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  • 特許-環状アジン化合物 図1
  • 特許-環状アジン化合物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】環状アジン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/10 20060101AFI20241029BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20241029BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20241029BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20241029BHJP
【FI】
C07D401/10 CSP
C09K11/06 645
H05B33/14 A
H05B33/22 B
H10K50/10
H10K50/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020101646
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2020203878
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2019109697
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵理子
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0211454(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0089408(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第108840858(CN,A)
【文献】国際公開第2018/164512(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、C09K、H05B、H10K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される環状アジン化合物:
【化1】
式(1)中、
~R10は、それぞれ独立して、
水素原子、
炭素数1~12のアルキル基、
炭素数3~20のシクロアルキル基、
シアノ基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、フェニル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、1-ナフチル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、2-ナフチル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、2-ビフェニル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、3-ビフェニル基、または、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、4-ビフェニル基であり;
、Lは、それぞれ独立して、単結合、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、3,3’-ビフェニレン、4,4’-ビフェニレン、3,4’-ビフェニレンまたは4,3’-ビフェニレンであり;
Pyは式(2-1)、(2-9)、(2-27)、または(2-28)で表される。
【化2】
【請求項2】
~R10は、それぞれ独立して、
水素原子、
炭素数1~12のアルキル基、
炭素数3~20のシクロアルキル基、
シアノ基、または、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、フェニル基である、請求項1に記載の環状アジン化合物。
【請求項3】
~R10は、それぞれ独立して、
水素原子、またはフェニル基である、請求項1に記載の環状アジン化合物。
【請求項4】
は1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,4-ジイル、またはナフタレン-2,6-ジイルであり;
は単結合、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,4-ジイル、またはナフタレン-2,6-ジイルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の環状アジン化合物。
【請求項5】
式(1-1)で表される、請求項1に記載の環状アジン化合物。
【化3】
【請求項6】
式(1-11)、(1-24)、(1-39)、(1-69)、式(1-70)、または(1-73)で表される、請求項1に記載の環状アジン化合物。
【化4】
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の環状アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の環状アジン化合物を含む有機電界発光素子用電子輸送材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状アジン化合物、有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用電子輸送材料に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、小型のディスプレイだけでなく大型テレビや照明等の用途へ用いられており、その開発が精力的に行われている。
例えば特許文献1は、有機電界発光素子用材料として、効率に優れ、低駆動電圧および/または寿命特性に優れた有機電界発光素子の提供に資する、複素環式化合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0089408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の有機電界発光素子に対する市場からの要求は益々高くなり、発光効率/外部量子効率にさらに優れた材料が求められている。
ここで、特許文献1で開示された複素環式化合物を用いた有機電界発光素子は、優れた発光効率を発揮するものの、さらなる改善が求められている。
【0005】
本発明の一態様は、発光効率/外部量子効率の高い有機電界発光素子の作製に資する、環状アジン化合物、ならびに、該環状アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用電子輸送材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる環状アジン化合物は、式(1)で示される環状アジン化合物である:
【0007】
【化1】
【0008】
式(1)中、
~R10は、それぞれ独立して、
水素原子、
炭素数1~12のアルキル基、
炭素数3~20のシクロアルキル基、
シアノ基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、フェニル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、1-ナフチル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、2-ナフチル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、2-ビフェニル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、3-ビフェニル基、または、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、4-ビフェニル基であり;
