(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-25
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241028BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
(21)【出願番号】P 2023541019
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2022017986
(87)【国際公開番号】W WO2023203591
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 嘉輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 勇人
(72)【発明者】
【氏名】宇根 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真史
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐也
【審査官】原島 啓一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-34483(JP,A)
【文献】特開2018-160689(JP,A)
【文献】国際公開第2020/122259(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0221441(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0273705(US,A1)
【文献】特開2019-87626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/31
H01L 21/312-21/3213
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469-21/475
H01L 21/768
H01L 21/86
H01L 23/522
H01L 23/532
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクに形成された保護膜を用いて被エッチング膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
シリコン元素含有ガスと酸素元素含有ガスと窒素元素含有ガスと水素元素含有ガスの混合ガスにより生成されたプラズマを用いて前記マスクに前記保護膜を形成するステップを有
し、
前記ステップは、前記被エッチング膜が成膜された試料に高周波電力を供給しながら前記保護膜を形成し、
前記プラズマを生成する高周波電力および前記試料に供給される高周波電力はパルス変調され、
前記試料に供給される高周波電力のデューティー比は、前記プラズマを生成するための高周波電力のデューティー比より小さく、
前記試料に供給される高周波電力のオン期間は、前記プラズマを生成するための高周波電力のオン期間に含まれていることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
マスクに形成された保護膜を用いて被エッチング膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、
SiCl
4
ガスとO
2
ガスとHBrガスとN
2
ガスの混合ガスにより生成されたプラズマを用いて前記マスクに前記保護膜を形成するステップを有することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプラズマ処理方法において、
前記水素元素含有ガスは、H
2ガス、HBrガスまたはCH
4ガスであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項4】
請求項1に記載のプラズマ処理方法において、
前記酸素元素含有ガスは、O
2ガス、COガス、CO
2ガス、COSガスまたはSO
2ガスであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
請求項
2に記載のプラズマ処理方法において、
前記ステップは、前記被エッチング膜が成膜された試料に高周波電力を供給しながら前記保護膜を形成し、
前記プラズマを生成する高周波電力および前記試料に供給される高周波電力はパルス変調されていることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項6】
請求項
5に記載のプラズマ処理方法において、
前記試料に供給される高周波電力のデューティー比は、前記プラズマを生成するための高周波電力のデューティー比より小さく、
前記試料に供給される高周波電力のオン期間は、前記プラズマを生成するための高周波電力のオン期間に含まれることを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項7】
請求項1
または請求項2に記載のプラズマ処理方法において、
