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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】シリコンウエハの表面改質方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20241029BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L21/304 622P
B23K26/354
H01L21/304 621E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020034795
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021141099
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】津留 太良
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-147639(JP,A)
【文献】特開2017-197414(JP,A)
【文献】特開2007-245235(JP,A)
【文献】特開2004-281485(JP,A)
【文献】特開2012-156168(JP,A)
【文献】特開2011-071261(JP,A)
【文献】特開2003-243321(JP,A)
【文献】特開2006-095566(JP,A)
【文献】特開2016-215269(JP,A)
【文献】特開2008-049361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ熱処理を用いたシリコンウエハの表面改質方法であって、
前記シリコンウエハの研削後、その表面形状に対応して、少なくともs偏光とp偏光の成分を変化させてパルスレーザを照射することを特徴とするシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項2】
前記表面形状に対応して、更に入射角を変化させるものであり、前記入射角が垂直となるように前記パルスレーザを照射することを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項3】
前記表面形状に対応して、更に入射角を変化させるものであり、前記入射角が10~15°以下になるように前記パルスレーザを照射することを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項4】
前記表面形状に対応して、更に入射角を変化させるものであり、前記パルスレーザの照射方向は、ガルバノミラー、あるいはプリズムを回転させることによって、可変されるスキャニング光学系とされたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項5】
前記パルスレーザの照射方向を一定とし、前記表面形状に対応した前記入射角の変化に合わせて前記s偏光、前記p偏光の成分を調整することを特徴とする請求項に記載のシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項6】
前記入射角が10~15°以上となる領域は、前記s偏光、前記p偏光の成分を調整することを特徴とする請求項5に記載のシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項7】
前記パルスレーザは、パルスレーザ発振器、偏光光学系、集光レンズを介して前記シリコンウエハの表面に集光されることを特徴とする請求項5又は6に記載のシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項8】
前記偏光光学系は、偏光板、印加電圧に応じて遅相軸の位相を遅らせる電気光学素子、1/4λ波長板を有し、電圧駆動により偏光方向状態を作り出すことを特徴とする請求項7に記載のシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項9】
前記表面形状に対応して、更にエネルギ密度を変化させるものであり、前記入射角が10~15°以下となる領域は、前記エネルギ密度を一定とし、前記入射角が10~15°以上となる領域は、前記入射角が大きくなるに従い、前記エネルギ密度を大きくすることを特徴とする請求項に記載のシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項10】
