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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】冷却装置、冷却装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20241029BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241029BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20241029BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H05K7/20 N
B23K15/00 501
B23K26/21 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020174584
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065844
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173598
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 桜子
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊典
(72)【発明者】
【氏名】伊川 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】岸 正幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 智哉
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-161146(JP,A)
【文献】特開2013-84936(JP,A)
【文献】特開平7-226463(JP,A)
【文献】特開2007-36094(JP,A)
【文献】特開2010-194545(JP,A)
【文献】特開2014-100714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 15/00
B23K 26/21
H05K 7/20
H01L 23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有する第1部材と、
前記第1部材とともに冷却媒体が流通する空間を形成するように当該第1部材に接合される第2部材と、
を有し、
前記第2部材が前記第1部材の上に載せられた状態で溶接され、当該第1部材における前記空間側の面と当該第2部材における当該空間側の面とが交わる部位は、溶融部が形成されているとともに、当該溶融部は、当該空間へ突出した凸部を有し、当該凸部の当該空間内の形状がR形状となっている
冷却装置。
【請求項2】
前記溶接は、レーザ溶接又は電子ビーム溶接である
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第2部材における前記第1部材とは反対側からレーザ光又はビームが照射されている
請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記第2部材は、前記第1部材よりも溶接性が良い材料にて成形されている
請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1部材及び前記第2部材は、アルミニウム合金又はアルミニウム合金のブレージングシートにて成形されている
請求項3又は4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記第2部材は、平板状であり、前記第1部材の側壁に板面が直交するように載せられ、
前記第2部材における前記第1部材とは反対側の面にレーザ光又は電子ビームが照射されている
請求項2から5のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項7】
凹部を有する第1部材の上に、当該第1部材とともに冷却媒体が流通する空間を形成する第2部材を載せ、
前記第2部材における前記第1部材とは反対側からレーザ光又は電子ビームを照射する冷却装置の製造方法であって、
前記第2部材は平板状であり、前記第1部材の側壁に板面が直交するように当該第2部材を載せ、
前記第2部材における前記第1部材とは反対側の面における、前記側壁の内面の延長線上の部位を、目標の位置として、前記レーザ光又は前記電子ビームを照射する
