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特許7578190光伝送制御装置、光伝送制御方法、および、光伝送制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】光伝送制御装置、光伝送制御方法、および、光伝送制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/07 20130101AFI20241029BHJP
   H04B 10/25 20130101ALI20241029BHJP
   H04J 14/02 20060101ALN20241029BHJP
【FI】
H04B10/07
H04B10/25
H04J14/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023520589
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2021017738
(87)【国際公開番号】W WO2022239070
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健
(72)【発明者】
【氏名】菅野 康隆
(72)【発明者】
【氏名】川崎 岳
(72)【発明者】
【氏名】前田 英樹
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-91003(JP,A)
【文献】特開2005-204026(JP,A)
【文献】特開2012-205172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/07
H04B 10/25
H04J 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送システムの伝送を制御する光伝送制御装置であって、
前記光伝送システムは、
送信トランスポンダから伝送されるデータ光信号が、複数の伝送装置を経由して受信トランスポンダで受信され、
隣接する前記伝送装置間の区間で監視用光信号が送受信され、
区間を通過する前記データ光信号および前記監視用光信号の両光信号を減衰値に従って減衰させる減衰器が用いられており、
前記光伝送制御装置は、
前記光伝送システム内の監視区間を特定するための情報の入力を受け付ける入力部と、
前記監視区間に存在する前記伝送装置および前記減衰器から前記減衰値を計算するための情報を収集する情報収集部と、
前記情報収集部が収集した情報をもとに前記監視区間を通過する前記両光信号の受信時のパワーが所内範囲内か否かにより、前記両光信号の伝送可否を判定する第1判定処理を実行する変更試行部と、を有することを特徴とする
光伝送制御装置。
【請求項2】
前記変更試行部は、前記第1判定処理で伝送不可と判断した場合、前記監視区間に存在する前記伝送装置を交換した所定区間内の前記減衰器の前記減衰値を前記情報収集部が収集した情報をもとに変更することで、前記両光信号の受信時のパワーが所内範囲内か否かを判定する第2判定処理を実行することを特徴とする
請求項1に記載の光伝送制御装置。
【請求項3】
前記変更試行部は、前記第2判定処理で伝送不可と判断した場合、前記監視区間に存在する所定区間とは別の区間内の前記減衰器の前記減衰値を前記情報収集部が収集した情報をもとに変更することで、前記両光信号の受信時のパワーが所内範囲内か否かを判定する第3判定処理を実行することを特徴とする
請求項2に記載の光伝送制御装置。
【請求項4】
前記光伝送制御装置は、さらに、情報設定部を有しており、
前記情報設定部は、前記第2判定処理または前記第3判定処理において、前記減衰器の前記減衰値を変更することで前記両光信号が伝送可と前記変更試行部が判断した後に、前記光伝送システム内の前記減衰器の前記減衰値を変更するように制御することを特徴とする
請求項3に記載の光伝送制御装置。
【請求項5】
前記変更試行部は、前記第3判定処理において前記減衰器の前記減衰値を変更することでも前記両光信号の少なくとも一方が伝送不可と判断した場合、伝送可となる前記減衰値が算出できない旨を外部に通知することを特徴とする
請求項3に記載の光伝送制御装置。
【請求項6】
前記変更試行部は、前記監視区間を通過する前記データ光信号の受信時のパワーとして、前記情報収集部が収集した情報をもとにOSNR(Optical Signal to Noise Ratio)推定値を算出し、所内範囲内か否かを判定するためのOSNR伝送可能閾値と比較することを特徴とする
