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特許7577547めっき装置における短絡検知方法、めっき装置の制御方法、およびめっき装置
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  • 特許-めっき装置における短絡検知方法、めっき装置の制御方法、およびめっき装置 図1
  • 特許-めっき装置における短絡検知方法、めっき装置の制御方法、およびめっき装置 図2
  • 特許-めっき装置における短絡検知方法、めっき装置の制御方法、およびめっき装置 図3
  • 特許-めっき装置における短絡検知方法、めっき装置の制御方法、およびめっき装置 図4A
  • 特許-めっき装置における短絡検知方法、めっき装置の制御方法、およびめっき装置 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】めっき装置における短絡検知方法、めっき装置の制御方法、およびめっき装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/12 20060101AFI20241028BHJP
   C25D 17/08 20060101ALI20241028BHJP
   H02H 7/125 20060101ALI20241028BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20241028BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
C25D21/12 C
C25D17/08 R
H02H7/125
H02M1/00 H
H05K3/18 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021007274
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111687
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】若林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 天星
(72)【発明者】
【氏名】出口 和摩
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-154322(JP,A)
【文献】特開昭57-094596(JP,A)
【文献】特開昭63-095812(JP,A)
【文献】特開2018-119176(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104769164(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/12
C25D 17/08
H02H 7/125
H02M 1/00
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流器から基板へ電流を供給して前記基板をめっきするめっき装置における短絡検知方法であって、
前記基板および前記基板を保持した基板ホルダを前記整流器に電気的に接続しない状態で、前記整流器から所定電流値の電流を出力するステップと、
前記整流器の出力電圧値を取得するステップと、
前記出力電圧値を所定の基準電圧値と比較するステップと、
前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも低い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していると判定するステップと、
前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも高い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していないと判定するステップと、
を含む短絡検知方法。
【請求項2】
前記各ステップは、前記基板のめっきを開始する前に実施される、請求項に記載の短絡検知方法。
【請求項3】
前記所定電流値の電流は、前記基板をめっき処理する際に前記整流器から出力する電流よりも小さい電流である、請求項1または2に記載の短絡検知方法。
【請求項4】
整流器から基板へ電流を供給して前記基板をめっきするめっき装置の制御方法であって、
前記基板および前記基板を保持した基板ホルダを前記整流器に電気的に接続しない状態で、前記整流器から、めっき処理時よりも小さい電流値の電流を出力するステップと、
前記整流器の出力電圧値を取得するステップと、
前記出力電圧値を所定の基準電圧値と比較するステップと、
前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも高い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していないと判定するステップと、
