(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/06 20060101AFI20241029BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20241029BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B24B55/06
B24B41/06 L
B24B7/04 A
(21)【出願番号】P 2020081824
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】禹 俊洙
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-063885(JP,A)
【文献】特開2002-270555(JP,A)
【文献】特開2001-198824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
B24B 55/06
B24B 41/06
B24B 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、
該保持面に保持された被加工物に研削砥石を接触させ研削屑を発生させながら被加工物を研削する研削手段または該被加工物にスラリーを供給して研磨屑を発生させながら被加工物を研磨する研磨手段と、
該保持面を洗浄する保持面洗浄機構と、を備える加工装置であって、
該保持面洗浄機構は、
研削屑または研磨屑を溶かすことが可能な薬液を
1つの噴射口から該保持面に供給する薬液供給ノズルと、
該薬液供給ノズルの
噴射口を外周側から囲んで配置された吸引口を備え、該薬液供給ノズルから該保持面に供給した該薬液を
該吸引口から吸引する薬液吸引ノズルと、
該薬液供給ノズルと該薬液吸引ノズルとを該保持面に接近および離間させる昇降移動手段と、制御手段とを備え、
該制御手段は、
該昇降移動手段によって該薬液供給ノズルと該薬液吸引ノズルとを下降させ該保持面との間に隙間をあけて該保持面に接近させることと、
該薬液供給ノズルから該保持面に該薬液を供給することと、
該保持面に供給された該薬液を該薬液吸引ノズルで吸引することと、
によって、該保持面に付着した研削屑または研磨屑を除去する、加工装置。
【請求項2】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルの該保持面の中心を軸に該チャックテーブルを回転させる回転機構と、
該保持面に保持された被加工物に研削砥石を接触させ研削屑を発生させながら被加工物を研削する研削手段または該被加工物にスラリーを供給して研磨屑を発生させながら被加工物を研磨する研磨手段と、
該保持面を洗浄する保持面洗浄機構と、を備える加工装置であって、
該保持面洗浄機構は、
該保持面の半径以上かつ直径以下の長さを有し、
長手方向に並んだ複数の噴射口から研削屑または研磨屑を溶かすことが可能な薬液を該保持面に供給する薬液供給ノズルと、
該薬液供給ノズルと平行にかつ該チャックテーブルの回転方向において該薬液供給ノズルの後方に配設され
た薬液吸引ノズルと、
制御手段と、を備え、
該制御手段は、
該回転機構によって該チャックテーブルを所定の回転速度で回転させることと、
該薬液供給ノズルから該保持面に該薬液を供給することと、
該保持面に供給され該チャックテーブルの回転によって導かれた該薬液を該薬液吸引ノズルで吸引することと、により、
該薬液を、該薬液供給ノズル、該保持面、該薬液吸引ノズルの順に流れさせ、
該保持面に付着した研削屑または研磨屑を除去する、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削砥石を用いてチャックテーブルの保持面に保持された被加工物を研削する加工装置は、チャックテーブルの上面を保持面としている。特許文献1に開示のように研削した被加工物が保持面から離間した後、保持面にブラシを接触させて洗浄したり、特許文献2に開示のように保持面に向かって二流体を噴射させて保持面を洗浄したりしている。さらに、特許文献3、4に開示のようにチャックテーブルの保持面から二流体を噴出させることによって、研削加工中に保持面からポーラス部材内に進入した研削屑を保持面から噴出させている。
【0003】
保持面に付着した研削屑は、被加工物を吸引保持するために保持面に働く吸引力によって、被加工物の外周部分および保持面の外周部分から保持面内およびポーラス部材内に進入することがある。ポーラス部材内に進入した研削屑を除去する事は難しく、ポーラス部材内に進入した研削屑によって保持面の吸引力が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-059881号公報
