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特許7578185信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム、及び衛星通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム、及び衛星通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20241029BHJP
   H04M 11/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H04L12/28 200D
H04M11/00 302
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023508300
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2021012485
(87)【国際公開番号】W WO2022201410
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 満
(72)【発明者】
【氏名】柴山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
【審査官】安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-288491(JP,A)
【文献】特開2004-253952(JP,A)
【文献】特開2002-158702(JP,A)
【文献】特開2018-157280(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235784(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
H04M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される高優先度フレーム及び低優先度フレームを優先度に応じて振分ける振分部と、
前記振分部が振分けた高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ処理して転送する転送部と、
前記転送部が転送した高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部が蓄積した高優先度フレーム及び低優先度フレームそれぞれを優先度に応じて順次に読出して出力する読出部と、
前記振分部に高優先度フレームが入力された場合、又は、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積している場合には、前記転送部が低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、前記振分部に高優先度フレームが入力されず、且つ、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積していない場合には、前記転送部が低優先度フレームを分割することなく転送するように設定する設定部と
を有することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
SIPメッセージの内容を確認するSIP確認部
をさらに有し、
前記設定部は、
前記SIP確認部が高優先度フレームに対するセッションの確立を確認した場合には、前記転送部が低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、前記SIP確認部が高優先度フレームに対するセッションの終了を確認し、且つ、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積していない場合には、前記転送部が低優先度フレームを分割することなく転送するように設定すること
を特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
高優先度フレームは、
IP電話の通話データフレームであること
を特徴とする請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
入力される高優先度フレーム及び低優先度フレームを優先度に応じて振分ける振分工程と、
振分けた高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ処理して転送する転送工程と、
転送した高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ蓄積部が蓄積する蓄積工程と、
前記蓄積部が蓄積した高優先度フレーム及び低優先度フレームそれぞれを優先度に応じて順次に読出して出力する読出工程と、
高優先度フレームが入力された場合、又は、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積している場合には、低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、高優先度フレームが入力されず、且つ、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積していない場合には、低優先度フレームを分割することなく転送するように設定する設定工程と
を含むことを特徴とする信号処理方法。
【請求項5】
SIPメッセージの内容を確認するSIP確認工程
をさらに含み、
前記設定工程では、