前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも低い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していると判定するステップと、
前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していないとの判定に応じて、前記基板および前記基板を保持した基板ホルダを前記整流器に電気的に接続し、前記基板のめっき処理を実施するステップと、
前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生しているとの判定に応じて、前記基板のめっき処理を禁止するステップと、
を含む、めっき装置の制御方法。
【請求項5】
基板をめっきするためのめっき槽と、
前記基板へ電流を供給するための整流器と、
制御部と、
を備えためっき装置であって、
前記制御部は、
前記基板および前記基板を保持した基板ホルダを前記整流器に電気的に接続しない状態で、前記整流器から所定電流値の電流を出力させ、
前記整流器の出力電圧値を取得し、
前記出力電圧値を所定の基準電圧値と比較し、
前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも低い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していると判定
前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも高い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していないと判定する、
ように構成される、めっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置における短絡検知方法、めっき装置の制御方法、およびめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき装置において、めっき槽と整流器を繋ぐ配線への薬液固着等により、配線がショート状態になることがある。そのような場合、めっき槽内に配置された基板へ整流器から電流を流せなくなり、基板へのめっきを行えないという不具合が発生する。整流器における短絡検知方法として、例えば特許文献1に開示されるような方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-95812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、めっき装置では、めっき槽のめっき液に基板を浸漬させた状態で短絡検知を行っていた。そのため、短絡検知時に使用された基板は不良品として廃棄する必要があり、基板の無駄が生じていた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、めっき装置において、基板を無駄に使用することなく、整流器とめっき槽の間の配線の短絡を検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、整流器から基板へ電流を供給して前記基板をめっきするめっき装置における短絡検知方法であって、前記基板および前記基板を保持した基板ホルダを前記整流器に電気的に接続しない状態で、前記整流器から所定電流値の電流を出力するステップと、前記整流器の出力電圧値を取得するステップと、前記出力電圧値を所定の基準電圧値と比較するステップと、前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも低い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していると判定するステップと、を含む短絡検知方法である。
【0007】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも高い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していないと判定するステップをさらに含む、短絡検知方法である。
【0008】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記各ステップは、前記基板のめっきを開始する前に実施される、短絡検知方法である。
【0009】
また、本発明の他の一態様は、上記一態様において、前記所定電流値の電流は、前記基板をめっき処理する際に前記整流器から出力する電流よりも小さい電流である、短絡検知方法である。
【0010】
また、本発明の他の一態様は、整流器から基板へ電流を供給して前記基板をめっきするめっき装置の制御方法であって、前記基板および前記基板を保持した基板ホルダを前記整