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の光伝送制御装置。
【請求項7】
光伝送制御装置が光伝送システムの伝送を制御する光伝送制御方法であって、
前記光伝送システムは、
送信トランスポンダから伝送されるデータ光信号が、複数の伝送装置を経由して受信トランスポンダで受信され、
隣接する前記伝送装置間の区間で監視用光信号が送受信され、
区間を通過する前記データ光信号および前記監視用光信号の両光信号を減衰値に従って減衰させる減衰器が用いられており、
前記光伝送制御装置は、入力部と、情報収集部と、変更試行部と、を有しており、
前記入力部は、前記光伝送システム内の監視区間を特定するための情報の入力を受け付け、
前記情報収集部は、前記監視区間に存在する前記伝送装置および前記減衰器から前記減衰値を計算するための情報を収集し、
前記変更試行部は、前記情報収集部が収集した情報をもとに前記監視区間を通過する前記両光信号の受信時のパワーが所内範囲内か否かにより、前記両光信号の伝送可否を判定する第1判定処理を実行することを特徴とする
光伝送制御方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の光伝送制御装置として機能させるための光伝送制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送制御装置、光伝送制御方法、および、光伝送制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムは、複数のノード間で光信号を伝送する。光伝送システムの前ノードと次ノードとの間を接続する光ファイバは、各ノードの設置位置により、伝送距離や伝送路ファイバの特性が変わってくる。そこで、非特許文献1には、伝送距離に応じて光信号の入力レベルを自動的に最適化する方法が記載されている。これにより、ノード内で光信号を受信する光AMPの特性を保証する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】永吉龍夫、他4名、“光伝送システムにおける入力レベル自動調整方式”、平成18年度電気関係学会九州支部連合大会、09-1A-04、2006-9-21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光伝送システムの光ファイバには、ユーザデータなどの主信号に加えて、監視用の信号であるOSC(Optical Supervisory Channel)光信号も流れる。そこで、両信号の光レベルの調整が問題となる。
【0005】
図15は、シングルベンダ構成の光伝送システム100を示す構成図である。
光伝送システム100は、送信トランスポンダ110Aと、1台以上の伝送装置120Aと、受信トランスポンダ130Aとが光ファイバF1~F3で接続されて構成される。
送信トランスポンダ110Aは、ユーザデータなどの主信号である電気信号をデータ光信号LAに変換して伝送装置120Aに送信する光送信部111Aを有する。
受信トランスポンダ130Aは、伝送装置120Aからデータ光信号LAを受信して電気信号に変換する光受信部131Aを有する。
なお、これらの光伝送システム100の符号の末尾「A」は、ベンダA社が提供するデバイスを用いている旨を示す。
【0006】
伝送装置120Aは、OXC(Optical Cross Connect)などで構成されている。伝送装置120Aは、データ光信号LAと、監視用の信号であるOSC光信号127Aとを同一の光ファイバ上で(IF129→IF128を経由して)、異なる波長で伝送する。
なお、OSC光信号127Aは、OXC内の光アンプの状態監視処理、設定制御処理、および、伝送路障害の検出処理などをOXC間で行うために用いられる。データ光信号LAとOSC光信号127Aとは、同じ光ファイバF1~F3内を疎通する。OSC光信号127Aが強すぎると、データ光信号LAに影響するので、OSC送信部125AとOSC受信部126Aとの間でOSC光信号127Aの強度を調整する。
【0007】
図16は、マルチベンダ構成の光伝送システム100を示す構成図である。
ここでは、図15のA社製の送信トランスポンダ110Aの代わりに、B社製の送信トランスポンダ110Bを導入し、かつ、図15のA社製の受信トランスポンダ130Aの代わりに、B社製の受信トランスポンダ130Bを導入することで、設備コストを削減することを検討する。
なお、これらの光伝送システム100の符号の末尾「B」は、ベンダB社が提供するデバイスを用いている旨を示す。
そして、送信トランスポンダ110Bの光送信部111Bは、B社の仕様に即した変調方式のデータ光信号LBを送信するため、光ファイバF1~F3内で、A社製の仕様に即したOSC光信号127Aとの間の影響140(ロス等の発生)が問題になることもある。
