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特許7577861マイクロチップ、検体検査装置および検体検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】マイクロチップ、検体検査装置および検体検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20241028BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20241028BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20241028BHJP
【FI】
G01N35/00 D
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023536708
(86)(22)【出願日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2022027569
(87)【国際公開番号】W WO2023002898
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2021118744
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 泰典
(72)【発明者】
【氏名】平田 克樹
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-058409(JP,A)
【文献】特開2016-070849(JP,A)
【文献】特開2009-109467(JP,A)
【文献】国際公開第2010/005000(WO,A1)
【文献】特開2004-150804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0290955(US,A1)
【文献】特開2007-212263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0044322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B1/00-15/12
C12M1/00-3/10
G01N1/00-1/44
33/48-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体回路を内部に有するマイクロチップであって、
前記流体回路は、
検体が導入される検体導入部と、
前記マイクロチップに第1方向の遠心力が生じたときに、前記第1方向の遠心力により、前記検体導入部に導入された前記検体に含まれる成分を分離する成分分離部と、
試薬を担持した担持体を有し、前記成分分離部から前記担持体に導入される前記成分の一部を前記試薬と反応させる試薬反応部と、を備え、
前記成分分離部で分離された前記成分は、前記マイクロチップに前記第1方向とは異なる第2方向の遠心力が生じたときに、前記第2方向の遠心力によって前記成分分離部から前記担持体に導入され、
前記担持体は、
前記成分分離部から導入された前記成分を拡散して展開する展開層と、
前記展開層よりも上方に位置し、前記試薬を保持するとともに、前記展開層で展開された前記成分が浸透する反応層と、を含み、
前記試薬は酵素を含む、マイクロチップ。
【請求項2】
前記成分分離部は、前記検体導入部と繋がる複数の個別分離部を有し、
前記複数の個別分離部のそれぞれは、前記第1方向の遠心力により、前記検体導入部に導入された前記検体に含まれる成分を分離するとともに計量する、請求項1に記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記マイクロチップを底面から見て、前記第2方向は、前記検体に含まれる成分を分離して計量するときの遠心力の方向である前記第1方向と、交差する方向である、請求項2に記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記試薬反応部は、前記複数の個別分離部と繋がる複数の個別反応部と有し、
前記複数の個別反応部のそれぞれは、前記担持体を有し、前記第2方向の遠心力によって前記個別分離部から前記担持体に導入される前記成分の一部を、前記担持体で担持された前記試薬と反応させる、請求項2または3に記載のマイクロチップ。
【請求項5】
前記担持体は、前記展開層と前記反応層との間に位置する光遮蔽層を含む、請求項1から4のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記試薬は乾式試薬である、請求項1から5のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項7】
前記流体回路は、前記成分分離部および前記試薬反応部と繋がる廃液収容部をさらに備え、
前記廃液収容部は、前記第1方向において、前記成分分離部の下流側に位置するとともに、前記第2方向において、前記試薬反応部の下流側に位置する、請求項1から6のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のマイクロチップを回転させる回転機構と、
前記マイクロチップの前記試薬反応部に光を照射し、反射光を受光する光学検知部と、を備える、検体検査装置。
【請求項9】
反応物の吸光度を測定する測定部をさらに備える、請求項8に記載の検体検査装置。
【請求項10】
前記回転機構は、第1軸を中心に前記マイクロチップを回転させることにより、前記マイクロチップに前記第1方向の遠心力を生じさせる一方、前記第1軸とは異なる位置にある第2軸を中心に前記マイクロチップを回転させて停止させた後、前記第1軸を中心に前記マイクロチップを回転させることにより、前記マイクロチップに前記第2方向の遠心力を生じさせる、請求項8または9に記載の検体検査装置。
【請求項11】
前記マイクロチップを収容するとともに、前記光学検知部を支持する筐体と、
前記筐体内を一定温度に調整する温度調整部と、を備える、請求項8から10のいずれかに記載の検体検査装置。
