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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20241029BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241029BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20241029BHJP
   B28D 5/02 20060101ALI20241029BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 M
H01L21/78 B
H01L21/78 V
H01L21/304 631
H01L21/304 622L
B23K26/53
B28D5/02 Z
B24B7/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020170100
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061870
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】ベ テウ
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-140326(JP,A)
【文献】特開2008-131008(JP,A)
【文献】特開2012-104778(JP,A)
【文献】特開2006-148175(JP,A)
【文献】特開2011-040449(JP,A)
【文献】特開2020-107820(JP,A)
【文献】特開2019-192717(JP,A)
【文献】特開2008-207010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
B23K 26/53
B28D 5/02
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、
ウエーハの裏面に透光性フィルムを配設する透光性フィルム配設工程と、
ウエーハの該保護部材側をチャックテーブルに保持するチャックテーブル保持工程と、
ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、該透光性フィルムを通してウエーハの内部における表面側に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し改質層を形成する第一の改質層形成工程と、
該第一の改質層形成工程の後、レーザー光線の集光点を、該透光性フィルムを通してウエーハの内部における裏面側に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し改質層を形成する第二の改質層形成工程と、
ウエーハの裏面から該透光性フィルムを除去し、分割予定ラインに沿って形成された改質層に外力を付与してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、
を含み構成され
該分割工程は、研削装置を構成するチャックテーブルに該保護部材を介してウエーハの表面側を保持し、ウエーハの裏面から該透光性フィルムを除去しウエーハの裏面を研削して薄化すると共にウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法。
【請求項2】
該透光性フィルム配設工程は、ウエーハの裏面にポリオレフィンフィルムを熱圧着して透光性フィルムを配設する工程、ウエーハの裏面に水溶性液状樹脂を塗布し固化させることによって透光性フィルムを配設する工程、ウエーハの裏面に粘着テープを貼着して透光性フィルムを配設する工程、のうちいずれかである請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該分割工程を実施した後、個々のデバイスチップに分割されたウエーハを収容する開口部を備えたフレームにウエーハを位置付けて、ダイシングテープをウエーハの裏面とフレームとに貼着し、ダイシングテープを介してウエーハをフレームに配設するフレーム支持工程を実施する請求項1又は2に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
レーザー加工装置を用いてウエーハを個々のデバイスチップに分割する技術として、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、ウエーハの裏面から分割予定ラインに対応する内部に位置付けて照射して分割予定ラインの内部に連続的に改質層を形成し、その後、外力を付与して個々のデバイスチップに分割する技術が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