、Lは、それぞれ独立して、単結合、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、3,3’-ビフェニレン、4,4’-ビフェニレン、3,4’-ビフェニレンまたは4,3’-ビフェニレンであり;
Pyは式(2)で表される基であり;
【0009】
【化2】
【0010】
式(2)中、
11~R14は、それぞれ独立して、Lと結合する単結合、水素原子、メチル基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基、3-ビフェニル基、または4-ビフェニル基であり;
11~R14のうちの1つはLと結合する単結合である。
【0011】
本発明の他の態様にかかる有機電界発光素子用材料は、上記環状アジン化合物を含む。
本発明のさらにその他の態様にかかる有機電界発光素子用電子輸送材料は、上記環状アジン化合物を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、発光効率/外部量子効率の高い有機電界発光素子の作製に資する環状アジン化合物、ならびに、該環状アジン化合物を含む有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用電子輸送材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一態様にかかる環状アジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の一態様にかかる環状アジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の他の一例(素子実施例-1)を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一態様にかかる環状アジン化合物について詳細に説明する。
<環状アジン化合物>
本発明の一態様にかかる環状アジン化合物(以下、「環状アジン化合物(1)」とも称する。)は、式(1)で示される環状アジン化合物である:
【0015】
【化3】
【0016】
式(1)中、
~R10は、それぞれ独立して、
水素原子、
炭素数1~12のアルキル基、
炭素数3~20のシクロアルキル基、
シアノ基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、フェニル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、1-ナフチル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、2-ナフチル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、2-ビフェニル基、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、3-ビフェニル基、または、
炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、もしくは、シアノ基で置換されていてもよい、4-ビフェニル基であり;
、Lは、それぞれ独立して、単結合、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、3,3’-ビフェニレン、4,4’-ビフェニレン、3,4’-ビフェニレンまたは4,3’-ビフェニレンであり;
Pyは式(2)で表される基であり;
【0017】
【化4】
【0018】
式(2)中、
11~R14は、それぞれ独立して、Lと結合する単結合、水素原子、メチル基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-ビフェニル基、3-ビフェニル基、または4-ビフェニル基であり;
11~R14のうちの1つはLと結合する単結合である。
【0019】
環状アジン化合物(1)は、有機電界発光素子(OLED;Organic Light Emitting Diode)の構成成分の一部として用いると、発光効率/外部量子効率の高効率化の効果が得られる。特に、環状アジン化合物(1)を電子輸送層として用いた場合にこの効果がより一層発現する。
【0020】
Pyで表わされる基の具体例としては、以下に示す(2-1)~(2-33)が好ましい例として挙げられる。
【0021】
【化5】
【0022】
【化6】
【0023】
[環状アジン化合物(1)の具体例]
式(1)で示される本発明の一態様にかかる環状アジン化合物のうち、特に好ましい化合物の具体例としては、次の(1-1)から(1-80)が挙げられるが、本発明の一態様にかかる環状アジン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0024】
【化7】
【0025】
【化8】
【0026】
【化9】
【0027】
【化10】
【0028】
【化11】
【0029】
【化12】
【0030】
これらの中でも、式(1-1)、(1-10)、(1-11)、(1-24)、(1-39)、(1-69)、(1-70)、または(1-73)で表される環状アジン化合物が好ましい。
【0031】
次に環状アジン化合物(1)の製造方法について説明する。
環状アジン化合物(1)は、以下の合成経路(i)~(V)に示される方法で製造可能である。
【0032】
【化13】
【0033】
【化14】
【0034】
式(3)~(13)中、
~R10の定義は、式(1)におけるR~R10の定義と同じである;
~Yは、各々独立に、ハロゲン原子またはOTf基(トリフルオロメチルスルホニル基)を表す;
およびLの定義は、式(1)におけるLおよびLの定義と同じである;
Pyは、式(1)におけるPyの定義と同じである;
21は、水素原子、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基を表す;
B(OR21の2つのR21は、同一であっても異なっていてもよい;
2つのOR21と、ホウ素原子と、が環を形成していてもよい。
【0035】
~Yで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することができ、環状アジン化合物(1)の収率がよい点で、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0036】
B(OR21としては、例えば、B(OH)、B(OMe)、B(OiPr)、B(OBu)、B(OPh)等を例示することができる。なお、Meはメチル基、iPrはイソプロピル基、Buはブチル基、Phはフェニル基を示す。
【0037】
2つのOR21と、ホウ素原子と、が環を形成している場合のB(OR21の例としては、例えば、次の式(I)から(VI)で示される基が例示でき、収率がよい点で式(II)で示される基が好ましい。
【0038】
【化15】
【0039】
合成経路(i)~(V)におけるカップリング反応は、式(4)、(5)、(7)、(8)、(11)又は(12)で表されるハロゲン化アリール化合物と、式(3)、(6)、(9)、(10)又は(13)で表されるホウ素化合物とをパラジウム触媒及び塩基存在下に反応させる方法であり、一般的な鈴木-宮浦反応の反応条件を適用することができる。
【0040】
ホウ素化合物は、例えばThe Journal of Organic Chemistry,60巻,7508頁,1995年又はThe Journal of Organic Chemistry,65巻,164頁,2000年に開示されている方法に従い製造することができる。