【請求項12】
請求項1から7のいずれかに記載のマイクロチップを用い、前記マイクロチップを、第1軸を中心に回転させて、前記マイクロチップに前記第1方向の遠心力を生じさせることにより、前記マイクロチップに導入された検体に含まれる成分を遠心分離する遠心分離工程と、
前記第1軸とは異なる位置にある第2軸を中心に前記マイクロチップを回転させて停止させた後、前記第1軸を中心に前記マイクロチップを回転させて、前記マイクロチップに前記第2方向の遠心力を生じさせることにより、前記遠心分離工程で分離された前記成分を、前記試薬を担持した前記担持体を有する前記試薬反応部に導入する導入工程と、
前記試薬反応部に導入された前記成分の一部と前記試薬との反応物の濃度を検出する検出工程と、を有する、検体検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体回路を有するマイクロチップと、マイクロチップを用いて検体の検査を行う検体検査装置および検体検査方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液などの検体を分析チップ上に点着し、検体に含まれる特定成分と、分析チップに含まれる試薬との反応後の色度変化を光学的に検出することにより、特定成分の定量を行う技術が提案されている。上記分析チップの一例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公平6-75067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検体を分析チップ上に点着して特定成分の定量を行う場合、分析チップ上に点着した検体の拡散度合が点着の仕方に依存して変化する。このため、定量を行うごとに、検体中の特定成分と試薬との反応時間がばらつきやすい。その結果、特定成分の定量結果(測定結果)の再現性が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、検体に含まれる特定成分の測定結果の再現性を良好にすることができるマイクロチップと、そのマイクロチップを用いて検体を検査する検体検査装置および検体検査方法と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るマイクロチップは、流体回路を内部に有するマイクロチップであって、前記流体回路は、検体が導入される検体導入部と、前記マイクロチップに第1方向の遠心力が生じたときに、前記第1方向の遠心力により、前記検体導入部に導入された前記検体に含まれる成分を分離する成分分離部と、試薬を担持した担持体を有し、前記成分分離部から前記担持体に導入される前記成分の一部を前記試薬と反応させる試薬反応部と、を備え、前記成分分離部で分離された前記成分は、前記マイクロチップに前記第1方向とは異なる第2方向の遠心力が生じたときに、前記第2方向の遠心力によって前記成分分離部から前記担持体に導入される。
【0007】
本発明の他の側面に係る検体検査装置は、上記のマイクロチップを回転させる回転機構と、前記マイクロチップの前記試薬反応部に光を照射し、反射光を受光する光学検知部と、を備える。
【0008】
本発明のさらに他の側面に係る検体検査方法は、流体回路を内部に有するマイクロチップを、第1軸を中心に回転させて、前記マイクロチップに前記第1方向の遠心力を生じさせることにより、前記マイクロチップに導入された検体に含まれる成分を遠心分離する遠心分離工程と、前記第1軸とは異なる位置にある第2軸を中心に前記マイクロチップを回転させて停止させた後、前記第1軸を中心に前記マイクロチップを回転させて、前記マイクロチップに前記第2方向の遠心力を生じさせることにより、前記遠心分離工程で分離された前記成分を、試薬を担持した担持体を有する試薬反応部に導入する導入工程と、前記試薬反応部に導入された前記成分の一部と前記試薬との反応物の濃度を検出する検出工程と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検体に含まれる特定成分の測定結果の再現性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の一形態に係る検体検査装置の概略の構成を示す斜視図である。
図2】上記検体検査装置の主要部の構成を示す断面図である。
図3】上記検体検査装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】上記検体検査装置に収容されるマイクロチップの上面図である。
図5】上記マイクロチップの底面図である。
図6】上記マイクロチップに適用される担持体の概略の構成を示す断面図である。
図7】上記マイクロチップの第1反応部での反応例を模式的に示す説明図である。
図8】上記マイクロチップの第2反応部での反応例を模式的に示す説明図である。
図9】上記マイクロチップの第3反応部での反応例を模式的に示す説明図である。
図10】検体検査方法における各工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
〔1.検体検査装置の概要〕
図1は、本実施形態の検体検査装置1の概略の構成を示す斜視図である。図2は、検体検査装置1の主要部の構成を示す断面図である。検体検査装置1は、筐体2を有する。なお、図1では、筐体2の内部構成を示すため、筐体2の上面の図示を便宜的に省略している。筐体2を上方から見たとき、筐体2の外形はほぼ円形であるが、この形状に限定されるわけではない。
【0013】
筐体2の内部には、マイクロチップ3が収容される。マイクロチップ3には、検体容器4(図4参照)に収容された検体が導入される。上記の検体は、例えば血液(全血とも呼ばれる)、血漿または血清である。なお、検体は、唾液、尿、リンパ液、脳脊髄液等などの体液であってもよい。
【0014】
