(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】加工装置及び連通管の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
H01L21/304 622P
H01L21/304 643Z
(21)【出願番号】P 2020003563
(22)【出願日】2020-01-14
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 貴裕
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193056(JP,A)
【文献】特公平05-055267(JP,B2)
【文献】特開2008-182084(JP,A)
【文献】特開平08-164370(JP,A)
【文献】特開2008-000819(JP,A)
【文献】特開2000-106334(JP,A)
【文献】特開平04-314377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0277851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面に被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面に吸引保持された被加工物を加工する加工手段と、を備える加工装置であって、
該保持面を吸引源に連通させる連通管と、該保持面の上方から該保持面に水を供給する水供給部と、を備え、
該水供給部は、水を供給するノズルと、該ノズルを水平方向の一方向であるX軸方向に移動させるノズル水平移動機構とを備え、
該ノズル水平移動機構によって該ノズルを該X軸方向に往復移動させ該被加工物を保持していない該保持面に該水供給部から水を供給するとともに、該連通管を該吸引源に連通させることにより該連通管内に該水を進入させて該連通管内を洗浄する加工装置。
【請求項2】
該チャックテーブルは、該保持面を有するポーラス部材を備え、
該水供給部から供給した水を該保持面から吸引させることにより該ポーラス部材及び該連通管内を洗浄する請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
チャックテーブルの保持面によって吸引保持された被加工物を加工する加工装置において、該保持面と吸引源とを連通する連通管内を洗浄する連通管の洗浄方法であって、
水供給部のノズルを水平方向の一方向であるX軸方向に往復移動させ該保持面に水を供給
するとともに、該保持面を該吸引源に連通させ、該保持面から該水を吸引して該連通管内を該水によって洗浄する、
連通管の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置及び連通管の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削砥石を用いて被加工物を研削して薄化する研削装置は、保持面がポーラス部材によって形成されているチャックテーブルを備えており、保持面を吸引源に連通させて被加工物を吸引保持している。
保持面に吸引保持されている被加工物を研削砥石を用いて研削すると研削屑が発生する。発生した研削屑は、保持面に作用する吸引力によって被加工物の外周部分からポーラス部材の内部に進入して、保持面を吸引源に連通している連通管内に滞留する。
【0003】
研削加工の終了後、被加工物を保持面から離間させる際には、特許文献1に示すように連通管にエアと水とを供給して連通管内を陽圧にする。
これにより保持面から被加工物を離間させるとともに、連通管内に進入した細かな研削屑が僅かに排出される。しかし、連通管内に進入した研削屑のすべてが保持面から排出されないため、一度連通管内に進入した研削屑が連通管内に滞留し続けることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、連通管内に進入した研削屑が連通管の内壁に付着してしまう。研削屑の付着によって流路が狭まり被加工物を吸引する保持面の吸引力が低下すると、研削加工中に被加工物が保持面から離れるという問題がある。
また、被加工物に研磨液を供給すると共に研磨パッドを被加工物に押し付けて研磨する研磨装置は、保持面から研磨液を吸引することがある。そのため研磨液が連通管の内壁に付着することによって流路が狭まり、上記と同様の不具合が発生するという問題がある。