流器に電気的に接続しない状態で、前記整流器から、めっき処理時よりも小さい電流値の電流を出力するステップと、前記整流器の出力電圧値を取得するステップと、前記出力電圧値を所定の基準電圧値と比較するステップと、前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも高い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していないと判定するステップと、前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも低い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していると判定するステップと、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していないとの判定に応じて、前記基板および前記基板を保持した基板ホルダを前記整流器に電気的に接続し、前記基板のめっき処理を実施するステップと、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生しているとの判定に応じて、前記基板のめっき処理を禁止するステップと、を含む、めっき装置の制御方法である。
【0011】
また、本発明の他の一態様は、基板をめっきするためのめっき槽と、前記基板へ電流を供給するための整流器と、制御部と、を備えためっき装置であって、前記制御部は、前記基板および前記基板を保持した基板ホルダを前記整流器に電気的に接続しない状態で、前記整流器から所定電流値の電流を出力させ、前記整流器の出力電圧値を取得し、前記出力電圧値を所定の基準電圧値と比較し、前記出力電圧値が前記基準電圧値よりも低い場合に、前記整流器と前記基板を接続するための回路に短絡が発生していると判定する、ように構成される、めっき装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る方法を適用することが可能なめっき装置の全体配置図である
図2】めっき装置が備えるめっきモジュールの概略側断面図である。
図3】整流器とアノードホルダおよび基板ホルダとを接続する電気配線に短絡が発生した状況を示す図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る短絡検知方法を示す図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る短絡検知方法を示す図である。
図5】本実施形態のめっき装置におけるめっき処理の全体の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る短絡検知方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る方法を適用することが可能なめっき装置10の全体配置図である。
【0015】
図1に示すように、めっき装置10は、2台のカセットテーブル102と、基板のオリフラ(オリエンテーションフラット)やノッチなどの位置を所定の方向に合わせるアライナ104と、めっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させるスピンリンスドライヤ106とを有する。カセットテーブル102は、半導体ウェハ等の基板を収納したカセット100を搭載する。スピンリンスドライヤ106の近くには、基板ホルダ30を載置して基板の着脱を行うロード/アンロードステーション120が設けられている。これらのユニット100,104,106,120の中央には、これらのユニット間で基板を搬送する搬送ロボット122が配置されている。
【0016】
ロード/アンロードステーション120は、レール150に沿って横方向にスライド自在な平板状の載置プレート152を備えている。2個の基板ホルダ30は、この載置プレ
ート152に水平状態で並列に載置され、一方の基板ホルダ30と搬送ロボット122との間で基板の受渡しが行われた後、載置プレート152が横方向にスライドされ、他方の基板ホルダ30と搬送ロボット122との間で基板の受渡しが行われる。
【0017】
めっき装置10は、さらに、ストッカ124と、プリウェットモジュール126と、プリソークモジュール128と、第1リンスモジュール130aと、ブローモジュール132と、第2リンスモジュール130bと、めっきモジュール110と、を有する。ストッカ124では、基板ホルダ30の保管及び一時仮置きが行われる。プリウェットモジュール126では、基板が純水に浸漬される。プリソークモジュール128では、基板の表面に形成したシード層等の導電層の表面の酸化膜がエッチング除去される。第1リンスモジュール130aでは、プリソーク後の基板が基板ホルダ30と共に洗浄液(純水等)で洗浄される。ブローモジュール132では、洗浄後の基板の液切りが行われる。第2リンスモジュール130bでは、めっき後の基板が基板ホルダ30と共に洗浄液で洗浄される。ロード/アンロードステーション120、ストッカ124、プリウェットモジュール126、プリソークモジュール128、第1リンスモジュール130a、ブローモジュール132、第2リンスモジュール130b、及びめっきモジュール110は、この順に配置されている。
【0018】
