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特許7577684官能化アルファ-アンゲリカラクトンの使用
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  • 特許-官能化アルファ-アンゲリカラクトンの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】官能化アルファ-アンゲリカラクトンの使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/64 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
C08G59/64
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021561650
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2020059347
(87)【国際公開番号】W WO2020212149
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】19169509.7
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】タデン,アンドレアス
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-025553(JP,A)
【文献】特表2009-516748(JP,A)
【文献】国際公開第03/106434(WO,A1)
【文献】特開平03-109413(JP,A)
【文献】国際公開第2020/212041(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08G 73/00-73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
【化1】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリールまたはC-C12アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)のエポキシ樹脂に基づく組成物の硬化における反応性成分としての使用。
【請求項2】
a)一般式:
【化2】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリールまたはC-C12アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);および
b)以下のいずれか一方または両方:
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および
ii)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物
を含み、a)のアルコキシメチレン(=C-OR )基とb)のアミンおよびメルカプト基の合計とのモル比が0.5:1~2.5:1の範囲にある反応性組成物。
【請求項3】
前記官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)が一般式:
【化3】
[式中、Rは、C-C18アルキル、C-C18シクロアルキル、C-C18アリールまたはC-C10アルケニル基である]
を有する、請求項2に記載の反応性組成物。
【請求項4】
前記官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)の置換基RがC-C12アルキルまたはC-Cアルケニル基である、請求項2または請求項3に記載の反応性組成物。
【請求項5】
前記官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)の置換基RがC-CアルキルまたはC-Cアルケニル基である、請求項2~4のいずれかに記載の反応性組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリアミンb)i)は、第一級および/または第二級アミン基を含有し、150以下の第一級または第二級アミン基あたりの当量を有する、請求項2~5のいずれかに記載の反応性組成物。
【請求項7】
イソホロンジアミン(IPDA);ヘキサメチレンジアミン(HMDA);1,3-ビス(アミノ-メチル)シクロヘキサン;1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン;2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA);および、平均分子量が最大2000g/モルのエーテル基含有ポリアミンからなる群から選択される少なくとも2つの第一級脂肪族アミン基を有する少なくとも1つのポリアミンを含む、請求項2~5のいずれかに記載の反応性組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つのメルカプト化合物b)ii)が、チオカルボン酸のポリエステルから選択される、請求項2~7のいずれかに記載の反応性組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つのメルカプト化合物b)ii)は、ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMP)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP)およびグリコールジメルカプトアセテートから選択される、請求項8に記載の反応性組成物。
【請求項10】
請求項2~9のいずれかに記載の反応性組成物および少なくとも1つのエポキシド化合物を含む硬化性組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1つのエポキシド化合物は、多価アルコールおよび多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;および、エポキシ化ポリエチレン性不飽和のエステル、エーテルおよびアミドからなる群から選択されるポリエポキシドである、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
エポキシ反応性基:エポキシ基のモル比が0.95:1~1.5:1であることを特徴とする、請求項10に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
硬化性組成物の重量に基づいて、
10~40重量%のa)一般式:
【化4】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリール、またはC-C12アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);
20~50重量%のb)硬化成分、前記硬化成分は
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および/または
ii)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物
を含む;および
10~50重量%のc)少なくとも1つのエポキシド化合物
を含む、請求項10または請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
硬化性組成物の重量に基づいて、
10~40重量%のa)一般式:
【化5】
[式中、Rは、C-CアルキルまたはC-Cアルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);
20~50重量%のb)硬化成分、前記硬化成分は
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン、ここで、前記少なくとも1つのポリアミンは、第一級および/または第二級アミン基を含有し、第一級または第二級アミン基あたりの当量が150以下である;および/または
ii)ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMP)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP)、グリコールジメルカプトアセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択されるチオカルボン酸のポリエステル
を含む;および
10~50重量%のc)多価アルコールのグリシジルエーテル;多価フェノールのグリシジルエーテル;および、ポリカルボン酸のグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つのポリエポキシ化合物
を含む、請求項10または請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
請求項10~14のいずれかに記載の硬化性組成物から得られる硬化生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能な原料を使用して得ることができる硬化性組成物に関する。より具体的には、本発明は、エポキシ樹脂に基づく硬化性組成物を対象とし、これは、再生可能な原料から誘導可能な少なくとも1つの反応物を含み、硬化組成物へのその反応物の組み込みは、その生成物をバイオ再生可能にする。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、用途の広いクラスの熱硬化性ポリマーを製造するために使用される反応性中間体である。これらの樹脂は、コーティング、接着およびシーラント組成物、複合材料、および構造用途において、それらの靭性などの機械的特性、それらの接着性および化学的(耐食性)耐性を含むそれらの化学特性;および、それらの電気的および熱的な耐性という理由で遍在する成分である。
【0003】
エポキシ樹脂は、一般にエポキシ基、1,2-エポキシドまたはオキシランと呼ばれる3員環エーテル基の存在を特徴としている。これらの樹脂は伝統的に石油に由来し、その資源の処理は多くの関連する有害な環境影響を及ぼす。さらに、ポリマー中の残留モノマーエポキシド化合物およびビスフェノールA由来するエポキシ樹脂自体に関連する多くの健康への悪影響が調査されている。後者の点において有益な文献としては、Vandenberg et al. Human exposure to bisphenol A (BPA) Reproductive Toxicology, Issue 24(2):139-77 (2007)およびGupta et al. Genetic Mouse Models for Female Reproductive Toxicology Studies Comprehensive Toxicology (Second Edition), Volume 11 (2010), Pages 561-575が挙げられる。
【0004】
これらの不利な点のために、当技術分野では、持続可能な材料による従来のエポキシ樹脂成分の改良の調査にいくらかの注意が向けられてきた。
【0005】
Czub Application of Modified Natural Oils as Reactive Diluents for Epoxy Resins Volume 242, Issue 1, Special Issue of the 14th Annual Polychar World Forum on Advanced Materials (2006)には、エポキシ化大豆油で変性されたビスフェノールAベースの低分子量エポキシ樹脂が記載されている。同様に、Jin et al. Impact-strength improvement of epoxy resins reinforced with a biodegradable polymer Polymer International 2008a, 57 (4), 577-583には、ビスフェノールA(DGEBA)のジグリシジルエーテルとエポキシ化大豆油(ESO)から熱潜伏開始剤を使用して調製されたバイオベースのエポキシ材料が記載されている。同様に、Miyagawa et al. Fracture toughness and impact strength of anhydride‐cured biobased epoxy Polym. Eng. Sci. 2005, 45 (4), 487-495には、無水物硬化剤で処理されたエポキシ化亜麻仁油(ELO)およびエポキシ化大豆油(ESO)などの官能化植物油(FVO)を含有するバイオベースの巧みな(neat)エポキシ材料が記載されている。なお、これらの引用の植物油含有エポキシ樹脂は、高い破壊靭性および衝撃強度を示すが、架橋密度の低下と鎖の柔軟性の増加により、ガラス転移温度(Tg)の低下を同時に示す。
【0006】
エポキシ樹脂の開発には、他の原材料源も検討されている。Busto et al. Controlling Water Uptake of Sugar Based Epoxy Resins IEEE, New York (2011)では、イソソルビド(グルコース由来の分子)がエポキシ樹脂に組み込まれた。イソソルビドは堅固な構造を有し、ポリマーの成長に必要なエポキシド基への変換に修正可能な(amendable)ヒドロキシル基を有している。van Beilen and Poirier, Plant Journal 2008, 54 (4), 684-701には、植物の糖および多糖類に由来するフランのカルボン酸による官能化と、それに続く前記官能化化合物のエポキシドまたはアミンへの変換について記載されている。さらに、松や他の針葉樹(Liu, et al., Express Polymer Letters 2012, 6 (4), Pages 293-298.)、リグニン(Simionescu et al. Composites Science and Technology 1993, 48, Pages 317-323)およびセルロース(Varma and Chavan, Cellulose 1994, 1, 215-219.)などの供給源から得られたロジンは、それぞれエポキシ樹脂成分の合成に使用されてきた。
【0007】
残念ながら、これらの引用で得られる樹脂は、従来のエポキシ樹脂と競合するためにこのクラスの材料に必要なすべての物理的特性を示すことは示されていなかった。さらに、樹脂前駆体を製造するには、複雑で多段階の合成が必要になることがよくあった。例えばリグニンに関しては、エポキシド化合物とのコモノマーとして、または前記エポキシド化合物の硬化剤として作用するリグニン誘導体を調製することの複雑さは、とりわけ米国特許出願公開第2012/0148740号明細書、中国特許第101348558号明細書および特開2006/028528号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2012/0148740号明細書
【文献】中国特許第101348558号明細書
【文献】特開2006/028528号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Vandenberg et al. Human exposure to bisphenol A (BPA) Reproductive Toxicology, Issue 24(2):139-77 (2007)
【文献】Gupta et al. Genetic Mouse Models for Female Reproductive Toxicology Studies Comprehensive Toxicology (Second Edition), Volume 11 (2010), Pages 561-575
【文献】Czub Application of Modified Natural Oils as Reactive Diluents for Epoxy Resins Volume 242, Issue 1, Special Issue of the 14th Annual Polychar World Forum on Advanced Materials (2006)
【文献】Jin et al. Impact-strength improvement of epoxy resins reinforced with a biodegradable polymer Polymer International 2008a, 57 (4), 577-583
【文献】Miyagawa et al. Fracture toughness and impact strength of anhydride‐cured biobased epoxy Polym. Eng. Sci. 2005, 45 (4), 487-495
【文献】Busto et al. Controlling Water Uptake of Sugar Based Epoxy Resins IEEE, New York (2011)
【文献】van Beilen and Poirier, Plant Journal 2008, 54 (4), 684-701
【文献】Liu, et al., Express Polymer Letters 2012, 6 (4), Pages 293-298.