また、ウエーハの分割を容易にするために、ウエーハの内部における表面側に改質層を形成すると共に、裏面側にも改質層を形成する技術が本出願によって提案されている(特許文献2を参照)。
【0005】
【文献】特許第3408805号公報
【文献】特開2008-131008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献2に記載の技術によれば、改質層を表面側及び裏面側に形成することによりウエーハが湾曲することが抑制され、良好にウエーハを個々のデバイスチップに分割することができ、推奨される加工方法である。
【0007】
しかし、デバイスチップの大きさが1mm×1mm以下と小さくなるにつれて、ウエーハの表面側に形成された改質層の内部応力に起因して、裏面側に形成される改質層から意図しない割れが発生し、分割されたデバイスチップの品質の低下を招くと共に、レーザー加工装置からの搬出が困難になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、裏面側に形成される改質層からの割れを低減し、分割されたデバイスチップの品質の低下を招かず、レーザー加工装置からの搬出を容易にすることができるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、ウエーハの裏面に透光性フィルムを配設する透光性フィルム配設工程と、ウエーハの該保護部材側をチャックテーブルに保持するチャックテーブル保持工程と、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、該透光性フィルムを通してウエーハの内部における表面側に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し改質層を形成する第一の改質層形成工程と、該第一の改質層形成工程の後、レーザー光線の集光点を、該透光性フィルムを通してウエーハの内部における裏面側に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し改質層を形成する第二の改質層形成工程と、ウエーハの裏面から該透光性フィルムを除去し、分割予定ラインに沿って形成された改質層に外力を付与してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を含み構成され、該分割工程は、研削装置を構成するチャックテーブルに該保護部材を介してウエーハの表面側を保持し、ウエーハの裏面から該透光性フィルムを除去しウエーハの裏面を研削して薄化すると共にウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法が提供される。
【0010】
該透光性フィルム配設工程は、ウエーハの裏面にポリオレフィンフィルムを熱圧着して透光性フィルムを配設する工程、ウエーハの裏面に水溶性液状樹脂を塗布し固化させることによって透光性フィルムを配設する工程、ウエーハの裏面に粘着テープを貼着して透光性フィルムを配設する工程、のうちいずれかであることが好ましい。また、該分割工程を実施した後、個々のデバイスチップに分割されたウエーハを収容する開口部を備えたフレームにウエーハを位置付けて、ダイシングテープをウエーハの裏面とフレームとに貼着し、ダイシングテープを介してウエーハをフレームに配設するフレーム支持工程を実施することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウエーハの加工方法は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設工程と、ウエーハの裏面に透光性フィルムを配設する透光性フィルム配設工程と、ウエーハの該保護部材側をチャックテーブルに保持するチャックテーブル保持工程と、ウエーハに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を、該透光性フィルムを通してウエーハの内部における表面側に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し改質層を形成する第一の改質層形成工程と、該第一の改質層形成工程の後、レーザー光線の集光点を、該透光性フィルムを通してウエーハの内部における裏面側に位置付けて分割予定ラインに沿って照射し改質層を形成する第二の改質層形成工程と、ウエーハの裏面から該透光性フィルムを除去し、分割予定ラインに沿って形成された改質層に外力を付与してウエーハを個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を含み構成され、該分割工程は、研削装置を構成するチャックテーブルに該保護部材を介してウエーハの表面側を保持し、ウエーハの裏面から該透光性フィルムを除去しウエーハの裏面を研削して薄化すると共にウエーハを個々のデバイスチップに分割するので、改質層を表面側、及び裏面側に形成する場合であっても、裏面側に配設された透光性フィルムによって内部応力が抑制され、裏面側に形成される改質層からの意図しない割れの発生を低減することができ、分割工程によって生成されるデバイスチップの品質の低下が防止される。さらに、ウエーハが意図せず割れることがあったとしても、ウエーハは、保護テープ、及び透光性フィルムに挟まれているため、改質層を形成した後の搬出が容易になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】保護部材配設工程の実施態様を示す斜視図である。
