(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】ピックアップ方法、ピックアップ装置、及び試験装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20241028BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
H01L21/52 F
H01L21/78 Y
(21)【出願番号】P 2020192727
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0294839(US,A1)
【文献】特開2010-251480(JP,A)
【文献】特開2006-120657(JP,A)
【文献】特開2009-049127(JP,A)
【文献】特開2019-176021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープに貼着されたチップを該テープからピックアップするピックアップ方法であって、
ピックアップすべきチッ
プに対して冷却気体を噴射し
、ピックアップすべきチップが貼着された貼着領域のテープの粘着力を低下させる粘着力低下ステップと、
該粘着力低下ステップを実施した後、該貼着領域の該テープを介してピックアップすべきチップを突き上げ部材で突き上げるとともに、該チップをチップ保持具で保持して該テープからピックアップするピックアップステップと、を備えたピックアップ方法。
【請求項2】
該冷却気体は二酸化炭素を含む、請求項1に記載のピックアップ方法。
【請求項3】
該粘着力低下ステップでは、該冷却気体を該チップに対して噴射するとともに該チップ上から異物を除去する、請求項1または請求項2に記載のピックアップ方法。
【請求項4】
テープにチップが貼着されるとともに該テープの外周がフレームに装着されたチップユニットからチップをピックアップするピックアップ装置であって、
チップユニットの該フレームを固定するフレーム固定ユニットと、
該フレーム固定ユニットで固定されたチップユニットの該テープを介してチップを突き上げる突き上げ部材と、
チップユニットを挟んで該突き上げ部材に対面し、該突き上げ部材で突き上げられるチップを保持するチップ保持具と、
該突き上げ部材でチップを突き上げる前に
、ピックアップすべきチッ
プに対して冷却気体を噴射する冷却ノズルと、を備えたピックアップ装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたピックアップ装置と、
該ピックアップ装置のチップ保持具に保持されて該チップユニットからピックアップされたチップの抗折強度を測定する測定ユニットと、
該チップを該チップユニットからピックアップするピックアップ位置と、該測定ユニットにより抗折強度が測定される測定位置との間で、該チップ保持具を移動させる移動ユニットと、
を備えた試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープからチップをピックアップするピックアップ方法、ピックアップ装置、及び試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハを分割して個々のチップへと個片化する前に、あらかじめウェーハをテープに貼着することでハンドリングを容易にしている。個片化されたチップは、テープからピックアップされる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
チップのピックアップを容易にするためにも、テープとして、例えば紫外線の照射で粘着力が低下するUV照射テープが広く利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
UV照射テープは、紫外線が照射されることで紫外線硬化型の糊が硬化して粘着力が低減する。しかしながら、UV照射テープは、糊の粘着力が完全になくなる訳ではなく、厚みの薄いチップではピックアップが難しく、ピックアップ時にチップが損傷してしまう場合もあり、改善が切望されていた。特に、厚みが100μm以下の厚みが薄いチップの場合、破損リスクが非常に高い。
【0006】
本発明の目的は、ピックアップの際にチップが破損するおそれを低減することができるピックアップ方法、ピックアップ装置及び試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のピックアップ方法は、テープに貼着されたチップを該テープからピックアップするピックアップ方法であって、ピックアップすべきチップに対して冷却気体を噴射し、ピックアップすべきチップが貼着された貼着領域のテープの粘着力を低下させる粘着力低下ステップと、該粘着力低下ステップを実施した後、該貼着領域の該テープを介してピックアップすべきチップを突き上げ部材で突き上げるとともに、該チップをチップ保持具で保持して該テープからピックアップするピックアップステップと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記ピックアップ方法において、該冷却気体は二酸化炭素を含んでも良い。
【0009】
前記ピックアップ方法において、該粘着力低下ステップでは、該冷却気体を該チップに対して噴射するとともに該チップ上から異物を除去しても良い。
【0010】
本発明のピックアップ装置は、テープにチップが貼着されるとともに該テープの外周がフレームに装着されたチップユニットからチップをピックアップするピックアップ装置であって、チップユニットの該フレームを固定するフレーム固定ユニットと、該フレーム固定ユニットで固定されたチップユニットの該テープを介してチップを突き上げる突き上げ部材と、チップユニットを挟んで該突き上げ部材に対面し、該突き上げ部材で突き上げられるチップを保持するチップ保持具と、該突き上げ部材でチップを突き上げる前に、ピックアップすべきチップに対して冷却気体を噴射する冷却ノズルと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の試験装置は、前記ピックアップ装置と、該ピックアップ装置のチップ保持具に保持されて該チップユニットからピックアップされたチップの抗折強度を測定する測定ユニットと、該チップを該チップユニットからピックアップするピックアップ位置と、該測定ユニットにより抗折強度が測定される測定位置との間で、該チップ保持具を移動させる移動ユニットと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ピックアップの際にチップが破損するおそれを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るピックアップ装置を備える試験装置の構成例の一部を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された試験装置の要部の斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