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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】めっき装置及びめっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 21/10 20060101AFI20241028BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
C25D21/10 301
C25D17/00 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021025155
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127171
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】関 正也
(72)【発明者】
【氏名】張 紹華
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06379511(US,B1)
【文献】特開2004-300462(JP,A)
【文献】特開2013-011011(JP,A)
【文献】特表2009-517543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/10
C25D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を内部に貯留するとともにアノードが内部に配置された内槽を有するめっき槽と、
カソードとしての基板を保持する基板ホルダと、
水平方向に往復移動することで前記内槽に貯留されためっき液を撹拌するように構成されたパドルと、を備え、
前記パドルは、前記内槽の外周壁に設けられた孔に挿通されるとともに前記内槽の内部と前記内槽の外部とを架橋するように配置されて、前記内槽に貯留されためっき液を撹拌するように構成された第1部位と、前記内槽の外部に配置されるとともに前記第1部位よりも上方に配置された第2部位と、前記内槽の外部に配置されて前記第1部位と前記第2部位とを接続する接続部位と、を有する、めっき装置。
【請求項2】
前記めっき槽は、前記内槽の外側に配置された外槽をさらに有する二重槽構造のめっき槽である、請求項1に記載のめっき装置。
【請求項3】
前記外槽には、前記第2部位が水平方向に往復移動することをガイドするガイド部材が設けられている、請求項2に記載のめっき装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のめっき装置を用いためっき方法であって、
前記基板にめっき処理を施す際に、前記パドルを水平方向に往復移動させることを含む、めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にめっき処理を施すことが可能なめっき装置として、いわゆるカップ式のめっき装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなめっき装置は、めっき液を貯留するとともにアノードが内部に配置されためっき槽と、カソードとしての基板を保持する基板ホルダと、を備えている。
【0003】
なお、本願に関連する他の先行技術文献として、特許文献2が挙げられる。この特許文献2には、めっき槽に貯留されためっき液を撹拌するパドルに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-19496号公報
【文献】特開2016-211010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に例示されるようなめっき装置において、めっき液を撹拌するために、例えば特許文献2に例示されているようなパドルを、このパドルの延在方向が水平方向になるように、めっき槽に設置することが考えられる。しかしながら、この場合、めっき槽に貯留されためっき液の液面がパドルによって波打つことで、めっき液の液はねが生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のことを鑑みてなされたものであり、めっき液の液はねを抑制することができる技術を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(態様1)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき装置は、めっき液を内部に貯留するとともにアノードが内部に配置された内槽を有するめっき槽と、カソードとしての基板を保持する基板ホルダと、水平方向に往復移動することで前記内槽に貯留されためっき液を撹拌するように構成されたパドルと、を備え、前記パドルは、前記内槽の外周壁に設けられた孔に挿通されるとともに前記内槽の内部と前記内槽の外部とを架橋するように配置されて、前記内槽に貯留されためっき液を撹拌するように構成された第1部位と、前記内槽の外部に配置されるとともに前記第1部位よりも上方に配置された第2部位と、前記内槽の外部に配置されて前記第1部位と前記第2部位とを接続する接続部位と、を有する。
【0008】
この態様によれば、例えばパドルの接続部位や第2部位が内槽の内部に配置されている場合に比較して、パドルが往復移動したときに、めっき液の液面がパドルによって波打つことを抑制することができる。これにより、めっき液の液はねを抑制することができる。
【0009】
(態様2)
上記態様1において、前記めっき槽は、前記内槽の外側に配置された外槽をさらに有す
る二重槽構造のめっき槽であってもよい。
【0010】
(態様3)
上記態様2において、前記外槽には、前記第2部位が水平方向に往復移動することをガイドするガイド部材が設けられていてもよい。
【0011】
この態様によれば、パドルを水平方向にスムースに往復移動させることが容易になる。
