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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241028BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241028BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20241028BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20241028BHJP
   A61K 36/575 20060101ALI20241028BHJP
   A61K 36/736 20060101ALI20241028BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241028BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241028BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/67
A61K31/375
A61K31/7048
A61K36/575
A61K36/736
A61P17/00
A61P43/00 121
A61Q19/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020168848
(22)【出願日】2020-10-06
(62)【分割の表示】P 2015192887の分割
【原出願日】2015-09-30
(65)【公開番号】P2021001227
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2020-11-05
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】上原 裕也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 希
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】冨永 保
【審判官】小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/094312(WO,A1)
【文献】特開2006-124355(JP,A)
【文献】特開2012-201637(JP,A)
【文献】特開2006-347926(JP,A)
【文献】特開2014-129278(JP,A)
【文献】特開2010-138153(JP,A)
【文献】特開2012-201649(JP,A)
【文献】特開2006-188461(JP,A)
【文献】特開2012-246248(JP,A)
【文献】特開2006-8710(JP,A)
【文献】特開平10-109941(JP,A)
【文献】特開平4-82814(JP,A)
【文献】油脂、(2005)、Vol.58,No.8、pp.54-56、61-64、特に62頁左欄20行-63頁最下行
【文献】Refocus Eye + IR Defense Serum Infusion Eye Treatment、ID#:3079495、Mintel GNPD、2015年4月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPLus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アスコルビン酸及び/又はその誘導体を0.1~10重量%、(B)ホオノキの抽出物、並びに(C)プルーンの果肉の抽出物を含有することを特徴とする、外用組成物(但し、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール及びエチレンジアミン四酢酸又はその塩を含む場合を除く)
【請求項2】
前記(A)成分が、アスコルビン酸2-グルコシドである、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
美白用である、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
(A)アスコルビン酸及び/又はその誘導体を0.1~10重量%、並びに(B)ホオノキの抽出物を含む外用組成物(但し、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール及びエチレンジアミン四酢酸又はその塩を含む場合を除く)のメラニン生成抑制効果を向上させる方法であって、
前記外用組成物に(C)プルーンの果肉の抽出物を含有させる、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メラニンの生成を抑制し、優れた美白効果を奏する外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のシミ、そばかす、くすみ、黒ずみ、肝斑、老人性色素斑等の色素沈着は、紫外線曝露、ホルモンの異常や物理的な刺激等が原因となってメラニンが過剰に形成され、これが皮膚内に沈着することによって生じることが分かっている。このような皮膚の色素沈着は、特に女性にとって美容上の大きな悩みとなっている。
【0003】
従来、アスコルビン酸及びその誘導体は、皮膚の色素沈着を抑制し、美白効果を奏することが知られており、美白用の外用組成物に広く使用されている。しかしながら、アスコルビン酸及びその誘導体の美白効果では、消費者ニーズを十分に満足できているとは言えないのが現状である。
【0004】
また、植物抽出物にも、香粧学的効果を奏するものが知られている。例えば、特許文献1において、ホオノキ抽出物には、コラゲナーゼ活性を阻害する作用があり、皮膚の老化防止に有効であることが報告されている。また、特許文献2において、プルーンの酵素分解物には、ファゴサイトーシスを抑制する作用があり、メラニン色素の体表への移動を抑制して美白効果を奏することが報告されている。しかしながら、植物抽出物単独で発揮される香粧学的効果は緩慢であり、消費者ニーズを十分に満足できないという欠点がある。
【0005】
美白に対する消費者の要望は年々高まっており、従来の製剤技術で得られる美白効果では、消費者の要望を満足できなくなっている。そこで、今後、益々高まる消費者の要望に追従するためにも、より優れた美白効果を奏する外用組成物の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-146876号公報
