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特許7577744独立したイオン源及びラジカル源を使用した基板処理のための装置及び技法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】独立したイオン源及びラジカル源を使用した基板処理のための装置及び技法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/147 20060101AFI20241028BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20241028BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20241028BHJP
   H01J 37/317 20060101ALN20241028BHJP
【FI】
H01J37/147 D
H01J37/305 A
H05H1/46 A
H01J37/317 E
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022532601
(86)(22)【出願日】2020-11-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 US2020061693
(87)【国際公開番号】W WO2021113098
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】62/942,430
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/093,139
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】レナウ, アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】オルソン, ジョセフ シー.
(72)【発明者】
【氏名】クルンチ, ピーター エフ.
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/018262(WO,A1)
【文献】特表平01-503094(JP,A)
【文献】特開2013-243307(JP,A)
【文献】特開平09-205092(JP,A)
【文献】特開2015-220287(JP,A)
【文献】米国特許第04874459(US,A)
【文献】特開昭62-265725(JP,A)
【文献】特開平01-232651(JP,A)
【文献】特開平11-288922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00- 1/54
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
基板を支持するための基板ステージ、
複数のビーム源であって、
イオンビームを前記基板へ方向付けるように配置されたイオンビーム源と、
ラジカルビームを前記基板へ方向付けるように配置されたラジカルビーム源と
を備えた複数のビーム源、
前記基板に対して前記イオンビーム源を走査するイオンビーム源スキャナ、及び
少なくとも1つの態様において、前記イオンビーム源及び前記ラジカルビーム源を、互いに独立して動作するよう制御するように配置されたコントローラ
を備え、
前記少なくとも1つの態様が、ガス種、及びビーム入射角の少なくとも1つである、システム。
【請求項2】
前記基板ステージが、前記イオンビーム源及び前記ラジカルビーム源の少なくとも1つに対して前記基板を走査するスキャナを備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記基板に対して前記ラジカルビーム源を走査するラジカルビーム源スキャナ
をさらに備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記基板に対して前記ラジカルビーム源を走査するラジカルビーム源スキャナ
をさらに備えている、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記イオンビーム源が、リボンイオンビームを生成するように構成され、前記ラジカルビーム源が、リボンラジカルビームを生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ラジカルビーム源のためのラジカルを生成するように配置されたラジカル発生器をさらに備え、前記ラジカル発生器が、RFプラズマ源、熱源、電子ビーム源、又は熱カソード源を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