図2】透光性フィルム配設工程の実施態様である第1~第3の例を示す斜視図である。
図3】本実施形態に好適なレーザー加工装置の全体斜視図である。
図4】チャックテーブル保持工程の実施態様を示す斜視図である。
図5】第一の改質層形成工程の実施態様を示す斜視図、及び一部拡大断面図である。
図6】第二の改質層形成工程の実施態様を示す斜視図、及び一部拡大断面図である。
図7】分割工程を実施する研削装置にウエーハを搬入する態様を示す斜視図である。
図8】分割工程の実施態様を示す斜視図である。
図9】フレーム支持工程の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
本実施形態のウエーハの加工方法を実施するに際し、図1に示すように、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成されたウエーハ10を用意する。ウエーハ10は、例えば、シリコンウエーハであり、加工前のウエーハ10の厚みは710μmであり、仕上げ目標厚みは50μmである。また、個々に分割されるデバイス12は、平面視で1mm×1mmの寸法に設定されている。なお、図1では、説明の都合上、実際よりもデバイス12の寸法を大きく記載しており、実際の寸法比に沿ったものではない。
【0015】
上記したウエーハ10を用意したならば、図1に示すように、ウエーハ10の表面10aに保護部材として保護テープT1を配設する保護部材配設工程を実施する。より具体的には、保護テープT1は、例えば、表面に粘着剤層が配設されたEVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)フィルムを採用することができ、図1に示すように、ウエーハ10の表面10aに貼着して一体とする。ウエーハ10と保護テープT1とを一体としたならば、次工程に備えて反転し、ウエーハ10の裏面10b側を上方に向ける。なお、保護テープT1は、上記したEVAフィルムに限定されず、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムであってもよい。
【0016】
上記したように、保護部材配設工程を実施したならば、ウエーハ10の裏面10bに透光性フィルムを配設する透光性フィルム配設工程を実施する。本実施形態の透光性フィルムは、透明、半透明を含み、後述する第一、第二の改質層形成工程において照射されるレーザー光線LBが透過する材料である。図2を参照しながら、透光性フィルム配設工程の実施態様について、より具体的に説明する。
【0017】
図2(1)には、透光性フィルム配設工程の第1の例の実施態様が示されている。第1の例では、透光性フィルムとして、例えばポリオレフィンフィルムT2が用意される。ポリオレフィンフィルムT2は、ウエーハ10と同一の寸法で形成され、ウエーハ10の裏面10b上に載置される。ポリオレフィンフィルムT2の表面には粘着剤層は形成されておらず、そのままでは貼着された状態とならない。そこで、図2(1)の下方側に2点鎖線で示す熱圧着ローラ100を用意する。熱圧着ローラ100は、その内部に熱圧着ローラ100の表面を所定の温度に加熱する加熱手段を備え、表面にはフッ素樹脂がコーティングされている。この熱圧着ローラ100を、該加熱手段を作動させると共に、ポリオレフィンフィルムT2の上から押圧し、矢印R1で示す方向に回転させて矢印R2で示す方向に移動させる。該所定の温度は、ポリオレフィンフィルムT2として、ポリエチレンシートが選択された場合は120℃~140℃に設定され、ポリプロピレンシートが選択された場合は160℃~180℃に設定され、ポリスチレンシートが選択された場合は220℃~240℃に設定されることが好ましい。上記した各温度は、各シートの溶融温度近傍の温度であり、このような温度に設定されることで、ポリオレフィンフィルムT2が過剰に溶融することなく粘着力が発揮されて、ウエーハ10の裏面10bに透光性フィルムTAとしてポリオレフィンフィルムT2が良好に熱圧着される。
【0018】
図2(2)には、透光性フィルム配設工程の第2の例の実施態様が示されている。第2の例では、ウエーハ10の裏面10bに透光性フィルムを配設すべく、ウエーハ10を、図示を省略するスピンコータに搬送して、該スピンコータのチャックテーブルに、ウエーハ10の裏面10bを上方に向けて載置して吸引保持する。次いで、図に示すように、ウエーハ10の中央の上方に水溶性液状樹脂供給手段110のノズル112を位置付け、ウエーハ10を矢印R3で示す方向に回転させながら、ノズル112から溶融状態の水溶性液状樹脂L、例えばポリビニルアルコール(PVA)を所定量滴下する。滴下された水溶性液状樹脂Lは、ウエーハ10の裏面10b上で、遠心力により均等に広がり、所定時間経過することで固化し、透光性フィルムTAとしてPVAフィルムT3が配設される。なお、水溶性液状樹脂Lとしては、該PVAに限定されず、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)等の、その他の水溶性の液状樹脂から選択することができる。