された試験装置の測定対象のウェーハを備えるチップユニットの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された試験装置の突き上げユニット等を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るピックアップ方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5に示されたピックアップ方法の粘着力低下ステップを模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図5に示されたピックアップ方法のピックアップステップにおいて、ピックアップすべきチップをチップ保持具と突き上げユニットとでチップを挟持した状態を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図5に示されたピックアップ方法のピックアップステップにおいてピックアップすべきチップを突き上げ部材が突き上げた状態を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の変形例に係る試験装置のピックアップ装置の粘着力低下ステップを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るピックアップ装置及び試験装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るピックアップ装置を備える試験装置の構成例の一部を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された試験装置の要部の斜視図である。
図3は、
図1に示された試験装置の測定対象のウェーハを備えるチップユニットの斜視図である。
【0016】
実施形態1に係る
図1及び
図2に示す試験装置1は、
図3に示すチップユニット17のテープ15から試験片であるチップ14をピックアップし、チップ14を破壊して、チップ14の抗折強度を測定する装置である。
【0017】
(チップユニット)
実施形態1では、チップユニット17は、
図3に示すように、テープ15にウェーハ10から分割された複数のチップ14が貼着されているとともにテープ15の外周が円環状のフレーム16に装着されて、構成されている。ウェーハ10は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板11とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等である。
【0018】
ウェーハ10は、基板11の表面11-1に格子状に形成された複数の分割予定ライン12によって区画された領域にデバイス13が形成されている。実施形態1において、ウェーハ10は、外周にフレーム16が装着されたテープ15が表面11-1の裏側の裏面11-2に貼着されて、フレーム16に支持されて、チップユニット17を構成している。
【0019】
また、ウェーハ10は、分割予定ライン12に沿って切削加工等が施されて、個々のチップ14に個片化されている。即ち、ウェーハ10は、チップ14間にウェーハ10自体を貫通した切削溝18が形成されている。なお、チップ14は、基板11の一部とデバイス13とを備える。
【0020】
テープ15は、可撓性でかつ非粘着性の樹脂により構成された基材層と、基材層に積層されかつ可撓性でかつ粘着性の樹脂により構成されてウェーハ10及びフレーム16に貼着する糊層とを備える。糊層の粘着力は、温度が低くなるのにしたがって低下する。
【0021】
なお、実施形態1では、ウェーハ10は、基板11の表面11-1にデバイス13が形成されているが、本発明では、試験装置1がウェーハ10を個々のチップ14に分割する所謂後工程の加工条件の妥当性を評価するために用いられる場合には、表面11-1にデバイス13が形成されていなくても良い。
【0022】
(試験装置)
試験装置1は、
図1に示すように、装置本体2上に設けられチップユニット17を複数収容するカセット4が載置されるカセット載置台3と、カセット4にチップユニット17を出し入れする搬出入ユニット5と、カセット4から搬出されたチップユニット17又はカセット4に搬入される前のチップユニット17が仮置きされる一対の仮置きレール6と、実施形態1に係るピックアップ装置20と、移動ユニットである保持具移動ユニット80(
図2に示す)と、チップ観察機構100と、測定ユニットである強度測定ユニット200と、制御ユニット400とを備える。
【0023】
カセット4は、複数のチップユニット17を鉛直方向と平行なZ軸方向に間隔をあけて収容する収容容器であって、チップユニット17を出し入れする開口8が設けられている。カセット載置台3は、上面にカセット4が載置され、カセット4をZ軸方向に昇降させる。
【0024】
一対の仮置きレール6は、装置本体2上でかつカセット載置台3に載置されるカセット4の開口8の幅方向の両端に設けられ、水平方向と平行なY軸方向に直線状に延びている。一対の仮置きレール6は、互いに平行に配置され、Y軸方向に直交しかつ水平方向と平行なX軸方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。一対の仮置きレール6は、チップユニット17のフレーム16が仮置きされる。
【0025】
搬出入ユニット5は、図示しない移動機構によりY軸方向に移動自在に設けられている。搬出入ユニット5は、カセット4からチップユニット17を搬出して、仮置きレール6上に仮置きした後、ピックアップ装置20のフレーム固定ユニット7の降下したフレーム支持部材22の上面までチップユニット17を搬出して、フレーム支持部材22の上面に載置する。また、搬出入ユニット5は、フレーム固定ユニット7の降下したフレーム支持部材22の上面上のチップユニット17を仮置きレール6を介してカセット4内に搬入する。
【0026】
(ピックアップ装置)
ピックアップ装置20は、前述したチップユニット17のテープ15からチップ14をピックアップする装置である。ピックアップ装置20は、
図2に示すように、フレーム固定ユニット7と、フレーム固定ユニット7をY軸方向とX軸方向とに移動する移動機構30と、突き上げ部材である突き上げユニット40と、撮像カメラ50と、ピックアップ機構60と、冷却ユニット70とを備える。
【0027】
(フレーム固定ユニット)
フレーム固定ユニット7は、チップユニット17のテープ15のウェーハ10の周囲に配置されたフレーム16即ちピックアップすべきチップ14の周囲に配置されたフレーム16を保持し、固定するものである。フレーム固定ユニット7は、移動テーブル21上に設置されている。フレーム固定ユニット7は、環状のフレーム支持部材22と、フレーム支持部材22の上方に配置されかつ固定された環状のフレーム押さえ部材23と、フレーム支持部材22を昇降させる図示しない昇降機構とを備える。