走査システムをさらに備え、前記走査システムが、基板スキャナ、イオンビーム源スキャナ、及びラジカルビーム源スキャナのうちの少なくとも1つを含み、前記走査システムが、空気軸受構成要素、リニアスキャナ、及びロボットのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記イオンビーム源が、前記基板ステージの主平面に対する前記イオンビームの入射角を変更するように回転可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ラジカルビーム源が、前記基板ステージの主平面に対する前記ラジカルビームの入射角を変更するように回転可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記イオンビーム源が、前記基板ステージの主平面に対する前記イオンビームの入射角を変更するように回転可能であり、前記ラジカルビーム源が、前記基板ステージの主平面に対する前記ラジカルビームの入射角を変更するように回転可能である、請求項4に記載のシステム。
【請求項11】
前記基板ステージが、処理チャンバ内に配置され、前記システムが、前記処理チャンバ内に延在し、かつ前記イオンビーム源と前記ラジカルビーム源との間に配置されたバリアをさらに備えている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
処理チャンバ内に基板を設けることと、
イオンビーム源からイオンビームを前記基板へ方向付けることと、
前記イオンビーム源とは別個のラジカルビーム源からラジカルビームを前記基板へ方向付けることと、
少なくとも1つの態様において、前記イオンビーム源及び前記ラジカルビーム源を、互いに独立して動作するよう制御することであって、前記少なくとも1つの態様は、ガス種、及びビーム入射角の少なくとも1つである、前記イオンビーム源及び前記ラジカルビーム源を制御することと、
を含み、
走査手順が、前記基板に対して前記イオンビーム源を走査するように実行される、
方法。
【請求項13】
前記イオンビーム及び前記ラジカルビームが、前記基板をエッチングすることと、前記基板上に材料を堆積させることと、前記基板内に種を注入することと、又はこれらの任意の組合せを含む一組の処理手順を前記基板に対して実行する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記イオンビーム及び前記ラジカルビームのうちの少なくとも1つが、前記基板の主平面に対する法線に対して非ゼロ入射角で前記基板へ方向付けられる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記走査手順が、前記イオンビーム源に対して、前記ラジカルビーム源に対して、又は前記イオンビーム源及び前記ラジカルビーム源に対して、前記基板を走査するように実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記走査手順が、前記基板の主平面に対して平行な走査平面に沿って実行され、前記走査手順が、前記走査平面内で二次元状に実行される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
処理システムであって、
ハウジング、
前記ハウジング内に配置された基板ステージ、
イオンビームを前記基板ステージへ方向付けるための、前記ハウジング内に配置されたイオンビーム源、
ラジカルビームを前記基板ステージへ方向付けるための、前記ハウジング内に配置されたラジカルビーム源、
前記基板ステージにより支持された基板に対して前記ラジカルビーム源を走査するラジカルビーム源スキャナ、及び
少なくとも1つの態様において、前記イオンビーム源及び前記ラジカルビーム源を、互いに独立して動作するよう制御するように配置されたコントローラ
を備え、前記少なくとも1つの態様が、ガス種、及びビーム入射角の少なくとも1つである、処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、2019年12月2日に出願された「APPARATUS AND TECHNIQUES FOR SUBSTRATE PROCESSING USING INDEPENDENT ION SOURCE AND RADICAL SOURCE」と題する米国仮特許出願番号第62/942,430号に対する優先権を主張し、そのすべての内容は参照により本願に組み込まれている。
