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特許7578211材料推奨装置、材料推奨方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】材料推奨装置、材料推奨方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/28 20190101AFI20241029BHJP
【FI】
G06F16/28
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024502427
(86)(22)【出願日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2023034824
(87)【国際公開番号】W WO2024071072
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】P 2022152385
(32)【優先日】2022-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】和田 勇生
【審査官】酒井 恭信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/026146(WO,A1)
【文献】特開2017-037455(JP,A)
【文献】国際公開第2020/012788(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0286854(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112368692(CN,A)
【文献】台湾特許出願公開第202024956(TW,A)
【文献】特開2010-092423(JP,A)
【文献】特許第4469908(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00 - 16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品種別と、情動を表現する言葉を示す情動言葉と、を示す情報の入力を受け付ける入力部と、
前記製品種別に属する製品に用いられる材料と、五感に関する複数の感覚を示す複数の感覚パラメータについて前記材料に対して人間が受ける前記複数の感覚の各々の度合いを示す前記複数の感覚パラメータの値とが対応付けられた材料パラメータ情報に基づいて、前記入力部に入力された前記製品種別に対応する前記材料ごとの前記複数の感覚パラメータの値を抽出する材料パラメータ抽出部と、
前記情動言葉と、前記複数の感覚パラメータについて前記情動言葉に対する前記複数の感覚の各々が数値化された前記複数の感覚パラメータの値とが対応付けられた情動言葉パラメータ情報に基づいて、前記入力部に入力された前記情動言葉に対応する前記複数の感覚パラメータの値を抽出する情動言葉パラメータ抽出部と、
前記材料パラメータ抽出部によって抽出された前記材料ごとの前記複数の感覚パラメータの値の座標と、前記情動言葉パラメータ抽出部によって抽出された前記複数の感覚パラメータの値の座標との間の距離に基づいて、前記入力部に入力された前記情動言葉に対して推奨される前記材料を決定する推奨材料決定部と、
を備える材料推奨装置。
【請求項2】
前記情動言葉は、SD(Semantic Differential)法による印象評価において定義されるEPA(Evaluation, Potency, Activity)構造の因子のうち、評価性因子又は活動性因子に分類される語句である
請求項1に記載の材料推奨装置。
【請求項3】
前記感覚パラメータの値を、複数種類の感覚でそれぞれ受ける印象が互いに関係しあうクロスモーダル効果を考慮する係数を用いて補正する補正部
をさらに備える請求項1又は2に記載の材料推奨装置。
【請求項4】
前記係数には、前記複数種類の感覚によってそれぞれ印象を受ける際の順序に応じて異なる値が設定されており、
前記補正部は、前記順序を示す情報を取得し、取得された前記順序に対応する前記係数を用いて補正する
請求項3に記載の材料推奨装置。
【請求項5】
前記材料ごとの感覚パラメータの値の補正に用いられる前記係数には、先に受ける感覚の場合には1の値が設定され、後から受ける感覚の場合には0より大きく1未満の値が設定され、それ以外の感覚の場合には0が設定されている
請求項4に記載の材料推奨装置。
【請求項6】
前記情動言葉の感覚パラメータの値の補正に用いられる前記係数には、前記クロスモーダル効果が生じる感覚の場合には1の値が設定され、前記クロスモーダル効果が生じない感覚の場合には0の値が設定されている
請求項4に記載の材料推奨装置。
【請求項7】
前記感覚とは、五感又は前記五感がさらに細分化された感覚である
請求項1又は2に記載の材料推奨装置。
【請求項8】
情報処理装置が実行する、材料推奨方法であって、
製品種別と、情動を表現する言葉を示す情動言葉と、を示す情報の入力を受け付ける入力ステップと、
前記製品種別に属する製品に用いられる材料と、五感に関する複数の感覚を示す複数の感覚パラメータについて前記材料に対して人間が受ける前記複数の感覚の各々の度合いを示す前記複数の感覚パラメータの値とが対応付けられた材料パラメータ情報に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記製品種別に対応する前記材料ごとの前記複数の感覚パラメータの値を抽出する材料パラメータ抽出ステップと、
前記情動言葉と、前記複数の感覚パラメータについて前記情動言葉に対する前記複数の感覚の各々が数値化された前記複数の感覚パラメータの値とが対応付けられた情動言葉パラメータ情報に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記情動言葉に対応する前記複数の感覚パラメータの値を抽出する情動言葉パラメータ抽出ステップと、
前記材料パラメータ抽出ステップにおいて抽出された前記材料ごとの前記複数の感覚パラメータの値の座標と、前記情動言葉パラメータ抽出ステップにおいて抽出された前記複数の感覚パラメータの値の座標との間の距離に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記情動言葉に対して推奨される前記材料を決定する推奨材料決定ステップと、
を有する材料推奨方法。
【請求項9】
コンピュータに、
製品種別と、情動を表現する言葉を示す情動言葉と、を示す情報の入力を受け付ける入力ステップと、
前記製品種別に属する製品に用いられる材料と、五感に関する複数の感覚を示す複数の感覚パラメータについて前記材料に対して人間が受ける前記複数の感覚の各々の度合いを示す前記複数の感覚パラメータの値とが対応付けられた材料パラメータ情報に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記製品種別に対応する前記材料ごとの前記複数の感覚パラメータの値を抽出する材料パラメータ抽出ステップと、
前記情動言葉と、前記複数の感覚パラメータについて前記情動言葉に対する前記複数の感覚の各々が数値化された前記複数の感覚パラメータの値とが対応付けられた情動言葉パラメータ情報に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記情動言葉に対応する前記複数の感覚パラメータの値を抽出する情動言葉パラメータ抽出ステップと、
