(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】車両用合わせガラス、車両用ドア、及び車両用合わせガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20241029BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C03C27/12 F
B60J1/00 H
C03C27/12 D
(21)【出願番号】P 2021027121
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 慶治
(72)【発明者】
【氏名】江本 麗未
(72)【発明者】
【氏名】三輪 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】坪井 秀夫
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/189235(WO,A1)
【文献】特開2020-172411(JP,A)
【文献】特開2020-152764(JP,A)
【文献】国際公開第2017/204342(WO,A1)
【文献】特表2001-506198(JP,A)
【文献】国際公開第2020/193363(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B60J 1/00-1/20
C03C 27/00-29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のガラス板と、1対のガラス板の間に配置される第一の中間層及び第二の中間層
からなる車両用合わせガラスであって、
第一の中間層は、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体と(B)硬化剤とを含む樹脂組成物の硬化物を含み、
第二の中間層は、ポリビニルブチラール樹脂を含
み、
第一の中間層及び第二の中間層は、第一の中間層が第二の中間層よりも車両内側になるように配置されている、車両用合わせガラス。
【請求項2】
(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体が、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体の質量を基準として、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位を5~50質量%で含む、請求項
1に記載の車両用合わせガラス。
【請求項3】
エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位が、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を含む、請求項
2に記載の車両用合わせガラス。
【請求項4】
(B)硬化剤が、酸無水物化合物を含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項5】
酸無水物化合物の含有量が、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して0.5~30質量部である、請求項
4に記載の車両用合わせガラス。
【請求項6】
(B)硬化剤が、イミダゾール化合物をさらに含む、請求項
4又は
5に記載の車両用合わせガラス。
【請求項7】
イミダゾール化合物の含有量が、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して1.0質量部以下である、請求項
6に記載の車両用合わせガラス。
【請求項8】
樹脂組成物が、(C)硬化促進剤をさらに含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項9】
ガラス板が、無機ガラスである、請求項1~
8のいずれか1項に記載の車両用合わせガラス。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の車両用合わせガラスを備える車両用ドア。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の車両用合わせガラスを製造する方法であって、
1対のガラス板の間に、請求項1~
9のいずれか1項で記載される樹脂組成物又はその硬化物を含む樹脂層、及びポリビニルブチラール樹脂を含む樹脂層を配置させて積層体を形成する工程と、
積層体を加熱及び加圧して合わせガラスを形成する工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用合わせガラス、車両用ドア、及び車両用合わせガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のドアガラスには、一般に強化ガラスが用いられるが、ドアガラスの遮音性の向上や防犯を目的として、近年、ガラスとガラスの間にポリビニルブチラール(PVB)を挟み込んだPVB合わせガラスが採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、1対のガラス板と、前記1対のガラス板の間に中間接着膜とを有する車両用合わせガラスであって、前記中間接着膜は、車内に配置され車外と光の信号の送受信を行う情報取得装置の前記信号の送受信のための光学開口部を含む連続した一つの透過領域と、前記光学開口部の全周の周囲にその一部を除いて設けられる遮光領域とを有し、前記中間接着膜の遮光領域に対応する前記車両用合わせガラスの遮光領域は可視光透過率が3%以下である、車両用合わせガラスが開示されている。特許文献1において、中間接着膜に用いられる熱可塑性樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂が例示されている。
【0004】
また、一方で、種々の特性を改善する観点から、1対のガラス板の間に配置する中間膜として、他の材料も検討されている。
【0005】
例えば、特許文献2には、対向する2枚のガラス板と、これらの間に配置された中間膜とを備え、前記中間膜が、対向する2枚のガラス板の間に設けられる合わせガラス用中間膜を形成するために用いられる樹脂組成物であって、前記樹脂組成物が、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体と、(B)硬化剤とを含む、合わせガラスの中間膜用樹脂組成物を含む、合わせガラスが開示されている。特許文献2は、当該構成により、高い耐チッピング性を有する合わせガラスを提供できると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-026248号公報
