(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、リチウム二次電池用正極およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20241028BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20241028BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241028BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20241028BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241028BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/131
H01M4/36 E
H01M4/505
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2023001337
(22)【出願日】2023-01-06
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2022-0066266
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】孔 泳善
(72)【発明者】
【氏名】成 原模
(72)【発明者】
【氏名】康 碩文
(72)【発明者】
【氏名】長谷 直行
(72)【発明者】
【氏名】尹 在祥
(72)【発明者】
【氏名】全 道▲ウク▼
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-091566(JP,A)
【文献】国際公開第2023/054308(WO,A1)
【文献】特開2023-026409(JP,A)
【文献】特表2023-501071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物を含み、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態であり、平均粒径(D50)が8μm~20μmである第1正極活物質、および
層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物を含み、単粒子形態であり、平均粒径(D50)が1μm~7μmである第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、
第2正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量は、第1正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量より1モル%~10モル%さらに多
く、
第1正極活物質の層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物は下記化学式1で表され、
第2正極活物質の層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物は下記化学式2で表される、リチウム二次電池用正極活物質
:
[化学式1]
Li
x1
Ni
a1
Mn
b1
M
1
(1-a1-b1)
O
2
上記化学式1中、M
1
はAl、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mo、Nb、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、0.9≦x1≦1.2、0.6≦a1≦1、および0≦b1≦0.4であり、
[化学式2]
Li
x2
Ni
a2
Mn
b2
M
2
(1-a2-b2)
O
2
上記化学式2中、M
2
はAl、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mo、Nb、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、0.9≦x2≦1.2、0.6≦a2≦1、および0≦b2≦0.4であり、
そして0.02≦(a2-a1)≦0.10である。
【請求項2】
前記第2正極活物質の平均粒径(D50)が2μm~5μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
第2正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量は、第1正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量より1モル%~8モル%さらに多い、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
第1正極活物質は球形であり、
第2正極活物質は多面体、不定形、または球形である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、65重量%~95重量%の第1正極活物質と5重量%~35重量%の第2正極活物質を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、65重量%~95重量%の第1正極活物質と5重量%~35重量%の第2正極活物質を含む、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
集電体および前記集電体上に位置する正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は請求項1~
6のうちのいずれか一項による正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極。
【請求項8】
請求項
7による正極、負極、および電解質を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質とこれを含むリチウム二次電池用正極およびリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、スマートフォンなどの移動情報端末器の駆動電源として高いエネルギー密度を有しながら携帯が容易なリチウム二次電池が主に使用されている。最近はエネルギー密度の高いリチウム二次電池をハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用電源または電力貯蔵用電源として使用するための研究が活発に行われている。
【0003】