高優先度フレームに対するセッションの確立を確認した場合には、低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、高優先度フレームに対するセッションの終了を確認し、且つ、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積していない場合には、低優先度フレームを分割することなく転送するように設定すること
を特徴とする請求項4に記載の信号処理方法。
【請求項6】
高優先度フレームは、
IP電話の通話データフレームであること
を特徴とする請求項4又は5に記載の信号処理方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置の各部としてコンピュータを機能させるための信号処理プログラム。
【請求項8】
通信衛星を介して通信を行う地球局に対して高優先度フレーム及び低優先度フレームを出力する信号処理装置を備えた衛星通信システムにおいて、
前記信号処理装置は、
入力される高優先度フレーム及び低優先度フレームを優先度に応じて振分ける振分部と、
前記振分部が振分けた高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ処理して転送する転送部と、
前記転送部が転送した高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部が蓄積した高優先度フレーム及び低優先度フレームそれぞれを優先度に応じて順次に読出して出力する読出部と、
前記振分部に高優先度フレームが入力された場合、又は、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積している場合には、前記転送部が低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、前記振分部に高優先度フレームが入力されず、且つ、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積していない場合には、前記転送部が低優先度フレームを分割することなく転送するように設定する設定部と
を有することを特徴とする衛星通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム、及び衛星通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
VoIP(Voice over IP)技術を用いて、データ系のネットワークを介して電話サービスとデータ通信を可能にするシステムとして、通信衛星を利用する衛星通信システムが知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、VoIPにおける送信側でデータパケットを分割するデータ・フラグメンテーション機能、音声優先制御機能、及び遅延揺らぎ吸収バッファを用いて音声品質を向上させる技術等が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】高野正次、「インターネット電話の品質評価について」、日本オペレーションズ・リサーチ学会、2001年3月号、p.129(17)-134(22)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の音声優先制御では、例えばIP電話とデータ通信が通信衛星を介して行われる場合のように、回線速度が低速である場合には、処理が遅延してしまうことがあった。
【0006】
例えば、低優先度フレームであるデータ通信フレームの出力処理中に、高優先度フレームであるVoIPフレームが入力されても、現在処理中であるデータ通信フレームの出力が完結されるまでVoIPフレームは出力されない。また、VoIPフレームの遅延量は、データが到着するタイミングによって変動する。このため、遅延揺らぎも発生してしまう。
【0007】
本発明は、上述した課題を鑑みてなされたものであり、高優先度フレームの遅延量及び遅延揺らぎ量を増加させることなく、通信効率の低下を抑えることができる信号処理装置、信号処理方法、信号処理プログラム、及び衛星通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態にかかる信号処理装置は、入力される高優先度フレーム及び低優先度フレームを優先度に応じて振分ける振分部と、前記振分部が振分けた高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ処理して転送する転送部と、前記転送部が転送した高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ蓄積する蓄積部と、前記蓄積部が蓄積した高優先度フレーム及び低優先度フレームそれぞれを優先度に応じて順次に読出して出力する読出部と、前記振分部に高優先度フレームが入力された場合、又は、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積している場合には、前記転送部が低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、前記振分部に高優先度フレームが入力されず、且つ、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積していない場合には、前記転送部が低優先度フレームを分割することなく転送するように設定する設定部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一実施形態にかかる信号処理方法は、入力される高優先度フレーム及び低優先度フレームを優先度に応じて振分ける振分工程と、振分けた高