【文献】Simionescu et al. Composites Science and Technology 1993, 48, Pages 317-323
【文献】Varma and Chavan, Cellulose 1994, 1, 215-219.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
持続可能な方法で調達された化合物をエポキシ樹脂材料に組み込む必要性が認められていることは別として、リサイクル可能なそのような材料を開発することは有利であろう。残念ながら、硬化したエポキシ樹脂の分解は、その樹脂の機械的特性および耐薬品性によって妨げられる。そして、これには「ノックオン」効果がある。例えば、炭素繊維強化プラスチックなどの複合材料は、エポキシ樹脂を使用して一般的に調製されており、構造アセンブリの重量を減らすために広く使用されている。ただし、これらのアセンブリのほとんどは、炭素繊維が比較的高価な材料であるにもかかわらず、使用後に廃棄する必要がある。
【0011】
上記に基づいて、エポキシド化合物およびさらに持続的に供給される化合物に基づくが、後者の化合物を含めることによってその機械的および化学的特性が損なわれることはない樹脂を開発することが当技術分野において明らかな必要性があると考えられる。さらに、それらの容易なリサイクルを可能にするために十分に穏やかな条件下で分解し得る硬化エポキシ樹脂を開発する必要性がさらにある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書に添付された図1は、本発明の実施形態による組成物の示差走査熱量測定(DSC)分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の陳述]
本発明の第1の態様によれば、一般式
【化1】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリールまたはC-C12アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)のエポキシ樹脂に基づく組成物の硬化における反応性成分としての使用が提供される。
【0014】
表記:
【化2】
は、本明細書において、すべての立体異性体がこの一般式(XOMAL)の範囲内にあることを示すために使用される。したがって、反応性成分として使用される前記官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)は、以下の構造を有する場合がある:
【化3】
[式中、例えば、上記の立体異性体の置換基Rはいずれも、C-C18アルキル、C-C18シクロアルキル、C-C18アリールまたはC-C10アルケニル基であってよい]
【0015】
官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)の重要な実施形態では、Rは、C-C12アルキルまたはC-Cアルケニル基、特にC-CアルキルまたはC-Cアルケニル基である。上記のものを相互に排他することを意図しないさらなる実施形態において、前記官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)は、RがC-CアルキルまたはC-Cアルケニル基であることを特徴とする。化合物:
【化4】
の反応性成分としての使用が特に好ましいとされる場合がある。
【0016】
官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)のための従来のα-アンゲリカラクトン原料は、それ自体がレブリン酸(LA)の誘導体である。後者の化合物は、Bozell et al. Technology Development for the Production of Biobased Products from Biorefinery Carbohydrides - the US Department of Energy’s “Top 10” revisited, Green Chem. 2010, 12, 539 - 554において認識されているように再生可能資源から入手可能である。さらに、α-アンゲリカラクトンの再生可能な調達については、Lima et al. Angelica Lactones: from Biomass-Derived Plat-form Chemicals to Value-Added Products, ChemSusChem 2018, 11, 25-47において議論されている。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、
a)一般式:
【化5】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリール、またはC-C12アルケニル基である]
を有する上記の官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);および
b)以下のいずれか一方または両方:
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および
ii)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物
を含む反応性組成物が提供される。
【0018】
本発明のこの態様は、再生可能資源から有利に誘導可能なXOMAL化合物およびエポキシ樹脂の硬化に使用される2つの一般的な硬化剤に基づく反応性組成物の調製を提供する。
【0019】
反応性組成物がb)ii)少なくとも1つのメルカプト化合物に基づく場合、パーツa)とb)との間の実際の反応を開始するには触媒量の適切な化合物を含める必要がある。特に、本発明は、チオレート(-S)部分を反応性にするために存在するチオール(-SH)基の脱プロトン化によって機能する組成物中の第三級アミン触媒の存在を提供する。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、
a)一般式:
【化6】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリール、またはC-C12アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);
b)以下のいずれか一方または両方:
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および
ii)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物;および
c)少なくとも1つのエポキシド化合物
を含む硬化性組成物が提供される。
【0021】
本発明のこの態様の実施形態では、硬化性組成物は、組成物の重量に基づいて、
1~70重量%のa)一般式:
【化7】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリール、またはC-C12アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);
30~70重量%のb)硬化成分、前記成分は
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および/または
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物
を含む;および
10~80重量%のc)少なくとも1つのエポキシド化合物
を含むべきである。
【0022】
硬化性組成物は、望ましくは、エポキシ反応性基とエポキシ基とのモル比が0.95:1~1.5:1、より好ましくは0.95:1~1.1:1であることを特徴とするべきである。硬化性組成物は、望ましくは、前記少なくとも1つのエポキシド化合物が、多価アルコールおよび多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;および、エポキシ化ポリエチレン性不飽和のエステル、エーテルおよびアミドからなる群から選択されるポリエポキシドであることを特徴とするべきである。
【0023】
本発明のこの第3の態様は、バイオ再生可能なXOMAL、エポキシ樹脂および前記エポキシ樹脂のための硬化性化合物に基づく硬化性組成物を提供する。硬化性組成物は、1成分(1K)または2成分(2K)の組成物として調製してよく、コーティング、接着剤およびシーラントの用途に有用性を見出す。硬化性組成物に含まれるXOMALの重量パーセントは、明らかにその組成物の再生可能な含有量を決定する。 その含有量は、再生可能に調達されるポリアミンなどの再生可能な硬化性化合物を選択することにより、特定の状況でさらに高め得る。
【0024】
本発明の最終的な態様によれば、上記および添付の特許請求の範囲で定義される硬化性組成物から得られる硬化生成物が提供される。有利なことに、硬化した樹脂は、酸触媒加水分解によって分解可能であり、それにより、熱硬化性樹脂に基づく接着剤、シーラント、コーティングおよび他の構造を、リサイクル目的で剥離または分解できる。
【0025】
理論に拘束されることを望まないが、硬化した反応生成物は、分解性部分を構成するアミノアセタール(アミナール)またはチオアセタール基を含むであろう。Chao et al. Investigation of Secondary Amine-Derived Aminal Bond Exchange toward the Development of Covalent Adaptable Networks, Macromolecules 2019 52 (2), pages 495-503に記載されているように、このような硬化反応生成物は、アミノアセタールまたはチオアセタールの酸触媒加水分解によって分解される可能性がある。
【0026】
酸性条件下での完全に硬化した樹脂の分解の定量的分光分析は困難であるが、本発明者らは、本明細書において、室温で2日間(48時間)、水と酢酸との体積比が1:1で構成される酸性水溶液に浸漬する前後の硬化樹脂のサイズに基づいてそのような分解を評価した。選択した酸は分解に密接に関係しておらず、HClなどの鉱酸にも触媒作用がある。ただし、現在のプロトコルでは酢酸を使用している。
【0027】
[定義]
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0028】
本明細書で使用される「含んでいる(comprising)」、「含む(comprises)」および「含まれる(comprised of)」という用語は、「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「含んでいる(containing)」または「含む(contains)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の非引用のメンバー、要素、または方法の工程を除外しない。「からなる(consisting of)」というフレーズを使用する場合は、閉じられ、すべての追加要素が除外される。さらに、「本質的にからなる(consisting essentially of)」というフレーズは、追加の重要な要素(material elements )を除外するが、本発明の性質を実質的に変更しない重要でない要素(non-material elements )の包含を可能にする。
【0029】
量、濃度、寸法および他のパラメータが範囲、好ましい範囲、上限値、下限値、または好ましい上限値および限界値の形で表される場合、得られた範囲が文脈で明確に言及されているかどうかに関係なく、任意の上限または好ましい値を任意の下限または好ましい値と組み合わせることによって得られる任意の範囲も具体的に開示されることを理解されたい。
【0030】
「好ましい(preferred)」、「好ましくは(preferably)」、「望ましくは(desirably)」および「特に(particularly)」という言葉は、特定の状況下で特定の利益をもたらす可能性のある本開示の実施形態を指すために本明細書で頻繁に使用される。しかしながら、1つ以上の好ましい(preferable)、好ましい(preferred)、望ましい(desirable)、または特定の実施形態の列挙は、他の実施形態が有用でないことを意味するものではなく、それらの他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものではない。
【0031】
本出願全体で使用されているように、「場合がある、し得る、してよい、できる(may)」という単語は、必須の意味ではなく、許容的な意味で使用される。つまり、可能性があることを意味する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「周囲条件(ambient conditions)」は、問題の要素のすぐ周囲の温度、圧力、および相対湿度を含むパラメータのセットを指す。ここでの周囲条件は次の通りである;30~100%の相対湿度;20~40℃の範囲の温度;および0.9~1.1バールの圧力。
【0033】
本明細書で使用される「室温」は23℃±2℃である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「分解性」は、ポリマーまたは高分子化合物が、より小さな環境に無害な分子、例えば、水に可溶または分散可能な低分子量種に分解する能力を指す。このような分解は、特に加水分解による分解を含む様々な化学的メカニズムによる可能性がある。分解という用語は、微生物および/または自然環境要因の作用によって高分子が低分子量種に分解される生分解を包含することを意図している。したがって、「生分解性ポリマー」という用語は、とりわけ加水分解、酵素および/または微生物によって分解されて低分子量種を形成し得る化学結合を含むポリマーを指す。
【0035】
本明細書で使用される「反応性」という用語は、単独で、または「反応性組成物」の文脈で、接触時に反応できるか、または熱、照射、圧力、触媒、空気または水との接触作用の1つ以上によって反応させることができる物質を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「モノマー」および「コモノマー」という用語は、それ自体または他の同様の分子または化合物との組み合わせによってポリマー、合成樹脂またはエラストマーに変換できる分子を指す。これらの用語は、小分子に限定されず、それ自体または他の同様の分子または化合物と結合できるオリゴマー、ポリマーおよび他の大きな分子を含む。
【0037】
本明細書で使用される場合、「マクロモノマー」は、重合反応が進行できる少なくとも1つの官能基を有するポリマーを指す。したがって、マクロモノマーは、定義された構造のホモまたはコポリマーに変換できる高分子モノマーである。本明細書で使用されるマクロモノマーが、1つの官能基に結合した1つより大きいポリマー鎖を含むことを排除するものではない。
【0038】
本明細書で使用される場合、「重合条件」は、温度、圧力、雰囲気、重合混合物で使用される出発成分の比、反応時間、または重合混合物の外部刺激など、少なくとも1つのモノマーにポリマーを形成させる条件である。 重合プロセスは、バルクまたは溶液または他の従来の重合モードで実施できる。このプロセスは、重合メカニズムに適した任意の反応条件で操作される。
【0039】
本明細書で使用される場合、「段階的成長重合」は、二官能性または多官能性モノマーが最初に反応して二量体、次に三量体、そして最終的に長鎖ポリマーを形成する重合メカニズムのタイプを指す。多機能モノマーの場合、架橋ポリマーが生成される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「開環重合」という用語は、適切な触媒の存在下で環状化合物(モノマー)を開環して線状ポリマーを形成する重合を意味する。反応系は、所望の結果として生じる高分子化合物、環状化合物および/または線状オリゴマーの混合物の間の平衡に向かう傾向があり、その平衡の達成は、環状モノマーの性質および量、使用される触媒、および反応温度に大きく依存する。反応が完了した後のそれらの除去は複雑になる可能性があるため、重合における溶媒および/またはエマルジョンの使用は推奨されない。それはさておき、開環重合の有益な開示は、とりわけNuyken et al., Ring-Opening Polymerization-An Introductory Review Polymers 2013, 5, 361-403にある。
【0041】
本明細書で使用される「オルトエステル」という用語は、3つのアルコキシ基に結合した炭素原子を含む化合物に関する。
【0042】
α-アンゲリカラクトン(CAS 591-12-8)という名前は、5-メチル-3H-フラン-2-オンと同義語として使用される。
【0043】
「エキソ」という用語は、当技術分野におけるその標準的な定義に従って使用されている。
【0044】
本明細書で使用される場合、「エポキシド」という用語は、少なくとも1つの環状エーテル基、すなわちエーテル酸素原子が2つの隣接する炭素原子に結合し、それによって環状構造を形成するものの存在を特徴とする化合物を意味する。この用語は、モノエポキシド化合物、ポリエポキシド化合物(2つ以上のエポキシド基を有する)、およびエポキシド末端プレポリマーを包含することを意図している。「モノエポキシド化合物」という用語は、1つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。「ポリエポキシド化合物」という用語は、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。「ジエポキシド化合物」という用語は、2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を示すことを意味する。
