(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】基板ホルダ、基板ホルダを備えた搬送システム、及びリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20241028BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2023518088
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2021073138
(87)【国際公開番号】W WO2022073679
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-04-17
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】バストラーン,クリン,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ハイスベルトセン,アルヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ドンゲン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】アカン,イブラヒム
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-227199(JP,A)
【文献】特開平09-148395(JP,A)
【文献】特開2010-076929(JP,A)
【文献】特開2001-353682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24
G03F 9/00-9/02
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を基板保持位置に保持するための基板ホルダであって、
フレームと、
基板をその上面にクランプするための前記フレーム上に配置された複数の表面クランプデバイスであって、それぞれが前記基板の前記上面に配置される表面クランプパッドを有し、前記表面クランプパッドが、前記表面クランプパッドにより保持された基板の前記上面に実質的に垂直な第1の方向に互いに対して移動可能であ
り、少なくとも2つの表面クランプデバイスが前記基板中心軸から半径方向外側に設けられた、表面クランプデバイスと、 前記表面クランプパッドを互いに対して前記第1の方向に移動させる1つ以上のアクチュエータとを備えた基板ホルダ。
【請求項2】
前記1つ以上のアクチュエータが、前記クランプパッドの各1つを前記フレームに対して移動させるための前記フレームと前記クランプパッドの1つとの間のアクチュエータを含む、請求項1の基板ホルダ。
【請求項3】
前記1つ以上のアクチュエータが、各クランプパッドを前記フレームに対して個別に移動させるための前記クランプパッドのそれぞれの間のアクチュエータを含む、請求項2の基板ホルダ。
【請求項4】
前記フレームが変形可能であり、前記1つ以上のアクチュエータが、前記表面クランプパッドを互いに対して移動させるように前記フレームを変形させる、請求項1の基板ホルダ。
【請求項5】
前記表面クランプパッドが互いに対して少なくとも前記垂直方向に移動可能であり、前記表面クランプパッドが1つ以上の水平軸周りに自由に傾動する、請求項1から4のいずれかの基板ホルダ。
【請求項6】
前記基板ホルダが、前記表面クランプデバイスの互いに対する位置を制御するコントローラを備える、請求項1から5のいずれかの基板ホルダ。
【請求項7】
前記コントローラが、前記表面クランプデバイスにより保持された前記基板の形状を適合させるように前記表面クランプデバイスの前記位置を制御する、請求項6の基板ホルダ。
【請求項8】
前記基板ホルダにより保持された又は保持される前記基板の測定形状が、前記表面クランプデバイスにより保持された前記基板の形状を適合させるように、前記コントローラが前記表面クランプデバイスの前記位置を制御するための入力として使用される、請求項6又は7の基板ホルダ。
【請求項9】
前記1つ以上のアクチュエータがピエゾアクチュエータである、請求項1から8のいずれかの基板ホルダ。
【請求項10】
前記基板ホルダが、前記表面クランプパッドにより保持された基板の前記上面に実質的に平行な平面に動きを与える1つ以上の牽引アクチュエータパッドを更に備える、請求項1から9のいずれかの基板ホルダ。
【請求項11】
前記基板ホルダ上の前記基板の位置を検出する1つ以上の検出器を更に備えた、請求項10の基板ホルダ。
【請求項12】
前記基板ホルダが、前記基板をその周縁エッジに保持するための3つ以上のエッジグリッパを更に備える、請求項1から11のいずれかの基板ホルダ。
【請求項13】
前記基板ホルダが、前記1つ以上のエッジグリッパが保持される前記基板の前記周縁エッジに接触したかどうかを検出する1つ以上のエッジ検出デバイスを備え、前記基板ホルダが、前記基板の把持中に前記1つ以上のエッジグリッパのそれぞれを前記基板の前記エッジに向けて移動させ、前記1つ以上のエッジ検出デバイスが各エッジグリッパが前記基板の前記周縁エッジに接触したことを検出したときに前記1つ以上のエッジグリッパのそれぞれの移動を停止する、請求項12の基板ホルダ。
【請求項14】
基板を支持するための搬送システムであって、請求項1から13のいずれかの基板ホルダを備えた搬送システム。
【請求項15】
