(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20241029BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20241029BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241029BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
B24B41/06 A
B24B41/06 L
B23Q3/08 A
H01L21/304 622H
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2020140808
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福士 暢之
(72)【発明者】
【氏名】久保 徹雄
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-145776(JP,A)
【文献】特開2011-091246(JP,A)
【文献】特開2001-313326(JP,A)
【文献】特開2019-075406(JP,A)
【文献】特開2016-039286(JP,A)
【文献】特開2009-076720(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0138535(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B23Q 3/08
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面にウェーハの下面を保持する保持手段と、該保持面に保持されたウェーハの上面を加工する加工手段と、該保持面に保持され
該加工手段によって加工されたウェーハを該保持面から搬出する搬送手段と、制御手段とを備える加工装置であって、
該保持手段は、該保持面と水供給源とを連通する連通路と、該連通路に配置される分岐部と、該分岐部とエア供給源とを連通するエア連通路と、該分岐部と水供給源との間の該連通路に配置され水の流量を調整する水流量調整弁と、該エア連通路に配置されエアの流量を調整可能なエア流量調整弁と、を備え、
該搬送手段は、アームと、該アームを昇降する昇降手段と、該アームの高さ位置を認識するエンコーダと、該アームに連結する連結部材と、該連結部材に形成された貫通穴と、該貫通穴に挿通する支持部材と、該支持部材の上端に連結するつば部と、該支持部材の下端に連結する搬送パッドと、を少なくとも備え、
該制御手段は、
該搬送手段が該保持面に保持されているウェーハ
の上面を保持することと、
該水流量調整弁を開き該保持面から水を噴出させることと、
該保持面から噴出する水によって
該保持面とウェーハの下面との間に水膜を形成することによって該保持面からウェーハを離間させると共にウェーハを保持した該搬送手段
の該アームを上昇させることと、
該アームの上昇量が大きくなるにつれて
該エア流量調整弁の開度を大きくしていき該保持面から噴出する該エアの流量を多くさせること
によって該保持面と該ウェーハの下面との間の水膜の表面張力を破壊する制御部と、を制御する、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持面に保持されたウェーハを加工する加工装置は、特許文献1に開示のように搬送パッドを用いて加工されたウェーハを保持して保持面からウェーハを離間させる際に、保持面から水とエアとの混合液を噴出させている。
【0003】
しかし、保持面から噴出した混合液の圧力によってウェーハが割れるという問題があった。そのため、特許文献2に開示のように、噴出する混合液の噴出量を徐々に多くするという発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-294588号公報
【文献】特開2009-076720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ウェーハを保持面から離間させるまでに時間がかかるという問題がある。したがって、加工装置にはウェーハを割らないように短時間で保持面から離間させるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