めっきモジュール110は、例えば、オーバーフロー槽136の内部に複数のめっき槽114を収納して構成されている。図1の例では、めっきモジュール110は、8つのめっき槽114を有している。各めっき槽114は、内部に1つの基板を収納し、内部に保持しためっき液中に基板を浸漬させて基板表面に銅めっき等のめっきを施すように構成される。
【0019】
めっき装置10は、これらの各機器の側方に位置して、これらの各機器の間で基板ホルダ30を基板とともに搬送する、例えばリニアモータ方式を採用した搬送装置140を有する。この搬送装置140は、第1搬送装置142と、第2搬送装置144を有している。第1搬送装置142は、ロード/アンロードステーション120、ストッカ124、プリウェットモジュール126、プリソークモジュール128、第1リンスモジュール130a、及びブローモジュール132との間で基板を搬送するように構成される。第2搬送装置144は、第1リンスモジュール130a、第2リンスモジュール130b、ブローモジュール132、及びめっきモジュール110との間で基板を搬送するように構成される。めっき装置10は、第2搬送装置144を備えることなく、第1搬送装置142のみを備えるようにしてもよい。
【0020】
オーバーフロー槽136の両側には、各めっき槽114の内部に位置してめっき槽114内のめっき液を攪拌する掻き混ぜ棒としてのパドルを駆動する、パドル駆動部160及びパドル従動部162が配置されている。
【0021】
このめっき装置10による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、カセットテーブル102に搭載したカセット100から、搬送ロボット122で基板を1つ取出し、アライナ104に基板を搬送する。アライナ104は、オリフラやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。このアライナ104で方向を合わせた基板を搬送ロボット122でロード/アンロードステーション120まで搬送する。
【0022】
ロード/アンロードステーション120においては、ストッカ124内に収容されていた基板ホルダ30を搬送装置140の第1搬送装置142で2基同時に把持して、ロード/アンロードステーション120まで搬送する。そして、2基の基板ホルダ30をロード/アンロードステーション120の載置プレート152の上に同時に水平に載置する。この状態で、それぞれの基板ホルダ30に搬送ロボット122が基板を搬送し、搬送した基
板を基板ホルダ30で保持する。
【0023】
次に、基板を保持した基板ホルダ30を搬送装置140の第1搬送装置142で2基同時に把持し、プリウェットモジュール126に収納する。次に、プリウェットモジュール126で処理された基板を保持した基板ホルダ30を、第1搬送装置142でプリソークモジュール128に搬送し、プリソークモジュール128で基板上の酸化膜をエッチングする。続いて、この基板を保持した基板ホルダ30を、第1リンスモジュール130aに搬送し、この第1リンスモジュール130aに収納された純水で基板の表面を水洗する。
【0024】
水洗が終了した基板を保持した基板ホルダ30は、第2搬送装置144により、第1リンスモジュール130aからめっきモジュール110に搬送され、めっき液を満たしためっき槽114に収納される。第2搬送装置144は、上記の手順を順次繰り返し行って、基板を保持した基板ホルダ30を順次めっきモジュール110の各々のめっき槽114に収納する。
【0025】
各々のめっき槽114では、めっき槽114内のアノード(図示せず)と基板との間にめっき電圧を印加し、同時にパドル駆動部160及びパドル従動部162によりパドルを基板の表面と平行に往復移動させることで、基板の表面にめっきを行う。
【0026】
めっきが終了した後、めっき後の基板を保持した基板ホルダ30を第2搬送装置144で2基同時に把持し、第2リンスモジュール130bまで搬送し、第2リンスモジュール130bに収容された純水に浸漬させて基板の表面を純水洗浄する。次に、基板ホルダ30を、第2搬送装置144によってブローモジュール132に搬送し、エアーの吹き付け等によって基板ホルダ30に付着した水滴を除去する。その後、基板ホルダ30を、第1搬送装置142によってロード/アンロードステーション120に搬送する。
【0027】
ロード/アンロードステーション120では、搬送ロボット122によって基板ホルダ30から処理後の基板が取り出され、スピンリンスドライヤ106に搬送される。スピンリンスドライヤ106は、高速回転によってめっき処理後の基板を高速回転させて乾燥させる。乾燥した基板は、搬送ロボット122によりカセット100に戻される。
【0028】
図2は、上述しためっきモジュール110の概略側断面図である。図示のように、めっきモジュール110は、アノード221を保持するように構成されたアノードホルダ220と、基板Wを保持するように構成された基板ホルダ30と、添加剤を含むめっき液Qを収容するめっき槽114と、めっき槽114からオーバーフローしためっき液Qを受けて排出するオーバーフロー槽136と、を有する。めっき槽114とオーバーフロー槽136は、仕切り壁255によって仕切られている。アノードホルダ220と基板ホルダ30は、めっき槽114の内部に収容されている。前述したように、基板Wを保持した基板ホルダ30は、第2搬送装置144(図1参照)によって搬送されて、めっき槽114に収容される。