請求項1から13のいずれかの基板ホルダを備えたリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年10月8日出願の欧州出願20200811.6、2020年10月23日出願の欧州出願20203644.8、及び2021年8月9日出願の欧州出願21190373.7の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、基板ホルダ、基板ホルダを備えた搬送システム、及びリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] 半導体製造プロセスが進み続けるにつれ、回路素子の寸法は継続的に縮小されてきたが、その一方で、デバイス毎のトランジスタなどの機能素子の量は、「ムーアの法則」と通称される傾向に従って、数十年にわたり着実に増加している。ムーアの法則に対応するために、半導体産業はますます小さなフィーチャを作り出すことを可能にする技術を追求している。基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を用い得る。この放射の波長が、基板上にパターン形成されるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。例えば193nmの波長を有する放射線を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを基板上に形成するためには、4nm~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置が用いられ得る。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置では、基板を処理する、例えばリソグラフィプロセス中に基板を支持する基板サポートに対する基板のロード及びアンロードを行うのに1つ以上の基板ホルダが使用される。
【0006】
[0006] 基板ホルダの既知の実施形態では、基板ホルダはその上面に基板が支持される把持デバイスを備える。ボルテックスパッドなどの非接触表面クランプパッドが、基板を把持デバイスの固定位置に保持するのに使用される。基板を基板サポート上にロードするために、基板サポートには、基板サポートの支持面から垂直方向に移動可能なローディングピンが設けられる。基板ホルダは、基板を延長eピン上にロードする位置に基板ローダを配置し得る搬送システムによって支持されることがある。その後ローディングピンは、基板を基板サポートの支持面に配置するために下げられる可能性がある。基板サポートの支持面は、基板を支持するバールを備える。
【0007】
[0007] 基板ホルダの代替的な実施形態では、基板は、例えば表面クランプパッドによって基板ホルダの底面に保持される。基板を基板サポート上にロードするために、基板は基板ホルダによって、基板が基板サポートの支持面又は基板サポートのローディングピンで支持されるまで下げられる可能性がある。
【0008】
[0008] 基板を基板サポート上にロードすることは、基板が大幅に変形している場合に困難なタスクである場合がある。基板が完全に平坦であるかわずかにボウル状であることが理想的である。これによって、基板の基板サポートの支持面上での滑りを最小限に抑えた、基板の基板サポート上へのストレスの少ないローディングが可能になる。実際、基板はかなりの変形を示す場合がある。基板は、例えば傘形状、ボウル形状、鞍形状、及びその他の形状をしている場合がある。変形した基板を基板ステージ上にロードすることは、ロードした基板に内部応力をもたらす、及び/又は支持面上、例えば支持面のバール上に大きな滑りをもたらすことがある。基板の内部応力はオーバーレイエラーをもたらすことがある一方、基板の支持面上の滑りは基板サポートの支持面、具体的にはそのバールの摩耗をもたらすことがある。
【0009】
[0009] 基板サポートの支持面の摩耗は、バールの粗度の違いに起因した支持面平坦性ドリフト及び基板ロードグリッドドリフトをもたらすことがある。同様に、支持面の摩耗はオーバーレイ問題を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【0010】
[00010] 本発明の目的は、変形基板の基板サポートの支持面へのローディングを改善し得る基板ホルダを提供することである。
【0011】
[00011] 本発明の一態様によれば、基板を基板保持位置に保持するための基板ホルダであって、
フレームと、
基板をその上面にクランプするためにフレーム上に配置された複数の表面クランプデバイスであって、それぞれが基板の上面に配置される表面クランプパッドを有し、表面クランプパッドが、表面クランプパッドにより保持された基板の上面に実質的に垂直な少なくとも第1の方向に互いに対して移動可能である表面クランプデバイスと、
表面クランプパッドを互いに対して第1の方向に移動させる1つ以上のアクチュエータとを備える基板ホルダが提供される。
【0012】
[00012] 本発明の一態様によれば、基板を基板保持位置に保持するための基板ホルダであって、 フレームと、
基板をその周縁エッジに保持するためのフレーム上に取り付けられた3つ以上のエッジグリッパであって、そのうちの少なくとも1つが基板保持位置の中心軸に対して半径方向に延びる把持方向にフレームに対して個別に移動可能なエッジグリッパと、
エッジグリッパを把持方向に移動させるエッジグリッパアクチュエータと、
1つ以上のエッジグリッパが保持される基板の周縁エッジに接触したかどうかを検出するように構成された1つ以上のエッジ検出デバイスとを備え、基板ホルダが、基板の把持中に1つ以上のエッジグリッパのそれぞれを基板のエッジに向けて移動させ、1つ以上のエッジ検出デバイスが各エッジグリッパが基板の周縁エッジに接触したことを検出したときに1つ以上のエッジグリッパのそれぞれの移動を停止するように配置される基板ホルダが提供される。
【0013】
[00013] 本発明の一態様によれば、基板を基板保持位置に保持するための基板ホルダを備えた、基板を支持するための搬送システムであって、基板ホルダが、
フレームと、
基板をその上面にクランプするためのフレーム上に配置された複数の表面クランプデバイスであって、それぞれが基板の上面に配置される表面クランプパッドを有し、表面クランプパッドが、表面クランプパッドにより保持された基板の上面に実質的に垂直な少なくとも第1の方向に互いに対して移動可能である表面クランプデバイスと、 表面クランプパッドを互いに対して第1の方向に移動させる1つ以上のアクチュエータとを備える搬送システムが提供される。