【0041】
ハロゲン化アリールは、例えばJournal of the American Chemical Society,74巻,6289頁,1952年又はSynlett,808頁,2002年に従い、製造することができる。また、市販品を用いてもよい。ハロゲン化アリールは、反応収率がよい点で、ホウ素化合物に対して0.5~3.0モル当量を用いることが好ましい。
【0042】
合成経路(i)及び(ii)におけるホウ素化反応は、式(5)で表されるハロゲン化アリール化合物を、パラジウム触媒及び塩基存在下でホウ素原料(例えばピナコラートボラン、ビスピナコラートジボロンなど)を反応させて式(6)で表されるホウ素化合物を製造する方法である。これらのホウ素化合物は、例えばThe Journal of Organic Chemistry,60巻,7508頁,1995年又はTetrahedron Letters,38巻,3447頁,1997年に開示されている方法に従い製造することができる。
【0043】
前述のカップリング反応及びホウ素化反応に用いるパラジウム触媒としては、例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、硝酸パラジウム等のパラジウム塩が挙げられる。さらに、π-アリルパラジウムクロリドダイマー、パラジウムアセチルアセトナト、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム等の錯化合物;及び、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロ(1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウム、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム等の第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体;が挙げられる。これらはパラジウム塩又は錯化合物に第三級ホスフィンを添加し、反応系中で調製することもできる。
【0044】
第三級ホスフィンとしては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン、トリシクロへキシルホスフィン、tert-ブチルジフェニルホスフィン、9,9-ジメチル-4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)キサンテン、2-(ジフェニルホスフィノ)-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジシクロへキシルホスフィノ)ビフェニル、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、トリ(2-フリル)ホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィン、トリス(2,5-キシリル)ホスフィン、(±)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等が挙げられる。
【0045】
中でも、第三級ホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体が、収率がよい点で好ましく、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル又はトリシクロヘキシルホスフィンを配位子として有するパラジウム錯体がさらに好ましい。
【0046】
第三級ホスフィンとパラジウム塩又は錯化合物とのモル比は1:10~10:1の範囲であることが好ましく、収率がよい点で1:2~3:1の範囲であることがさらに好ましい。前述のカップリング反応及びホウ素化反応で用いるパラジウム触媒の量に制限はないが、収率がよい点で、パラジウム触媒のモル当量はホウ素化合物に対して0.005~0.5モル当量の範囲にあることが好ましい。
【0047】
前述のカップリング反応及びホウ素化反応に用いる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等の金属炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等の金属酢酸塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等の金属リン酸塩、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の金属フッ化物塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロピルオキシド、カリウムtert-ブトキシド等の金属アルコキシド等を挙げることができる。中でも反応収率がよい点で、金属炭酸塩又は金属リン酸塩が好ましく、炭酸カリウム又はリン酸カリウムがさらに好ましい。用いる塩基の量に特に制限はない。反応収率がよい点で、塩基とホウ素化合物とのモル比は、1:2~10:1の範囲であることが好ましく、1:1~4:1の範囲であることがさらに好ましい。
【0048】
前述のカップリング反応及びホウ素化反応は溶媒中で実施することができる。
【0049】
溶媒としては、水、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド;N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア;ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール;等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよく、任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応収率がよい点で水、エーテル、アミド、アルコール、及びこれらの混合溶媒が好ましく、THFと水との混合溶媒、または、トルエンと1-ブタノールとの混合溶媒がさらに好ましい。
【0050】
前述のカップリング反応及びホウ素化反応は、0℃~200℃から適宜選択された温度にて実施することができ、反応収率がよい点で60℃~160℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましい。
【0051】
前述のカップリング反応及びホウ素化反応は、反応の終了後に再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華精製、分取HPLCなどの一般的な精製処理を必要に応じて適宜組み合わせることによって、目的物を得ることができる。
【0052】
以下、環状アジン化合物(1)の用途について説明する。
<有機電界発光素子用材料、有機電界発光素子用電子輸送材料>
環状アジン化合物(1)は、例えば、有機電界発光素子用材料として用いることができる。また、環状アジン化合物(1)は、例えば、有機電界発光素子用電子輸送材料として用いることができる。
すなわち、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子用材料は、環状アジン化合物(1)を含む。また、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子用電子輸送材料は、環状アジン化合物(1)を含む。環状アジン化合物(1)を含む有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用電子輸送材料は、発光効率/外部量子効率の高い有機電界発光素子の作製に資するものである。
【0053】
<有機電界発光素子>
本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、環状アジン化合物(1)を含む。