保持面にウェーハの下面を保持する保持手段と、該保持面に保持されたウェーハの上面を加工する加工手段と、該保持面に保持され該加工手段によって加工されたウェーハを該保持面から搬出する搬送手段と、制御手段とを備える加工装置であって、該保持手段は、該保持面と水供給源とを連通する連通路と、該連通路に配置される分岐部と、該分岐部とエア供給源とを連通するエア連通路と、該分岐部と水供給源との間の該連通路に配置され水の流量を調整する水流量調整弁と、該エア連通路に配置されエアの流量を調整可能なエア流量調整弁と、を備え、該搬送手段は、アームと、該アームを昇降する昇降手段と、該アームの高さ位置を認識するエンコーダと、該アームに連結する連結部材と、該連結部材に形成された貫通穴と、該貫通穴に挿通する支持部材と、該支持部材の上端に連結するつば部と、該支持部材の下端に連結する搬送パッドと、を少なくとも備え、該制御手段は、該搬送手段が該保持面に保持されているウェーハの上面を保持することと、該水流量調整弁を開き該保持面から水を噴出させることと、該保持面から噴出する水によって該保持面とウェーハの下面との間に水膜を形成することによって該保持面からウェーハを離間させると共にウェーハを保持した該搬送手段の該アームを上昇させることと、
該アームの上昇量が大きくなるにつれて該エア流量調整弁の開度を大きくしていき該保持面から噴出する該エアの流量を多くさせることによって該保持面と該ウェーハの下面との間の水膜の表面張力を破壊する制御部と、を制御する、加工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送手段を用いてウェーハを割ることなく保持面から素早く離間させることが可能になり、これにより生産性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】保持面とウェーハとの間の距離と水及びエアの流量との関係を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 加工装置の構成
図1に示す加工装置1は、加工手段3を用いて保持面200に保持されたウェーハ14の上面140を加工する加工装置である。ウェーハ14の材質は例えばSiCであり、加工前の厚みが2cm程度であるとする。以下、加工装置1の構成について説明する。
【0010】
加工装置1は、
図1に示すようにY軸方向に延設されたベース10と、ベース10の+Y方向側に立設されたコラム11とを備えている。
【0011】
コラム11の-Y方向側の側面には、加工手段3を昇降可能に支持する加工送り手段4が配設されている。加工手段3は、例えばZ軸方向の軸心を有するスピンドル30と、スピンドル30を回転可能に支持するハウジング31と、Z軸方向の軸心を軸にしてスピンドル30を回転駆動するスピンドルモータ32と、スピンドル30の下端に接続されたマウント33と、マウント33の下面に着脱可能に装着された研削ホイール34とを備える研削手段である。
【0012】
研削ホイール34は、ホイール基台341とホイール基台341の下面に環状に配列された略直方体状の複数の研削砥石340とを備えている。研削砥石340の下面は、ウェーハ14に接触する研削面342である。
【0013】
スピンドルモータ32を用いてスピンドル30を回転させることにより、スピンドル30に接続されたマウント33及びマウント33の下面に装着された研削ホイール34が一体的に回転することとなる。
【0014】
加工送り手段4は、Z軸方向の回転軸45を有するボールネジ40と、ボールネジ40に対して平行に配設された一対のガイドレール41と、回転軸45を軸にしてボールネジ40を回転させるZ軸モータ42と、内部のナットがボールネジ40に螺合して側部がガイドレール41に摺接する昇降板43と、昇降板43に連結され加工手段3を支持するホルダ44とを備えている。
【0015】
Z軸モータ42によってボールネジ40が駆動されて、ボールネジ40が回転軸45を軸にして回転すると、これに伴って昇降板43がガイドレール41に案内されてZ軸方向に昇降移動するとともに、ホルダ44に保持されている加工手段3の研削ホイール34がZ軸方向に移動することとなる。
【0016】
ベース10の上には保持手段2が配設されている。保持手段2は、例えばウェーハ14を保持するチャックテーブルである。保持手段2は、円板状の吸引部20と吸引部20を支持する枠体21とを備えている。吸引部20は例えばポーラス部材であり多数の細孔を有している。吸引部20の上面はウェーハ14の下面141を保持する保持面200であり、枠体21の上面210は保持面200に面一に形成されている。
【0017】