【0002】
[0002]本開示は、基板処理に関し、より具体的には、イオン及びラジカルを生成するために複数の異なる源を使用する処理に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]電子デバイス、光学デバイス、機械デバイスなどのデバイスを形成するための基板の処理には、しばしばイオン及びラジカルなどのエネルギー種の使用が伴う。公知のエッチング又は堆積システムでは、例えば、基板を処理プラズマに曝露して、所与の堆積又はエッチング工程を実行し得る。幾つかの変形例では、処理イオンビームがプラズマから抽出され、基板に向けて方向付けられ得る。特に、処理プラズマ又は処理イオンビームは、イオン及びラジカルの形態の励起種を含み得る。イオン及びラジカルの両方が、処理中の基板の特性に影響を与える場合がある。例えば、イオン及びラジカルの両方が、エッチング又は堆積に貢献することができる。特に、イオンはエッチングを発生させる傾向があり得るが、ラジカルは堆積を発生させる傾向があり得る。しかしながら、イオンとラジカルの相対的濃度、及びこれらの種の軌道を制御することは困難であり得る。
【0004】
[0004]本開示は、上記の考察及びその他の考察に関連して提供されるものである。
【発明の概要】
【0005】
[0005]一実施形態では、システムは、基板を支持するための基板ステージ、及び複数のビーム源であって、イオンビームを基板へ方向付けるように配置されたイオンビーム源と、ラジカルビームを基板へ方向付けるように配置されたラジカルビーム源とを備えた複数のビーム源を含み得る。当該システムは、少なくとも1つの態様において、イオンビーム源及びラジカルビーム源を、互いに独立して動作するよう制御するように構成されたコントローラを含み得、少なくとも1つの態様は、ビーム組成、ビーム入射角、及び基板ステージに対するビーム源の相対的走査を含む。
【0006】
[0006]別の実施形態では、方法は、処理チャンバ内に基板を設けることと、イオンビーム源からイオンビームを基板へ方向付けることとを含み得る。当該方法は、イオンビーム源とは別個のラジカルビーム源からラジカルビームを基板へ方向付けることをさらに含み得、イオンビームは、少なくとも1つの態様でラジカルビームと異なり、少なくとも1つの態様は、ビーム組成、ビーム入射角、基板に対するビーム源の相対的走査を含む。
【0007】
[0007]さらなる実施形態では、処理システムは、ハウジング、ハウジング内に配置された基板ステージ、イオンビームを基板ステージへ方向付けるための、ハウジング内に配置されたイオンビーム源、及びラジカルビームを基板ステージへ方向付けるための、ハウジング内に配置されたラジカルビーム源を含み得る。当該処理システムは、少なくとも1つの態様において、イオンビーム源及びラジカルビーム源を、互いに独立して動作するよう制御するように構成されたコントローラをさらに含み得、少なくとも1つの態様は、ビーム組成、ビーム入射角、及び基板ステージに対するビーム源の相対的走査を含む。
【0008】
[0008]添付の図面は、本開示の例示的なアプローチを示しており、これには、以下のような本開示の原理の実際的な適用例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A-B】例示的なシステムの側面図及び概略上面図を示す。
図2】例示的な処理フローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0011]図面は、必ずしも縮尺どおりではない。図面は、単なる表現であり、本開示の特定のパラメータを表すことを意図しない。図面は、本開示の例示的な実施形態を示すことが意図されており、したがって、範囲を限定するものと見なすべきではない。図面では、同様の番号が同様の要素を表す。
【0011】
[0012]以下では、幾つかの実施形態が示されている添付の図面を参照して、本実施形態がより網羅的に説明される。本開示の主題は、様々な異なる形態で具現化することが可能であり、本明細書で提示された実施形態に限定されると解釈するべきではない。これらの実施形態が提供されるのは、本開示が網羅的かつ完全となり、当業者に主題の範囲を完全に伝えるためである。図面では、同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0012】