このような用途に符合するために、高容量、高安定性、長寿命性能を実現することができる正極活物質が検討されており、一般にNi、Co、MnあるいはNi、Co、Alの三元系正極活物質が使用されている。しかし、最近、大型あるいは高容量リチウム二次電池に対する需要は急増する反面、希少金属であるコバルトが含有された正極活物質の供給量は非常に足りないことが予見される。即ち、コバルトは高くて残っている埋蔵量が多くないので、大型あるいは高容量電池などを製造するためにはコバルトを使用しないコバルトフリー(Cobalt-free)正極活物質を開発することが要求される。コバルト元素は正極活物質構造形成に核心的な役割を果たすため、コバルトを除去する場合、構造的欠陥が発生して抵抗が増加し長寿命確保が難しくなり、容量と効率が減少するなど性能が劣化する問題が発生する。
【0004】
従来知られているコバルトフリー正極活物質は、層状構造でないリン酸鉄リチウム(LFP)、リン酸マンガンリチウム(LMP)、リン酸マンガン鉄リチウム(LMFP)などのオリビン系結晶構造、酸化マンガンリチウム(LMO)などのスピネル結晶構造を有しているものである。これらの構造的安定性は高いほうであるが、構造内で活用できるリチウム可溶量が少なくて容量が低いという限界がある。層状構造のコバルトフリー正極活物質は構造内リチウム含有量が相対的に多くて容量および効率特性に優れるので高容量電池の素材として適するが、構造的に不安定で長寿命特性を確保するのに困難がある。よって、高容量を実現することができる層状型のコバルトフリー正極活物質でありながら構造的安定性が向上してリチウム二次電池の容量、効率、および寿命特性を同時に確保することができる正極活物質に対する開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
層状型のコバルトフリー正極活物質であって容量および効率特性が確保され、これと同時に充放電による構造的劣化が抑制されて寿命特性が改善された正極活物質、正極およびリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物を含み、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態であり、平均粒径(D50)が8μm~20μmである第1正極活物質;および層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物を含み、単粒子形態であり、平均粒径(D50)が1μm~7μmである第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、第2正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量は、第1正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量より1モル%~10モル%さらに多い、リチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0007】
他の一実施形態では、集電体および前記集電体上に位置する正極活物質層を含み、前記正極活物質層は前述の正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極を提供する。
【0008】
他の一実施形態では、前記正極活物質を含む正極、負極、および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、層状型のコバルトフリー正極活物質であって、リチウム二次電池の容量、効率および寿命特性を同時に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態によるリチウム二次電池を示した概略図である。
【
図2】実施例1の正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真である。
【
図3】実施例1の正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真である。
【
図4】比較例1の正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真である。
【
図5】比較例1の正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真である。
【
図6】実施例1と比較例1~3で製造した電池の高温寿命特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施形態についてこの技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々の異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0012】
ここで使用される用語はただ例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0013】
ここで“これらの組み合わせ”とは、構成物の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0014】
ここで“含む”、“備える”または“有する”などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0015】
図面で様々の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体にわたって類似の部分については同一図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分“の上に”または“上に”あるという時、これは他の部分“の直上に”ある場合だけでなくその中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分“の直上に”あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。
【0016】
また“層”は、平面図で観察した時、全体面に形成されている形状だけでなく一部面に形成されている形状も含む。
【0017】
また、平均粒径は当業者に広く公知された方法で測定することができ、例えば、粒度分析器で測定するか、または透過電子顕微鏡または走査電子顕微鏡などの光学顕微鏡写真で測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法を用いて測定しデータ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウンティングした後、これから計算して平均粒径値を得ることができる。別途の定義がない限り、平均粒径は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味することができる。
【0018】
ここで“または”は排除的な(exclusive)意味に解釈されず、例えば“AまたはB”はA、B、A+Bなどを含むと解釈される。