したがって、保持面において被加工物を吸引保持する加工装置においては、連通管の内壁に研削屑等を付着させないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、保持面によって被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該保持面に吸引保持された被加工物を加工する加工手段と、を備える加工装置であって、該保持面を吸引源に連通させる連通管と、該保持面の上方から該保持面に水を供給する水供給部と、を備え、該水供給部は、水を供給するノズルと、該ノズルを水平方向の一方向であるX軸方向に移動させるノズル水平移動機構とを備え、該ノズル水平移動機構によって該ノズルを該X軸方向に往復移動させ該被加工物を保持していない該保持面に該水供給部から水を供給するとともに、該連通管を該吸引源に連通させることにより該連通管内に該水を進入させて該連通管内を洗浄する加工装置である。
該チャックテーブルは、該保持面を有するポーラス部材を備え、該水供給部から供給した水を該保持面から吸引させることにより該ポーラス部材及び該連通管内を洗浄することが望ましい。
本発明は、チャックテーブルの保持面によって吸引保持された被加工物を加工する加工装置において、該保持面と吸引源とを連通する連通管内を洗浄する連通管の洗浄方法であって、水供給部のノズルを水平方向の一方向であるX軸方向に往復移動させ該保持面に水を供給するとともに、該保持面を該吸引源に連通させて、該保持面から該水を吸引させて該連通管内を該水によって洗浄する、連通管の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0007】
被加工物の加工中に保持面から連通管の内部に進入して連通管の内壁に付着した加工屑等を洗い流して除去することにより、連通管の内部が狭まることを防ぎ、保持面を吸引するときに保持面に伝達される吸引力の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】研削加工中における加工装置を側方から見た断面図である。
【
図3】連通管の内部の洗浄中における加工装置を側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 加工装置
図1に示す加工装置1は、例えば研削砥石340を用いて被加工物1000を研削加工する研削加工装置である。以下、加工装置1について説明する。被加工物1000の下面1002には、デバイス保護等を目的とするテープ1003が貼着されている。
【0010】
加工装置1は、
図1に示すように、Y軸方向に延設されたベース10と、ベース10の+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
【0011】
コラム11の-Y方向側の側面には、例えば、加工手段3を支持する加工送り手段4が配設されている。加工手段3は、Z軸方向の回転軸35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に接続された円環状のマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された研削ホイール34とを備えている。研削ホイール34は、ホイール基台341と、ホイール基台341の下面に環状に配列された略直方体形状を有する複数の研削砥石340とを備えており、研削砥石340の下面は被加工物1000を研削する研削面3401となっている。
スピンドルモータ32を用いて、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転させることにより、スピンドル30に接続されているマウント33及びマウント33に装着されている研削砥石340が、回転軸35を軸にして回転することとなる。
【0012】
スピンドル30の内部には、図示しない研削水供給部が配設されており、被加工物1000の研削加工時に、該研削水供給部から研削面3401と被加工物1000の上面1001との接触部分に向けて、研削水が供給されることとなる。
【0013】
加工送り手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ40の上端に連結され回転軸45を軸にしてボールネジ40を回動させるZ軸モータ42と、内部のナットがボールネジ40に螺合し側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結されスピンドル30を保持するホルダ44とを備えている。
Z軸モータ42を用いてボールネジ40を駆動することにより、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って、昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともにホルダ44に保持されている加工手段3がZ軸方向に移動する構成となっている。
【0014】