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ処理して転送する転送工程と、転送した高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ蓄積部が蓄積する蓄積工程と、前記蓄積部が蓄積した高優先度フレーム及び低優先度フレームそれぞれを優先度に応じて順次に読出して出力する読出工程と、高優先度フレームが入力された場合、又は、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積している場合には、低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、高優先度フレームが入力されず、且つ、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積していない場合には、低優先度フレームを分割することなく転送するように設定する設定工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一実施形態にかかる衛星通信システムは、通信衛星を介して通信を行う地球局に対して高優先度フレーム及び低優先度フレームを出力する信号処理装置を備えた衛星通信システムにおいて、前記信号処理装置が、入力される高優先度フレーム及び低優先度フレームを優先度に応じて振分ける振分部と、前記振分部が振分けた高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ処理して転送する転送部と、前記転送部が転送した高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ蓄積する蓄積部と、前記蓄積部が蓄積した高優先度フレーム及び低優先度フレームそれぞれを優先度に応じて順次に読出して出力する読出部と、前記振分部に高優先度フレームが入力された場合、又は、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積している場合には、前記転送部が低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、前記振分部に高優先度フレームが入力されず、且つ、前記蓄積部が高優先度フレームを蓄積していない場合には、前記転送部が低優先度フレームを分割することなく転送するように設定する設定部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高優先度フレームの遅延量及び遅延揺らぎ量を増加させることなく、通信効率の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態にかかる衛星通信システムの構成例を示す図である。
図2】一実施形態にかかる信号処理装置が有する機能、及び信号処理装置の周辺を例示するブロック図である。
図3】低優先度フレームが入力された場合の信号処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】高優先度フレームが入力された場合の信号処理装置の動作例を示すフローチャートである。
図5】信号処理装置の変形例が有する機能、及び信号処理装置の変形例の周辺を例示するブロック図である。
図6】SIP確認部がVoIP電話端末とVoIP電話端末の間で確認するSIPメッセージを例示する図である。
図7】低優先度フレームが入力された場合の信号処理装置の変形例の動作例を示すフローチャートである。
図8】高優先度フレームが入力された場合の信号処理装置の変形例の動作例を示すフローチャートである。
図9】一実施形態にかかる信号処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図10】比較例の衛星通信システムにおけるVoIPフレームとデータ通信フレームの伝送処理を模式的に示す図である。
図11】比較例の衛星通信システムにおけるフラグメンテーションによるVoIPフレームとデータ通信フレームの伝送処理を模式的に示す図である。
図12】フラグメンテーションによるフレーム効率の低下を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態にかかる衛星通信システムについて説明する前に、まず、本発明がなされるに至った背景について具体的に説明する。
【0014】
図10は、比較例の衛星通信システムにおけるVoIPフレーム(音声通信)とデータ通信フレーム(データ通信)の伝送処理を模式的に示す図である。なお、各フレームは、Ethernet(登録商標)のイーサフレームであるとする。
【0015】
IP電話は、品質に遅延及び遅延揺らぎの影響を受けるため、優先制御を行うことが一般的である。優先制御においては、高優先度フレームであるVoIPフレーム(通話データフレーム)は、低優先度フレームであるデータ通信フレームよりも優先して処理される。
【0016】
例えば、高優先キューにVoIPフレームが存在しない場合、低優先キューにデータ通信フレームが入力されると、データ通信フレームが先に出力処理される。
【0017】
しかし、低優先度フレームの出力処理中に高優先度フレームが入力されても、現在処理中の低優先度フレームの出力が完結されるまで高優先度フレームは出力されない。つまり、比較例の衛星通信システムでは、VoIPフレームを優先させる優先制御を行っていても、VoIPフレームに対する処理が遅延することがある。
【0018】
さらに、VoIPフレームは、遅延量がデータの到着するタイミングによって変動するため、遅延揺らぎも発生してしまう。この遅延及び遅延揺らぎは、フレーム長が大きいほど大きくなり、通信速度が遅いほど大きくなる。
【0019】