ベース10の内部には、内部ベース12が配設されている。内部ベース12の上には、保持手段2を水平方向に移動させる水平移動手段5が配設されている。
水平移動手段5は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ50と、ボールネジ50に対して平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50に連結されボールネジ50を回動させるY軸モータ52と、底部のナットがボールネジ50に螺合してガイドレール51に沿ってY軸方向に移動する可動板53とを備えている。
Y軸モータ52にボールネジ50が駆動されてボールネジ50が回転すると、可動板53がガイドレール51に案内されてY軸方向に水平に移動する構成となっている。
【0018】
可動板53の上には複数(
図1においては2本)の支持柱291が立設されており、支持柱291には環状の連結部材29が支持されている。環状の連結部材29は、基台23を回転可能に支持している。
保持手段2は、
図2に示すように基台23に装着されて枠体21が基台23に支持される。すなわち、保持手段2は可動板53の上に支持柱291、連結部材29及び基台23を介して配設されている。
【0019】
保持手段2の下方には、基台23を回転させる回転手段26が配設されている。回転手段26は例えばプーリ機構であり、モータ260によってZ軸方向の軸心を軸に回転可能な駆動軸262と、駆動軸262の上端に連結されている駆動プーリ263と、駆動プーリ263に巻回されて駆動プーリ263の駆動力を従動プーリ265に伝達する伝動ベルト264と、駆動プーリ263とともに伝動ベルト264に巻回されている従動プーリ265と、従動プーリ265に接続されている従動軸266と、従動軸266の下端に連結されたロータリジョイント267と、を備えている。従動軸266は、基台23に連結されている。
【0020】
モータ260を用いて駆動軸262を回転させると、駆動プーリ263が回転するとともに、駆動プーリ263の回転力が伝動ベルト264によって従動プーリ265に伝達されて従動プーリ265が回転することとなる。これにより、従動プーリ265に接続されている従動軸266がZ軸方向の回転軸25を軸にして回転して、従動軸266に連結されている基台23がZ軸方向の回転軸25を軸にして回転する構成となっている。
【0021】
保持手段2の下方には、吸引源240とエア供給源241と水供給源242とが配設されている。
保持手段2は、保持面200と水供給源242とを連通する連通路243を備えている。連通路243は、例えば、枠体21、基台23、従動軸266、及びロータリジョイント267の内部を貫通するように形成されており、ロータリジョイント267の側面からロータリジョイント267の外部に突き出ている。
連通路243には、第1分岐部248と第2分岐部249とが配置されており、連通路243は、第1分岐部248と第2分岐部249とによって、吸引連通路2430とエア連通路2431と水連通路2432とに分岐されている。
吸引連通路2430は第1分岐部248と吸引源240とを連通しており、エア連通路2431は第2分岐部249とエア供給源241とを連通しており、水連通路2432は第2分岐部249と水供給源242とを連通している。
【0022】
第1分岐部248と吸引源240との間には、吸引バルブ2400及び吸引力調整弁2440が配設されている。吸引バルブ2400が開いている状態で吸引源240を作動させると、吸引源240によって生み出された吸引力が連通路243を通じて吸引部20の保持面200に伝達されることとなる。
例えば、ウェーハ14が保持面200に載置されている状態で、吸引バルブ2400を開いて、吸引源240を作動させることにより、保持面200にウェーハ14を吸引保持することができる。
また、吸引力調整弁2440の絞り具合を調整することにより保持面200に伝達される吸引力の強さを調整することができる。
【0023】
第2分岐部249とエア供給源241との間には、エアバルブ2410及びエア流量調整弁2441が配設されている。エアバルブ2410が開いている状態で、エア供給源241を用いてエアを供給すると、供給されたエアは連通路243を通じて吸引部20に伝達され、保持面200に形成されている多数の細孔から保持面200の上方の空間に向かって噴射されることとなる。
また、エア流量調整弁2441の絞り具合を調整することにより保持面200から噴射されるエアの流量を調整することができる。
【0024】