【0008】
なお、図15のシングルベンダ構成の場合、OSC光信号127Aの送信パワーは、データ光信号LA(光送信部111A)の変調方式に合ったパワー設定となっているため、両光信号間の影響140は考慮しなくてもよい。
一方、図16のマルチベンダ構成の場合、OSC光信号127Aの送信パワーは、他ベンダの変調方式を考慮した設計となっていないことから、OXC間で光信号が疎通しないことやロスが発生する場合がある。
【0009】
そこで、伝送装置120AのベンダA社に対して、他ベンダ(B社)のデータ光信号LBにも合ったOSC光信号127Aの送信パワーの調整を追加で開発するように依頼することを検討する。しかし、この追加開発は以下の理由により困難となる。
・ベンダA社のビジネス戦略上、他ベンダの変調方式をサポートしない場合がある。
・接続するトランスポンダ種別が増えるたびに(B社の次はC社、D社、…)、伝送装置120Aで新たな開発が必要となる。
・仮にベンダB社にも対応した伝送装置120Aが追加開発されたとしても、その伝送装置120Aを実運用環境の光伝送システム100内のすべての箇所で交換することとなり、その設備コストが膨大となる懸念がある。
【0010】
そこで、本発明は、主信号の変調方式と監視用信号の変調方式とが異なっているときでも、同じ光ファイバ内で主信号と監視用信号との間の影響を検出することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の光伝送制御装置は、以下の特徴を有する。
本発明は、光伝送システムの伝送を制御する光伝送制御装置であって、
前記光伝送システムが、
送信トランスポンダから伝送されるデータ光信号が、複数の伝送装置を経由して受信トランスポンダで受信され、
隣接する前記伝送装置間の区間で監視用光信号が送受信され、
区間を通過する前記データ光信号および前記監視用光信号の両光信号を減衰値に従って減衰させる減衰器が用いられており、
前記光伝送制御装置が、
前記光伝送システム内の監視区間を特定するための情報の入力を受け付ける入力部と、
前記監視区間に存在する前記伝送装置および前記減衰器から前記減衰値を計算するための情報を収集する情報収集部と、
前記情報収集部が収集した情報をもとに前記監視区間を通過する前記両光信号の受信時のパワーが所内範囲内か否かにより、前記両光信号の伝送可否を判定する第1判定処理を実行する変更試行部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、主信号の変調方式と監視用信号の変調方式とが異なっているときでも、同じ光ファイバ内で主信号と監視用信号との間の影響を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係わる光伝送システムを示す構成図である。
図2】本実施形態に係わる監視制御サーバを含む光伝送システムの構成図である。
図3】本実施形態に係わる監視制御サーバのハードウェア構成図である。
図4】本実施形態に係わるデータベースの一部を示すテーブルである。
図5】本実施形態に係わるデータベースの図4とは別の一部を示すテーブルである。
図6】本実施形態に係わる図1の光伝送システムに対して、伝送装置の交換がなされた後の構成図である。
図7】本実施形態に係わる図6の光伝送システムに対して、可変ATTのATT値が変更された後の構成図である。
図8】本実施形態に係わる監視制御サーバの処理の詳細を示すフローチャートである。
図9】本実施形態に係わる新伝送装置に交換された後のデータベースの一部を示すテーブルである。
図10】本実施形態に係わる図9の状態から仮変更が適用された後のデータベースの一部を示すテーブルである。
図11】本実施形態に係わる図10の状態から仮変更が適用された後のデータベースの一部を示すテーブルである。
図12】本実施形態に係わる図1の光伝送システムに対して、トランスポンダ組の交換がなされた後の構成図である。
図13】本実施形態に係わる図12で説明したトランスポンダ組の交換がなされた後の監視制御サーバの処理を示すフローチャートである。
図14】本実施形態に係わる新トランスポンダ組に交換された後のデータベースの一部を示すテーブルである。
図15】シングルベンダ構成の光伝送システムを示す構成図である。
図16】マルチベンダ構成の光伝送システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、光伝送システム1を示す構成図である。