【0019】
正極活物質
一実施形態では、層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物(Cobalt-free layered lithium-nickel based composite oxide)を含み、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態であり、平均粒径(D50)が8μm~20μmである第1正極活物質;および層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物を含み、単粒子(single particle)形態であり、平均粒径(D50)が1μm~7μmである第2正極活物質を含むリチウム二次電池用正極活物質であって、第2正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量は、第1正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量より1モル%~10モル%さらに多いリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0020】
正極活物質の層状構造を安定的に維持するために代表的にコバルト元素を使用することが一般的であるが、一実施形態ではコバルトを使用せずに層状構造を維持し、またこの構造を安定化させる方法を提示している。
【0021】
前述のように高容量リチウム二次電池に対する需要が増加し、希少金属であるコバルト元素が枯渇している状況につれてコバルトフリー正極活物質に対する開発が要求され、特に高容量を実現することができる層状型のコバルトフリー正極活物質の開発が要求される。一般に層状型コバルトフリー正極活物質は充放電による構造的劣化が問題になるが、一実施形態では単粒子形態を導入することによって劣化する層状構造を物理的に維持させようとした。但し、単粒子の場合、リチウム拡散速度が低いという問題を補完するために、平均粒径が1μm~7μm、好ましくは2μm~5μmである小粒子、即ち、第2正極活物質に単粒子形態を導入した。これにより、第1正極活物質と第2正極活物質のリチウム移動速度のバランスを合わせ、コバルトフリー正極活物質の劣化程度を多結晶構造と単結晶構造に均等に分けることによって長期寿命特性を確保しようとした。
【0022】
しかし、単粒子形態の正極活物質はリチウム移動経路が短く結晶構造配向性に優れて構造的安定性が高く、これにより寿命特性が優勢であるが、反面、リチウム移動経路が制約的であり比表面積が小さくて同一組成で出せる容量および効率が劣勢である。一実施形態ではこのようなトレードオフ(trade-off)特性を解決するために、単粒子形態の小粒子である第2正極活物質でのニッケル濃度を2次粒子形態の大粒子である第1正極活物質でのニッケル濃度に比べて1モル%~10モル%にさらに高める設計をすることによって、小粒子の劣化特性を大粒子水準にバランスを合わせて、容量と効率が低下されないながら長寿命特性を確保するのに成功した。
【0023】
例えば、第2正極活物質のニッケル濃度から第1正極活物質のニッケル濃度を引いた値が1モル%未満である場合、例えば、ニッケル濃度が互いに同一であるか、または第1正極活物質のニッケル濃度が第2正極活物質より高い場合、第2正極活物質のリチウム可溶性が落ちて容量が低下される問題が発生し、大粒子と小粒子間のリチウム可溶量と劣化速度のバランスが合わなくて寿命特性が改善される幅が減るようになる。
【0024】
即ち、電池分野で容量、効率および寿命特性は互いにトレードオフ関係にあるため、いずれか一つを損し他の特性を得ることが一般的であるが、一実施形態ではこのようなトレードオフなく容量、効率および寿命特性を同時に確保することができる方法を提示している。
【0025】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、層状型コバルトフリー正極活物質、コバルトフリーニッケル系正極活物質、またはコバルトフリーニッケル-マンガン系正極活物質と表現することができる。前記コバルトフリーはコバルトがない、コバルトが使用されない、あるいは極少量のコバルトのみ含まれているのを意味することができる。また、前記単粒子形態はモルフォロジー上に粒子が相互凝集していない独立した相(phase)として存在する構造を意味し、粒子内に粒子境界(grain boundary)を有せず単独で存在し、一つの粒子からなるものを意味する。前記単粒子は単一体構造、非凝集粒子、モノリス(monolith)構造などと表現することができ、単結晶であってもよい。
【0026】
一実施形態で、2次粒子形態である第1正極活物質の平均粒径は8μm~20μmであり、単粒子形態の第2正極活物質の平均粒径は1μm~7μmである。ここで、平均粒径は、粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径、即ち、D50を意味する。前記平均粒径は、走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡などの光学顕微鏡写真を通じて測定したものであってもよい。例えば、正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真で、2次粒子形態の粒子のうち任意に30個を選択し、これらの大きさ(粒径あるいは長軸の長さ)を測定して粒度分布を得て、ここでD50を算出してこれを第1正極活物質の平均粒径として取ることができる。また、正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真で、単粒子のうち任意に30個を選択し、これらの大きさ(粒径あるいは長軸の長さ)を測定して粒度分布を得て、ここでD50を算出してこれを第2正極活物質の平均粒径として取ることができる。
【0027】
第1正極活物質の平均粒径は、例えば、9μm~19μm、10μm~18μm、または11μm~17μmであってもよい。第2正極活物質の平均粒径は、例えば、1μm~6μm、1μm~5μm、または2μm~4μmであってもよい。それぞれの平均粒径が前記範囲を満足する場合、これを含むリチウム二次電池は高密度および高エネルギー密度を実現することができ、リチウム二次電池の容量、効率および寿命特性を同時に改善するのに有利に作用できる。
【0028】