ベース10の上には、チャックテーブル2が配設されている。チャックテーブル2は、保持面201を有する円板状のポーラス部材20と、ポーラス部材20を支持する環状の枠体21とを備えている。ポーラス部材20の保持面201は被加工物1000が吸引保持される面であり、枠体21の上面211は、保持面201に面一に形成されている。
【0015】
チャックテーブル2は、図示しないY軸移動手段に接続されている。該Y軸移動手段を用いてチャックテーブル2を駆動することにより、チャックテーブル2は、Y軸方向に往復移動することが可能となっている。
【0016】
チャックテーブル2の周囲にはカバー27が配設されており、カバー27は蛇腹28に伸縮可能に連結されている。
チャックテーブル2がY軸方向に移動すると、カバー27が支持テーブル22と一体的にY軸方向に移動して、蛇腹28が伸縮することとなる。
【0017】
加工装置1には吸引源9が配設されている。保持面201と吸引源9とは、連通管8を通じて連通されている。連通管8には、保持面201と吸引源9との連通状態を切り替える吸引バルブ90が配設されている。
【0018】
ベース10の上には、水供給部5が配設されている。水供給部5は、ノズル50と、ノズル50を支持するノズル水平移動手段51とを備えている。
ノズル50は、チャックテーブル2の移動経路の上方に配設されており、チャックテーブル2の保持面201の上方から保持面201に水を供給する機能を有している。ノズル50は、流路61を通じて水供給源6に接続されており、流路61には、ノズル50と水供給源6との連通状態を切り替える水バルブ60が配設されている。
ノズル水平移動手段51は、チャックテーブル2の移動経路に跨るようにX軸方向に延ばして架設された門型の部材であり、ノズル50をX軸方向に往復移動可能に支持している。
【0019】
例えば、チャックテーブル2がノズル50の下方に位置付けられており、かつ、水バルブ60が開いている状態で、ノズル50に水供給源6から水を供給するとともに、ノズル水平移動手段51を用いてノズル50を駆動することにより、ノズル50が保持面201に向かって水1004を供給しながら、X軸方向に往復移動することとなる。
【0020】
チャックテーブル2の下方には、
図2に示すように、チャックテーブル2を回転させる回転手段7が配設されている。
回転手段7は、駆動モータ72と、駆動モータ72によってZ軸方向の回転軸aを軸に回転可能な駆動軸70と、駆動軸70の上端に連結されている駆動プーリ71と、駆動プーリ71に巻回されて駆動プーリ71の駆動力を従動プーリ76に伝達する伝動ベルト73と、駆動プーリ71とともに伝動ベルト73に巻回されている従動プーリ76と、従動プーリ76に接続されている従動軸75と、従動軸75の下端に連結されたロータリージョイント77と、を備えている。従動軸75は、チャックテーブル2の枠体21に連結されている。
【0021】
駆動モータ72を用いて回転軸aを軸にして駆動軸70を回転させると、駆動プーリ71が回転するとともに、駆動プーリ71の回転力が伝動ベルト73によって従動プーリ76に伝達されて従動プーリ76が回転することとなる。これにより、従動プーリ76に接続されている従動軸75がZ軸方向の回転軸25を軸にして回転して、従動軸75に連結されているチャックテーブル2が回転軸25を軸にして回転する構成となっている。
【0022】
なお、加工装置1は、上記の単軸の研削加工装置に限定されるものではなく、例えば複軸の研削加工装置、切削加工装置、または研磨加工装置等であってもよい。
加工装置1が切削加工装置である場合には、例えば該切削加工装置に有する切削ブレードの側方等に図示しない切削水ノズルが配設されており、被加工物1000の切削加工時に、該切削水ノズルから該切削ブレードと被加工物1000の上面1001との接触部分に向けて、切削水が供給されるものとする。
【0023】
加工装置1を用いて被加工物1000の研削加工を行う際には、まず、テープ1003が貼着されている被加工物1000を、テープ1003が保持面201に接触するように、チャックテーブル2の保持面201に載置して、吸引バルブ90が開いた状態で吸引源9を作動させる。これにより、生み出された吸引力が連通管8を通じて保持面201に伝達されて、被加工物1000が保持面201に吸引保持される。
【0024】
そして、被加工物1000が保持面201に吸引保持されている状態で、図示しないY軸移動手段等を用いてチャックテーブル2を+Y方向に移動させて、加工手段3の下方に位置付ける。
次いで、回転手段7を用いて回転軸25を軸にしてチャックテーブル2を回転させることにより、保持面201に保持されている被加工物1000を回転させるとともに、スピンドルモータ32を用いて回転軸35を軸にして研削砥石340を回転させる。
【0025】