【0054】
有機電界発光素子の構成については特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す(i)~(vi)の構成が挙げられる。
(i):陽極/発光層/陰極
(ii):陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(iii):陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iv):陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(v):陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi):陽極/正孔注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
以下、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子を、上記(vi)の構成を例に挙げて、図1を参照しながらより詳細に説明する。
【0055】
図1は、本発明の一態様にかかる環状アジン化合物を含む有機電界発光素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
なお、図1に示す有機電界発光素子は、いわゆるボトムエミッション型の素子構成を有するものであるが、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子はボトムエミッション型の素子構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、トップエミッション型の素子構成であってもよく、その他の公知の素子構成であってもよい。
【0056】
有機電界発光素子100は、基板1、陽極2、正孔注入層3、電荷発生層4、正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、および陰極8をこの順で備える。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。例えば、電子輸送層7と陰極8との間に電子注入層が設けられていてもよく、電荷発生層4が省略され、正孔注入層3上に正孔輸送層5が直接設けられていてもよい。また、例えば電子注入層の機能と電子輸送層の機能とを単一の層で併せ持つ電子注入・輸送層のような、複数の層が有する機能を併せ持った単一の層を、当該複数の層の代わりに備えた構成であってもよい。さらに、例えば単層の正孔輸送層5、単層の電子輸送層7が、それぞれ複数層からなっていてもよい。
【0057】
[式(1)で表される環状アジン化合物を含む層]
有機電界発光素子は、発光層、および、該発光層と陰極との間の層からなる群より選ばれる1層以上に上記式(1)で示される環状アジン化合物を含む。したがって、図1に示される構成例において有機電界発光素子100は、発光層6および電子輸送層7からなる群より選ばれる少なくとも1層に環状アジン化合物(1)を含む。特に、電子輸送層7が環状アジン化合物(1)を含むことが好ましい。なお、環状アジン化合物(1)は、有機電界発光素子が備える複数の層に含まれていてもよく、電子輸送層と陰極との間に電子注入層が設けられている場合、電子注入層が環状アジン化合物(1)を含んでいてもよい。
なお、以下においては、電子輸送層7が環状アジン化合物(1)を含む有機電界発光素子100について説明する。
【0058】
[基板1]
基板としては特に限定はなく、例えばガラス板、石英板、プラスチック板、プラスチックフィルムなどが挙げられる。また、基板1側から発光が取り出される構成の場合、基板1は光の波長に対して透明である。
光透過性を有するプラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
【0059】
[陽極2]
基板1上(正孔注入層3側)には陽極2が設けられている。
発光が陽極を通過して取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陽極は当該発光を通すかまたは実質的に通す材料で形成される。
陽極に用いられる透明材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、および硫化亜鉛等の金属硫化物などが挙げられる。
なお、陰極側のみから光を取り出す構成の有機電界発光素子の場合、陽極の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の陽極に用いられる材料の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等が挙げられる。
陽極上には、バッファー層(電極界面層)を設けてもよい。
【0060】
[正孔注入層3、正孔輸送層5]
陽極2と後述する発光層6との間には、陽極2側から、正孔注入層3、後述する電荷発生層4、正孔輸送層5がこの順で設けられている。
正孔注入層、正孔輸送層は、陽極より注入された正孔を発光層に伝達する機能を有し、この正孔注入層、正孔輸送層を陽極と発光層との間に介在させることによって、より低い電界で多くの正孔が発光層に注入される。
【0061】
また、正孔注入層、正孔輸送層は、電子障壁性の層としても機能する。すなわち、陰極から注入され、電子注入層および/または電子輸送層から発光層に輸送された電子は、発光層と正孔注入層および/または正孔輸送層との界面に存在する電子の障壁により、正孔注入層および/または正孔輸送層に漏れることが抑制される。その結果、該電子が発光層内の界面に累積され、発光効率が向上する等の効果をもたらし、発光性能の優れた有機電界発光素子が得られる。
【0062】
正孔注入層、正孔輸送層の材料としては、正孔注入性、正孔輸送性、電子障壁性の少なくともいずれかを有するものである。正孔注入層、正孔輸送層の材料は、有機物、無機物のいずれであってもよい。
【0063】
正孔注入層、正孔輸送層の材料の具体例としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物などが挙げられる。これらの中でも、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物が好ましく、特に芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
【0064】
芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノフェニル、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-〔1,1’-ビフェニル〕-4,4’-ジアミン(TPD)、2,2-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(4-メトキシフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N-トリ(p-トリル)アミン、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-〔4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4-N,N-ジフェニルアミノ-(2-ジフェニルビニル)ベンゼン、3-メトキシ-4’-N,N-ジフェニルアミノスチルベンゼン、N-フェニルカルバゾール、4,4’-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、4,4’,4’’-トリス〔N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)などが挙げられる。