【0019】
さらに、図2(3)には、透光性フィルム配設工程の第3の例の実施態様が示されている。この第3の例では、透光性フィルムとして、粘着テープで構成された、例えば、表面に粘着剤層を有するEVAフィルムT4が採用される。EVAフィルムT4は、まず、図2(3)に示すように、ウエーハ10の裏面10bに載置される。次いで、図中下方側に示すように、2点鎖線で示す圧着用ローラ120をEVAフィルムT4上に位置付けて上方から押圧し、矢印R4で示す方向に回転させながら矢印R5で示す方向に移動して、ウエーハ10の裏面10bに透光性フィルムTAとしてのEVAフィルムT4を貼着して一体とする。なお、該粘着テープは、上記したEVAに限定されず、上記保護テープT1と同様に、PETであってもよい。
【0020】
上記したように、透光性フィルム配設工程が実施されて、ウエーハ10の裏面10bに透光性フィルムTA(ポリオレフィンフィルムT2、PVAフィルムT3、EVAフィルムT4のいずれか)が配設されたならば、ウエーハ10を図3に示すレーザー加工装置1に搬送する。レーザー加工装置1の概略について、図を参照しながら以下に説明する。
【0021】
図3には、本実施形態であるレーザー加工装置1の全体斜視図が示されている。レーザー加工装置1は、基台2と、枠体3と、レーザー光線照射手段4と、撮像手段5と、被加工物であるウエーハ10を保持する保持手段20と、保持手段20を移動させる移動手段30と、制御手段(図示は省略する)とを備える。
【0022】
保持手段20は、図中に矢印Xで示すX軸方向において移動自在に基台2に載置される矩形状のX軸方向可動板21と、図中に矢印Yで示すY軸方向において移動自在にX軸方向可動板21に載置される矩形状のY軸方向可動板23と、Y軸方向可動板23の上面に固定された円筒状の支柱24と、支柱24の上端に固定された矩形状のカバー板25とを含む。カバー板25には長穴26を通って上方に延びる円盤状のチャックテーブル27が配設されており、チャックテーブル27は、図示しない回転駆動手段により回転可能に構成されている。チャックテーブル27の上面を構成するX軸座標、及びY軸座標により規定される保持面28は、多孔質材料から形成されて通気性を有し、支柱24の内部を通る流路によって図示しない吸引手段に接続されている。
【0023】
移動手段30は、基台2上に配設され、保持手段20をX軸方向に加工送りするX軸方向送り手段31と、Y軸方向可動板23をY軸方向に割り出し送りするY軸方向送り手段32と、を備えている。X軸方向送り手段31は、パルスモータ33の回転運動を、ボールねじ34を介して直線運動に変換してX軸方向可動板21に伝達し、基台2上の案内レール2a、2aに沿ってX軸方向可動板21をX軸方向において進退させる。Y軸方向送り手段32は、パルスモータ35の回転運動を、ボールねじ36を介して直線運動に変換してY軸方向可動板23に伝達し、X軸方向可動板21上の案内レール22、22に沿ってY軸方向可動板23をY軸方向において進退させる。なお、図示は省略するが、X軸方向送り手段31、Y軸方向送り手段32、及びチャックテーブル27には、位置検出手段が配設されており、チャックテーブル27のX軸座標、Y軸座標、周方向の回転位置が正確に検出されて、その位置情報は、図示しない制御手段に送られる。そして、その位置情報に基づいて該制御手段から指示される指示信号により、X軸方向送り手段31、Y軸方向送り手段32、及び図示しないチャックテーブル27の回転駆動手段が駆動されて、基台2上の所望の位置にチャックテーブル27を位置付けることができる。
【0024】
枠体3は、基台2上において、移動手段30の側方に立設される。枠体3は、基台2上に配設される垂直壁部3a、及び垂直壁部3aの上端部から水平方向に延びる水平壁部3bと、を備えている。枠体3の水平壁部3bの内部には、レーザー光線照射手段4の図示を省略する光学系が収容されており、該光学系の一部を構成する集光器4aが水平壁部3bの先端部下面に配設されている。
【0025】
撮像手段5は、水平壁部3bの先端下面であって、レーザー光線照射手段4の集光器4aとX軸方向に間隔をおいた位置に配設されている。撮像手段5には、被加工物に赤外線を照射する赤外線照射手段、赤外線照射手段により照射された赤外線を捕らえる光学系、該光学系が捕らえた赤外線に対応する電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等が含まれる。撮像手段5によって撮像された画像は、該制御手段に送られ、適宜表示手段(図示は省略する)に表示される。