【0014】
[00014] 本発明の一態様によれば、基板を基板保持位置に保持するための基板ホルダを備えた搬送システムであって、基板ホルダが、
フレームと、
基板をその周縁エッジに保持するためのフレーム上に取り付けられた3つ以上のエッジグリッパであって、そのうちの少なくとも1つが基板保持位置の中心軸に対して半径方向に延びる把持方向にフレームに対して個別に移動可能なエッジグリッパと、
エッジグリッパを把持方向に移動させるエッジグリッパアクチュエータと、
1つ以上のエッジグリッパが保持される基板の周縁エッジに接触したかどうかを検出するように構成された1つ以上のエッジ検出デバイスとを備え、基板ホルダが、基板の把持中に1つ以上のエッジグリッパのそれぞれを基板のエッジに向けて移動させ、1つ以上のエッジ検出デバイスが各エッジグリッパが基板の周縁エッジに接触したことを検出したときに1つ以上のエッジグリッパのそれぞれの移動を停止するように配置される搬送システムが提供される。
【0015】
[00015] 本発明の一態様によれば、基板を基板保持位置に保持するための基板ホルダを備えた、基板を支持するためのリソグラフィ装置であって、基板ホルダが、
フレームと、
基板をその上面にクランプするためのフレーム上に配置された複数の表面クランプデバイスであって、それぞれが基板の上面に配置される表面クランプパッドを有し、表面クランプパッドが、表面クランプパッドにより保持された基板の上面に実質的に垂直な少なくとも第1の方向に互いに対して移動可能である表面クランプデバイスと、 表面クランプパッドを互いに対して第1の方向に移動させる1つ以上のアクチュエータとを備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0016】
[00016] 本発明の一態様によれば、基板を基板保持位置に保持するための基板ホルダを備えたリソグラフィ装置であって、基板ホルダが、
フレームと、
基板をその周縁エッジに保持するためのフレーム上に取り付けられた3つ以上のエッジグリッパであって、そのうちの少なくとも1つが基板保持位置の中心軸に対して半径方向に延びる把持方向にフレームに対して個別に移動可能なエッジグリッパと、
エッジグリッパを把持方向に移動させるエッジグリッパアクチュエータと、
1つ以上のエッジグリッパが保持される基板の周縁エッジに接触したかどうかを検出するように構成された1つ以上のエッジ検出デバイスとを備え、基板ホルダが、基板の把持中に1つ以上のエッジグリッパのそれぞれを基板のエッジに向けて移動させ、1つ以上のエッジ検出デバイスが各エッジグリッパが基板の周縁エッジに接触したことを検出したときに1つ以上のエッジグリッパのそれぞれの移動を停止するように配置されるリソグラフィ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
[00017] 本発明の実施形態を、添付の図面を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0018】
【
図2】本発明の一態様に係る基板ホルダの第1の実施形態の断面を概略的に示す。
【
図3】本発明の一態様に係る基板ホルダの第1の実施形態の断面を概略的に示す。
【
図4】
図2及び
図3に示す基板ホルダの表面クランプパッドの形態を概略的に底面図で示す。
【
図5】本発明の一実施形態に係る基板ホルダの第2の実施形態の断面を概略的に示す。
【
図6】本発明の別の態様に係る基板ホルダの一実施形態の断面図を概略的に示す。
【
図7】本発明の別の態様に係る基板ホルダの一実施形態の上面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[00018] 本文献では、「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外線(例えば、波長が365nm、248nm、193nm、157nm又は126nmの波長)及びEUV(極端紫外線放射、例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する)を含む、すべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。
【0020】
[00019] 「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0021】
[00020]
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えば、UV放射、DUV放射又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに連結されたマスクサポート(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構築された第2のポジショナPWに連結された基板サポート(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0022】
[00021] 動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームを受ける。照明システムILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0023】
[00022] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム、及び/又は静電気光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これは更に一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0024】