【文献】特開2006-347926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、メラニンの生成を効果的に抑制することにより、優れた美白効果を奏する外用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、アスコルビン酸及び/又はその誘導体と、モクレン科モクレン属植物の抽出物とを併用することによって、メラニンの生成抑制作用が飛躍的に高まり、格段に優れた美白効果を奏し得ることを見出した。更に、前記2つの成分と共に、バラ科サクラ属植物の抽出物を組み合わせることによって、美白効果がより一層向上することを見出した。
【0009】
更に、前述する成分を、水溶性増粘剤、多孔質粉体、及びトリメチルグリシンと共に製剤化することによって、優れた美白効果を奏することに加え、塗布時に、しっかりとした塗布感がありながら、べたつきが抑制され、且つさっぱりとした感触があり、塗布後には、粉っぽさが抑えられ、しかも優れた保湿感が得られることを見出した。
【0010】
本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)アスコルビン酸及び/又はその誘導体、並びに(B)モクレン科モクレン属植物の抽出物を含有することを特徴とする、外用組成物。
項2. 更に、(C)バラ科サクラ属植物の抽出物を含有する、項1に記載の外用組成物。
項3. 前記(B)成分が、ホオノキの抽出物である、項1又は2に記載の外用組成物。
項4. 前記(C)成分が、プルーンの抽出物である、項1~3のいずれかに記載の外用組
成物。
項5. 前記(A)成分が、アスコルビン酸2-グルコシドである、項1~4のいずれかに
記載の外用組成物。
項6. 美白用である、項1~5のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外用組成物は、メラニンの生成抑制作用が高く、皮膚のシミ、そばかす、くすみ、黒ずみ、肝斑、老人性色素斑等の色素沈着を効果的に予防又は改善することができる。また、本発明の外用組成物の一態様では、しっかりとした塗布感がありながら、べたつきが抑制され、且つさっぱりとした感触があり、塗布後には、粉っぽさが抑えられ、しかも優れた保湿感が得られ、良好な使用感を備えることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の外用組成物は、アスコルビン酸及び/又はその誘導体((A)成分と表記することもある)、並びにモクレン科モクレン属植物の抽出物((B)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の外用組成物について詳述する。
【0013】
(A)アスコルビン酸及び/又はその誘導体
本発明の外用組成物は、アスコルビン酸及び/又はその誘導体を含有する。アスコルビン酸及び/又はその誘導体は、抗酸化作用があり、美白効果が知られている公知の成分である。
【0014】
本発明で使用されるアスコルビン酸及びその誘導体については、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、アスコルビン酸;アスコルビン酸2-グルコシド;アスコルビン酸モノステアレート、アスコルビン酸モノパルミテート、アスコルビン酸モノオレート等のアスコルビン酸モノアルキルエステル類;アスコルビン酸モノリン酸エステル及びそのマグネシウム塩等のアスコルビン酸モノエステル類;アスコルビン酸ジステアレート、アスコルビン酸ジパルミテート、アスコルビン酸ジオレート等のアスコルビン酸ジアルキルエステル類;アスコルビン酸ジリン酸エステル及びその塩等のアスコルビン酸ジエステル類;アスコルビン酸トリステアレート、アスコルビン酸トリパルミテート、アスコルビン酸トリオレート等のトリアルキルエステル類;アスコルビン酸トリリン酸エステル等のアスコルビン酸トリエステル類;3-O-エチル,6-アセチル-アスコルビン酸、3-O-エチル,6-ブチルアスコルビン酸、3-O-エチル,6-ラウロイルアスコルビン酸、3-O-エチル,6-パルミトイルアスコルビン酸、3-O-エチル,6-オレオイルアスコルビン酸、3-O-エチル,6-ステアロイルアスコルビン酸、3-O-エチル,6-ベヘルミノイル-アスコルビン酸等が挙げられる。これらのアスコルビン酸及びその誘導体は、L体又はD体のいずれであってもよいが、好ましくはL体が挙げられる。
【0015】
これらのアスコルビン酸及びその誘導体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのアスコルビン酸及びその誘導体の中でも、安定性や美白効果等の観点から、好ましくはアスコルビン酸の誘導体、更に好ましくはアスコルビン酸2-グルコシドが挙げられる。
【0016】
本発明の外用組成物における(A)成分の含有量については、当該外用組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~10重量%、好ましくは0.3~8重量%、更に好ましくは0.5~7重量%が挙げられる。
【0017】
(B)モクレン科モクレン属植物の抽出物
本発明の外用組成物は、アスコルビン酸及び/又はその誘導体と共に、モクレン科モクレン属植物の抽出物を含有する。このように、アスコルビン酸及び/又はその誘導体とモクレン科モクレン属植物の抽出物とを併用することによって、メラニンの生成抑制作用が飛躍的に高まり、格段に優れた美白効果を奏することが可能になる。
【0018】
モクレン科モクレン属植物の抽出物は、抽出原料としてモクレン科モクレン属植物を使用して溶媒抽出処理を行うことにより得ることができる。
【0019】
抽出原料として使用されるモクレン科モクレン属植物としては、「原色世界植物大図鑑」(昭和61年4月20日初版発行、株式会社北隆館)に掲載されているもの等が挙げられ、具体的には、マグノリア・ビロバ、ボウシュンカ、ハクモクレン、コブシ(ヤマアララギ、コブシハジカミ、イモウエバナ)、モクレン(モクレンゲ、シモクレン)、カラホオ(シナホオノキ)、マグノリア・スプレンゲリ、ホオノキ(ホオガシワ、ホオガシワノキ、ウマノベロ)等が挙げられる。これらの抽出原料植物の中から、1種の植物を単独で使用してもよく、また2種以上の植物を組み合わせて使用してもよい。これらの抽出原料の中でも、より一層優れた美白効果を奏させるという観点から、好ましくはホオノキが挙げられる。
【0020】
モクレン科モクレン属植物の抽出物は、当該植物の樹皮から抽出されたものであればよいが、抽出対象となる部位は、樹皮以外に、必要に応じて、花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、根茎、根、種子等が含まれてもよく、更には全木であってもよい。