光伝送システム1は、送信トランスポンダ10と、伝送装置20(20A~20D)と、受信トランスポンダ30とが光ファイバの区間A-B,B-C,C-Dで接続されて構成される。
送信トランスポンダ10は、ユーザデータなどの主信号である電気信号をデータ光信号L1に変換して伝送装置20(20A)に送信する光送信部11を有する。受信トランスポンダ30は、伝送装置20(20D)からデータ光信号L1を受信して電気信号に変換する光受信部31を有する。
【0016】
各伝送装置20は、OXCやREP(Repeater)などで構成されている。伝送装置20は、AMP21で増幅するデータ光信号L1と、監視用の信号であるOSC光信号27とを同一の光ファイバ上で(IF29→IF28を経由して)、異なる波長で伝送する。
なお、OSC光信号27は、伝送装置20内の光アンプの状態監視処理、設定制御処理、および、伝送路障害の検出処理などを、隣接する伝送装置20間で行うために用いられる。データ光信号L1とOSC光信号27との両光信号は、同じ光ファイバの区間内を疎通する。
【0017】
OSC光信号27が強すぎるとデータ光信号L1に影響するので、OSC送信部25(25A~25C)とOSC受信部26(26B~26D)との間に可変ATT(Attenuator、減衰器)40を挟む構成とする。
可変ATT40は、設置された位置の光ファイバを通る光の強度を自動的に調整する。つまり、可変ATT40は、通過する両光信号の光強度を、所定されたATT値(減衰値)だけ一律に減衰させる。
【0018】
これにより、伝送装置20の外部で光の強度が調整されるので、伝送装置20の開発・交換をせずに、伝送装置20のベンダとは異なるベンダの光信号を伝送できる。
ただし、伝送装置20やトランスポンダ(送信トランスポンダ10と受信トランスポンダ30)が故障や新調により更改されたときには、装置の個体差や変調方式の違いによって、光信号の疎通に影響が出る場合がある。
そこで、装置交換などのネットワーク構成の変化を契機として、新たなネットワーク構成に適した可変ATT40のATT値を計算する図2の監視制御サーバ(光伝送制御装置)50を新たに用意した。
【0019】
図2は、監視制御サーバ50を含む光伝送システム1の構成図である。
監視制御サーバ50は、入力部51と、情報収集部52と、データベース53と、変更試行部54と、情報設定部55とを有する。
入力部51は、光伝送システム1内の監視区間の特定情報(構成名、区間数など)をオペレータから受け付けると、その特定情報からデータベース53を作成する(詳細は図4図5)。
【0020】
情報収集部52は、データベース53に登録された各区間の装置(伝送装置20、可変ATT40)から、変更試行部54の処理に用いる情報(ATT値を計算するための情報)を収集する。この情報収集は、ルータやスイッチを介してイーサネット(登録商標)ケーブルなどの通信回線経由で行われる。データベース53には、情報収集部52によって収集された情報が登録される。
【0021】
変更試行部54は、情報収集部52により収集された情報をデータベース53から読み出し、同じ光ファイバ内を流れる両光信号を可変ATT40が調整するときのATT値を計算する。そして、変更試行部54は、計算結果のATT値を可変ATT40に適用することで、両光信号が送信できるか否かを試行(シミュレーション)する。
情報設定部55は、変更試行部54の試行で問題がないことが確認された計算結果のATT値を、実際に可変ATT40に設定する。
【0022】
図3は、監視制御サーバ50のハードウェア構成図である。
監視制御サーバ50は、CPU901と、RAM902と、ROM903と、HDD904と、通信I/F905と、入出力I/F906と、メディアI/F907とを有するコンピュータ900として構成される。
通信I/F905は、外部の通信装置915と接続される。入出力I/F906は、入出力装置916と接続される。メディアI/F907は、記録媒体917からデータを読み書きする。さらに、CPU901は、RAM902に読み込んだプログラム(アプリケーションや、その略のアプリとも呼ばれる)を実行することにより、各処理部を制御する。そして、このプログラムは、通信回線を介して配布したり、CD-ROM等の記録媒体917に記録して配布したりすることも可能である。
【0023】
図4は、データベース53の一部を示すテーブルである。
テーブル52Aは、光伝送システム1の構成名と、その構成名に対応する区間と、OSC送信部25が送信するOSC光信号27のOSC送信パワー[dBm]と、OSC受信部26が受信するOSC光信号27のOSC受信パワー[dBm]と、可変ATT40に設定されるATT値[dB]とを対応付けて格納する。