【文献】特開2020-040869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1等に開示されるような、ガラスとガラスの間にポリビニルブチラール樹脂を挟み込んだPVB合わせガラスは、ドアガラスの遮音性の向上や防犯等の観点から有用である。しかし、PVB合わせガラスを採用する車両において、防犯等の観点からは車両外側からの衝撃に対しては高いは耐貫通性を有する一方で、車両内側からの衝撃に対しては比較的貫通し易い性質を有する車両用合わせガラスの需要がある。これらを鑑みると、ある方向からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を有する一方で、前記方向とは逆側からの衝撃に対しては低減された耐貫通性を有する車両用合わせガラスが求められている。
【0008】
そこで、本開示の課題は、ある方向からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を有する一方で、前記方向とは逆側からの衝撃に対しては低減された耐貫通性を有する車両用合わせガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、1対のガラス板の間に、所定の樹脂組成物の硬化物を含む第一の中間層及びポリビニルブチラール樹脂を含む第二の中間層を形成することにより、本開示の上記課題を解決できることを見出し、本開示に至った。
【0010】
そこで、本実施形態の態様例は以下の通りである。
【0011】
(1) 1対のガラス板と、1対のガラス板の間に配置される第一の中間層及び第二の中間層を含む車両用合わせガラスであって、
第一の中間層は、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体と(B)硬化剤とを含む樹脂組成物の硬化物を含み、
第二の中間層は、ポリビニルブチラール樹脂を含む、車両用合わせガラス。
(2) 第一の中間層及び第二の中間層は、第一の中間層が第二の中間層よりも車両内側になるように配置されている、(1)に記載の車両用合わせガラス。
(3) 第一の中間層及び第二の中間層が直接接している、(1)又は(2)に記載の車両用合わせガラス。
(4) (A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体が、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体の質量を基準として、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位を5~50質量%で含む、(1)~(3)のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
(5) エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位が、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位を含む、(4)に記載の車両用合わせガラス。
(6) (B)硬化剤が、酸無水物化合物を含む、(1)~(5)のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
(7) 酸無水物化合物の含有量が、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して0.5~30質量部である、(6)に記載の車両用合わせガラス。
(8) (B)硬化剤が、イミダゾール化合物をさらに含む、(6)又は(7)に記載の車両用合わせガラス。
(9) イミダゾール化合物の含有量が、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して1.0質量部以下である、(8)に記載の車両用合わせガラス。
(10) 樹脂組成物が、(C)硬化促進剤をさらに含む、(1)~(9)のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
(11) ガラス板が、無機ガラスである、(1)~(10)のいずれか1つに記載の車両用合わせガラス。
(12) (1)~(11)のいずれか1つに記載の車両用合わせガラスを備える車両用ドア。
(13) (1)~(11)のいずれか1つに記載の車両用合わせガラスを製造する方法であって、
1対のガラス板の間に、(1)~(11)のいずれか1つで記載される樹脂組成物又はその硬化物を含む樹脂層、及びポリビニルブチラール樹脂を含む樹脂層を配置させて積層体を形成する工程と、
積層体を加熱及び加圧して合わせガラスを形成する工程と、
を含む、方法。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、ある方向からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を有する一方で、前記方向とは逆側からの衝撃に対しては低減された耐貫通性を有する車両用合わせガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る車両用合わせガラスの構成例を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又はそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又はそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、「アクリロイル」又はそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0015】
以下、本実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態は、1対のガラス板と、1対のガラス板の間に配置される第一の中間層及び第二の中間層を含む車両用合わせガラスであって、第一の中間層は、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体と(B)硬化剤とを含む樹脂組成物の硬化物を含み、第二の中間層は、ポリビニルブチラール樹脂を含む、車両用合わせガラスである。