【0021】
また、モクレン科モクレン属植物の溶媒抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の炭素数1~5の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;及びこれらの混合液等が挙げられる。これらの抽出溶媒の中でも、好ましくは、水、炭素数1~5の低級アルコールと水の混合液、多価アルコールと水の混合液、更に好ましくは水、エタノールと水の混合液、1,3-ブチレングリコールと水の混合液、プロピレングリコールと水の混合液が挙げられる。
【0022】
抽出溶媒として、炭素数1~5の低級アルコール及び/又は多価アルコールと水の混合液を使用する場合、炭素数1~5の低級アルコール及び/又は多価アルコールの濃度については、特に制限されないが、例えば、炭素数1~5の低級アルコール及び/又は多価アルコールの合計で20~90重量%、好ましくは30~85重量%が挙げられる。
【0023】
モクレン科モクレン属植物の抽出物は、上記抽出対象植物部位をそのまま、或いは必要に応じて、乾燥、細切、破砕、圧搾、酵素処理、煮沸或いは発酵処理したものを、上記抽出溶媒により抽出することによって得られる。溶媒抽出処理としては、通常用いられている植物抽出物の抽出方法を採用することができ、具体的には、冷浸、温浸等の浸漬法;加温下で攪拌する方法;又はパーコレーション法等が挙げられる。
【0024】
前記溶媒抽出処理によって得られた抽出物は、液状の状態のままで使用してもよいが、また必要に応じて、濃縮、乾燥等の処理に供して濃縮物や乾燥物として使用してもよい。
また濃縮又は乾燥後、得られた濃縮物又は乾燥物を非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いてもよく、またこれを更に適当な溶剤に溶解若しくは懸濁して用いることもできる。
【0025】
また、モクレン科モクレン属植物の抽出物として、簡便には商業的に入手できるものを使用することもできる。例えば、ホオノキの樹皮の抽出物としては、一丸ファルコス株式会社製の「ファルコレックス ホオノキB」、「ファルコレックス ホオノキE」等が挙げられる。
【0026】
本発明の外用組成物における(B)成分の含有量については、当該外用組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(B)成分の乾燥重量換算で、0.00001重量%以上であり、具体的には、0.00001~0.1重量%が挙げられる。より一層優れた美白効果を奏させるという観点から、本発明の外用組成物における(B)成分の含有量として、(B)成分の乾燥重量換算で、好ましくは0.00005~0.05重量%、更に好ましくは0.0001~0.01重量%が挙げられる。
【0027】
また、本発明の外用組成物において、(A)成分と(B)成分の比率は、前述する各含有量に応じて定まるが、より一層優れた美白効果を奏させるという観点から(A)成分100重量部当たり、(B)成分の乾燥重量換算で、0.001重量部以上、好ましくは0.001~1重量部、より好ましくは0.005~0.5重量部、更に好ましくは0.01~0.1重量部が挙げられる。
【0028】
(C)バラ科サクラ属植物の抽出物
本発明の外用組成物には、(A)成分及び(B)成分に加えて、バラ科サクラ属植物の抽出物((C)成分と表記することもある)が含まれていてもよい。(A)成分及び(B)成分と共に、バラ科サクラ属植物の抽出物が含まれている場合には、美白効果がより一層向上させることが可能になる。
【0029】
バラ科サクラ属植物の抽出物は、抽出原料としてバラ科サクラ属植物を使用して溶媒抽出処理を行うことにより得ることができる。
【0030】
抽出原料として使用されるバラ科サクラ属植物としては、「原色世界植物大図鑑」(昭和61年4月20日初版発行、株式会社北隆館)に掲載されているもの等が挙げられ、具体的には、プルーン(セイヨウスモモ)、アンズ(カラモモ)、プルヌス・コンラディナエ、カスミザクラ(ケヤマザクラ)、チョウジザクラ、イヌザクラ、ウワミズザクラ、ヤマザクラ、マメザクラ(フジザクラ)、シダレザクラ(イトザクラ)、ニワウメ(コウメ、リンショウバイ)、カンザン(セキヤマ)、オオシマザクラ、ミヤマザクラ、ウメ、ミネザクラ、ブンゴウメ、チシマザクラ、モモ、エドヒガン(ウバヒガン)、スモモ(ハタンキョウ)、オオヤマザクラ、リンボク(ヒイラギガシ)、シウリザクラ(ミヤマイヌザクラ、シオリザクラ)、ヒガンザクラ(コヒガンザクラ)、ソメイヨシノ、バクチノキ(ビラン、ビランジュ)等が挙げられる。これらの抽出原料植物の中から、1種の植物を単独で使用してもよく、また2種以上の植物を組み合わせて使用してもよい。これらの抽出原料の中でも、美白効果の向上作用をより一層高めるという観点から、好ましくはプルーンが挙げられる。
【0031】
バラ科サクラ属植物の抽出物は、当該植物の果肉から抽出されたものであればよいが、抽出対象となる植物部位は、果肉以外に、必要に応じて、果皮、種子等が含まれてもよい。
【0032】
また、バラ科サクラ属植物の溶媒抽出処理に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の炭素数1~5の低級アルコール;プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,3,5-ペンタントリオール等の多価アルコール;フェノキシエタノール、パラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン;及びこれらの混合液等が挙げられる。これらの抽出溶媒の中でも、好ましくは、水、多価アルコールと水の混合液、炭素数1~5の低級アルコールと水の混合液、更に好ましくは水、1,3-ブチレングリコールと水の混合液が挙げられる。
【0033】
抽出溶媒として、炭素数1~5の低級アルコール及び/又は多価アルコールと水の混合液を使用する場合、炭素数1~5の低級アルコール及び/又は多価アルコールの濃度については、特に制限されないが、例えば、炭素数1~5の低級アルコール及び/又は多価アルコールの合計で20~90重量%、好ましくは30~85重量%が挙げられる。
【0034】
バラ科サクラ属植物の抽出物は、上記抽出対象植物部位をそのまま、或いは必要に応じて、乾燥、細切、破砕、圧搾、酵素処理、煮沸或いは発酵処理したものを、上記抽出溶媒により抽出処理することによって得られる。特に、本発明では、抽出処理に供されるバラ科サクラ属植物は、予め酵素処理に供しておくことが望ましい。酵素処理されたバラ科サクラ属植物を抽出原料として使用することにより、美白効果を向上させる作用が格段に高い抽出物を得ることが可能になる。