また、衛星通信システムのように回線速度が低速なシステムでは、フレームを伝送する時間が長くなる。例えば、回線速度が64kbpsである場合、1518バイトのフレームを伝送するためには、約190msを要する。
【0020】
したがって、VoIPフレームは、高優先度であっても最大190msの処理遅延が生じ、遅延揺らぎも最大190msとなる。この遅延量及び遅延揺らぎは、通常20msの一定間隔でフレームを送信するIP電話の品質を劣化させることとなる。
【0021】
そのため、VoIPフレームに対しては、優先制御をされている環境下であっても、遅延量及び遅延揺らぎを抑えるために、処理遅延の影響を低減することが重要になる。処理遅延を低減する方法には、例えば、信号処理装置が入力されたVoIPフレームを適切なフレーム長に分割し、分割したVoIPフレームを伝送するフラグメンテーションという方法がある。
【0022】
図11は、比較例の衛星通信システムにおけるフラグメンテーションによるVoIPフレームとデータ通信フレームの伝送処理を模式的に示す図である。
【0023】
フラグメンテーションにより、低優先のデータ通信フレームは分割される。VoIPフレームは、分割されたデータ通信フレームの間に割り込むことができるので、遅延量及び遅延揺らぎ量が抑えられる。なお、フラグメンテーションの分割サイズは、MTU(Maximum Transmission Unit)、MSS(Maximum Segment Size)等によって固定的に設定されている。
【0024】
しかし、フラグメンテーションが行われる場合、高優先度フレームの遅延量及び遅延揺らぎ量を小さくすることができるが、分割したデータそれぞれにはヘッダを付与する必要がある。
【0025】
したがって、通常1518バイトの最大フレーム長のデータを多く用いるデータ通信では、フラグメンテーションが行われるとヘッダの割合が大きくなり、ヘッダを除いたデータのフレーム効率(データ長÷フレーム長)が低下し、実質的な通信速度も低下する。
【0026】
図12は、フラグメンテーションによるフレーム効率の低下を例示する図である。例えば、G.729aで符号化されたVoIPフレームのフレーム長(78バイト)とデータ通信フレームのフレーム長とを同じ長さにする。この場合、フラグメンテーション前のフレーム効率が約97.5%であるのに対し、フラグメンテーション後のフレーム効率は約51.3%となる。つまり、フレーム効率が概ね半分程度まで大きく低下する。
【0027】
VoIP技術を用いたIP電話の遅延量及び遅延揺らぎ量を小さくするためには、フラグメンテーションが必要である。しかし、IP電話は、常に通信中となるわけではない。したがって、IP電話は、使用されていない時間帯には、通信効率(フレーム効率)がフラグメンテーションによって大きく低下してしまう。
【0028】
そこで、次に説明する一実施形態にかかる衛星通信システムは、通信衛星を用いた通信衛星ネットワークをIP電話などの高優先度フレームとデータ通信などの低優先度フレームで共用しても、高優先度フレームの遅延量及び遅延揺らぎ量を増加させることなく、通信効率の低下を抑えることができるように構成されている。
【0029】
図1は、一実施形態にかかる衛星通信システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、衛星通信システム1は、例えば地球局2-1,2-2が通信衛星3を介して相互に通信を行うように構成されている。
【0030】
地球局2-1は、例えばVoIP電話端末4-1及びデータ通信端末5-1が信号処理装置6-1を介して接続されている。信号処理装置6-1は、例えばVoIP電話端末4-1が出力した高優先度フレームであるVoIPフレームに対して所定の処理を行い、地球局2-1に対して出力する。また、信号処理装置6-1は、例えばデータ通信端末5-1が出力した低優先度フレームであるデータ通信フレームに対して所定の処理を行い、地球局2-1に対して出力する。
【0031】
地球局2-2は、例えばVoIP電話端末4-2及びデータ通信端末5-2が信号処理装置6-2を介して接続されている。信号処理装置6-2は、例えばVoIP電話端末4-2が出力した高優先度フレームであるVoIPフレームに対して所定の処理を行い、地球局2-2に対して出力する。また、信号処理装置6-2は、例えばデータ通信端末5-2が出力した低優先度フレームであるデータ通信フレームに対して所定の処理を行い、地球局2-2に対して出力する。
【0032】
そして、VoIP電話端末4-1は、通信衛星3を介してIP電話による通話をVoIP電話端末4-2との間で行う。また、データ通信端末5-1は、通信衛星3を介してデータ通信をデータ通信端末5-2との間で相互に行う。
【0033】
以下、信号処理装置6-1,6-2のように複数ある構成のいずれかを特定しない場合には、単に信号処理装置6などと略記する。
【0034】
図2は、一実施形態にかかる信号処理装置6が有する機能、及び信号処理装置6の周辺を例示するブロック図である。図2に示すように、信号処理装置6は、例えば振分部60、転送部61、蓄積部62、読出部63、及び設定部64を有する。なお、衛星ネットワーク300は、図1に示した通信衛星3などによって構成されるネットワークである。
【0035】
振分部60は、入力される高優先度フレーム(IP電話)及び低優先度フレーム(データ)を優先度に応じて振分けて、転送部61に対して出力する。また、振分部60は、高優先度フレームが入力された場合には、その旨を設定部64に対して通知する機能を有する。
【0036】
転送部61は、高優先転送部611及び低優先転送部612を有し、振分部60が振分けた高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ処理して蓄積部62へ転送する。
