、炭素量は0.19質量%でありBET比表面積は5.2m2/gであった。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶相を同定したところ、単相のペロブスカイト構造を有することが確認された。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶子径を算出したところ、結晶子径は20.8nmであった。また、得られたペロブスカイト型複合酸化物を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の密度を算出するとともに、開気孔率を測定したところ、焼結体の密度は2.76g/cm2であり、開気孔率は47%であった。
【0032】
[実施例3]
バリウム(Ba)とジルコニウム(Zr)とセリウム(Ce)とイットリウム(Y)とイッテルビウム(Yb)の組成比がBa:Zr:Ce:Y:Yb=1:0.1:0.7:0.1:0.1になるように、硝酸バリウム50.3gと、ZrO2で換算して20質量%のジルコニウムを含む硝酸ジルコニウム水溶液14.3gと、硫酸セリウム6水和物62.2gと、13.5質量%のイットリウムを含む硝酸イットリウム水溶液13.4gと硝酸イッテルビウム3水和物8.4gとを純水1Lに溶解してBaとZrとCeとYとYbの硝酸塩の水溶液を得た。
【0033】
次に、実施例1と同様の炭酸アンモニウム水溶液を撹拌しながら、上記の硝酸水溶液を(中和後にpHが8付近になるように)炭酸アンモニウム水溶液に添加して中和することにより中和殿物を生成した後、固液分離して得られた固形物を回収した。この固形物を乾燥した後、大気雰囲気中において1100℃で焼成して、ペロブスカイト型複合酸化物を得た。
【0034】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、ICP発光分光分析法により、BaとZrとCeとYとYbの組成分析を行ったところ、Ba:Zr:Ce:Y:Yb=1:0.1:0.7:0.1:0.1であり、得られたペロブスカイト型複合酸化物の組成は、BaZr1-x-yCexMyO3(M=Y+Yb、x=0.7、y=0.2)(BaZr0.1Ce0.7Y0.1Yb0.1O3)であった。
【0035】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法により、炭素量およびBET比表面積を測定したところ、炭素量は0.21質量%であり、BET比表面積は6.1m2/gであった。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶相を同定したところ、単相のペロブスカイト構造を有することが確認された。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶子径を算出したところ、結晶子径は20.1nmであった。また、得られたペロブスカイト型複合酸化物を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の密度を算出するとともに、開気孔率を測定したところ、焼結体の密度は3.26g/cm2であり、開気孔率は45%であった。
【0036】
[比較例1]
バリウム(Ba)とジルコニウム(Zr)とイッテルビウム(Yb)の組成比がBa:Zr:Yb=1.0:0.8:0.2になるように、炭酸バリウム29.4gと、酸化ジルコニウム14.7gと、酸化イッテルビウム5.9gとを純水50gに加えて、ビーズミルにより、粉砕スラリーの中心径が1μm以下になるように粉砕した。このように粉砕したスラリーを乾燥させた後、大気雰囲気中において1400℃で焼成して、ペロブスカイト型複合酸化物を得た。
【0037】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、ICP発光分光分析法により、BaとZrとYbの組成分析を行ったところ、Ba:Zr:Yb=1:0.8:0.2であり、得られたペロブスカイト型複合酸化物の組成は、BaZr1-x-yCexMyO3(M=Yb、x=0、y=0.2)(BaZr0.8Yb0.2O3)であった。
【0038】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法により、炭素量およびBET比表面積を測定したところ、炭素量は0.09質量%でありBET比表面積は2.8m2/gであった。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶相を同定したところ、単相のペロブスカイト構造を有することが確認された。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶子径を算出したところ、結晶子径は35.7nmであった。また、得られたペロブスカイト型複合酸化物を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の密度を算出したところ、焼結体の密度は2.27g/cm2であった。また、実施例1と同様の方法により、焼結体の開気孔率の測定を試みたが、水中で焼結体が崩壊したため、測定することができなかった(ND)。