[00023] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を例えば水のような比較的高い屈折率を有する液で覆うことができるタイプでもよい。これは液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技法に関する更なる情報は、参照により本願に含まれる米国特許6952253号に与えられている。
【0025】
[00024] リソグラフィ装置LAは、2つ以上の基板サポートWTを有するタイプである場合がある(「デュアルステージ」という名前も付いている)。このような「マルチステージ」機械においては、基板サポートWTを並行して使用するか、及び/又は、一方の基板サポートWT上の基板Wにパターンを露光するためこの基板Wを用いている間に、他方の基板サポートWT上に配置された基板Wに対して基板Wの以降の露光の準備ステップを実行することができる。
【0026】
[00025] 基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを含むことができる。測定ステージは、センサ及び/又は洗浄デバイスを保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性又は放射ビームBの特性を測定するように配置できる。測定ステージは複数のセンサを保持することができる。洗浄デバイスは、例えば投影システムPSの一部又は液浸液を提供するシステムの一部のような、リソグラフィ装置の一部を洗浄するように配置できる。基板サポートWTが投影システムPSから離れている場合、測定ステージは投影システムPSの下方で移動することができる。
【0027】
[00026] 動作中、放射ビームBは、マスクサポートMT上に保持されている、パターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(設計レイアウト)によってパターンが付与される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに集束させる。第2のポジショナPW及び位置測定システムPMSを用いて、例えば、放射ビームBの経路内の集束し位置合わせした位置に様々なターゲット部分Cを位置決めするように、基板サポートWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(
図1には明示的に図示されていない)を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせすることができる。図示されている基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占有するが、それらをターゲット部分間の空間に位置付けることも可能である。基板アライメントマークP1、P2は、これらがターゲット部分C間に位置付けられている場合、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0028】
[00027] 発明を明確にするために、デカルト座標系が用いられる。デカルト座標系は3つの軸、すなわちx軸、y軸、及びz軸を有する。3つの軸の各々は他の2つの軸に対して直交している。x軸を中心とした回転をRx回転と称する。y軸を中心とした回転をRy回転と称する。z軸を中心とした回転をRz回転と称する。x軸及びy軸は水平面を画定し、z軸は垂直方向を画定する。デカルト座標系は本発明を限定せず、単に明確さのため使用される。代わりに、本発明を明瞭にするために円筒座標系などの別の座標系が使用され得る。デカルト座標系の配向は、例えばz軸が水平面に沿った成分を有するように、異なるものとしてもよい。
【0029】
[00028]
図1のリソグラフィ装置LAには、搬送システムCSが設けられている。搬送システムCSは、基板Wを基板サポートWTと別の場所、例えば基板保管庫との間で運ぶように構成されている。搬送システムCSは、基板ホルダSHと、変位システムDS、例えばロボットシステム又は直線運動システムとを備える。ロボットシステムは選択的コンプライアンス多関節ロボットアーム(SCARA)ロボットである場合がある。直線運動システムはRz回転用のピボットを有するリニアステージである場合がある。リニアステージは、有利にはサブミクロンの再現性及び高い剛性を有する。基板ホルダSHはまた、高精度な基板の処理が望まれるリソグラフィプロセスにおける基板の処理に関連する他のデバイスにおいて基板を保持するのに使用されることがある。
【0030】
[00029]
図2は、本発明の一態様に係る基板ホルダSHの第1の実施形態を示している。基板ホルダSHは、基板ホルダフレームSHF及び複数の表面クランプパッドCPを備える。表面クランプパッドCPは、例えば空気圧又は別の媒体により生成される圧力によって基板Wを引いたり押したりすることができるボルテックスパッドである。クランプパッドCPに使用される空気又は他の媒体は、基板ホルダフレームSHF上又は内に設けられ得る複数の導管を通じて供給又は排出されることがある。例えば基板ホルダフレームSHFは、空気又は他の媒体を運ぶのに使用され得る内部チャネルを有する中空フレームである場合がある。
【0031】
[00030] 他の実施形態では、ベルヌーイクランプパッド又は静電クランプパッドなどの他のタイプの表面クランプパッドが使用されることがある。表面クランプパッドCPは、非接触表面クランプパッドである、すなわち表面クランプパッドCPと基板Wとが機械的に接触することなく基板をクランプすることができるか、又は接触表面クランプパッドである、すなわち表面クランプパッドCPと基板Wとが機械的に接触して基板をクランプすることができる場合がある。ボルテックスパッドは非接触タイプである。
【0032】