【文献】特開2011-020078号公報
【文献】特開2015-054359号公報
【文献】特開2015-060922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保持面の吸引力が低下すると、保持面と被加工物の下面との間に隙間ができる。そして、吸引力が低下している状態の保持面に被加工物を保持した状態で、研削砥石を用いて被加工物を研削すると、被加工物の外周部分が予め設定された厚みより薄く仕上がってしまうという問題が有る。
したがって、加工装置には、保持面の吸引力を低下させないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該保持面に保持された被加工物に研削砥石を接触させて研削屑を発生させながら被加工物を研削する研削手段または該被加工物にスラリーを供給して研磨屑を発生させながら被加工物を研磨する研磨手段と、該保持面を洗浄する保持面洗浄機構と、を備える加工装置であって、該保持面洗浄機構は、研削屑または研磨屑を溶かすことが可能な薬液を1つの噴射口から該保持面に供給する薬液供給ノズルと、該薬液供給ノズルの噴射口を外周側から囲んで配置された吸引口を備え、該薬液供給ノズルの噴射口を外周側から囲んで配置された吸引口を備え、該薬液供給ノズルから該保持面に供給した該薬液を該吸引口から吸引する薬液吸引ノズルと、該薬液供給ノズルと該薬液吸引ノズルとを該保持面に接近および離間させる昇降移動手段と、制御手段とを備え、該制御手段は、該昇降移動手段によって該薬液供給ノズルと該薬液吸引ノズルとを下降させ該保持面との間に隙間をあけて該保持面に接近させることと、該薬液供給ノズルから該保持面に該薬液を供給することと、該保持面に供給された該薬液を該薬液吸引ノズルで吸引することと、によって、該保持面に付着した研削屑または研磨屑を除去する、加工装置である。
また、本発明は、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルの該保持面の中心を軸に該チャックテーブルを回転させる回転機構と、該保持面に保持された被加工物に研削砥石を接触させ研削屑を発生させながら被加工物を研削する研削手段または該被加工物にスラリーを供給して研磨屑を発生させながら被加工物を研磨する研磨手段と、該保持面を洗浄する保持面洗浄機構と、を備える加工装置であって、
該保持面洗浄機構は、該保持面の半径以上かつ直径以下の長さを有し、長手方向に並んだ複数の噴射口から研削屑または研磨屑を溶かすことが可能な薬液を該保持面に供給する薬液供給ノズルと、該薬液供給ノズルと平行にかつ該チャックテーブルの回転方向において該薬液供給ノズルの後方に配設された薬液吸引ノズルと、制御手段と、を備え、該制御手段は、該回転機構によって該チャックテーブルを所定の回転速度で回転させることと、該薬液供給ノズルから該保持面に該薬液を供給することと、該保持面に供給され該チャックテーブルの回転によって導かれた該薬液を該薬液吸引ノズルで吸引することと、により、該薬液を、該薬液供給ノズル、該保持面、該薬液吸引ノズルの順に流れさせ、該保持面に付着した研削屑または研磨屑を除去する、加工装置であることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、薬液供給ノズルから薬液を保持面に供給し、保持面に供給された薬液を薬液吸引ノズルから吸引することにより、薬液供給ノズル、保持面、薬液吸引ノズルの順に薬液を流して保持面に付着した研削屑を除去することができる。
そして、保持面に付着した研削屑を除去することにより、研削屑がポーラス部材の内部に入り込むのが防止され、被加工物を保持面に吸引保持する際に保持面における吸引力の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1保持面洗浄機構の一部を表す斜視図である。
【
図3】第1保持面洗浄機構を用いて保持面を洗浄する様子を表す断面図である。
【
図5】第2保持面洗浄機構の一部を表す斜視図である。
【
図6】第2保持面洗浄機構を用いて保持面を洗浄する様子を表す断面図である。
【
図8】第3保持面洗浄機構を用いて保持面を洗浄する様子を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 加工装置の構成
図1に示す加工装置1は、研削手段3を用いて被加工物14を加工する加工装置である。以下、加工装置1の構成について説明する。
【0010】
加工装置1は、