前記パルスレーザは、波長が532nmで、パルス照射時間が3ナノ秒から4ナノ秒の範囲内、パルス幅1パルス当たりのエネルギが0.5μジュールから30μジュール、エネルギ密度が0.125J/cmから7.5J/cmであることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のシリコンウエハの表面改質方法。
【請求項11】
レーザ熱処理を用いたシリコンウエハの表面改質方法であって、
前記シリコンウエハの研削後、その表面形状に対応して、少なくとも入射角、s偏光とp偏光の成分、エネルギ密度、単位面積当たりの照射回数のいずれか一つを変化させてパルスレーザを照射し、
前記表面形状に対応して、前記エネルギ密度を変化させるものであり、前記入射角が10~15°以下となる領域は、前記エネルギ密度を一定とし、前記入射角が10~15°以上となる領域は、前記入射角が大きくなるに従い、前記エネルギ密度が大きくされるシリコンウエハの表面改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハの表面の加工変質層である表面欠陥の修復に係り、特に、レーザ熱処理を用いたシリコンウエハの表面改質及び表面の平坦化を行うシリコンウエハの表面改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の作製に使用されるシリコンウエハ等の半導体ウエハは、切削・研削・ラッピング・ポッリシングなどの機械加工プロセスによって表面加工が行われている。しかし、その表面及び内部は、加工変質層が形成され、一部の加工変質層には、マイクロクラック(微小亀裂)が含まれる。この内部クラック等の除去は、主にエッチングや化学機械研磨(CMP)等の化学的・機械的方法により行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、半導体ウエハをワークとしてこれの外周部の研磨品質を向上させるため、研磨具の表面の各部位における端面に対する押し付け力が均一として、端面を高品質に研磨加工することを記載している。
【0004】
また、特許文献2は、レーザ照射を使用することで、シリコンウエハの酸素排除処理及び結晶性の向上が可能であること、単結晶ウエハの表面の加工変質層である表面欠陥の修復方法において、単結晶表面にパルスレーザを照射することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-297842号公報
【文献】特開2008-147639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術において、特許文献1及び2に記載のものでは、特にノッチ部(ウエハ上に設けられた切り欠き)から発生する亀裂を防ぐことは困難である。また、既存の外周エッジ研削、エッチング、化学機械研磨(CMP)は、内部クラック等を完全に除去できない。そして、内部クラック等は、亀裂として進展して破損するので、シリコンウエハの表面加工の歩留りが低下する。特にノッチ部(ウエハ上に設けられた切り欠き)から発生する亀裂は、歩留りの低下へ大きく影響する。
【0007】
さらに、研削-エッチング後の化学機械研磨(CMP)は、元の形状(設計値)からの変化を伴い品質管理が困難であり、前工程でウエハ表面の平坦度を良くしても、低下させてしまう可能性がある。そして、化学機械研磨(CMP)は、砥粒、研磨糸、洗浄液等の消耗材を使用するので、コストが掛かり環境負荷も大きい。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、研削後もしくは、エッチング処理後のシリコンウエハ表面にレーザを用いた好適な熱処理を行うことで、加工応力の影響をなくし均一な表面に改質する。そして、強度を向上させ、後工程における歩留りを向上させる。特に、複雑な形状であるノッチ部への好適なレーザ処理を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、レーザ熱処理を用いたシリコンウエハの表面改質方法であって、前記シリコンウエハの研削後、その表面形状に対応して、少なくとも入射角、s偏光とp偏光の成分、エネルギ密度、単位面積当たりの照射回数のいずれか一つを変化させてパルスレーザを照射するものである。
【0010】