【0026】
該制御手段は、コンピュータから構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)とを含む。そして制御手段は、レーザー光線照射手段4、撮像手段5、移動手段30等に電気的に接続され、各手段の作動を制御する。
【0027】
上記した透光性フィルム配設工程が施されたウエーハ10を、上記したレーザー加工装置1のチャックテーブル27に搬送して、図4に示すように、透光性フィルムTA(ポリオレフィンフィルムT2、PVAフィルムT3、EVAフィルムT4のいずれか)側を上方に、保護テープT1側を下方に向けてチャックテーブル27の保持面28上に載置する。次いで、図示しない吸引手段を作動して、チャックテーブル27を介して保持面28上に負圧を供給して、ウエーハ10を吸引保持する(チャックテーブル保持工程)。なお、図4以降に示す透光性フィルムTAは、ポリオレフィンフィルムT2を熱圧着したものとして説明する。
【0028】
上記チャックテーブル保持工程を実施したならば、以下に説明する改質層150を形成する第一の改質層形成工程を実施する。より具体的には、まず、上記した移動手段30を作動して、チャックテーブル27を撮像手段5の直下に位置付けて、透光性フィルムTA側、すなわちウエーハ10の裏面10b側から赤外線を照射して撮像し、ウエーハ10のレーザー加工位置となる分割予定ライン14を検出して、その位置情報を該制御手段に記憶する。
【0029】
次いで、チャックテーブル27と共に、ウエーハ10をレーザー光線照射手段4の集光器4aの直下に移動して、所定の方向に形成された分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。所定の分割予定ライン14におけるレーザー加工開始位置を集光器4aの直下に位置付けたならば、図5に示すように、集光器4aにより集光点Pの位置を調整して、レーザー光線LBの集光点Pを、透光性フィルムTAを通して、ウエーハ10の内部における表面10a側に位置付ける。次いで、レーザー光線照射手段4を作動して、レーザー光線LBを照射すると共に、図3に基づいて説明した移動手段30のX軸方向送り手段31を作動して、チャックテーブル27をX軸方向で移動させて、分割予定ライン14に沿って改質層150を形成する。なお、本実施形態において形成される改質層150は、図5の右方側に示すように深さ位置が異なる2層で形成されるものであり、最初に所定の分割予定ライン14に沿ってウエーハ10の表面10aに近い側に集光点Pを位置付けて照射して改質層150の下層側を形成した後、集光点Pの位置を僅かに上昇させて、同一の分割予定ライン14に沿って2回目のレーザー光線LBを照射して、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿って改質層150の上層側を形成する。
【0030】
所定の分割予定ライン14に沿って上記した改質層150を形成したならば、Y軸方向送り手段32を作動して、チャックテーブル27をY軸方向に割り出し送りしして、既に改質層150を形成した分割予定ライン14に隣接する未加工の分割予定ライン14を集光器4aの直下に位置付ける。次いで、上記したのと同様にして、レーザー光線LBを照射しながらX軸方向送り手段31を作動して、分割予定ライン14に沿ってウエーハ10の内部に2層の改質層150を形成する。このようなレーザー加工を繰り返し実施して、所定の方向に沿う全ての分割予定ライン14に沿って改質層150を形成する。次いで、チャックテーブル27を90度回転し、先に改質層150を形成した分割予定ライン14と直交する方向の未加工の分割予定ライン14をX軸方向と整合させ、上記したのと同様の手順により、全ての分割予定ライン14に沿ってウエーハ10の表面10a側に改質層150を形成する。以上により第一の改質層形成工程が完了する。
【0031】
上記したように第一の改質層形成工程を実施したならば、その後、図6に示すように、レーザー光線LBの集光点Pを、透光性フィルムTAを通してウエーハ10の内部における裏面10b側に位置付けて分割予定ライン14に沿って照射し、後述する改質層160を形成する第二の改質層形成工程を実施する。より具体的には、移動手段30を作動して、先に第一の改質層150を形成した、所定方向の分割予定ライン14をX軸方向に整合させる。次いで、分割予定ライン14のレーザー加工開始位置を集光器4aの直下に位置付け、図6に示すように、集光器4aを調整し、レーザー光線LBの集光点Pの位置を、透光性フィルムTAを通して分割予定ライン14に沿ったウエーハ10の内部における裏面10b側に位置付ける。次いで、レーザー光線照射手段4を作動してレーザー光線LBを照射すると共に、図3に基づいて説明した移動手段30のX軸方向送り手段31を作動して、チャックテーブル27をX軸方向で移動させて、分割予定ライン14に沿って改質層160を形成する。なお、本実施形態において形成される改質層160も、上記した改質層150と同様に、深さ位置が異なる2層で形成されるものであり、最初に所定の分割予定ライン14に沿ってウエーハ10の裏面10b側に集光点Pを位置付けて1層目のレーザー光線LBを照射した後、集光点位置Pを僅かに上昇させてさらに裏面10bに近い位置に位置付け、同一の分割予定ライン14に沿って2層目のレーザー光線LBを照射して、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿った内部における裏面10b側に2層の改質層160を形成する。