冷却装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、冷却装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載された冷却装置は、四角形の放熱基板とジャケットとにより冷却媒体流通空間が形成される冷却器を備えている。放熱基板は中央部に多数のフィンが一体に立設され、フィン群の周囲がフランジとなされている。ジャケットは、フィン群を収容する凹部を有する箱型である。放熱基板をジャケットに被せ、凹部にフィン群を収容して放熱基板で凹部の開口部を閉じる。冷却器は、放熱基板とジャケットとの接合部位にろう材を介在させて組み立て、組み立て物をろう付加熱することにより作製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-220539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された冷却装置においては、放熱基板とジャケットとの間の接合部位が角部になり、当該角部に応力が集中するおそれがある。それゆえ、当該冷却装置が例えば振動が生じる場所に設置されている場合には、応力が繰り返して集中し、耐久性が低いという点で、さらなる改善の余地があった。
本発明は、耐久性を向上させることができる冷却装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、凹部を有する第1部材と、前記第1部材とともに冷却媒体が流通する空間を形成するように当該第1部材に接合される第2部材と、を有し、前記第2部材が前記第1部材の上に載せられた状態で溶接され、当該第1部材における前記空間側の面と当該第2部材における当該空間側の面とが交わる部位は、溶融部が形成されR形状となっている冷却装置である。
ここで、前記溶接は、レーザ溶接又は電子ビーム溶接であっても良い。
また、前記第2部材における前記第1部材とは反対側からレーザ光又はビームが照射されていても良い。
また、前記第2部材は、前記第1部材よりも溶接性が良い材料にて成形されていても良い。
また、前記第1部材及び前記第2部材は、アルミニウム合金又はアルミニウム合金のブレージングシートにて成形されていても良い。
また、前記第2部材は、平板状であり、前記第1部材の側壁に板面が直交するように載せられ、前記第2部材における前記第1部材とは反対側の面にレーザ光又は電子ビームが照射されていても良い。
また、他の観点から捉えると、本発明は、凹部を有する第1部材の上に、当該第1部材とともに冷却媒体が流通する空間を形成する第2部材を載せ、前記第2部材における前記第1部材とは反対側からレーザ光又は電子ビームを照射する冷却装置の製造方法である。
ここで、前記第2部材は平板状であり、前記第1部材の側壁に板面が直交するように当該第2部材を載せ、前記第2部材における前記第1部材とは反対側の面に前記レーザ光又は前記電子ビームを照射しても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐久性を向上させることができる冷却装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る冷却装置を構成する部品を分解した図の一例である。
図2】冷却装置の断面の一例を示す図である。
図3】ケース本体とカバーとを接合する様子の一例を示す図である。
図4】溶接部が成形される過程の一例を示す図である。
図5】溶接部の他の例を示す図である。
図6】溶接部の他の例を示す図である。
図7】実際の照射部位が目標照射部位からカバー側にずれた場合の溶接部の一例を示す図である。
図8】実際の照射部位が目標照射部位からケース本体側にずれた場合の溶接部が成形される過程の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
図1は、実施の形態に係る冷却装置1を構成する部品を分解した図の一例である。
図2は、冷却装置1の断面の一例を示す図である。
実施の形態に係る冷却装置1は、フィン12を有するヒートシンク10と、ヒートシンク10を収容するとともに、冷却液が流通する空間を形成するケース20とを備えている。冷却装置1は、発熱体の一例としての半導体モジュール5を、冷却液及びヒートシンク10を用いて冷却する液冷式冷却装置である。
【0009】
(ケース20)
ケース20は、有底凹状のケース本体21と、ケース本体21の開口部を覆うカバー22と、を備えている。また、ケース20は、ケース20内に冷却液を流入させる流入管25と、ケース20内から冷却液を流出させる流出管26とを備えている。
【0010】
ケース本体21は、平板状の矩形の底部31と、底部31における周囲の端部から底部31の板面に直交する方向に突出した4つの側壁32とを有している。そして、ケース本体21は、底部31と、4つの側壁32とで形成された凹部33を有している。
4つの側壁32の内の第1側壁321には、第1側壁321を貫通する第1貫通孔323が形成されている。また、4つの側壁32の内の、第1側壁321に対向する第2側壁322には、第2側壁322を貫通する第2貫通孔324が形成されている。第1貫通孔323には、流入管25が嵌め込まれ、第2貫通孔324には、流出管26が嵌め込まれている。