【0028】
フレーム支持部材22は、上昇される前では上面が仮置きレール6の上面と同一平面上に位置して、チップユニット17のフレーム16が載置される。フレーム固定ユニット7は、フレーム支持部材22の上面にチップユニット17のフレーム16が載置されると、昇降機構がフレーム支持部材22を上昇させて、フレーム押さえ部材23とフレーム支持部材22との間にフレーム16を挟み込む。フレーム固定ユニット7は、フレーム押さえ部材23とフレーム支持部材22との間にフレーム16を挟み込んで、テープ15のウェーハ10の周囲に配置されたフレーム16を保持、固定し、チップユニット17を固定する。
【0029】
(移動機構)
移動機構30は、装置本体2上に設けられかつ移動テーブル21をX軸方向に移動するX軸移動機構31と、X軸移動機構31によりX軸方向に移動される移動テーブル21上に設けられかつフレーム固定ユニット7をY軸方向に移動するY軸移動機構32とを備える。X軸移動機構31は、一対の仮置きレール6とY軸方向に並ぶ位置と一対の仮置きレール6から離れる位置とに亘って移動テーブル21即ちフレーム固定ユニット7をX軸方向に移動する。各移動機構31,32は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ33,34、ボールねじ33,34を軸心回りに回転させる周知のモータ35,36及び移動テーブル21又はフレーム固定ユニット7をX軸方向又はY軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール37,38を備える。
【0030】
(突き上げユニット)
図4は、
図1に示された試験装置の突き上げユニット等を模式的に示す断面図である。突き上げユニット40は、X軸移動機構31により一対の仮置きレール6から離れる位置に位置付けられたフレーム固定ユニット7の下方に配置される。突き上げユニット40は、装置本体2の凹部9内に設けられ、X軸移動機構31により一対の仮置きレール6から離れる位置に位置付けられたフレーム固定ユニット7で固定されたチップユニット17のテープ15を介していずれかのチップ14を突き上げるものである。
【0031】
突き上げユニット40は、全体が一体として、モータ等で構成される昇降機構(図示せず)と接続され、Z軸方向に沿って昇降する。突き上げユニット40は、
図4に示すように、中空の円筒状に形成されたテープ保持部41と、テープ保持部41の内部に配置された四角柱状の突き上げ部42とを有する。テープ保持部41が有する上面48は、水平方向と平行に平坦に形成され、ピックアップすべきチップ14の周囲のテープ15を吸引保持するテープ保持面である。テープ保持部41の上面48には、テープ保持部41の周方向に沿って同心円状に形成された複数の吸引溝44が形成されている。吸引溝44はそれぞれ、突き上げユニット40の内部に形成された吸引路45及び開閉弁46を介して、エジェクタ等でなる吸引源47に接続している。
【0032】
突き上げ部42は、上面の平面形状がチップ14の平面形状よりも小さい四角形に形成されている。突き上げ部42は、四角筒状に形成された第1突き上げ部材42-1と、四角柱状に形成されかつ第1突き上げ部材42-1内に収容された第2突き上げ部材42-2とを備える。第1突き上げ部材42-1、及び第2突き上げ部材42-2は、それぞれ、モータ等で構成される昇降ユニット49と接続され、Z軸方向に沿って昇降する。
【0033】
第1突き上げ部材42-1は、昇降ユニット49により上昇されることで、ピックアップすべきチップ14の外周領域をテープ15を介して突き上げる。第2突き上げ部材42-2は、昇降ユニット49により上昇されることで、チップ14の中央をテープ15を介して突き上げる。
【0034】
突き上げユニット40は、フレーム固定ユニット7で保持されたフレーム16を含むチップユニット17が上方に位置付けられた状態で、テープ保持部41の上面48の吸引溝44が吸引源47により吸引されて、テープ保持部41の上面48にピックアップすべきチップ14の周囲のテープ15を吸引保持する。突き上げユニット40は、テープ保持部41の上面48にピックアップすべきチップ14の周囲のテープ15を吸引保持して、突き上げ部42の各突き上げ部材42-1,42-2が上昇されることで、チップ14をテープ15よりも上方に突き上げて、チップ14の外周縁をテープ15から剥離する。なお、突き上げユニット40の寸法は、チップ14のサイズに応じて適宜調整される。
【0035】
実施形態1では、突き上げユニット40は、チップ14を突き上げる際に、昇降ユニット49により第1突き上げ部材42-1、及び第2突き上げ部材42-2の上昇が同時に同速度で開始され、第2突き上げ部材42-2が第1突き上げ部材42-1よりも上側まで上昇されて、それぞれの上昇が停止する。即ち、突き上げユニット40は、チップ14を突き上げる際に、第1突き上げ部材42-1、及び第2突き上げ部材42-2が同時に同速度で上昇を開始し、第1突き上げ部材42-1、及び第2突き上げ部材42-2が順に上昇を停止する。
【0036】
(撮像カメラ)
撮像カメラ50は、X軸移動機構31により一対の仮置きレール6から離れる位置に位置付けられたフレーム固定ユニット7の上方に配置される。撮像カメラ50は、X軸移動機構31により一対の仮置きレール6から離れる位置に位置付けられたフレーム固定ユニット7で保持されたフレーム16を含むチップユニット17のウェーハ10の突き上げユニット40の突き上げ部材42-1,42-2により突き上げられるチップ14及びこのチップ14の周囲を撮像して、撮像画像を形成するものである。
【0037】
撮像カメラ50は、フレーム固定ユニット7で保持されたフレーム16を含むチップユニット17のウェーハ10の突き上げユニット40の突き上げ部材42-1,42-2により突き上げられるチップ14及びこのチップ14の周囲を撮像する撮像素子(即ち、画素)を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像カメラ50は、フレーム固定ユニット7で保持されたフレーム16を含むチップユニット17のウェーハ10の突き上げユニット40の突き上げ部材42-1,42-2により突き上げられるチップ14及びこのチップ14の周囲を撮影して、ウェーハ10の突き上げユニット40により突き上げられるピックアップすべきチップ14と突き上げユニット40との位置合わせを行なうため等の撮像画像を取得し、取得した撮像画像を制御ユニット400に出力する。
【0038】
(ピックアップ機構)
ピックアップ機構60は、複数のチップ14に分割されテープ15で支持されたウェーハ10から突き上げユニット40により突き上げられたチップ14をピックアップするものである。ピックアップ機構60は、保持具移動ユニット80によりY軸方向とZ軸方向とに移動される移動基台61と、移動基台61から保持具移動ユニット80から離れる方向にX軸方向に延在したアーム62と、アーム62の先端に設けられチップ14を保持するチップ保持具63と、アーム62の全長を伸縮する伸縮ユニット64とを備える。