マイクロチップ3は、マイクロ流路を内部に有する。上記の検体は、マイクロチップ3の回転によって生じる遠心力によってマイクロ流路を流れ、マイクロチップ3の内部に予め収容された試薬と反応する。検体と試薬との反応物は、マイクロチップ3の被測定部(図示せず)に到達する。筐体2の側方には測定部5が設けられており、マイクロチップ3の被測定部に到達した反応物の吸光度が測定部5によって光学的に測定される。これにより、上記吸光度の測定結果に基づいて、検体に含まれる成分の一部(以下では「特定成分」とも言う)の濃度を算出することができる。
【0015】
測定部5による光学測定は、検体に含まれる特定成分と試薬との抗原抗体反応によって生成される反応物の吸光度を測定する場合に利用される。抗原抗体反応を利用して濃度が算出される特定成分としては、例えば、糖尿病の判断の指標となるHb(ヘモグロビン)A1c、炎症マーカーであるCRP(C-リアクディブ・プロテイン)、腎機能検査の指標となるCysC(シスタチンC)、などがある。したがって、マイクロチップ3は、HbA1c、CRP、CysCのそれぞれに対応して用意される。なお、CRPを高感度で検出するための試薬が収容されたマイクロチップ3(検査項目は「hsCRP」と呼ばれる)が、通常のCRP検出用のマイクロチップ3と区別して用意されてもよい。
【0016】
本実施形態では、上記の測定部5による光学測定に加えて、後述する光学検知部13による光学測定を行うこともできる。光学検知部13による光学測定は、主に、検体に含まれる特定成分と試薬との酵素反応によって生成される反応物の濃度を測定する場合に利用される。なお、特定成分と試薬との酵素反応には、検体に含まれる成分の一部が加水分解等によって分解されて得られた成分と試薬との酵素反応も含まれるとする。このような光学検知部13による光学測定の対象となるマイクロチップ3の詳細については後述する。
【0017】
筐体2には、回転テーブル6が設けられる。図2に示すように、回転テーブル6は、モータ7によって回転軸AXを中心に回転する。回転テーブル6上には、第1ステージ8と、第2ステージ9(図1参照)とが設けられる。第1ステージ8と第2ステージ9とは、回転軸AX方向から見て、回転軸AXに対して点対称となる位置に配置される。
【0018】
第1ステージ8には、上述したマイクロチップ3が載置され、ホルダ8aによって第1ステージ8上に固定される。第2ステージ9には、マイクロチップ3とバランスをとるためのバランサーチップ(ダミーチップ)が載置され、ホルダ(図示せず)によって第2ステージ9上に固定される。なお、第2ステージ9には、別のマイクロチップ3が固定されてもよい。
【0019】
第1ステージ8および第2ステージ9は、ギアおよびカムを有する駆動力切替機構10と連結される。駆動力切替機構10により、第1ステージ8および第2ステージ9への、モータ7の駆動力の伝達が切り替えられる。これにより、第1ステージ8および第2ステージ9の回転/非回転が切り替えられ、回転テーブル6の回転時にマイクロチップ3に働く遠心力の方向が切り替えられる。このように第1ステージ8および第2ステージ9の回転を切り替えることにより、マイクロチップ3内で検体の流れる方向を制御することができる。
【0020】
なお、上記の第1ステージ8は、回転テーブル6に取り付けられた第1遊星軸部11を中心に回転(自転)する。第1遊星軸部11は、回転テーブル6の回転軸AXから径方向に離れて位置し、かつ、回転軸AXと平行に位置する。したがって、第1ステージ8は、第1遊星軸部11を中心に自転し、回転軸AXを中心に公転することができる。同様に、第2ステージ9は、回転テーブル6に取り付けられた第2遊星軸部(図示せず)を中心に回転(自転)する。第2遊星軸部は、回転テーブル6の回転軸AXに対して第1遊星軸部11とは反対側に位置し、かつ、回転軸AXと平行に位置する。したがって、第2ステージ9は、第2遊星軸部を中心に自転し、回転軸AXを中心に公転することができる。
【0021】
したがって、少なくとも、モータ7、第1ステージ8、第2ステージ9、駆動力切替機構10および第1遊星軸部11は、マイクロチップ3を回転させる回転機構20を構成している。
【0022】
筐体2の底部には、ヒータ12が取り付けられている。ヒータ12は、筐体2内の温度を調整する温度調整部として機能する。ヒータ12の発熱量を調整することにより、筐体2の内部を一定温度(例えば37℃)に保つことができる。
【0023】
筐体2の上面には、光学検知部13が設けられている。光学検知部13は、発光部131と、受光部132と、を有する。発光部131は、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)の各色の波長の光を出射する3色LED(Light Emitting Diode)で構成されている。受光部132は、発光部131で発光され、マイクロチップ3の後述する試薬反応部33(図5参照)で反射された光を受光するセンサ(例えばフォトダイオード)で構成されており、RGBの各波長域に対応する感度を有する。受光部132で上記の反射光を受光することにより、試薬反応部33での反応によって生じた色素の濃度を検出することができる。これにより、比色法を用いて、検体に含まれる特定成分の濃度を検出することができる。
【0024】
本実施形態では、光学検知部13の発光部131および受光部132の組は、用いるマイクロチップ3の試薬反応部33を構成する反応部(第1反応部、第2反応部、・・・)の数および位置に対応して設けられる。したがって、例えば、試薬反応部33を構成する反応部を3つ有するマイクロチップ3を用いる構成では、図1に示すように、光学検知部13の発光部131および受光部132の組も、上記マイクロチップ3の各反応部の位置に対応して3つ設けられる。なお、光学検知部13の発光部131および受光部132の組は、1つのみであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0025】
また、本実施形態では、光学検知部13は、筐体2において、第1ステージ8の上方にのみ設けられる構成であるが、第2ステージ9にマイクロチップ3が固定されることも想定して、第2ステージ9の上方にさらに設けられてもよい。
【0026】
〔2.検体検査装置のハードウェア構成〕