[0013]本実施形態は、基板処理のための新規な装置及び技術を提供する。様々な実施形態では、別個のイオンビーム源と別個のラジカルビーム源との組み合わせを利用して基板処理を実行する。ラジカルビーム源は、イオンビーム源に対して独立して調整可能である。ラジカルは、例えば、電子を含まないプラズマによって生成される様々な成分を含むことがあるが、イオンはなお電子を含まないプラズマ内で生成される荷電粒子を含み得る。イオンの非限定的な例としては、不活性ガスイオン、水素イオン、酸素イオン、窒素イオン、反応性イオン、炭素に基づくイオン、炭化水素に基づくイオン、フッ化炭素に基づくイオンなどが挙げられる。ラジカルの非限定的な例としては、炭素、炭化水素、フッ化炭素、含塩素炭化水素、水素、酸素、窒素、又は他の適切なガス種に基づくラジカルが含まれ得る。様々な実施形態によれば、装置又はシステムは、ラジカルビーム源及びイオンビーム源を配置して、基板を、連続的に、或いは同時に処理することができる。特定の実施形態では、基板は、ラジカルビーム源及びイオンビーム源によって独立して処理され得る。この処理には、エッチング、堆積、注入、ドーピング、又はイオン及びラジカルなどのエネルギー粒子に関連する他の処理技法の任意の適切な組み合わせが含まれ得る。
【0013】
[0014]幾つかの実施形態によれば、本明細書に開示されるイオンビームは、質量分析イオンビームとして、又は非質量分析イオンビームとして提供され得る。異なる実施形態では、イオンビームは、リボンイオンビームとして、又はスポットビームとして提供され得る。様々な実施形態では、イオンビームは、集束イオンビーム、コリメートされたイオンビーム、又は発散イオンビームとして提供され得る。イオンビームは、指向性ビームとして提供され得るが、イオンビームの平均的な入射角は、固定又は調整可能であり得る。幾つかの実施形態では、イオンビーム源は、半導体ウエハの主要面などの基板の主平面に対する垂線(法線)に沿ってイオンビームを方向付けるように配置され得る。他の実施形態では、イオンビーム源は、イオンビームを、法線からずれるように、つまり、基板の主平面に対する法線に対して非ゼロ入射角で方向付けるように配置され得る。
【0014】
[0015]同様に、様々な実施形態では、ラジカルビームは、イオンビームから独立して基板へ方向付けられ得る。ここで、ラジカルビームの入射角は、基板平面に対する法線に沿っていてもよく、又は基板に対する法線からずれるように方向付けられてもよい。ラジカルビームは、イオンビーム源とは別個のラジカルビーム源から供給することができるので、基板へ方向付けられた化学種、すなわちラジカル種は、イオンを含むイオンビームにおいて提供される種に対して独立して制御され得る。
【0015】
[0016]様々な非限定的な実施形態によれば、ラジカルビーム源のためのラジカルを生成するために使用されるラジカル発生器は、RFプラズマ源、熱源、電子ビーム源、又は熱カソード源であってもよい。ラジカルビーム源は、ラジカルビームを、スポットビームとして、又は代替的にリボンラジカルビームとして供給するように構成され得る。
【0016】
[0017]様々な非限定的な実施形態によれば、本明細書で開示される装置又はシステムは、基板スキャナ、イオンビーム源スキャナ、及びラジカルビーム源スキャナの任意の適切な組合せで構成された走査システムを含み得る。したがって、システムは、イオンビーム源及び/又はラジカルビーム源に対する基板の適切な相対運動を発生させることができる。種々の実施形態によれば、走査システムは、空気軸受、選択的コンプライアンス組立ロボットアーム(SCARA:Selective Compliance Assembly Robot Arm)ロボット、若しくは従来のロボット、又は他の既知の走査構成要素で配置され得る。
【0017】
[0018]本開示の様々な実施形態では、制御システムは、ラジカルビーム源の出力条件とイオンビーム源の出力条件とを別々に制御するように設けられる。個別の制御には、ラジカルビーム源とイオンビーム源との出力の調整が含まれ、これにより、ラジカルビーム処理及びイオンビーム処理の目標とされる組み合わせが基板に施され得る。
【0018】
[0019]幾つかの実施形態では、基板は、ラジカルビーム源及びイオンビーム源の両方による処理が行われる共通処理チャンバ内に配置され得る。特定の実施形態では、ラジカルビーム処理からイオンビーム処理を少なくとも部分的に隔離するために、ガスカーテン又は隔壁などのバリアを処理チャンバ又は処理ステーション内に設けてもよい。