図1に示すように、Y軸方向に延設されたベース10と、ベース10の上における+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
【0011】
コラム11の-Y方向側の側面には、研削手段3を支持する研削送り手段4が配設されている。研削手段3は、Z軸方向の回転軸35を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に接続されたマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された研削ホイール34とを備えている。研削ホイール34は、ホイール基台341と、ホイール基台341の下面に環状に配列された略直方体形状を有する複数の研削砥石340とを備えており、研削砥石340の下面342は被加工物14を研削する研削面となっている。
スピンドルモータ32を用いて、回転軸35を軸にしてスピンドル30を回転させることにより、スピンドル30に接続されているマウント33及びマウント33に装着されている研削ホイール34が、ホイール基台341の中心を通るZ軸方向の回転軸35を軸にして回転することとなる。
【0012】
研削送り手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、ボールネジ40の上端に連結され回転軸45を軸にしてボールネジ40を回動させるZ軸モータ42と、Z軸モータ42の回転量の測定・制御等を行うエンコーダ420と、内部のナットがボールネジ40に螺合し側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結されスピンドル30を保持するホルダ44とを備えている。
Z軸モータ42を用いてボールネジ40を駆動することにより、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、昇降板43がガイドレール41に案内されながらZ軸方向に昇降移動する。これに伴い、ホルダ44に保持されている研削手段3が、保持面200に対して垂直な方向(Z軸方向)に移動する構成となっている。
【0013】
加工装置1は、研削手段3の高さを認識する高さ認識手段46を備えている。高さ認識手段46は、例えばガイドレール41の-Y方向側の側面に配設されたスケール460と、例えば昇降板43の+X方向側の側面、かつ、スケール460に隣接する位置に配設された高さ認識部461とを備えている。高さ認識部461は、例えば、スケール460に形成された目盛りの反射光を読み取る光学式の認識機構等を有するブロックである。高さ認識部461を用いてスケール460の目盛りを読み取ることによって、研削手段3の高さを認識することができる。
【0014】
ベース10の上には、チャックテーブル2が配設されている。チャックテーブル2は、円板状の吸引部20と吸引部20を支持する環状の枠体21とを備えている。吸引部20は、多数の細孔を有するポーラス部材であり、吸引部20の上面は被加工物14が吸引保持される保持面200となっている。枠体21の上面210は、保持面200に面一に形成されている。
【0015】
チャックテーブル2の周囲にはカバー28が配設されており、カバー28は蛇腹29に伸縮可能に連結されている。
チャックテーブル2がY軸方向に移動すると、カバー28がチャックテーブル2と一体的にY軸方向に移動して、蛇腹29が伸縮することとなる。
【0016】
ベース10の上における-Y方向側には、第1保持面洗浄機構5が配設されている。
第1保持面洗浄機構5は、直方体状のケース59と、ケース59を昇降可能に支持する昇降移動手段52とを備えている。
昇降移動手段52は、ベース10の内部に埋設されたシリンダ520と、シリンダ520に昇降可能に収容されたピストン部521とを備えている。ピストン部521は、ベース10の上面100に形成された貫通孔101を貫通し、ベース10の内部から外部に向けて+Z方向に突出している。ピストン部521の上端には、アーム部522の一端が連結されており、アーム部522の他端からは軸部523が垂下している。軸部523の下端にはケース59が連結されている。
【0017】
シリンダ520には、例えば図示しないエア供給源等が接続されている。該エア供給源からシリンダ520の内部にエアを供給して、ピストン部521を下から付勢して上昇させることにより、ピストン部521、アーム部522、及び軸部523、並びにケース59が一体的に上昇することとなる。
昇降移動手段52においては、シリンダ520に供給するエアの量を制御することにより、ピストン部521を昇降移動させて、ケース59を適宜の高さ位置に昇降移動させることが可能となっている。
【0018】
第1保持面洗浄機構5のケース59の内部には、