[00031] 表面クランプパッドCPは、表面クランプパッドCPが基板ホルダフレームSHFに対して個別にz方向に移動することを可能にするピエゾアクチュエータACTを介して基板ホルダフレームSHFに取り付けられている。代替的な実施形態では、他のタイプのアクチュエータが用いられることもある。有利にはアクチュエータは、表面クランプパッドCPの高精度な位置制御を可能にする位置アクチュエータである。フレクシャFLが、表面クランプパッドCPと基板ホルダフレームSHFとの間に設けられ、表面クランプパッドCPの基板ホルダフレームに対するz方向の移動を導く。表面クランプパッドCPのz方向の移動範囲は、例えば±1mmの範囲、例えば±0.3mmの範囲である場合がある。ピエゾアクチュエータACTにより引き起こされる熱負荷を補償するために1つ以上の冷却デバイスが設けられることがある。
【0033】
[00032] 個々の表面クランプパッドCPの互いに対するz方向の個々の位置を制御することによって、基板Wの形状は影響を受けることがある。ピエゾアクチュエータACTに制御信号を提供して表面クランプパッドCPを互いに対して所望の位置に位置決めするためにコントローラCONが配置されている。
図2では、ピエゾアクチュエータACTの位置は、傘形状をなす反った基板を保持するように選択される。これらの位置は、例えば基板Wが基板ホルダSH上にロードされる前の基板Wの形状測定に基づいている場合がある。この形状測定は基板Wのストレスフリーな状態で行われ、その結果が表面クランプパッドCPの位置を表面クランプパッドCPによって保持される前の基板Wの形状に適合させるためのフィードフォワード信号としてコントローラCONに入力される可能性がある。基板Wが基板ホルダSHによって保持されるとき、基板Wの形状は、表面クランプパッドCPの互いに対する適切な移動を決定するために測定/決定されることがある。ピエゾアクチュエータACTは、表面クランプパッドCPの実際の位置と同時に表面クランプパッドCPにより保持される基板の実際の形状に関するフィードバックを得るのに使用されることがある。代替的又は付加的に、基板Wの形状を決定し得る他のタイプの形状センサが設けられることもある。同様に、基板Wの剛性が知られているためにアクチュエータ力のフィードバック信号が使用される可能もある。
【0034】
[00033] 基板Wの傘形状は、オーバーレイエラー及び基板サポートWTの支持面の摩耗をもたらし得るために基板Wを基板サポートWTの支持面にロードするのに望ましくない。
【0035】
[00034]
図3は、表面クランプパッドCPの位置を互いに対して適合させることを利用して、基板Wの形状を平らな形状又は
図3に示すわずかなボウル形状などのより望ましい形状に適合させ得ることを示している。基板Wが表面クランプパッドCPによって保持されるとき、コントローラCONは、ボウル形状を得るために表面クランプパッドCPを所望の位置に移動させるようにピエゾアクチュエータACTを制御することがある。ピエゾアクチュエータACTの利点は、表面クランプパッドCPの位置をコントローラCONの作動信号によって正確に制御できることである。この例では、内側の表面クランプパッドCPが基板Wを(負のz方向に)押し下げる一方、外側の表面クランプパッドCPが基板Wを(正のz方向に)引き上げて所望の形状を得る。
【0036】
[00035]
図3Aは、表面クランプパッドCPをより詳細に示す
図3の一部を示している。例えば基板Wの上面で最大50mradの限られた回転角度での水平軸Rx、Ryに対する表面クランプパッドCPの自由回転を可能にする接続デバイスCDが提供されていることが分かる。Ry周りの自由回転は、
図3aに矢印FROで示されている。この自由回転は、表面クランプパッドCPのそれぞれがその回転位置を基板の上面に適合させることを容易にする。例えば表面クランプパッドCPは、基板Wのクランプ中に基板の上面に配置されるとき、又は基板Wの形状を表面クランプパッドCPのz方向の相対位置を適合させることによって積極的に変化させるときにその回転位置を適合させることがある。表面クランプパッドCPのそれぞれに、1つ以上の水平軸周りの表面クランプパッドCPの自由回転を可能にし得る接続デバイスCDが設けられることがある。
【0037】
[00036]
図3Aでは、クランプパッドCP内に温度制御デバイスTCDも示されている。クランプパッドCPのそれぞれに、その温度を個別に制御するための温度制御デバイスTCD、例えば加熱要素が設けられることがある。この温度制御は、クランプパッドCPで使用される空気の空気膨張により引き起こされる冷却を補償するのに望ましい場合がある。各個別のクランプパッドCPには、個別の温度制御デバイスTCDが設けられることがあるか又は1つの温度制御デバイスTCDが一群のクランプパッドCPに対して提供されることがある。
【0038】
[00037]
図4は、
図2の実施形態の表面クランプパッドCPの形態の底面図を示している。表面クランプパッドCPは、3つの同心円状に配置されており、半径方向に1つの円の各表面クランプパッドCPが、他の2つの円のそれぞれの表面クランプパッドCPと一直線になっている。
【0039】
[00038] 代替的な構成では、異なる相互位置を有する様々な数の表面クランプパッドCPが使用される可能性がある。ウェーハ成形量を最適化するために、多くの表面クランプパッドCPが役に立つ。これは表面クランプパッドCPあたりの所望の流量、例えば表面クランプパッド及び関連装置あたり約20NL/分とバランスが取られるべきである。同様に、表面クランプパッドCPの総質量を考慮に入れるべきである。
【0040】
[00039] 有利には、2つの表面クランプパッドCP及び関連ピエゾアクチュエータACTにより提供されるz方向の2つの反対方向の力によって基板にモーメントを加えることができる最小限の表面クランプパッドCPが半径方向に(基板中心軸から外側に)なければならない。そして、ボウル/傘、鞍及びハーフパイプなどの一次ウェーハ形状が補正される可能性がある。また、