【0029】
なお、図2にはめっき槽114が1つしか描かれていないが、前述したように、めっきモジュール110は、図2に示されるのと同じ構成のめっき槽114を複数備えるのであってよい。
【0030】
アノード221は、アノードホルダ220に設けられた電気端子223を介して整流器270の正端子271に電気的に接続される。基板Wは、基板Wの周縁部に接する電気接点242及び基板ホルダ30に設けられた電気端子243を介して整流器270の負端子272に電気的に接続される。整流器270は、正端子271に接続されたアノード221と負端子272に接続された基板Wの間にめっき電流を供給するとともに、正端子27
1と負端子272の間の印加電圧を計測するように構成される。
【0031】
また、整流器270は、整流器270の動作を制御するための制御コントローラ260に接続され、制御コントローラ260は、コンピュータ265に接続される。コンピュータ265は、めっき装置10のオペレータのためのユーザインターフェイスを提供する。めっき装置10のオペレータは、コンピュータ265を介してめっき処理に関する各種設定情報を入力することができる。設定情報は、例えば、整流器270が出力するめっき電流の設定値を含む。制御コントローラ260は、オペレータから入力されためっき電流の設定値に従って、整流器270を動作させる。制御コントローラ260はまた、整流器270において計測された電圧の情報に基づくステータス情報を、コンピュータ265に提供する。めっき装置10のオペレータは、コンピュータ265を介してこのステータス情報を受け取ることができる。制御コントローラ260は、めっきモジュール110における整流器270以外の各部、またはめっき装置10におけるめっきモジュール110以外の各ユニットの動作を制御し、またこれらの動作に関する各種のステータス情報をコンピュータ265に提供するように構成されてもよい。
【0032】
アノード221を保持したアノードホルダ220と基板Wを保持した基板ホルダ30は、めっき槽114内のめっき液Qに浸漬され、アノード221と基板Wの被めっき面W1が略平行になるように対向して配置される。アノード221と基板Wは、めっき槽114のめっき液Qに浸漬された状態で、整流器270からめっき電流を供給される。これにより、めっき液Q中の金属イオンが基板Wの被めっき面W1において還元され、被めっき面W1に膜が形成される。
【0033】
アノードホルダ220は、アノード221と基板Wとの間の電界を調節するためのアノードマスク225を有する。アノードマスク225は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードホルダ220の前面(基板ホルダ30に対向する側の面)に設けられる。すなわち、アノードマスク225は、アノード221と基板ホルダ30の間に配置される。アノードマスク225は、アノード221と基板Wとの間に流れる電流が通過する第1の開口225aを略中央部に有する。開口225aの径は、アノード221の径よりも小さいことが好ましい。アノードマスク225は、開口225aの径を調節可能に構成されてもよい。
【0034】
めっきモジュール110は、さらに、アノード221と基板Wとの間の電界を調節するためのレギュレーションプレート230を有する。レギュレーションプレート230は、例えば誘電体材料からなる略板状の部材であり、アノードマスク225と基板ホルダ30(基板W)との間に配置される。レギュレーションプレート230は、アノード221と基板Wとの間に流れる電流が通過する第2の開口230aを有する。開口230aの径は、基板Wの径より小さいことが好ましい。レギュレーションプレート230は、開口230aの径を調節可能に構成されてもよい。さらに、レギュレーションプレート230と基板ホルダ30(基板W)との間には、めっき槽114内のめっき液Qを攪拌する掻き混ぜ棒としてのパドル(不図示)が配置される。
【0035】
めっき槽114は、槽内部にめっき液Qを供給するためのめっき液供給口256を有する。オーバーフロー槽136は、めっき槽114からオーバーフローしためっき液Qを排出するためのめっき液排出口257を有する。めっき液供給口256はめっき槽114の底部に配置され、めっき液排出口257はオーバーフロー槽136の底部に配置される。
【0036】
めっき液Qがめっき液供給口256からめっき槽114に供給されると、めっき液Qはめっき槽114から溢れ、仕切り壁255を越えてオーバーフロー槽136に流入する。オーバーフロー槽136に流入しためっき液Qはめっき液排出口257から排出され、め
っき液循環装置258が有するフィルタ等で不純物が除去される。不純物が除去されためっき液Qは、めっき液循環装置258によりめっき液供給口256を介してめっき槽114に供給される。
【0037】