図3は、検体検査装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。検体検査装置1は、制御部50と、記憶部51と、演算部52と、入力部53と、表示部54と、をさらに備える。制御部50は、例えばCPU(Central Processing Unit)と呼ばれる中央
演算処理装置で構成され、検体検査装置1の各部の動作を制御する。例えば、制御部50は、上述した測定部5、ヒータ12、光学検知部13、回転機構20の動作を制御する。記憶部51は、制御部50の動作プログラムを記憶するとともに、各種の情報を記憶するメモリであり、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリなどを含んで構成される。
【0027】
演算部52は、測定部5および光学検知部13で測定した結果を受け付けて所定の演算処理を施して測定値として出力する。このような演算部52は、専用の演算処理回路で構成されてもよい。また、上記した制御部50(CPU)が演算部52の機能を兼ね備えていてもよい。入力部53は、ユーザから種々の指示を受け付ける押圧ボタン、スイッチ、タッチパネルなどで構成される。表示部54は、液晶表示装置などの表示装置で構成され、演算部52から出力された測定値を表示する。なお、入力部53をタッチパネルで構成した場合、上記タッチパネルは表示部54の上面に設けられてもよい。
【0028】
〔3.マイクロチップの詳細について〕
(3-1.マイクロチップの外観)
次に、光学検知部13による光学測定の対象となるマイクロチップ3の詳細について説明する。図4は、上記マイクロチップ3の上面図である。マイクロチップ3は、容器収容部3aを有する。容器収容部3aには、検体容器4が差し込まれて収容される。検体容器4は、キャピラリーまたはキャピラリーチューブとも呼ばれる。検体容器4には、被験者から採取した検体が導入される。ここでは、検体は全血であるとする。
【0029】
検体容器4の容器収容部3aへの差し込みを容易にするため、容器収容部3aは検体容器4の外形よりも若干大きい形状で形成されている。特に、容器収容部3aの下端部は、下端部以外の部分よりも幅広で、平面視でほぼ円形に形成されている。容器収容部3aの下端部は、検体容器4からマイクロチップ3の内部へ検体が導入される検体導入部31を構成している。なお、図4では、試薬反応部33(第1反応部331、第2反応部332および第3反応部333)も図示しているが、その詳細については後述する。
【0030】
(3-2.マイクロチップの流体回路)
図5は、上記マイクロチップ3の底面図である。ただし、図5のマイクロチップ3は、図4のマイクロチップ3を反時計回りに90°回転させて下方から見た状態を示している。同図に示すように、マイクロチップ3は、流体回路30を内部に有する。流体回路30は、流体としての検体が流れるマイクロ流路で構成される。このような流体回路30は、上述の検体導入部31と、成分分離部32と、試薬反応部33と、廃液収容部34と、を備える。廃液収容部34は、成分分離部32および試薬反応部33と繋がる。廃液収容部34は、検体廃液部340と、第1廃液部341と、第2廃液部342と、第3廃液部343と、を有する。なお、廃液収容部34の詳細については後述する。
【0031】
<成分分離部>
成分分離部32は、検体導入部31に導入された検体に含まれる成分を、マイクロチップ3に生じる遠心力によって分離する。上記の遠心力は、検体検査装置1にマイクロチップ3をセットし、回転機構20によりマイクロチップ3を回転させることによって生じさせることができる。特に、成分分離部32は、マイクロチップ3に対して、図5に示すD1方向(第1方向)の遠心力が生じたとき、そのD1方向の遠心力により、検体に含まれる成分(例えば血漿)を、元の検体(例えば全血)から分離する。
【0032】
ここで、D1方向の遠心力は、以下のようにしてマイクロチップ3に生じさせることができる。まず、回転機構20(図2参照)により、回転軸AX2を中心にしてマイクロチップ3を回転させ、図5に示すマイクロチップ3の位置(第1の位置)で停止させる。つまり、回転軸AX2および回転軸AX1に対するマイクロチップ3の位置(姿勢)が図5に示す位置になった時点で、回転軸AX2を中心とするマイクロチップ3の回転を停止させる。なお、回転軸AX2は、図2で示した第1ステージ8の回転軸、つまり、第1遊星軸部11の回転軸に相当する。また、回転軸AX1は、図2で示した回転テーブル6の回転軸AXに相当する。そして、回転軸AX1を中心にして、マイクロチップ3を回転させる。これにより、マイクロチップ3にD1方向の遠心力が働く。
【0033】
このような成分分離部32は、検体導入部31と繋がる複数の個別分離部を有する。具体的には、成分分離部32は、上記個別分離部として、第1分離部321、第2分離部322および第3分離部323を有する。第1分離部321、第2分離部322および第3分離部323は、検体導入部31から廃液収容部34に向かう流路の途中にこの順で設けられる。なお、個別分離部の数は、上記の3つに限定されるわけではなく、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、成分分離部32は、個別分離部を1つのみ有する構成であってもよい。
【0034】
D1方向の遠心力により、検体導入部31から成分分離部32の第1分離部321に検体が導入されると、第1分離部321では所定量の計量も行われ、所定量の検体のみが第1分離部321に留まる。残りの検体、つまり、上記所定量以外の検体は、第1分離部321から溢れ出て、第2分離部322に導入される。
【0035】
第2分離部322においても同様に、D1方向の遠心力により所定量の計量が行われ、所定量の検体のみが第2分離部322に留まる。残りの検体、つまり、上記所定量以外の検体は、第2分離部322から溢れ出て、第3分離部323に導入される。
【0036】
第3分離部323においても同様に、D1方向の遠心力により所定量の計量が行われ、所定量の検体のみが第3分離部323に留まる。残りの検体、つまり、上記所定量以外の検体は、第3分離部323から溢れ出て、廃液収容部34に導入される。
【0037】