第2分岐部249と水供給源242との間には、水バルブ2420及び水流量調整弁2442が配設されている。水バルブ2420が開いている状態で、水供給源242から水を供給すると、供給された水は連通路243を通じて吸引部20に伝達され、保持面200の多数の細孔から噴射することとなる。
また、水流量調整弁2442の絞り具合を調整することにより保持面200から噴射される水の流量を調整することができる。
【0025】
図1に示すように、例えばカバー27及びカバー27に伸縮自在に連結された蛇腹28が配設されている。保持手段2がY軸方向に移動すると、カバー27が保持手段2とともにY軸方向に移動して蛇腹28が伸縮することとなる。
【0026】
ベース10の-Y方向側にはカセットステージ700が配設されている。カセットステージ700にはカセット70が載置される。カセット70には例えば研削加工前の複数のウェーハ14が収容されており、また、研削加工後のウェーハ14が収容される。
【0027】
カセット70の+Y方向側には、ロボット71が配設されている。ロボット71は、ロボットハンド710とロボットハンド710を旋回可能に支持する軸部712とを備えている。ロボットハンド710の保持面711には図示しない吸引源が接続されており、ロボットハンド710の保持面711にウェーハ14を吸引保持できる。
カセット70に収容されているウェーハ14をロボットハンド710の保持面711に吸引保持し、軸部712を駆動してロボットハンド710を旋回させることにより、ウェーハ14をカセット70から取り出して仮置き領域720に搬送することができる。
【0028】
ロボット71の可動域における+X方向側には、研削加工前のウェーハ14が仮置きされる仮置き領域720が設けられており、ロボット71の可動域における-X方向側には、研削加工後のウェーハ14を洗浄する洗浄領域742が設けられている。
【0029】
仮置き領域720には、位置合わせ手段72が配設されている。位置合わせ手段72は、ベース10の内部に設けられた回転軸730とエンコーダ731とモータ732を有する回転手段73に接続されておりZ軸方向の軸心を軸にして回転可能である。カセット70から取り出されて仮置き領域720に載置されたウェーハ14は、位置合わせ手段72によって所定の位置に位置合わせされることとなる。
【0030】
洗浄領域742には、スピンナ洗浄手段74が配設されている。スピンナ洗浄手段74は、ウェーハ14が保持されるスピンナテーブル740と、スピンナテーブル740に保持されたウェーハ14に向けて洗浄水を噴出する洗浄水供給ノズル741とを備えている。また、スピンナテーブル740は図示しない回転手段に接続されておりZ軸方向の軸心を軸にして回転可能である。
例えば、スピンナテーブル740の上面に研削加工後のウェーハ14が保持されている状態で、スピンナテーブル740を回転させながら洗浄水供給ノズル741から洗浄水を供給することによりウェーハ14を洗浄することができる。
【0031】
仮置き領域720に隣接する位置には、仮置き領域720にて位置合わせされた被加工物17を保持手段2の保持面200に搬入する第1搬送手段61が配設されている。
第1搬送手段61は、ウェーハ14の上面140を吸引保持する円形の搬送パッド60を備えている。搬送パッド60の内部には、
図2に示すようにエア流路601が形成されている。エア流路601は、例えば搬送パッド60の内部に環状に張り巡らされて形成されており、搬送パッド60の下面600において開口して搬送パッド60の外部の空間に接続されている。また、エア流路601は搬送パッド60の外部においてエア供給路6910と吸引路6810とに分岐されている。エア供給路6910はエア供給源690に接続されており、吸引路6810は吸引源680に接続されている。そして、エア供給路6910にはエアバルブ691が配設されており、吸引路6810には吸引バルブ681が配設されている。
また、搬送パッド60の下面600の外周付近には、径の異なる2つのOリング609が、エア流路601の下面600における開口部分の内周側と外周側とにそれぞれ設けられている。Oリング609はシーリング部材としての機能を有しており、ウェーハ14を搬送パッド60に吸引保持する際にウェーハ14の上面140に密着してウェーハ14の保持強度を高めることができる。
【0032】
エアバルブ691が開いている状態でエア供給源690からエアを供給することにより、供給されたエアがエア流路601を通って搬送パッド60の下面600から噴射される。
また、エアバルブ691が閉じており、かつ吸引バルブ681が開いている状態で吸引源680を作動させることにより、生み出された吸引力がエア流路601を通って搬送パッド60の下面600に伝達される。