【0039】
チップ保持具63は、
図4に示すように、X軸移動機構31により一対の仮置きレール6から離れる位置に位置付けられたフレーム固定ユニット7で固定されたチップユニット17を挟んで突き上げユニット40の突き上げ部材42-1,42-2に対面する下面65を有している。下面65の平面形状は、チップ14の同等の大きさの四角形に形成されている。下面65には、吸引路66及び開閉弁67を介してエジェクタ等でなる吸引源68に接続した吸引溝69が形成されている。下面65は、突き上げユニット40の突き上げ部材42-1,42-2で突き上げられたチップ14を吸引保持する保持面である。
【0040】
チップ保持具63は、下面65に突き上げ部材42-1,42-2で突き上げられたチップ14を接触させた状態で、吸引溝69が吸引源68により吸引されて、チップ14を下面65に吸引保持する。チップ保持具63は、下面65に突き上げユニット40の突き上げ部材42-1,42-2で突き上げられたチップ14を吸引保持し、保持具移動ユニット80により上昇されることで、下面65に吸引保持したチップ14をテープ15からピックアップする。
【0041】
また、実施形態1では、試験装置1は、突き上げユニット40の上面側にテープ15からピックアップすべき際にチップ14にかかる荷重を測定する測定手段であるロードセルを備えても良い。ロードセルは、測定結果を制御ユニット400に出力する。なお、本発明では、測定手段であるロードセルをピックアップ機構60のチップ保持具63の下面65側に設けても良い。
【0042】
(冷却ユニット)
冷却ユニット70は、突き上げユニット40でチップ14を突き上げる前に、少なくともピックアップすべきチップ14が貼着されたテープ15の貼着領域15-1(
図6に示す)を冷却するものである。実施形態1において、冷却ユニット70は、冷却ノズル71と、冷却ノズル71に液化炭酸ガスを供給する液化炭酸ガス供給源72と、冷却ノズル71に圧縮エアーを供給する噴射用ガス供給源73とを備える。
【0043】
冷却ノズル71は、X軸移動機構31により一対の仮置きレール6から離れる位置に位置付けられたフレーム固定ユニット7の上方に配置され、実施形態1では、撮像カメラ50の隣りに配置されている。実施形態1では、冷却ノズル71は、撮像カメラ50とともに、固定されているが、撮像カメラ50とともに、本発明では、周知のモータ等により構成された移動機構によりX軸方向及びY軸方向に移動自在に設けられても良い。
【0044】
冷却ノズル71は、X軸移動機構31により一対の仮置きレール6から離れる位置に位置付けられたフレーム固定ユニット7に固定されたチップユニット17のピックアップすべきチップ14とZ軸方向に対面する噴射口を備える。冷却ノズル71は、突き上げユニット40でチップ14を突き上げる前に、液化炭酸ガス供給源72から供給された液化炭酸ガスと、噴射用ガス供給源73から供給された圧縮エアーとを混合し、液化炭酸ガスが断熱膨張することによって冷却されて微粒子状のドライアイス粒子を形成して、ピックアップすべきチップ14に対して微粒子状のドライアイス粒子と圧縮エアーとの混合流体である冷却気体74(
図6に示す)を噴射口から噴射する。このために、冷却気体74は、二酸化炭素を含む。冷却ノズル71は、ピックアップすべきチップ14が貼着された貼着領域15-1のテープ15にピックアップすべきチップ14を介して、冷却気体74を噴射する。
【0045】
冷却ノズル71は、ピックアップすべきチップ14が貼着された貼着領域15-1のテープ15を、ピックアップすべきチップ14を介して、冷却し、冷却することで、テープ15の貼着領域15-1の粘着力を低下させる。実施形態1では、冷却ノズル71がピックアップすべきチップ14に噴射する冷却気体74の温度は、テープ15の貼着領域15-1の糊層の粘着力をほぼ無くすために、-90℃以上でかつ-40℃以下であるのが望ましい。-90℃未満の場合には、冷却気体74の冷却にかかるコストが高騰するとともに、-40℃を超える場合には、チップ14を破損させることなくピックアップできる程度に、テープ15の貼着領域15-1の粘着力を低下させることができないからである。
【0046】
また、本発明では、冷却ノズル71がピックアップすべきチップ14に噴射する冷却気体74の温度は、テープ15の貼着領域15-1の糊層の粘着力を無くすために、-85℃以上でかつ-75℃以下であるのが更に望ましい。-85℃以上でかつ-75℃以下であるのが更に望ましいのは、冷却気体74の冷却にかかるコストの高騰を抑制しながらも、チップ14を破損させることなくピックアップできる程度に、テープ15の貼着領域15-1の粘着力を低下させることができるからである。
【0047】
また、冷却ノズル71は、噴射口からピックアップすべきチップ14に微粒子状のドライアイス粒子と圧縮エアーとの混合流体である冷却気体74を噴射することで、ドライアイス微粒子をチップ14とチップ14に不着した異物との間に入り込ませる。このために、ドライアイス微粒子が気化膨張すると、異物をチップ14から引き剥がす。こうして、冷却ノズル71は、チップ14に付着している異物を除去することができる。
【0048】
また、冷却ユニット70は、噴射用ガス供給源73から圧縮エアーを冷却ノズル71に供給する供給経路中に圧縮エアーをイオン化するイオナイザー(帯電防止手段)を設けるのが好ましい。この場合、冷却ユニット70は、ドライアイス微粒子の衝突に伴い生じる静電気を抑制することができる。
【0049】
また、実施形態1では、冷却ユニット70は、前述した冷却気体74を噴射する。しかしながら、本発明では、冷却気体74として、酸素と窒素とを体積混合比78対20で含んだ気体、HFO-1234Ze(冷媒 代替フロン:沸点-19℃)とジメチルエーテル(噴射剤:沸点-24℃)の混合ガスを噴射しても良い。
【0050】
(保持具移動ユニット)
保持具移動ユニット80は、チップ保持具63をZ軸方向とY軸方向とに沿って移動させるものである。保持具移動ユニット80は、チップ14をテープ15からピックアップするピックアップ位置と、強度測定ユニット200の支持ユニット210の一対の支持部上にチップ14が載置して、チップ14が強度測定ユニット200により抗折強度が測定される測定位置との間で、チップ保持具63を移動させる。保持具移動ユニット80は、チップ保持具63をピックアップ位置と測定位置との間で移動することで、チップ保持具63でピックアップされたチップ14を強度測定ユニット200の支持ユニット210に搬送する。
【0051】
保持具移動ユニット80は、
図2に示すように、装置本体2上に設けられかつ移動テーブル83をY軸方向に移動する第2Y軸移動機構81と、第2Y軸移動機構81によりY軸方向に移動される移動テーブル83上に設けられかつ移動基台61即ちピックアップ機構60をZ軸方向に移動するZ軸移動機構82とを備える。
【0052】