また、上記において、前記表面形状に対応して、前記入射角を変化させるものであり、前記入射角が垂直となるように前記パルスレーザを照射することが望ましい。
【0011】
さらに、上記において、前記表面形状に対応して、前記入射角を変化させるものであり、前記入射角が10~15°以下になるように前記パルスレーザを照射することが望ましい。
【0012】
さらに、上記において、前記表面形状に対応して、前記入射角を変化させるものであり、前記パルスレーザの照射方向は、ガルバノミラー、あるいはプリズムを回転させることによって、可変されるスキャニング光学系とされたことが望ましい。
【0013】
さらに、上記において、前記表面形状に対応して、前記s偏光とp偏光の成分を変化させるものであり、前記パルスレーザの照射方向を一定とし、前記表面形状に対応した前記入射角の変化に合わせてs偏光、p偏光の成分を調整することが望ましい。
【0014】
さらに、上記において、前記表面形状に対応して、前記s偏光とp偏光の成分を変化させるものであり、前記パルスレーザの照射方向を一定とし、前記表面形状に対応した前記入射角の変化に合わせてs偏光、p偏光の成分を調整することが望ましい。
【0015】
前記入射角が10~15°以上となる領域は、前記s偏光、前記p偏光の成分を調整することが望ましい。
【0016】
前記パルスレーザは、パルスレーザ発振器、偏光光学系、集光レンズを介して前記シリコンウエハの表面に集光されることが望ましい。
【0017】
前記偏光光学系は、偏光板、印加電圧に応じて遅相軸の位相を遅らせる電気光学素子、1/4λ波長板を有し、電圧駆動により偏光方向状態を作り出すことが望ましい。
【0018】
前記表面形状に対応して、前記エネルギ密度を変化させるものであり、前記入射角が10~15°以下となる領域は、エネルギ密度を一定とし、前記入射角が10~15°以上となる領域は、入射角が大きくなるに従い、エネルギ密度を大きくすることが望ましい。
【0019】
前記パルスレーザは、波長が532nmで、パルス照射時間が3ナノ秒から4ナノ秒の範囲内、パルス幅1パルス当たりのエネルギが0.5μジュールから30μジュール、エネルギ密度が0.125J/cmから7.5J/cmであることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シリコンウエハの研削後、シリコンウエハの表面形状に対応して、少なくとも入射角、s偏光とp偏光の成分、エネルギ密度、単位面積当たりの照射回数のいずれか一つを変化させてパルスレーザを照射するので、加工応力の影響をなくし均一な表面に改質することで、強度を向上させ、後工程における歩留りを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ノッチ部の形状を示す平面図
図2】ノッチ部の形状を示す側面図
図3】パルスレーザの照射方向と入射角の関係を示す図
図4】本発明の第1実施形態に係るレーザ光学系を示す構成図
図5図4の一部を示す構成図
図6】本発明の第2実施形態に係るレーザ光学系を示す構成図
図7】第2実施形態における偏光光学系の構成を示すブロック図
図8】入射角に対して与えるエネルギ密度の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1はシリコンウエハ1の一部に設けられたノッチ部10の形状を示す平面図、図2は側面図を示している。ノッチ部10は、外周部13と比較して複雑な形状をしており、研削加工によって表面加工されている。その表面及び内部は、加工変質層が形成され、一部の加工変質層には、マイクロクラック(微小亀裂)が含まれる。
【0023】
通常、ノッチ部10の平面形状(図1)は、切欠きとして円弧状の底部11が形成され、約45°で外周部13へ向かう斜面12、続いて丸味を持って外周部13へ繋がり、左右対称となる形状とされている。特に、底部11は、研削加工による加工負荷の影響が大きく、表面欠陥が多く含まれる。外周部13は、側面形状(図2)において、端面14に対して、丸味を持った斜面12として面取り部16が設けられ、上面15へ繋がり、上下対象となっている。
【0024】
加工変質層は、主にアモルファスシリコン層や多結晶状態となっている。この加工変質層は極めて薄いものであるが、機械的・電気的・光学的性能に大きな影響を及ぼす。そこで、シリコンウエハ1の研削加工後は、加工変質層の表面改質及び平坦化するため、ノッチ部10及び外周部13、あるいはシリコンウエハ1の上下平面をパルスレーザ(ナノ秒)を照射してレーザ熱処理を行う。