また、第1分離部321、第2分離部322および第3分離部323では、D1方向の遠心力により、検体が血漿と血球とに分離される。つまり、第1分離部321、第2分離部322および第3分離部323では、検体に含まれる成分(血漿)が分離される。なお、第1分離部321、第2分離部322および第3分離部323では、血漿はD1方向の上流側に溜まり、血球はD1方向の下流側に溜まる。
【0038】
このように、成分分離部32が複数の個別分離部(第1分離部321、第2分離部322および第3分離部323)を有することにより、以下の効果が得られる。すなわち、検体を複数の個別分離部に配分してから各個別分離部で遠心分離を行うため、複数に配分せずに遠心分離を行う場合よりも、遠心分離に要する時間が短くて済む。また、複数に配分した成分を各個別分離部で分離した際に、各個別分離部において、上澄み成分(遠心分離によって上方に残る部分)を同条件で取り出すことができる。これにより、再現性を担保することができる。ちなみに、検体を複数の個別分離部に配分せずに複数の上澄み成分を抽出する場合、単一の分離部で得られる上澄み部分の種々の位置から上澄み成分を抽出することになるため、抽出した各上澄み成分の性状にバラツキが生じる可能性がある。
【0039】
<試薬反応部>
試薬反応部33は、試薬を担持した担持体330を有する。そして、試薬反応部33は、マイクロチップ3に生じる遠心力により、成分分離部32から担持体330に導入される成分の一部を、担持体330が担持した試薬と反応させる。
【0040】
ここで、マイクロチップ3に生じる上記の遠心力の方向は、D1方向とは異なるD2方向(第2方向)である。D2方向の遠心力は、以下のようにしてマイクロチップ3に生じさせることができる。まず、回転機構20(図2参照)により、図5に示す回転軸AX2を中心にして、マイクロチップ3を図5において時計回りに90°回転させ、その位置(第2の位置)で停止させる。次に、回転軸AX1を中心にして、マイクロチップ3を回転させる。
【0041】
試薬反応部33は、成分分離部32の各個別分離部と繋がる複数の個別反応部を有する。具体的には、試薬反応部33は、上記個別反応部として、第1反応部331、第2反応部332および第3反応部333を有する。第1反応部331、第2反応部332および第3反応部333は、それぞれ、第1分離部321、第2分離部322および第3分離部323と繋がる。第1反応部331、第2反応部332および第3反応部333は、それぞれ、上記の担持体330を有する。
【0042】
図6は、担持体330の概略の構成を示す断面図である。担持体330は、展開層330aと、光遮蔽層330bと、反応層330cと、支持層330dと、を下方から上方に向かってこの順で積層して構成される。展開層330a、光遮蔽層330b、反応層330cおよび支持層330dは、いずれも多孔性シートで形成される。多孔性シートとしては、例えば、不織布などの繊維質多孔性シート、樹脂シートなどの非繊維質多孔性シートを用いることができる。樹脂シートを構成する樹脂としては、例えばセルロースエステル系樹脂を用いることができる。
【0043】
担持体330において、上記した試薬は、反応層330cで保持される。試薬は、酵素を含む乾式試薬である。光遮蔽層330bは、二酸化チタン等の光遮蔽性微粒子を含む。展開層330a、光遮蔽層330bおよび反応層330cは、支持層330dによって平らに支持される。展開層330aは、界面活性剤を含んでいてもよい。
【0044】
成分分離部32の第1分離部321で遠心分離されて試薬反応部33の第1反応部331に導入された成分(血漿)は、担持体330の展開層330aに導入され、担持体330の厚み方向(各層の積層方向)とは垂直な方向に拡散、展開される。そして、上記成分は、毛細管現象により、展開層330aを上方に進行し、光遮蔽層330bを介して反応層330cに浸透する。反応層330cでは、上記成分の一部(特定成分)と試薬との酵素反応により反応物(例えば青色色素)が生成される。
【0045】
図7は、第1反応部331での反応例を模式的に示している。図中のCHE(コレステロールエステラーゼ)、COD(コレステロールオキシダーゼ)およびPOD(ペルオキシダーゼ)がそれぞれ酵素を示しており、それらの酵素による反応が酵素反応である。
【0046】
成分分離部32の第2分離部322で遠心分離されて試薬反応部33の第2反応部332に導入された成分(血漿)も同様に、第2反応部332の担持体330の展開層330aで展開されるとともに、毛細管現象により光遮蔽層330bを介して反応層330cに浸透する。反応層330cでは、上記成分の一部(特定成分)と試薬との酵素反応により反応物(例えば青色色素)が生成される。
【0047】
図8は、第2反応部332での反応例を模式的に示している。図中のCHE、CODおよびPODがそれぞれ酵素を示しており、それらの酵素による反応が酵素反応である。
【0048】
成分分離部32の第3分離部323で遠心分離されて試薬反応部33の第3反応部333に導入された成分(血漿)も同様に、第3反応部333の担持体330の展開層330aで展開されるとともに、毛細管現象により光遮蔽層330bを介して反応層330cに浸透する。反応層330cでは、上記成分の一部(特定成分)と試薬との酵素反応により反応物(例えば青色色素)が生成される。
【0049】
図9は、第3反応部333での反応例を模式的に示している。図中のLPL(リポプロテインリパーゼ)、GK(グリセロールキナーゼ)、GPO(グリセロール-3-リン酸オキシダーゼ)およびPODがそれぞれ酵素を示しており、それらの酵素による反応が酵素反応である。
【0050】
光学検知部13の発光部131から第1反応部331に向かう光は、第1反応部331の担持体330の支持層330dを透過して反応層330cに入射する。反応層330cで反射された光を受光部132で受光することにより、受光量に応じた検出結果を得ることができる。具体的には、第1反応部331の反応層330cでの反応によって生じた青色色素の濃度を検出することができる。そして、上記青色色素の濃度に基づき、血漿中のHDL(高比重リポタンパク)-コレステロール濃度を検出することができる。
【0051】