【0037】
なお、高優先転送部611は、振分部60が出力した高優先度フレームに対して処理を行い、蓄積部62に対して転送する。低優先転送部612は、振分部60が出力した低優先度フレームに対して処理を行い、蓄積部62に対して転送する。例えば、低優先転送部612は、後述する分割サイズ設定情報に基づいて低優先度フレームを分割し、分割した低優先度フレームを蓄積部62に対して転送する。
【0038】
蓄積部62は、高優先キュー621及び低優先キュー622を有し、転送部61が転送した高優先度フレーム及び低優先度フレームをそれぞれ蓄積する。なお、高優先キュー621は、高優先転送部611が転送した高優先度フレームを蓄積する。また、高優先キュー621は、高優先度フレームを蓄積している場合には、例えば蓄積している高優先度フレーム数を設定部64に対して通知する機能を有する。また、低優先キュー622は、低優先転送部612が転送した低優先フレームを蓄積する。
【0039】
読出部63は、高優先キュー621が蓄積した高優先度フレーム、及び低優先キュー622が蓄積した低優先度フレームをそれぞれ優先度に応じて順次に読出し、地球局2に対して出力する。
【0040】
設定部64は、振分部60に高優先度フレームが入力されたことを通知された場合、又は、高優先キュー621が高優先度フレームを蓄積していることを通知された場合には、低優先転送部612が低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定を行う。例えば、設定部64は、高優先キュー621から通知された高優先度フレーム数に応じて分割サイズを設定する分割サイズ設定情報を低優先転送部612に対して出力し、低優先転送部612へ低優先度フレームに対する分割サイズを設定する。
【0041】
また、設定部64は、振分部60に高優先度フレームが入力されず、且つ、高優先キュー621が高優先度フレームを蓄積していない場合には、低優先転送部612が低優先度フレームを分割することなく(又は予め定められた分割サイズに分割して)転送するように設定を行う。
【0042】
つまり、信号処理装置6は、設定部64が行う設定に応じてフラグメンテーションを行う。上述した例では、信号処理装置6は、振分部60からの通知及び高優先キュー621からの通知に基づいて、設定部64が低優先転送部612に対する設定を行うように構成されているが、これに限定されない。例えば、信号処理装置6は、振分部60及び高優先キュー621からの通知に基づく判定を行う判定部を備え、判定部の判定結果に応じて設定部64が低優先転送部612に対する同様の設定を行うように構成されてもよい。
【0043】
また、図2においては、信号処理装置6がフレームを送信する機能について示したが、信号処理装置6は、フレームを受信する場合のデフラグメンテーションを行う機能を備えていてもよい。
【0044】
次に、信号処理装置6の動作例について説明する。図3は、低優先度フレームが入力された場合の信号処理装置6の動作例を示すフローチャートである。
【0045】
図3に示すように、信号処理装置6は、低優先度フレームが入力(S100)されると、高優先度フレームの入力が存在しているか否かを判定する(S102)。信号処理装置6は、高優先度フレームの入力が存在していないと判定した場合(S102:No)にはS104の処理に進み、高優先度フレームの入力が存在していると判定した場合(S102:Yes)にはS108の処理に進む。
【0046】
次に、信号処理装置6は、高優先の送信待ちフレームが存在しているか否かを判定し(S104)、存在していないと判定した場合(S104:No)にはS106の処理に進み、存在していると判定した場合(S104:Yes)にはS108の処理に進む。
【0047】
ステップ106(S106)において、信号処理装置6は、設定部64が低優先転送部612に対してデータフレームを分割しないように設定を行う。
【0048】
ステップ108(S108)において、信号処理装置6は、設定部64が低優先転送部612に対してデータフレームを分割するように設定を行う。
【0049】
ステップ110(S110)において、信号処理装置6は、読出部63が低優先キュー622から低優先度フレームを読出して出力を開始する。
【0050】
ステップ112(S112)において、信号処理装置6は、読出部63が低優先キュー622からの低優先度フレームの読出しを終えて出力を完了する。なお、信号処理装置6は、分割しない低優先度フレームを送信する場合、例えば最大で190msを要する。
【0051】
図4は、高優先度フレームが入力された場合の信号処理装置6の動作例を示すフローチャートである。
【0052】
図4に示すように、信号処理装置6は、高優先度フレームが入力(S200)されると、送信中の低優先度フレームがあるか否かを判定する(S202)。信号処理装置6は、送信中の低優先度フレームがあると判定した場合(S202:Yes)にはS204の処理に進み、送信中の低優先度フレームがないと判定した場合(S202:No)にはS206の処理に進む。なお、高優先度フレームは、IP電話の通話データフレームであり、20ms周期で入力される。
【0053】
ステップ204(S204)において、信号処理装置6は、高優先度フレームに対する送信を待ち、S202の処理に戻る。
【0054】
ステップ206(S206)において、信号処理装置6は、読出部63が高優先キュー621から高優先度フレームを読出して出力する。
【0055】