前記材料パラメータ抽出ステップにおいて抽出された前記材料ごとの前記複数の感覚パラメータの値の座標と、前記情動言葉パラメータ抽出ステップにおいて抽出された前記複数の感覚パラメータの値の座標との間の距離に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記情動言葉に対して推奨される前記材料を決定する推奨材料決定ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料推奨装置、材料推奨方法及びプログラムに関する。
本願は、2022年9月26日に、日本に出願された特願2022-152385号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
利用者が製品を選ぶ際に評価基準とする指標として、例えば製品に用いられた材料の特性、及びその性能が挙げられる。その他にも、その材料が五感(視覚、触覚、聴覚、味覚、嗅覚)によってどのように感じられるものであるか、及び、その材料が感性にどのように訴えるものであるか、といった利用者が受ける印象も、利用者が製品を選ぶ際に評価基準とする重要な指標の一つである。
【0003】
従来、利用者が所望する感覚を発現する材料を精度高く提示することは困難であった。利用者が所望する感覚に応じた材料を推奨するためには、例えば、材料を推奨しようとする担当者が利用者に対して十分なヒアリング等を実施する必要がある。しかしながら、その場合、利用者が所望する感覚を発現する材料が適切に推奨されるか否かについては、担当者のセンスにも大きく左右される。例えば、利用者が「心地よい」材料を求めていたとしても、利用者が考える心地よさと担当者が考える心地よさとは、必ずしも一致しているとは限らないからである。
【0004】
このような課題に対し、例えば特許文献1に記載の近似触感材料推奨システムは、触感を表現する用語(オノマトペ)と材料の表面の物理特性との対応を示すパラメータ値を予め保持しておき、当該パラメータ値に基づいて、入力されたオノマトペに対して推奨される材料を自動的に提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4469908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の近似触感材料推奨システムは、触覚を表すオノマトペによる入力のみに対応したシステムである。しかしながら実際には、利用者が材料から受ける印象は、必ずしも触覚によって得られる印象であるとは限らない。利用者が材料から受ける印象には、五感のうち複数の感覚によって、あるいは全ての感覚によってそれぞれ得られた印象が含まれていることもある。
【0007】
また、利用者が、材料から受ける印象を言葉で表現する場合、単に五感によって得られる印象を疑似的に表現するオノマトペ(例えば、「さらさら」、「つるつる」等)であるとは限らない。利用者は、材料から受ける印象を、情動を表現する言葉で表現することも少なくない。ここでいう情動を表現する言葉とは、一般的な官能評価において人の感覚を数値化する場合に用いられる形容詞等である。このような形容詞には、例えば「好きな」、「風変りな」、「心地よい」、及び「高級感がある」等の、五感の中の特定の感覚のみにとらわれないものもある。以上のようなことから、従来の技術では、人の情動に応じて材料を推奨することが難しいという課題があった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、人の情動に応じて材料を推奨することができる材料推奨装置、材料推奨方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の内容は、以下の実施態様を含む。
[1] 製品種別と、情動を表現する言葉を示す情動言葉と、を示す情報の入力を受け付ける入力部と、前記製品種別に属する製品に用いられる材料と前記材料に対して人間が受ける感覚の度合いを示す感覚パラメータの値とが対応付けられた材料パラメータ情報に基づいて、前記入力部に入力された前記製品種別に対応する前記材料ごとの感覚パラメータの値を抽出する材料パラメータ抽出部と、前記情動言葉と前記感覚パラメータの値とが対応付けられた情動言葉パラメータ情報に基づいて、前記入力部に入力された前記情動言葉に対応する感覚パラメータの値を抽出する情動言葉パラメータ抽出部と、前記材料パラメータ抽出部によって抽出された前記材料ごとの感覚パラメータの値と、前記情動言葉パラメータ抽出部によって抽出された前記感覚パラメータの値と、に基づいて、前記入力部に入力された前記情動言葉に対して推奨される前記材料を決定する推奨材料決定部と、を備える材料推奨装置。
【0010】
[2] 前記情動言葉は、SD(Semantic Differential)法による印象評価において定義されるEPA(Evaluation, Potency, Activity)構造の因子のうち、評価性因子又は活動性因子に分類される語句である[1]に記載の材料推奨装置。
【0011】
[3] 前記感覚パラメータの値を、複数種類の感覚でそれぞれ受ける印象が互いに関係しあうクロスモーダル効果を考慮する係数を用いて補正する補正部をさらに備える[1]又は[2]に記載の材料推奨装置。
【0012】
[4] 前記係数には、前記複数種類の感覚によってそれぞれ印象を受ける際の順序に応じて異なる値が設定されており、前記補正部は、前記順序を示す情報を取得し、取得された前記順序に対応する前記係数を用いて補正する[3]に記載の材料推奨装置。
【0013】
[5] 前記材料ごとの感覚パラメータの値の補正に用いられる前記係数には、先に受ける前記感覚の場合には1の値が設定され、後から受ける感覚の場合には0より大きく1未満の値が設定され、それ以外の感覚の場合には0が設定されている[4]に記載の材料推奨装置。
【0014】
[6] 前記情動言葉の感覚パラメータの値の補正に用いられる前記係数には、前記クロスモーダル効果が生じる前記感覚の場合には1の値が設定され、前記クロスモーダル効果が生じない感覚の前記感覚の場合には0の値が設定されている[4]又は[5]に記載の材料推奨装置。
【0015】
[7] 前記感覚とは、五感又は前記五感がさらに細分化された感覚である[1]~[6]のいずれかに記載の材料推奨装置。
【0016】
[8] 製品種別と、情動を表現する言葉を示す情動言葉と、を示す情報の入力を受け付ける入力ステップと、前記製品種別に属する製品に用いられる材料と前記材料に対して人間が受ける感覚の度合いを示す感覚パラメータの値とが対応付けられた材料パラメータ情報に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記製品種別に対応する前記材料ごとの感覚パラメータの値を抽出する材料パラメータ抽出ステップと、前記情動言葉と前記感覚パラメータの値とが対応付けられた情動言葉パラメータ情報に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記情動言葉に対応する感覚パラメータの値を抽出する情動言葉パラメータ抽出ステップと、前記材料パラメータ抽出ステップにおいて抽出された前記材料ごとの感覚パラメータの値と、前記情動言葉パラメータ抽出ステップにおいて抽出された前記感覚パラメータの値と、に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記情動言葉に対して推奨される前記材料を決定する推奨材料決定ステップと、を有する材料推奨方法。
【0017】