【0012】
(態様4)
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るめっき方法は、上記態様1~3のいずれか1態様に係るめっき装置を用いためっき方法であって、前記基板にめっき処理を施す際に、前記パドルを水平方向に往復移動させることを含む。
【0013】
この態様によれば、めっき液の液はねを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す平面図である。
図3】実施形態に係るめっき装置のめっきモジュールの構成を説明するための模式図である。
図4】実施形態に係るめっきモジュールの一部を拡大して示す断面図である。
図5】実施形態に係るパドルの第1部位の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、物の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0016】
図1は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。図2は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す平面図である。図1及び図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0017】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容された基板を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、及び搬送装置700の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0018】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で
濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0019】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0020】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0021】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板を搬送装置700へ受け渡す。
【0022】
搬送装置700は、搬送ロボット110から受け取った基板をプリウェットモジュール200へ搬送する。プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0023】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送装置700は、乾燥処理が施された基板を搬送ロボット110へ受け渡す。搬送ロボット110は、搬送装置700から受け取った基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0024】
なお、図1図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、図1図2の構成に限定されるものではない。
【0025】
続いて、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0026】
図3は、本実施形態に係るめっき装置1000のめっきモジュール400の構成を説明するための模式図である。図4は、めっきモジュール400の一部(図3のA1部分)を拡大して示す断面図である。本実施形態に係るめっき装置1000は、一例として、カップ式のめっき装置である。本実施形態に係るめっき装置1000のめっきモジュール400は、主として、めっき槽10と、基板ホルダ20と、回転機構30と、昇降機構40と、パドル50と、パドル駆動機構60と、ガイド部材70とを備えている。なお、図3において、めっき槽10、基板ホルダ20、パドル50、及び、ガイド部材70は、それぞれ、断面が模式的に図示されている。
【0027】
本実施形態に係るめっき槽10は、一例として、二重槽構造を有している。具体的には、めっき槽10は、内槽11と、この内槽11の外側に配置された外槽15とを備えている。内槽11は、底壁11aと、この底壁11aの外周縁から上方に延在する外周壁11bとを有しており、この外周壁11bの上部が開口している。内槽11の内部にはめっき液Psが貯留されている。内槽11は、保持部材(図示せず)を介して、外槽15の内側に固定されている。外槽15は、底壁15aと、この底壁15aの外周縁から上方に延在する外周壁15bとを有しており、この外周壁15bの上部が開口している。
【0028】
なお、本実施形態に係る内槽11の底壁11aは、一例として、平面視で円形状を有している。一方、本実施形態に係る外槽15の底壁15aは、一例として、平面視で矩形形状を有している。但し、内槽11の底壁11a及び外槽15の底壁15aの形状は、これに限定されるものではない。例えば内槽11の底壁11aは円形以外の形状(例えば矩形形状等)を有していてもよく、外槽15の底壁15aは矩形以外の形状(例えば円形状等)を有していてもよい。
【0029】
また、図4に示すように、本実施形態に係る内槽11の外周壁11bには、後述するパドル50の第1部位51が挿通するための孔13が設けられている。具体的には、本実施形態に係る孔13は貫通孔によって構成されている。この孔13は、外周壁11bの上端よりも下方且つ外周壁11bの下端よりも上方の箇所に、外周壁11bの内側と外側とを連通するように設けられている。
【0030】