【0065】
また、p型-Si、p型-SiCなどの無機化合物も正孔注入層の材料、正孔輸送層の材料の一例として挙げることができる。
【0066】
正孔注入層、正孔輸送層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0067】
[電荷発生層4]
正孔注入層3と正孔輸送層5との間には、電荷発生層4が設けられていてもよい。
電荷発生層の材料としては特に制限はないが、例えば、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)が挙げられる。
電荷発生層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0068】
[発光層6]
正孔輸送層5と後述する電子輸送層7との間には、発光層6が設けられている。
【0069】
発光層の材料としては、燐光発光材料、蛍光発光材料、熱活性化遅延蛍光発光材料が挙げられる。発光層では電子・正孔対が再結合し、その結果として発光が生じる。
【0070】
発光層は、単一の低分子材料または単一のポリマー材料からなっていてもよいが、より一般的には、ゲスト化合物でドーピングされたホスト材料からなっている。発光は主としてドーパントから生じ、任意の色を有することができる。
【0071】
ホスト材料としては、例えば、ビフェニル基、フルオレニル基、トリフェニルシリル基、カルバゾール基、ピレニル基、アントリル基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、DPVBi(4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)-1,1’-ビフェニル)、BCzVBi(4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)1,1’-ビフェニル)、TBADN(2-ターシャルブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、ADN(9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン)、CBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、CDBP(4,4’-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2’-ジメチルビフェニル)、2-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-9-[4-(4-フェニルフェニルキナゾリン-2-イル)カルバゾール、9,10-ビス(ビフェニル)アントラセン等が挙げられる。
【0072】
蛍光ドーパントとしては、例えば、アントラセン、ピレン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドン、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物、等が挙げられる。蛍光ドーパントはこれらから選ばれる2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0073】
燐光ドーパントとしては、例えば、イリジウム、白金、パラジウム、オスミウム等の遷移金属の有機金属錯体が挙げられる。
【0074】
蛍光ドーパント、燐光ドーパントの具体例としては、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム)、DPAVBi(4,4’-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル)、ペリレン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトナート)イリジウム(III)、Ir(PPy)3(トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III))、及びFIrPic(ビス(3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)イリジウム(III)))等が挙げられる。
【0075】
また、発光材料は発光層のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、発光材料は、発光層に隣接した層(正孔輸送層5、または電子輸送層7)が含有していてもよい。これによってさらに有機電界発光素子の発光効率/外部量子効率を高めることができる。
【0076】
発光層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0077】
[電子輸送層7]
発光層6と後述する陰極8との間には、電子輸送層7が設けられている。
電子輸送層は、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有する。電子輸送層を陰極と発光層との間に介在させることによって、電子がより低い電界で発光層に注入される。
【0078】
電子輸送層は、前述したとおり、環状アジン化合物(1)を含むことが好ましい。
また、電子輸送層は、環状アジン化合物(1)に加えてさらに従来公知の電子輸送材料を含んでいてもよい。
なお、環状アジン化合物(1)が電子輸送層に含まれず、他の層に含まれる場合は、従来公知の電子輸送材料から選ばれる1種以上を、電子輸送層を構成する電子輸送材料として用いることができる。
【0079】
従来公知の電子輸送材料としては、例えば、8-ヒドロキシキノリナートリチウム(Liq)、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナート)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)(o-クレゾラート)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナート)-1-ナフトラートアルミニウム、またはビス(2-メチル-8-キノリナート)-2-ナフトラートガリウム、2-[3-(9-フェナントレニル)-5-(3-ピリジニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、および2-(4,’’-ジ-2-ピリジニル[1,1’:3’,1’’-テルフェニル]-5-イル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、およびビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム)等が挙げられる。
【0080】
電子輸送層は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0081】
電子輸送層が、発光層側を第一電子輸送層、陰極側を第二電子輸送層とする二層構造である場合、第一電子輸送層が環状アジン化合物(1)を含むことが好ましい。
【0082】
[陰極8]
電子輸送層7上には陰極8が設けられている。
陽極を通過した発光のみが取り出される構成の有機電界発光素子の場合、陰極は任意の導電性材料から形成することができる。
【0083】
陰極の材料としては、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
【0084】
陰極上(電子輸送層側)には、バッファー層(電極界面層)を設けてもよい。
【0085】
[各層の形成方法]