【0035】
バラ科サクラ属植物の酵素処理に使用される酵素については、果肉中の繊維素を分解できる繊維素分解酵素であればよく、具体的には、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等が挙げられる。これらの酵素は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また、酵素処理条件については、特に制限されず、使用する酵素の作用温度及び作用pHの範囲内に設定し、所望の効果が得られるように酵素反応が進行するまで行えばよいが、例えば、20~45℃で3~24時間反応させる条件が挙げられる。バラ科サクラ属植物に酵素処理を行った後に、必要に応じて、加熱等により酵素を失活させて、溶媒抽出処理に供すればよい。
【0037】
溶媒抽出処理としては、通常用いられている植物抽出物の抽出方法を採用することができ、具体的には、冷浸、温浸等の浸漬法;加温下で攪拌する方法;又はパーコレーション法等が挙げられる。
【0038】
前記溶媒抽出処理によって得られた抽出物は、液状の状態のままで使用してもよいが、また必要に応じて、濃縮、乾燥等の処理に供して濃縮物や乾燥物として使用してもよい。また濃縮又は乾燥後、得られた濃縮物又は乾燥物を非溶解性溶媒で洗浄して精製して用いてもよく、またこれを更に適当な溶剤に溶解若しくは懸濁して用いることもできる。
【0039】
また、バラ科サクラ属植物の抽出物や、酵素処理されたバラ科サクラ属植物の抽出物として、簡便には商業的に入手できるものを使用することもできる。例えば、酵素分解したプルーンの抽出物としては、一丸ファルコス株式会社製の「クレアージュ」等が挙げられる。
【0040】
本発明の外用組成物における(C)成分の含有量については、当該外用組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(C)成分の乾燥重量換算で、0.00001重量%以上、具体低には、0.00001~0.1重量%が挙げられる。美白効果を向上させる作用をより一層高めるという観点から、本発明の外用組成物における(C)成分の含
有量として、(C)成分の乾燥重量換算で、好ましくは0.00005~0.01重量%、更に好ましくは0.0001~0.001重量%が挙げられる。
【0041】
また、本発明の外用組成物において、(B)成分と(C)成分の比率は、前述する各含有量に応じて定まるが、より一層優れた美白効果を奏させるという観点から、(B)成分100重量部(乾燥重量換算)当たり、(C)成分の乾燥重量換算で、1重量部以上であり、好ましくは1~5000重量部、より好ましくは5~500重量部、更に好ましくは5~100重量部、特に好ましくは10~100重量部が挙げられる。
【0042】
(D)水溶性増粘剤、(E)多孔質粉体、及び(F)トリメチルグリシン
本発明の外用組成物は、前述する成分に加えて、水溶性増粘剤((D)成分と表記することもある)、多孔質粉体((E)成分と表記することもある)、及びトリメチルグリシン((F)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。前述する成分と共に、これらの(D)~(F)成分を一体として含む場合には、優れた美白効果に加え、塗布時に、しっかりとした塗布感がありながら、べたつきが抑制され、且つさっぱりとした感触があり、塗布後には、粉っぽさが抑えられ、しかも優れた保湿感を付与することが可能になる。
【0043】
水溶性増粘剤としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、セルロースガム、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、スクレロチウムガム、ポリスチレンスルホネート、カラヤガム、ペクチン等が挙げられる。これらの中でも、しっかりとした塗布感や保湿感をより効果的に向上させるという観点から、好ましくはカルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマーが挙げられる。
【0044】
力ルボキシビニルポリマーは、カルボキシル基を有する水溶性のビニルポリマーであり、具体的には、アクリル酸及び/又はメタグリル酸を主鎖として、アリルショ糖やペンタエリスリトールのアリルエーテル等による架橋構造を有するポリマーである。
【0045】
また、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、前記カルボキシビニルポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部がアルキル基によりエステル化されたポリマーである。アルキル変性カルボキシビニルポリマーにおいて、エステル結合によって結合しているアルキル基は、直鑽状又は分岐状のいずれであってもよい。また、当該アルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば8~35、好ましくは8~30が挙げられる。
【0046】
カルボキシビニルポリマー及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーの分子量については、特に制限されないが、例えば、5重量%となるように溶解させた水溶液(pH6.5)の20℃での粘度が500mPa・s以上、好ましくは500~100000mPa・sとなるものが挙げられる。ここで、当該粘度は、B型粘度計「TOKI SANGYO VISCOMETER TVB-10」(東機産業株式会社製)において、ローター:M3(回転速度:20rpm、時間:1分、単位:mPa・s)を使用して測定される値である。
【0047】
これらの水溶性増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。前述する使用感をより一層良好にするという観点から、水溶性増粘剤として、カルボキシビニルポリマーとアルキル変性カルボキシビニルポリマーを組み合わせて使用することが好ましい。カルボキシビニルポリマーとアルキル変性カルボキシビニルポリマーを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー100重量部当たり、アルキル変性カルボキシビニルポリマーが1~10000重量部、好ましくは50~5000重量部、更に好ましくは10~1000重量部が挙げられる。
【0048】