【0045】
エポキシドは置換されていなくてもよいが、不活性に置換されていてもよい。例示的な不活性置換基には、塩素、臭素、フッ素およびフェニルが含まれる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「C-Cアルキル」基は、1~n個の炭素原子を含む一価の基を指し、これはアルカンの基であり、直鎖状および分枝状有機基を含む。したがって、「C-C30アルキル」基は、アルカン基であり、直鎖状および分枝状有機基を含む、1~30個の炭素原子を含む一価の基を指す。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;n-ヘキシル;n-ヘプチル;および、2-エチルヘキシルが含まれる。本発明において、そのようなアルキル基は、非置換であってもよく、またはハロ、ニトロ、シアノ、アミド、アミノ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミドおよびヒドロキシなどの1つ以上の置換基で置換されていてもよい。上記の例示的な炭化水素基のハロゲン化誘導体は、特に、適切な置換アルキル基の例として言及され得る。しかしながら、一般に、1~18個の炭素原子を含む非置換アルキル基(C~C18アルキル)、例えば、1~12個の炭素原子を含む非置換アルキル基(C~C12アルキル)が好ましいことに留意すべきである。
【0047】
「C~C30シクロアルキル」という用語は、3~30個の炭素原子を有する飽和、単環式、二環式または三環式炭化水素基を意味すると理解される。一般に、3~18個の炭素原子を含むシクロアルキル基(C~C18シクロアルキル基)が好ましいことに留意すべきである。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;アダマンタン;および、ノルボルナンが含まれる。
【0048】
本明細書で使用される場合、単独でまたはより大きな部分の一部として(「アラルキル基」のように)使用される「C-C18アリール」基は、単環式環系が芳香族である、または二環式または三環式環系の環の少なくとも1つは芳香族である任意に置換された単環式、二環式および三環式環系を指す。二環式および三環式環系には、ベンゾ縮合した2~3員の炭素環式環が含まれる。例示的なアリール基には、フェニル;インデニル;ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル;テトラヒドロアントラセニル;および、アントラセニルが含まれる。そして、フェニル基が好ましい場合がある。
【0049】
本明細書で使用される場合、「C-C12アルケニル」は、2~12個の炭素原子および少なくとも1単位のエチレン性不飽和を有するヒドロカルビル基を指す。アルケニル基は、直鎖状、分枝状、または環状であってよく、任意選択で置換されていてもよい。「アルケニル」という用語はまた、当業者によって理解されるように、「シス」および「トランス」配置、あるいは「E」および「Z」配置を有する基を包含する。しかしながら、一般に、2~10個(C2-10)または2~8個(C2-8)の炭素原子を含む置換されていないアルケニル基が好ましいことに留意すべきである。前記C-C12アルケニル基の例には、これらに限定されないが、-CH=CH;-CH=CHCH;-CHCH=CH;-C(=CH)(CH);-CH=CHCHCH;-CHCH=CHCH;-CHCHCH=CH;-CH=C(CH;-CHC(=CH)(CH);-C(=CH)CHCH;-C(CH)=CHCH;-C(CH)CH=CH;-CH=CHCHCHCH;-CHCH=CHCHCH;-CHCHCH=CHCH;-CHCHCHCH=CH;-C(=CH)CHCHCH;-C(CH)=CHCHCH;-CH(CH)CH=CHCH;-CH(CH)CHCH=CH;-CHCH=C(CH;1-シクロペント(cyclopent)-1-エニル;1-シクロペント-2-エニル;1-シクロペント-3-エニル;1-シクロヘキセン(cyclohex)-1-エニル;1-シクロヘキセン-2-エニル;および、1-シクロヘキシル-3-エニルが含まれる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「アルキルアリール」は、アルキル置換アリール基を指し、「置換アルキルアリール」は、上記の1つ以上の置換基をさらに有するアルキルアリール基を指す。
【0051】
本明細書で使用される「ヘテロ(複素)」という用語は、N、O、SiおよびSなどの1つ以上のヘテロ原子を含む基または部分を指す。したがって、例えば「ヘテロ環(複素環)」は、環構造の一部として、例えば、N、O、SiまたはSを有する環状基を指す。「ヘテロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」部分は、それぞれ、上記で定義されたアルキルおよびシクロアルキル基であり、それらの構造の一部としてN、O、SiまたはSを含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、「触媒量」という用語は、特に明記しない限り、反応物と比較して化学量論以下の量の触媒を意味する。
【0053】
本明細書で使用される「光開始剤」という用語は、例えばそれを照射すると、電磁放射などのエネルギーを有する活性化ビームによって活性化し得る化合物を意味する。この用語は、光酸発生剤と光塩基発生剤の両方を包含することを意図している。具体的には、「光酸発生剤」という用語は、化学線に曝されると酸硬化樹脂系の触媒作用のために酸を生成する化合物またはポリマーを指す。「光塩基発生剤」という用語は、適切な放射線にさらされたときに1つ以上の塩基を生成する任意の物質を意味する。
【0054】
本明細書で使用される「ルイス酸」という用語は、第2の分子またはイオンからの2つの電子と共有結合を形成することによって別の分子またはイオンと結合できる任意の分子またはイオン(しばしば求電子試薬と呼ばれる)を意味する。したがって、ルイス酸は電子受容体である。
【0055】
本明細書で言及されている分子量は、ASTM 3536に従って行われるような、ポリスチレン校正標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「一級アミノ基」は、有機基に結合しているNH基を指し、「二級アミノ基」は、2つの有機基に結合しているNH基を指し、これらは、共に環の一部と成る場合がある。使用される場合、「アミン水素」という用語は、一級および二級アミノ基の水素原子を指す。
【0057】
「アミン当量」は、アミン価から算出した計算値である。そのアミン価は、希薄な、通常は1NHCl溶液による酢酸アミンイオンの滴定によって決定される。純粋な材料の場合、アミン価は、純粋な化合物の分子量およびKOH(56.1g/mol)を使用して計算できる。説明のために、有益なガイダンスは、https://dowac.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/12987に見つかる場合がある。
【0058】
「マンニッヒ塩基」という用語は、本明細書では、当技術分野におけるその標準的な定義に従って、ケトンとホルムアルデヒドおよびアンモニアとの縮合から得られるケトン性アミン、または一級または二級アミンとして使用される(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/9567537#section=Top)。
【0059】
組成物を定義または特徴付けるために本明細書で使用される「成分」という用語は、少なくとも1つの成分または化合物を含む成分を指し、これはまた、異なる成分または化合物の混合物であり得る。
【0060】
本発明の文脈における「2成分(2K)組成物」は、それらの(高い)反応性のために、バインダー成分(A)および硬化剤成分(B)が別々の容器に貯蔵されなければならない組成物であると理解される。2つの成分は、適用の直前にのみ混合され、その後、通常、追加の活性化なしに、結合形成およびそれによるポリマーネットワークの形成と反応する。しかしながら、架橋反応を加速するために、触媒を使用するか、またはより高い温度を適用することもできる。
【0061】
言及されている場合、ポリマーまたはコポリマーの計算されたガラス転移温度(「Tg」)は、フォックス方程式を使用して計算され得る温度である.(T. G. Fox, Bull. Am. Physics Soc., Volume 1, Issue No. 3, page 123(1956))。特定のホモポリマーのガラス転移温度は、IntersciencePublishersのJ. BrandrupおよびE. H. Immergutが編集した「PolymerHandbook」などの公開された文献に記載されている。
【0062】
ポリマーの実際のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定できる。Tgを決定するためのDSCの使用は当技術分野で周知であり、B. Cassel and M. P. DiVito in "Use of DSC To Obtain Accurate Thermodynamic and Kinetic Data", American Laboratory, January 1994, pp 14-19およびB. Wunderlich in Thermal Analysis, Academic Press, Inc., 1990において説明されている。本特許出願で具体的に測定されたガラス転移温度(Tg)は、Deutsches Institut fuer Normung(DIN)11357の方法論に従って測定されている。
【0063】
「無水」という用語は、本明細書において、適用可能な反応混合物または成分が、混合物または成分の重量に基づいて、0.25重量%未満の水を含むことを意味することを意図している。「本質的に溶媒を含まない」という用語は、関連する組成物が0.25重量%未満の溶媒を含むことを意味するものとして同様に解釈されるべきである。
【0064】
[本発明の詳細な説明]
〔官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)の合成〕
官能化されたα-アンゲリカラクトン(XOMAL)の合成は、次の反応スキームによって最も広く特徴付けられる:
【化8】
上記のように、表記:
【化9】
は、すべての立体異性体がこの一般式(XOMAL)の範囲内にあることを示すために本明細書で使用される。
【0065】
反応物アルファ(α-)アンゲリカラクトン(a))が得られる手段を制限する特別な意図はない:前記化合物が市販されていることは別として、それはまた、当業者に知られている多数の合成経路を介して合成され得る。この点に関してhttp://www.molbase.com/en/synthesis_591-12-8-moldata-4778.htmlを参照のこと。使用される合成経路に基づいて都合がよい場合、α-アンゲリカラクトンは、当技術分野で知られている方法を使用して単離および精製してよい。この点に関して、適切な技術として、抽出、蒸発、蒸留、およびクロマトグラフィーについて言及できる。
【0066】
上記の反応スキームにおいて有用性を有するオルトエステル反応物は、本明細書において以下の一般式(b))を有する:
【化10】
[式中、R、R、およびRは、独立して、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリールおよびC-C12アルケニル基から選択される。]
【0067】
式(b))のオルトエステルの好ましい実施形態では、R、R、およびRは、C-C18アルキルおよびC-C12アルケニル基から独立して選択される;R、R、およびRは、例えば、C-C12アルキル基およびC-Cアルケニル基から独立して選択され得るか、またはC-CアルキルまたはC-Cアルケニル基から独立して選択され得る。前述の実施形態に代替的または追加的に、式(b))のR、R、およびRのうちの少なくとも2つが同じであることが好ましい。
【0068】
本発明で使用するのに適したオルトエステル(b))の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:オルトギ酸トリエチル(R=R=R=Et); オルトギ酸トリメチル(R=R=R=Me);オルトギ酸トリブチル(R=R=R=Bu);オルトギ酸トリプロポキシ(R=R=R=nPr);オルトギ酸ジエチルビニル(R=R=Et、R=CH=CH);オルトギ酸トリオクタデシル(R=R=R=C1837);および、オルトギ酸トリペンチル(R=R=R=C11)。
【0069】
上記のスキームで述べたように、反応は酸無水物の存在下で行われる。典型的には、前記酸無水物は、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸または無水コハク酸のうちの1つである。無水酢酸が好ましい。それはさておき、酸無水物は、この点に関して、反応物の総モル数(a)、b))に対して化学量論以下の量の前記酸無水物を含み得る触媒量で存在するべきであるが、反応物の総モル数(a)、b))に対して、酸無水物がモル過剰で存在すること(例えば、最大20%モル過剰)を排除するものではない。
【0070】
反応はまた、反応物(a)、b))の総重量に基づいて、典型的には最大10重量%または最大5重量%を構成する適切な酸化防止剤の存在下で実施される。本明細書では、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)および/またはブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を含むがこれらに限定されない、1つ以上の立体障害(ヒンダード)フェノールの使用が好ましい。
【0071】
共触媒の存在は必須ではないが、それも排除されない。オルトエステルとα-アンゲリカラクトンとの間の反応は、一実施形態では、以下の触媒量の存在下で実施できる:AlCl、TiCl、FeCl、SnClまたはZnClなどのルイス酸;または、HSO、HNO、HCl、HBr、HI、トリフルオロ酢酸(TFA)、HPO、p-トルエンスルホン酸(p-TSA)、およびメタンスルホン酸(MSA)からなる群から選択される強プロトン酸。
【0072】
上記の反応は無水条件下で行う必要がある。反応容器に不活性で乾燥したガス状ブランケットを設けることにより、大気中の湿気への暴露を回避できる。乾燥窒素、ヘリウム、アルゴンをブランケットガスとして使用できるが、一般的な窒素ガスをブランケットとして使用する場合は注意が必要である。そのような窒素は、水分の巻き込みを受けやすいため、十分に乾燥していない可能性があるためである。窒素は、本明細書で使用する前に追加の乾燥工程を必要とする場合がある。
【0073】
上記の反応は、溶媒の存在下で実施してよい。溶媒としては不活性溶媒が好ましい。これらには、出発化合物と反応する反応性基は含まれていない。不活性、極性、非プロトン性溶媒が特に好ましい。そのように名付けられているのは、例えば、環状エーテル化合物、特にテトラヒドロフラン(THF)である。
【0074】
反応温度は、典型的には少なくとも75℃、好ましくは少なくとも100℃である。反応温度は200℃以上であってもよいが、とりわけ実行可能な反応器圧力を維持するため;および該当する場合、触媒を失活または分解することなく適切な触媒活性を維持するために、温度が175℃または150℃を超えないことが好ましい。反応は一般に発熱性であるため、進行するにつれてある程度の冷却が必要になる場合がある。
【0075】
プロセス圧力は重要ではない。そのため、反応は準大気圧、大気圧、または超大気圧で実行できるが、大気圧またはそれをわずかに上回る圧力が好ましい。この点に関しては、100~500MPaまたは100~200MPaの圧力について言及し得る。
【0076】
上記の反応の進行は、既知の技術によってモニターできる。たとえば、サンプルを反応容器から取り出し、炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフィー(GC)を使用してテストできる。
【0077】
反応生成物(XOMAL)は、当技術分野で知られている方法を使用して単離および精製し得る。この点に関しては、適切な技術として、抽出、濾過、蒸発、蒸留、およびクロマトグラフィーについて言及できるが、反応の生成物は、溶媒および未反応の出発物質を蒸留除去することによって単離されることが最も便利である。
【0078】
[硬化性成分]
上記のように、官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)は、以下を含む反応性組成物に含まれる:b)以下のいずれか一方または両方:i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および、エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物。エポキシ基との反応性(エポキシ樹脂が硬化する反応)により、成分b)i)および/またはb)ii)を硬化剤として以下に示すことができる。成分パートb)i)およびb)ii)は、必然的に、分子あたり少なくとも2つのエポキシド反応性基を有する化合物を含む。
【0079】
〔成分b)i)〕
硬化剤は、エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミンを含むか、またはそれからなり得る。特に、所望のポリアミンは、第一級および/または第二級アミン基を含み得、第一級または第二級アミン基あたりの当量が150以下、好ましくは125以下である。
【0080】
単独でまたは組み合わせて使用し得る、本発明で使用するのに適したポリアミンには、以下が含まれるが、これらに限定されない。