前記マスクのパターンは、15nm以下の間隔で離間したパターンであることを特徴とするプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、基板上に形成された酸化膜や窒化膜からなるパターン状のマスクを用いて、基板上の被エッチング膜をエッチングするプラズマ処理方法が知られている。パターン状のマスクはエッチング工程の後に除去することなく、他の目的に使用することがあるため、エッチングする際にマスクに損傷を与えないことが必要となっている。このため、パターン状のマスクに保護膜を堆積させてた上でエッチングする手法が用いられている。このため、かかるプラズマ処理方法では、マスクに保護膜を形成する工程と、エッチングする工程が含まれることになる。
【0003】
保護膜を堆積したマスクを用いてエッチングする方法としては、特許文献1に開示されたエッチング方法が提案されている。特許文献1に開示された発明は、処理チャンバ内の基台上に載置された炭化珪素基板をエッチングするエッチング方法であって、炭化珪素基板を200℃以上に加熱し、少なくともSiF4ガス又はSiCl4ガスを含むシリコン系ガス、並びに酸素ガス又は窒素ガスを含む処理ガスを、処理チャンバ内に供給してプラズマ化し、酸化シリコン膜又は窒化シリコン膜を保護膜として炭化珪素基板に形成しつつ炭化珪素基板をエッチングするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところがセルサイズの小型化とラインアンドスペースの微細化などに伴い、マスクパターン間のスペース間隔が狭くなると、プラズマを用いて保護膜を堆積させるときに基板の横方向(面方向)に成長した保護膜が、マスクパターンの開口部を閉塞してしまうケースが見出された。このため、プラズマによりエッチングを行おうとしても、開口部に堆積した保護膜によりプラズマが前記スペースに入りこむことが妨げられ、被エッチング膜にエッチングを十分に行うことができないという課題が生じる。
特許文献1のエッチング技術においても、マスクパターン間のスペースが保護膜で閉塞される課題認識は開示されていない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、基板表面に平行な方向へ保護膜が堆積してマスクパターンの開口部が閉塞されることを抑制し、狭スペースであってもパターン加工が改善されるプラズマ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、代表的な本発明のプラズマ処理方法の一つは、マスクに形成された保護膜を用いて被エッチング膜をプラズマエッチングするプラズマ処理方法において、シリコン元素含有ガスと酸素元素含有ガスと窒素元素含有ガスと水素元素含有ガスの混合ガスにより生成されたプラズマを用いて前記マスクに前記保護膜を形成するステップを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板表面に平行な方向へ保護膜が堆積してマスクパターンの開口部が閉塞されることを抑制し、狭スペースであってもパターン加工が改善される。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施をするための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るプラズマ処理方法が行われるプラズマ処理装置の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態において水素元素を含有したガスを使用する場合における保護膜形成の模式図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法が行われる被処理基板の断面の模式図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法における保護膜形成ステップ後の被処理基板の断面の模式図である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法におけるエッチングステップ後の被処理基板の断面の模式図である。
【
図3D】
図3Dは、第2実施形態において保護膜204が形成される仕組みを示す概念図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態にかかる保護膜形成条件を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法における保護膜形成ステップ後の被処理基板の断面の概略図である。
【
図5B】
図5Bは、第2実施形態において保護膜207が形成される仕組みを示す概念図である。
【
図6】
図6は、従来の保護膜形成ステップを適用した場合の被処理基板の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0011】
本発明の実施形態において、一例として、マスクは、窒化シリコンや酸化シリコンによって構成される。マスクパターンは所定間隔で離間したスペースを形成する。
【0012】
また、本発明の実施形態において、被処理基板(以下、「試料」ともいう。)上に、被エッチング膜として、例えば窒化シリコン膜が形成されており、窒化シリコン膜の表面には、上述のマスクが形成されている。したがって、被エッチング膜である窒化シリコン膜は、マスクのパターンにしたがってエッチングされる。本開示において特に断りのない限り、表面とは窒化シリコン膜などの被処理膜の面に平行な面を意味する。
また、本発明の実施形態において、電力の時間変調は、電力の出力のオン状態とオフ状態が周期的に行われることを意味する。以下、時間変調を「パルス変調」ともいう。
【0013】
<従来例>
図6を参照して、従来例を適用した場合を説明する。