また、ニッケルのモル含量を測定する方法は、正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真でエネルギー分散型X線分光分析(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy;EDS)を実施し、定量分析を通じてリチウムと酸素を除いた元素全体の含量に対するニッケルの含量を原子%単位で得て、これをモル%単位に換算することであってもよい。この時、正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真で、2次粒子形態の第1正極活物質のうち30個を選択してそれぞれのニッケル含量を計算した後、算術平均したものを“第1正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量”として取ることができ、また、走査電子顕微鏡写真で、単粒子形態の第2正極活物質のうち30個を選択してそれぞれのニッケル含量を計算した後、算術平均したものを“第2正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量”として取ることができる。ニッケル含量を測定する方法としては、SEM-EDS以外にも、誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry;ICP-MS)、あるいは誘導結合プラズマ光放出分光法(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy;ICP-OES)などを使用することができる。
【0029】
一実施形態は、このように計算された“第2正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量”から“第1正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量”を引いた値が、1モル%~10モル%を満足することを特徴とする。前記の第2正極活物質のニッケル濃度から第1正極活物質のニッケル濃度を引いた値は、例えば、2モル%~10モル%、3モル%~10モル%、4モル%~9モル%、または1モル%~8モル%であってもよい。このように設計することによって層状型のコバルトフリー正極活物質を適用したリチウム二次電池の容量、効率および寿命を同時に向上させることができる。
【0030】
第1正極活物質の層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物は、例えば、下記化学式1で表すことができる。
【0031】
[化学式1]
Lix1Nia1Mnb1M1
(1-a1-b1)O2
【0032】
上記化学式1中、M1はAl、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mo、Nb、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、0.9≦x1≦1.2、0.6≦a1≦1、および0≦b1≦0.4である。
【0033】
前記化学式1中、0.6≦a1≦0.99および0.01≦b1≦0.4であってもよく、0.6≦a1≦0.90および0.10≦b1≦0.4、0.6≦a1≦0.85および0.15≦b1≦0.4、0.6≦a1≦0.80および0.20≦b1≦0.4、または0.7≦a1≦0.90および0.10≦b1≦0.3であってもよい。
【0034】
第2正極活物質の層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物は、例えば下記化学式2で表すことができる。
【0035】
[化学式2]
Lix2Nia2Mnb2M2
(1-a2-b2)O2
【0036】
上記化学式2中、M2はAl、B、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mo、Nb、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなるグループより選択される一つ以上の元素であり、0.9≦x2≦1.2、0.6≦a2≦1、および0≦b2≦0.4である。
【0037】
前記化学式2中、0.6≦a2≦0.99および0.01≦b2≦0.4であってもよく、0.6≦a2≦0.90および0.10≦b2≦0.4、0.6≦a2≦0.85および0.15≦b2≦0.4、0.6≦a2≦0.80および0.20≦b2≦0.4、または0.7≦a2≦0.90および0.10≦b2≦0.3であってもよい。
【0038】
一実施形態によれば、第2正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量は、第1正極活物質でリチウムと酸素を除いた元素全体に対するニッケルのモル含量より1モル%~10モル%さらに多いので、前記化学式1と前記化学式2の関係で0.02≦(a2-a1)≦0.10が成立でき、例えば0.04≦(a2-a1)≦0.10、0.05≦(a2-a1)≦0.10、または0.02≦(a2-a1)≦0.80を満足することができる。この場合、層状型のコバルトフリー正極活物質を適用しながら容量、効率および寿命特性を同時に改善することが可能である。
【0039】
2次粒子形態である第1正極活物質は、例えば球形または球形に近い形状であってもよい。また、単粒子形態である第2正極活物質は、例えば多面体、不定形、または球形などであってもよい。
【0040】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、65重量%~95重量%の第1正極活物質と5重量%~35重量%の第2正極活物質を含むものであってもよい。例えば、前記リチウム二次電池用正極活物質は65重量%~90重量%の第1正極活物質と10重量%~35重量%の第2正極活物質を含むことができ、または70重量%~90重量%の第1正極活物質と10重量%~30重量%の第2正極活物質を含むか、または70重量%~80重量%の第1正極活物質と20重量%~30重量%の第2正極活物質を含むものであってもよい。前記の混合比率を満足する場合、層状型コバルトフリー正極活物質を適用しながらリチウム二次電池の容量、効率および寿命特性を同時に向上させることができる。例えば、第2正極活物質が35重量%を超過すれば、リチウム可溶性で第1正極活物質とのバランスが崩れ、寿命特性は優勢であるが、容量と効率が悪くなるトレードオフ特性が現れることがある。
【0041】
正極
一実施形態では、前述の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供する。リチウム二次電池用正極は集電体およびこの集電体上に位置する正極活物質層を含み、前記正極活物質層は前述の正極活物質を含み、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0042】
前記バインダーは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0043】
前記正極活物質層で、バインダーの含量は、正極活物質層全体重量に対して大略1重量%~5重量%であってもよい。
【0044】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含有し金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0045】