同様に、光学検知部13の発光部131から第2反応部332に向かう光は、第2反応部332の担持体330の支持層330dを透過して反応層330cに入射する。反応層330cで反射された光を受光部132で受光することにより、第2反応部332の反応層330cでの反応によって生じた青色色素の濃度を検出することができ、上記濃度に基づいて、血漿中の総コレステロール濃度を検出することができる。
【0052】
さらに、光学検知部13の発光部131から第3反応部333に向かう光は、第3反応部333の担持体330の支持層330dを透過して反応層330cに入射する。反応層330cで反射された光を受光部132で受光することにより、第3反応部333の反応層330cでの反応によって生じた青色色素の濃度を検出することができ、上記濃度に基づいて、血漿中の中性脂肪濃度を検出することができる。
【0053】
このように、血漿中の3つの特定成分の濃度を同時に検出することにより、被験者の脂質代謝を検査することができる。
【0054】
<廃液収容部>
次に、図5で示した廃液収容部34の詳細について説明する。廃液収容部34の検体廃液部340は、成分分離部32(特に第3分離部323)と繋がり、D1方向において、成分分離部32の下流側に位置する。検体廃液部340には、D1方向の遠心力により、第3分離部323から溢れ出た検体が導入され、収容される。
【0055】
第1廃液部341は、試薬反応部33の第1反応部331と繋がり、D2方向において、第1反応部331の下流側に位置する。第1廃液部341には、D2方向の遠心力により、第1反応部331をD2方向に通過した検体の成分が導入され、収容される。
【0056】
第2廃液部342は、試薬反応部33の第2反応部332と繋がり、D2方向において、第2反応部332の下流側に位置する。第2廃液部342には、D2方向の遠心力により、第2反応部332をD2方向に通過した検体の成分が導入され、収容される。
【0057】
第3廃液部343は、試薬反応部33の第3反応部333と繋がり、D2方向において、第3反応部333の下流側に位置する。第3廃液部343には、D2方向の遠心力により、第3反応部333をD2方向に通過した検体の成分が導入され、収容される。
【0058】
〔4.検体検査方法〕
図10は、本実施形態の検体検査装置1によって実現される検体検査方法における各工程の流れを示すフローチャートである。まず、ユーザ(医師、臨床検査技師など)は、マイクロチップ3の容器収容部3aに検体容器4を差し込み、セットする(S1)。これにより、検体容器4内の検体は、マイクロチップ3の検体導入部31に導入される。次に、制御部50の制御により、回転機構20は、回転軸AX2を中心にしてマイクロチップ3を回転させ、マイクロチップ3を第1の位置(図4で示した位置)で停止させる(S2)。
【0059】
続いて、回転機構20は、マイクロチップ3を、回転軸AX1を中心に回転させて、マイクロチップ3にD1方向の遠心力を生じさせる。これにより、検体導入部31に導入された検体を成分分離部32(第1分離部321、第2分離部322、第3分離部323)に供給するとともに、成分分離部32にて、上記検体に含まれる成分を遠心分離する(S3:遠心分離工程)。なお、S3では、遠心分離とともに、成分分離部32にて所定量の計量も行われる。所定量以外の検体は、D1方向の遠心力により、廃液収容部34に供給される。
【0060】
次に、回転機構20は、回転軸AX2を中心にマイクロチップ3を回転させ、上記した第2の位置で停止させる。つまり、回転機構20は、図5に示すマイクロチップ3の位置から回転軸AX2を中心にして時計回りに90°回転させた位置でマイクロチップ3を停止させる(S4)。その後、回転機構20は、回転軸AX1を中心にマイクロチップ3を回転させて、マイクロチップ3にD2方向の遠心力を生じさせる。これにより、S3の遠心分離工程で分離された成分を、試薬を担持した担持体330を有する試薬反応部33(第1反応部331、第2反応部332および第3反応部333)に導入する(S5:導入工程)。試薬反応部33では、導入された成分の一部(特定成分)と試薬とが酵素反応を起こし、反応物(例えば青色色素)が生成される(S6)。
【0061】
その後、光学検知部13は、上記試薬反応部33に光を照射して反射光を受光することにより、上記反応物の濃度(色)を検出する(S7;検出工程)。S7での検出結果に基づき、特定成分の定量を行うことができる。
【0062】
〔5.効果〕
以上のように、本実施形態のマイクロチップ3の成分分離部32は、マイクロチップ3に第1方向(例えばD1方向)の遠心力が生じたときに、第1方向の遠心力により、検体導入部31に導入された検体に含まれる成分を分離する。また、試薬反応部33は、成分分離部32から担持体330に導入される成分の一部(特定成分)を試薬と反応させる。このとき、成分分離部32で分離された上記成分は、マイクロチップ3に第1方向とは異なる第2方向(例えばD2方向)の遠心力が生じたときに、第2方向の遠心力によって成分分離部32から担持体330に導入される。
【0063】
上記構成のマイクロチップ3を用いることにより、マイクロチップ3に生じる遠心力の方向(第1方向、第2方向)を適切に制御して、検体導入部31に導入された検体を成分分離部32に導入して成分を分離したり、分離した成分を試薬反応部33の担持体330に到達させて、その成分の一部(特定成分)を試薬と反応させることができる。これにより、試薬反応部33で生成された反応物(例えば青色色素)の色を(光学検知部13で)光学的に検出して、特定成分の定量を行うことができる。なお、上記遠心力の方向は、検体検査装置1の回転機構20を制御することによって容易に制御することができる。
【0064】
また、マイクロチップ3を用いることにより、マイクロチップ3に生じる遠心力の方向および大きさを制御して、成分分離部32で分離された成分を試薬反応部33の担持体330に導入する速度(分注速度)および導入する位置(分注位置)を、成分分離部32から試薬反応部33への成分の導入(分注)ごとに調整して揃えることができる。これにより、分注ごとの特定成分と試薬との反応時間のばらつきを低減することができる。その結果、特定成分の測定結果の再現性を良好にすることができる。つまり、同じ特定成分の量に対して、(ほぼ)同じ定量結果を得ることができる。なお、上記遠心力の大きさは、検体検査装置1の回転機構20によるマイクロチップ3の回転速度を制御することによって容易に制御することができる。