図2から
図4の実施形態に示す3つの表面クランプパッドCP、又はそれ以上の表面クランプパッドCPが二次又はより高次の形状変形の補正を可能にするために半径方向に設けられる可能性がある。より一般的には、より多くの表面クランプパッドCPを使用して、基板ホルダSHにより保持される基板の形状を適合させる可能性を増やすことができる。例えばリングや行などの表面クランプパッドCP間の相互位置は、変形基板の特定の形状に成形能力を最適化するように選択される可能性がある。
【0041】
[00040] ある実施形態では、クランプパッドCPの1つ以上は、関連するアクチュエータACTによって、各クランプパッドCPが、例えば他の非後退クランプパッドCPによって基板ホルダSHにより保持された基板Wに力を加えることができなくなる後退位置に後退される可能性がある。
【0042】
[00041]
図2及び
図3の実施形態では、表面クランプパッドCPのそれぞれは、その独自の関連するピエゾアクチュエータACTによって個別に移動させることができる。他の実施形態では、2つ以上の表面クランプパッドCPが1つのピエゾアクチュエータと関連付けられる可能性がある。例えば、表面クランプパッドCPの各リングは、2つ以上の表面クランプパッドCPを含む複数のリングセグメントに細分されることがある。2つ以上の表面クランプパッドCPを含む各リングセグメントは、各リングセグメントを所望の位置に移動させる1つのピエゾアクチュエータと関連付けられることがある。例えば、
図4に示す形態の3つのリングのそれぞれは、それぞれが3つの表面クランプパッドCPを含む4つのリングセグメントに細分されることがある。これらのリングセグメントのそれぞれについて、各アクチュエータが、リングセグメントをz方向の所望の位置に移動させるように設けられることがある。
【0043】
[00042]
図5は、本発明の一態様に係る基板ホルダSHの第2の実施形態を示している。この実施形態では、表面クランプパッドCPは、支持プレートPSP及び延長要素EEを備えた基板ホルダフレームSHF上に配置されている。表面クランプパッドCPは支持プレートPSP上に取り付けられ、所望の形態に従って分布される。延長要素EEは支持プレートPSPの上面に取り付けられている。延長要素EEの上端部は、支持プレートPSPの曲げ中立線より上に位置する。上部要素間にピエゾアクチュエータHACが配置されている。ピエゾアクチュエータHACの伸縮によって、その間にピエゾアクチュエータHACが取り付けられる延長要素EEの上端部はそれぞれ互いから遠ざけられ、互いに引き付けられる可能性がある。結果として、支持プレートPSPは変形、すなわち湾曲されることがあり、表面クランプパッドCPの互いに対するz方向の相対移動がもたらされる。ある実施形態では支持プレートPSPに、開口、窪み、スロット、又は支持プレートPSPの所望の場所における湾曲を容易にする形状又は材質の他の構成が設けられることがある。
【0044】
[00043]
図5の表面クランプパッドCPは、
図4に示す形態に対応する3つの同心円状に配置されている。ピエゾアクチュエータHACは半径方向に延びる。この構成は、支持プレートPSPと同時に表面クランプパッドCPを、ボウル形状、傘形状、鞍形状、ハーフパイプ形状及び平坦形状などのいくつかの典型的な形状で配置することを可能にする。更なる実施形態では、同じリング内の隣接した延長要素EEが、ピエゾアクチュエータHACによって互いに接続されて、支持プレートPSPを所望の形状に成形する可能性を高めることもある。2つもしくは4つの同心円状のリング、又は行及び列の規則的パターンなどの任意の他の適切な形態が使用されることもある。
【0045】
[00044]
図6及び
図7は、本発明の別の態様に係る基板ホルダSHの一実施形態を開示している。基板ホルダSHは、基板ホルダフレームSHFと、基板ホルダフレームSHF上に取り付けられた4つのエッジグリッパEGRを備える。4つのエッジグリッパEGRは、基板Wをその周縁エッジで基板保持位置に保持するように構成されている。基板保持位置は、基板ホルダSHにより保持される基板Wが理想的な位置にある、基板ホルダSHにより画定される場所である。すなわち基板ホルダSHは、基板Wを基板保持位置に保持するように設計されている。4つのエッジグリッパEGRは、基板保持位置の円周の周りに均等に分布されている。
【0046】
[00045] 他の実施形態では、別の数のエッジグリッパEGRが設けられることがある。これらのエッジグリッパEGRの全てが、半径方向に積極的に位置制御されなければならないわけではない。例えば、1つ以上の機械的に予負荷された受動的エッジグリッパが、2つ以上の積極的に位置制御されるエッジグリッパと組み合わせられることがある。エッジグリッパEGRは、基板Wの円周にわたって任意の適切な形態で分布している場合がある。
【0047】
[00046] エッジグリッパEGRは、基板ホルダフレームSHFに対して把持方向GRDに個別に移動可能なエッジフィンガを備える。把持方向GRDは、基板保持位置の中心軸CENに対して半径方向に延びる。各エッジフィンガEFIは、エッジフィンガEFIを把持方向GRDに基板Wの基板エッジに向かって又は基板エッジから離れるように移動させるエッジグリッパアクチュエータEGAと関連付けられている。
【0048】
[00047] エッジフィンガEFIは、エッジフィンガEFIの把持面GRSを基板Wの周縁エッジに押し付けることによって基板を保持するのに使用される可能性がある。エッジフィンガEFIの把持面GRSは、基板Wを主に摩擦嵌めによって保持する摩擦面として機能する。摩擦面、より一般的には把持面GRSは垂直方向に凸状に成形されている。把持面GRSは、例えば部分的円筒面として形成されることがあり、円筒面の縦軸は基板Wが水平面に保持されるときに水平方向に延びる。エッジフィンガEFIの凸形状の利点は、把持面GRSが反った基板の局所角及び基板Wのエッジの様々な形状や材質に効果的に対処し得ることである。