[9] コンピュータに、製品種別と、情動を表現する言葉を示す情動言葉と、を示す情報の入力を受け付ける入力ステップと、前記製品種別に属する製品に用いられる材料と前記材料に対して人間が受ける感覚の度合いを示す感覚パラメータの値とが対応付けられた材料パラメータ情報に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記製品種別に対応する前記材料ごとの感覚パラメータの値を抽出する材料パラメータ抽出ステップと、前記情動言葉と前記感覚パラメータの値とが対応付けられた情動言葉パラメータ情報に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記情動言葉に対応する感覚パラメータの値を抽出する情動言葉パラメータ抽出ステップと、前記材料パラメータ抽出ステップにおいて抽出された前記材料ごとの感覚パラメータの値と、前記情動言葉パラメータ抽出ステップにおいて抽出された前記感覚パラメータの値と、に基づいて、前記入力ステップにおいて入力された前記情動言葉に対して推奨される前記材料を決定する推奨材料決定ステップと、を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、人の情動に応じて材料を推奨することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本開示の一実施形態における材料推奨装置100の機能構成を示すブロック図である。
図2】本開示の一実施形態における材料推奨装置100に入力される情動言葉の一例を示す図である。
図3】本開示の一実施形態における材料推奨装置100において用いられる五感パラメータの一例を示す図である。
図4】本開示の一実施形態における材料推奨装置100のパラメータ情報記憶部110に記憶された材料パラメータ情報111の一例を示す図である。
図5】本開示の一実施形態における材料推奨装置100のパラメータ情報記憶部110に記憶された情動言葉パラメータ情報112の一例を示す図である。
図6】本開示の一実施形態における材料推奨装置100のパラメータ情報記憶部110に記憶されたモーダル補正情報113の一例を示す図である。
図7】本開示の一実施形態における材料推奨装置100のパラメータ情報記憶部110に記憶されたモーダル補正情報113の一例を示す図である。
図8】本開示の一実施形態における材料推奨装置100の動作を示すフローチャートである。
図9】、本開示の一実施形態における材料推奨装置100のモーダル補正部133によって行われる材料パラメータの値の補正処理の一例を示す図である。
図10】本開示の一実施形態における材料推奨装置100のモーダル補正部133によって行われる情動言葉パラメータの値の補正処理の一例を示す図である。
図11】本開示の一実施形態における材料推奨装置100推奨材料決定部134によって行われる座標間の距離の算出処理の一例を示す図である。
図12】本開示の一実施形態における材料推奨装置100の出力部140によって出力される情報の一例を示す図である。
図13図13は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100の出力部140によって出力される情報のその他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
[材料推奨装置の構成]
以下、実施形態の材料推奨装置100の構成について説明する。図1は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100の機能構成を示すブロック図である。
【0022】
材料推奨装置100は、例えば汎用コンピュータ等を用いて構成される情報処理装置である。材料推奨装置100は、製品に用いられる材料に対して利用者が所望する感覚を表す言葉であって、利用者の情動を表現する言葉(以下、「情動言葉」という。)の入力を受け付ける。材料推奨装置100は、入力された情動言葉に基づいて、少なくとも1つの推奨される材料を決定し、決定された材料を示す情報を出力する。
【0023】
図1は、本開示の第1の実施形態における材料推奨装置100の機能構成を示すブロック図である。図1に示されるように、材料推奨装置100は、パラメータ情報記憶部110と、入力部120と、材料パラメータ抽出部131と、情動言葉パラメータ抽出部132と、モーダル補正部133と、推奨材料決定部134と、出力部140とを含んで構成される。
【0024】
パラメータ情報記憶部110は、コンピュータ読み出し可能な記憶媒体を用いて構成される。ここでいうコンピュータ読み出し可能な記憶媒体とは、例えば、磁気ハードディスク装置、又は半導体記憶装置等である。パラメータ情報記憶部110は、推奨される材料を決定するために用いられる各種のパラメータ情報を予め記憶している。図1に示されるように、パラメータ情報記憶部110は、材料パラメータ情報111と、情動言葉パラメータ情報112と、モーダル補正情報113とを少なくとも記憶している。各パラメータ情報の詳細については後に詳しく説明する。
【0025】
入力部120は、利用者による入力操作を受け付ける入力装置を用いて構成される。ここでいう入力装置とは、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、及び入力ボタン等である。図1に示されるように、入力部120は、製品種別入力部121と、情動言葉入力部122、使用状況入力部123とを含んで構成される。
【0026】
製品種別入力部121は、利用者によって入力された製品種別を示す情報(以下、「製品種別情報」という。)を取得する。製品種別入力部121は、取得された製品種別情報を材料パラメータ抽出部131へ出力する。ここでいう製品種別情報とは、例えば、「食品用包装材」、「住宅用建材」、及び「鞄用合皮材」等の、製品に用いられる材料の種別を示す情報である。
【0027】
情動言葉入力部122は、利用者によって入力された情動言葉を示す情報(以下、単に「情動言葉」という。)を取得する。情動言葉入力部122は、取得された情動言葉を情動言葉パラメータ抽出部132へ出力する。ここでいう情動言葉とは、一般的な官能評価において人の感覚を数値化する場合に用いられる形容詞等の語句である。このような形容詞には、例えば「好きな」、「風変りな」、「心地よい」、及び「高級感がある」等の、五感の中の特定の感覚のみにとらわれない語句もある。
【0028】
なお、一般的な官能評価において、人の情動が数値化して評価される場合、SD(Semantic Differential)法による評価が用いられることが多い。SD法とは、反対の意味を持つ、対となる形容詞を用いて、対象物に対する人の印象(感性)を測定し、数値的に評価する手法である。SD法の特徴は、少数の因子で印象の構造を表現できる点にある、例えば、SD法では、評価性因子、活動性因子、及び力量性因子と解釈される3つの基本的な因子からなる構造が見出される。この構造は、EPA(Evaluation, Potency, Activity)構造と呼ばれる。
【0029】
評価性(Evaluation)因子は、「好き-嫌い」、「良い-悪い」、及び「美しい-醜い」といった、対象の価値に関する総合的な評価を表す形容詞の対によって表現される。そのほか、評価性因子は、評価を行う対象の種類(形態、色、及び音等)によって異なるが、「安定した-不安定な」、「澄んだ-濁った」、及び「暖かい-冷たい」といった、対象の性質について表現する形容詞の対によっても構成される。
【0030】
活動性(Activity)因子と力量性(Potency)因子とは、ともに対象の性質についての表現によって構成される。活動性因子は、「騒がしい-静かな」、「動的な-静的な」、及び「派手な-地味な」等の形容詞の対によって表現される。力量性因子は、「硬い-柔らかい」、「鋭い-鈍い」、及び「緊張した-緩んだ」等の形容詞の対によって表現される。
【0031】
図2は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100に入力される情動言葉の一例を示す図である。上記の3つの基本的な因子のうち評価性因子及び活動性因子は、人の情動を直接的に表す形容詞が多く含まれる。本実施形態では、一例として、SD法による印象評価おいて定義されるEPA構造の因子のうち、評価性因子及び活動性因子に分類される語句を、情動言葉として定義する。なお、形容詞の対を情動言葉として定義するのではなく、対となる形容詞の双方を別々に1つの情動言葉として定義する。