図6は、従来の保護膜形成ステップを適用した場合の被処理基板の断面の模式図である。被処理基板209は、ウエハ基板201上に被エッチング膜としての窒化シリコン膜203が形成されており、窒化シリコン膜203の表面にはマスク202のパターンが形成されている。
【0014】
次に、マスク202の上面に保護膜206を形成するために、処理ガスとしてSiCl4ガス、N2ガス、O2ガス、Heガスを用い、シリコンの酸化物や窒化物をプラズマ中で生成し、マスク202の上面に保護膜206を堆積させる。
なお、ここで使用したHeガスはウエハ面内に堆積する保護膜206がウエハ面の中心部と周辺部とで均一に分布させるための分布調整の機能を果たしており、保護膜206の性質には影響しない。従来の保護膜形成ステップでは、保護膜206はマスク202の上面だけでなく開口部208にも堆積し、パターンの閉塞を生じさせる。
そのため、そのまま続けてエッチングステップを行う場合、窒化シリコン膜203に所望のエッチングをすることができない。マスク202のパターンの開口部208の間隔dが少なくとも15nmよりも狭いスペースの場合に、酸化物等が堆積して目詰まりが発生する現象が確認された。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態にかかるプラズマ処理方法が行われるプラズマ処理装置100の概略図である。プラズマ処理装置100は、マイクロ波電子サイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance:ECR)を用いてプラズマを生成し、この生成されたプラズマによりプラズマ処理を行う装置である。
【0016】
<装置の構成>
処理室101は、チャンバ102と天板103によって囲まれる空間である。処理室101には、処理ガスを導入するためのシャワープレート104が設置される。シャワープレート104には孔が設けられており、孔から処理ガスが導入される。シャワープレート104の材料として、例えば石英が挙げられる。真空排気用ポンプ105は、制御ユニット107によって制御される。真空排気用ポンプ105は、処理室101内を高真空に排気する。試料台108は電極を備えている。電極を用いて被処理基板109を静電吸着することによって、載置された被処理基板109が保持される。また、試料台108の電極には、後述するようにバイアス電力が供給される。試料台108の材料としては、例えばアルミまたはチタンが挙げられる。
【0017】
空洞共振部110は、天板103とチャンバ111によって囲まれる空間である。天板103の材料としては、例えば石英が挙げられる。空洞共振部110には導波管112が接続される。導波管112は、導波管が直線状に敷設された直線導波管と導波管を90度曲げて敷設されたコーナー導波管によって構成される。
【0018】
なお、導波管112のうち空洞共振部110の開口に接続する直線導波管部分、処理室101、試料台108及び被処理基板109の中心軸は一致している。また、処理室101と空洞共振部110の周囲には、磁場を発生させるための磁場発生コイル113が配置される。
【0019】
<プラズマ発生>
制御部114は、ソース電力電源115とバイアス電力電源116を制御する。プラズマを生成するためのソース電力と被処理基板109に供給されるバイアス電力を設定して被処理基板109をエッチングする。以下、ソース電力とバイアス電力を、単に高周波電力ともいう。
【0020】
ソース電力電源115は、整合器117を介して電磁波を発生させる。ソース電力電源115は、電力発振の連続オン[Continuous Wave]のCWモードと電力発振のオン/オフをミリ秒オーダーで周期的に繰り返す時間変調[Time Modulation]のモードを有する。本発明において、電磁波は、2.45GHzのマイクロ波である。また、第1実施形態において、ソース電力電源115は、CWモードでソース電力を出力する。ソース電力は、プラズマを生成するための電力である。ソース電力電源115によって発生された電磁波は、導波管112を伝播し、空洞共振部110、天板103、シャワープレート104を経由して処理室101に導入される。電磁波によって発生した電場と磁場発生コイル113によって発生した磁場によって、処理室101に存在する処理ガスから、プラズマ119が発生する。
【0021】
試料台108に備えられた電極には、整合器118を介してバイアス電力電源116からバイアス電力Wvが供給される。バイアス電力電源116は、バイアス電力の連続オン[Continuous Wave]のCWモードとバイアスのオン/オフをミリ秒オーダーで周期的に繰り返す時間変調[Time Modulation]のモードを有する。
【0022】
<水素元素含有ガス使用例>
図2は、第1実施形態において水素元素を含有したガスを使用する場合における保護膜形成の模式図である。第1実施形態に使用する処理ガスとして、SiCl
4ガス、N
2ガス、O
2ガスに、N
2ガスの流量とO
2ガスの流量を合計した流量の3倍の流量のHBrガスを導入した。ソース電力およびバイアス電力は、CWモードである。
【0023】
その結果、
図2に示されるように、保護膜207が15nmより厚くなることにより傾きが発生し、保護膜同士の接触が発生した。CWモードを使用しているため過剰に保護膜が付着し、保護膜の形成が不均一になることで傾きが発生すると考えられる。保護膜形成ステップの後のステップにおいて窒化シリコン膜203のエッチング加工はできるものの、開口部208において保護膜同士が接触していることを原因として、窒化シリコン膜203の加工度合いにバラツキが発生した。なお、堆積量を減らすことでパターン同士の接触は防ぐことができるものの、保護膜の傾きを回避するためにはおよそ15nmまでの堆積が限度である。なお、水素元素を含有するガスとしてCH