【0032】
所定方向の分割予定ライン14に沿って上記した改質層160を形成したならば、Y軸方向送り手段32を作動して、チャックテーブル27をY軸方向に割り出し送りしして、既に改質層160を形成した分割予定ライン14に隣接し、まだ改質層160を形成していない分割予定ライン14を集光器4aの直下に位置付ける。次いで、上記したのと同様にして、レーザー光線LBを照射しながらX軸方向送り手段31を作動して、分割予定ライン14に沿ってウエーハ10の内部に2層の改質層160を形成する。このようなレーザー加工を繰り返し実施して、X軸方向に沿う全ての分割予定ライン14に沿って改質層160を形成する。次いで、チャックテーブル27を90度回転し、先に改質層160を形成した分割予定ライン14と直交する方向の未加工の分割予定ライン14をX軸方向と整合させ、上記したのと同様の手順により、全ての分割予定ライン14に沿ってウエーハ10の裏面10b側に改質層160を形成して、第二の改質層形成工程を完了する。なお、図5図6には、説明の都合上、改質層150、160を破線で表記しているが、改質層150、160はウエーハ10の内部に形成されるものであり、実際に視認することはできない。
【0033】
本実施形態の第一の改質層形成工程、第二の改質層形成工程を実施する際のレーザー加工条件は、例えば、以下に示すように設定される。
波長 :1342nm
繰り返し周波数 :90kHz
平均出力 :1.2~1.5W
X軸方向送り速度 :70mm/秒
【0034】
上記したように第一の改質層形成工程、第二の改質層形成工程を実施したならば、ウエーハ10の裏面10bから透光性フィルムTAを除去し、分割予定ライン14に形成された改質層150、160に外力を付与してウエーハ10を、後述するように個々のデバイスチップ12’に分割する分割工程を実施する。該分割工程について、図7図8を参照しながら、以下に説明する。
【0035】
第一、第二の改質層形成工程が施されたウエーハ10は、図7に示す研削装置80(一部のみを示している)に搬送される。
【0036】
研削装置80は、図7に示すチャックテーブル82と、図8に示す研削手段84とを備えている。チャックテーブル82は、ウエーハ10を吸引するポーラスで形成された通気性を有する吸着チャック82aを備えている。吸着チャック82aは、図示を省略する吸引手段に接続され、該吸引手段の作用により、吸着チャック82aの上面に吸引負圧が供給される。チャックテーブル82は、図示を省略する回転手段、及び移動手段を備え、該回転手段の作用により回転可能に構成されると共に、該移動手段の作用により、チャックテーブル82上にウエーハ10を搬出入する搬出入領域と、研削手段84によって研削加工される研削加工領域とで移動させられる。図8に示す研削手段84は、図示しない電動モータによって回転させられる回転スピンドル842と、回転スピンドル842の下端に配設されたホイールマウント844と、ホイールマウント844の下面に装着される研削ホイール846と、研削ホイール846の下面に環状に配設された複数の研削砥石848と、を備えている。
【0037】
研削装置80に搬送されたウエーハ10は、図7に示すように、保護テープT1側(表面10a側)を下方に向けられてチャックテーブル82の吸着チャック82a上に載置され、図示を省略する吸引手段の作用により吸着チャック82a上に吸引負圧が供給されて吸引保持される。これに合わせて、透光性フィルムTAを加熱、又は冷却して粘着力を低下させて、ウエーハ10の裏面10bから透光性フィルムTAを除去する。なお、透光性フィルムTAが水溶性液状樹脂Lを固化させることにより形成したPVAフィルムT3である場合は、チャックテーブル22の上方から洗浄水を供給してPVAフィルムT3を溶融させて除去することができ、透光性フィルムTAが保護テープT1と同様の例えばEVAフィルムT4である場合は、紫外線を照射する等して粘着力を低下させて剥離することができる。
【0038】
次いで、チャックテーブル32は、該移動手段により、図8に示す研削手段84の直下、すなわち研削加工領域に移動させられ、上方から見て、チャックテーブル82に保持されたウエーハ10の中心Oを、研削ホイール846の下面に環状に配設された研削砥石848が通過する位置に位置付ける。このようにウエーハ10を該研削加工領域に位置付けたならば、チャックテーブル82を図8において矢印R6で示す方向に例えば300rpmで回転させ、これと同時に研削手段84の研削ホイール846を図8において矢印R7で示す方向に、例えば6000rpmで回転させる。そして、図示しない研削送り手段を作動して、研削手段84を矢印R8で示す方向に下降させて、チャックテーブル82上のウエーハ10の裏面10bに上方から接触させ、例えば1.0μm/秒の研削送り速度で研削送りする。この際、図示しない測定ゲージによりウエーハ10の厚みを測定しながら、所望の厚み(例えば50μm)になるまで研削加工を進める。