【0032】
使用状況入力部123は、利用者によって入力された、製品の使用状況を示す情報(以下、「使用状況情報」という。)を取得する。使用状況入力部123は、取得された使用状況情報をモーダル補正部133へ出力する。
【0033】
ここでいう使用状況情報とは、利用者が、製品から印象を受ける際に、五感のうちどの感覚によって印象を受ける状況であるかを特定することができる情報である。また、使用状況情報とは、利用者が、五感のうち複数の感覚によってそれぞれ印象を受ける場合には、どのような順序で各感覚による印象を受ける状況であるかを特定することができる情報である。例えば、使用状況情報とは、利用者が、五感のうち視覚と触覚の2つの感覚によってそれぞれ印象を受ける場合には、先に製品を見て、後に製品を触る状況であるのか、又は、先に製品を触って、後に製品を見る状況であるのかを特定することができる情報である。
【0034】
材料パラメータ抽出部131、情動言葉パラメータ抽出部132、モーダル補正部133、及び推奨材料決定部134は、例えば記憶部(不図示)に予め記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが読み出して実行することによって実現される機能部である。なお、上記の記憶部とパラメータ情報記憶部110とは、同一の記憶媒体を用いて構成されてもよい。
【0035】
材料パラメータ抽出部131は、製品種別入力部121から出力された製品種別情報を取得する。また、材料パラメータ抽出部131は、パラメータ情報記憶部110に記憶された材料パラメータ情報111を参照する。材料パラメータ抽出部131は、取得された製品種別情報に対応する製品種別に対応付けられた材料パラメータの値を材料パラメータ情報111から抽出する。
【0036】
材料パラメータ情報111は、材料と五感パラメータとの関連性の度合いを示す情報である。また、ここでいう五感パラメータとは、五感を示す項目、あるいは五感の各々が更に細分化された感覚を示す項目によって構成される。なお、本実施形態では、五感パラメータは、五感の各々が更に細分化された感覚を示す項目によって構成されているものとする。
【0037】
図3は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100において用いられる五感パラメータの一例を示す図である。図3に示されるように、触覚は、例えば、「硬さ」、「粗さ」、「摩擦」、及び「温冷」という五感パラメータに更に分類される。また、視覚は、例えば、「色1」、「色2」、「色3」、「質感1」、「質感2」、及び「質感3」という五感パラメータに更に分類される。
【0038】
なお、触覚に関しては、硬さ、粗さ、摩擦、及び温冷の4つの要素に分類できることが知られている。また、具体的には、例えば触覚の「粗さ」の五感パラメータとして、規格(JIS B 0601)によって規定された平均粗さRa及び最大高さRzの値が用いられてもよい。あるいは、これら平均粗さRa及び最大高さRz等を主成分分析又は因子分析して次元を落としたパラメータと値が用いられてもよい。また、例えば、触覚の「硬さ」の五感パラメータとして、押し込む力と変位に基づいて算出されるヤング率の値が用いられてもよい。また、例えば、触覚の「摩擦」の五感パラメータとして、材料に触れた際の動摩擦係数の値等が用いられてもよい。
【0039】
なお、材料推奨装置100を様々な材料に対応させる場合、触覚に関しては、例えばウェアラブル型の装置等を用いて、全ての材料において統一的に評価されたパラメータ値が取得されることが望ましい。ウェアラブル型の装置を人の手に装着して実際に材料に触れることで、摩擦及び硬さ等を統一的に測定することができる。
【0040】
なお、視覚に関しては、図3に示される視覚の五感パラメータには、「色1」、「色2」、及び「色3」が含まれているが、一般的に、色は、例えばL*a*b*又はL*C*Hのように3つの変数で表現できることが知られている。例えば、「色1」、「色2」、及び「色3」の五感パラメータとして、これら3つの変数をそれぞれ用いるようにしてもよい。なお、材料推奨装置100は、どの色空間の3つの変数を用いても構わないが、全ての材料について同一の色空間の3つの変数を用いて評価する必要がある。
【0041】
なお、視覚に関しては、触覚のように明確に有限の要素に分類できることは知られていない。但し、昨今、色及び質感の要素は、人の視覚的な印象に影響を与える重要な要素であることが分かってきた。ここで質感とは、双方向反射率分布関数BRDFに代表されるような、反射率に関する物性情報である。BRDF(Bidirectional Reflectance Distribution Function)は、ある特定の角度から光を入射した時の反射光の角度分布特性である。一般的に、CG(Computer Graphics)では、このBRDFのパラメータを用いたレンダリングによって材料の質感が再構成される。もちろん、これらのパラメータに関しても、主成分分析又は因子分析して次元を落としたパラメータと値が用いられてもよい。
【0042】
なお、味覚に関しては、味覚化学成分の種類及びその量等が、人の印象に影響を与える要素であると考えられる。また、嗅覚に関しては、嗅覚化学成分の種類及びその濃度が、人の印象に影響を与える要素であると考えられる。また、聴覚に関しては、信号強度及びパワースペクトル等が、人の印象に影響を与える要素であると考えられる。もちろん、これらのパラメータに関しても、主成分分析又は因子分析して次元を落としたパラメータと値が用いられてもよい。
【0043】
なお、材料パラメータの値は、例えば、何らかの測定方法によって得られた実際の計測値そのものであってもよいし、全ての材料の材料パラメータの値が標準化された値であってもよい。但し、実際の計測値そのものが用いられる場合には、全ての材料についての材料パラメータの値の単位を統一しておく必要がある。例えば、「粗さ」の材料パラメータとして規格によって規定された平均粗さRaの値を用いる場合には、全ての材料の「粗さ」の材料パラメータの値を、ミリメートル又はマイクロメートル等の単位の値に統一すればよい。
【0044】
なお、食用品包装材、住宅用建材、及び鞄用合皮材等の工業製品に用いられる材料から受ける印象においては、五感のうち、とくに視覚及び触覚による印象が大きな比重を占めていると考えられる。
【0045】
図4は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100のパラメータ情報記憶部110に記憶された材料パラメータ情報111の一例を示す図である。材料パラメータ情報111は、材料と前述の五感パラメータとの関連性を示すデータである。以下、材料に対応付けられた五感パラメータを「材料パラメータ」という。
【0046】
図4に示される材料パラメータ情報111では、製品種別と、製品番号と、製品の材料構成を示す情報と、材料パラメータとが互いに対応付けられている。材料パラメータ情報111の各行が、それぞれ1つの材料に関する情報である。
【0047】
例えば、図4に示される材料パラメータ情報111に1行目には、「製品種別」の項目に「食品用梱包材」という値が登録され、「製品番号」の項目に「101a001b001」という値が設定されている。これは、「101a001b001」という製品番号が付与された材料が、食品用梱包材に用いられる材料であることを表している。また、図4に示される材料パラメータ情報111に1行目には、「製品の材料構成」の項目の「主構成物」の項目に「101」という値が設定され、「添加物1」の項目に「a001」という値が設定され、「添加物2」の項目に「b001」という値が設定されている。これは、「101a001b001」という製品番号が付与された材料が、「101」の識別情報が付与された主構成物、「a001」の識別情報が付与された添加剤、及び「b001」の識別情報が付与された添加剤等を含む材料であることを表している。