前記正極活物質層で、導電材の含量は正極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。
【0046】
前記正極集電体としてはアルミニウム箔を使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0047】
リチウム二次電池
一実施形態では、前述の正極活物質を含む正極と負極、前記正極と前記正極の間に位置するセパレータおよび電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0048】
図1は、一実施形態によるリチウム二次電池を示した概略図である。
図1を参照すれば、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極114、正極114と対向して位置する負極112、正極114と負極112の間に配置されているセパレータ113および正極114、負極112およびセパレータ113を含浸するリチウム二次電池用電解質を含む電池セルと、前記電池セルが収納されている電池容器120、および前記電池容器120を密封する密封部材140を含む。
【0049】
リチウム二次電池用負極は、集電体、およびこの集電体上に位置する負極活物質層を含む。前記負極活物質層は負極活物質を含み、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0050】
前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0051】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、炭素系負極活物質であって、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを含むことができる。前記結晶質炭素の例としては無定形、板状型、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としてはソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0052】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金を使用することができる。
【0053】
前記リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としてはSi系負極活物質またはSn系負極活物質を使用することができ、前記Si系負極活物質としてはシリコン、シリコン-炭素複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、前記Sn系負極活物質としてはSn、SnO2、Sn-R合金(前記Rはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiO2を混合して使用することもできる。前記元素QおよびRとしてはMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0054】
前記シリコン-炭素複合体は、例えば、結晶質炭素およびシリコン粒子を含むコア、およびこのコア表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むシリコン-炭素複合体であってもよい。前記結晶質炭素は、人造黒鉛、天然黒鉛またはこれらの組み合わせであってもよい。前記非晶質炭素前駆体としては、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油またはフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子樹脂を使用することができる。この時、シリコンの含量は、シリコン-炭素複合体全体重量に対して10重量%~50重量%であってもよい。また、前記結晶質炭素の含量はシリコン-炭素複合体全体重量に対して10重量%~70重量%であってもよく、前記非晶質炭素の含量はシリコン-炭素複合体全体重量に対して20重量%~40重量%であってもよい。また、前記非晶質炭素コーティング層の厚さは5nm~100nmであってもよい。前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は10nm~20μmであってもよい。前記シリコン粒子の平均粒径(D50)は好ましく10nm~200nmであってもよい。前記シリコン粒子は酸化された形態で存在し、この時、酸化程度を示すシリコン粒子内Si:Oの原子含量比率は99:1~33:67であってもよい。前記シリコン粒子はSiOx粒子であってもよく、この時、SiOx中、xの範囲は0超過、2未満であってもよい。本明細書で、別途の定義がない限り、平均粒径(D50)は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を意味する。
【0055】
前記Si系負極活物質またはSn系負極活物質は炭素系負極活物質と混合して使用することができる。Si系負極活物質またはSn系負極活物質と炭素系負極活物質を混合使用する時、その混合比は重量比として1:99~90:10であってもよい。
【0056】
前記負極活物質層で、負極活物質の含量は負極活物質層全体重量に対して95重量%~99重量%であってもよい。
【0057】
一実施形態で、前記負極活物質層はバインダーをさらに含み、選択的に導電材をさらに含むことができる。前記負極活物質層で、バインダーの含量は負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。また、導電材をさらに含む場合、前記負極活物質層は負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%含むことができる。
【0058】
前記バインダーは負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0059】
前記非水溶性バインダーとしては、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
前記水溶性バインダーとしては、ゴム系バインダーまたは高分子樹脂バインダーが挙げられる。前記ゴム系バインダーはスチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、およびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。前記高分子樹脂バインダーは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。