【0039】
上記したように、研削加工を実施してウエーハ10の裏面10bを所定量研削することにより、分割予定ライン14に形成された改質層150、160に外力が付与される。それにより、図8に示すように、ウエーハ10の内部に形成された改質層150、160に沿ってウエーハ10が分割されて、ウエーハ10が個々のデバイスチップ12’に分割される。以上により分割工程が完了する。
【0040】
上記分割工程が実施された後、必要に応じて図9に示すフレーム保持工程を実施してもよい。より具体的には、まず、図9に示すような、ウエーハ10を収容可能な大きさの開口Faを有する環状のフレームFを用意する。次いで、前記した分割工程を実施したことにより個々のデバイスチップ12’に分割されたウエーハ10を、裏面10b側を下方に向けて、フレームFの開口Faの中央に位置付けて、ウエーハ10の裏面10bと、フレームFとにダイシングテープT5を貼着する。これにより、ダイシングテープT5を介してウエーハ10がフレームFに保持されて一体とされる。ダイシングテープT5は、上記した保護テープT1と同様のテープを採用することができる。これにより、ウエーハ10から個々に分割されたデバイスチップ12’を容易に次工程に搬送することができ、例えば、ピックアップ工程を実施することができる。なお、ウエーハ10の表面10a側に貼着されていた保護テープT1は、このフレーム配設工程を実施する際に同時に剥離されることが好ましい。
【0041】
本実施形態によれば、上記したように、ウエーハ10の表面10a側に保護部材としての保護テープT1を配設し、裏面10b側に透光性フィルムTA(例えば、ポリオレフィンフィルムT2、PVAフィルムT3、EVAフィルムT4のいずれか)を配設して、第一の改質層形成工程、及び第二の改質層形成工程を実施する。これにより、ウエーハ10の内部に改質層150、160を形成する場合であっても、裏面10b側に配設された透光性フィルムTAによって、表面10a側に形成される改質層150に起因する内部応力が裏面10b側に及ぶことが抑制され、裏面10b側に形成される改質層160からの意図しない割れの発生を低減することができ、分割工程によって生成されるデバイスチップ12’の品質の低下が防止される。さらに、ウエーハ10が意図せず割れることがあったとしても、ウエーハ10は、保護テープT1、及び透光性フィルムTAに挟まれているため、レーザー加工装置1からの搬出が容易になるという効果を奏する。
【0042】
なお、上記した実施形態では、分割工程において分割予定ライン14に形成された改質層150、160に沿ってウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割する際に、研削装置80を使用して外力を付与したが、本発明はこれに限定されない。例えば、分割工程を実施する前のウエーハ10を、図9に示すような環状のフレームFに伸縮性を有するテープを介して支持させ、該テープを拡張して、改質層150、160に外力を付与して、ウエーハ10を個々のデバイスチップ12’に分割することができる。また、該分割工程を実施する前のウエーハ10を、柔らかいウレタンマット等に載置し、ウエーハ10の裏面10b側から、ウエーハ10全域にローラを押し付けて外力を付与し、改質層150、160に沿って個々のデバイスチップ12’に分割するようにすることもできる。
【0043】
また、上記した実施形態では、第一、第二の改質層形成工程を実施して形成した改質層150、改質層160を、それぞれ2層としたが、本発明はこれに限定されず、1層、又は3層以上で構成することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1:レーザー加工装置
2:基台
3:枠体
3a:垂直壁部
3b:水平壁部
4:レーザー光線照射手段
4a:集光器
5:撮像手段
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
12’:デバイスチップ
14:分割予定ライン
20:保持手段
27:チャックテーブル
28:保持面
30:移動手段
31:X軸方向送り手段
32:Y軸方向送り手段
80:研削装置
82:チャックテーブル
82a:吸着チャック
84:研削手段
846:研削ホイール
848:研削砥石
100:熱圧着ローラ
110:水溶性樹脂供給手段
112:ノズル
120:圧着用ローラ
TA:透光性フィルム
T1:保護テープ
T2:ポリオレフィンフィルム
T3:PVAフィルム
T4:EVAフィルム
L:水溶性液状樹脂
LB:レーザー光線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9