例えば、搬送パッド60の下面600にウェーハ14の上面140が接触している状態で、吸引源680によって生み出された吸引力を搬送パッド60の下面600に伝達することにより、搬送パッド60の下面600にウェーハ14を吸引保持することができる。
【0033】
搬送パッド60の上面603には、3本(
図2には2本が示されている)の支持部材602が固定されている。支持部材602はZ軸方向に延設されており、その上部にはつば部6020が形成されている。支持部材602は、連結部材63に形成された貫通穴630に貫通しており、つば部6020が連結部材63に支持されている。
【0034】
連結部材63にはアーム65が連結されており、アーム65の搬送パッド60に連結されていない側の端部にはZ軸方向に立設された軸部66が連結されている。軸部66には図示しない回転手段が接続されており、軸部66は、該回転手段を用いてZ軸方向の軸心を軸にして回転可能である。該回転手段を用いて軸部66を回転させることにより、アーム65が旋回し、搬送パッド60が仮置き領域720と保持面200との間を移動する構成となっている。
【0035】
また、軸部66には昇降手段64が配設されている。昇降手段64は、Z軸方向に延設されたボールネジ642と、ボールネジ642をZ軸方向の軸心を軸にして回転させるモータ640と、モータ640の回転量を制御するエンコーダ641と、内部のナットがボールネジ642に螺合してZ軸方向に昇降する可動部643とを備えている。可動部643は、軸部66に連結されている。
モータ640を用いてボールネジ642を回転させると、可動部643がボールネジ642に摺接しながらZ軸方向に昇降移動し、これに伴って可動部643に連結されている軸部66、軸部66に連結されているアーム65及びアーム65に支持されている搬送パッド60が一体的にZ軸方向に昇降移動する構成となっている。
【0036】
図1に示すように、第1搬送手段61の-X方向側には、研削加工後のウェーハ14を保持面200から洗浄領域742に搬出する第2搬送手段62が配設されている。第2搬送手段62は、第1搬送手段61と同様に構成されているため、第1搬送手段61と同様の符号を付する。
【0037】
ベース10の上における保持手段2の近傍には、厚み測定手段16が配設されている。厚み測定手段16は、例えば接触式のハイトゲージ等を有し、ウェーハ14の上面140と枠体21の上面210とに該ハイトゲージを接触させて両者の高さの差を測定することによってウェーハ14の厚みを測定することができる。
【0038】
加工装置1は、加工装置1の諸々の動作を制御する制御手段9を備えている。
【0039】
2 加工装置の動作
加工装置1を用いてウェーハ14の研削加工を行う際には、まず、
図1に示したロボット71を用いてカセット70から1枚のウェーハ14を引き出して仮置き領域720に仮置きした後、位置合わせ手段72を用いて位置合わせする。
【0040】
位置合わせ手段72による位置合わせを行った後、第1搬送手段61を用いて仮置き領域720に仮置きされているウェーハ14を保持手段2の保持面200に搬入する。具体的には、まず、
図2に示した軸部66を回転させることによりアーム65を旋回させて、仮置き領域720に載置されているウェーハ14の上方に搬送パッド60を位置づける。
そして、昇降手段64を用いて搬送パッド60を-Z方向に移動させて、搬送パッド60の下面600をウェーハ14の上面140に接触させる。搬送パッド60の下面600にウェーハ14の上面140が接触している状態で、吸引源680を作動させて吸引源680によって生み出された吸引力を搬送パッド60の下面600に伝達することにより、搬送パッド60の下面600にウェーハ14が吸引保持される。
さらに、搬送パッド60の下面600にウェーハ14が吸引保持された状態でアーム65を旋回させて、搬送パッド60の下面600に吸引保持されたウェーハ14を保持面200の上方に位置づける。そして、搬送パッド60を下降させ、保持面200にウェーハ14を載置し、ウェーハ14が保持面200に載置されている状態で吸引バルブ2400を開き、保持面200に連通されている吸引源を作動させて生み出された吸引力を保持面200に伝達させることにより、保持面200にウェーハ14が吸引保持される。その後、搬送パッド60の下面600に作用している吸引力を解除する。
【0041】
次に、
図1に示した水平移動手段5を用いて保持面200に保持されているウェーハ14を+Y方向に移動させて、加工手段3の下方に位置づける。