【0049】
[00048] 機械的に予負荷されたばねSPRが、エッジグリッパアクチュエータEGAが正常に機能しない場合の安全のために設けられている。代替的又は付加的に、基板の安全性を高めるために、基板ホルダSHの機能不良の場合に基板Wを掴むための安全リム(図示せず)が把持面GRSの下端部に設けられることがある。
【0050】
[00049] 基板ホルダSHは、1つ以上のエッジグリッパEGRが保持される基板Wの周縁エッジに接触したかどうかを検出するように構成された1つ以上のエッジ検出デバイスEDDを備える。エッジ検出デバイスEDDは、エッジフィンガEFIを基板Wのエッジに向けて個別に把持方向GRDに移動させることによって基板Wを効率的に把持し、1つ以上のエッジフィンガEFIのそれぞれのこの移動を、各エッジフィンガEFIが基板Wの周縁エッジに接触したことが各エッジ検出デバイスEDDによって検出されたときに停止するのに使用される可能性がある。これは、各エッジフィンガEFIを基板Wのエッジの予期される位置ではなく基板Wのエッジの実際の位置に迅速に移動し得るという利点を有する。エッジフィンガEFIの1つがエッジに到達したとき、他のエッジフィンガEFIは、各エッジフィンガEFIが基板Wのエッジに到達したことが関連するエッジ検出デバイスEDDによって検出されるまで把持方向GRDにエッジに向かって移動し続けることがある。
【0051】
[00050]
図6及び
図7に示す実施形態では、エッジ検出デバイスEDDは外部センサとして概略的に示されている。実際には、エッジ検出デバイスEDDのエッジ検出は、例えば各エッジフィンガEFIの速度変化に基づいている場合がある。エッジフィンガEFIが基板Wに接触するとき、エッジフィンガEFIはゼロ速度に急速に減速することになる。エッジフィンガが半径方向に移動する速度を測定するためにエンコーダが設けられることがある。測定したエンコーダ速度が一定の最低速度閾値レベルを下回る場合に、エッジ検出デバイスEDDは、エッジに到達し、半径方向の移動を停止すべきと判断することがある。
【0052】
[00051] 別の実施形態では、エッジ検出デバイスEDDのエッジ検出は位置決め誤差の変化に基づいている場合がある。コントローラCONでは、所定のバッファがフィンガの位置で満たされ絶えず最新の定義された数のサンプルを記憶することがある。エッジフィンガEFIの位置決め誤差が所定の閾値誤差レベルより大きくなった場合、エッジフィンガEFIが基板Wのエッジに到達し、半径方向の移動を停止すべきと判断することができる。
【0053】
[00052] 更に別の実施形態では、エッジ検出デバイスEDDのエッジ検出はフィードバック出力の変化に基づいている場合がある。エッジフィンガEFIが一定の速度でウェーハに近づいているとき、フィードバックの出力は比較的小さいと予想される。しかしながら、位置決め誤差に起因して、エッジフィンガEFIと基板Wのエッジとの接触が起こる場合、フィードバックコントローラCONは作動力を強化し始める。したがって、作動力が作動力閾値を上回るときに、エッジ検出デバイスEDDは、エッジに到達し、半径方向の移動を停止すべきと判断することがある。
【0054】
[00053] 基板Wのエッジに接触する最初の2つのエッジフィンガEFIは、2つの点が基板面内位置を決定するために位置決めに使用される。この例では2つの、更なるエッジフィンガEFIは、基板WをエッジフィンガEFIに予めロードし、摩擦力を垂直z方向に与えるのに使用される可能性がある。
【0055】
[00054] ある実施形態では、コントローラCONは、不要な振動なく把持力を加えるために基板のエッジに到達したとエッジ検出デバイスEDDが判断したとき、位置制御から速度制御に変化するように構成される場合がある。
【0056】
[00055] エッジグリッパアクチュエータEGAは、基板WがエッジグリッパEGRによって保持されるとき、基板Wをx方向及び/又はy方向に再配置することができる。これは、例えば基板Wの把持中に、基板Wが基板ホルダの基板保持位置に対してオフセットされているとコントローラCONによって判断される場合に有利な場合がある。これは、例えばエッジ検出デバイスEDDが、エッジフィンガEFIが基板Wのエッジに接触したことを検出したタイミング及び/又はその場合のエッジフィンガEFIの場所に基づいて判断されることがある。エッジグリッパEGRのエッジグリッパアクチュエータEGAによる制御された移動によって、基板の基板保持位置、すなわち所望の位置に対する実際の位置が補正される可能性がある。
【0057】
[00056] エッジグリッパEGRは更に、エッジフィンガEFIの基板保持位置の中心軸CENに対する接線方向TADの移動を可能にするように設計されている。
【0058】
[00057] エッジグリッパEGRの1つは接線方向アクチュエータTACを備える。接線方向アクチュエータTACは、例えばピエゾアクチュエータである。他のエッジグリッパは、エッジフィンガEFIの接線方向TADの移動を可能にするが、この接線方向の移動を積極的に制御するためのアクチュエータを備えていない。代替的な実施形態では、2つ以上、又は全てのエッジグリッパEGRが、各エッジフィンガEFIの接線方向TADの移動を制御するための接線方向アクチュエータTACを備えることがある。
【0059】
[00058] 接線方向アクチュエータTACの作動によって、基板Wのエッジは接線方向TADに変位される可能性がある。他のエッジグリッパEGRが接線方向TADのかかる移動を可能にするため、このように作動された基板Wの接線方向の移動は、例えば±50mrad、例えば±10mradの限られた角度での基板Wの中心軸周り、すなわちRz方向の基板ホルダ内の基板Wの回転をもたらすことになる。
【0060】
[00059] エッジフィンガEFIの基板Wのエッジにおけるその後の把持及び解放並びに基板WのRz方向の小さな回転によって、基板Wはより大きい角度で回転することがある。