水溶性増粘剤は、商業的に入手できるものを使用することもできる。例えば、カルボキシビニルポリマーの市販品としては、住友精化株式会社製の「AQPEC HV-501E」、「AQUP EC HV-505E」;Lubrizol Advanced Materials社製の「カーボポール940」、「カーボポール941」、「カーボポール980」;和光純薬工業株式会社製の「ハイビスワコ一103」、「ハイビスワコ一104」、「ハイビスワコ一105」;3Vシグマ社製の「シンタレンK」、「シンタレンL」等が挙げられる。また、アルキル変性カルボキシビニルポリマーの市販品としては、住友精化株式会社製の「AQUPEC HV-501ER」;Lubrizol Advanced Materials社製の「カーポポールultrez20」、「カーボポールultrez21」、「カーボポール1342」、「カーボポールETD2020」、「ペムレンTR-1」、「ペムレンTR-2」等が挙げられる。
【0049】
本発明の外用組成物における(D)成分の含有量については、当該外用組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.1~3重量%、好ましくは0.3~2重量%、更に好ましくは0.3~1.5重量%が挙げられる。このような含有量を満たすことにより、後述する(E)及び(F)成分との相互作用により、しっかりとした塗布感と塗布後の保湿感をより効果的に高めることが可能になる。
【0050】
多孔質粉体としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、シリカ、タルク、酸化チタン、マイ力、酸化亜鉛、カオリン、硫酸バリウム、オキシ塩化ビスマス、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、含水ケイ酸、モンモリロナイト等の無機粉体;ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、メタクリル酸メチル樹脂、セルロース、ナイロン、スチレンとアクリル酸の共重合体、ポリプロピレン、塩化ビニル等の高分子粉体等が挙げられる。これらの多孔質粉休は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
これらの多孔質粉体の中でも、塗布中のべたつき感のなさと、さっぱり感をより一層効果的に向上させるという観点から、好ましくは、シリカ、マイカ、タルク、ナイロン、更に好ましくはシリカが挙げられる。
【0052】
多孔質粉体の平均粒径については、特に制限されないが、例えば1~25μm、好ましくは3~20μm、更に好ましくは3~15μmが挙げられる。また、多孔質粉体の吸油量については、特に制限されないが、例えば50~500ml/100g、好ましくは50~300ml/100g、更に好ましくは50~200ml/100gが挙げられる。また、多孔質粉体の比表面積については、特に制限されないが、例えば30~1000m2/g、好ましくは100~950m2/g、更に好ましくは200~800m2/g、より好ましくは200~600m2/gが挙げられる。ここで、多孔質粉体の平均粒径とは、JIS Z 8901:2006「試験用粉体及び試験用粒子」で定義されている「粒子の直径の算術平均値」である。また、多孔質粉体の吸油量は、JIS K5101-13-1に準拠して測定される値である。また、多孔質粉体の比表面積は、JIS K6430付属書Eに準拠して測定されるBET比表面積である。
【0053】
本発明の外用組成物における(E)成分の含有量については、当該外用組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.05~5重量%、好ましくは0.5~3重量%、更に好ましくは1~3重量%が挙げられる。
【0054】
トリメチルグリシンは、アカザ科の植物や、海草、魚類、甲殻類等に存在しており、アミノ酸系保湿剤として汎用されている成分である。
【0055】
トリメチルグリシンは、商業的に入手できるものを使用することもできる。トリメチルグリシンの市販品としては、具体的には、味の素株式会社製の「アクアデュウ AN-100」、旭化成ケミカルズ株式会社製の「アミノコート」等が挙げられる。
【0056】
本発明の外用組成物において、(D)~(F)成分を含有させる場合、(D)成分と(F)成分の比率については、(D)成分1重量部当たり、(F)成分が0.1~6重量部であることが望ましい。このような比率を充足させることによって、前述する塗布時及び塗布後の使用感を効果的に付与することが可能になる。前述する塗布時及び塗布後の使用感をより一層効果的に付与するという観点から、(D)成分と(F)成分の比率として、(D)成分1重量部当たり、(F)成分が、好ましくは1~4重量部、更に好ましくは1.5~4重量部が挙げられる。
【0057】
本発明の外用組成物における(E)成分の含有量については、前述する(D)成分と(F)成分の比率を充足できるように適宜設定すればよいが、例えば、(D)成分の含有量が0.1~3重量%の場合であれば、(E)成分の含有量として、0.01~18重量%、好ましくは0.1~12重量%、更に好ましくは0.15~12重量%が挙げられる。
【0058】
多価アルコール
本発明の外用組成物には、保湿作用の増強等を目的として、必要に応じて、多価アルコールが含まれていてもよい。
【0059】
多価アルコールとしては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの多価アルコールの中でも、好ましくは1,3-ブチレングリコール及びグリセリンが挙げられる。
【0060】
本発明の外用組成物において、多価アルコールを含有させる場合、その含有量については、使用する多価アルコールの種類、外用組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.01~30重量%、好ましくは0.1~20重量%、更に好ましくは1~20重量%が挙げられる。
【0061】

本発明の外用組成物は、所望の製剤形態にするために、必要に応じて、基剤として水を含んでいてもよい。特に、前述する(D)及び(F)成分を含有させる場合には、それらの成分を溶解させるための基剤として水を含有させることが望ましい。
【0062】
本発明の外用組成物において、水の含有量については、特に制限されないが、例えば、10~99.5重量%、好ましくは10~98重量%が挙げられるより具体的には、(D)及び(F)成分を含有させる場合であれば、水の含有量として、25~95重量%、好ましくは35~95重量%、更に好ましくは45~95重量%が挙げられる。
【0063】
その他の成分