第2Y軸移動機構81は、突き上げユニット40のテープ保持部41の上面48とチップ保持具63の下面65がZ軸方向に対面するピックアップ位置から移動テーブル83即ちピックアップ機構60をY軸方向に沿って強度測定ユニット200に向かって移動する。各移動機構81,82は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ84,85、ボールねじ84,85を軸心回りに回転させる周知のモータ86,87及び移動テーブル83又はピックアップ機構60をY軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール88,89を備える。
【0053】
(チップ観察機構)
チップ観察機構100は、チップ14の表面11-1、裏面11-2及び側面を撮像して観察するものである。チップ観察機構100は、
図1及び
図2に示すように、装置本体2上の突き上げユニット40のY軸方向の隣に配置された下方撮像ユニット102と、側方撮像ユニット112と、チップ14の上下を反転するチップ反転機構150とを備える。
【0054】
下方撮像ユニット102は、ピックアップ機構60のチップ保持具63に保持されたチップ14を下方から撮像する下方撮像カメラ103を備える。下方撮像カメラ103は、チップ保持具63の移動経路と重なる位置に配置されている。下方撮像ユニット102は、下方撮像カメラ103がチップ14を下方から撮像し、撮像して得た画像を制御ユニット400に出力する。
【0055】
側方撮像ユニット112は、チップ14を側方から即ちチップ14の側面を撮像するものである。側方撮像ユニット112は、下方撮像ユニット102のY軸方向の隣に配置され、実施形態1では、下方撮像ユニット102よりも突き上げユニット40から離れた側に配置されている。
【0056】
側方撮像ユニット112は、チップ14を支持する柱状のチップ支持台114と、チップ14の側面を撮像する側面撮像カメラ113とを備える。
【0057】
チップ支持台114は、装置本体2から上方に向かって延びており、下方撮像カメラ103とY軸方向に並ぶ位置(即ち、チップ保持具63の移動経路と重なる位置)に配置されている。チップ支持台114は、上面が水平方向と平行に平坦に形成され、上面上にピックアップ機構60のチップ保持具63により搬送されたチップ14を支持する。また、チップ支持台114は、図示しない回転駆動源と接続されており、回転駆動源によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転する。
【0058】
側面撮像カメラ113は、チップ支持台114の上面上に配置されたチップ14の側面を撮影可能な位置に配置されている。側面撮像カメラ113は、チップ14の側面を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。側面撮像カメラ113は、チップ支持台114の上面に配置されたチップ14の側面を撮像し、撮像して得た画像を制御ユニット400に出力する。
【0059】
なお、試験装置1は、チップ保持具63の移動経路と重なる位置にチップ支持台114を設けているため、チップ保持具63によってチップ14をチップ支持台114の上面に配置できる。
【0060】
側方撮像ユニット112は、チップ支持台114によって支持されたチップ14の一側面を側面撮像カメラ113によって撮像する。その後、チップ支持台114を所定の角度回転させた後、側面撮像カメラ113によってチップ14の他の側面を撮像する。このようにして、側方撮像ユニット112は、側面撮像カメラ113によってチップ14の全ての側面(例えば、チップ14の4辺の側面)が撮像し、チップ14の厚さや、チップ14に形成された欠け(チッピング)の大きさ等を含んだ画像を得て、得た画像を制御ユニット400に出力する。また、側方撮像ユニット112は、チップ支持台114の回転角度を制御することにより、チップ14が強度測定ユニット200に配置される際における、チップ14の水平方向の向き(角度)を調整できる。
【0061】
上記の下方撮像ユニット102及び側方撮像ユニット112により、チップ観察機構100は、チップ保持具63にピックアップされたチップ14の表面11-1、裏面11-2及び側面を撮像する。なお、本発明では、チップ14の側面を撮像する側面撮像カメラ113は、チップ保持具63によって保持された状態のチップ14の側面を撮像可能な位置に設けられていてもよい。この場合、チップ14をチップ支持台114で支持することなくチップ14の側面を観察できるため、チップ14をチップ支持台114上に配置することによってチップ14の裏面11-2等が傷つくことを防止できる。
【0062】
チップ反転機構150は、側方撮像ユニット112のチップ支持台114の上方に配置されている。チップ反転機構150は、先端部でチップ14を保持した状態で、X軸方向と平行な軸心回りに基底部151を180°回転可能に構成されている。
【0063】
チップ反転機構150は、チップ14の上下に反転する際、チップ14を支持したチップ支持台114の上面に対して、
図1及び
図2中に実線で示す位置から基底部151を180°回転させて、
図1及び
図2中に点線で示す位置に位置付ける。チップ反転機構150は、先端部にチップ14を吸引保持し、基底部151を180°回転して、チップ14の上下を反転する。
【0064】
チップ反転機構150により反転されたチップ14は、ピックアップ機構60のチップ保持具63により吸引保持されて、チップ反転機構150の先端部の吸引保持が停止した後、保持具移動ユニット80に移動されるチップ保持具63により下方撮像ユニット102上又は強度測定ユニット200に搬送される。このように、チップ反転機構150は、チップ14の上下を反転する。
【0065】
(強度測定ユニット)
強度測定ユニット200は、ピックアップ機構60でピックアップされたチップ14の抗折強度を測定する測定ユニットである。強度測定ユニット200は、チップ観察機構100とY軸方向の隣に配置され、実施形態1では、チップ観察機構100よりも突き上げユニット40から離れた側に配置されている。また、実施形態1では、強度測定ユニット200は、チップ保持具63の移動経路と重なる位置に配置されている。
【0066】
強度測定ユニット200は、支持ユニット210と、押圧ユニット220とを備える。支持ユニット210は、ピックアップ機構60のチップ保持具63によりピックアップされかつチップ観察機構100により表面11-1、裏面11-2及び側面が撮像されたチップ14を支持するものである。支持ユニット210は、チップ保持具63の移動経路と重なる位置に配置されている。このために、保持具移動ユニット80は、チップ保持具63を突き上げユニット40にZ軸方向に対向する位置から支持ユニット210とZ軸方向に対向する位置に移動する。
【0067】
支持ユニット210は、所定間隔を有して配設され、チップ14の裏面11-2を支持する一対の支持部を備える。一対の支持部は、X軸方向に互いに所定間隔をあけて配設されている。