また、本実施形態においては、一例として、本実施形態に係る外槽15の外周壁15bにも、後述するパドル50の第2部位53が挿通するための孔16が設けられている。具体的には、本実施形態に係る孔16は貫通孔によって構成されている。この孔16は、外周壁15bの上端よりも下方且つ外周壁15bの下端よりも上方の箇所に、外周壁15bの内側と外側とを連通するように設けられている。
【0031】
但し、外槽15の構成はこれに限定されるものではなく、例えば、外槽15の外周壁15bに孔16が設けられていない構成とすることもできる。この場合、後述するパドル50の第2部位53は、例えば、外槽15の外周壁15bの上方を通過するように配置されていてもよい。
【0032】
内槽11の外周壁11bと外槽15の外周壁15bとの間には、空間80aが設けられている。また、本実施形態においては、内槽11の底壁11aと外槽15の底壁15aとの間にも、空間80bが設けられている。但し、この構成に限定されるものではなく、内槽11の底壁11aと外槽15の底壁15aとの間には、空間80bが設けられていなく
てもよい(すなわち、内槽11の底壁11aは外槽15の底壁15aと接触していてもよい)。
【0033】
めっき液Psとしては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液Psの一例として、硫酸銅溶液を用いている。また、本実施形態において、めっき液Psには所定の添加剤が含まれている。但し、この構成に限定されるものではなく、めっき液Psは添加剤を含んでいない構成とすることもできる。
【0034】
内槽11の内部には、アノード12が配置されている。アノード12の具体的な種類は特に限定されるものではなく、溶解アノードや不溶解アノードを用いることができる。本実施形態においては、アノード12として不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0035】
基板ホルダ20は、アノード12よりも上方に配置されており、カソードとしての基板Wfを保持している。なお、基板Wfの下面Wfaは、被めっき面に相当する。基板ホルダ20は、回転機構30の回転軸31に接続されている。回転機構30は、基板ホルダ20を回転させるための機構である。回転機構30としては、モータ等の公知の機構を用いることができる。昇降機構40は、上下方向に延在する支軸45によって支持されている。昇降機構40は、基板ホルダ20及び回転機構30を上下方向に昇降させるための機構である。昇降機構40としては、直動式のアクチュエータ等の公知の昇降機構を用いることができる。回転機構30及び昇降機構40の動作は制御モジュール800によって制御されている。
【0036】
めっき処理を実行する際には、回転機構30が基板ホルダ20を回転させるとともに、昇降機構40が基板ホルダ20を下方に移動させて、基板Wfをめっき槽10のめっき液Psに浸漬させる。次いで、通電装置(図示せず)によって、アノード12と基板Wfとの間に電気が流れる。これにより、基板Wfの下面Wfaに、めっき皮膜が形成される。
【0037】
めっきモジュール400の動作は、制御モジュール800によって制御される。制御モジュール800は、マイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータは、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)801や、非一時的な記憶媒体としての記憶部802、等を備えている。制御モジュール800は、記憶部802に記憶されたプログラムの指令に基づいてCPU801が作動することで、めっきモジュール400の被制御部(回転機構30、昇降機構40、パドル駆動機構60)を制御する。
【0038】
パドル50は、水平方向に往復移動することで、内槽11に貯留されためっき液Psを撹拌するように構成された部材である。なお、図3及び図4に例示されている「mv」は、パドル50の往復移動方向の一例である。図4に示すように、パドル50は、第1部位51と、第2部位53と、接続部位52とを備えている。第1部位51及び第2部位53は、接続部位52によって接続されている。
【0039】
本実施形態に係るパドル50は、後述するパドル駆動機構60によって駆動されることで、水平方向のうち、パドル50の第1部位51の延在方向(すなわち長手方向(図ではX方向及び-X方向))に往復移動する。但し、パドル50の往復移動方向は図3及び図4に例示されている方向に限定されるものではない。他の一例を挙げると、パドル50は、例えば第1部位51の延在方向に垂直な方向(すなわち短手方向(図ではY方向及び-
Y方向))に往復移動してもよい。
【0040】
図5は、第1部位51の模式的平面図である。図4及び図5を参照して、第1部位51は、内槽11の外周壁11bに設けられた孔13に挿通されるとともに、内槽11の内部と内槽11の外部(具体的には、本実施形態では空間80a)とを架橋するように配置されている。第1部位51は、水平方向に往復移動することで内槽11のめっき液Psを撹拌するように構成されている。
【0041】
具体的には、図5に示すように、本実施形態に係る第1部位51は、平面視で梯子状の形態を有している。より具体的には、第1部位51は、第1部位51の往復移動方向に対して垂直な方向に延在する複数の撹拌板51aを備えている。各々の撹拌板51aの長手方向の端部は、連結板51b及び連結板51cによって連結されている。第1部位51が往復移動した場合、第1部位51の特に撹拌板51aによって、めっき液Psが撹拌される。なお、図5の構成は第1部位51の一例に過ぎず、第1部位51の構成は図5の構成に限定されるものではない。
【0042】
図4を参照して、第2部位53は、内槽11の外部に配置されている。具体的には、本実施形態に係る第2部位53は、空間80aと外槽15の外側領域82とを架橋するように配置されている。より具体的には、本実施形態に係る第2部位53は、一例として、外槽15の外周壁15bに設けられた孔16を挿通して、空間80aと外槽15の外側領域82とを架橋している。第2部位53における外側領域82に突出した端部は、パドル駆動機構60に接続されている。また、第2部位53は、第1部位51よりも上方に配置されている。