【0019】
[0020]図1Aは、本開示の実施形態に従って配置されたシステム100を示す。システム100は、イオンビーム源104及びラジカルビーム源106を含む複数のビーム源を含み得、幾つかの実施形態では、複数のビーム源が、ハウジング102として示される共通の構造体又はハウジング内に配置され得る。イオンビーム源104は、基板122に衝撃を与えるためにイオンビーム110を生成し、所与の基板処理動作を実行し得る。イオンビーム源104は、処理チャンバなどのイオンチャンバを含み得、プラズマは、RF励起、熱カソード、間接加熱カソード、又は他の公知の技術を含む既知の方法によって生成される。イオンビーム源104は、イオンビーム110を抽出して基板122に方向付けるための既知の抽出構成要素をさらに含んでもよい。
【0020】
[0021]ラジカルビーム源106は、基板122に衝撃を与えるためにラジカルビーム112を生成して、イオンビーム110によって実行される基板122の処理とは独立して基板122を処理することができる。幾つかの非限定的な実施形態によれば、ラジカルビーム源106は、ラジカルビーム源106のためにラジカルを生成するように配置されたラジカル発生器(別個に図示せず)を組み入れるか、又はそれに連結してもよい。ラジカル発生器は、RFプラズマ源、熱源、電子ビーム源、又は熱カソード源である。
【0021】
[0022]システム100は、基板122を支持するための基板ステージ120をさらに含み得、基板ステージ120は、処理チャンバ内に配置され得る。図1Aの実施形態では、処理チャンバは、ハウジング102によって概して画定されるが、他の構成も可能である。以下に詳述するシステム100の種々の構成要素の動作を制御するために、コントローラ150がシステム100内にさらに設けられる。例えば、コントローラ150は、イオンビーム源104及びラジカルビーム源106を、少なくとも1つの態様において互いに独立して動作するように制御することができる。一例として、コントローラ150は、イオンビーム源104とラジカルビーム源106との間でビーム組成が異なるように、イオンビーム源104及びラジカルビーム源106に供給されるガス種を制御し得る。コントローラ150は、イオンビーム源104を制御して、ラジカルビーム112の入射角と比べて、イオンビーム110のために同じ入射角又は異なる入射角を発生させることができる。さらに、コントローラ15は、制御信号を送信して、基板122に対する、イオンビーム源104又はラジカルビーム源106などのビーム源の相対的走査を調整し得る。
【0022】
[0023]異なる実施形態では、イオンビーム源104及びラジカルビーム源106が静止している間に基板122を走査するために、基板ステージ120の走査構成要素(別個に図示せず)を使用して相対的走査を達成することができる。他の実施形態では、走査構成要素130又は走査構成要素132のそれぞれを使用して、基板ステージが静止している間に、基板122に対して、イオンビーム源104、ラジカルビーム源106、又は両方のビーム源を移動又は走査することができる。特に、幾つかの実装形態では、コントローラ150が、走査構成要素130及び走査構成要素132と連動して、イオンビーム源104及びラジカルビーム源106の互いに対して独立した運動を発生させ得る。他の実装形態では、コントローラ150は、基板122に対してイオンビーム源104及びラジカルビーム源106が互いに協調して走査するように、イオンビーム源104及びラジカルビーム源106を制御し得る。さらに別の実施形態では、イオンビーム源104は、基板ステージ120の同時走査と連動して走査されてもよく、ラジカルビーム源106は、基板ステージ120の同時走査と連動して走査されてもよく、又はイオンビーム源104及びラジカルビーム源106の両方が、基板ステージ120の同時走査と連動して走査されてもよい。
【0023】