入力部51は、構成名「構成1」およびその区間数=3の入力を受け付けると、事前に登録されている構成名と区間との対応データ(図示省略)を参照して、「構成1」に対応する区間「A-B,B-C,C-D」を求め、その区間をテーブル52Aに登録する。
【0024】
情報収集部52は、構成名とその区間「A-B,B-C,C-D」とがテーブル52Aに登録されると、各区間のテーブル52Aに格納する他の情報を収集する。
テーブル52Aの第1行には、区間A-Bの可変ATT40AにATT値=5が設定される旨が登録されている。このATT値は、伝送装置20AのOSC送信部25AのOSC送信パワー=3を、伝送装置20BのOSC受信部26BのOSC受信パワー=-30に減衰させるための設定である。
【0025】
図5は、データベース53の図4とは別の一部を示すテーブルである。
情報収集部52は、区間「A-B,B-C,C-D」がテーブル52Aに登録されると、各区間のテーブル52Bに格納する情報を収集する。テーブル52Bは、区間ごとに、以下の情報を対応付けて格納する。
・区間を通過する光信号の区間損失[dB]
・伝送装置20の装置種別(区間の送信側、受信側)
・AMP21の種別(ラマン、EDDA(Erbium Doped Fiber Amplifier)などのアンプ種別)
・区間を接続する光ファイバの種別(DSF(Dispersion Shifted optical Fiber)、SMF(Single-Mode optical Fiber)など)
【0026】
図6は、図1の光伝送システム1に対して、伝送装置20の交換がなされた後の構成図である。
区間B-Cの始点に位置していた図1の伝送装置20Bが、図6では別ベンダの伝送装置20Eへと交換される。これにより、伝送装置20EのOSC送信部25Eから伝送装置20CのOSC受信部26Cに送信されるOSC光信号27Eが、図1のOSC光信号27Bから変更される。
【0027】
よって、区間B-Cの可変ATT40Bは、自身を通過するOSC光信号27Eを調整するようにATT値に変更する必要が発生する。このATT値の変更前には、図1のデータ光信号L1は、OSC光信号27Eとの衝突による損失を回避するため、光送信部11からの送信が一時停止される(波線で示す符号L2)。
一方、伝送装置20EのOSC受信部26EはOSC光信号27Aの受信側であり、OSC光信号27Aの送信パワーは変更されないので、区間A-Bの可変ATT40AのATT値は変更しなくてもよい。
【0028】
図7は、図6の光伝送システム1に対して、可変ATT40BのATT値が変更された後の構成図である。
情報設定部55は、変更試行部54の試行で問題がないことが確認された計算結果のATT値を、実際に可変ATT40Bに設定する。これにより、一時停止していたデータ光信号L2は、実際に光ファイバ内を流れるデータ光信号L3として送信が再開される。
【0029】
図8は、監視制御サーバ50の処理の詳細を示すフローチャートである。
このフローチャートの前準備として、入力部51が受け付けた監視区間の特定情報(構成名=構成1および区間数=3)をもとに、図4のテーブル52Aの「構成名=構成1」と「区間=A-B,B-C,C-D」とを含むデータベース53が作成されている。
【0030】
S101として、情報収集部52は、図1の伝送装置(OXC)20Bを図6の伝送装置20Eに交換する前に、データベース53に書き込まれた各区間=A-B,B-C,C-DのATT値算出のために必要な情報を、各区間の装置(伝送装置20および可変ATT40)から収集して、データベース53に追記する。
なお、ATT値算出のために必要な情報は、図4のテーブル52Aの情報(OSC送信パワー、OSC受信パワー、ATT値)と、図5のテーブル52Bの情報(区間損失、送信側の装置種別、受信側の装置種別、アンプ種別、ファイバ種別)とを含む。
S101の処理後に、図1の伝送装置20Bが図6の伝送装置20E(以下「新伝送装置」)に交換されたとする。
【0031】
S111として、入力部51は、新伝送装置がOSC光信号27を送信する区間B-C(以下、「新区間」)に関するS101と同じ情報の収集指示をオペレータから受け付ける。情報収集部52は、新区間の各装置(図6の新伝送装置=伝送装置20Eと、その隣接装置である伝送装置20Cと、新区間の可変ATT40B)からATT値算出のために必要な情報を収集し、その収集データでデータベース53を更新する。
【0032】
図9は、新伝送装置に交換された後のデータベース53の一部を示すテーブルである。
図4のテーブル52Aと比較すると、図9のテーブル52Cは、変更試行部54が推定した追加情報(OSC伝送可能受信パワー[dBm]と、OSNR(Optical Signal to Noise Ratio)推定値[dB]と、OSNR伝送可能閾値[dB])が、さらに対応付けて格納される。