以上説明した電極(陽極、陰極)を除く各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて結着樹脂などの材料、溶剤と共に)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法などの公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm~5μmの範囲である。
【0086】
陽極および陰極は、電極材料を蒸着やスパッタリングなどの方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリングなどによって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
陽極および陰極の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0087】
本発明の一態様にかかる有機電界発光素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また、異なる発光色を有する本態様の有機電界発光素子を2種以上使用することにより、フルカラー表示装置を作製することが可能である。
なお、本発明の一態様にかかる環状アジン化合物は、既知の反応(例えば、鈴木-宮浦クロスカップリング反応など)を適切に組み合わせることにより合成可能である。
【0088】
以上の本発明の一態様によれば、発光効率/外部量子効率の高い有機電界発光素子を提供することができる。
【実施例
【0089】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0090】
H-NMR測定]
H-NMR測定は、Gemini200(バリアン社製)を用いて行った。
[ガラス転移温度測定]
ガラス転移温度測定は、DSC7020(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて行った。
【0091】
[合成実施例-1]
【化16】
【0092】
窒素雰囲気下、3-ブロモ-2,6-ルチジン(12.0g,64.5mmol)をシクロペンチルメチルエーテル(脱水)(130ml)に溶解させ、ドライアイス-エタノールバスで冷却した。この溶液に1.55Mのn-ブチルリチウム(49.9ml)をゆっくり滴下し、滴下が終了した後、更に30分間撹拌し、(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)ジクロリド(19.5g)を添加した。室温で30分撹拌した後、1-ブロモ-4-ヨードベンゼン(23.7g)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1.4g)を加え、70℃で2時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、トルエンを加えて吸引濾過し、不溶物を除去した。得られた溶液を減圧留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液:トルエン/酢酸エチル=4/1)で精製し、更にヘキサンから再結晶させることで3-(4-ブロモフェニル)-2,6-ジメチルピリジン(9.1g)を得た。
【0093】
2,4-ジフェニル-6-[4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-ナフタレン]フェニル]-1,3,5-トリアジン(6.0g)および3-(4-ブロモフェニル)-2,6-ジメチルピリジン(3.4g)をTHF(61ml)に溶解した。これに2.0M-リン酸三カリウム水溶液(19ml)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.37g)を加え、70℃で20時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、水を加えて析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水、エタノールで洗浄した後、トルエン(150mL)に溶解し、活性炭(500mg)を加えて110℃で1時間半加熱撹拌した。セライトを敷いた桐山ロートで吸引濾過することで活性炭を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた固体をトルエンから再結晶させることで、化合物(1-1)の白色固体(収量3.9g,収率54%)を得た。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.95(d,2H),8.84(d,4H),8.07(m,2H),7.79(d,2H),7.45-7.65(m,15H),7.11(d,1H),2.71(s,6H)
【0094】
[合成実施例-2]
【化17】
【0095】
2-[4-(4-クロロ-1-ナフタレニル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(7.6g)および2-メチル-6-フェニル-4-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-フェニル]-ピリジン(7.2g)をTHF(158ml)に溶解した。これに2.0M-リン酸三カリウム水溶液(25ml)、酢酸パラジウム(0.11g)および2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(X-Phos)(0.46g)を加え、70℃で14.5時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、水を加えて析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水、アセトンで洗浄した後、トルエン(600mL)に溶解させ、活性炭(1g)を加えて100℃で2時間加熱撹拌した。セライトを敷いた桐山ロートで吸引濾過することで活性炭を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた固体をアセトンで洗浄することで、化合物(1-69)の白色固体(収量5.3g,収率48%)を得た。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.95(d,2H),8.84(d,4H),8.05(m,4H),7.89(s,1H),7.80(m,4H)7.57-7.69(m,10H),7.45-7.55(m,4H),7.42(m,2H),2.74(s,3H)
【0096】
[合成実施例-3]
【化18】
【0097】
2,4-ジフェニル-6-[4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-ナフタレン]フェニル]-1,3,5-トリアジン(9.0g)および3-ブロモ-2-メチル-6-(1-ナフチル)-ピリジン(5.3g)をTHF(160ml)に溶解した。これに2.0M-リン酸三カリウム水溶液(25ml)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.37g)を加え、70℃で40時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、溶媒を留去することで析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水、エタノールで洗浄した後、クロロベンゼン(300mL)に溶解させ、活性炭(1.3g)を加えて100℃で2時間加熱撹拌した。セライトを敷いた桐山ロートで吸引濾過することで活性炭を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた固体をクロロベンゼンから再結晶させることで、化合物(1-10)の白色固体(収量6.1g,収率58%)を得た。ガラス転移温度(Tg)は106℃であった。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.96(d,2H),8.85(m,4H),8.29(m,1H),8.10(m,1H),7.96(m,2H),7.82(d,2H),7.77(m,2H),7,50-7.73(m,15H),2.49(s,3H)