【0061】
[00060] エッジグリッパアクチュエータEGAと接線方向アクチュエータTACの組み合わせは、基板Wがx方向、y方向及びRz方向に再配置されることを可能にする。これは、基板Wのxy平面における任意の方向の位置の補正を可能にする。以上には、基板ホルダの2つの実施形態、すなわち、z方向に積極的に移動可能な可動表面クランプパッドを含む一実施形態と、半径方向及び/又は接線方向に積極的に移動可能なエッジグリッパを含む別の実施形態が示されている。z方向に移動可能な表面クランプパッドと半径方向に移動可能なエッジグリッパの両方を有する単一の基板ホルダに両実施形態を統合することが可能である。かかる統合された基板ホルダは、
図2から
図7の実施形態について説明した基板ホルダSHのそれぞれの利点を組み合わせることがある。
【0062】
[00061] 上述の基板ホルダの実施形態は、基板をローディングピンを有しない基板サポートの支持面にロードすることがある。基板サポートが、基板がエッジフィンガEFIによって解放される前に下げられ、基板サポートの支持面に配置されるようにエッジフィンガEFIを受け入れるように構成された窪み又はポケットを有することがある。
【0063】
[00062] 上述の概念の更なる実施形態では、サポートホルダはエッジフィンガEFIを有し、表面クランプパッドCPを有しないことがある。
【0064】
[00063] ローディングピンを用いず、更にエッジフィンガグリッパEFIを用いずに基板を基板ホルダ上にロードすることが望ましい場合がある。したがって、ある実施形態では基板ホルダは1つ以上の牽引アクチュエータを備える。基板は、基板を全ての方向に位置決めするための牽引アクチュエータパッドを使用して、EFIのない基板ホルダ上にロードされる可能性がある。牽引アクチュエータパッドは、基板をx方向、y方向及びRz方向に制御するものであり、z方向、Rx方向、及びRy方向の表面クランプパッドと組み合わせられ得ることによって、基板を6自由度で制御する。牽引アクチュエータは非接触パッドであり、空気を利用した空気圧、又は別の媒体で生成される圧力によって基板との位置を固定する。牽引アクチュエータパッドに使用される空気又は他の媒体は、基板ホルダフレームSHF上又は内に設けられ得る複数の導管を通じて供給又は排出されることがある。
【0065】
[00064] 代替的又は付加的に、基板ホルダは、正確なローディングを保証するために基板の基板ホルダ上の位置を検出するように構成されることがある。例えば光学カメラなどの検出器が、基板の基板サポートの表面上での正確な位置決めを保証するためにx、y及びRzの位置データを記録することがある。かかるシステムによって約3μm未満の精度が達成されることがある。
【0066】
[00065] 上記の基板ホルダの実施形態は、具体的には基板をローディングピンを用いずに基板サポートの表面上にロードするように構成されるとき、及び/又はリニアステージ変位システムと共に使用されるように構成されるとき、いくつかの利点を生み出す。スループットが向上し、オーバーレイ精度が高まる。時間利得がより多くのオーバーレイマーカーを測定するために使用されることがある。基板サポートにローディングピンがない場合、より均一で平坦な支持面が提供されることによって、誘発される基板の非平坦性が低下する。基板のローディング精度が改善され、基板サポートの寿命は、基板ホルダの(エッジ)摩耗が少なくなることによって延びる。粒子発生及び二次汚染も、ローディングピンの必要性を取り除くことで基板Wの引き渡しをなくすことによって防止される。
【0067】
[00066] 以上に、
図1に示すリソグラフィ装置LAで使用され得る基板ホルダSHの様々な実施形態を説明してきた。基板ホルダSHは、基板を保持するための搬送システムの一部として、基板測定デバイス又は基板検査デバイスなどのリソグラフィ製造プロセスで使用される他の装置で使用されることもある。基板ホルダは、基板の制御された位置決め又は制御された形状が望まれる場合に特に有益である。
【0068】
[00067] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0069】
[00068] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(あるいはその他の基板)もしくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0070】
[00069] 以上では光学リソグラフィと関連して本発明の実施形態の使用に特に言及しているが、本発明は、例えばインプリントリソグラフィなど、その他の適用例において使用されてもよく、文脈が許す限り、光学リソグラフィに限定されないことが理解されるであろう。
【0071】
[00070] 文脈上許される場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読み取られて実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装することも可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)により読み取り可能な形態で情報を記憶又は伝送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、及び他のものを含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書で説明されることがある。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又は他のデバイスから生じ、実行する際、アクチュエータ又は他のデバイスが物質世界と相互作用し得ることを理解すべきである。
【0072】
[00071] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。