【0048】
また、材料パラメータ情報111の各材料パラメータには、例えば0を基準とした標準化された値が登録されている。標準化は、各材料パラメータの値を、各材料パラメータのデータベース全体の平均値を引き、標準偏差で割ることであり、平均が0、分散が1の標準偏差とする操作である。このように、各材料は、五感パラメータ(材料パラメータ)によって数値化されている。図4の例によると、製品番号「101a001b001」の五感パラメータ「硬さ」の値は「0.12」であり、五感パラメータ「温冷」の値は「0.03」である。
【0049】
なお、製品種別によっては、五感のうち一部の感覚(例えば、聴覚や味覚)が印象に影響を及ぼさない材料もある。例えば、味覚は、食品用包装材に対しては僅かに印象に影響を与えることがあるが、住宅用建材及び鞄用合皮材に対しては印象に影響を与えることがない。
【0050】
情動言葉パラメータ抽出部132は、情動言葉入力部122から出力された情動言葉を取得する。図2に一例を表したとおり、情報言葉は人の情動を表す語句である。また、情動言葉パラメータ抽出部132は、パラメータ情報記憶部110に記憶された情動言葉パラメータ情報112を参照する。情動言葉パラメータ抽出部132は、取得された情動言葉に対応付けられた情動言葉パラメータの値を情動言葉パラメータ情報112から抽出する。
【0051】
情動言葉パラメータ情報112は、情動言葉と五感パラメータとの関連性の度合いを示す情報である。また、ここでいう五感パラメータとは、前述の通り、例えば図3に示されるような五感の各々が更に細分化された感覚を示す項目によって構成される。
【0052】
図5は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100のパラメータ情報記憶部110に記憶された情動言葉パラメータ情報112の一例を示す図である。情動言葉パラメータ情報112は、情動言葉と前述の五感パラメータとの関連性を示すデータである。以下、情動言葉に対応付けられた五感パラメータを「情動言葉パラメータ」という。
【0053】
図5に示される情動言葉パラメータ情報112では、情動言葉と、情動言葉パラメータとが互いに対応付けられている。情動言葉パラメータ情報112の各行が、それぞれ1つの情動言葉に関する情報である。図5の例によると、情動言葉「美しい」の、五感パラメータ「質感1」の値は「0.73」であり、五感パラメータ「質感2」の値は「-0.15」である。
【0054】
このように、それぞれの情動言葉は、五感パラメータ(情動言葉パラメータ)によって予め数値化されている。なお、数値化する方法としては、例えば、各材料について情動言葉を用いた官能評価を複数の被験者に対して予め行い、情動言葉と五感パラメータとの回帰モデルを作成して数値を決定する方法が考えられる。また、これらの情動言葉パラメータは、材料パラメータと同様に情動言葉データベース全体を用いた標準化した値を用いても構わない。
【0055】
情動言葉パラメータ情報112の各情動言葉パラメータには、図4に示される材料パラメータの値と同様に、0を基準とした標準化された値が登録されている。標準化は、各情動言葉パラメータの値を、各情動言葉パラメータのデータベース全体の平均値を引き、標準偏差で割ることであり、平均が0、分散が1の標準偏差とする操作である。このように、各情動言葉は、五感パラメータ(情動言葉パラメータ)によって数値化されている。
【0056】
モーダル補正部133は、使用状況入力部123から出力された使用状況情報を取得する。前述のとおり、使用状況情報は、利用者が五感のうちどの感覚にしたがって、どのように印象を受ける状況であるかを特定する情報である。また、モーダル補正部133は、パラメータ情報記憶部110に記憶されたモーダル補正情報113を参照する。モーダル補正部133は、取得された使用状況情報と、モーダル補正情報113とに基づいて、材料パラメータ抽出部131によって抽出された材料パラメータの値と、情動言葉パラメータ抽出部132によって抽出された情動言葉パラメータの値とを、それぞれ補正する。
【0057】
具体的には、例えば、モーダル補正部133は、使用状況情報に基づいて、利用者が五感のうち複数の感覚によって印象を受ける場合に、どのような順序で各感覚による印象を受ける状況であるかを特定する。モーダル補正部133は、特定された使用状況において生じるクロスモーダル効果を考慮するための係数群を、モーダル補正情報113から抽出する。モーダル補正部133は、抽出された係数群を、材料パラメータ抽出部131によって抽出された材料パラメータの値と、情動言葉パラメータ抽出部132によって抽出された情動言葉パラメータの値とに、それぞれ掛け合わせる。
【0058】
一般的に、クロスモーダル効果とは、例えば視覚と触覚のように、五感のうち2つの感覚でそれぞれ受ける印象が互いに関係することをいう。また、一般的に、マルチモーダル効果とは、視覚と触覚と聴覚のように、五感のうち複数種類の感覚でそれぞれ印象が互いに関係することをいう。但し、本実施形態でいうクロスモーダル効果には、マルチモーダル効果の意味も含まれているものとする。
【0059】
例えば、利用者が鞄を認識する場合、目視で鞄をよく見た後に鞄に触って感触を確かめることがある一方で、逆に、鞄に触って感触を確かめた後にその鞄を目視で鞄をよく見ることもある。そして、視覚と触覚のどちらの感覚による印象を先に受けたかによって、利用者が材料から受ける総合的な印象は異なってくる。例えば鞄用合皮材のような材料は、このように複数の感覚がどのような順序で働いたかによって異なる印象を利用者に与えるというクロスモーダル効果が発生する。
【0060】
本実施形態における材料推奨装置100は、取得された使用状況情報に基づく使用状況に応じてクロスモーダル効果を考慮する。具体的には、前述の通り、モーダル補正部133が、クロスモーダル効果を考慮するための係数群を、材料パラメータ抽出部131によって抽出された材料パラメータの値と、情動言葉パラメータ抽出部132によって抽出された情動言葉パラメータの値とに、それぞれ掛け合わせる。これにより、材料パラメータの値及び情動言葉パラメータの値が、使用状況情報に応じたクロスモーダル効果による影響が反映された値に補正される。
【0061】
なお、本実施形態においては、材料パラメータの値に掛け合わされる係数群を含むモーダル補正情報113(例えば図6に示されるモーダル補正情報113)と、情動言葉パラメータの値に掛け合わされる係数群を含むモーダル補正情報113(例えば図7に示されるモーダル補正情報113)とが別々に、パラメータ情報記憶部110に予め記憶されている。
【0062】
図6及び図7は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100のパラメータ情報記憶部110に記憶されたモーダル補正情報113の一例を示す図である。
【0063】
図6には、材料パラメータの値に掛け合わされる係数群を含むモーダル補正情報113の一例が示されている。図6は、材料パラメータの値の補正に用いられる、使用状況情報それぞれに応じた係数群を表す。図6に示されるように、材料パラメータの値に掛け合わされる係数の場合、例えば、クロスモーダルにおいて先に受ける感覚の係数値には1が予め設定され、後に受ける感覚の係数値には0より大きく1未満の数値が予め設定され、それ以外の感覚の係数値には0が予め設定されている。
【0064】