図3は、整流器270とアノードホルダ220および基板ホルダ30とを接続する電気配線に短絡が発生した状況を示す。前述したように、基板Wおよび基板Wを保持した基板ホルダ30は、第2搬送装置144(図1参照)によって搬送されて、めっき槽114に収容される。より詳しくは、基板ホルダ30の電気端子243が整流器270のカソード側電気配線301に接続され、基板Wおよび基板Wを保持した基板ホルダ30が、めっき槽114に満たされためっき液Qに浸漬される。
【0038】
もしカソード側電気配線301とアノード側電気配線302間に短絡が生じていなければ、整流器270からめっき液Qに浸漬された基板Wにめっき電流を供給した時、整流器270の正端子271と負端子272間の出力電圧は正常値(すなわち、基板Wに供給されるめっき電流と、基板Wおよびアノード221間の負荷抵抗とに応じて定まる電圧値)を示す。一方、カソード側電気配線301とアノード側電気配線302間に短絡が生じると、負荷抵抗がほぼゼロになることにより、めっき電流を流した時の整流器270の正端子271と負端子272間の出力電圧は、正常値から大きく低下する。この電圧変化(または負荷抵抗の変化)を検知すれば、短絡の発生を識別することが一応可能ではある。しかしながら、基板Wが一旦めっき液Qに浸漬されているため、あるいは、既に基板Wへのめっき電流の供給が開始され(その後短絡の存在が判明し)基板W上のめっき膜の形成が部分的に進行しているため、当該基板は品質管理の点で問題があり、不良品として廃棄する必要がある。
【0039】
図4Aおよび4Bは、本発明の一実施形態に係る短絡検知方法を示す図である。図4Aは、カソード側電気配線301とアノード側電気配線302間にまだ短絡が生じていない正常時の状態を示し、図4Bは、カソード側電気配線301とアノード側電気配線302間に短絡が生じた状態を示している。図4Aおよび4Bに示されるように、整流器270には、基板Wおよび基板Wを保持した基板ホルダ30が接続されていない。すなわち、本実施形態に係る短絡検知方法は、基板Wおよび基板Wを保持した基板ホルダ30がめっき槽114に収容される前に実施される。
【0040】
整流器270は、短絡検知のための所定電流値の電流を出力する。しかし、基板Wおよび基板ホルダ30が整流器270のカソード側電気配線301に接続されていないため、図4Aの正常状態(非短絡時)では、カソード側電気配線301とアノード側電気配線302間がオープンとなっている。そのため、図4Aの正常時には、実際にはこの回路に電流は流れず、整流器270の正端子271と負端子272間に印加される電圧は高電圧となる。一方、図4Bの短絡状態では、整流器270からの出力電流がカソード側電気配線301とアノード側電気配線302間の短絡経路を介して流れるため、整流器270の正端子271と負端子272間の出力電圧は、図4Aの正常状態(非短絡時)の場合よりも小さい電圧値を示す。
【0041】
制御コントローラ260は、整流器270から正端子271と負端子272間の出力電圧値を取得し、それを所定の基準電圧値と比較する。制御コントローラ260は、整流器270の正端子271と負端子272間の出力電圧値が当該所定の基準電圧値よりも低い場合、カソード側電気配線301とアノード側電気配線302間に短絡が発生していると判定し、出力電圧値が基準電圧値よりも高い場合、短絡が発生していないと判定する。
【0042】
このように、本実施形態の短絡検知方法によれば、整流器270に基板Wおよび基板ホルダ30が接続されていない状態で、すなわち、基板Wおよび基板ホルダ30がめっき槽
114に収容されめっき処理が開始される前に、カソード側電気配線301とアノード側電気配線302間の短絡を検知することができる。したがって、本実施形態の方法は、基板Wを短絡検知のために無駄に使用する必要がないという利点を有する。
【0043】
なお、整流器270が短絡検知のために出力する電流の大きさは、基板Wにめっき処理をする際に出力するめっき電流の大きさよりも小さいことが好ましい。これにより、回路(整流器270、電気配線301、302、アノード221等)に電気的な悪影響を与えることなく短絡を検知することができる。
【0044】
図5は、本実施形態のめっき装置10におけるめっき処理の全体の流れを示すフローチャートである。まず、搬送装置140および搬送ロボット122の動作準備が行われ(ステップ501)、めっきモジュール110のめっき槽114にめっき液Qが準備される(ステップ502)。めっき液Qの準備完了後、ステップ503において本実施形態による短絡検知が実施される(詳細は図6を参照し後述する)。さらに、基板を収納したカセット100がカセットテーブル102にセットされる(ステップ504)。
【0045】
次に、オペレータによって、めっき処理のレシピがコンピュータ265のユーザインターフェイスを介して設定される(ステップ505)。レシピが設定され、めっき処理の開始が指示されると、搬送装置140および搬送ロボット122が始動し(ステップ506)、基板Wおよび基板ホルダ30がめっきモジュール110まで搬送されて、整流器270から基板Wへめっき電流が供給されることにより基板Wに対するめっき処理が行われる(ステップ507)。