【0098】
[合成実施例-4]
【化19】
【0099】
2,4-ジフェニル-6-[4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-ナフタレン]フェニル]-1,3,5-トリアジン(10.0g)および3-ブロモ-2-メチル-6-(2-ナフチル)-ピリジン(5.8g)をTHF(178ml)に溶解した。これに2.0M-リン酸三カリウム水溶液(27ml)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.60g)を加え、70℃で30.5時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、水を加えて析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水、エタノールで洗浄した後、クロロベンゼン(300mL)に溶解させ、活性炭(1.3g)を加えて140℃で2時間加熱撹拌した。セライトを敷いた桐山ロートで吸引濾過することで活性炭を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた固体をトルエンから再結晶させることで、化合物(1-11)の白色固体(収量8.5g,収率73%)を得た。ガラス転移温度(Tg)は121℃であった。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.96(d,2H),8.85(m,4H),8.63(m,1H),8.29(d,1H),8.09(m,1H),8.01(m,2H),7.86-7.95(m,2H),7.81(d,2H),7.75(d,1H),7,58-7.69(m,8H),7.46-7.58(m,5H),2.50(s,3H)
【0100】
[合成実施例-5]
【化20】
【0101】
2,4-ジフェニル-6-[4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-ナフタレン]フェニル]-1,3,5-トリアジン(10.0g)および6-(2,6-ジメチルピリジン-3-イル)ナフタレン-2-イル トリフルオロメタンスルホナート(10.2g)をTHF(178ml)に溶解した。これに2.0M-リン酸三カリウム水溶液(27ml)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.42g)を加え、70℃で7時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、水を加えて析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水、エタノールで洗浄した後、トルエン(300mL)に溶解させ、活性炭(2g)を加えて120℃で2時間加熱撹拌した。セライトを敷いた桐山ロートで吸引濾過することで活性炭を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた固体をトルエンから再結晶させることで、化合物(1-70)の白色固体(収量9.6g,収率81%)を得た。ガラス転移温度(Tg)は116℃であった。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.95(d,2H),8.84(d,4H),7.96-8.12(m,5H),7.88(m,1H),7.80(d,2H),7.76(m,1H),7.46-7.68(m,12H),7,13(d,1H),2.64(s,3H),2.60(s,3H)
【0102】
[合成実施例-6]
【化21】
【0103】
2,4-ジフェニル-6-[4-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-ナフタレン]フェニル]-1,3,5-トリアジン(10.0g)および4-(ブロモフェニル)-2,6-ジメチルピリジン(5.1g)をTHF(178ml)に溶解した。これに2.0M-炭酸カリウム水溶液(27ml)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.42g)を加え、70℃で64.5時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、水を加えて析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水、エタノールで洗浄した後、トルエン(300mL)に溶解させ、活性炭(1.1g)を加えて120℃で2時間加熱撹拌した。セライトを敷いた桐山ロートで吸引濾過することで活性炭を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた固体をトルエンから再結晶させることで、化合物(1-24)の白色固体(収量7.0g,収率64%)を得た。ガラス転移温度(Tg)は112℃であった。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):8.94(d,2H),8.83(m,4H),8.00-8.11(m,2H),7.75-7.83(m,4H),7.47-7.71(m,12H),7.31(br,2H),2.65(s,6H)
【0104】
[合成実施例-7]
【化22】
【0105】
2-クロロ-4,6-ジ(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン(3.0g)および4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-ナフチル-2,6-ジメチル-3-ピリジン(2.8g)をTHF(71ml)に溶解した。これに2.0M-炭酸カリウム水溶液(11ml)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.17g)を加え、70℃で17.5時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、水を加えて析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水、エタノールで洗浄した後、トルエン(150mL)に溶解させ、活性炭(1g)を加えて120℃で2時間加熱撹拌した。セライトを敷いた桐山ロートで吸引濾過することで活性炭を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた固体をトルエン(30ml)に溶解させ、ノルマルブタノール(30ml)を添加することで再沈殿させ、化合物(1-39)の白色固体(収量3.8g,収率86%)を得た。ガラス転移温度(Tg)は114℃であった。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):9.22(d,1H),8.89(d,4H),8.57(d,1H),7.84(d,4H),7.73(m,4H)7.68(m,1H),7.48-7.61(m,8H),7.43(m,2H),7.18(d,1H),2.69(s,3H),2.34(s,3H)
【0106】
[合成実施例-8]
【化23】
【0107】