このように、一実施形態にかかる信号処理装置6は、振分部60に高優先度フレームが入力された場合、又は、蓄積部62が高優先度フレームを蓄積している場合には、転送部61が低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、振分部60に高優先度フレームが入力されず、且つ、蓄積部62が高優先度フレームを蓄積していない場合には、転送部61が低優先度フレームを分割することなく転送するように設定するので、高優先度フレームの遅延量及び遅延揺らぎ量を増加させることなく、通信効率の低下を抑えることができる。
【0056】
なお、信号処理装置6は、VoIP電話端末4(図1参照)による通話の最初には、低優先度フレームが入力されているときに高優先度フレームが入力される場合がある。この場合、当該低優先度フレームに対しては分割されないため、遅延揺らぎが起きる可能性がある。
【0057】
次に、信号処理装置6の変形例について説明する。図5は、信号処理装置6の変形例(信号処理装置6a)が有する機能、及び信号処理装置の変形例の周辺を例示するブロック図である。
【0058】
図5に示すように、信号処理装置6aは、例えば振分部60、転送部61、蓄積部62、読出部63、設定部64、及びSIP(Session Initiation Protocol)確認部65を有する。なお、地球局2aは、SIPメッセージを仲介する機能を有することとする。また、図5に示した信号処理装置6aについて、図2に示した信号処理装置6の構成と実質的に同一の構成には同一の符号が付してある。
【0059】
SIP確認部65は、SIPメッセージの内容を確認する機能を有するとともに、信号処理装置6aに入力される高優先度フレーム(IP電話)及び低優先度フレーム(データ)を振分部60に対して出力する。また、SIP確認部65は、メッセージ種別とユーザアドレス情報を確認するSIPサーバとしての機能を備えていてもよい。
【0060】
例えば、SIP確認部65は、信号処理装置6aに入力される高優先度フレームに対するセッションの確立を確認した場合、又は、高優先度フレームに対するセッションの終了を確認した場合などに、その旨を示す通知を設定部64に対して出力する。
【0061】
また、信号処理装置6aにおいて、設定部64は、高優先度フレームに対するセッションの確立を確認した旨の通知をSIP確認部65から入力された場合には、低優先転送部612が低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定を行う機能を備える。
【0062】
また、信号処理装置6aにおいて、設定部64は、高優先度フレームに対するセッションの終了を確認した旨の通知をSIP確認部65から入力され、且つ、高優先キュー621が高優先度フレームを蓄積していない場合には、低優先転送部612が低優先度フレームを分割することなく(又は予め定められた分割サイズに分割して)転送するように設定を行う機能を備える。
【0063】
図6は、SIP確認部65がVoIP電話端末4-1とVoIP電話端末4-2の間で確認するSIPメッセージを例示する図である。
【0064】
SIP確認部65がINVITE(招待)メッセージに続いてACK応答(セッションの確立了解)の受信を確認すると、IP電話の音声フレームを用いた通話状態となり、信号処理装置6aは、低優先度フレームを分割して出力する。
【0065】
また、SIP確認部65がBYE(セッション切断要求)に続いて200OK(成功)の受信を確認し、且つ、高優先の送信待ちフレームが存在しない場合(通話が終了して高優先度フレームがない場合)、信号処理装置6aは、低優先度フレームを分割しないで送信する。
【0066】
なお、通信衛星3(図1参照)が静止衛星である場合、SIPメッセージの送受信は、衛星区間で250ms以上遅延する。つまり、信号処理装置6aは、SIPメッセージを受信してからIP電話のフレーム送信を開始するまでに250ms以上の遅延(タイムラグ)がある。
【0067】
したがって、衛星通信システム1における衛星通信の回線速度が例えば64kbpsである場合、1518バイトのフレームを伝送する伝送時間として約190msを要するが、当該伝送時間は衛星区間における遅延(250ms)よりも短い。よって、信号処理装置6aは、最初の高優先度フレーム(IP電話の音声フレーム)を送出する前に、低優先度フレームの分割サイズを変更することができる。
【0068】
次に、信号処理装置6aの動作例について説明する。図7は、低優先度フレームが入力された場合の信号処理装置6aの動作例を示すフローチャートである。
【0069】
図7に示すように、信号処理装置6aは、低優先度フレームが入力(S300)されると、INVITEに続いてACK受信を確認したか否かを判定する(S302)。信号処理装置6aは、INVITEに続いてACKの受信を確認していないと判定した場合(S302:No)にはS304の処理に進み、INVITEに続いてACKの受信を確認したと判定した場合(S302:Yes)にはS310の処理に進む。
【0070】
また、信号処理装置6aは、BYEに続いて200OKの受信を確認したか否かを判定する(S304)。信号処理装置6aは、BYEに続いて200OKの受信を確認したと判定した場合(S304:Yes)にはS306の処理に進み、BYEに続いて200OKの受信を確認していないと判定した場合(S304:No)にはS310の処理に進む。
【0071】
また、信号処理装置6aは、高優先の送信待ちフレームが存在するか否かを判定する(S306)。信号処理装置6aは、高優先の送信待ちフレームが存在しない判定した場合(S306:No)にはS308の処理に進み、高優先の送信待ちフレームが存在すると判定した場合(S306:Yes)にはS310の処理に進む。
【0072】
ステップ308(S308)において、信号処理装置6aは、設定部64(図5参照)が低優先転送部612に対してデータフレームを分割しないように設定を行う。
【0073】