i) 以下の例が言及され得る脂肪族、脂環式またはアリール脂肪族の第一級ジアミン:2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン;1,3-ペンタンジアミン(DAMP);1,5-ペンタンジアミン;1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD);2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン(C11-ネオジアミン);1,6-ヘキサンジアミン(ヘキサメチレンジアミン、HMDA);2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン;2,2,4-および/または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン;1,7-ヘプタンジアミン;1,8-オクタンジアミン;1,9-ノナンジアミン;1,10-デカンジアミン;1,11-ウンデカンジアミン;1,12-ドデカンジアミン;1,2-、1,3-および1,4-ジアミノシクロヘキサン;ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-エチルシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルシクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-エチル-5-メチルシクロヘキシル)メタン;1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミン、IPDA);2-および/または4-メチル-1,3-ジアミノシクロヘキサン;1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン;1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジアミン、NBDA);3(4)、8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカン(TCD-ジアミン);1,4-ジアミノ-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDA);1,8-メンタンジアミン;3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン;および、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン(MXDA)。
【0081】
ii) 以下の特定の例が言及され得る2つまたは3つの第一級脂肪族アミン基を有する第三級アミン基含有ポリアミン:N,N’-ビス(アミノプロピル)-ピペラジン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)エチルアミン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)プロピルアミン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン;N,N-ビス(3-アミノプロピル)-2-エチル-ヘキシルアミン;トリス(2-アミノエチル)アミン;トリス(2-アミノプロピル)アミン;トリス(3-アミノプロピル)アミン;および、天然脂肪酸に由来する脂肪アミンの二重シアノエチル化(double cyanoethylation)とそれに続く還元からの生成物、 例えば、N,N-ビス(3-アミノプロピル)ドデシルアミンおよびN,N-ビス(3-アミノプロピル)獣脂アルキルアミン、 Triameen(登録商標)Y12DおよびTriameen(登録商標)YT(Akzo Nobelから)として市販されている。
【0082】
iii) 以下の特定の例が言及され得るエーテル基含有脂肪族第一級ポリアミン:ビス(2-アミノエチル)エーテル;3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミン;4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン;4,7-ジオキサデカン-2,9-ジアミン;4,9-ジオキサドデカン-1,12-ジアミン;5,8-ジオキサドデカン-3,10-ジアミン;4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミンおよびこれらのジアミンの高級オリゴマー;ビス(3-アミノプロピル)ポリテトラヒドロフランおよび他のポリテトラヒドロフランジアミン;1,4-ジメチロールシクロヘキサンのプロポキシル化およびその後のアミノ化から得られた脂環式エーテル基含有ジアミン、 例えば、Jeffamine(登録商標)RFD-270(Huntsmanから)として市販されている材料ポリオキシアルキレンジ-および-トリオールのアミノ化から生成物として得られるポリオキシアルキレンジ-または-トリアミン、これは、Jeffamine(登録商標)(Huntsman)の名、ポリエーテルアミン(BASF)の名、またはPCアミン(登録商標)(Nitroil)の名で市販されている。特に好ましいのは、Jeffamine(登録商標)D-230、Jeffamine(登録商標)D-400, Jeffamine(登録商標)D-600, Jeffamine(登録商標)D-2000, Jeffamine(登録商標)D-4000, Jeffamine(登録商標)T-403, Jeffamine(登録商標)T-3000, Jeffamine(登録商標)T-5000, Jeffamine(登録商標)EDR-104, Jeffamine(登録商標)EDR-148およびJeffamine(登録商標)EDR-176の使用であり、BASFまたはNitroilの対応するアミンも同様である。
【0083】
iv) 以下の例が言及され得る二級アミン基を有する一級ジアミン:3-(2-アミノエチル)アミノプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン(BHMT);ジエチレントリアミン(DETA);トリエチレンテトラミン(TETA);テトラエチレンペンタミン(TEPA);ペンタエチレンヘキサミン(PEHA);5~7個のエチレンアミン単位を有するポリエチレンポリアミン(いわゆる「高級エチレンポリアミン(higher ethylenepolyamine)」、HEPA)などの線状ポリエチレンアミンの高級同族体;少なくとも2つの第一級アミン基を有する第一級ジアミンおよびポリアミンの複数のシアノエチル化またはシアノブチル化、およびそれに続く水素化からの生成物、例えば、ジプロピレントリアミン(DPTA)、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン(N3-アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(N4-アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,4-ジアミノブタン、N5-(3-アミノプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、N3-(3-アミノペンチル)-1,3-ペンタンジアミン、N5-(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミンまたはN,N’-ビス(3-アミノ-1-エチルプロピル)-2-メチル-1,5-ペンタンジアミン。
【0084】
v) 以下の例が言及され得る1つの第一級および少なくとも1つの第二級アミノ基を有するポリアミン:N-ブチル-1,2-エタンジアミン;N-ヘキシル-1,2-エタンジアミン;N-(2-エチルヘキシル)-1,2-エタンジアミン;N-シクロヘキシル-1,2-エタンジアミン;4-アミノメチル-ピペリジン;N-(2-アミノエチル)ピペラジン;N-メチル-1,3-プロパンジアミン;N-ブチル-1,3-プロパンジアミン;N-(2-エチルヘキシル)-1,3-プロパンジアミン;N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン;3-メチルアミノ-1-ペンチルアミン;3-エチルアミノ-1-ペンチルアミン;3-シクロヘキシルアミノ-1-ペンチルアミン;N-ココアルキル-1,3-プロパンジアミンなどの脂肪性ジアミン;第一級脂肪族ジアミンとアクリロニトリル、マレイン酸またはフマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、アクリル酸およびメタクリル酸エステル、アクリル酸およびメタクリル酸アミドおよびイタコン酸ジエステルとが、1:1のモル比で反応した、マイケル型付加反応からの生成物; アルデヒドまたはケトンによる一級ポリアミンの部分的還元的アルキル化からの生成物、特に、2つの第一級アミン基による前述のポリアミンのN-モノアルキル化生成物、特に、1,6-ヘキサンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、BHMT、DETA、TETA、TEPA、DPTA、N3-アミンおよびN4-アミン、ここで、好ましいアルキル基は、ベンジル、イソブチル、ヘキシルおよび2-エチルヘキシルである;およびGaskamine(登録商標)240(Mitsubishi Gas Chemicalから)として市販されているものなどの部分的にスチレン化されたポリアミン。
【0085】
vi) 二級ジアミン、特に、2つの第一級アミン基を有する前述のポリアミンのN,N’-ジアルキル化生成物、特に、1,6-ヘキサンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、BHMT、DETA、TETA、TEPA、DPTA、N3-アミンまたはN4-アミンのN,N’-ジアルキル化生成物、ここで、好ましいアルキル基は、2-フェニルエチル、ベンジル、イソブチル、ヘキシルおよび2-エチルヘキシルである。
【0086】
vii) 以下に言及され得る芳香族ポリアミン:m-およびp-フェニレンジアミン;4,4’-、2,4’および2,2’-ジアミノジフェニルメタン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA);2,4-および2,6-トリレンジアミン;3,5-ジメチルチオ-2,4-および-2,6-トリレンジアミンの混合物(AlbermarleからEthacure(登録商標)300として入手可能);3,5-ジエチル-2,4-および-2,6-トリレンジアミン(DETDA)の混合物;3,3’、5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-DEA);3,3’、5,5’-テトラエチル-2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-CDEA);3,3’-ジイソプロピル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-MIPA);3,3’,5,5’-テトライソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(M-DIPA);4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(DDS);4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンゼンスルホンアミド;5,5’-メチレンジアントラニル酸;ジメチル-(5,5’-メチレンジアントラニレート);1,3-プロピレン-ビス(4-アミノ安息香酸);1,4-ブチレン-ビス(4-アミノ安息香酸);ポリテトラメチレンオキシド-ビス(4-アミノ安息香酸)(Air ProductsからVersalink(登録商標)として入手可能);1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、2-メチルプロピル-(4-クロロ-3,5-ジアミノベンゾエート);および、tert.ブチル-(4-クロロ-3,5-ジアミノベンゾエート)。
【0087】
viii) 示されるメンバー(indicative members )が一価または多価カルボン酸またはそのエステルまたはその無水物(特に二量体脂肪酸)と脂肪族、脂環式または芳香族ポリアミンとの反応生成物を含むポリアミドアミン、 たとえば、DETAまたはTETAなどのポリアルキレンアミン。市販のポリアミドアミンには次のものがある:Versamid(登録商標)100、125、140、および150(Cognisから); Aradur(登録商標)223、250、および848(Huntsmanから);Euretek(登録商標)3607および530(Huntsmanから);および、Beckopox(登録商標)EH651、EH 654、EH 655、EH 661、およびEH 663(Cytecから)。
【0088】
ix) マンニッヒ塩基、特に市販のフェナルカミンCardolite(登録商標)NC-541、NC-557、NC-558、NC-566、Lite 2001およびLite 2002(Cardoliteから入手可能)、Aradur(登録商標)3440、3441、3442および3460(Huntsmanから入手可能)およびBeckopox(登録商標)EH 614、EH 621、EH 624、EH 628およびEH 629(Cytecから入手可能)。
【0089】
少なくとも2つの第一級脂肪族アミン基を有する前述のポリアミンの中で好ましいものは以下である:イソホロンジアミン(IPDA);ヘキサメチレンジアミン(HMDA);1,3-ビス(アミノ-メチル)シクロヘキサン;1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン;NBDA;および、平均分子量が最大5000g/モル、特に最大2000g/モルのエーテル基含有ポリアミン。前記エーテル基含有ポリアミンの中で特に好ましいのは、Jeffamine(登録商標)D-230およびD-600(Huntsmanから入手可能)である。
【0090】
〔成分b)ii)〕
硬化剤は、少なくとも1つのメルカプト基含有化合物を含むか、またはそれからなり得る。単独でまたは組み合わせて使用し得る適切なメルカプト基含有化合物には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
●液体メルカプタン末端ポリスルフィドポリマーであり、そのうちの商業的な例は次の通りである:Thiokol(登録商標)ポリマー(Morton Thiokolから入手可能)、特にそれらのLP-3、LP-33、LP-980、LP-23、LP-55、LP-56、LP-12、LP-31、LP-32およびLP-2タイプ;および、Thioplast(登録商標)ポリマー (Akzo Nobelから)、特にG10、G112、G131、G1、G12、G21、G22、G44およびG4タイプ。
●メルカプタン末端ポリオキシアルキレンエーテル、これはポリオキシアルキレンジ-および-トリオールをエピクロロヒドリンまたはアルキレンオキシドのいずれかと反応させ、続いて硫化水素ナトリウムと反応させることにより得られる。
●ポリオキシアルキレン誘導体の形態のメルカプタン末端化合物、これはCapcure(登録商標)(Cognisから)の商品名、特にそのタイプWR-8、LOFおよび3-800で知られている。
●特定の例が含まれるチオカルボン酸のポリエステル:ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMP);トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP);グリコールジメルカプトアセテート;および、ポリオキシアルキレンジオールおよびトリオール、エトキシル化トリメチロールプロパンおよびポリエステルジオールと、チオグリコール酸および2-または3-メルカプトプロピオン酸などのチオカルボン酸とのエステル化生成物。
●2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、2,2’-(エチレンジオキシ)-ジエタンチオール(トリエチレングリコールジメルカプタン)および/またはエタンジチオール。
【0091】
チオカルボン酸のポリエステルの使用、特にペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMP)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP)およびグリコールジメルカプトアセテートのうちの少なくとも1つの使用が好ましいことが認められている。
【0092】
〔エポキシド化合物〕
本明細書で使用されるエポキシ樹脂は、単官能性エポキシ樹脂、多官能性またはポリエポキシ樹脂、およびそれらの組み合わせを含み得る。エポキシ樹脂は、純粋な化合物であり得るが、同様に、1分子あたり異なる数のエポキシ基を有する化合物の混合物を含む、エポキシ官能性化合物の混合物であり得る。エポキシ樹脂は、飽和または不飽和、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であってよく、置換されていてもよい。さらに、エポキシ樹脂はまた、モノマーまたはポリマーであり得る。
【0093】