本発明の外用組成物は、前述する成分以外に、必要に応じて、他の薬理成分を含有していてもよい。このような薬理成分としては、例えば、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩酸塩、マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン、アミノ安息香酸メチル、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等)、抗炎症剤(アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、スプロフェン、ベンダザック、スプロフェン、ブフェキサマク等)、殺菌剤(ベンザルコニウム塩化物、デカリニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物、セチルピリジニウム塩化物、クロルヘキシジン塩化物、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、アンモニア水、スルファジアジン、乳酸、フェノール等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進剤(ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、清涼化剤(メントール、カンフル等)、ビタミン類(ビタミンA、B、D等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン、ヒアルロン酸等)等が挙げられる。
【0064】
また、本発明の外用組成物は、所望の製剤形態にするために、必要に応じて、基剤や添加剤が含まれていてもよい。このような基剤や添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)等の水性基剤;油類(オリーブ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ラード、スクワラン、魚油等)、鉱物油(流動パラフィン、パラフィン、ゲル化炭化水素、ワセリン等)、ワックス類・ロウ類(ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、セレシン、ライスワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、エステル油(ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル等)、脂肪酸アルキルエステル、脂肪酸(ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、リノール酸、ラノリン等)、脂肪酸エステル(パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、リノール酸エチル等)、中鎖脂肪酸トリグリセリド、高級アルコール(ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトステロール、ラウリルアルコール、セトステアリルアルコール、リノレイルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール等)、2-エチルヘキサン酸セチル、シリコーンオイル(ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン等)等の油性基剤;POE(10~50モル)フィトステロールエーテル、POE(10~50モル)ジヒドロコレステロールエーテル、POE(10~50モル)2-オクチルドデシルエーテル、POE(10~50モル)デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)オレイルエーテル、POE(2~50モル)セチルエーテル、POE(5~50モル)ベヘニルエーテル、POE(5~30モル)ポリオキシプロピレン(5~30モル)2-デシルテトラデシルエーテル、POE(10~50モル)ポリオキシプロピレン(2~30モル)セチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、これらのリン酸・リン酸塩(POEセチルエーテルリン酸ナトリウムなど)、POE(20~60モル)ソルビタンモノオレート、POE(10~60モル)ソルビタンモノイソステアレート、POE(10~80モル)グリセリルモノイソステアレート、POE(10~30モル)グリセリルモノステアレート、POE(20~100モル)・ポリオキシプロピレン変性シリコーン、POE・アルキル変性シリコーン、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジリシノレイン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(5~100)、ポリソルベート(20~85)、グリセリン脂肪酸エステル(モノステアリン酸グリセリン等)、水素添加大豆リン脂質、水素添加ラノリンアルコール等の界面活性剤;清涼化剤(メントール、カンフル、ボルネオール、ハッカ水、ハッカ油等)、防腐剤(メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸等)、着香剤(シトラール、1,8-シオネール、シトロネラール、ファルネソール等)、着色剤(タール色素(褐色201号、青色201号、黄色4号、黄色403号等)、カカオ色素、クロロフィル、酸化アルミニウム等)、pH調整剤(リン酸、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)、湿潤剤(dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、D-ソルビトール液、マクロゴール等)、安定化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、DL-アラニン、グリシン、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン、ローズマリー抽出物等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、粘着剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。
【0065】
製剤形態