図2に示すように、研削屑を溶かすことが可能な薬液を保持面200に供給する薬液供給ノズル50が配設されている。ここで、薬液は、例えば水酸化カリウム水溶液であり、該水酸化カリウム水溶液における水酸化カリウムの質量パーセント濃度が5%~10%であるとする。すなわち、該水酸化カリウム水溶液においては、水酸化カリウム水溶液を構成する水と水酸化カリウムとの合計質量に対する水酸化カリウムの質量の割合が5%~10%であるとする。
薬液供給ノズル50は、略直方体状に形成されており、例えば保持面200の半径以上かつ直径以下の長さを有している。
【0019】
第1保持面洗浄機構5は、
図3に示すように軸部523をZ軸方向に貫通し、さらに薬液供給ノズル50の内部にZ軸方向に延ばされ、薬液供給ノズル50の内部において複数に分岐された薬液供給路501を備えている。薬液供給路501の複数に分岐した各々の路は、薬液供給ノズル50の下面502に開口して形成された噴射口503に接続されている。
【0020】
また、薬液供給路501は、薬液供給源500に接続されている。保持面200の上に薬液供給ノズル50が位置付けられている状態で、薬液供給源500から薬液を供給することにより、薬液供給ノズル50の噴射口503から薬液を噴射することができる。
【0021】
第1保持面洗浄機構5は、薬液供給ノズル50を用いて保持面200に供給した薬液を吸引する薬液吸引ノズル51を備えている。薬液吸引ノズル51は、
図2に示すように薬液供給ノズル50と平行に延ばされて形成された長尺部分518と、長尺部分518の両端に、長径部分518に対して直交するように設けられた短径部分519とを有している。
図3に示すように、薬液供給ノズル50の噴射口503から保持面200に薬液を噴射しているときに、薬液吸引ノズル51を作動することにより薬液吸引ノズル51に吸引される。こうして、薬液が、薬液供給ノズル50、保持面200、薬液吸引ノズル51の順に流れることとなる。
【0022】
第1保持面洗浄機構5は、制御手段9を備えている。制御手段9を用いて、昇降移動手段52を制御し、薬液供給ノズル50と薬液吸引ノズル51とを下降させることにより、保持面200の上に隙間をあけて接近させることができる。
薬液供給ノズル50と薬液吸引ノズル51とが保持面200の上に保持面200との間に隙間をあけて接近させられている状態で、さらに制御手段9を用いて、薬液供給ノズル50を制御し、薬液供給ノズル50から保持面200に薬液を供給するとともに、薬液吸引ノズル51を用いて保持面200に供給された薬液を吸引することによって、薬液を薬液供給ノズル50から、保持面200を通じて薬液吸引ノズル51へと流して、保持面200に付着した研削屑を除去することができる。
【0023】
チャックテーブル2の下方には、チャックテーブル2を回転させる回転機構26が配設されている。回転機構26には、モータ260が配設されている。
回転機構26は、例えばプーリ機構であり、モータ260によってZ軸方向の軸心を軸に回転可能な駆動軸262と、駆動軸262の上端に連結されている駆動プーリ263と、駆動プーリ263に巻回されて駆動プーリ263の駆動力を従動プーリ265に伝達する伝動ベルト264と、駆動プーリ263とともに伝動ベルト264に巻回されている従動プーリ265と、従動プーリ265に接続されている従動軸266と、従動軸266の下端に連結されたロータリジョイント267と、を備えている。従動軸266は、チャックテーブル2に連結されている。
【0024】
モータ260を用いて駆動軸262を回転させると、駆動プーリ263が回転するとともに、駆動プーリ263の回転力が伝動ベルト264によって従動プーリ265に伝達されて従動プーリ265が回転することとなる。これにより、従動プーリ265に接続されている従動軸266が、保持面200の中心を軸にして回転して、従動軸266に連結されているチャックテーブル2が保持面200の中心を軸にして回転する構成となっている。
【0025】
チャックテーブル2の下方には、流路243を通じて吸引部20に接続された吸引源240、水供給源241及びエア供給源242が配設されている。
流路243は、例えば、枠体21、従動軸266、及びロータリジョイント267の内部を貫通するように形成されており、ロータリジョイント267の側面からロータリジョイント267の外部に突き出て、吸引路2430、水路2431、及びエア流路2432に分岐している。
【0026】
吸引源240と吸引部20との間には、吸引バルブ2400が配設されている。吸引バルブ2400が開いている状態で吸引源240を作動させると、吸引源240によって生み出された吸引力が、流路243を通じて吸引部20の保持面200に伝達されることとなる。