本発明の重合プロセスを制限する意図なしに、例示的なモノエポキシドモノマーには以下が含まれる:アルキレンオキシド;エポキシ置換脂環式炭化水素、例えば、シクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、(+)-シス-リモネンオキシド、(+)-シス,トランス-リモネンオキシド、(-)-シス,トランス-リモネンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシドおよびα-ピネンオキシド;エポキシ置換芳香族炭化水素;一価アルコールまたはフェノールのモノエポキシ置換アルキルエーテル、例えば、脂肪族、脂環式および芳香族アルコールのグリシジルエーテル;モノカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル、例えば、脂肪族、脂環式および芳香族モノカルボン酸のグリシジルエステル;他のカルボキシ基がアルカノールでエステル化されている、ポリカルボン酸のモノエポキシ置換アルキルエステル;エポキシ置換モノカルボン酸のアルキルおよびアルケニルエステル;他のOH基がカルボン酸またはアルコールでエステル化またはエーテル化されている多価アルコールのエポキシアルキルエーテル;および、他のOH基がカルボン酸またはアルコールでエステル化またはエーテル化されている多価アルコールおよびエポキシモノカルボン酸のモノエステル。
【0094】
例として、以下のグリシジルエーテルは、本明細書で使用するのに特に適切なモノエポキシドモノマーであると言及され得る:メチルグリシジルエーテル;エチルグリシジルエーテル;プロピルグリシジルエーテル;ブチルグリシジルエーテル;ペンチルグリシジルエーテル;ヘキシルグリシジルエーテル;シクロヘキシルグリシジルエーテル;オクチルグリシジルエーテル;2-エチルヘキシルグリシジルエーテル;アリルグリシジルエーテル;ベンジルグリシジルエーテル;フェニルグリシジルエーテル;4-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル;1-ナフチルグリシジルエーテル; 2-ナフチルグリシジルエーテル;2-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-クロロフェニルグリシジルエーテル;4-ブロモフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリクロロフェニルグリシジルエーテル;2,4,6-トリブロモフェニルグリシジルエーテル;ペンタフルオロフェニルグリシジルエーテル;o-クレシル(cresyl)グリシジルエーテル;m-クレシルグリシジルエーテル;およびp-クレシルグリシジルエーテル。
【0095】
重要な実施形態において、モノエポキシドモノマーは、本明細書の以下の式(III)に適合する:
【化11】
式中、R、R、R、およびRは同じでも異なっていてもよく、独立して、水素、ハロゲン原子、C-Cアルキル基、C-C10シクロアルキル基、C-C12アルケニル、C-C18アリール基、またはC-C18アラルキル基から選択される、ただし、RとRの少なくとも1つは水素ではない。
【0096】
、RおよびRは水素であり、Rはフェニル基またはC-Cアルキル基、より好ましくはC-Cアルキル基のいずれかであることが好ましい。
【0097】
この実施形態を考慮して、例示的なモノエポキシドには以下が含まれる:エチレンオキシド;1,2-プロピレンオキシド(プロピレンオキシド);1,2-ブチレンオキシド;シス-2,3-エポキシブタン;トランス-2,3-エポキシブタン;1,2-エポキシペンタン;1,2-エポキシヘキサン;1,2-ヘプチレンオキシド;デセンオキシド;ブタジエンオキシド;イソプレンオキシド;および、スチレンオキシド。
【0098】
本発明では、以下からなる群から選択される少なくとも1つのモノエポキシドモノマーを使用することが好ましい:エチレンオキシド;プロピレンオキシド;シクロヘキセンオキシド;(+)-シス-リモネンオキシド;(+)-シス,トランス-リモネンオキシド;(-)-シス,トランス-リモネンオキシド;シクロオクテンオキシド;およびシクロドデセンオキシド。プロピレンオキシドがモノマーとして使用される場合、特に好ましい: この特に好ましい声明は、重合に供されるエポキシドモノマーの1つまたは唯一のエポキシドモノマーのいずれかである前記プロピレンオキシドを包含することを意図している。
【0099】
この場合も、本発明の重合プロセスを制限する意図なしに、適切なポリエポキシドモノマーは、液体、固体、または溶媒中の溶液であり得る。さらに、そのようなポリエポキシド化合物は、100~700g/eq、例えば、120~320g/eqのエポキシ当量を有するべきである。そして、一般に、エポキシ当量が500未満またはさらには400未満であるジエポキシド化合物が好ましい。これは主にコストの観点からのものであり、それらの製造において、低分子量エポキシ樹脂は精製においてより限定された処理を必要とする。
【0100】
本発明で重合し得るポリエポキシ化合物のタイプまたはグループの例として、以下について言及する場合がある:多価アルコールおよび多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;および、エポキシ化ポリエチレン性不飽和の炭化水素、エステル、エーテルおよびアミド。
【0101】
適切なジグリシジルエーテル化合物は、本質的に芳香族、脂肪族、または脂環式であり得、したがって、二価フェノールおよび二価アルコールから誘導され得る。そして、そのようなジグリシジルエーテルの有用なクラスは次の通りである:脂肪族および脂環式ジオールのジグリシジルエーテル、例えば、1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール;ビスフェノールAに基づくジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ジグリシジルo-フタレート、ジグリシジルイソフタレートおよびジグリシジルテレフタレート;ポリアルキレングリコールベースのジグリシジルエーテル、特にポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;および、ポリカーボネートジオールベースのグリシジルエーテル。言及され得る他の適切なジエポキシドには、以下が含まれる:二重不飽和脂肪酸C-C18アルキルエステルのジエポキシド;ブタジエンジエポキシド;ポリブタジエンジグリシジルエーテル;ビニルシクロヘキセンジエポキシド;および、リモネンジエポキシド。
【0102】
さらなる例示的なポリエポキシ化合物には、以下が含まれるが、これらに限定されない:グリセロールポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル;ジグリセロールポリグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;およびソルビトールポリグリシジルエーテル。
【0103】
そして、非常に好ましいポリエポキシド化合物の例には、以下が含まれる:DER(商標)331、DER(商標)383などのビスフェノールAエポキシ樹脂;DER(商標)354などのビスフェノールFエポキシ樹脂;DER(商標)353などのビスフェノールA/Fエポキシ樹脂ブレンド;DER(商標)736などの脂肪族グリシジルエーテル;DER(商標)732などのポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;DER(商標)661やDER(商標)664UEなどの固体ビスフェノールAエポキシ樹脂;DER(商標)671-X75などのビスフェノールA固体エポキシ樹脂の溶液;DEN(商標)438などのエポキシノボラック樹脂;DER(商標)542などの臭素化エポキシ樹脂;ERISYS(商標)GE-35Hなどのヒマシ油トリグリシジルエーテル;ERISYS(商標)GE-38などのポリグリセロール-3-ポリグリシジルエーテル;および、ERISYS(商標)GE-60などのソルビトールグリシジルエーテル。
【0104】
それは好ましい実施形態を表さないが、本発明は、以下からなる群から選択される1つ以上の環状モノマーをさらに含む硬化性組成物を排除するものではない:オキセタン;環状カーボネート;環状無水物;およびラクトン。以下の引用の開示は、適切な環状カーボネート官能性化合物を開示するのに有益である場合がある:米国特許第3,535,342号;米国特許第4,835,289号;米国特許第4,892,954号;英国特許番号GB-A-1,485,925;およびEP-A-0 119 840。 しかしながら、そのような環状コモノマーは、エポキシド化合物の総重量に基づいて、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、または5重量%未満を構成するべきである。
【0105】
〔反応性組成物〕
上記および添付の特許請求の範囲に記載されているように、本発明は、以下を含む反応性組成物を提供する:
a)一般式:
【化12】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリールまたはC-C12アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);および
b)以下のいずれか一方または両方:
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および
ii)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物。
【0106】
一実施形態では、反応性組成物は、パートa)のアルコキシメチレン(=C-OR)基とパートb)のアミンおよびメルカプト基の合計とのモル比が0.5:1~2.5:1、例えば、0.8:1~2:1の範囲にあることを特徴とする。
【0107】
反応性組成物を形成するために、パートa)およびb)の反応性化合物は、均一な混合物を生成するのに十分な剪断力の下で混合されるべきである。これは、特別な条件や特別な機器なしで達成できると考えられている。そうは言っても、適切な混合装置には次のものが含まれ得る:静的混合装置;マグネチックスターラー装置;ワイヤー泡立て器;オーガー;バッチミキサー;プラネタリーミキサー;C. W. BrabenderまたはBanburry(登録商標)スタイルのミキサー; および、ブレードスタイルのブレンダーやロータリーインペラーなどの高せん断ミキサー。
【0108】
反応性組成物は、その存在下でパートa)およびb)の反応が行われる溶媒を含み得る。溶媒としては不活性溶媒が好ましい。これらには、出発化合物と反応する反応性基は含まれていない。不活性、極性、非プロトン性溶媒が特に好ましい。そのように名付けられているのは、例えば、環状エーテル化合物、特にテトラヒドロフラン(THF)である。
【0109】
しかしながら、反応性組成物は水を含むべきではない:パートa)およびb)の反応は、理想的には無水条件下で実施されるべきである。貯蔵容器および任意の反応容器に不活性で乾燥したガス状ブランケットを提供することにより、大気中の湿気への暴露を回避し得る。乾燥窒素、ヘリウム、アルゴンをブランケットガスとして使用できるが、一般的な窒素ガスをブランケットとして使用する場合は注意が必要である。そのような窒素は、水分の巻き込みを受けやすいため、十分に乾燥していない可能性があるためである。窒素は、本明細書で使用する前に追加の乾燥工程を必要とする場合がある。
【0110】
理論に拘束されることなく、パートa)およびb)は段階的成長重合によって反応してコポリマーを生成し得る。重合条件を制限する特別な意図はないが、そのような条件は熱的または光化学的誘導を含み得ることに留意されたい。前者の場合、反応性組成物は、20℃~120℃の範囲、好ましくは20℃~70℃、特に20℃~60℃の温度にさらされ得る。作動可能な温度は、存在する特定の化合物および所望の重合速度に依存し、必要に応じて簡単な予備試験を使用して、当業者が個々の場合に決定できる。もちろん、20℃~35℃または20℃~30℃の温度は、通常の一般的な周囲温度から混合物を実質的に加熱する必要がないので、特に有利である。しかしながら、適用可能な場合、反応性組成物の温度は、マイクロ波誘導を含む従来の手段を使用して、混合温度および/または塗布温度よりも高くできる。
【0111】
重合プロセスが熱的に誘発される場合、反応性化合物(a)、b))の重量に基づいて、最大5重量%、例えば最大2重量%の量で反応性組成物内に触媒を含めることが適切である場合がある。使用される触媒を制限する意図なしに、特に以下について言及できる:i)第三級アミン、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、イミダゾール(N-メチルイミダゾール、N-ビニルイミダゾールおよび1,2-ジメチルイミダゾールを含む)およびそのような第三級アミンの塩;ii)ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなどの第四級アンモニウム塩;iii)1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンなどのアミジン;iv)1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどのグアニジン;および、v)マンニッヒ塩基。
【0112】
反応または段階的成長重合が光化学的に誘発される場合、反応性組成物は、反応性組成物の重量に基づいて、0.05~5.0重量%、例えば、0.05~2.0重量%の量で組成物中に存在するはずの光開始剤をさらに含んでいてよい。反応性組成物のその後の照射の目的は、反応を開始する光開始剤から活性種を生成することである。その種が生成されると、硬化化学は他の化学反応と同じ熱力学の法則に従う。反応速度は熱によって加速される可能性がある。
【0113】
特定の実施形態では、光開始剤は、光塩基発生剤を含むか、またはそれからなる。通常、320~420nmの波長のUV放射にさらされると、光塩基発生剤はアミンを放出し、アミンは、反応性基の付加を触媒する。光塩基発生剤は、光照射により直接または間接的にアミンを生成する限り、特に制限されない。ただし、言及される可能性のある適切な光塩基発生剤には、次のものが含まれる:ベンジルカルバメート;ベンゾインカルバメート;o-カルバモイルヒドロキシアミン;O-カルバモイルオキシム;芳香族スルホンアミド;アルファ-ラクタム;N-(2-アリルテニル)アミド; アリールアジド化合物、N-アリールホルムアミド、および4-(オルト-ニトロフェニル)ジヒドロピリジン。例示的な光塩基発生剤として、富士フイルム和光純薬株式会社から入手可能な1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレングアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネートについて言及し得る。
【0114】
完全を期すために、光塩基発生剤の調製は当技術分野で知られており、有益な参考文献には以下が含まれる:J. Cameron et al., Journal of the American Chemical Society, Vol. 113, No. 11, 4303-4313 (1991); J. Cameron et al., J. Polym. Mater. Sci. Eng., 64, 55 (1991); J. Cameron et al., J. Org. Chem., 55, 5919- 5922 (1990); Sun et al., Journal of the American Chemical Society (2008), 130 (26), 8130-8131; Suyama et al., Progress in Polymer Science (2009), 34 (2), 194-209; Arimitsu et al., Journal of Photopolymer Science and Technology (2010), 23, 135-136; Kobayashi et al., Journal of Photopolymer Science and Technology (2018), 31, 107-112; and, U.S. 5,650,261 (Winkel)。さらに、光塩基発生剤については、以下でさらに説明されている:M. Shirai et al. Photochemical Reactions of Quatenary Ammonium Dithiocarbamates as Photobase Generators and Their Use in The Photoinitiated Thermal Crosslinking of Poly(gycidylmethacrylate), Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry, Vol. 39, pp. 1329-1341 (2001); and, M. Shirai et al., Photoacid and photobase generators: chemistry and applications to polymeric materials, Progress in Polymer Science, Vol. 21, pp. 1-45, XP-002299394, 1996.。
【0115】
重合プロセスの圧力は重要ではない。そのため、パートa)およびb)の反応は、準大気圧、大気圧、または超大気圧で実行できるが、大気圧またはそれをわずかに上回る圧力が好ましい。この点に関しては、100~500MPaまたは100~200MPaの圧力について言及し得る。
【0116】
パートa)およびb)の反応の進行は、既知の技術によってモニターできる。たとえば、サンプルを反応容器から取り出し、炎イオン化検出器(FID)を備えたガスクロマトグラフィー(GC)を使用してテストできる。
【0117】