【0065】
成分分離部32の複数の個別分離部としての第1分離部321、第2分離部322および第3分離部323のそれぞれは、第1方向の遠心力により、検体導入部31に導入された検体に含まれる成分を分離するとともに計量する。
【0066】
この構成では、マイクロチップ3に生じる第1方向の遠心力により、検体に含まれる成分の分離および計量を、複数の個別分離部で、つまり、複数箇所で同時に行うことができる。
【0067】
試薬反応部33の複数の個別反応部としての第1反応部331、第2反応部332および第3反応部333のそれぞれは、第2方向の遠心力によって個別分離部(第1分離部321、第2分離部322、第3分離部323)から担持体330に導入される成分の一部を、担持体330で担持された試薬と反応させる。
【0068】
この構成では、試薬反応部33の複数の個別反応部、つまり、第1反応部331、第2反応部332および第3反応部333で得られる反応物(例えば青色色素)に基づいて、異なる特定成分についての定量を同時に行うことができる。
【0069】
試薬反応部33の担持体330は、図6で示したように、展開層330aと、反応層330cと、を含む。展開層330aは、成分分離部32から導入された成分を拡散して展開する。反応層330cは、展開層330aよりも上方に位置し、試薬を保持する。反応層330cには、展開層330aで展開された成分が浸透する。
【0070】
上記の担持体330の構成では、展開層330aで展開された成分が反応層330cに浸透し、成分の一部(特定成分)と試薬とが反応層330cで反応する。したがって、担持体330に対して反応層330c側から、つまり、マイクロチップ3の上方から光を照射し、反応層330cで反射して得られる光を受光することにより、特定成分の定量を行うことができる。また、反応層330cが展開層330aよりも上方に位置する構成であっても、展開層330aで展開された成分が反応層330cに浸透するため、反応層330cで試薬と特定成分とを確実に反応させることができる。なお、反応層330cへの成分の浸透は、本実施形態のように、担持体330の各層を多孔性シートで構成して毛細管現象を利用することにより、容易に実現することができる。
【0071】
担持体330は、光遮蔽層330bを含む。光遮蔽層330bは、展開層330aと反応層330cとの間に位置する。
【0072】
担持体330に対して反応層330c側から光を照射する場合において、反応層330cに入射した光の一部が反応層330cを透過しても、光遮蔽層330bで遮蔽される。これにより、反応層330cを透過した光が展開層330aに入射すること、および展開層330aで反射することを低減することができる。反応層330cを透過した光が展開層330aで反射され、反応層330cで反射した光と混ざると、特定成分の測定(定量)を正確に行うことが困難となる。上記のように展開層330aに対する光の入射および反射を低減することにより、特定成分の定量を正確に行うことが可能となる。
【0073】
担持体330が担持する試薬は、(反応層330cを構成する多孔性シートにおいて乾燥状態で担持される)乾式試薬である。これにより、担持体330の反応層330cで試薬を保持しつつ、展開層330aで展開された成分を反応層330cに浸透させて、反応層330cで特定成分と試薬とを反応させる構成を実現することが確実に可能となる。
【0074】
担持体330が担持する試薬は、酵素を含む。これにより、酵素反応によって生成される反応物の色に基づいて特定成分の定量が可能なマイクロチップ3を実現することができる。
【0075】
マイクロチップ3の流体回路30の廃液収容部34は、第1方向において、成分分離部32の下流側に位置するとともに、第2方向において、試薬反応部33の下流側に位置する。
【0076】
第1方向の遠心力により、成分分離部32から溢れる検体(所定量を超えた検体)を下流側の廃液収容部34に導くとともに、第2方向の遠心力により、成分分離部32から供給されて試薬反応部33(担持体330)を第2方向に通過した成分を、下流側の廃液収容部34に導いて、廃液収容部34でまとめて収容することができる。したがって、特定成分の定量後は、マイクロチップ3自体を廃棄することで清潔な廃棄を行うことができる。よって、廃液を清潔化する特別な処理を行う必要がなく、また、廃棄(廃液の清潔化)にあたって特別な知識が要求されることもない。
【0077】
本実施形態の検体検査装置1は、マイクロチップ3を回転させる回転機構20と、マイクロチップ3の試薬反応部33に光を照射し、反射光を受光する光学検知部13と、を備える。
【0078】
この構成では、試薬反応部33で生成された反応物の色を光学検知部13によって検知することができる。これにより、光学検知部13での検知結果に基づいて、特定成分の定量を行うことができる。
【0079】
また、検体検査装置1は、反応物の吸光度を測定する測定部5(図1参照)をさらに備える。異なる測定系である光学検知部13と測定部5とを同じ装置に備えることにより、例えば温度調節などを同じ条件で制御することができる。その結果、再現性よく測定を行うことができる。
【0080】
回転機構20は、回転軸AX1(第1軸)を中心にマイクロチップ3を回転させることにより、マイクロチップ3に第1方向の遠心力を生じさせる一方、回転軸AX1とは異なる位置にある回転軸AX2(第2軸)を中心にマイクロチップ3を回転させて停止させた後、回転軸AX1を中心にマイクロチップ3を回転させることにより、マイクロチップ3に第2方向の遠心力を生じさせる。
【0081】
このように回転機構20を制御することにより、マイクロチップ3に第1方向の遠心力を生じさせて、マイクロチップ3の成分分離部32にて検体から成分を分離させることができる。また、マイクロチップ3に第2方向の遠心力を生じさせて、成分分離部32にて分離された成分を試薬反応部33に導入し、試薬反応部33にて特定成分と試薬とを反応させることができる。
【0082】