なお、このような係数を数値化する方法としては、前述の情動言葉を五感パラメータによって予め数値化する場合と同様に、例えば、各使用状況について各材料を用いた官能評価を複数の被験者に対して予め行い、使用状況と材料との回帰モデルを作成して数値を決定する方法が考えられる。
【0065】
図7には、情動言葉パラメータの値に掛け合わされる係数群を含むモーダル補正情報113の一例が示されている。図7は、情動言葉パラメータの値の補正に用いられる、使用状況情報それぞれに応じた係数群を表す。図7に示されるように、情動言葉パラメータの値に掛け合わされる係数の場合、例えば、クロスモーダル効果が生じる感覚の係数値には1が予め設定されており、それ以外の感覚の係数値には0が予め設定されている。
【0066】
材料パラメータ抽出部131は、モーダル補正部133によって補正された材料パラメータを示す情報を、推奨材料決定部134へ出力する。また、情動言葉パラメータ抽出部132は、モーダル補正部133によって補正された情動言葉パラメータを示す情報を、推奨材料決定部134へ出力する。
【0067】
推奨材料決定部134は、材料パラメータ抽出部131から出力された材料パラメータを示す情報と、情動言葉パラメータ抽出部132から出力された情動言葉パラメータを示す情報とをそれぞれ取得する。推奨材料決定部134は、取得された情報に基づいて、材料パラメータの値と情動言葉パラメータの値との座標間の距離を材料ごとに算出する。推奨材料決定部134は、算出された距離に基づいて推奨する材料として決定する。例えば、推奨材料決定部134は、算出された距離が最も短い材料を、あるいは、算出された距離が短い方から順に所定の個数の材料を、推奨する材料として決定する。
【0068】
推奨材料決定部134は、推奨する材料を示す情報を出力部140へ出力する。なお、推奨材料決定部134は、推奨する各材料について、材料パラメータの値と情動言葉パラメータの値との間の距離を示す情報も併せて出力するようにしてもよい。
【0069】
なお、ここでは、情動言葉に合致する材料を選ぶにあたって、材料パラメータの値と情動パラメータの値との間の距離を単純に比較するという方法を用いたが、別の方法として、例えば、ベイズ最適化のような逆問題を解く方法が用いられてもよいし、グリッドサーチを行って誤差が最小化する順問題を解く方法が用いられてもよい。なお、DataRobot(登録商標)のようなAutoML(Automated Machine Learning)を用いて、上記の作業を代行するような構成にすることも可能である。
【0070】
出力部140は、利用者に対して情報を提示する出力装置を用いて構成される。ここでいう出力装置とは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。なお、出力部140は、利用者に対して情報を提示する外部の装置へ当該情報を送信する通信インターフェース等であってもよい。外部の装置とは、例えば、汎用コンピュータ等の情報処理装置、各種ディスプレイ、又はプリンタ等である。
【0071】
出力部140は、推奨材料決定部134から出力された、推奨する材料を示す情報を取得する。出力部140は、推奨する材料を示す情報を利用者に提示する。
【0072】
[材料推奨装置の動作]
以下、本開示の材料推奨装置100の動作の一例について、具体例を交えながら説明する。図8は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100の動作を示すフローチャートである。
【0073】
まず、製品種別入力部121は、利用者による製品種別情報の入力を受け付ける。例えばディスプレイ等の表示装置に、図4に示される材料パラメータ情報111の一番左側の列である「製品種別」の項目の値のリスト(「食品用包装材」、「住宅用建材」、「鞄用合皮材」、・・・)が表示される。利用者は、表示されたリストの中から所望の製品種別を、例えばマウス等の入力装置によって選択する入力操作を行う。なお、ここでは一例として、利用者は「鞄用合皮材」の製品種別を選択したものとする。
【0074】
製品種別入力部121は、「鞄用合皮材」を示す製品種別情報を材料パラメータ抽出部131へ出力する。材料パラメータ抽出部131は、製品種別入力部121から出力された製品種別情報を取得する(ステップS01)。
【0075】
次に、情動言葉入力部122は、利用者による情動言葉の入力を受け付ける。例えばディスプレイ等の表示装置に、図2に示される情動言葉のリスト(「好きな」、「派手な」、「愛らしい」、・・・)が表示される。利用者は、表示されたリストの中から所望の情動言葉を、例えばマウス等の入力装置によって選択する入力操作を行う。なお、ここでは一例として、利用者は、「美しい」の情動言葉を選択したものとする。なお、この例に限定されるものではなく、複数の情動言葉が選択されてもよい。この場合、情動言葉それぞれについて下記の処理が実行される。
【0076】
情動言葉入力部122は、「美しい」という情動言葉を情動言葉パラメータ抽出部132へ出力する。情動言葉パラメータ抽出部132は、情動言葉入力部122から出力された情動言葉を取得する(ステップS02)。
【0077】
次に、使用状況入力部123は、利用者による使用状況情報の入力を受け付ける。例えばディスプレイ等の表示装置に、図6又は図7に示されるモーダル補正情報113の左側から2番目までの列である、「クロスモーダル効果」の「先」及び「後」の項目の値のリスト(「触覚」「なし」、「視覚」「なし」、「聴覚」「なし」、・・・)が表示される。利用者は、自身が製品を使用する際の使用状況を想定し、表示されたリストの中から所望の使用状況情報を、例えばマウス等の入力装置によって選択する入力操作を行う。なお、ここでは一例として、利用者は、先に受ける感覚が「視覚」であり、後に受ける感覚が「触覚」である使用状況情報を選択したものとする。
【0078】
使用状況入力部123は、先に受ける感覚が「視覚」であり後に受ける感覚が「触覚」であることを示す使用状況情報をモーダル補正部133へ出力する。モーダル補正部133は、使用状況入力部123から出力された使用状況情報を取得する(ステップS03)。
【0079】
なお、ディスプレイ等の表示装置に、例えば、「鞄を見ただけで購入するかどうかを決める」、「鞄を見た後に触り心地を確認して購入するかどうかを決める」といったような文言からなる選択肢のリストが表示され、利用者がそのリストの中から選択するようにしてもよい。この場合、例えばパラメータ情報記憶部110は、これらの選択肢と一又は複数の感覚とが対応付けられた情報を予め記憶している。すなわち、例えば、「鞄を見ただけで購入するかどうかを決める」と「視覚」とが対応付けられ、「鞄を見た後に触り心地を確認して購入するかどうかを決める」と「視覚」及び「触覚」とが対応付けられた情報が予め記憶されている。
【0080】
そして、モーダル補正部133は、例えば、「鞄を見た後に触り心地を確認して購入するかどうかを決める」という選択肢が利用者によって選択されたことを示す情報を使用状況入力部123から取得した場合、パラメータ情報記憶部110に予め記憶された上記の情報を参照することで、先に受ける感覚が「視覚」であり後に受ける感覚が「触覚」である使用状況情報が選択されたものであることを特定することができる。
【0081】
次に、材料パラメータ抽出部131は、取得された製品種別情報に対応する製品種別に対応付けられた材料パラメータの値を、パラメータ情報記憶部110に予め記憶された材料パラメータ情報111から抽出する(ステップS04)。例えば、ここでは、利用者によって「鞄用合皮材」の製品種別が選択されていることから、材料パラメータ抽出部131は、図4に示される材料パラメータ情報111の「製品種別」の項目の値が「鞄用合皮材」である行のデータ(材料パラメータの値)を全て抽出する。
【0082】