【0025】
パルスレーザ(ナノ秒)照射は、加工変質層のアモルファス層をナノ秒速で溶融する。そして、パルスレーザ(ナノ秒)照射による溶融は、結晶方位が揃った再結晶化(エピタキシャル成長)を進展させ、機械加工で生じた結晶欠陥を無くすことができる。また、アモルファスシリコン層は、波長532nmの光に強い吸収がある。
【0026】
そこで、パルスレーザ条件は、波長が532nmで、パルス照射時間が3ナノ秒から4ナノ秒の範囲内が良い。そして、パルス幅1パルス当たりのエネルギは、0.5μジュールから30μジュール、エネルギ密度が0.125J/cmから7.5J/cmであることが良いとされている。
【0027】
ただし、物体への入射光(放射束)は、巨視的に捉えた「反射」、「吸収」、「透過」という三つの行先に分かれ、入射角によって変化する。そして、シリコンウエハ1の表面溶融は、反射を少なくして吸収率が高いほど加工に貢献する。
【0028】
したがって、ノッチ部10のように複雑な形状の場合、シリコンウエハの研削後、その表面形状に対応して、パルスレーザ条件として、少なくとも入射角、エネルギ密度、単位面積当たりの照射回数(スキャンピッチ、走査速度)のいずれか一つを変化させることが望ましい。特に、加工変質層の修復は、境界面に対して鉛直線とパルスレーザ照射方向のなす角度である入射角を小さくすれば、材料に有効にエネルギが供給できる。ただし、入射角が10~15°以下は、実質的な差は小さい。
【0029】
レーザ光は、異なる物質間の境界面で光が反射するとき、「入射面」と「電場又は磁場の振動方向」によって電場が入射面内で振動しているs偏光、入射面に垂直に振動しているp偏光として定義される。そして、s偏光の反射率は入射角が大きくなるに連れ増大し、p偏光の反射率は減少する。s偏光とp偏光の反射率は、入射角が小さい場合、例えば、入射角が10~15°の場合一致し、s偏光とp偏光との区別はない。
【0030】
したがって、加工変質層の修復は、パルスレーザの照射方向を一定にした場合、偏光子を介して、シリコンウエハ1の表面形状に対応した入射角の変化に合わせてs偏光、p偏光の成分を調整しても良い。s偏光、p偏光の成分を調整することは、入射角が変化する複雑な形状の面に対して、形状に係らず吸収率よく照射を行うことになる。
【0031】
さらに、s偏光、p偏光の成分を調整する場合、レーザのエネルギ密度、単位面積当たりの照射回数(スキャンピッチ、走査速度)は、入射角変化によるレーザ吸収率の変化に対応させて変化させることがより望ましい。これにより、シリコンウエハ1の表面改質は、より効率良く、均一に改質される。
【0032】
図3は、パルスレーザの照射方向と入射角の関係を示す図である。入射角は、照射方向が入射面に対して鉛直線と照射方向のなす角度である。したがって、図1、2において、矢印方向からパルスレーザを照射した場合、(1)は、入射角が10~15°以下となる領域であり、(2)は入射角が10~15°以上となる領域である。そこで、シリコンウエハ1の表面形状である領域(1)、領域(2)に対応するため、(a)プリズム、ガルバノ-fθレンズ(集光レンズ30)光学系を用い、シリコンウエハ1の表面、照射面にパルスレーザの入射角が垂直になるように連続的に変化させる。
【0033】
あるいは(b)偏光子を用いて、s偏光とp偏光の成分、さらにはレーザの各種パラメタ(エネルギ密度、単位面積当たりの照射回数(スキャンピッチ、走査速度)をノッチ部10の各部形状に対応して制御する、ことが良い。もちろん、(a)(b)を組み合わせることがより望ましい。
【0034】
レーザ光学系の第1実施形態を図4、5で説明する。
図4は、パルスレーザを照射するレーザ光学系を示す構成図である。この構成は、スキャニング光学系としてのレーザ光学系である。スキャニング光学系は、高速にかつ広範囲に加工を行う際にレーザ光をスキャンして加工を行うことができる。レーザ発振器から出たレーザ光は、プリズム20、プリズム21、ガルバノミラー40、fθレンズ(集光レンズ30)を介してシリコンウエハ1の表面に集光する。
【0035】
パルスレーザ照射の方向は、ガルバノミラー40、あるいはプリズム21を回転させることによって、高速、且つ広範囲に可変できる。また、入射角が10~15°以下であれば、吸収率の実質的な差は小さい。したがって、パルスレーザの照射方向は、ノッチ部10の形状に連動して、図1、2の領域(2)であっても、入射角が10~15°以下になるようにガルバノミラー40、あるいはプリズム21の回転によってピンポイントで制御することが望ましい。第1実施形態は、fθレンズ(集光レンズ30)の有効面積により加工範囲が限定されるが、高速、且つ広範囲にレーザ照射方向を変えることができる。