4を使用した時にも同様な結果となった。
【0024】
[第2実施形態]
第2実施形態としてプラズマ119は、シリコン元素含有ガスと酸素元素含有ガスと窒素元素含有ガスと水素元素含有ガスの混合ガスから生成される。プラズマ119が生成される混合ガス(以下、「処理ガス」ともいう。)に関して、エッチング種としては、プラズマ119から放出されるイオンおよび電子の荷電粒子及び中性粒子を用いることができる。例えば、反応ガスとして、Cl2、HBr、O2、N2、He、Ar、SiCl4、CH4などから選択することが可能である。第2実施形態において、バイアス電力電源116は、TMモードでバイアス電力を出力する点で、第1実施形態と異なる。プラズマに含まれるイオンは、ウエハに供給された電力に応じてエネルギーを制御されながら、被処理基板109に付着したラジカルとともにエッチング反応に寄与する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略又は省略する。
【0025】
次にプラズマ処理装置100を用いた本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法について、
図3Aから
図3Cを用いて説明する。
図3Aは、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法が行われる被処理基板109の断面の模式図である。被処理基板109は、ウエハ基板201に被エッチング膜である窒化シリコン膜203が製膜され、さらに窒化シリコンのマスク202が形成されている。マスク202のパターンは、被処理基板109が形成される前にプロセス処理によってあらかじめ形成される。本発明の実施形態において、マスク202のパターンにおける開口部208の間隔dは、およそ15nmである。第2実施形態において、保護膜204は酸化シリコンまたは窒化シリコンであり、処理ガスに含まれるシリコンが保護膜204の堆積成分となる。
【0026】
なお、本発明にかかるプラズマ処理方法は、被エッチング膜上にマスクが形成されている状態で行われる。
図3Aはウエハ基板201の表面に被エッチング膜およびマスクが形成された例を示すが、被エッチング膜およびマスクが存在している状態下で、本発明に係るプラズマ処理方法は適用可能である。また、第2実施形態においては被エッチング膜とマスクは同じ材料であるが、本発明はこれに限られない。例えば、被エッチング膜の材料を酸化シリコン、マスクの材料を窒化シリコンとすることも可能である。あるいは、被エッチング膜の材料を窒化シリコン、マスクの材料を酸化シリコンとすることも可能である。
【0027】
図3Bは、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法における保護膜形成ステップ後の被処理基板109の断面の模式図である。保護膜形成ステップにおいて、プラズマを用いてマスクに保護膜が形成される。保護膜形成ステップにおいて、試料にバイアス電力電源116から高周波電力を供給しながら、保護膜が形成される。
図3Bに示されるように、マスク202の表面に厚さw1がおおよそ15nmの保護膜204が堆積される。ここで、表面は、ウエハ基板201の表面に平行な面を指す。マスク202の側面、いいかえると、ウエハ基板201の沿面(法面)に平行な面には、保護膜204はほとんど形成されない。ここで、処理ガスは、SiCl
4ガス、N
2ガス、および酸素元素を含有するガスおよび水素元素を含有するガスである。水素元素を含有するガスとしては、H
2ガス、HBrガスまたはCH
4ガスであり、H
2ガス、HBrガスまたはCH
4ガスのうちの少なくともいずれかを含むものであってもよい。酸素元素を含有するガスとしては、O
2ガス、COガス、CO
2ガス、COSガスまたはSO
2ガスであり、O
2ガス、COガス、CO
2ガス、COSガス、SO
2ガスの少なくともいずれかを含むものであってもよい。処
理ガスとして、例えば、SiCl
4ガスとO
2ガスとHBrガスとN
2ガスの混合ガスがある。
【0028】
図3Cは、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法におけるエッチングステップ後の被処理基板109の断面の模式図である。エッチングステップは、所定の厚さの保護膜204が形成された後に行われるプラズマエッチングである。
図3Cに示されるように、被エッチング膜である窒化シリコン膜203に所定の深さを持つトレンチ205が形成される。第2実施形態において、プラズマエッチングの処理ガスはCHF
3ガス、O
2ガスが用いられる。エッチングステップによって保護膜204も除去されるが、保護膜204が形成されているため、保護膜204の下にあるマスク202のエッチングは抑制される。
【0029】
<作用・効果>
図3Dは、第2実施形態において保護膜204が形成される仕組みを示す概念図である。
図3D(1)を参照して、想定される第1の現象を説明する。まず、処理ガスに含まれるシリコンと酸素または窒素が結合し、マスク202の表面に保護膜204が堆積し始める。一方、マスク202のパターン間のスペース部分では、プラズマに含まれるほかの元素の原子半径と比較して原子半径の小さい水素が入り込み易く、水素が多く滞在していると考えられる。かかるスペース部分に滞在する水素がNやOと結合して、シリコンと結合していたNやOが乖離する。このような水素の還元作用で、マスク202のスペース部分に関して保護膜の成長が抑制され、一方でマスク202の表面では、保護膜の堆積が進行していく。また、