【0046】
めっき処理が終わると、めっき済みの基板Wが搬送装置140および搬送ロボット122によってカセット100へ戻され(ステップ508)、めっき済み基板を含むカセット100がカセットテーブル102から取り外される(ステップ509)。その後、ステップ504に戻って未処理の基板を収納したカセット100がカセットテーブル102にセットされ、以下同じ動作が繰り返される。
【0047】
図6は、本発明の一実施形態に係る短絡検知方法を示すフローチャートであり、図5のフローチャートのステップ503の詳細を示す。
【0048】
まず、制御コントローラ260は、整流器270に所定の設定電流値での通電を指示する(ステップ601)。所定の設定電流値は、短絡検知のために整流器270から出力される電流の電流値を示し、例えば、めっき処理のために整流器270から出力されるめっき電流(図5のステップ507において出力される電流)よりも小さい値であってよい。
【0049】
整流器270は、指示された電流値での通電を開始し(ステップ602)、正端子271と負端子272間の出力電圧を計測してその計測値を制御コントローラ260へ送信する(ステップ603)。
【0050】
制御コントローラ260は、整流器270から出力電圧の計測値を取得し(ステップ604)、その電圧値を所定の基準電圧値と比較する(ステップ605)。所定の基準電圧値は、回路に短絡がない場合(図4A)と短絡がある場合(図4B)を適切に区別することが可能な、予め設定された適宜の電圧値であってよい。
【0051】
整流器270の計測された出力電圧値が基準電圧値よりも大きい場合、制御コントローラ260は、タイマの計時時間をクリアし(ステップ606)、その後、ステップ603以降のステップが繰り返される。
【0052】
整流器270の計測された出力電圧値が基準電圧値よりも小さい場合、制御コントローラ260は、タイマの計時時間をカウントアップし(ステップ607)、計時時間が所定の設定時間(例えば数秒から十秒程度)を超えたかどうか判定する(ステップ608)。
【0053】
計時時間が設定時間を超えると、制御コントローラ260は、めっきモジュール110のカソード側電気配線301とアノード側電気配線302間に短絡が発生していると判断し、アラーム通知および通電停止をそれぞれコンピュータ265と整流器270へ指示する(ステップ609)。整流器270は、短絡検知のための通電を停止し(ステップ610)、コンピュータ265は、短絡が発生していることを示すアラーム(文字、画像、または音声等)を、ユーザインターフェイスを介してめっき装置10のオペレータに通知する(ステップ611)。
【0054】
このようにしてめっきモジュール110のカソード側電気配線301とアノード側電気配線302間に短絡が発生していることが検知された場合、図5のステップ504以降のステップの実行を禁止することとしてもよい。一方、短絡が発生していないと判定された場合は、図5のステップ504以降のステップが実行されることにより、基板Wおよび基板ホルダ30が整流器270に接続され、整流器270から基板Wへめっき電流が供給されて基板Wへのめっき処理が行われる。このように、本実施形態の短絡検知方法によれば、基板Wのめっき処理が開始される前に短絡を検知することができ、また、基板Wを短絡検知のために無駄に使用するのを避けることができる。
【0055】
以上、いくつかの例に基づいて本発明の実施形態について説明してきたが、上記した発明の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明には、その均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 めっき装置
30 基板ホルダ
100 カセット
102 カセットテーブル
104 アライナ
106 スピンリンスドライヤ
110 めっきモジュール
114 めっき槽
120 ロード/アンロードステーション
122 搬送ロボット
124 ストッカ
126 プリウェットモジュール
128 プリソークモジュール
130a 第1リンスモジュール
130b 第2リンスモジュール
132 ブローモジュール
136 オーバーフロー槽
140 搬送装置
142 第1搬送装置
144 第2搬送装置
150 レール
152 載置プレート
160 パドル駆動部
162 パドル従動部
220 アノードホルダ
221 アノード
223 電気端子
225 アノードマスク
225a 第1の開口
230 レギュレーションプレート
230a 第2の開口
242 電気接点
243 電気端子
255 仕切り壁
256 めっき液供給口
257 めっき液排出口
258 めっき液循環装置
260 制御コントローラ
265 コンピュータ
270 整流器
271 正端子
272 負端子
301 カソード側電気配線
302 アノード側電気配線
Q めっき液
W 基板
W1 被めっき面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6