なお、図4に示される材料パラメータ情報111において、「製品種別」の項目の値が「鞄用合皮材」である行は5行ある(m=5)。すなわち、鞄用合皮材の材料として用いられる材料は全部で5つ登録されている(製品番号「301a201b101」~「305a201b105」)。各材料に対応付けられた材料パラメータ(感覚パラメータ)の個数がn個であるとすると、材料パラメータ抽出部131は、1行n列からなる行列(以下、「行列A」という。)をm個(5個)抽出することになる。
【0083】
次に、モーダル補正部133は、取得された使用状況情報と、モーダル補正情報113とに基づいて、材料パラメータ抽出部131によって抽出された材料パラメータの値を補正する(ステップS05)。
【0084】
例えば、ここでは、利用者によって先に受ける感覚が「視覚」であり後に受ける感覚が「触覚」である使用状況情報が選択されている。このため、モーダル補正部133は、図6に示されるモーダル補正情報113の「クロスモーダル効果」の項目の「先」の項目の値が「視覚」であり「後」の項目の値が「触覚」である行のデータ(係数群)を抽出する。各材料に対応付けられた材料パラメータの個数がn個であるとすると、モーダル補正部133は、1行n列からなる行列を1つ抽出することになる。そして、モーダル補正部133は、抽出された行列を対角成分としたn行n列からなる対角行列(以下、「対角行列B」という。)を生成する。
【0085】
モーダル補正部133は、抽出された行列Aの各々と、生成された対角行列Bとを、それぞれ掛け合わせることにより、材料パラメータの値を補正する。これにより、材料パラメータの値が、選択された使用状況情報に応じたクロスモーダル効果が考慮された値に補正される。
【0086】
図9は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100のモーダル補正部133によって行われる材料パラメータの値の補正処理の一例を示す図である。図9には、一例として、「301a201b101」という製品番号が付与された鞄用合皮材の材料パラメータの値を補正する際の行列計算が示されている。図9に示されるように、図4に示される材料パラメータ情報111から抽出された材料パラメータの値からなる行列Aと、図6に示されるモーダル補正情報113から抽出された係数群から生成された対角行列Bとが、掛け合わされることにより、補正された材料パラメータの値からなる行列が算出される(「-0.09」、「0.71」、「0.69」、「0.26」、・・・)。
【0087】
次に、情動言葉パラメータ抽出部132は、取得された情動言葉に対応付けられた情動言葉パラメータの値を、パラメータ情報記憶部110に予め記憶された情動言葉パラメータ情報112から抽出する(ステップS06)。例えば、ここでは、利用者によって「美しい」という情動言葉が選択されていることから、情動言葉パラメータ抽出部132は、図5に示される情動言葉パラメータ情報112の「情動言葉」の項目の値が「美しい」である行のデータ(情動言葉パラメータの値)を抽出する。
【0088】
各情動言葉に対応付けられた情動言葉パラメータ(感覚パラメータ)の個数がn個であるとすると、情動言葉パラメータ抽出部132は、1行n列からなる行列(以下、「行列C」という。)をm個抽出することになる。なお、ここでいうmの値は、利用者によって選択された情動言葉個数を表す。なお、ここでは、一例として、利用者によって1つの情動言葉(「美しい」)のみが選択されていることから、情動言葉パラメータ抽出部132は、行列Cを1個抽出することになる。
【0089】
次に、モーダル補正部133は、取得された使用状況情報と、モーダル補正情報113とに基づいて、情動言葉パラメータ抽出部132によって抽出された情動言葉パラメータの値を補正する(ステップS07)。
【0090】
例えば、ここでは、利用者によって先に受ける感覚が「視覚」であり後に受ける感覚が「触覚」である使用状況情報が選択されている。このため、モーダル補正部133は、図7に示されるモーダル補正情報113の「クロスモーダル効果」の項目の「先」の項目の値が「視覚」であり「後」の項目の値が「触覚」である行のデータ(係数群)を抽出する。各情動言葉に対応付けられた情動言葉パラメータの個数がn個であるとすると、モーダル補正部133は、1行n列からなる行列を1つ抽出することになる。そして、モーダル補正部133は、抽出された行列を対角成分としたn行n列からなる対角行列(以下、「対角行列D」という。)を生成する。
【0091】
モーダル補正部133は、抽出された行列Cの各々(ここでは1つ)と、生成された対角行列Dとを、それぞれ掛け合わせることにより、情動言葉パラメータの値を補正する。これにより、情動言葉パラメータの値が、クロスモーダル効果が考慮された値に補正される。
【0092】
図10は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100のモーダル補正部133によって行われる情動言葉パラメータの値の補正処理の一例を示す図である。図10には、「美しい」という情動言葉に対応する情動言葉パラメータの値を補正する際の行列計算が示されている。図10に示されるように、図5に示される材料パラメータ情報111から抽出された情動言葉パラメータの値からなる行列Cと、図7に示されるモーダル補正情報113から抽出された係数群から生成された対角行列Dとが、掛け合わされることにより、補正された情動言葉パラメータの値からなる行列が算出される(「0.03」、「-0.81」、「-0.62」、「0.03」、・・・)。
【0093】
材料パラメータ抽出部131は、補正された材料パラメータの値を推奨材料決定部134へ出力する。また、情動言葉パラメータ抽出部132は、補正された情動言葉パラメータの値を推奨材料決定部134へ出力する。
【0094】
次に、推奨材料決定部134は、材料パラメータ抽出部131から出力された補正後の材料パラメータの値と、情動言葉パラメータ抽出部132から出力された補正後の情動言葉パラメータの値とを取得する。推奨材料決定部134は、取得された材料パラメータの行列と情動言葉パラメータの行列を座標として捉えその座標間の距離を材料ごとに算出する。推奨材料決定部134は、算出された距離に基づいて推奨する材料を決定する(ステップS08)。たとえば、複数の材料から、利用者に指定された情動言葉に対応する情動言葉パラメータの座標と材料に対応する材料パラメータの座標間の距離の近い材料が、情動言葉と関係性が強いと捉え、順に特定することができる。
【0095】
図11は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100推奨材料決定部134によって行われる座標間の距離の算出処理の一例を示す図である。図11には、図10に示される補正処理によって算出された補正後の情動言葉パラメータの値からなる行列から、図9に示される補正処理によって算出された補正後の材料パラメータの値からなる行列の成分を減算し、算出された行列の成分の各値を二乗し、算出された値をさらに合算してルート計算を行うことで座標間の距離を算出する処理が示されている。
【0096】
例えば、図11において、「硬さ」の情動言葉パラメータの値は「0.03」であり、「硬さ」の材料パラメータの値は「-0.09」であるから、減算して二乗すると「0.0144」となる。推奨材料決定部134は、こうして五感パラメータごとに算出された成分値を合算し、さらにルート計算して算出された値を、情動言葉パラメータと材料パラメータとの座標間の距離とする。なお、ここでは、算出された座標間の距離は、例えば「4.0938+α」の平方根であることとする。ただし、座標間の距離の算出はこの例に限定されるものではなく、技術分野で知られる他の方法によって算出されてもよい。
【0097】