【0011】
カバー22は、平板状の部材である。カバー22におけるケース本体21側の面である内面222には、ヒートシンク10が接合されている。この接合方法については後で詳述する。
一方、カバー22における内面222とは反対側の面である外面223には、半導体モジュール5が接合されている。
ここで、半導体モジュール5は、絶縁基板51と、絶縁基板51上に設けられた配線層52と、配線層52に、はんだ層54を介して装着された半導体素子53とを有している。また、半導体モジュール5は、絶縁基板51からの熱を冷却装置1に伝達する伝熱層55を有している。
そして、半導体モジュール5は、伝熱層55がカバー22の外面223に接合されている。伝熱層55とカバー22とを接合する手法としては、ろう付、はんだ付け、シンタリング(焼結)、樹脂による接着、熱伝導グリスによる貼り付け等を例示することができる。
【0012】
(ヒートシンク10)
ヒートシンク10は、平板状の平板状部11と、平板状部11から板面に直交する方向に突出した複数のフィン12とを有している。
フィン12は、平板状部11からの突出方向が柱方向となる柱状であることを例示することができる。そして、フィン12における突出方向に直交する面で切断した形状(以下、「断面形状」と称する場合がある。)は、円や楕円であることを例示することができる。また、断面形状は、正方形、長方形、ひし形等の四角形であることを例示することができる。また、フィン12は、平板状であっても良い。平板状である場合には、流入管25から流出管26への方向に平行であっても良いし、流入管25から流出管26への方向に傾斜した部位を有する波状であっても良い。
【0013】
ヒートシンク10は、鍛造にて成形されることを例示することができる。また、ヒートシンク10の材質は、A1100等の純アルミニウムのA1000系や、銅であることを例示することができる。
ヒートシンク10は、カバー22の内面222に接合されている。ヒートシンク10とカバー22との接合は、圧着、接着、ろう付、レーザ溶接、電子ビーム溶接であることを例示することができる。
【0014】
以上のように構成された冷却装置1と半導体モジュール5とは、以下のように組み立てられる。
先ず、カバー22と半導体モジュール5とを接合する。また、カバー22とヒートシンク10と接合する。
そして、ヒートシンク10及び半導体モジュール5が接合されたカバー22を、半導体モジュール5が外部に位置し、ヒートシンク10がケース20の内部に収容されるように、ケース本体21に被せ、ケース本体21の開口部をカバー22で覆う。
その後、ケース本体21とカバー22とをレーザ溶接又は電子ビーム溶接にて接合する。
これにより、ヒートシンク10、カバー22、及び、ケース本体21にて囲まれた空間に冷却液が流通する流通空間35が形成される。
【0015】
次に、ケース本体21とカバー22とを接合する方法について説明する。
図3は、ケース本体21とカバー22とを接合する様子の一例を示す図である。
図4は、溶接部40が成形される過程の一例を示す図である。
図3に示すように、ケース本体21の4つの側壁32の上にカバー22を載せる。そして、カバー22の外面223に対して、レーザ装置150のレーザヘッド151からレーザ光Lを照射する。そして、ケース本体21の4つの側壁32の上端面320の形状に沿ってレーザヘッド151を移動させることで、レーザ光Lを連続的に照射し、半導体モジュール5の周囲に溶接部40を形成する。
【0016】
カバー22に対してレーザ光Lが照射されると、レーザ光Lのエネルギーが熱に変換されることによって、カバー22とケース本体21の母材自体が溶融し、その後急速に冷却される。この急速加熱・急速冷却により溶接部40に組織変化が生じ、溶接部40は、溶けて固まった溶融部41と、溶接熱により組織変化の生じた熱影響部42とにより構成される。熱影響部42は、カバー22の熱影響部42cと、ケース本体21の熱影響部42hとにより構成される。
【0017】
そして、本実施形態においては、溶融部41における流通空間35内の形状がR形状となるようにレーザ溶接が施されている。例えば、図4(d)に示すように、溶融部41は、流通空間35の方へ突出した凸部411を有し、凸部411の流通空間35側の形状である先端形状が湾曲するようにレーザ溶接が施されている。
【0018】
ここで、溶融部41の大きさは、単位時間当たりのエネルギー密度によって定まる。単位時間当たりのエネルギー密度が大きくなるのに応じて、より大きい溶融部41が成形される。また、溶融部41の形状がどのようになるかは、カバー22に対してレーザ光Lを照射する位置によって定まる。上記事項を考慮して、単位時間当たりのエネルギー密度及びレーザ光Lの照射位置を、溶融部41における流通空間35内の形状がR形状となるように設定する。
【0019】