そのため、変更試行部54は、図9のテーブル52Cの情報(OSC送信パワー、OSC受信パワー、ATT値)と、図5のテーブル52Bの情報(区間損失、送信側の装置種別、受信側の装置種別、アンプ種別、ファイバ種別)とをもとに、テーブル52Cの追加情報を推定する。
【0033】
なお、新区間B-CにおけるS111の更新内容として、図9のテーブル52Cには、新伝送装置が送信するOSC送信パワーが4から6に変更され、受信側の伝送装置20CのOSC受信パワーも-22から-10に変更される。一方、S111の時点では、ATT値は5のまま変更なしである。
一方、新伝送装置の交換前後で、図5のテーブル52Bの内容は変更されなかったものとする。
【0034】
図8のS112として、変更試行部54は、S111で更新した情報を基に、新区間でのOSC光信号27の伝送可否判定を行う。図9のテーブル52Cでは、変更後のOSC受信パワー-10が、OSC伝送可能受信パワーの-5~-44の範囲内なので、伝送可である。
次に、変更試行部54は、新区間における受信トランスポンダ30でのデータ光信号L3の受信パワーを推定するOSNR推定値を算出する。図9のテーブル52Cでは、OSNR推定値=22が算出されている。
【0035】
そして、S113として、変更試行部54は、算出したOSNR推定値を基に、光信号の伝送可否を判定する。図9のテーブル52Cでは、OSNR推定値=22が、OSNR伝送可能閾値=25以上の範囲外なので、伝送不可である。
第1判定処理(S112およびS113)でともにYes(伝送可)なら、もともと新伝送装置は送信トランスポンダ10からのデータ光信号L2に対応済なので、新区間の可変ATT40のATT値を変更する必要がなく、そのまま処理を終了する。
【0036】
S112でNoまたはS113でNoなら、変更試行部54は新区間の可変ATT40のATT値を仮変更する(S121)。仮変更とは、実際に可変ATT40のATT値を変更する前に、監視制御サーバ50内で可変ATT40のATT値変更を試行することである。この可変ATT40の仮変更により影響を受ける新区間のOSC受信パワーおよびOSNR推定値も併せて変更される。
図10は、図9の状態からS121の仮変更が適用された後のデータベース53の一部を示すテーブルである。テーブル52Dでは、新区間B-CのATT値が5から1に仮変更されたことで、新区間B-CのOSC受信パワーも-10から-6に変更され、OSNR推定値も22から24に変更される。
【0037】
図8のS122として、変更試行部54は、仮変更されたATT値をもとに、S112と同様に新区間でのOSC光信号27の伝送可否判定処理を行う。そして、変更試行部54は、S113と同様に光信号の伝送可否判定処理(S123)を行う。
第2判定処理(S122およびS123)でともにYes(伝送可)なら、情報設定部55は、S121で仮変更したATT値を確定するために、新区間の可変ATT40のATT値を変更するように指示する(S142)。
なお、図10のテーブル52Dでは、変更後のOSC受信パワー-6が、OSC伝送可能受信パワーの-5~-44の範囲内なので、S122の伝送可である。しかし、OSNR推定値=24が、OSNR伝送可能閾値=25以上の範囲外なので、S123の伝送不可である。
【0038】
S122でNoまたはS123でNoなら、変更試行部54はS121で仮変更した新区間以外の他区間のATT値を仮変更する(S131)。この可変ATT40の仮変更により影響を受ける他区間のOSC受信パワーおよびOSNR推定値も併せて変更される。
図11は、図10の状態からS131の仮変更が適用された後のデータベース53の一部を示すテーブルである。テーブル52Eでは、他区間A-BのATT値が5から1に仮変更されたことで、他区間A-BのOSC受信パワーも-30から-12に変更され、OSNR推定値も24から26に変更される。
【0039】
図8のS132として、変更試行部54は、仮変更されたATT値をもとに、S112と同様に他区間でのOSC光信号27の伝送可否判定処理を行う。そして、変更試行部54は、S113と同様に光信号の伝送可否判定処理(S133)を行う。
なお、図11のテーブル52Eでは、変更後のOSC受信パワー-30が、OSC伝送可能受信パワーの-5~-44の範囲内なので、S132の伝送可である。そして、OSNR推定値=26が、OSNR伝送可能閾値=25以上の範囲内なので、S133の伝送可である。
【0040】