【0043】
接続部位52は、内槽11の外部(具体的には、本実施形態では空間80a)に配置されており、第1部位51の端部と第2部位53の端部とを接続している。具体的には、本実施形態に係る接続部位52は、上下方向に延在しており、その下端が第1部位51の端部(空間80aの側にある端部)に接続し、その上端が第2部位53の端部(空間80aの側にある端部)に接続している。
【0044】
図3に示すように、パドル駆動機構60は、パドル50を水平方向に往復移動させるための駆動機構である。本実施形態に係るパドル駆動機構60の動作は、制御モジュール800によって制御されている。パドル駆動機構60は、この制御モジュール800の指令を受けて、基板Wfにめっき処理を施す際に(すなわちめっき処理時に)、パドル50を水平方向に往復移動させる。このようなパドル駆動機構60としては、例えば直動式のアクチュエータ等、公知のめっき装置に用いられているパドル駆動機構を用いることができる。
【0045】
なお、本実施形態において、基板Wfにめっき処理を施す際に(すなわち、めっき処理時に)、内槽11には、めっき液供給装置(図示せず)からめっき液Psが供給される。図4を参照して、内槽11に貯留されためっき液Psは、孔13と第1部位51との間の隙間を通過して、内槽11の外部に流出することができる。また、内槽11のめっき液Psは、内槽11の外周壁11bの上端を越えて内槽11の外部に流出することもできる。めっき処理時において、内槽11に貯留されためっき液Psの液面がパドル50の第1部位51よりも上方に位置するように、内槽11に貯留されためっき液Psの量が調整されている。
【0046】
内槽11の外部に流出しためっき液Psは、外槽15の内部に一時的に貯留される。外槽15に一時的に貯留されためっき液Psは、外槽15の例えば底壁15aに設けられためっき液排出口(図示せず)を介して、外槽15の外部に排出される。外槽15の外部に
排出されためっき液Psは、めっき液供給装置によって再び内槽11の内部に戻される。なお、めっき処理時において、外槽15に一時的に貯留されためっき液Psの液面がパドル50の接続部位52の下端の位置にまで到達しないように、外槽15に貯留されためっき液Psの量が調整されている。
【0047】
図4に示すように、ガイド部材70は、パドル50の第2部位53が水平方向に往復移動することをガイドするための部材である。具体的には、本実施形態に係るガイド部材70は、外槽15に設けられている。より具体的には、本実施形態に係るガイド部材70は、外槽15の外周壁15bの外周面における孔16の周囲の箇所に設けられている。ガイド部材70の内部には、パドル50の第2部位53が摺動するための貫通孔が設けられている。パドル50の第2部位53がこの貫通孔を摺動することで、パドル50の往復移動がガイドされる。
【0048】
このガイド部材70は本実施形態に必須の構成ではなく、めっき装置1000はガイド部材70を備えていない構成とすることもできる。但し、めっき装置1000がガイド部材70を備えている場合の方が、これを備えていない場合に比較して、パドル50がスムースに往復移動することが容易になる点で好ましい。
【0049】
なお、本実施形態に係るめっき方法は、上述しためっき装置1000によって実現されている。すなわち、本実施形態に係るめっき方法は、めっき装置1000を用いためっき方法であって、基板Wfにめっき処理を施す際に、パドル50を水平方向に往復移動させることを含んでいる。このめっき方法の説明は、上述しためっき装置1000の説明と重複するため、省略する。
【0050】
以上説明したような本実施形態によれば、上述したようなパドル50を備えているので、例えばパドル50の接続部位52や第2部位53が内槽11の内部に配置されている場合に比較して、パドル50が往復移動したときに、めっき液Psの液面がパドル50によって波打つことを抑制することができる。これにより、めっき液Psの液はねを抑制することができる。
【0051】
このように本実施形態によれば、めっき液Psの液はねを抑制することができるので、内槽11に貯留されためっき液Psが液はねすることで、外槽15の外側(外側領域82)に漏洩することを抑制することもできる。
【0052】
また、本実施形態によれば、パドル50の第2部位53が第1部位51よりも上方に位置しているので、内槽11に貯留されためっき液Psが第1部位51を伝わった後に第2部位53にまで伝わることを抑制することができる。これにより、内槽11に貯留されためっき液Psがパドル50を伝わってめっき槽10の外槽15の外側に漏洩することを効果的に抑制することもできる。
【0053】
また、本実施形態によれば、上述したように、内槽11に貯留されためっき液Psが外槽15の外側に漏洩することを効果的に抑制することができるので、めっき液Psの無駄な消費を抑制することもできる。また、外槽15の外側に漏洩しためっき液Psによって、めっき装置1000における外槽15の外側に存在する部品に腐食等が発生することを抑制することもできる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、さらなる種々の変形・変更が可能である。
【0055】
例えば、上記の実施形態において、めっき槽10として、内槽11と外槽15とを有する二重構造のめっき槽を用いているが、この構成に限定されるものではない。例えばめっき槽10は外槽15を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 めっき槽
11 内槽
11b 外周壁
12 アノード
13 孔
15 外槽
15b 外周壁
16 孔
20 基板ホルダ
50 パドル
51 第1部位
52 接続部位
53 第2部位
70 ガイド部材
400 めっきモジュール
1000 めっき装置
Wf 基板
Wfa 下面
Ps めっき液
図1
図2
図3
図4
図5