【0039】
[比較例2]
バリウム(Ba)とジルコニウム(Zr)とイットリウム(Y)の組成比がBa:Zr:Y=1.0:0.8:0.2になるように、炭酸バリウム31.0gと、酸化ジルコニウム15.5gと、酸化イットリウム3.55gとを純水50gに加えて、ビーズミルにより、粉砕スラリーの中心径が1μm以下になるように粉砕した。このように粉砕したスラリーを乾燥させた後、大気雰囲気中において1400℃で焼成して、ペロブスカイト型複合酸化物を得た。
【0040】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、ICP発光分光分析法により、BaとZrとYの組成分析を行ったところ、Ba:Zr:Y=1:0.8:0.2であり、得られたペロブスカイト型複合酸化物の組成は、BaZr1-x-yCexMyO3(M=Y、x=0、y=0.2)(BaZr0.8Y0.2O3)であった。
【0041】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法により、炭素量およびBET比表面積を測定したところ、炭素量は0.11質量%でありBET比表面積は2.3m2/gであった。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶相を同定したところ、単相のペロブスカイト構造を有することが確認された。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶子径を算出したところ、結晶子径は26.6nmであった。また、得られたペロブスカイト型複合酸化物を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の密度を算出したところ、焼結体の密度は2.24g/cm2であった。また、実施例1と同様の方法により、焼結体の開気孔率の測定を試みたが、水中で焼結体が崩壊したため、測定することができなかった(ND)。
【0042】
[比較例3]
バリウム(Ba)とジルコニウム(Zr)とセリウム(Ce)とイットリウム(Y)とイッテルビウム(Yb)の組成比がBa:Zr:Ce:Y:Yb=1:0.1:0.7:0.1:0.1になるように、炭酸バリウム27.3gと、酸化ジルコニウム1.7gと、酸化セリウム16.7gと、酸化イットリウム1.6gと、酸化イッテルビウム2.7gとを純水50gに加えて、ビーズミルにより、粉砕スラリーの中心径が1μm以下になるように粉砕した。このように粉砕したスラリーを乾燥させた後、大気雰囲気中において1400℃で焼成して、ペロブスカイト型複合酸化物を得た。
【0043】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、ICP発光分光分析法により、BaとZrとCeとYとYbの組成分析を行ったところ、Ba:Zr:Ce:Y:Yb=1:0.1:0.7:0.1:0.1であり、得られたペロブスカイト型複合酸化物の組成は、BaZr1-x-yCexMyO3(M=Y+Yb、x=0.7、y=0.2)(BaZr0.1Ce0.7Y0.1Yb0.1O3)であった。
【0044】
このようにして得られたペロブスカイト型複合酸化物について、実施例1と同様の方法により、炭素量およびBET比表面積を測定したところ、炭素量は0.11質量%でありBET比表面積は1.9m2/gであった。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶相を同定したところ、単相のペロブスカイト構造を有することが確認された。また、実施例1と同様の方法により、ペロブスカイト型複合酸化物の結晶子径を算出したところ、結晶子径は26.7nmであった。また、得られたペロブスカイト型複合酸化物を使用して、実施例1と同様の方法により、焼結体を作製し、この焼結体の密度を算出するとともに、開気孔率を測定したところ、焼結体の密度は2.68g/cm2であり、開気孔率は56%であった。
【0045】
これらの実施例および比較例のペロブスカイト型複合酸化物の製造条件および特性を表1~表2に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
表1~表2から、実施例1~3のペロブスカイト型複合酸化物から作製した焼結体は、比較例1~3のペロブスカイト型複合酸化物から作製した焼結体と比べて、密度が高く、開気孔率が低いため、より緻密な焼結体であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によるペロブスカイト型複合酸化物は、緻密な焼結体を得ることができ、固体酸化物型燃料電池の電解質の材料として使用することができる。