第3判定処理(S132およびS133)でともにYes(伝送可)なら、情報設定部55は、S121およびS131で仮変更したATT値を確定するために、仮変更した各区間の可変ATT40のATT値を変更するように指示する(S142)。
【0041】
S132でNoまたはS133でNoなら、変更試行部54はS121およびS131の仮変更を破棄する。そして、変更試行部54は、伝送可となるATT値がないことをオペレータへ通知する。
【0042】
以上、図6図11を参照して、図1の光伝送システム1に対して、伝送装置20の交換がなされた後のATT値の調整処理を説明した。図12以降では、図1の光伝送システム1に対して、送信トランスポンダ10および受信トランスポンダ30(以下、「トランスポンダ組」)の交換がなされた後のATT値の調整処理を説明する。
【0043】
図12は、図1の光伝送システム1に対して、トランスポンダ組の交換がなされた後の構成図である。
図1の所定ベンダの旧トランスポンダ組が、図12では別ベンダの新トランスポンダ組(送信トランスポンダ10Xおよび受信トランスポンダ30X)へと交換される。これにより、送信トランスポンダ10Xの光送信部11Xから受信トランスポンダ30Xの光受信部31Xに送信されるデータ光信号L4が、図1のデータ光信号L1から変更される。よって、データ光信号L4が流れる全区間A-B,B-C,C-Dがこの影響を受ける。
【0044】
図13は、図12で説明したトランスポンダ組の交換がなされた後の監視制御サーバ50の処理を示すフローチャートである。大まかには、図13のフローチャートの処理と、図8のフローチャートの処理とは類似するが、相違点を中心に説明する。
【0045】
まず、データベース53に格納される情報を収集する処理において、図8のS101,S111では、新伝送装置の交換前後で情報を収集していた。一方、図13のS101B,S111Bでは、新トランスポンダ組(TP組)の交換前後で情報を収集するように変更される。つまり、S111Bでは、情報を収集する区間が新トランスポンダ組のデータ光信号L4が通過する区間=A-B,B-C,C-Dに拡大される。
【0046】
図14は、新トランスポンダ組に交換された後のデータベース53の一部を示すテーブルである。図9のテーブル52Cと比較すると、図14のテーブル52FではOSNR伝送可能閾値が交換後の受信トランスポンダ30に合わせた値=28以上に変更されている。
一方、今回の新トランスポンダ組への交換では、伝送装置20は交換されていないので、テーブル52FのOSC送信パワーは、どの区間も変更されなかった。他の変更されたパラメータについては、後記する。
【0047】
図13に戻り、ATT値の仮変更前の処理において、図8のS112(OSC光信号27の伝送可否判定処理)が省略され、変更試行部54は、算出したOSNR推定値を基に、光信号の伝送可否を判定する処理(S113)を実行する。S113でYesなら、ATT値の変更は不要なので、変更試行部54は処理を終了する。
図14のテーブル52Fでは、ATT値変更前のOSNR推定値=27が、OSNR伝送可能閾値=28以上の範囲外なので、伝送不可である(S113でNo)。
【0048】
そして、図8では新区間の可変ATT40のATT値を仮変更する(S121)処理を行っていた。一方の図13では、新区間の代わりに、データ光信号L4が通過する区間のうちの所定区間について、変更試行部54は可変ATT40のATT値を仮変更する(S121B)。
図14のテーブル52Fでは、所定区間B-CのATT値が5から3に仮変更されたことで、所定区間B-CのOSC受信パワーも-10から-8に変更される。なお、S121Bの所定区間は、例えば、前回の新伝送装置が交換されたときの新区間B-Cとする。
【0049】
変更試行部54は、S121Bで仮変更されたATT値をもとに、S112と同様に所定区間でのOSC光信号27の伝送可否判定処理を行う(S122)。そして、変更試行部54は、S113と同様に光信号の伝送可否判定処理(S123)を行う。図14のテーブル52Fでは、所定区間B-CのATT値変更後のOSNR推定値=27が、OSNR伝送可能閾値=28以上の範囲外なので、伝送不可である(S123でNo)。
【0050】
さらに、変更試行部54はS121Bの所定区間B-Cとは別の他区間A-Bに存在する可変ATT40のATT値を仮変更する(S131B)。図14のテーブル52Fでは、他区間A-BのATT値が5から3に仮変更されたことで、他区間A-BのOSC受信パワーも-30から-20に変更され、OSNR推定値も27から29に変更される。
そして、S132およびS133の双方で伝送可となり、情報設定部55は、S121BおよびS131Bで仮変更したATT値を確定するための制御信号を可変ATT40に送信する(S142)。