【0068】
押圧ユニット220は、支持ユニット210に支持されたチップ14を圧子221で押圧し、チップ14の押圧時に押圧ユニット220にかかる荷重を測定するとともに、支持ユニット210に支持されたチップ14を押圧して破壊するものである。押圧ユニット220は、支持ユニット210の上方に設けられている。
【0069】
押圧ユニット220は、
図1及び
図2に示すように、圧子221と、圧子移動ユニット222と、荷重測定器223とを備える。
【0070】
圧子221は、支持ユニット210よりも上方で、且つ、チップ14の裏面11-2を支持する一対の支持部の間の上方に配置されている。圧子移動ユニット222は、一対の支持部で支持されたチップ14に対して圧子221をZ軸方向に沿って相対的に近接移動させるものである。圧子移動ユニット222は、圧子221を下端に支持して、圧子221を支持ユニット210の一対の支持部の間とZ軸方向に沿って対向させて、圧子221をZ軸方向に沿って昇降移動させる。
【0071】
荷重測定器223は、圧子221が支持部で支持されたチップ14を押圧する荷重を測定するものである。実施形態1では、荷重測定器223は、圧子移動ユニット222によって圧子221とともにZ軸方向に沿って昇降移動される。荷重測定器223は、周知のロードセル等により構成され、圧子221が一対の支持部で支持されたチップ14を押圧する荷重を測定し、測定結果を制御ユニット400に出力する。
【0072】
強度測定ユニット200は、チップ14の抗折強度を測定する際は、一対の支持部上にチップ保持具63等によりチップ14が載置される。このとき、チップ14は、両端部が一対の支持部によって支持され、中央部が一対の支持部間と重なる。
【0073】
強度測定ユニット200は、圧子221を圧子移動ユニット222により降下させて、圧子221でチップ14を押圧し、チップ14を押圧する圧子221にかかる荷重(Z軸方向の力)を荷重測定器223によって測定し、測定結果を適宜制御ユニット400に出力しながら圧子221でチップ14を破壊する。強度測定ユニット200は、チップ14の一対の支持部及び圧子221を用いた3点曲げ試験を行い、この3点曲げ試験により、チップ14の曲げ強度(抗折強度)を測定し、測定結果を制御ユニット400に出力する。
【0074】
また、試験装置1は、良品のチップ14を複数収容する収容トレイ91が設置されるトレイ設置部90が設けられている。実施形態1では、トレイ設置部90は、装置本体2上のチップ保持具63の移動経路と重なる位置に設けられ、強度測定ユニット200のチップ支持台114側に配置されている。
【0075】
(制御ユニット)
制御ユニット400は、試験装置1の上述した各構成ユニットをそれぞれ制御して、チップ14の抗折強度を測定するなどの各チップ14に対する測定動作を試験装置1に実施させるものである。即ち、制御ユニット400は、試験装置1及びピックアップ装置20の上述した各構成ユニットであるフレーム固定ユニット7と、突き上げユニット40と、撮像カメラ50と、ピックアップ機構60即ちチップ保持具63と、冷却ユニット70と、保持具移動ユニット80とをそれぞれ制御して、チップユニット17からチップ14をピックアップするピックアップ動作をピックアップ装置20に実施させるものである。
【0076】
制御ユニット400は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット400の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、試験装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して試験装置1の上述した各ユニットに出力する。
【0077】
また、制御ユニット400は、測定動作の状態や画像などを表示する表示画面301を有する表示手段である表示ユニット300(
図1に示す)と、オペレータが試験装置1の制御ユニット400に情報などを入力する際に用いる入力手段であるタッチパネル302(
図1に示す)とが接続されている。表示ユニット300は、液晶表示装置などにより構成される。タッチパネル302は、表示ユニット300の表示画面301に重ねられる。
【0078】
また、制御ユニット400は、カセット4に収容される複数のチップユニット17の各チップユニット17の良品のチップ14の位置と、不良品のチップ14の位置とを記憶している。
【0079】
(ピックアップ方法)
次に、本明細書は、実施形態1に係るピックアップ方法を図面に基づいて説明する。
図5は、実施形態1に係るピックアップ方法の流れを示すフローチャートである。ピックアップ方法は、チップユニット17のテープ15に貼着されたチップ14をテープ15からピックアップする方法であるとともに、実施形態1では、チップユニット17からピックアップしたチップ14に対して試験装置1が測定動作を実施する方法、即ちチップ14の抗折強度を測定する方法でもある。即ち、実施形態1では、ピックアップ方法は、試験装置1の測定動作である。
【0080】
実施形態1に係るピックアップ方法は、オペレータが複数のチップユニット17を収容したカセット4をカセット載置台3に設置し、タッチパネル302を操作して、測定内容情報を制御ユニット400に入力し、制御ユニット400がオペレータの測定開始指示を受け付けると、試験装置1により実施される。なお、測定内容情報は、各チップユニット17の良品のチップ14の位置と、不良品のチップ14の位置とを含む。
【0081】
実施形態1では、試験装置1は、各チップユニット17からチップ14を一つずつ順にピックアップする。なお、本明細書では、ピックアップ方法の実施中に、チップ14をピックアップする度に、オペレータがタッチパネル等を操作して、テープ15からピックアップするチップ14を選定しても良い。ピックアップ方法は、
図5に示すように、保持ステップ1001と、粘着力低下ステップ1002と、ピックアップステップ1003と、測定ステップ1004とを備える。
【0082】
(保持ステップ)
保持ステップ1001は、チップユニット17のフレーム16即ちテープ15のピックアップすべきチップ14の周囲をフレーム固定ユニット7で保持するステップである。
【0083】
保持ステップ1001では、制御ユニット400は、搬出入ユニット5を制御して試験前のウェーハ10を含むチップユニット17をカセット4から搬出させて一対の仮置きレール6上に仮置きさせ、搬出入ユニット5を制御して、仮置きレール6上に仮置きされたチップユニット17のフレーム16をフレーム固定ユニット7の降下したフレーム支持部材22上に載置させる。保持ステップ1001では、制御ユニット400は、フレーム固定ユニット7を制御して、フレーム支持部材22を上昇させて、フレーム押さえ部材23とフレーム支持部材22との間にフレーム16即ちテープ15のピックアップすべきチップ14の周囲を挟み込んで、チップユニット17をフレーム固定ユニット7で固定する。