例えば、被加工物14が保持面200に載置されている状態で、吸引バルブ2400を開いて、吸引源240を作動させることにより、保持面200に被加工物14を吸引保持することができる。
【0027】
また、水供給源241と吸引部20との間には、水バルブ2410が配設されている。水バルブ2410が開いている状態で、水供給源241を用いて水を供給すると、供給された水は、流路243を通じて吸引部20に伝達され、保持面200に形成されている多数の細孔から+Z方向に噴射されることとなる。
例えば、保持面200に被加工物14等が載置されていない状態で、水バルブ2410を開くとともに水供給源241を作動させて、保持面200の多数の細孔から水を噴射させることにより、保持面200を洗浄することができる。
【0028】
加えて、エア供給源242と吸引部20との間には、エアバルブ2420が配設されている。エアバルブ2420が開いている状態で、エア供給源242からエアを供給すると、供給されたエアは、流路243を通じて吸引部20に伝達され、保持面200の多数の細孔から噴射されることとなる。
例えば、保持面200に被加工物14等が載置されていない状態で、エアバルブ2420を開くとともにエア供給源242を作動させて、保持面200の多数の細孔からエアを噴射させることにより、吸引部20の内部や保持面200に付着している研削屑等を除去することができる。このとき、水バルブ2410を開いてエアとともに水を噴射してもよい。
【0029】
2 加工装置の動作
(被加工物の研削加工)
上記の加工装置1を用いて被加工物14の研削加工を行う際の加工装置1の動作について説明する。まず、
図1に示した被加工物14をチャックテーブル2の保持面200に載置する。そして、
図3に示した吸引源240を作動させて、生み出された吸引力を保持面200に伝達する。これにより、被加工物14が保持面200に吸引保持される。
【0030】
被加工物14が保持面200に吸引保持されている状態で、図示しないY軸移動手段等を用いてチャックテーブル2を+Y方向に移動させて、研削手段3の下方に位置付ける。
次いで、回転機構26を用いて回転軸25を軸にしてチャックテーブル2を所定の回転速度で回転させて、保持面200に保持されている被加工物14を回転させるとともに、
図1に示したスピンドルモータ32を用いて回転軸35を軸にして研削砥石340を回転させる。
【0031】
被加工物14が回転軸25を軸にして回転しており、かつ、研削砥石340が回転軸35を軸にして回転している状態で、研削送り手段4を用いて研削手段3を-Z方向に下降させる。
【0032】
研削砥石340を-Z方向に下降させることにより、研削砥石340の下面342が被加工物14の上面140に接触する。
下面342が被加工物14の上面140に接触している状態で、さらに研削砥石340を-Z方向に下降させていくことによって被加工物14が研削される。
【0033】
(保持面の洗浄)
上記のように、保持面200に保持された被加工物14に研削砥石340を接触させて被加工物14を研削すると研削屑が発生して、発生した研削屑が保持面200に付着する。
そこで、第1保持面洗浄機構5を用いて、保持面200に付着した研削屑を除去する。以下、第1保持面洗浄機構5を用いて保持面200に付着した加工屑を除去する際の加工装置1の動作について説明する。
【0034】
まず、図示しないY軸移動手段を用いて
図1に示したチャックテーブル2を-Y方向に移動させて、
図3に示すように、チャックテーブル2を第1保持面洗浄機構5のケース59の下方に位置付ける。このとき、第1保持面洗浄機構5のケース59の+Y方向側の端部と、チャックテーブル2の枠体21の上面210の+Y方向側の端部とがほぼ一致するようにする。
【0035】
そして、チャックテーブル2を図示しない制御手段9を用いて回転機構26を制御して、チャックテーブル2を所定の回転速度で回転させる。
さらに、昇降移動手段52を制御して、薬液供給ノズル50と薬液吸引ノズル51とを-Z方向に下降させて、薬液供給ノズル50と薬液吸引ノズル51とを保持面200に接近させる。このとき、保持面200と、薬液供給ノズル50、及び薬液吸引ノズル51との間に隙間があいている状態にする。
【0036】
次に、制御手段9を用いて薬液供給ノズル50を制御して、薬液供給源500から薬液供給ノズル50に薬液を供給する。これにより、薬液供給ノズル50の噴射口503から保持面200に薬液が噴射される。
【0037】
そして、制御手段9を用いて吸引源510を作動させて、保持面200に供給された薬液を薬液吸引ノズル51から吸引する。
チャックテーブル2が回転していることによって、