コポリマー生成物は、当技術分野で知られている方法を使用して単離および精製できる。この点に関して、適切な技術として抽出、濾過、蒸発、蒸留およびクロマトグラフィーについて言及できるが、使用される溶媒および未反応の出発物質を蒸留除去することによって反応のコポリマー生成物を単離することが最も便利である。
【0118】
本明細書で上記および添付の特許請求の範囲で定義される反応性組成物から得られるコポリマーは、本発明の範囲内である。当業者によって認識されるように、その反応性組成物のパートb)のアミンおよびメルカプト基の合計がパートa)のアルコキシメチレン(=C-OR)基のモル過剰である場合、反応から得られるコポリマーは、アミンまたはメルカプト官能化される。したがって、コポリマーはエポキシド化合物と反応的である。それにより、本発明は、定義された反応性組成物から、少なくとも2つのエポキシド反応性基を有する分解性コポリマーの合成を可能にし、さらに、エポキシド化合物の硬化剤(hardener)または硬化剤(curative)としての前記コポリマーの使用を可能にする。
【0119】
〔エポキシ樹脂に基づく硬化性組成物〕
上記のように、本発明は、
a)一般式:
【化13】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリールまたはC-C12アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);
b)以下のいずれか一方または両方:
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物;および
c)少なくとも1つのエポキシド化合物
を含む硬化性組成物を提供する。
【0120】
硬化性組成物を配合する場合、組成物は、エポキシ反応性基とエポキシ基とのモル比が0.95:1~1.5:1、例えば0.95:1~1.1:1であることを特徴とすることが好ましい。特に、エポキシ反応性基とエポキシ基との1:1のモル比は、これらの記載された範囲内に含まれ、それ自体が非常に好ましいモル比を表す。
【0121】
モル比による上記の定義を相互に排除することを意図しない組成物の配合の独立した表現において、硬化性組成物は、組成物の重量に基づいて、
1~70重量%のa)一般式:
【化14】
[式中、Rは、C-C30アルキル、C-C30シクロアルキル、C-C18アリールまたはC-C12アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);
30~70重量%のb)硬化成分、前記成分は、
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および/または
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物;
を含む、および、
10~80重量%のc)少なくとも1つのエポキシド化合物
を含み得る。
【0122】
本発明の硬化性組成物の例示的であるが非限定的な実施形態では、組成物の重量に基づいて、以下を含む硬化性組成物が提供される:
10~40重量%のa)一般式:
【化15】
[式中、Rは、C-CアルキルまたはC-Cアルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);
20~50重量%のb)硬化成分、前記成分は、以下を含む:
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン、ここで、前記少なくとも1つのポリアミンは、第一級および/または第二級アミン基を含有し、第一級または第二級アミン基あたりの当量が150以下である;および/または
ii)ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMP)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP)、グリコールジメルカプトアセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択されるチオカルボン酸のポリエステル、および
10~50重量%のc)多価アルコールのグリシジルエーテル;多価フェノールのグリシジルエーテル;および、ポリカルボン酸のグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つのポリエポキシ化合物。
【0123】
上記で定義された(複合材料の熱硬化性組成物として、コーティング、シーラント、または接着剤組成物として有用性が見出される可能性がある)硬化性組成物は、典型的には、これらの組成物に改善された特性を与えることができる補助剤および添加剤をさらに含むであろう。例えば、補助剤および添加剤は、以下のうちの1つ以上を付与し得る:改善された弾性回復;より長い有効な処理(加工)時間;より速い硬化時間;およびより低い残留タック。そのような補助剤および添加剤の中に含まれるもの(互いに独立して、2成分(2K)組成物の単一の成分または両方の成分に含まれ得る)は、触媒、可塑剤、UV安定剤を含む安定剤、酸化防止剤、強化剤、充填剤、反応性希釈剤、乾燥剤、接着促進剤、殺菌剤、難燃剤、レオロジー補助剤、カラー顔料またはカラーペースト、および/または任意選択で、少量の非反応性希釈剤である。
【0124】
完全を期すために、一般に、エポキシド反応性基を含有する補助剤および添加剤は、2(2K)成分組成物の硬化剤または硬化成分にブレンドされることに留意されたい。エポキシド基を含むか、または硬化剤と反応性である材料は、一般に、2(2K)成分組成物のエポキシド含有成分に配合される。非反応性材料は、2つの成分のいずれか一方または両方に配合してよい。
【0125】
適切な触媒は、エポキシド基とエポキシド反応性基との間の反応、例えばアミン基とエポキシド基との間の反応を促進する物質である。特定の例は、チオレート(-S-)に存在する反応性チオール(-SH)基の脱プロトン化によって機能するアミン触媒の使用に関するものであり、チオレートは求核性開環重合によってエポキシ基と反応する。
【0126】
本発明で使用される触媒を制限する意図なしに、以下の適切な触媒について言及し得る:i)酸または酸に加水分解可能な化合物、特にa)酢酸、安息香酸、サリチル酸、2-ニトロ安息香酸、乳酸などの有機カルボン酸;b)メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸および4-ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸;c)スルホン酸エステル;d)リン酸などの無機酸;e)BFアミン錯体、SbFスルホニウム化合物、ビスアレーン鉄錯体などのルイス酸化合物;f)ペンタフルオロアンチモン酸錯体などのブレンステッド酸化合物;および、e)前述の酸および酸エステルの混合物;ii)第三級アミン、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、イミダゾール-(N-メチルイミダゾール、N-ビニルイミダゾールおよび1,2-ジメチルイミダゾールを含む)-およびそのような第三級アミンの塩;iii)ベンジルトリメチルアンモニウムクロリドなどの第四級アンモニウム塩;iv)1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンなどのアミジン;v)1,1,3,3-テトラメチルグアニジンなどのグアニジン;vi)フェノール、特にビスフェノール;vii)フェノール樹脂;viii)マンニッヒ塩基;および、ix)ジフェニルホスファイトおよびトリフェニルホスファイトなどのホスファイト。
【0127】
一実施形態では、エポキシ樹脂に基づく組成物を硬化させるためのアミン触媒は、光塩基発生剤であり得る:UV放射(典型的には320から420nmの波長)への曝露時に、前記光塩基発生剤はアミンを放出し、エポキシドへのエポキシド反応性基の付加を触媒する。光塩基発生剤は、光照射により直接または間接的にアミンを生成する限り、特に制限されない。しかし、言及される可能性のある適切な光塩基発生剤には、次のものが含まれる:ベンジルカルバメート;ベンゾインカルバメート;o-カルバモイルヒドロキシアミン;O-カルバモイルオキシム;芳香族スルホンアミド;アルファ-ラクタム;N-(2-アリルテニル)アミド;アリールアジド化合物、N-アリールホルムアミド、および4-(オルト-ニトロフェニル)ジヒドロピリジン。例示的な光塩基発生剤として、富士フイルム和光純薬株式会社から入手可能な1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレングアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネートについて言及できる。
【0128】
完全を期すために、光塩基発生化合物の調製は当技術分野で知られており、有益な参考文献には以下が含まれる:J. Cameron et al., Journal of the American Chemical Society, Vol. 113, No. 11, 4303-4313 (1991); J. Cameron et al., J. Polym. Mater. Sci. Eng., 64, 55 (1991); J. Cameron et al., J. Org. Chem., 55, 5919- 5922 (1990); Sun et al., Journal of the American Chemical Society (2008), 130 (26), 8130-8131; Suyama et al., Progress in Polymer Science (2009), 34 (2), 194-209; Arimitsu et al., Journal of Photopolymer Science and Technology (2010), 23, 135-136; Kobayashi et al., Journal of Photopolymer Science and Technology (2018), 31, 107-112; and, U.S. 5,650,261 (Winkel)。さらに、光塩基発生剤については、以下でさらに説明されている:M. Shirai et al. Photochemical Reactions of Quatenary Ammonium Dithiocarbamates as Photobase Generators and Their Use in The Photoinitiated Thermal Crosslinking of Poly(gycidylmethacrylate), Journal of Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry, Vol. 39, pp. 1329-1341 (2001); and, M. Shirai et al., Photoacid and photobase generators: chemistry and applications to polymeric materials, Progress in Polymer Science, Vol. 21, pp. 1-45, XP-002299394, 1996。
【0129】
代替の実施形態において、酸触媒は、光酸発生剤(PAG)から選択され得る:光エネルギーを照射すると、イオン性光酸発生剤はフラグメンテーション反応を起こし、開環とペンダントエポキシド基の付加を触媒して架橋を形成するルイス酸またはブレンステッド酸の1つ以上の分子を放出する。有用な光酸発生剤は、熱的に安定であり、形成するコポリマーと熱的に誘発される反応を受けず、硬化性組成物に容易に溶解または分散される。光酸発生剤は当技術分野で知られており、以下を参考にできる:K. Dietliker, 「コーティング、インク、ペイント用のUVおよびEB配合の化学と技術」 Vol. Ill, SITA Technology Ltd., London (1991); and, Kirk-Othmer 化学技術百科事典、 4.Sup.Th Edition, Supplement Volume, John Wiley and Sons, New York, pp 253-255。
【0130】
本発明のイオン性PAGのカチオン性部分として使用され得る例示的なカチオンには、米国特許第4,250,311号、米国特許第3,113,708号、米国特許第4,069,055号、米国特許第4,216,288号、米国特許第5,084,586号、米国特許第5,124,417号、および米国特許第5,554,664号に記載されているものなどの有機オニウムカチオンが含まれる。参考文献は、脂肪族または芳香族のグループIVAおよびVIIA(CASバージョン)を中心とするオニウム塩を具体的に含み、スルホキソニウム、ヨードニウム、スルホニウム、セレノニウム、ピリジニウム、カルボニウムおよびホスホニウムから選択されるものなどの、I-、S-、P-、Se-、N-、およびC-を中心とするオニウム塩が好ましい。
【0131】
当技術分野で知られているように、イオン性光酸発生剤(PAG)における対アニオンの性質は、エポキシ基のカチオン付加重合の速度および程度に影響を及ぼし得る。説明のために、Crivello et al. Chem. Mater., 4, 692, (1992) は、一般的に使用される求核性アニオン間の反応性の順序は、SbF>AsF>PF>BFであると報告している。反応性に対するアニオンの影響は、当業者が本発明において補償しなければならない3つの主要な要因に起因している:(1)生成されたプロトン酸またはルイス酸の酸性度;(2)伝播するカチオン鎖におけるイオン対分離の程度;および(3)フッ化物の引き抜きおよびその結果としての連鎖停止に対するアニオンの感受性。
【0132】
本発明の組成物が、上記の光塩基発生剤および光酸発生剤化合物に代わる代替の、光開始剤化合物が、化学線を照射すると、組成物の重合または硬化を開始する光開始剤化合物を含むことを排除するものではない。本発明の光重合性組成物は、カチオン重合性またはフリーラジカル重合性であり得ることに留意されたい。エポキシ基はカチオン活性であるが、フリーラジカル重合メカニズムの選択は、組成物が、アクリレート化合物、(メタ)アクリレート化合物、エポキシ官能性アクリレート、エポキシ官能性(メタ)アクリレートまたはそれらの組み合わせなどのフリーラジカル活性の不飽和基を有する化合物を含まなければならないという要件を課す。 その選択を適用すると、好ましい光開始剤は、アクリル二重結合への付加によって開始できるフリーラジカルを生成するためにノリッシュI開裂を受ける光活性化合物であろう。
【0133】
全体として、光開始剤は、100部の反応物モノマーに基づいて、0.1~1.0重量部の量で光重合性組成物中に存在するべきである。
【0134】
光塩基発生剤、光酸発生剤およびラジカル光開始剤の使用は、光化学反応から残留化合物を生成する場合がある。残留物は、赤外線、紫外線およびNMR分光法;ガスまたは液体クロマトグラフィー;および、質量分析などの従来の分析技術によって検出できる。したがって、本発明は、硬化した(エポキシ)マトリックスコポリマーおよび光塩基/酸発生剤からの検出可能な量の残留物を含み得る。このような残留物は少量存在し、通常、生成物の所望の物理化学的特性を妨げることはない。
【0135】
本発明を限定する意図なしに、モノマー混合物および光開始剤は、モノマー成分を重合するために活性化UV放射で照射され得る。UV光源には次の2つのタイプがある:i)280~400ナノメートルの波長範囲で一般に10mW/cm以下を提供するバックライトなどの比較的低い光強度の光源;または、ii)一般に10mW/cmを超える強度、例えば15~750mW/cm、または通常は15~450mW/cmの強度を提供する、中圧水銀ランプなどの比較的高い光強度の光源。
【0136】
照射の目的は、硬化反応を開始する光開始剤から活性種を生成することである。その種が生成されると、硬化化学は他の化学反応と同じ熱力学の法則に従い、反応速度は熱によって加速される場合がある。モノマーのカチオン性UV硬化を強化するために熱処理を使用する慣行は、当技術分野で一般に知られており、例示的な有益な参考文献は、Crivello et al., “Dual Photo- and thermally initiated cationic polymerization of epoxy monomers,” Journal of Polymer Science A, Polymer Chemistry., Vol. 44, Issue: 23, pp. 6750-6764, (Dec. 1, 2006)である。
【0137】
当業者によって認識されるように、光増感剤を組成物に組み込んで、光開始剤が送達されたエネルギーを使用する効率を改善できる。光増感剤は、通常、光開始剤の重量に基づいて、5~25重量%の量で使用される。
【0138】
本発明の目的のための「可塑剤」は、組成物の粘度を低下させ、したがってその加工性を促進する物質である。本明細書において、可塑剤は、組成物の総重量に基づいて、最大40重量%または最大20重量%を構成してよく、好ましくは、以下からなる群から選択される:ポリジメチルシロキサン(PDMS);ジウレタン;Cetiol OE (Cognis Deutschland GmbH、デュッセルドルフから入手可能)などの単官能性、線状、または分枝状C-C16アルコールのエーテル;アビエチン酸、酪酸、チオ酪酸、酢酸、プロピオン酸エステルおよびクエン酸のエステル;ニトロセルロースおよびポリ酢酸ビニルに基づくエステル;脂肪酸エステル;ジカルボン酸エステル;OH基を有するまたはエポキシ化された脂肪酸のエステル;グリコール酸エステル;安息香酸エステル;リン酸エステル;スルホン酸エステル;トリメリット酸エステル;エポキシ化可塑剤;エンドキャップされたポリエチレンまたはポリプロピレングリコールなどのポリエーテル可塑剤。ポリスチレン;炭化水素可塑剤;塩素化パラフィン;および、それらの混合物。原則として、フタル酸エステルを可塑剤として使用できるが、これらは毒性学的な可能性があるため好ましくないことに留意されたい。可塑剤は、1つ以上のポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むか、またはそれからなることが好ましい。