【0061】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、一種の増粘剤として粘性を付与することができるセルロース系列化合物をさらに含むことができる。このセルロース系列化合物としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤使用含量は負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であってもよい。
【0062】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含み、金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0063】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0064】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0065】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質役割を果たす。非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル系溶媒としてはジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができ、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどを使用することができる。また、前記アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非プロトン性溶媒としてはR-CN(ここで、Rは炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0066】
前記非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能によって適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には広く理解されるはずである。
【0067】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用することができる。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを約1:1~約1:9の体積比で混合して使用する場合に電解液の性能が優れることになる。
【0068】
前記非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、約1:1~約30:1の体積比で混合されてもよい。
【0069】
前記芳香族炭化水素系溶媒としては、下記化学式Iの芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【0070】
【0071】
上記化学式I中、R4~R9は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0072】
前記芳香族炭化水素系溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
前記電解液は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式IIのエチレンカーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含むこともできる。
【0074】
【0075】
上記化学式II中、R10およびR11は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択され、前記R10およびR11のうちの少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択されるが、但しR10およびR11が全て水素ではない。
【0076】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適切に調節することができる。
【0077】
前記リチウム塩は、非水性有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0078】
リチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、Li(FSO2)2N(リチウムビスフルオロスルホニルイミド、lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiFSI)、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiPO2F2、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1~20の整数である)、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート(lithium difluoro(bisoxalato)phosphate)、LiCl、LiI、LiB(C2O4)2(リチウムビス(オキサラト)ボレート(lithium bis(oxalato)borate、LiBOB)、およびリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上が挙げられる。
【0079】
リチウム塩の濃度は0.1M~2.0Mの範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動可能である。
【0080】
セパレータ113は正極114と負極112を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウムイオン電池で通常使用されるものであれば全て使用することができる。即ち、セパレータとしては、電解質のイオン移動に対して低い抵抗を有しながら電解液含湿能力に優れたものを使用することができる。例えば、前記セパレータはガラス繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはこれらの組み合わせを含むことができ、不織布(non-woven)または織布(woven)形態であってもよい。例えば、リチウムイオン電池にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれているコーティングされたセパレータを使用することもでき、選択的に単層または多層構造で使用することができる。
【0081】