図5図6は、溶接部40の他の例を示す図である。
単位時間当たりのエネルギー密度に着目すると、エネルギー密度が小さいと、図5(a)に示すように、カバー22のみが溶融して、ケース本体21が溶融しなくなってしまう。あるいは、エネルギー密度が小さいと、図5(b)に示すように、カバー22と、ケース本体21の側壁32の上端部の一部が溶融し、溶融部41がケース本体21の側壁32の厚さ方向の大きさW内に納まってしまう。その結果、カバー22とケース本体21の接合強度が小さくなってしまい、冷却液が流通空間35内から漏れることに対する信頼性が低下してしまう。
【0020】
一方、レーザ光Lの照射位置に着目すると、ケース本体21の側壁32の内面211の延長線Le上よりも内側(流通空間35側)にレーザ光Lを照射すると、図6(a)に示すように、カバー22のみが溶融して、ケース本体21が溶融しなくなってしまう。あるいは、ケース本体21の内面211の延長線Le上よりも内側(流通空間35側)にレーザ光Lを照射すると、図6(b)に示すように、カバー22と、ケース本体21の側壁32の上端部における内側の部位の一部のみが溶融してしまう。その結果、カバー22とケース本体21の接合強度が小さくなってしまい、冷却液が流通空間35内から漏れることに対する信頼性が低下してしまう。
【0021】
他方、ケース本体21の内面211の延長線Le上よりも外側にレーザ光Lを照射すると、図6(c)に示すように、ケース本体21の側壁32も溶融したとしても、溶融部41がケース本体21の側壁32の厚さ方向の大きさW内に納まってしまい、溶融部41が流通空間35内に突出しなくなるおそれがある。例えば、ケース本体21の側壁32の厚さ方向の中央部Cよりも外側にレーザ光Lを照射すると、図6(c)に示すように、エネルギー密度が大きくても溶融部41が流通空間35内に突出しなくなるおそれがある。
【0022】
以上の事項に鑑み、本実施の形態においては、レーザ光Lを照射する目標の位置を、カバー22の外面223における、ケース本体21の内面211の延長線Le上の部位(以下、当該部位を、「目標照射部位Lt」と称する場合がある)に設定する(図4(a)参照)。ただし、目標照射部位Ltを狙ってレーザ光Lを照射するようにしたとしても、実際の照射部位が目標照射部位Ltからずれるおそれがある。それゆえ、目標照射部位Ltから最大限にずれると想定される部位にレーザ光Lが照射された場合においても、溶融部41が流通空間35の方へ突出した凸部411を有し、凸部411の先端形状が湾曲するようにエネルギー密度を設定する。
【0023】
なお、単位時間当たりのエネルギー密度を調整するには、レーザヘッド151の移動速度を調整するか、又は、レーザ出力を調整するか、の少なくともいずれかの手法を採用すれば良い。例えば、単位時間当たりのエネルギー密度を大きくするには、レーザヘッド151の移動速度を小さくするか、レーザ出力を大きくするか、の少なくともいずれかの手法を採用すれば良い。
【0024】
以上のように構成された冷却装置1は、凹部33を有する第1部材の一例としてのケース本体21と、ケース本体21とともに冷却媒体の一例としての冷却液が流通する空間の一例としての流通空間35を形成するようにケース本体21に接合される第2部材の一例としてのカバー22とを備えている。そして、冷却装置1は、カバー22がケース本体21の上に載せられた状態でレーザ溶接が施されている。これにより、例えば、ケース本体21とカバー22とがろう付けにて接合される構成と比較して、ケース本体21とカバー22とをろう付けする際に、ろう付け等にて接合されたカバー22とヒートシンク10とが焼鈍されないので、焼鈍されることに起因してカバー22やヒートシンク10の強度が低下することが抑制される。
【0025】
ここで、例えば、ケース本体21とカバー22とをろう付けする場合には、ケース本体21の内面211とカバー22の内面222とが90度に交わった状態で接合されるので、接合後に90度以下の角部を形成するおそれがある。そして、例えば振動が生じる場所に設置されている場合には、応力が繰り返して集中し、耐久性が低下するおそれがある。
これに対して、冷却装置1においては、ケース本体21における流通空間35側の面の内面211とカバー22における流通空間35側の面の一例としての内面222とが交わる部位は、溶融部41が形成されR形状となっている。それゆえ、ケース本体21の内面211とカバー22の内面222とが交わる部位に応力が集中することが抑制される。その結果、冷却装置1の耐久性を向上させることができる。
【0026】
そして、冷却装置1の製造方法においては、ケース本体21とカバー22とを接合する際に、ケース本体21の上にカバー22を載せ、カバー22におけるケース本体21とは反対側からレーザ光Lを照射する。言い換えれば、ケース本体21とカバー22とを重ね合わせた状態で、カバー22に対してレーザ光Lを照射している。