図2に示す-X方向に薬液供給ノズル50に対して保持面200が進入していく。
これにより、薬液供給ノズル50、保持面200、及び薬液吸引ノズル51の順に薬液が流れて、保持面200に付着した研削屑を溶かして除去することができる。
保持面200に付着した研削屑を除去することにより、研削屑がポーラス部材の内部に入り込むのが防止され、被加工物14を保持面200に吸引保持する際に保持面200に及ぼされる吸引力の低下を防ぐことができる。
【0038】
加工装置1は、第1保持面洗浄機構5にかえて、
図4に示す第2保持面洗浄機構6を備えていてもよい。
第2保持面洗浄機構6は、昇降移動手段52に連結された洗浄パッド69を備えている。洗浄パッド69は、
図5に示すように、円板部690と、円板部690の下面691の外周縁に環状に形成された縁部692とを備えている。
【0039】
図6には、洗浄パッド69が、保持面200に接近させられている様子が示されている。洗浄パッド69の外径は、
図6に示すように、チャックテーブル2の枠体21の外径に略同一な大きさを有している。洗浄パッド69の円板部690の下面691の中央には、薬液が噴射される噴射口603が形成されており、洗浄パッド69の縁部692には、薬液が吸引される吸引口613が環状に延ばされて形成されている。
【0040】
連結部材68及び洗浄パッド69には、両者をZ軸方向に貫通する薬液供給路601が形成されている。薬液供給路601の上端は薬液供給源500に接続されており、薬液供給路601の下端は洗浄パッド69の噴射口603を通じて洗浄パッド69の下方の空間に接続されている。
薬液供給ノズル60は、洗浄パッド69と薬液供給路601とによって構成されている。
【0041】
薬液供給源500から薬液を供給すると、該薬液は薬液供給路601を通って、噴射口603から洗浄パッド69の下方の空間に噴射されることとなる。洗浄パッド69が保持面200に接近している状態で噴射口603から薬液が噴射されると、噴射された薬液は、保持面200、洗浄パッド69の円板部690の下面691、及び縁部692の内側面693により形成される薬液貯留空間602に溜められる構成となっている。
【0042】
洗浄パッド69の内部には吸引路611が設けられている。吸引路611は、洗浄パッド69の内部における外周付近に、環状に延ばされて形成されており、その上端が吸引源510に接続されている。また、吸引路611の下端には、吸引口613が接続されている。
薬液吸引ノズル61は、洗浄パッド69と吸引路611とによって構成されている。
【0043】
吸引源510を作動すると、生み出された吸引力が吸引路611を通じて吸引口613に伝達されることとなる。例えば、保持面200に洗浄パッド69が接近しており、噴射口603から保持面200に薬液が噴射されている状態で、吸引源510を作動することにより、保持面200に噴射された薬液が吸引口613から吸引されることとなる。
なお、薬液貯留空間602に薬液を溜めている際に、吸引口613から吸引していてもよい。また、円板部690の外側面に環状のシール部材694を備えていてもよい。なお、シール部材694の内側面は、チャックテーブル2の外側面との間に僅かな隙間を形成する大きさで形成されている。
【0044】
第2保持面洗浄機構6は、制御手段9に接続されている。第2保持面洗浄機構6のその他の部分については、第1保持面洗浄機構5と同様に構成されているため、その説明を省略する。
【0045】
第2保持面洗浄機構6を用いて保持面200を洗浄する際には、まず、
図4に示した制御手段9を用いて昇降移動手段52を制御して、薬液供給ノズル50と薬液吸引ノズル51とを下降させて保持面200に接近させる。このとき、保持面200と、薬液供給ノズル50及び薬液吸引ノズル51との間に隙間があいている状態にする。
【0046】
次に、制御手段9を用いて薬液供給源500から薬液供給ノズル60に薬液を供給する。これにより、薬液が噴射口603から薬液供給ノズル60を通じて保持面200に供給される。
【0047】
そして、制御手段9を用いて吸引源510を作動して、保持面200に供給された薬液を薬液吸引ノズル61から吸引する。
これにより、薬液が薬液供給ノズル60、保持面200、薬液吸引ノズル61の順に流れて、保持面200に付着していた研削屑が除去される。
【0048】
加工装置1は、
図7に示すように小径パッド79を有する第3保持面洗浄機構7を備えていてもよい。
【0049】
図8には、小径パッド79が保持面200に接近している様子が図示されている。小径パッド79は、上記の第2保持面洗浄機構6の洗浄パッド69よりも小径の円板形状を有している。
小径パッド79の内部には、