図3D(2)を参照して、想定される第2の現象を説明する。Hと結合して乖離したNやOがHなどと再結合し安定的な分子になることで、保護膜表面に付着することが起こりにくくなる。第1の現象と第2の現象の相乗効果によって、スペース部分に関する保護膜の成長が抑制されていると考えられる。
【0030】
<ソース電力およびバイアス電力の時間変調モード>
また、第2実施形態は、ソース電力およびバイアス電力を時間変調モードにすることも可能である。
【0031】
図4は、本発明の第2実施形態にかかる保護膜形成条件を示す図である。バイアス電力は、ソース電力の時間変調に関連付けて時間変調される。
図4は、ソース電力Wsとバイアス電力Wvのオン(ON)状態とオフ(OFF)状態の関係を示す。ソース電力Wsはパルス状に周期的に供給される。
図4に示されるように、時間t
s1から時間t
s2の間はオン状態の期間(以下、「オン期間」ともいう。)であり、時間t
s2から時間t
s3の間はオフ状態の期間(以下、「オフ期間」ともいう。)であり、時間t
s3から時間t
s4の間はオン期間、というように周期的に供給される。ソース電力のデューティ比Dsは、Ds=(t
s2―t
s1)/(t
s3―t
s1)である。また、バイアス電力もパルス状に周期的に供給され、時間t
v1から時間t
v2の間はオン期間であり、時間t
v2から時間
t
v3
の間は
オフ期間であり、時間
t
v3
から時間
t
v4
の間は
オン期間である。バイアス電力のデューティ比Dvは、Dv=(t
v2―t
v1)/(t
v3―t
v1)である。
図4から明らかなように、バイアス電力のオン期間はソース電力のオン期間に含まれ、バイアス電力のデューティ比Dvはソース電力のデューティ比Dsより小さくなるように設定される。
【0032】
また、
図4に示されるように、ソース電力Wsのオン期間において、バイアス電力Wvがオンになる。ソース電力の周波数とバイアス電力の周波数は同一に設定される。
【0033】
図5Aは、本発明の第2実施形態に係るプラズマ処理方法における保護膜形成ステップ後の被処理基板109の断面の概略図である。保護膜207の厚さw2は、第1実施形態における保護膜204の厚さw1よりも大きく、おおよそ30nmの厚さまで傾きのない保護膜を形成することができた。
【0034】
<作用・効果>
図5Bは、第2実施形態において保護膜207が形成される仕組みを示す概念図である。
図5B(1)は、ソース電力がオン期間となりプラズマが生成される期間中にバイアス電力もオンとし(例として
図4においてt
v1からt
v2の間)、イオンが保護膜207に物理衝突することで保護膜207の表面が平坦化されるように形成される様子を示す。
図5B(2)は、ソース電力がオン期間中にバイアス電力をオフとし(例として
図4においてt
v2からt
s2の間)、等方的に保護膜を付着させる様子を示す。
図5B(3)は、ソース電力がオフ期間にバイアス電力もオフとし(例として
図4においてt
s2からt
s3の間)、保護膜の形成反応を抑えるとともに、過剰にできた反応生成物が付着して成長方向が垂直からずれてしまわないように排気除去する様子を示す。
こうした3つのプロセスが繰り返されることで、傾きなく保護膜207が形成される。その際ソース電力の時間変調とバイアス電力の時間変調が
図4に示されるように関連付けられる。特にソース電力のデューティ比Dsは、バイアス電力のデューティ比Dvよりも大きく設定される。
【0035】
このようにして、第2実施形態によれば、基板表面に平行な方向への保護膜の堆積が抑制されることにより、マスクパターンの開口部208の閉塞を改善し、狭スペースのパターンを選択性良く加工することができる。
【0036】
第1実施形態及び第2実施形態において、マスクパターンの間隔dが15nmである場合を説明した。15nm以下である場合、本願発明に係るプラズマ処理方法が好適に適用される。
【0037】
上記した実施形態は、本発明をわかりやすく説明するために説明したものであり、必ずしも前述に説明した全ての構成を揃えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0039】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態において、
図1に示したマイクロ波ECR方式のプラズマ処理装置を用いたが、CCP(Capacitively Coupled Plasma)方式、ICP(Inductively Coupled Plasma)方式等の他のプラズマ源を用いたプラズマ処理装置においても、圧力やガス流量やガス比、バイアス電力と周波数などを調整することで同様な効果を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0040】
100…プラズマ処理装置、101…処理室、102…チャンバ、103…天板
104…シャワープレート、105…真空排気用ポンプ、107…制御ユニット
108…試料台、109…被処理基板
110…空洞共振部、111…チャンバ、112…導波管
113…磁場発生コイル、114…制御部
115…ソース電力電源、116…バイアス電力電源
117、118…整合器、119…プラズマ
201… ウエハ基板、202…マスク、203…窒化シリコン膜
204、206、207…保護膜、205…トレンチ
208…開口部、209…被処理基板