【0051】
[効果]
本発明は、光伝送システム1の伝送を制御する監視制御サーバ50であって、
光伝送システム1が、
送信トランスポンダ10から伝送されるデータ光信号L1が、複数の伝送装置20を経由して受信トランスポンダ30で受信され、
隣接する伝送装置20間の区間でOSC光信号27が送受信され、
区間を通過するデータ光信号L1およびOSC光信号27の両光信号をATT値に従って減衰させる可変ATT40が用いられており、
監視制御サーバ50が、
光伝送システム1内の監視区間を特定するための情報の入力を受け付ける入力部51と、
監視区間に存在する伝送装置20および可変ATT40からATT値を計算するための情報を収集する情報収集部52と、
情報収集部52が収集した情報をもとに監視区間を通過する両光信号の受信時のパワーが所内範囲内か否かにより、両光信号の伝送可否を判定する第1判定処理を実行する変更試行部54と、を有することを特徴とする。
【0052】
これにより、トランスポンダまたは伝送装置20を他ベンダのものに更改した場合でも、ベンダ間の変調方式の違いによる同じ光ファイバ内で主信号(データ光信号L1)と監視用信号(OSC光信号27)との間の影響を検出できる。
よって、伝送装置20内部で他ベンダのトランスポンダや他ベンダの伝送装置20にも追加で対応させる開発も不要となる。
【0053】
本発明は、変更試行部54が、第1判定処理で伝送不可と判断した場合、監視区間に存在する伝送装置20を交換した所定区間内の可変ATT40のATT値を情報収集部52が収集した情報をもとに変更することで、両光信号の受信時のパワーが所内範囲内か否かを判定する第2判定処理を実行することを特徴とする。
【0054】
これにより、伝送装置20を交換した所定区間内で第2判定処理を行うことで、伝送装置20を他ベンダのものに更改した場合のモジュール個体差への追従が可能となる。
【0055】
本発明は、変更試行部54が、第2判定処理で伝送不可と判断した場合、監視区間に存在する所定区間とは別の区間内の可変ATT40のATT値を情報収集部52が収集した情報をもとに変更することで、両光信号の受信時のパワーが所内範囲内か否かを判定する第3判定処理を実行することを特徴とする。
【0056】
これにより、第3判定処理でATT値を変更する範囲は広い区間となってしまうが、トランスポンダを他ベンダのものに更改した場合でも、トランスポンダ間(End-to-End)でモジュール個体差への追従が可能となる。
【0057】
本発明は、監視制御サーバ50が、さらに、情報設定部55を有しており、
情報設定部55が、第2判定処理または第3判定処理において、可変ATT40のATT値を変更することで両光信号が伝送可と変更試行部54が判断した後に、光伝送システム1内の可変ATT40のATT値を変更するように制御することを特徴とする。
【0058】
これにより、両光信号が伝送可と判断されるまでは実機の可変ATT40のATT値を変更せずに監視制御サーバ50内で試行(シミュレーション)を行うだけなので、光伝送システム1内の両光信号の不要な減衰を抑制できる。
【0059】
本発明は、変更試行部54が、第3判定処理において可変ATT40のATT値を変更することでも両光信号の少なくとも一方が伝送不可と判断した場合、伝送可となるATT値が算出できない旨を外部に通知することを特徴とする。
【0060】
これにより、トランスポンダまたは伝送装置20の交換によって発生する光信号のロスに対して、可変ATT40のATT値を変更する対策以外の方法を、オペレータに早期に促すことができる。
【0061】
本発明は、変更試行部54が、監視区間を通過するデータ光信号L1の受信時のパワーとして、情報収集部52が収集した情報をもとにOSNR(Optical Signal to Noise Ratio)推定値を算出し、所内範囲内か否かを判定するためのOSNR伝送可能閾値と比較することを特徴とする。
【0062】
これにより、データ光信号L1をそのまま用いてATT値を変更するか否かを試さないため、データ光信号L1に含まれる顧客データを損失しなくても済む。
【符号の説明】
【0063】
1 光伝送システム
10 送信トランスポンダ
11 光送信部
20 伝送装置
21 AMP
25 OSC送信部
26 OSC受信部
27 OSC光信号(監視用光信号)
30 受信トランスポンダ
31 光受信部
40 可変ATT(減衰器)
50 監視制御サーバ(光伝送制御装置)
51 入力部
52 情報収集部
53 データベース
54 変更試行部
55 情報設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16