推奨材料決定部134は、材料ごと及び情動言葉ごとに上記の計算を行い、座標間の距離を算出する。推奨材料決定部134は、算出された座標間の距離に基づいて推奨する材料を決定する。推奨材料決定部134は、推奨する材料を示す情報と、当該材料について算出された座標間の距離を示す情報とを、出力部140へ出力する。
【0098】
出力部140は、推奨材料決定部から出力された推奨する材料を示す情報と、当該材料について算出された座標間の距離を示す情報とを取得する。出力部140は、推奨する材料を示す情報と、当該材料について算出された座標間の距離を示す情報とを利用者に提示する(ステップS09)。
【0099】
図12は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100の出力部140によって出力される情報の一例を示す図である。図12に示されるように、出力部140によって出力される情報には、例えば、選択された製品種別(「鞄用合皮材」)と、選択された情動言葉(「美しい」)と、材料ごとの(製品番号ごとの)座標間の距離の値とが含まれる。このとき、出力部140は、座標間の距離がより短い材料から順に出力することで、より推奨される材料が上位に位置するように表示させる。なお、図12に示されるように、座標間の距離が棒グラフでも表示されることにより、利用者は、より直感的に各材料の推奨度を認識することができる。ただし、この例に限定されるものではなく、製品番号の所定の順番に沿って座標間の距離が表示されてもよい。
【0100】
なお、利用者が複数の情動言葉を選択した場合における、出力部140による推奨材料の提示方法の一例を以下に挙げる。図13は、本開示の一実施形態における材料推奨装置100の出力部140によって出力される情報のその他の例を示す図である。ここでは、利用者が、「派手な」という情動言葉と「男らしい」という情動言葉とを選択したものとする。
【0101】
図13の例では、出力部140によって出力される情報には、例えば、選択された製品種別(「鞄用合皮材」)が含まれる。また、出力部140によって出力される情報には、例えば、選択された情動言葉(「派手な」及び「男らしい」)ごとに、材料ごとの(製品番号ごとの)座標間の距離の値が含まれる。さらに、出力部140によって出力される情報には、例えば、材料ごとの、複数の情動言葉における座標間の距離の平均値が含まれる。
【0102】
出力部140によってこのように情報が提示されることで、利用者は、例えば「派手な」という印象に最も近い鞄用合皮材は、座標間の距離が「8.7」である「303a201b102」という製品番号が付与された材料であることを認識することができる。また、利用者は、例えば「男らしい」という印象に最も近い鞄用合皮材は、座標間の距離が「8.3」である「303a201b104」という製品番号が付与された材料であることを認識することができる。また、利用者は、例えば「派手な」という印象及び「男らしい」という印象を平均的に高く合わせ持つ鞄用合皮材は、座標間の距離が「9.4」である「303a201b104」という製品番号が付与された材料であることを認識することができる。3つ以上の情動言葉が指定された場合、3つの情動言葉の平均値が出力されてもよいし、3つの情動言葉のうち2つの組合せごとに平均値が出力されてもよい。
【0103】
これにより、利用者は、例えば、全ての座標間の距離が最も短い材料を選択するようにしたり、選択した複数の情動言葉に対して平均的に最も近い印象を持つ材料を選択するようにしたりすることができる。
【0104】
なお、例えば、出力部140は、材料パラメータの座標と情動言葉パラメータの座標とを視覚的に把握することができるマップを生成して提示するようにしてもよい。また、例えば、出力部140は、材料パラメータの座標と情動言葉パラメータの座標とについて主成分分析や多次元尺度法による分析を行い、その分析結果を視覚的に提示するようにしてもよい。例えば、主成分分析の場合には、出力部140は、第一主成分と第二主成分との二軸によって材料パラメータと情動言葉パラメータとの座標間の位置関係を、BiPlotによる二次元の図で提示するようにしてもよい。
【0105】
以上説明したように、本開示の一実施形態における材料推奨装置100は、入力部120と、材料パラメータ抽出部131と、情動言葉パラメータ抽出部132と、推奨材料決定部134とを備える。入力部120は、製品種別と、情動を表現する言葉を示す情動言葉とを示す情報の入力を受け付ける。材料パラメータ抽出部131は、製品種別に属する製品に用いられる材料と材料に対して人間が受ける感覚の度合いを示す感覚パラメータの値とが対応付けられた材料パラメータ情報に基づいて、入力部120に入力された製品種別に対応する材料ごとの感覚パラメータ(材料パラメータ)の値を抽出する。情動言葉パラメータ抽出部132は、情動言葉と感覚パラメータの値とが対応付けられた情動言葉パラメータ情報に基づいて、入力部120に入力された情動言葉に対応する感覚パラメータ(情動言葉パラメータ)の値を抽出する。推奨材料決定部134は、材料パラメータ抽出部131によって抽出された材料ごとの感覚パラメータの値と、情動言葉パラメータ抽出部132によって抽出された感覚パラメータの値とに基づいて、入力部120に入力された情動言葉に対して推奨される材料を決定する。
【0106】
このような構成を備えることで、材料推奨装置100は、例えば材料を推奨する特定の担当者のセンス等に頼ることなく、人の情動に応じて適切な材料を自動的に推奨することができる。
【0107】
また、材料推奨装置100は、クロスモーダル効果による影響を考慮するように、材料ごとの感覚パラメータの値及び情動言葉に対応する感覚パラメータの値を補正する。このような構成を備えることで、材料推奨装置100は、より精度高く、人の情動に応じて適切な材料を推奨することができる。
【0108】
(変形例)
図1に示される材料推奨装置100の機能構成のうち、モーダル補正情報113、使用状況入力部123、及びモーダル補正部133が省略された、より簡易な構成にしてもよい。すなわち、材料推奨装置100が有する機能のうち、クロスモーダル効果を考慮して五感パラメータを補正する構成が省かれた材料推奨装置とすることも可能である。材料推奨装置100は、材料ごとの感覚パラメータの値と、感覚パラメータの値とを使用状況情報に応じて補正することなく、推奨される材料を決定してもよい。このように、より簡易な構成にすることで、材料推奨装置100の装置コスト、運用コスト、及びモーダル補正情報113を用意するための工数等を削減することができる。
【0109】
なお、実施形態における材料推奨装置100の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上述した処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウエアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。更に「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0110】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。更に、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0111】
100…材料推奨装置
110…パラメータ情報記憶部
111…材料パラメータ情報
112…情動言葉パラメータ情報
113…モーダル補正情報
120…入力部
121…製品種別入力部
122…情動言葉入力部
123…使用状況入力部
131…材料パラメータ抽出部
132…情動言葉パラメータ抽出部
133…モーダル補正部
134…推奨材料決定部
140…出力部
図1
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