【0139】
本発明の目的のための「安定剤」は、酸化防止剤、UV安定剤または加水分解安定剤として理解されるべきである。本明細書において、安定剤は、組成物の総重量に基づいて、合計で最大10重量%または最大5重量%を構成してよい。本明細書での使用に適した安定剤の標準的な商業例には、以下が含まれる:立体障害のあるフェノール(ヒンダードフェノール);チオエーテル;ベンゾトリアゾール;ベンゾフェノン;ベンゾエート;シアノアクリレート;アクリレート;ヒンダードアミン光安定剤(HALS)タイプのアミン;リン;硫黄;および、それらの混合物。
【0140】
本発明のこれらの組成物は、必要に応じて、ゴム修飾エポキシ樹脂の形態で、コアシェル粒子の形態で、またはそれらの組み合わせの形態で存在することが望ましい強化ゴムを含み得る。強化ゴムは、-25℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するべきである:好ましくは、強化ゴムの少なくとも一部は、-40℃以下、より好ましくは-50℃以下、さらにより好ましくは-70℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するべきである。
【0141】
前述のように、本発明による組成物は、充填剤をさらに含み得る。ここで適切なのは、例えば、チョーク、石灰粉末、沈降および/または発熱性ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、炭酸マグネシウム、ジアトマイト、アルミナ、粘土、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、石英、フリント、雲母、ガラス粉末、およびその他の粉砕鉱物である。有機充填剤、特にカーボンブラック、グラファイト、木質繊維、木粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、綿、木材チップ、チョップドストロー、もみ殻、すりつぶしたクルミの殻、および他のチョップド繊維も使用し得る。ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、ケブラー繊維、またはポリエチレン繊維などの短繊維も加えることができる。アルミニウム粉末も同様にフィラーとして適している。
【0142】
発熱性および/または沈降ケイ酸は、有利には、10~90m/gのBET表面積を有する。それらが使用されるとき、それらは、本発明による組成物の粘度のさらなる増加を引き起こさないが、硬化された組成物の強化に寄与する。
【0143】
同様に、より高いBET表面積、有利には100~250m/g、特に110~170m/gを有する発熱性および/または沈降ケイ酸を充填剤として使用することが考えられる。BET表面積が大きいため、硬化組成物を強化する効果は、ケイ酸のより少ない重量比で達成される。
【0144】
充填剤としても適切なのは、鉱物シェルまたはプラスチックシェルを有する中空球である。これらは、例えば、Glass Bubbles(登録)の商品名で商業的に入手可能な中空ガラス球であり得る。Expancel(登録商標)またはDualite(登録商標)などのプラスチックベースの中空球を使用でき、欧州特許第0520426B1に記載されている。これらは無機または有機物質で構成されており、それぞれの直径は1mm以下、好ましくは500μm以下である。
【0145】
組成物にチキソトロピーを与える充填剤は、多くの用途に好ましい場合がある。そのような充填剤は、レオロジー補助剤、例えば、硬化ヒマシ油、脂肪酸アミド、またはPVCなどの膨潤性プラスチックとしても記載される。
【0146】
本発明の組成物中に存在する充填剤の総量は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~80重量%、より好ましくは5~60重量%である。硬化性組成物の所望の粘度は、通常、添加される充填剤の総量を決定し、チューブなどの適切な分配装置から容易に押し出すために、硬化性組成物は、3000~150,000、好ましくは40,000~80,000mPas、あるいは50,000~60,000mPasの粘度を有するべきである。
【0147】
適切な顔料の例は、二酸化チタン、酸化鉄、またはカーボンブラックである。
【0148】
貯蔵寿命をさらに延ばすために、乾燥剤を使用することによる水分浸透に関して、本発明の組成物をさらに安定化することがしばしば推奨される。また、反応性希釈剤を使用することにより、特定の用途のために、本発明による接着剤またはシーラント組成物の粘度を低下させる必要性も時折存在する。存在する反応性希釈剤の総量は、通常、組成物の総重量に基づいて、最大15重量%、好ましくは1~5重量%である。
【0149】
本発明の組成物中の非反応性希釈剤の存在もまた、これがその粘度を有用に緩和できる場合に排除されない。例えば、説明のためだけに、組成物には次のものが1つ以上含まれていてよい:キシレン;2-メトキシエタノール;ジメトキシエタノール;2-エトキシエタノール;2-プロポキシエタノール;2-イソプロポキシエタノール;2-ブトキシエタノール;2-フェノキシエタノール;2-ベンジルオキシエタノール;ベンジルアルコール;エチレングリコール;エチレングリコールジメチルエーテル;エチレングリコールジエチルエーテル;エチレングリコールジブチルエーテル;エチレングリコールジフェニルエーテル;ジエチレングリコール;ジエチレングリコール-モノメチルエーテル;ジエチレングリコール-モノエチルエーテル;ジエチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル;ジエチレングリコールジエチルエーテル;ジエチレングリコールジ-n-ブチリルエーテル;プロピレングリコールブチルエーテル;プロピレングリコールフェニルエーテル;ジプロピレングリコール;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;ジプロピレングリコールジメチルエーテル;ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル;N-メチルピロリドン;ジフェニルメタン;ジイソプロピルナフタレン;Solvesso(登録商標)製品(Exxonから入手可能)などの石油留分;tert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールおよび8,11,14-ペンタデカトリエニルフェノールなどのアルキルフェノール; スチレン化フェノール;ビスフェノール;芳香族炭化水素樹脂、特にエトキシル化またはプロポキシル化フェノールなどのフェノール基含有樹脂;アジペート;セバケート;フタレート;ベンゾエート;有機リン酸またはスルホン酸エステル;およびスルホンアミド。
【0150】
上記はさておき、前記非反応性希釈剤は、組成物の総重量に基づいて、10重量%未満、特に5重量%未満または2重量%未満を構成することが好ましい。
【0151】
完全を期すために、本発明の組成物は、ヘキシルアミンおよびベンジルアミンなどの1つ以上のモノアミンを含み得る。
【0152】
[方法および用途]
コーティング、シーラント、または接着剤組成物などの定義された硬化性組成物を形成するために、反応性化合物が一緒にされて混合される。当技術分野で知られているように、1成分(1K)硬化性組成物を形成するために、組成物の要素が一緒にされ、反応性成分の反応を阻害または防止する条件下で均一に混合される。当業者によって容易に理解されるように、これは、水分または照射への曝露を制限または防止するか、または構成潜在触媒の活性化を制限または防止する混合条件を含み得る。したがって、硬化性要素は手で混合するのではなく、機械(例えば、静的または動的ミキサー)によって、意図的な光照射なしに無水条件下で所定の量で混合することがしばしば好ましい。
【0153】
2成分(2K)硬化性組成物の場合、反応性成分は、その硬化を誘発するような方法で一緒にされ、混合される。1成分(1K)および2成分(2K)の両方の組成物の場合、反応性化合物は、均一な混合物を生成するために十分なせん断力の下で混合する必要がある。これは、特別な条件や特別な機器なしで達成できると考えられている。そうは言っても、適切な混合装置には次のものが含まれ得る:静的混合装置;マグネチックスターラー装置;ワイヤー泡立て器;オーガー;バッチミキサー;プラネタリーミキサー;C. W. BrabenderまたはBanburry(登録商標)スタイルのミキサー;および、ブレードスタイルのブレンダーやロータリーインペラーなどの高せん断ミキサー。
【0154】
一般的に2リットル未満の容量が使用される小規模ライナーアプリケーションの場合、2成分(2K)組成物の好ましいパッケージは、2つの管状チャンバーが互いに並んでまたは互いに内側に配置され、ピストンで密閉されている、並んだダブルカートリッジまたは同軸カートリッジである。 これらのピストンの駆動により、前記成分をカートリッジから押し出すことができる、これは、密接に取り付けられた静的または動的ミキサーを介して有利に行われる。大容量のアプリケーションの場合、組成物の2つの成分は、ドラムまたはペール缶に有利に貯蔵してよい:この場合、2つの成分は、油圧プレス、特にフォロアプレートを介して押し出され、パイプラインを介して、硬化剤とバインダー成分を細かく均一に混合し得る混合装置に供給される。いずれにせよ、どのパッケージでも、両方の成分を長期間、理想的には12か月以上保管できるように、バインダー成分は気密および防湿シールで配置することが重要である。
【0155】
本発明に適している可能性のある2成分分配装置および方法の非限定的な例には、米国特許第6,129,244号および米国特許第8,313,006号に記載されているものが含まれる。
【0156】
該当する場合、2(2K)成分硬化性組成物は、200000mPa・s未満、たとえば、25℃で100000mPa・s未満の初期粘度(混合直後、たとえば混合後2分までで測定される)を示すように広く配合する必要がある。前記粘度特性とは独立して、またはそれに加えて、2(2K)成分組成物は、混合およびその後の硬化時に気泡(泡)を含まないように配合されるべきである。さらに、2成分(2K)組成物は、以下の特性の少なくとも1つ、望ましくは少なくとも2つ、そして最も望ましくはすべての特性を実証するようにさらに処方されるべきである:i)通常少なくとも30分、通常は少なくとも60または120分の長いポットライフ。このポットライフは、本明細書では、20℃での混合物の粘度が50,000mPas超に上昇するまでの時間であると理解されるべきである;ii)120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下の最大発熱温度;および、 iii)硬化され、室温および50%相対湿度で7日間保存された後、少なくとも50、好ましくは60、より好ましくは少なくとも70のショアA硬度。
【0157】
本発明の組成物の硬化は、典型的には、-10℃~120℃の範囲、好ましくは0℃~70℃、特に20℃~60℃の範囲の温度で起こる。適切な温度は、存在する特定の化合物および所望の硬化速度に依存し、必要に応じて簡単な予備試験を使用して、当業者が個々の場合に決定できる。もちろん、10℃~35℃または20℃~30℃の温度での硬化は、混合物を通常の一般的な周囲温度から実質的に加熱または冷却する必要がないため、特に有利である。しかしながら、適用可能な場合、2(2K)成分組成物のそれぞれの成分から形成される混合物の温度は、マイクロ波誘導を含む従来の手段を使用して、混合温度および/または適用温度より高くできる。
【0158】
本発明による硬化性組成物は、とりわけ以下において有用性を見出すことができる:ワニス;インク;エラストマー;泡;繊維および/または粒子の結合剤;ガラスのコーティング;石灰および/またはセメント結合プラスター、石膏含有表面、繊維セメント建材およびコンクリートなどの鉱物建材のコーティング;チップボード、ファイバーボード、紙などの木材および木製材料のコーティングおよびシーリング;金属表面のコーティング;アスファルトおよびビチューメン含有舗装のコーティング;さまざまなプラスチック表面のコーティングおよびシーリング;および、革と織物のコーティング。
【0159】
本発明の組成物は、ケーブル、光ファイバー、カバーストリップまたはプラグなどの電気建築部材用の注入可能なシーリングコンパウンドとして適切であるとも考えられる。シーラントは、水やその他の汚染物質の侵入、熱への暴露、温度変動、熱衝撃、および機械的損傷からこれらのコンポーネントを保護するのに役立つ場合がある。
【0160】
本発明の組成物が、短時間で、しばしば室温で、高い結合強度を作り出すことができるという事実により、組成物は、同じまたは異なる材料を互いに表面-表面結合することによって複合構造を形成するために最適に使用される。本組成物の例示的な接着用途として、木材と木製材料の結合および金属材料の結合が挙げられ得る。
【0161】
上記の各用途において、組成物は、以下のような従来の塗布方法によって塗布できる:ブラッシング;例えば、組成物が無溶剤である4塗布ロール装置または溶剤含有組成物用の2塗布ロール装置を使用するロールコーティング;ドクターブレードアプリケーション;印刷方法;および空気噴霧スプレー、空気アシストスプレー、エアレススプレーおよび大量低圧スプレーを含むがこれらに限定されないスプレー方法。コーティングおよび接着剤の用途では、組成物を10~500μmの湿潤膜厚に塗布することが推奨される。この範囲内でより薄い層を適用すると、より経済的であり、コーティングの適用ではサンディングが必要になる可能性のある厚い硬化領域の可能性が低くなる。ただし、不連続な硬化膜の形成を回避するために、より薄いコーティングまたは層を適用する際には、細心の注意を払う必要がある。
【0162】
完全を期すために、本発明は「フィルム接着剤」の形態のエポキシ接着剤の調製を排除しないことに留意されたい。エポキシ、XOMAL、硬化剤、およびその他の望ましい成分のプレポリマー混合物は、ポリマーフィルム基材上にコーティングとして塗布され、巻き上げられ、成分間の化学反応を阻害するのに十分な低温で保存される。必要に応じて、フィルム接着剤を低温環境から取り除き、金属または複合部品に塗布し、裏当てを剥がして組み立てを完了し、オーブンまたはオートクレーブで硬化させる。
【実施例
【0163】
以下の実施例は、本発明の例示であり、いかなる方法でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0164】
[例]
以下の材料が実施例で使用された:
・D.E.R.(商標)331(商標):液体エポキシ樹脂:エピクロロヒドリンおよびビスフェノールAの液体反応生成物、The Dow Chemical Companyから入手可能
・HMDA:ヘキサメチレンジアミン、Sigma Aldrichから入手可能
・IPDA:イソホロンジアミン、Sigma Aldrichから入手可能
・PETMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、Bruno Bock Chemische Fabrik GmbH & Co. KGから入手可能
・TMPMP:トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、Bruno Bock Chemische Fabrik GmbH & Co. KGから入手可能
・JEFFAMINE ED-600:プロピレンオキシドでキャップされたポリエチレングリコール由来の脂肪族ポリエーテルジアミン、Huntsman Corporationから入手可能
・PRIAMINE(登録商標)1074:ダイマージアミン、Croda Coatings & Polymersから入手可
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、Acros Organicsから入手可能
・WPBG-266:1,2-ジイソプロピル-3-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]グアニジウム2-(3-ベンゾイルフェニル)プロピオネート、富士フイルム和光純薬株式会社から入手可能。
【0165】
〔例1〕
EtOMAL(R=Et、0.50g、3.2mmol)をジクロロメタン(5.0ml)に溶解した。HMDA(0.38g、3.2mmol)を前記溶液に加え、反応混合物を室温で5時間撹拌した。溶媒を蒸発させた後、暗褐色のポリマーが得られた。得られたポリマーを、示差走査熱量測定(DSC)により、-50から200℃で、10K/分の加熱速度で分析した。以下の表1に記載されているように、ポリマーのガラス転移温度(Tg)は43.4°Cと決定された(表1、エントリー1)。H NMR分光法およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析により、EtOMALはアミンとの求核付加を2回受けて、以下のスキーム1に示すように、骨格にアミナール結合を有するポリマーを形成することが明らかになった。
【0166】
【化16】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.12 (s, 1H), 5.98 (s, 1H), 3.31-3.24 (m, 4H), 1.99 (s, 3H), 1.58-1.42 (br, 4H), 1.41-1.19 (br, 6H). GPC (THF) Mw = 75,000, Mw/Mn = 2.4.