[0024]様々な実施形態では、イオンビーム源104は、スポット状のイオンビーム(スポットビーム)を生成し得るが、他の実施形態では、イオンビーム源104は、図1Bに示すように、イオンビーム110をリボンイオンビームとして生成し得る。リボンイオンビームを生成するために、抽出アセンブリは、図1Bに示されるように、ほぼ矩形の断面を有するイオンビーム110を生成するために、矩形かつ細長い抽出開孔を含んでもよい。抽出開孔及びイオンビームのアスペクト比(X次元/Y次元)は、様々な非限定的な実施形態によれば、2/1、3/1、5/1、10/1、50/1以上であってもよい。同様に、ラジカルビーム源106は、図1Bに示されるように、スポットビームとして、又はリボン状ラジカルビームとして、ラジカルビーム112を生成し得る。幾つかの実施形態によれば、基板122を(図示の直交座標系のY軸に沿って)走査して、基板122の同一領域をイオンビーム110及びラジカルビーム112に連続的に露光することができる。特に、基板ステージ120には、基板ステージの主平面に垂直な軸の周りで基板を回転させる回転能力が設けられ得る(図1Aの構成では、主平面はX-Y平面で表され、法線はZ軸で表される)。スポットビームシステムの場合、相対的走査は、直線的ではなく2次元的であり得、単にY軸に沿った運動ではなく、X-Y平面内の運動からなる。例えば、基板ステージ120は、スポット状イオンビームに対するX方向及びY方向の両方の移動の組み合わせで、走査面(例えば、X-Y面)内で走査され得る。さらに、基板ステージ120は、スポット状ラジカルビームに対してX方向及びY方向の両方の移動の組み合わせで走査されてもよい。さらに、スポットビームを生成するイオンビーム源及び/又はスポットビームを生成するラジカル源は、基板ステージ120に対してX方向及びY方向の両方に移動されてもよい。
【0024】
[0025]様々な非限定的な実施形態では、イオンビーム源104は、希ガス、窒素、酸素、水素、炭化水素C、ハロゲン含有分子(C、NF、SF等)、又はこれらの任意の組合せのいずれかを含んでもよい。様々な実施態様では、イオンビーム源104は、所与の抽出電位(extraction potential)で基板122に対してバイアスをかけられ、それにより、イオンビーム110に対して所与のイオンエネルギーを生成し得る。種々の実施形態では、イオンビーム源104は、基板ステージ120及び基板122の主平面(X-Y)に対する垂線(Z軸)に対して所与の入射角(θ)を形成する軌道に沿ってイオンビーム110を方向付けるように回転可能であり得、当該平面は、ウエハ表面などの基板122の主表面によって画定される。この入射角の値は、様々な非限定的実施形態では、0度(つまり、ビーム軌道がZ軸に沿っている)から85度までの範囲であってもよい。
【0025】
[0026]様々な実施形態では、ラジカルビーム112は、中性物質を含んでもよい。ラジカルビーム112のラジカルは、ラジカルビーム源106の処理用途に応じて、ハロゲン含有分子ガス(C、NF、SF等)と、それに加えて他のガス(希ガス、酸素、窒素、水素、炭化水素C等)の混合物とを含むプラズマから生成される反応性ラジカルを含み得る。ラジカルビーム源106は、垂線(Z軸)に対する所与の入射角に沿ってラジカルビーム112を方向付けるように開孔を含み得る。ラジカルビーム112に対する入射角(θ)の値は、イオンビーム110の角度θと同じように又はイオンビーム110の角度と異なるように、コントローラ150によって設定されてもよい。
【0026】
[0027]イオンビーム106と同様に、ラジカルビーム112は、幾つかの実施形態では図1Bに示すように、X軸に沿って伸長させてもよい。本開示の様々な実施形態によれば、ラジカルビーム源106は、イオンビーム源104とは別に電力供給され、別にガス供給され得るので、所与の処理操作において基板122に方向付けられるラジカルフラックスとイオンフラックスの比を独立して制御することができ、ラジカル及びイオンの方向付けが調整可能なプロセスがもたらされる。概して、ラジカルビーム112は、主に少量のイオンを有する反応性中性物質を含み得る。例えば、投入ガスは、CF(四フッ化炭素)であってもよい。CF自体は(不活性アルゴン又はNのように)非常に不活性であるが、プラズマ中で(プラズマエネルギー電子によって)解離すると、親CF(parent CF4)は、CF、CF、CF、F、Cなどの娘断片(daughter fragments)に分解される。ここで開結合(open bond)を有するフッ素含有娘断片は、化学的に反応性であり、表面のエッチング処理に有用である。中性CFxラジカルを生成することに加えて、同様にCFxのようなイオン化ラジカルもさらに存在するが、様々な実施形態において全体のフラックスは主に中性物質である。
【0027】