リチウム二次電池は使用するセパレータと電解質の種類によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、およびリチウムポリマー電池に分類することができ、形態によって円筒形、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分類することができる。これら電池の構造と製造方法はこの分野に広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0082】
一実施形態によるリチウム二次電池は高容量を実現し、高温で保存安定性、寿命特性および高率特性などに優れて電気車両(electric vehicle、EV)に使用することができ、プラグインハイブリッド車両(plug-in hybrid electric vehicle、PHEV)などのハイブリッド車両に使用することができ、携帯用電子機器などに使用することができる。
【0083】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。下記の実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例】
【0084】
実施例1
(1)正極活物質の製造
複数の1次粒子が凝集された2次粒子形態でありLiNi0.75Mn0.22Al0.03O2組成の第1正極活物質80重量%、単粒子でありLiNi0.80Mn0.20O2組成の第2正極活物質20重量%を混合して正極活物質を準備する。
【0085】
図2および
図3は、実施例1で準備した正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真である。
図2と
図3を参照すれば、2次粒子形態であり球形に近い第1正極活物質と単粒子形態の第2正極活物質が混合されているのを確認することができる。第1正極活物質の平均粒径(D50)は約12μmであり、第2正極活物質の平均粒径(D50)は約2.5μm水準と評価される。実施例1の組成で第2正極活物質のニッケル濃度(80モル%)は第1正極活物質のニッケル濃度(75モル%)より約5モル%さらに高く設計された。
【0086】
(2)正極の製造
準備した正極活物質95重量%、ポリビニリデンフルオライドバインダー3重量%および炭素ナノチューブ導電材2重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して正極活物質スラリーを製造する。アルミニウム集電体に前記正極活物質スラリーを塗布し乾燥した後、圧延して正極を準備する。
【0087】
(3)リチウム二次電池の製造
準備した正極とリチウム金属対極を使用し、その間にポリエチレンポリプロピレン多層構造のセパレータを介在させ、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを50:50体積比で混合した溶媒に1.0MのLiPF6リチウム塩を添加した電解液を注入してコインハーフセルを製造する。
【0088】
実施例2
実施例1で使用したものと同一な第1正極活物質を使用し、第2正極活物質としてLiNi0.80Mn0.20O2組成でありながら平均粒径(D50)約4μmの単粒子を使用する。
【0089】
このような正極活物質を適用したことを除いては実施例1と同様な方法で正極およびリチウム二次電池を製造する。
【0090】
比較例1
実施例1で使用したものと同一な第1正極活物質を使用し、第2正極活物質としてLiNi
0.80Mn
0.20O
2組成でありながら単粒子でない2次粒子形態を有するものを使用する。
図4および
図5は比較例1の正極活物質に対する走査電子顕微鏡写真である。
図4と
図5を参照すれば、2次粒子形態の第1正極活物質(大粒子)と2次粒子形態の第2正極活物質(小粒子)が混合されているのを確認することができる。比較例1で、第1正極活物質の平均粒径(D50)は約12μmであり、第2正極活物質の平均粒径(D50)は約2.5μm水準と評価される。
【0091】
前記正極活物質を適用したことを除いては実施例1と同様な方法で正極およびリチウム二次電池を製造する。
【0092】
比較例2
実施例1で使用したものと同一な第1正極活物質を使用し、第2正極活物質としてLiNi0.75Mn0.25O2組成でありながら平均粒径(D50)約4μmの単粒子を使用する。比較例2の組成で、第1正極活物質のニッケル濃度と第2正極活物質のニッケル濃度は同一な水準である。
【0093】
このような正極活物質を適用したことを除いては実施例1と同様な方法で正極およびリチウム二次電池を製造する。
【0094】
比較例3
LiNi0.80Mn0.18Al0.02O2組成であり平均粒径(D50)約12μmの第1正極活物質を使用し、第2正極活物質としてLiNi0.75Mn0.25O2組成であり平均粒径(D50)約4μmの単粒子を使用する。比較例3の組成で、第2正極活物質のニッケル濃度は第1正極活物質のニッケル濃度より約5モル%さらに低く設計された。このような正極活物質を適用したことを除いては比較例2と同様な方法で正極およびリチウム二次電池を製造する。
【0095】
評価例:充放電容量および高温寿命の特性
実施例1、2と比較例1~3によるコインハーフセルそれぞれを定電流(0.2C)および定電圧(4.25V、0.05C cut-off)条件で充電させた後、10分間休止し、定電流(0.2C)条件下で3.0Vになるまで放電させて初期充放電を行う。初期充電容量および初期放電容量を測定して下記表1に示し、初期充電容量に対する初期放電容量の比率を計算して下記表1に効率として示した。
【0096】
初期充放電以後、45℃の高温で1Cで50回充放電を繰り返す。50回の間の初期放電容量に対する各サイクルでの容量の比率である容量維持率を測定して
図6に示し、初期放電容量に対する50回放電容量の比率を評価して下記表1に示した。
【0097】
【0098】
表1と
図6を参照すれば、第2正極活物質が2次粒子形態であり第1正極活物質のニッケル濃度と第2正極活物質のニッケル濃度が同一な水準である比較例1の場合、実施例1に比べて高温寿命特性が低下するのを確認することができる。また、第2正極活物質が単粒子形態であるが、第1正極活物質のニッケル濃度と第2正極活物質のニッケル濃度が同一な水準である比較例2の場合には初期放電容量と効率が低下し寿命改善幅が小さいということを確認することができる。比較例3の場合、単粒子第2正極活物質のニッケル濃度が第1正極活物質のニッケル濃度よりさらに低い場合であって、初期充放電効率が低下し高温寿命特性も低下することが確認される。反面、実施例1の場合、容量と効率が高く、また高温寿命特性が同時に優れるということが分かる。
【0099】
以上、好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の請求範囲で定義している基本概念を用いた当業者の様々の変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
【符号の説明】
【0100】
100:リチウム二次電池
112:負極
113:セパレータ
114:正極
120:電池容器
140:密封部材