前記外用組成物は、経皮適用できる製剤形態である限り、その製剤形態については、特に制限されず、液状、固形状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)等のいずれであってもよい。また、本発明の外用組成物は、水性製剤、油性製剤等の非乳化製剤であってもよく、また水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよい。
【0066】
前記外用組成物の製剤形態として、より一層効果的に美白効果を奏させるという観点から、好ましくは液状、クリーム状が挙げられる。
【0067】
また、前記外用組成物は、皮膚に適用されるものである限り、皮膚外用医薬品、化粧料、皮膚洗浄料等のいずれの製剤形態であってもよい。
【0068】
前記外用組成物の製剤形態として、具体的には、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、水溶性軟膏剤、油脂性軟膏剤、クリーム剤、フォーム剤、ジェル剤、貼付剤等の皮膚外用医薬品;軟膏、クリーム、乳液、化粧水、ローション、パック、ゲル等の化粧料;ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、リンス等の皮膚洗浄料等が挙げられる。これらの製剤形態の中でも、好ましくは皮膚外用医薬品、更に好ましくは液剤、クリーム剤が挙げられる。これらの製剤形態への調製は、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、製剤形態に応じた添加剤を用いて製剤化することにより行うことができる。
【0069】
用途
本発明の外用組成物は、メラニンの生成を抑制でき、皮膚のシミ、そばかす、くすみ、肝斑、老人性色素斑、物理的刺激による黒ずみ等の予防や改善が可能になっているので、美白用の外用組成物として好適に使用される。
【実施例
【0070】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
なお、以下の試験例及び処方例で使用した主な成分の製造元等は以下の通りである。
L-アスコルビン酸2-グルコシド:商品名「AA2G」(株式会社林原製)
ホオノキ抽出物:商品名「ファルコレックス ホオノキB」(一丸ファルコス株式会社製)、液状、乾燥固形分濃度0.175重量%、ホオノキ(Magnolia obovata Thunberg(Magnoliaceae))の樹皮(和厚朴)を1,3-ブチレングリコール水溶液を用いて溶媒抽出処理して得られた抽出物
プルーン抽出物:商品名「クレアージュ」(一丸ファルコス株式会社製)、液状、乾燥固形分濃度7.78重量%、プルーン(セイヨウスモモ(Prunus domestica Lindl.(Rosaceae)))の果肉を繊維素分解酵素で分解して得られるものに、水及び1,3-ブチレングリコールを加えることにより得られた抽出物
アーティチョーク葉抽出物:商品名「バイオベネフィティ」(一丸ファルコス株式会社製)、液状、乾燥固形分濃度0.08重量%、チョウセンアザミ(Cynara scolymus L.(Compositae))の葉をエタノール溶液にて抽出して得られるエキスを濃縮、乾固して、1,3-ブチレングリコール溶液を加えることにより得られた抽出物
ヒメフウロ抽出物:商品名「プリンセスケア」(一丸ファルコス株式会社製)、液状、乾燥固形分濃度1重量%、ヒメフウロ(Geranium robertianum L.(Geraniaceae))の全草から1,3-ブチレングリコール溶液で抽出して得られた抽出物
アルピニア・カツマダイ種子抽出物:商品名「アルピニアホワイト」(一丸ファルコス株式会社製)、液状、乾燥固形分濃度0.2重量%、アルピニア・カツマダイ(Alpinia katsumadai Hayata(Zingiberaceae))の種子からエタノール溶液で抽出して得られるエキスを濃縮し、1,3-ブチレングリコール溶液を加えることにより得られた抽出物
チンピ抽出物:商品名「マンダリンクリア」(一丸ファルコス株式会社製)、液状、乾燥固形分濃度3重量%、マンダリンオレンジ(Citrus reticulate Blanco(Rutaceae))の成熟した果皮を1,3-ブチレングリコール溶液にて抽出して得られた抽出物
ビルベリー葉抽出物:商品名「キュアベリー」(一丸ファルコス株式会社製)、液状、乾燥固形分濃度0.2重量%、ビルベリー(Vaccinium myrtillus L.(Ericaceae))の葉から1,3-ブチレングリコール溶液で抽出して得られた抽出物
カルボキシビニルポリマー:商品名「「カーボポール980」(Lubrizol Advanced Materials社製)
アルキル変性カルボキシビニルポリマー:商品名「カーボポールultrez20」(Lubrizol Advanced Materials社製、アルキル基の炭素数:10~30)
シリカ:商品名「ゴッドボールD-25C」(鈴木油脂工業株式会社製)、平均粒子径7~10μm、比表面積300~500m2/g、吸油量70~110ml/100g
【0072】
試験例1:メラニン生成抑制効果の評価
三次元培養皮膚モデル(MEL-300-A、MatTek社製)を用いて、メラニン生成抑制効果については評価した。具体的な試験方法は以下の通りである。
【0073】
MEL-300皮膚モデルカップを37℃に温めた維持培地(EPI-100LLMM)を0.9ml入れた6ウェルプレートの各ウェルにセットし、インキュベーター(37℃、5%CO2)に入れて1時間静置した。次いで、皮膚モデルカップの内部に、表1及び2に示す組成の各サンプル液(pH6.5)50μl加えて、インキュベーター(37℃、5%CO2)にて24時間培養を行った。その後、1回当たり0.5mW×12秒間の条件で紫外線(UV-B)照射を行い、更に24時間培養した。なお、紫外線照射は、UVBランプ(東芝ライテック社製、東芝健康線用蛍光ランプ)とUV検出器(TOPCON社製、UV-1)を用いて行った。その後、培地交換を行って、更に24時間培養した。なお、培地交換の都度、所定のサンプル液50μlを皮膚モデルカップに加えた。更に、同様の条件で紫外線照射と培地交換を繰り返し4回行うことにより、紫外線照射を計5回(合計紫外線照射量30mJ/cm2)、培地交換を計5回実施した。その後、以下に示す方法で、細胞生存率とメラニン生成量の測定を行った。また、コントロールとして、1,3-ブチレングリコールを0.5重量%含む水溶液をサンプル液として使用して、前記と同条件で試験を行った。
【0074】
<細胞活性の測定>