【0084】
(粘着力低下ステップ)
図6は、
図5に示されたピックアップ方法の粘着力低下ステップを模式的に示す断面図である。粘着力低下ステップ1002は、次にピックアップすべきチップ14に対して冷却気体74を噴射し、貼着領域15-1のテープ15の粘着力を低下させるステップである。
【0085】
粘着力低下ステップ1002では、制御ユニット400は、測定内容情報に基づいて移動機構30を制御してフレーム固定ユニット7を移動し、フレーム固定ユニット7で保持されたチップユニット17の次にピックアップすべきチップ14(以下、符号14-1で示す)を突き上げユニット40の上方でかつ撮像カメラ50の下方に位置付ける。
【0086】
粘着力低下ステップ1002では、制御ユニット400は、撮像カメラ50にフレーム固定ユニット7に固定されたチップユニット17のウェーハ10のチップ14-1及びチップ14-1の周囲を撮像させて、撮像画像を取得する。粘着力低下ステップ1002では、制御ユニット400は、撮像画像からピックアップすべきチップ14-1の外縁の位置を検出し、移動機構30を制御してフレーム固定ユニット7の位置を調整して、ウェーハ10のチップ14-1を冷却ユニット70の噴射口のZ軸方向の下方に位置付ける。
【0087】
粘着力低下ステップ1002では、制御ユニット400は、冷却ユニット70を制御して液化炭酸ガス供給源72からの炭酸ガスと噴射用ガス供給源73からの圧縮エアーとを予め定められた所定時間冷却ノズル71に供給して、
図6に示すように、冷却ノズル71の噴射口からピックアップすべきチップ14-1に対して冷却気体74を噴射する。粘着力低下ステップ1002では、試験装置1及びピックアップ装置20は、冷却ノズル71の噴射口からピックアップすべきチップ14-1に対して冷却気体74を噴射して吹き付けることで、ピックアップすべきチップ14-1を介してテープ15の貼着領域15-1を冷却して、貼着領域15-1の糊層の粘着力を低下させる。
【0088】
また、粘着力低下ステップ1002では、試験装置1及びピックアップ装置20は、冷却ノズル71の噴射口からピックアップすべきチップ14-1に対して冷却気体74を噴射して吹き付けることで、ピックアップすべきチップ14-1上から異物を除去する。
【0089】
(ピックアップステップ)
図7は、
図5に示されたピックアップ方法のピックアップステップにおいて、ピックアップすべきチップをチップ保持具と突き上げユニットとでチップを挟持した状態を模式的に示す断面図である。
図8は、
図5に示されたピックアップ方法のピックアップステップにおいてピックアップすべきチップを突き上げ部材が突き上げた状態を模式的に示す断面図である。
【0090】
ピックアップステップ1003は、粘着力低下ステップ1002を実施した後、貼着領域15-1のテープ15を介してピックアップすべきチップ14-1を突き上げユニット40で突き上げるとともに、チップ14-1をチップ保持具63で保持してテープ15からピックアップするステップある。ピックアップステップ1003では、制御ユニット400は、移動機構30を制御しフレーム固定ユニット7の位置を調整するとともに、保持具移動ユニット80を制御しチップ保持具63を移動して、ウェーハ10のチップ14-1、突き上げユニット40及びチップ保持具63の位置合わせを遂行する。なお、実施形態1において、位置合わせでは、チップ14-1の外縁間の中央と突き上げ部42とを鉛直方向に沿って対面させ、チップ14-1の外縁とチップ保持具63の下面65の外縁とを鉛直方向に沿って対面させる。
【0091】
ピックアップステップ1003では、制御ユニット400は、突き上げユニット40を制御して、突き上げ部材42-1,42-2を下降させた状態で、突き上げユニット40全体を上昇させて、突き上げユニット40のテープ保持部41の上面48及び突き上げ部材42-1,42-2の上面をテープ15に接触させる。また、ピックアップステップ1003では、制御ユニット400のチップ挟持部401が、開閉弁46を開いて、
図7に示すように、突き上げユニット40のテープ保持部41の上面48にテープ15を吸引保持するとともに、突き上げユニット40の突き上げ部42でテープ15を介してピックアップすべきチップ14-1を支持する。
【0092】
ピックアップステップ1003では、制御ユニット400が保持具移動ユニット80を制御し、チップ保持具63を下降して、チップ保持具63の下面65をチップ14-1に当接させて、
図7に示すように、チップ保持具63と突き上げユニット40とでピックアップすべきチップ14-1を挟持する。
【0093】
ピックアップステップ1003では、制御ユニット400は、
図8に示すように、突き上げユニット40の昇降ユニット49の双方を制御して突き上げ部材42-1,42-2を上昇させるとともに、保持具移動ユニット80を制御してチップ保持具63を上昇させる。このとき、ピックアップステップ1003では、制御ユニット400は、突き上げ部材42-1,42-2の上昇動作と、チップ保持具63との上昇動作とを、突き上げ部材42-1,42-2の上面とチップ保持具63の下面65との距離がチップ14-1の厚みに応じた距離(実施形態1では、チップ14-1の厚みとテープ15の厚みとを合わせた距離)となるように連動させる。
【0094】
ピックアップステップ1003では、制御ユニット400は、突き上げユニット40の昇降ユニット49の双方を制御して、第1突き上げ部材42-1の上昇を停止した後、第2突き上げ部材42-2を第1突き上げ部材42-1よりも上方に上昇させた後、第2突き上げ部材42-2の上昇を停止して、チップ保持具63と第2突き上げ部材42-2とでチップ14-1及びテープ15を挟む。すると、貼着領域15-1のテープ15の糊層の粘着力が低下しているとともに、上面48にテープ15を吸引保持しているので、ピックアップステップ1003では、試験装置1及びピックアップ装置20は、
図8に示すように、テープ15の貼着領域15-1のうちテープ保持部41及び第1突き上げ部材42-1上の部分がチップ14-1から離反して、チップ14-1の外周縁からテープ15を剥離する。
【0095】
ピックアップステップ1003では、制御ユニット400は、開閉弁67を開いて、チップ保持具63の下面65を吸引源68で吸引して、下面65に負圧を作用させて、下面65にチップ14-1を吸引保持する。ピックアップステップ1003では、制御ユニット400は、保持具移動ユニット80を制御して、チップ保持具63を上昇して、チップ保持具63の下面65に吸引保持したチップ14-1をテープ15からピックアップして、テープ15上から搬出するとともに、開閉弁46を閉じて、テープ保持部41の上面48の吸引を停止する。
【0096】
(測定ステップ)
測定ステップ1004は、チップ保持具63で支持したチップ14-1をチップ観察機構100で表面11-1、裏面11-2及び側面の少なくともいずれか一つを撮像して、画像を取得し、チップ保持具63で支持したチップ14-1が良品である場合には収容トレイ91に搬送し、不良品である場合には、測定位置まで搬送して強度測定ユニット200で抗折強度を測定するステップである。