図8に示すように、薬液供給源500に接続された薬液供給路701が形成されている。薬液供給路701は、小径パッド79をZ軸方向に貫通しており、薬液供給路701の下端は、小径パッド79の下面791の中央に形成された噴射口703に接続されている。
小径パッド79と薬液供給路701とによって薬液供給ノズル70が構成されている。
【0050】
また、小径パッド79の内部には、吸引源510に接続された吸引路711が形成されている。吸引路711は、小径パッド79の外周付近において環状に延ばされており、その下端は、小径パッド79の下面791に環状に延ばされて形成された吸引口713に接続されている。
小径パッド79と吸引路711とによって薬液吸引ノズル71が構成されている。
【0051】
さらに、第3保持面洗浄機構7は、薬液供給ノズル70と薬液吸引ノズル71とを水平方向に移動させる水平移動手段53を備えている。
【0052】
第3保持面洗浄機構7においては、薬液供給ノズル70から保持面200に薬液を供給するとともに薬液吸引ノズル71から薬液を吸引しながら、水平移動手段53を制御して薬液供給ノズル70と薬液吸引ノズル71とを水平方向に移動させることにより、保持面200の各部分を洗浄することができる。
第3保持面洗浄機構7は、例えば、保持面200のうち特に研削屑が溜まりやすい保持面200の外周縁をピンポイントで洗浄することができる。
つまり、薬液供給ノズル70を保持面の外周部分に位置づけ、チャックテーブル2を回転機構26を用いて回転させ保持面200の外周部分を環状に洗浄してもよい。
なお、保持面200を図示しないカメラで撮像し、保持面200に研削屑が付着していると判断できる色の部分があったら、その研削屑が付着していると判断した部分に薬液供給ノズル7を位置づけピンポイントで洗浄してもよい。
【0053】
加工装置1は、保持面200に保持された被加工物14の上面140にスラリーを供給し被加工物14の上面140を研磨する研磨手段を含むものであり、該研磨手段を用いた被加工物14の研磨加工時に、第1保持面洗浄機構5、第2保持面洗浄機構6、または、第3保持面洗浄機構7を用いて保持面200に付着した研磨屑、該スラリー、及び該研削屑を該薬液によって除去するものであってもよい。
上記のように加工装置1が研磨手段を含むものであっても、第1保持面洗浄機構5、第2保持面洗浄機構6、または、第3保持面洗浄機構7を用いて、薬液を保持面200に供給し、供給された薬液を吸引することにより保持面200を洗浄することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:研削装置 10:ベース 11:コラム
14:被加工物 140:被加工物の上面
2:チャックテーブル 20:吸引部 200:保持面 21:枠体 210:上面
240:吸引源 241:水供給源 242:エア供給源 243:流路
25:回転軸 26:回転手段260:モータ 262:駆動軸 263:駆動プーリ
264:伝動ベルト 265:従動プーリ 266:従動軸
267:ロータリジョイント 2400:吸引バルブ 2410:エアバルブ
2420:水バルブ 2430:吸引路 2431:水路 2432:エア流路
28:カバー 29:蛇腹 3:研削手段 30:スピンドル 31:ハウジング
32:スピンドルモータ 33:マウント 34:研削ホイール 340:研削砥石
341:ホイール基台 342:下面 35:回転軸
4:研削送り手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:Z軸モータ
420:エンコーダ 43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸
46:高さ認識手段 460:スケール 461:高さ認識部
5:第1保持面洗浄機構 50:薬液供給ノズル 500:薬液供給源
501:薬液供給路 502:下面 503:噴射口 51:薬液吸引ノズル
518:長径部分 519:短径部分
510:吸引源 511:吸引路 52:昇降移動手段 520:シリンダ
521:ピストン部 522:アーム部 523:軸部 59:ケース
53:水平移動手段 9:制御手段
6:第2保持面洗浄機構 60:薬液供給ノズル
601:薬液供給路 602:薬液貯留空間 603:噴射口
61:薬液吸引ノズル 611:吸引路 613:吸引口
69:洗浄パッド 690:円板部 691:下面 692:縁部 963:内側面
694:シール部材
7:第3保持面洗浄機構 70:薬液供給ノズル 701:薬液供給路
702:薬液貯留空間 703:噴射口 71:薬液吸引ノズル 711:吸引路
713:吸引口 79:小径パッド 791:下面