2-クロロ-4,6-ジ(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン(2.2g)および4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-ナフチル-2,6-ジメチル-4-ピリジン(2.8g)をTHF(47ml)に溶解した。これに2.0M-炭酸カリウム水溶液(8ml)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.18g)を加え、70℃で48時間加熱撹拌した。室温まで冷却した後、水を加えて析出した固体を吸引濾過にて採取した。得られた固体を水、アセトンで洗浄した後、トルエン(100mL)に溶解させ、活性炭(0.5g)を加えて100℃で2時間加熱撹拌した。セライトを敷いた桐山ロートで吸引濾過することで活性炭を濾別し、濾液を減圧留去した。得られた固体をトルエン(25ml)から再結晶させることで、化合物(1-73)の白色固体(収量2.8g,収率87%)を得た。ガラス転移温度(Tg)は111℃であった。
H-NMR(CDCl)δ(ppm):9.20(d,1H),8.87(d,4H),8.53(d,1H),7.94(d,1H),7.83(d,4H)7.66-7.75(m,5H),7.55-7.60(m,2H),7.48-7.54(m,4H),7.40-7.46(m,2H),7,16(br,2H)2.67(s,6H)
【0108】
次に素子評価について記載する。
[素子実施例-1(図2参照)]
【0109】
(基板101、陽極102の用意)
陽極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0110】
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に前記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
【0111】
(正孔注入層103の作製)
昇華精製したN-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミンと1,2,3-トリス[(4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)メチレン]シクロプロパンを0.15nm/秒の速度で55nm成膜し、正孔注入層を作製した。
【0112】
(第一正孔輸送層1051の作製)
N-[1,1’-ビフェニル]-4-イル-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミンを0.15nm/秒の速度で10nm成膜し、第一正孔輸送層を作製した。
【0113】
(第二正孔輸送層1052の作製)
N-フェニル-N-(9,9-ジフェニルフルオレン-2-イル)-N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミンを0.15nm/秒の速度で10nm成膜し、第二正孔輸送層を作製した。
【0114】
(発光層106の作製)
3-(10-フェニル-9-アントリル)-ジベンゾフランと2,7-ビス[N,N-ジ-(4-tertブチルフェニル)]アミノ-ビスベンゾフラノ-9,9’-スピロフルオレンを95:5(質量比)の割合で25nm成膜し、発光層を作製した。成膜速度は0.18nm/秒であった。
【0115】
(第一電子輸送層1071の作製)
4,6-ジフェニル-2-(3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-1,1’-ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジンを0.15nm/秒の速度で5nm成膜し、第一電子輸送層71を作製した。
【0116】
(第二電子輸送層1072の作製)
昇華精製した化合物(1-1)および8-ヒドロキシキノリノラートリチウム(以下、Liq)を50:50(質量比)の割合で25nm成膜し、第二電子輸送層71を作製した。成膜速度は0.15nm/秒であった。
【0117】
(陰極108の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直交するようにメタルマスクを配し、陰極8を成膜した。陰極は、銀/マグネシウム(質量比1/10)と銀とを、この順番で、それぞれ80nmと20nmとで成膜し、2層構造とした。銀/マグネシウムの成膜速度は0.5nm/秒、銀の成膜速度は成膜速度0.2nm/秒であった。
【0118】
以上により、図2に示すような発光面積4mm有機電界発光素子100を作製した。なお、それぞれの膜厚は、触針式膜厚測定計(DEKTAK、Bruker社製)で測定した。
【0119】
さらに、この素子を酸素および水分濃度1ppm以下の窒素雰囲気グローブボックス内で封止した。封止は、ガラス製の封止キャップと成膜基板(素子)とを、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製)を用いて行った。
【0120】
上記のようにして作製した有機電界発光素子に直流電流を印加し、輝度計(製品名:BM-9、トプコンテクノハウス社製)を用いて発光特性を評価した。発光特性として、電流密度10mA/cmを流した時の外部量子効率(%)を測定した。尚、外部量子収率とは、実際に素子外部に放出される単位時間あたりの光量子数と素子に流れる電流すなわち単位時間あたり素子を流れる電子数との比で定義される。得られた測定結果を表1に示す。
【0121】
[素子実施例-2]
素子実施例-1において、化合物(1-1)の代わりに、合成実施例-2で合成した化合物(1-69)を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
【0122】
[素子実施例-3]
素子実施例-1において、化合物(1-1)の代わりに、合成実施例-4で合成した化合物(1-11)を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
【0123】
[素子実施例-4]
素子実施例-1において、化合物(1-1)の代わりに、合成実施例-6で合成した化合物(1-24)を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
【0124】
[素子実施例-5]
素子実施例-1において、化合物(1-1)の代わりに、合成実施例-7で合成した化合物(1-39)を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
【0125】
[素子参考例-1]
素子実施例-1において、韓国公開特許第10-2017-0089408号公報に開示されている化合物4,6-ジフェニル-2-[4-[4-[4-(3-ピリジニル)フェニル]-1-ナフタレニル]フェニル]-1,3,5-トリアジン(化合物 ETL-1)を用いた以外は、素子実施例-1と同じ方法で有機電界発光素子を作製し、評価した。得られた測定結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
素子実施例-1によれば、素子参考例-1と比較して極めて優れた外部量子効率を示す有機電界発光素子が得られた。
したがって、本発明の一態様にかかる環状アジン化合物は、発光効率/外部量子効率の高い有機電界発光素子の作製に資する有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子用電子輸送材料に利用できる。さらに、本発明の一態様にかかる環状アジン化合物によれば、発光効率/外部量子効率の高い有機電界発光素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0128】
1,101 基板
2,102 陽極
3,103 正孔注入層
4 電荷発生層
5,105 正孔輸送層
6,106 発光層
7,107 電子輸送層
8,108 陰極
51,1051 第一正孔輸送層
52,1052 第二正孔輸送層
71,1071 第一電子輸送層
72,1072 第二電子輸送層
100 有機電界発光素子
図1
図2