本実施形態の検体検査装置1は、筐体2と、ヒータ12と、を備える。筐体2は、マイクロチップ3を収容するとともに、光学検知部13を支持する。ヒータ12は、筐体2内を一定温度に調整する温度調整部である。
【0083】
筐体2内の温度がヒータ12によって調整されるため、外気温の影響を受けずに、筐体2内のマイクロチップ3に導入された検体に含まれる特定成分の定量を正確に行うことができる。特に、酵素反応は温度依存性があるため、ヒータ12により筐体2内を一定温度に維持することにより、酵素反応に基づく特定成分の定量を安定して行うことができる。
【0084】
また、本実施形態の検体検査方法は、遠心分離工程(S3)と、導入工程(S5)と、検出工程(S7)と、を有する。遠心分離工程では、流体回路30を内部に有するマイクロチップ3を、第1軸(回転軸AX1)を中心に回転させて、マイクロチップ3に第1方向(D1方向)の遠心力を生じさせることにより、マイクロチップ3に導入された検体に含まれる成分を遠心分離する。導入工程では、第1軸とは異なる位置にある第2軸(回転軸AX2)を中心にマイクロチップ3を回転させて停止させた後、第1軸を中心にマイクロチップ3を回転させて、マイクロチップ3に第2方向(D2方向)の遠心力を生じさせることにより、遠心分離工程で分離された成分を、試薬を担持した担持体330を有する試薬反応部33に導入する。検出工程では、試薬反応部33に導入された成分の一部と試薬との反応物の濃度を検出する。
【0085】
このような検体検査方法により、検出工程での検出結果に基づいて、特定成分の定量を行うことができる。しかも、導入工程において、マイクロチップ3に生じる遠心力の方向および大きさを制御することにより、成分分離部32から試薬反応部33への成分の導入(分注)ごとに、分注速度および分注位置を調整して揃えることができる。これにより、分注ごとの特定成分と試薬との反応時間のばらつきを低減することができる。その結果、特定成分の定量結果の再現性を良好にすることができる。
【0086】
〔6.その他〕
検体検査装置1の回転機構20は、検体の検査項目(試薬の種類)に応じて、マイクロチップ3に生じさせる遠心方向およびマイクロチップ3の回転速度を変化させてもよい。この場合、検体の検査項目に応じて、分注速度および分注位置を変化させることができるため、検査項目ごとに、成分分離部32で分離された成分を、試薬反応部33の担持体330に確実に浸透させることができる。
【0087】
本実施形態では、検体検査装置1は、回転テーブル6上に、第1ステージ8および第2ステージ9の2つのステージを設ける構成について説明したが、マイクロチップ3が載置されるステージは、3つ以上設けられてもよい。
【0088】
マイクロチップ3内を流れる検体(成分)の流量は、装置側およびチップ側の少なくとも一方で制御することができる。装置側では、例えば回転機構20による遠心方向およびマイクロチップ3の回転速度を制御することにより、マイクロチップ3内を流れる検体の流量を制御することができる。チップ側では、例えば流体回路30を構成するマイクロ流路の幅および長さを適切に設定することにより、マイクロチップ3内を流れる検体の流量を制御することができる。
【0089】
本実施形態では、脂質代謝の検査に用いる、特定の酵素反応を示す試薬を含む担持体330を例示したが、担持体330は、他の酵素反応を示す試薬を担持してもよい。
【0090】
本実施形態では、検体検査装置1による測定項目として、脂質代謝に関する測定項目を挙げたが、これに限られない。例えば、肝機能に関して、GGT(γ-GT)、ALT、AST、ALP(アルカリフォスファターゼ)、T-Bil(総ビルビリン)などを測定項目としてもよい。また、腎機能に関して、Cre(クレアチニン)、UA(尿酸)などを測定項目としてもよい。さらに、血中蛋白に関して、TP(総タンパク)、ALB(アルブミン)などを測定項目としてもよい。
【0091】
また、上記の複数の測定項目のうちのいくつかを、1つのチップで測定できるようにマイクロチップ3を構成してもよい。例えば、GGT、ALT、ASTを1つのチップで測定できるようにマイクロチップ3を構成する、または、GGT、AST、ALPを1つのチップで測定できるようにマイクロチップ3を構成することにより、1つのチップで肝機能を検査することができる。
【0092】
また、Cre、UAを1つのチップで測定するとともに、吸光度測定によってCysCを測定することにより、腎機能を検査することができる。さらに、TP、ALBを1つのチップで測定するととともに、吸光度測定によってCRPを測定することにより、血中蛋白に関する検査を行うことができる。
【0093】
本実施形態で説明した担持体は、例えばイオン結合、共有結合、配位結合、水素結合、分子間力による結合、金属結合等によって試薬を担持するものであればよい。このような担持体としては、担体に用いられるような活性炭、チタニア、アルミナ、シリカの他、生物膜ろ材として用いられるアンスラサイト、粒状セラミックス、ポリエチレン、ポリウレタン、その他、種々のクロマトグラフィーに用いられるカラムや、金属触媒等を利用したものであってもよい。これらの担持体は、膜質体の他、多孔質体、粒状体、ゲル状体など、反応効率を考慮した形状とすることができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のマイクロチップは、例えば検体を検査する検体検査装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 検体検査装置
2 筐体
3 マイクロチップ
5 測定部
12 ヒータ(温度調整部)
13 光学検知部
20 回転機構
30 流体回路
31 検体導入部
32 成分分離部
321 第1分離部(個別分離部)
322 第2分離部(個別分離部)
323 第3分離部(個別分離部)
33 試薬反応部
330 担持体
330a 展開層
330b 光遮蔽層
330c 反応層
331 第1反応部(個別反応部)
332 第2反応部(個別反応部)
333 第3反応部(個別反応部)
34 廃液収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10