被加工物1000が回転軸25を軸にして回転しており、かつ、研削砥石340が回転軸35を軸にして回転している状態で、加工送り手段4を用いて研削砥石340を-Z方向に下降させて、研削砥石340の研削面3401を被加工物1000の上面1001に接触させる。研削面3401が被加工物1000の上面1001に接触している状態で、さらに研削砥石340を-Z方向に下降させることによって被加工物1000が研削される。
被加工物1000の研削加工を行うと、加工屑1005が発生する。被加工物1000の研削加工により発生した加工屑1005は、その一部が吸引源9の吸引力によって吸引されて、ポーラス部材20の内部や連通管8の内壁等に付着する。
【0026】
2 連通管の洗浄方法
(1)水供給工程
上記の加工装置1を用いた連通管8の洗浄方法について以下に説明する。
まず、保持面201に被加工物1000が吸引保持されていない状態で、図示しないY軸移動手段等を用いてチャックテーブル2を+Y方向に移動させて、
図1に示すように、ノズル50の下方にチャックテーブル2を位置付ける。
【0027】
次に、水バルブ60を開く。そして、ノズル50の下方にチャックテーブル2が位置付けられており、かつ、水バルブ60が開いている状態で、
図3に示すように、水供給源6からノズル50に水1004を供給する。これにより、ノズル50から保持面201に水1004が供給される。
【0028】
さらに、ノズル50から保持面201に水1004を供給しながら、ノズル水平移動手段51を用いてノズル50をX軸方向に往復移動させる。これにより、水1004が保持面201の全面に行き渡り、例えば保持面201の全面が水1004に覆われた状態となる。
【0029】
(2)洗浄工程
その後、吸引バルブ90を開いて、保持面201を吸引源9に連通させる。そして、保持面201が吸引源9に連通している状態で吸引源9を作動する。すると、吸引源9によって生み出された吸引力が連通管8を通じて保持面201に伝達され、保持面201から水1004が吸引される。
これにより、水1004がポーラス部材20を通って連通管8の内部に進入し、ポーラス部材20の内部、及び連通管8の内壁に付着している加工屑1005(
図2に図示されている)等が流水洗浄される。
【0030】
例えば、水供給工程において行われた水1004の供給により、保持面201に部分的に水1004に行き渡っているが、保持面201の全面は水1004に覆われていないような場合には、洗浄工程において水1004とエアとが一緒に吸引される。この場合も同様に、水1004とエアとの混合流体(キャビテーションにより生成された泡を含む)によって、ポーラス部材20の内部、及び連通管8の内壁に付着している加工屑1005等が洗い流される。
【0031】
ここで、連通管8の洗浄を被加工物1000の研削加工後に行う場合は、チャックテーブル2の水平位置を研削加工時の位置よりも少し-Y方向側に移動させてから、保持面201に水1004の供給を行う。
【0032】
なお、水供給工程においては、水供給部5から保持面201に水1004を供給するかわりに、例えば
図1に示した加工手段3のスピンドル30の内部に配設されている図示しない研削水供給部から保持面201に向けて研削水を供給してもよい。
また、加工装置1が切削加工装置である場合には、水供給部5から保持面201に向けて水1004を供給するかわりに、例えば図示しない切削ブレードの側方等に配設された図示しない切削水ノズルから保持面201に向けて切削水を供給してもよい。
【0033】
被加工物1000の加工中に保持面201から連通管8の内部に進入して連通管8の内壁に付着した加工屑1005等を洗い流して除去することにより、連通管8の内部が狭まるのを防ぎ、保持面201の吸引力の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1:加工装置 10:ベース 11:コラム
2:チャックテーブル 20:ポーラス部材 201:保持面
21:枠体 211:枠体の上面 22:基台 24:回転手段 25:回転軸
27:カバー 28:蛇腹
3:加工手段 30:スピンドル 31:ハウジング 32:スピンドルモータ
33:マウント 34:研削ホイール 340:研削砥石341:ホイール基台
3401:研削面 35:回転軸
4:上下移動手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:Z軸モータ
43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸
5:水供給部 50:ノズル 51:ノズル水平移動手段
6:水供給源 60:水バルブ 61:流路
7:回転手段 70:駆動軸 71:駆動プーリ 72:駆動モータ 74:回転軸
73:伝動ベルト 75:従動軸 76:従動プーリ 77:ロータリージョイント
8:連通管 9:吸引源 90:吸引バルブ
1000:被加工物 1001:被加工物の上面
1002:被加工物の下面 1003:テープ 1004:水
1005:加工屑