ここで、例えば、カバー22をケース本体21の上に載せた状態で、ケース本体21とカバー22との接触部位に、カバー22の板面に平行にレーザ光Lを照射する方法、言い換えれば、カバー22とケース本体21との突き合わせ部位にカバー22の板面に平行にレーザ光Lを照射する方法を考える。以下、この方法を、「突き合わせ溶接」と称する場合がある。
【0027】
突き合わせ溶接する際のレーザ光Lを照射する目標の位置を、ケース本体21の側壁32の上端面320とカバー22の内面222との接触面に設定した場合、言い換えれば、突き合わせ溶接する際の目標照射部位Lpをケース本体21の上端面320とカバー22の内面222との接触面に設定した場合を考える。
【0028】
図7は、実際の照射部位が目標照射部位Lpからカバー22側にずれた場合の溶接部140の一例を示す図である。
実際の照射部位が目標照射部位Lpからカバー22側にずれた場合、カバー22のみが溶融して、ケース本体21が溶融しなくなってしまう。あるいは、図7に示すように、カバー22と、ケース本体21の側壁32の上端部における外側の部位の一部のみが溶融してしまう。その結果、カバー22とケース本体21の接合強度が小さくなってしまい、冷却液が流通空間35内から漏れることに対する信頼性が低下してしまう。
【0029】
図8は、実際の照射部位が目標照射部位Lpからケース本体21側にずれた場合の溶接部140が成形される過程の一例を示す図である。
図8(a)に示すように、実際の照射部位が目標照射部位Lpからケース本体21側にずれた場合、図8(d)に示すように、ケース本体21の側壁32のみが溶融してしまい、ケース本体21とカバー22とが接合しないおそれがある。
【0030】
これに対して、冷却装置1を製造する際には、ケース本体21とカバー22とを重ね合わせた状態で、カバー22におけるケース本体21とは反対側からレーザ光Lを照射するので、確度高く、ケース本体21とカバー22とを接合させることができる。それゆえ、目標照射部位Ltに対する実際の照射部位のずれ量の許容値を大きくすることができるので、容易に製造することができる。
【0031】
そして、冷却装置1において、カバー22は、ケース本体21よりも溶接性が良い材質にて成形されていることが好ましい。カバー22の材質がケース本体21の材質よりも溶接性が良いと、ケース本体21の材質がカバー22の材質よりも溶接性が良い場合と比べて、ケース本体21に熱が伝わり易く、単位時間当たりのエネルギー密度が同じであったとしても、カバー22とケース本体21との接合強度が大きくなり易くなる。
例えば、カバー22の材質は、A3003等の、アルミニウム合金のA3000系であり、ケース本体21の材質は、A6063等の、アルミニウム合金のA6000系や銅であることを例示することができる。また、カバー22の材質は、アルミニウム合金のA3000系と、ろう材であるアルミニウム合金のA4000系を熱間圧延工程でクラッド圧延(圧着)したブレージングシートであり、ケース本体21の材質は、A6063等の、アルミニウム合金のA6000系や銅であることを例示することができる。また、カバー22の材質は、アルミニウム合金のA3000系とアルミニウム合金のA4000系とのブレージングシートであり、ケース本体21の材質は、アルミニウム合金のA6000系とアルミニウム合金のA4000系とのブレージングシートであることを例示することができる。ケース本体21又はカバー22の材質としてブレージングシートを用いることにより、ケース20の耐食性を向上させることができる。
【0032】
また、冷却装置1において、ケース本体21の側壁32の厚さ方向の大きさWよりも、カバー22の厚さ方向の大きさの方が小さくなるように設定すると良い。このように設定することにより、カバー22の厚さ方向の大きさがケース本体21の側壁32の大きさW以上である場合と比べて、ケース本体21に熱が伝わり易く、単位時間当たりのエネルギー密度が同じであったとしても、カバー22とケース本体21との接合強度が大きくなり易くなる。
【0033】
なお、上述した実施の形態においては、ケース本体21とカバー22とをレーザ溶接にて接合しているが、特にレーザ溶接に限定されない。例えば、電子ビーム溶接にて、ケース本体21とカバー22とを接合しても良い。電子ビーム溶接においても、ケース本体21とカバー22とを重ね合わせた状態で、カバー22におけるケース本体21とは反対側から電子ビームをカバー22に対して衝突させると良い。また、単位時間当たりのエネルギー密度及び電子ビームを衝突させる位置を、溶融部41における流通空間35内の形状がR形状となるように設定すると良い。
【符号の説明】
【0034】
1…冷却装置、5…半導体モジュール、10…ヒートシンク、20…ケース、21…ケース本体、22…カバー、31…底部、35…流通空間、40…溶接部、41…溶融部、42…熱影響部、151…レーザヘッド、411…凸部、L…レーザ光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8