【0036】
図5は、図4の一部を示す構成図である。入射角が10~15°以下となる領域、図1、2の(1)は、プリズム20を矢印方向へ移動して図4のレーザ光学系の一部を図5のように用いる。入射角は、10~15°以下であるので、ある拡がりを持って一方向に直進したレーザ光は、プリズム20、集光レンズ30を介してシリコンウエハ1の表面に集光する。集光レンズ30でシリコンウエハ1上にレーザ光を集光して加工を行うので、非常にシンプルなレンズ構成で光路長も比較的短くできる。
【0037】
図6は、レーザ照射方向を一定にして、s偏光とp偏光の成分を調整する第2実施形態のレーザ光学系である。図6において、パルスレーザ発振器3から出たレーザ光は、偏光光学系50、集光レンズ32を介してシリコンウエハ1の表面に集光する。レーザ照射方向は、第1実施形態と異なり、可変としない。したがって、図1、2の領域(2)は、実質的な入射角、例えば、10~15°以上となる。
【0038】
また、シリコンウエハ1の表面の反射率は、入射角が大きくなるに連れてs偏光の反射率が増大し、p偏光の反射率が減少する。また、s偏光とp偏光の反射率は、入射角5°で一致し、入射角12°で1.5%の差であり、入射角10~15°で実質的な差はない。そこで、入射角が10~15°以上となる領域は、吸収率が一定となるように、偏光光学系50でs偏光、p偏光の成分を調整する。
【0039】
さらに、入射角が10~15°以上となる図1、2の領域(2)は、偏光光学系50でs偏光、p偏光の成分を調整すると共に、レーザのエネルギ密度、単位面積当たりの照射回数(スキャンピッチ、走査速度)を変化させても良い。この場合、レーザの各種パラメタ(エネルギ密度、単位面積当たりの照射回数(スキャンピッチ、走査速度)は、ノッチ部10の各部形状に対応して制御する。パルスレーザ(ナノ秒)の照射は、外部からのパルス発生器を用いて、吸収率が一定になるようにすることが望ましい。
【0040】
また、p偏光の場合は、入射角の大きな領域において吸収率が急激に上昇し、ブリュースター角(偏光角)において最大値を持つ。したがって、大きな入射角で多重反射を繰り返せば、シリコンウエハ1に有効な照射エネルギが供給できる。
【0041】
図7は、偏光光学系50の構成を示すブロック図である。
偏光光学系50は、電圧駆動により任意の偏光方向状態を作り出すことが可能な光学系である。図7において、パルスレーザ発振器3から出たパルスレーザは、偏光板51で直線偏光され、電気光学素子52を通過する。
【0042】
電気光学素子52は、例えば、カーセルやポッケルスの偏光子であり、印加電圧に応じて遅相軸の位相を遅らせる素子である。電気光学素子52の遅相軸と直線偏光の方向は、45度に設定する。
【0043】
これにより、電気光学素子52を通過した光は任意の楕円偏光となる。任意方向の直線偏光は、最後に元の直線偏光方向と遅相軸の方向が揃った1/4λ波長板53を通過させることで作り出すことができる。
【0044】
つまり、偏光光学系50は、位相遅延をコントロール可能な電気光学素子52にすることで、位相遅延をコントロール可能な任意の偏光状態を作り出すことができる。また、偏光光学系50は、位相遅延量を変えることで、直線偏光、楕円偏光、円偏光に変換することもできる。
【0045】
図8は、入射角に対して与えるエネルギ密度の関係を示すグラフである。エネルギ密度は、入射角が10~15°以下となる領域、図1、2の(1)は、エネルギ密度をほぼ一定とする。入射角が10~15°以上となる図1、2の領域(2)は、入射角が大きくなるに従い、エネルギ密度を大きくする。これにより、ノッチ部10及び外周部13の表面は、形状に係らず、加工応力の影響をなくし均一な表面に改質される。そして、シリコンウエハ1は、強度が向上され、後工程における歩留りが向上する。
【符号の説明】
【0046】
1…シリコンウエハ
2…レーザ光
3…パルスレーザ発振器
10…ノッチ部
11…底部
12…斜面
13…外周部
14…端面
15…上面
16…面取り部
20、21…プリズム
30、32…集光レンズ
40…ガルバノミラー
50…偏光光学系
51…偏光板
52…電気光学素子
53…1/4λ波長板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8