ステップ310(S310)において、信号処理装置6aは、設定部64が低優先転送部612に対してデータフレームを分割するように設定を行う。
【0074】
ステップ312(S312)において、信号処理装置6aは、読出部63が低優先キュー622から低優先度フレームを読出して出力を開始する。
【0075】
ステップ314(S314)において、信号処理装置6aは、読出部63が低優先キュー622からの低優先度フレームの読出しを終えて出力を完了する。なお、信号処理装置6aは、分割しない低優先度フレームを送信する場合、例えば最大で190msを要する。
【0076】
図8は、高優先度フレームが入力された場合の信号処理装置6aの動作例を示すフローチャートである。
【0077】
図8に示すように、信号処理装置6aは、高優先度フレームが入力(S300)され、INVITEに続いてACKの受信を確認すると(S400)、高優先度フレームが入力されることを予測する(S402)。
【0078】
そして、信号処理装置6aは、高優先度フレームが入力されると(S404)、送信中の低優先度フレームがあるか否かを判定する(S406)。信号処理装置6aは、送信中の低優先度フレームがあると判定した場合(S406:Yes)にはS408の処理に進み、送信中の低優先度フレームがないと判定した場合(S406:No)にはS410の処理に進む。なお、高優先度フレームは、IP電話の通話データフレームであり、20ms周期で入力される。
【0079】
ステップ408(S408)において、信号処理装置6aは、高優先度フレームに対する送信を待ち、S406の処理に戻る。
【0080】
ステップ410(S410)において、信号処理装置6aは、読出部63が高優先キュー621から高優先度フレームを読出して出力する。
【0081】
このように、一実施形態にかかる信号処理装置6aは、SIP確認部65が高優先度フレームに対するセッションの確立を確認した場合には、転送部61が低優先度フレームを所定サイズに分割して転送するように設定し、SIP確認部65が高優先度フレームに対するセッションの終了を確認し、且つ、蓄積部62が高優先度フレームを蓄積していない場合には、転送部61が低優先度フレームを分割することなく転送するように設定するので、高優先度フレームの遅延量及び遅延揺らぎ量を増加させることなく、通信効率の低下を抑えることができる。
【0082】
また、上述した信号処理装置6は、IP電話フレームが入力されることを予測しないため、最初の低優先度フレームが入力されているときに高優先度フレームが入力された場合には、低優先度フレームを分割できない可能性がある。ただし、信号処理装置6は、SIPメッセージを確認するための機能が不要である。
【0083】
一方、上述した信号処理装置6aは、IP電話フレームが入力されることをSIPメッセージによって250ms以上前に予測することが可能であるため、IP電話フレームが到着する前にデータ通信フレームを最適に分割することができる。ただし、信号処理装置6aは、SIPメッセージの送受信を確認するための機能を具備する必要がある。
【0084】
なお、信号処理装置6及び信号処理装置6aが有する各機能は、それぞれ一部又は全部がPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアによって構成されてもよいし、CPU等のプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0085】
例えば、一実施形態にかかる信号処理装置6及び信号処理装置6aは、コンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記憶媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0086】
図9は、一実施形態にかかる信号処理装置6(又は信号処理装置6a)のハードウェア構成例を示す図である。図9に示すように、例えば信号処理装置6は、入力部800、出力部810、通信部820、CPU830、メモリ840及びHDD850がバス860を介して接続され、コンピュータとしての機能を備える。また、信号処理装置6は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体870との間でデータを入出力することができるようにされている。
【0087】
入力部800は、例えばキーボード及びマウス等である。出力部810は、例えばディスプレイなどの表示装置である。通信部820は、例えばネットワークインターフェースなどである。
【0088】
CPU830は、信号処理装置6を構成する各部を制御し、所定の処理等を行う。メモリ840及びHDD850は、データ等を記憶する記憶部である。
【0089】
記憶媒体870は、信号処理装置6が有する機能を実行させるプログラム等を記憶可能にされている。なお、信号処理装置6を構成するアーキテクチャは図9に示した例に限定されない。
【符号の説明】
【0090】
1・・・衛星通信システム、2,2-1,2-2,2a・・・地球局、3・・・通信衛星、4-1,4-2・・・VoIP電話端末、5-1,5-2・・・データ通信端末、6,6-1,6-2,6a・・・信号処理装置、60・・・振分部、61・・・転送部、62・・・蓄積部、63・・・読出部、64・・・設定部、65・・・SIP確認部、300・・・衛星ネットワーク、611・・・高優先転送部、612・・・低優先転送部、621・・・高優先キュー、622・・・低優先キュー、800・・・入力部、810・・・出力部、820・・・通信部、830・・・CPU、840・・・メモリ、850・・・HDD、860・・・バス、870・・・記憶媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図11
図12