【0042】
そして、
図2に示した回転手段26を用いて回転軸25を軸にして保持手段2を回転させる。これにより、保持面200に保持されているウェーハ14が回転軸25を軸にして回転する。また、
図1に示したスピンドルモータ32を用いて研削砥石340を回転させておく。
【0043】
保持面200に保持されたウェーハ14が回転しており、かつ研削砥石340が回転している状態で、加工送り手段4を用いて研削砥石340を-Z方向に下降させる。これにより、保持面200に保持されているウェーハ14の上面140に研削砥石340の研削面342が接触する。ウェーハ14の上面140に研削砥石340の研削面342が接触している状態で、さらに研削砥石340を-Z方向に下降させていくことによりウェーハ14が研削加工される。
ウェーハ14の研削加工中には、厚み測定手段16を用いてウェーハ14の厚みを測定し、ウェーハ14が所定の厚みに研削加工されたらウェーハ14の研削加工を終了する。
【0044】
ウェーハ14の研削加工が終了した後、加工送り手段4を用いて研削砥石340を+Z方向に上昇させ、研削砥石340をウェーハ14の上面140から+Z方向に離間させる。
そして、水平移動手段5を用いて保持面200に保持されているウェーハ14を-Y方向に移動させる。
【0045】
その後、第2搬送手段62を用いて保持面200に保持されているウェーハ14を保持面200から搬出する。第2搬送手段62によるウェーハ14の搬出は、具体的には制御手段9により加工装置1が制御されて以下のように行われる。
まず、
図2に示すように第2搬送手段62の搬送パッド60をウェーハ14の上方に位置づけてから、昇降手段64を用いて搬送パッド60を-Z方向に下降させて搬送パッド60の下面600をウェーハ14の上面140に接触させる。そして、搬送パッド60の下面600にウェーハ14の上面140が接触している状態で、吸引源680を作動させて吸引源680によって生み出された吸引力を搬送パッド60の下面600に伝達することにより、搬送パッド60の下面600にウェーハ14を吸引保持する。
【0046】
また、吸引バルブ2400を閉じて吸引源240によって生み出される吸引力が保持面200に伝達されないようにする。そして、水バルブ2420及び水流量調整弁2442を開いて水供給源242から水を供給する。これにより、水が水連通路2432及び連通路243を通じて吸引部20の内部に供給されて保持面200から+Z方向に噴出される。
【0047】
保持面200から水が噴出されると保持面200とウェーハ14の下面141との間に水膜が形成されて水膜がウェーハを保持した搬送パッド60を浮き上がらせ保持面200からウェーハ14が離間される。つまり、保持面200は、水膜を介してウェーハを保持した搬送パッド600を支持する。よって、つば部6020は連結部材63から浮き上がっている。この段階では保持面200の全面に水が行き渡っており、保持面200とウェーハ14の下面141との間における全域には水膜が形成されている。
【0048】
この状態で、昇降手段64を用いてアームを+Z方向に移動させることによって連結部材63がつば部6020を支持しウェーハ14を保持している搬送パッド60を+Z方向に移動させて保持面200から上昇させていく。
【0049】
連結部材63がつば部6020を支持したら、エアバルブ2410及びエア流量調整弁2441を開いてエア供給源241からエアを供給する。エア供給源241から供給されたエアは、エア連通路2431を通って連通路243において水と混合され、混合流体として連通路243を通って保持面200から+Z方向に噴出される。
【0050】
保持面200からウェーハ14の下面141の全面が離間した後も、昇降手段64を用いて搬送パッド60に保持されたウェーハ14を+Z方向に移動させていく。そして、保持面200と保持面200から離間したウェーハ14との間の距離が大きくなるのに連動させてエア流量調整弁2441の開度を段々と大きくさせていき、保持面200から噴射されるエアの量を多くする。
このように、保持面をウェーハ14の下面との間に隙間が形成された状態で水膜にエアを混入させることによって水膜の表面張力を破壊し、水膜からウェーハ14を離間させやすくしている。
【0051】
図3には、保持面200と保持面200から離間したウェーハ14と間の距離と、保持面200から噴出されるエア及び水の流量との関係の一例を表すグラフが示されている。