[0028]様々な実施形態では、基板122は、図示の直交座標系のY軸に沿って走査され得る。ここで、主要基板表面は、走査中にX-Y平面に対して平行に配置される。図1Aの図では、基板122は、様々な非ゼロ入射角で衝突するイオン及びラジカルのフラックスを通して、水平に(Y軸に沿って)走査する。しかしながら、ラジカルビーム112とイオンビーム110との相対的な向きは、単に、種々のビームを独立して制御することができ、種々の入射角を画定できることを示すために図示されている。他の実施形態では、基板122が垂直に走査するように図1Aの装置を向けて、図1Aに示される様々な構成要素が、互いに対して同じ相対的な向きを有するように配置されてもよい。これに応じて、イオンビーム源104及びラジカルビーム源106の両方の出力が、基板走査方向(Y軸)に対する同じ非ゼロ角度に沿って、対応するように同一線形に方向付けられ、アイソセントリックプロセス(isocentric process)(平均的な非ゼロ入射角の周りの角度の広がりを可能にする)が達成可能となる。
【0028】
[0029]上述したように、Z軸(基板平面又は走査平面に対する垂線)に対して非ゼロ入射角のイオンビームを生成するためには、一実施形態では、イオンビーム源104などのイオンビーム源全体を、図1Aで示唆するように、走査平面(X-Z平面)に対して傾斜させてもよい
【0029】
[0030]ラジカルビーム源106については、ラジカルビーム112のコリメートを実現するために、ノズル構造又は他の類似の構成を含んでもよい。これにより、ラジカルビーム112からのラジカルフラックスが平均的な入射角を画定することができ、ラジカルの個々の軌道は互いから実質的に逸れない。言い換えると、入射角(θ)の周りの角度広がりは、種々の非限定的な実施形態では、数度、10度又は20度に制限され得る。
【0030】
[0031]したがって、イオンビーム処理をラジカルビーム処理から分離し、ラジカルビーム及びイオンビームの組成及び形状が独立して制御可能であることにより、システム100は、エネルギー種を用いた基板処理の柔軟性を高めるための構成要素の組み合わせを提供する。この構成により、反応性イオンエッチング処理、反応性堆積処理、イオン注入処理のより優れた制御、及び基板における三次元構造体の処理のより精密な制御を含む新しい能力が促進される。
【0031】
[0032]図2は、例示的なプロセスフロー200を示す。ブロック202では、基板が処理チャンバ内に設けられる。ブロック204では、イオンビームがイオンビーム源から基板へ方向付けられる。イオンビーム源は、任意の適切な種のイオンを生成するように連結され得、基板に対するイオンビームの入射角を調整するように移動可能であり得る。ブロック206では、ラジカルビームは、イオンビーム源とは別個のラジカルビーム源から基板へ方向付けられる。特に、ラジカルビーム源は、エッチング、堆積、注入などの操作のために、基板の処理においてイオンビーム源と共に使用され得る。ブロック208では、基板は、イオンビーム源、ラジカルビーム源、又はその両方に対して走査されるが、ラジカルビーム及びイオンビームは、基板へ方向付けられる。例えば、基板の走査中、基板は、Y軸などの水平方向に沿って走査され得るが、Z軸などの垂直方向に沿った基板とラジカルビーム源及びイオンビーム源との間の分離は一定に保たれる。したがって、イオンビーム及びラジカルビームは、ビーム組成、ビーム入射角、処理中の基板に対する相対的運動、又はこれらの組合せが異なり得る。
【0032】
[0033]本実施形態は、少なくとも以下の利点を提供する。本実施形態は、基板のイオン処理及びラジカル処理を別々に独立して調整することを可能にし、最良のプロセスを達成する。例えば、最良のイオン源出力が比較的低い圧力で達成され、最良のラジカルビーム処理が比較的高い圧力で達成される場合、本実施形態は、妥協なくこれらの両方の条件を満たすことを可能にする。本実施形態は、大きく異なるタイプの源(例えば、RFベースのラジカル源と熱カソードベースのイオン源が利用可能である)を使用して、共通のシステムにおいて基板処理を実行する能力を実現するというさらなる利点を有する。本実施形態のさらなる利点は、ラジカルビーム源及びイオンビーム源の出力を整合させる能力であり、2つの独立した源を欠いたシステムにおいては、ラジカル処理又はイオンビーム処理は速度が制限され得る。
【0033】
[0034]本開示の特定の実施形態が本明細書に記載されてきたが、本開示はこれらに限定されず、なぜなら、本開示は、当該技術分野が許す限り範囲が広く、本明細書も同様に解することができるからである。したがって、上記の説明は、限定的に解釈すべきではない。その代わり、上記の説明は、特定の実施形態の例示にすぎない。当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲及び思想の範囲内での他の変更を想定するであろう。
図1A-B】
図2