【0167】
〔例2〕
EtOMAL(R =Et、0.01g)およびJeffamine ED-600 (0.03g)を別々にアルミニウムサンプル皿(直径:4mm)に置いた。前記サンプル皿を直ちに-50℃に冷却し、次に示差走査熱量測定(DSC)を使用して10K/分の速度で加熱して反応を追跡した。
【0168】
添付の図1に示すように、EtOMALの融解は34.3℃に吸熱ピークとして検出された。47.0℃に発熱ピークが観察され、これは溶融したEtOMALがJeffamine ED-600と反応して硬化することで理論的に説明された。図1にさらに示されているように、得られた樹脂は、そのアモルファス性のために、DSCで-50~200℃の範囲で明確なガラス転移および結晶化を示さなかった。
【0169】
〔例3:多官能性アミンによるXOMALの硬化〕
以下は、多官能性アミンによるXOMALの硬化のためにこの例で採用された手順の典型である。
EtOMAL(R=Et)とIPDA(多官能性アミン)をEtOMAL:IPDAのモル比1:1で混合した。混合物を室温で24時間維持した。得られた暗褐色ポリマーを、示差走査熱量測定(DSC)により、-50~200℃の温度範囲で、10K/分の加熱速度で分析した:決定されたガラス転移温度(Tg)は、70.0℃であった(表1、エントリー2)。
【0170】
以下の表1に特定された反応物についてこの手順を繰り返し、各反応物のモル量を括弧内に示した。表1に示されている組成物の理論上のバイオ再生可能炭素含有量は、以下の成分に適用された値に基づいて計算された:EtOMAL(63%バイオ再生可能);Priamine 1074 (100%バイオ再生可能);そして、他のすべての成分(0%バイオ再生可能)。
【0171】
【表1】
【0172】
表1のエントリー1~5に示されているように、得られたポリマーのガラス転移温度(Tg)は、アミン硬化剤の選択および/または混合によって調整可能である。理論上のバイオ再生可能含有量は、石油ベースのエポキシDER331と比較してEtOMALを使用することで改善され、バイオ再生可能ジアミンであるPriamine 1074を選択することで最大92%に達することができる(表1、エントリー4)。
【0173】
表1のエントリー6~8は、EtOMALが一般的に使用されるエポキシDER331と共重合可能であることをさらに示している。これらの事実は、多官能性アミンのによるXOMALの硬化性組成物を提供し、そのカーボンフットプリントを改善するためにエポキシベースの接着剤/熱硬化性樹脂の反応性成分としてXOMALを使用できることを証明している。
【0174】
〔例4:多官能性チオールによるXOMALの硬化〕
<4.1 熱硬化>
多官能性チオールPETMP(0.16g、0.32mmol)を塩基触媒DBU(0.026g、0.17mmol)と混合した。室温で前記混合物にEtOMAL(R=Et、0.1g、0.65mmol)を加えると、同時に硬化が起こり、淡黄色の樹脂が形成された。得られた樹脂を示差走査熱量測定(DSC)で-50~200℃、加熱速度10K/分で分析した。ガラス転移温度(Tg)は46.9℃で検出された。検出されたTgは、理論上のバイオ再生可能炭素含有量とともに表1にリストされている。
【0175】
<4.2 光硬化>
EtOMAL(R=Et、0.15g、0.97mmol)、多官能性チオールPETMP(0.24g、0.49mmol)および光塩基発生剤WPBG-266 (0.019g、0.038mmol)を混合し、テフロンプレート上に配置した。混合物をUV光照射に5分間曝露し、次に室温に放置して、淡黄色の樹脂を得た。得られた樹脂を示差走査熱量測定(DSC)で-50~200°C、加熱速度10K/分で分析し、22.6℃でTgを検出した。検出されたTgは、理論上のバイオ再生可能炭素含有量とともに表1にリストされている。
【0176】
現在の結果は、XOMALが塩基触媒の存在下で一般的に使用されるチオール硬化剤で硬化可能であり、石油ベースのエポキシDER331と比較してカーボンフットプリントを改善することを明確に示している。塩基触媒作用を選択することにより、硬化を熱的および光化学的に開始してもよい。
【0177】
〔例5:XOMALによるエポキシの硬化樹脂の調製とその分解〕
一般化された手順に従って、XOMALを使用して硬化エポキシ樹脂を調製し、その分解を監視した。
【0178】
EtOMAL(R=Et、0.3g)を従来のエポキシモノマーDER331(3.0g)と混合し、硬化剤としてIPDA(0.85g)を添加した。調製した混合物を80℃で4時間、続いて150℃で2時間加熱して、硬い樹脂(Tg=139℃)を得た。
【0179】
比較として、DER331(3.0g)をEtOMALの非存在下でIPDA(0.70g)を使用して同じ条件下で硬化させ、硬い樹脂(Tg=151°C)を得た。
【0180】
硬化した樹脂(ca.1cm×2cm×2mm)を酸性溶液(HO:CHCOOH=1:1(v/v))に室温で48時間浸漬した。EtOMALなしで硬化したエポキシ樹脂は、本条件下で2日間浸漬した後も完全なままであった。対照的に、EtOMALを使用して硬化したエポキシ樹脂は、同じ条件下で小さな断片(<ca.1mm×1mm×1mm)に分解された。
【0181】
結果は、EtOMALがアミン硬化剤によってエポキシと共硬化(co-cured)してアミナール結合を形成し、硬化した樹脂がアミナールの酸触媒加水分解によって分解されることを示した。したがって、XOMALをエポキシベースの接着剤/熱硬化性樹脂の成分として使用して、カーボンフットプリントを改善し、リサイクルの目的でこれらの接着剤/熱硬化性樹脂を剥離(debond)/分解するための分解性組成物を提供することもできる。
【0182】
前述の説明および例を考慮して、当業者には、特許請求の範囲から逸脱することなく、その同等の修正を行うことができることが明らかであろう。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1]
一般式:
【化17】
[式中、R は、C -C 30 アルキル、C -C 30 シクロアルキル、C -C 18 アリールまたはC -C 12 アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)のエポキシ樹脂に基づく組成物の硬化における反応性成分としての使用。
[2]
a)一般式:
【化18】
[式中、R は、C -C 30 アルキル、C -C 30 シクロアルキル、C -C 18 アリールまたはC -C 12 アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);および
b)以下のいずれか一方または両方:
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および
ii)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物
を含む反応性組成物。
[3]
前記官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)が一般式:
【化19】
[式中、R は、C -C 18 アルキル、C -C 18 シクロアルキル、C -C 18 アリールまたはC -C 10 アルケニル基である]
を有する、[2]に記載の組成物。
[4]
前記官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)の置換基R がC -C 12 アルキルまたはC -C アルケニル基である、[2]または[3]に記載の組成物。
[5]
前記官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL)の置換基R がC -C アルキルまたはC -C アルケニル基である、[2]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]
前記少なくとも1つのポリアミンb)i)は、第一級および/または第二級アミン基を含有し、150以下、好ましくは125以下の第一級または第二級アミン基あたりの当量を有する、[2]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]
イソホロンジアミン(IPDA);ヘキサメチレンジアミン(HMDA);1,3-ビス(アミノ-メチル)シクロヘキサン;1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン;ビス(4-アミノ-シクロヘキシル)メタン;ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン;2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA);および、平均分子量が最大2000g/モルのエーテル基含有ポリアミンからなる群から選択される少なくとも2つの第一級脂肪族アミン基を有する少なくとも1つのポリアミンを含む、[2]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[8]
前記少なくとも1つのメルカプト化合物b)ii)が、チオカルボン酸のポリエステルから選択される、[2]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]
前記少なくとも1つのメルカプト化合物b)ii)は、ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMP)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP)およびグリコールジメルカプトアセテートから選択される、[8]に記載の組成物。
[10]
[2]~[9]のいずれかに記載の反応性組成物および少なくとも1つのエポキシド化合物を含む硬化性組成物。
[11]
前記少なくとも1つのエポキシド化合物は、多価アルコールおよび多価フェノールのグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のグリシジルエステル;および、エポキシ化ポリエチレン性不飽和のエステル、エーテルおよびアミドからなる群から選択されるポリエポキシドである、[10]に記載の硬化性組成物。
[12]
エポキシ反応性基:エポキシ基のモル比が0.95:1~1.5:1、好ましくは0.95:1~1.1:1であることを特徴とする、[10]に記載の硬化性組成物。
[13]
組成物の重量に基づいて、
1~70重量%のa)一般式:
【化20】
[式中、R は、C -C 30 アルキル、C -C 30 シクロアルキル、C -C 18 アリール、またはC -C 12 アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);
30~70重量%のb)硬化成分、前記成分は
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン;および/または
ii)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのメルカプト基を有する少なくとも1つのメルカプト化合物
を含む;および
10~80重量%のc)少なくとも1つのエポキシド化合物
を含む、[10]または[11]に記載の硬化性組成物。
[14]
組成物の重量に基づいて、
10~40重量%のa)一般式:
【化21】
[式中、R は、C -C アルキルまたはC -C アルケニル基である]
を有する官能化α-アンゲリカラクトン(XOMAL);
20~50重量%のb)硬化成分、前記成分は
i)エポキシド基に対して反応性の少なくとも2つのアミン水素を有する少なくとも1つのポリアミン、ここで、前記少なくとも1つのポリアミンは、第一級および/または第二級アミン基を含有し、第一級または第二級アミン基あたりの当量が150以下である;および/または
ii)ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMP)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP)、グリコールジメルカプトアセテートおよびそれらの混合物からなる群から選択されるチオカルボン酸のポリエステル
を含む;および
10~50重量%のc)多価アルコールのグリシジルエーテル;多価フェノールのグリシジルエーテル;および、ポリカルボン酸のグリシジルエステルからなる群から選択される少なくとも1つのポリエポキシ化合物
を含む、[10]または[11]に記載の硬化性組成物。
[15]
[10]~[14]のいずれかに記載の組成物から得られる硬化生成物。

図1