保持面200と保持面200から離間したウェーハ14との間の距離が0~2mmのときは、エアの流量が6.5リットル/min、かつ水の流量が1.4リットル/minとなるように制御し、該距離が2mmを超えたら、エアの流量が39リットル/min、かつ水の流量が1.00リットル/minとなるように制御する。
【0052】
そして、ウェーハ14が保持面200から所定の距離だけ離間されたら、軸部66を回転させてアーム65を旋回させ、搬送パッド60に保持されているウェーハ14を洗浄領域742に位置づけてから昇降手段64を用いて下降させる。これにより、ウェーハ14がスピンナテーブル740の上面に保持される。そして、スピンナテーブル740を回転させながら洗浄水供給ノズル741からウェーハ14の上面140に洗浄水を供給することにより、ウェーハ14の上面140に付着している研削屑等を流水洗浄する。ウェーハ14の上面140の流水洗浄を行った後、ロボット71を用いてウェーハ14をカセット70に収容する。
【0053】
加工装置1では、第2搬送手段62を用いて研削加工後のウェーハ14を保持面200から搬出する際に、ウェーハ14が保持面200から離間する際に保持面200からウェーハ14の下面141に向かって水のみを噴射させることによって、保持面200の上に水膜を形成させつつ、水膜でウェーハ14を保持した搬送パッド600を浮上させ保持面200からウェーハ14を離間させるとともに、水膜を介して保持面200でウェーハを保持した搬送パッドを支持し、その後、昇降手段64を用いてウェーハ14を上昇させてウェーハ14を保持面200から離間させるため、ウェーハ14を割ることなく安全に保持面200から離間させることができる。
また、ウェーハ14が保持面200から完全に離間した後には保持面200から水膜にエアを噴射しながら昇降手段64を用いてウェーハ14を上昇させており、保持面200とウェーハ14の下面141との距離が大きくなるのにつれて保持面200から噴射するエアの流量を大きくするため、素早くウェーハ14を保持面200から上昇させることができる。
【0054】
加工装置1では、例えばウェーハ14の研削加工中に何らかのトラブルが発生して研削途中のウェーハ14を保持面200から搬出する必要が生じたときに安全に素早く搬出することができ、好適である。特に、改質層が形成されているウェーハは改質層を取り除くための研削加工を行う前の方が割れやすいが、そのようなウェーハの改質層を取り除くために加工装置1を用いてウェーハの研削加工を行っている途中に何らかの事情でウェーハを保持面200から搬出する必要が生じた場合に、安全にかつ素早くウェーハを保持面200から搬出することができる。
【符号の説明】
【0055】
1:加工装置 10:ベース 12:内部ベース 11:コラム
14:被加工物 140:上面 141:下面 16:厚み測定手段
9:制御手段
2:保持手段 20:吸引部 200:保持面 21:枠体
210:枠体の上面 23:基台 25:回転軸 26:回転手段
260:モータ 262:駆動軸 263:駆動プーリ
264:伝動ベルト 265:従動プーリ 266:従動軸
267:ロータリジョイント 29:連結部材 291:支持柱
243:連通路 2400:吸引バルブ 2410:エアバルブ
2420:水バルブ
2430:吸引連通路 2431:エア連通路 2432:水連通路
27:カバー 28:蛇腹 3:研削手段 30:スピンドル 31:ハウジング
32:スピンドルモータ 33:マウント 34:研削ホイール 340:研削砥石
341:ホイール基台 342:下面
4:研削送り手段 40:ボールネジ 41:ガイドレール 42:Z軸モータ
420:エンコーダ 43:昇降板 44:ホルダ 45:回転軸
5:水平移動手段 50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:Y軸モータ
53:可動板
61:第1搬送手段 62:第2搬送手段 60:搬送パッド 600:下面
601:エア流路 602:支持部材 603:上面 63:連結部材
6020:つば部 630:貫通穴
64:昇降手段 642:ボールネジ 643:可動部
640:モータ 641:エンコーダ 65:アーム 66:軸部
680:吸引源 681:吸引バルブ 6810:吸引路
690:エア供給源 691:エアバルブ 6910:エア供給路
70:カセット 700:カセットステージ
71:ロボット 710:ロボットハンド 711:保持面 712:軸部
72:位置合わせ手段 720:仮置き領域 73:回転手段
730:回転軸 731:エンコーダ 732:モータ
74:スピンナ洗浄手段 740:スピンナテーブル 741:洗浄水供給ノズル
742:洗浄領域