MTT試験により細胞生存率を測定した。具体的には、0.75mlのMTT試験薬と8.25mlの維持培地(EPI-100LLMM)を混合し、1ウェル当たり300μlとなるように添加した。皮膚モデルカップを、前記で調製したMTTの入った培地に移し、正確に3時間インキュベーターにて培養した。その後、組織の底面をPBS洗浄液で軽く洗浄して新しいプレートに移した。0.04N HCl酸性イソプロパノールを1mlずつ皮膚モデルカップの内側に添加し、蒸発しないようにプレートにカバーシールを貼り遮光して一晩インキュベーターにてブルーホルマザンを抽出した。抽出後、イソプロパノールをよく混ぜ合わせ、その内の200μlを96ウェルプレートに移した。マイクロプレートリーダーで570nmと620nmの光学濃度を測定し、それらの差をもって細胞活性とした。
【0075】
<メラニン生成量の測定>
MEL-300皮膚モデルカップをPBSで洗浄後、メスで細胞組織を剥離して回収した。得られた細胞組織をPBSに浸し、破砕及び遠心(2,000rpm、10分)を行った。その後、上清を取り除き、更にエタノールとジメチルエーテルの混合液(エタノール:ジメチルエーテル=3:1(容量比))を加えて、撹拌及び遠心(2,000rpm、10分)を行った。次いで、上清を取り除き、乾燥させた。乾燥物に1N水酸化ナトリウム水溶液(10重量%DMSO含有)を添加し、90℃の水浴にて20分間処理し、加熱溶融させた。その後、加熱溶融させた溶液をボルテックスにて軽く撹拌し、室温まで冷却した後に、405nmの吸光度を測定し、メラニン生成量を求めた。
【0076】
メラニン生成量を細胞生存率で除することにより、1細胞当たりのメラニン生成量を求めた。更に、コントロールの1細胞当たりのメラニン生成量を100として、各サンプル液を添加した場合の1細胞当たりのメラニン生成量の比率(メラニン生成比)を算出した。
【0077】
得られた結果を表1及び2に示す。この結果、ホオノキ抽出物単独(比較例2)では、メラニン生成抑制効果は認められず、アスコルビン酸2-グルコシド単独(比較例1)でも、メラニン生成抑制効果は不十分であった。また、アスコルビン酸2-グルコシドと、メラニン生成抑制効果が知られている植物抽出物(プルーン抽出物、チンピ抽出物、アーティチョーク葉抽出物、ビルベリー葉抽出物、アルピニア・カツマダイ種子抽出物、ヒメフウロ抽出物)を組み合わせた場合(比較例3~8)でも、メラニン生成抑制効果の増強は殆ど認められなかった。
【0078】
これに対して、アスコルビン酸2-グルコシドとホオノキ抽出物を組み合わせた場合(実施例1及び3~11)には、メラニン生成抑制効果が格段に高まっていた。更に、アスコルビン酸2-グルコシド及びホオノキ抽出物と共に、プルーン抽出物を組み合わせた場合(実施例4~8)では、メラニン生成抑制効果の飛躍的な向上が認められた。一方、スコルビン酸2-グルコシド及びホオノキ抽出物と共に、メラニン生成抑制作用が知られている他の植物抽出物(アーティチョーク葉抽出物、ヒメフウロ抽出物、アルピニア・カツマダイ種子抽出物)を組み合わせても、プルーン抽出物の場合程は、メラニン生成抑制効果の向上が認められなかった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
試験例2:使用感の評価
表3及び4に示す組成の皮膚化粧料(液剤)を調製した。具体的には、製造手順は以下の通りである。精製水にカルボキシビニルポリマー及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーを撹拌溶解させた後に、グリセリンを加えて撹拌溶解させて、調製物Aを得た。別途、1,3-ブチレングリコールに、トリメチルグリシン及び/又はシリカを加え、撹拌混合して均一化し、調製物Bを得た。次いで、調製物Aを撹拌しながら、調製物Bを加え、ホモミキサーで撹拌し、均一化した。更に、水酸化カリウムを加えてpHを6.5に調整した後に、L-アスコルビン酸2-グルコシド、ホオノキ抽出物、及びプルーン抽出物を加えて撹拌し、均一化することにより、皮膚化粧料を調製した。
【0082】
得られた各皮膚化粧料について、以下の方法で、塗布時のしっかりとした塗布感、べたつき感のなさ及びさっぱり感、塗布後の粉っぽさのなさ及び保温感について評価した。
【0083】
評価モニター10名が各皮膚化粧料約0.5gを腕に塗布して、塗布時のしっかりとした塗布感、べたつき感のなさ及びさっぱり感、並びに、塗布後の粉っぽさのなさ及び保湿感を評価した。具体的には、評価は、以下を「1」及び「10」としたVisual Analogue Scale(以下、VASと表記することもある)によるアンケートを実施することにより評点化した。アンケート結果を平均し、小数点第一位を四捨五入することにより、評価結果をまとめた。
<塗布時>
・塗布感
絡み付くような塗布感/ゲルを潰すような塗布感がない「1」
絡み付くような塗布感/ゲルを潰すような塗布感がある「10」
・さっぱり感
さっぱりとした感じがない「1」
さっぱりとした感じがある「10」
・べたつき感のなさ
べたつきを感じる「1」
べたつきを感じない「10」
<塗布から30秒後>
・粉っぽさのなさ
粉っぽさを感じる「1」
粉っぽさを感じない「10」
・保湿感
保湿感(しっとりとした感じ)がない「1」
保湿感(しっとりとした感じ)がある「l0」
【0084】
得られた結果を表3及び4に示す。アスコルビン酸2-グルコシド、ホオノキ抽出物及びプルーン抽出物に加えて、水溶性増粘剤(カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー)、シリカ、及びトリメチルグリシンを含む場合には、しっかりとした塗布感、べたつき感のなさ、さっぱり感、粉っぽさのなさ及び保湿感の点で、満足できる結果になっていた。とりわけ、水溶性増粘剤1重量部に対してトリメチルグリシンが0.1~6重量部を満たす場合には、しっかりとした塗布感、べたつき感のなさ、さっぱり感、粉っぽさのなさ及び保湿感が、極めて良好な結果であった。
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
処方例1~9
表5に記載の処方に従い、常法にて皮膚化粧料を調製した(処方例1~6はpH6.5、処方例7~9はpH4.5)。
【0088】
【表5】
【0089】
処方例10~15
表6に記載の処方に従い、以下の手順で皮膚化粧料を調製した。
工程(1):精製水にL-アスコルビン酸2-グルコシド又はリン酸L-アスコルビルマグネシウムを溶解し、次いで、精製水に水酸化カリウムを溶解した液でpHを6に調整した(調製物(A-1))。
工程(2):(B)、(C)をそれぞれ加熱撹拌溶解した(調製物(B)、調製物(C))。
工程(3):調製物(B)を加熱撹拌しながら調製物(C)を加え、ホモミキサーで撹拌均一化した。
工程(4):その後、撹拌しながら徐々に40℃以下まで冷却し、調製物(A-1)と(A)の残りを加え、撹拌均一化し皮膚化粧料を調製した。
【0090】
【表6】