【0097】
実施形態1において、測定ステップ1004では、制御ユニット400は、保持具移動ユニット80を制御してチップ保持具63を適宜移動させ、チップ観察機構100を制御して、測定内容情報で定められた表面11-1、裏面11-2及び側面を撮像してこれらの画像を取得し、記憶装置に記憶する。実施形態1において、測定ステップ1004では、制御ユニット400は、予め記憶した測定内容情報を参照してチップ保持具63に支持したチップ14-1が良品であるか不良品であるかを判定し、ピックアップしたチップ14-1が良品である場合には、保持具移動ユニット80を制御してチップ保持具63を収容トレイ91まで移動させて、チップ14-1を収容トレイ91に収容させる。
【0098】
また、測定ステップ1004では、制御ユニット400は、予め記憶した測定内容情報を参照してチップ保持具63に支持したチップ14-1が良品であるか不良品であるかを判定し、ピックアップしたチップ14-1が不良品である場合には、保持具移動ユニット80を制御してチップ保持具63を測定位置まで移動させて、強度測定ユニット200の支持ユニット210の一対の支持部上にチップ14-1の裏面11-2を載置する。
【0099】
実施形態1において、測定ステップ1004では、制御ユニット400は、強度測定ユニット200を制御して圧子移動ユニット222により圧子221を降下させて、圧子221の先端をチップ14-1の表面11-1側に接触させ、チップ14-1を圧子221により押圧する。また、チップ14-1の押圧によって圧子221にかかる荷重(Z軸方向の力)が、荷重測定器223によって測定され、測定結果が適宜制御ユニット400に出力される。
【0100】
測定ステップ1004では、制御ユニット400は、強度測定ユニット200を制御して、圧子221を更に降下させ、チップ14-1を破壊する。チップ14-1が破壊されると、荷重測定器223によって測定される荷重が最大値からゼロになる。そのため、強度測定ユニット200は、荷重測定器223によって測定された荷重の値の変化からチップ14-1が破壊されたタイミングを検出できる。また、荷重測定器223によって測定された荷重の最大値が、チップ14-1の抗折強度に対応する。
【0101】
試験装置1の制御ユニット400は、カセット4内のチップユニット17から測定内容情報に定められたチップ14-1を全てピックアップすると、測定方法即ち実施形態1に係るピックアップ方法を終了する。
【0102】
以上説明したように、実施形態1に係るピックアップ方法は、粘着力低下ステップ1002において、テープ15の貼着領域15-1を冷却して粘着力を低下させる。その結果、実施形態1に係るピックアップ方法は、ピックアップステップ1003の前にテープ15の貼着領域15-1の粘着力を低下させるので、ピックアップの際にチップ14-1が破損するおそれを低減することができるという効果を奏する。実施形態1に係るピックアップ方法は、特に、厚みが100μm以下の薄手のチップ14-1であっても、ピックアップする際の破損するおそれを低減することができる。
【0103】
また、実施形態1に係るピックアップ方法は、粘着力低下ステップ1002において、トライアイス粒子と圧縮エアーとが混合した冷却気体74をチップ14-1に噴射して吹き付けるので、ピックアップする前に、チップ14-1から異物を除去できる。
【0104】
実施形態1に係るピックアップ装置は、冷却気体74を噴射してテープ15の貼着領域15-1を冷却して粘着力を低下させる冷却ノズル71を備える。その結果、実施形態1に係るピックアップ装置20は、チップ14-1をピックアップする前にテープ15の貼着領域15-1の粘着力を低下させることができ、ピックアップの際にチップ14-1が破損するおそれを低減することができるという効果を奏する。
【0105】
また、実施形態1に係る試験装置1は、前述したピックアップ装置20を備えるので、ピックアップの際にチップ14-1が破損するおそれを低減することができるという効果を奏する。
【0106】
なお、本発明は、上記実施形態等に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。実施形態では、試験装置1は、チップ14-1の抗折強度を測定したが、本発明では、チップ14-1に限らず、種々の試験片の強度を測定しても良い。また、実施形態1では、ピックアップ装置20は、試験装置1の一部分を構成したが、本発明では、これに限定されずに、試験装置1等の他の装置を構成せずに、単体でも良い。
【0107】
また、本発明では、冷却ユニット70の冷却ノズル71を、
図9に示すように、X軸移動機構31により一対の仮置きレール6から離れる位置に位置付けられたフレーム固定ユニット7の下方に配置されても良い。
図9は、実施形態1の変形例に係る試験装置のピックアップ装置の粘着力低下ステップを模式的に示す断面図である。なお、
図9は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0108】
図9に示された変形例では、冷却ノズル71は、凹部9内の突き上げユニット40の隣りに配置されて、粘着力低下ステップ1002において、突き上げユニット40でチップ14-1を突き上げる前に、冷却ノズル71は、
図9に示すように、ピックアップすべきチップ14-1が貼着された貼着領域15-1のテープ15に対して冷却気体74を噴射して、テープ15の貼着領域15-1を冷却する。
【0109】
また、本発明では、試験装置1及びピックアップ装置20は、粘着力低下ステップ1002において、冷却ノズル71が、ピックアップすべきチップ14-1、またはピックアップすべきチップ14-1が貼着された貼着領域15-1のテープ15に対して冷却気体74を噴射したが、本発明では、冷却ノズル71が、ピックアップすべきチップ14-1、または貼着領域15-1とともに、チップ14-1の周囲又は貼着領域15-1の周囲のテープ15にも冷却気体74を噴射しても良い。要するに、本発明では、試験装置1及びピックアップ装置20は、粘着力低下ステップ1002において、冷却ノズル71が、少なくともピックアップすべきチップ14-1、またはピックアップすべきチップ14-1が貼着された貼着領域15-1のテープ15に対して冷却気体74を噴射すれば良い。
【符号の説明】
【0110】
1 試験装置
7 フレーム固定ユニット
10 ウェーハ
14 チップ
14-1 チップ(ピックアップすべきチップ)
15 テープ
15-1 貼着領域
16 フレーム
17 チップユニット
20 ピックアップ装置
40 突き上げユニット(突き上げ部材)
63 チップ保持具
71 冷却ノズル
74 冷却気体
80 保持具移動ユニット(移動ユニット)
200 強度測定ユニット(測定ユニット)
400 制御ユニット
1002 粘着力低下ステップ
1003 ピックアップステップ