【0017】
図1は、本実施形態に係る車両用合わせガラスの構成例を説明するための概略断面図である。本実施形態に係る車両用合わせガラスは、
図1の態様に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。
図1に示す合わせガラス100は、対向する2枚のガラス板101a,101b、並びにガラス板101a,101bの間に配置された第一の中間層102及び第二の中間層103を備える。第一の中間層102は、第二の中間層103よりも車両内側に配置される。すなわち、
図1において、合わせガラス100の上側が車両内側に相当し、合わせガラス100の下側が車両外側に相当する。なお、
図1では、第一の中間層102が第二の中間層103よりも車両内側に配置される形態を示して本実施形態の説明を行うが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0018】
本実施形態により、ある方向からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を有する一方で、前記方向とは逆側からの衝撃に対しては低減された耐貫通性を有する車両用合わせガラスを提供することができる。例えば、本実施形態により、車両外側からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を有する一方で、車両内側からの衝撃に対しては低減された耐貫通性を有する車両用合わせガラスを提供することができる。具体的には、本実施形態に係る車両用合わせガラスは、ポリビニルブチラール樹脂を含む第二の中間層を車両外側に有するため、車両外側からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を奏する。一方、本実施形態に係る車両用合わせガラスには、第二の中間層よりも車両内側に第一の中間層が設けられているため、車両内側からの衝撃に対しては低減された耐貫通性を有し、具体的には、車両外側からの衝撃に対する耐貫通性よりも低い耐貫通性を有する。そのため、本実施形態に係る車両用合わせガラスは、車両外側からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を有するため優れた防犯性を有するとともに、車両内側からの衝撃に対しては比較的貫通し易い性質を有する。本実施形態に係る車両用合わせガラスが、ある方向からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を有する一方で、前記方向とは逆側からの衝撃に対しては低減された耐貫通性を有する理由は、以下の通りに推測される。本実施形態に係る車両用合わせガラスにおいて、第二の中間層側(例えば車両外側)からハンマー等の物体により衝撃が与えられた場合、ガラスを貫通した後、その物体はポリビニルブチラール樹脂を含む第二の中間層に届く。ポリビニルブチラール樹脂は、靱性に優れ、粘り強さが高いため、衝撃を効率的に吸収することができる。一方、第一の中間層側(例えば車両内側)からハンマー等の物体により衝撃が与えられた場合、ガラスを貫通した後、その物体はまず所定の樹脂組成物の硬化物を含む第一の中間層に届く。この第一の中間層が存在する場合、該第一の中間層とポリビニルブチラール樹脂を含む第二の中間層の強靭性が発現される前に、割れたガラス破片が高い硬度を有する第一の中間層と第二の中間層を同時に切り裂く。そのため、第一の中間層側からの衝撃に対して耐貫通性が低くなる。したがって、本実施形態に係る車両用合わせガラスは、第二の中間層側からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を有する一方で、第一の中間層側からの衝撃に対しては低減された耐貫通性を有するという優れた効果を奏するものと推測される。なお、当該推測により本実施形態が制限されることはない。
【0019】
以下、本実施形態に係る車両用合わせガラスの構成要件について説明する。
【0020】
<ガラス板>
ガラス板は、無機ガラスであってもよく、有機ガラスであってもよい。
【0021】
無機ガラスとしては、特に制限されるものではないが、例えば、通常のソーダライムガラス(ソーダライムシリケートガラスともいう)、アルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、又は石英ガラス等が挙げられる。これらの中でも、ソーダライムガラスが好ましい。また、無機ガラスとしては、例えば、フロートガラス、風冷強化ガラス、化学強化ガラス、又は複層ガラス等が挙げられる。
【0022】
有機ガラス(樹脂)としては、特に制限されるものではないが、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ハロゲン化ビスフェノールAとエチレングリコールとの重縮合物、アクリルウレタン樹脂、又はハロゲン化アリール基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、芳香族系ポリカーボネート樹脂等のポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート系アクリル樹脂等のアクリル樹脂が好ましく、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。さらに、ポリカーボネート樹脂の中でも、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が好ましい。有機ガラスの材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
<第一の中間層>
第一の中間層は、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体(以下、(A)成分とも略す)と、(B)硬化剤(以下、(B)成分とも略す)とを含む、第一の中間層用樹脂組成物の硬化物を含む。
【0024】
第一の中間層は、(A)成分及び(B)成分を含む樹脂組成物から形成された樹脂層であり、単層であってもよく、複数層で構成されていてもよい。第二の中間層も、単層であってもよく、複数層で構成されていてもよい。
【0025】
以下、第一の中間層を形成するために用いることができる樹脂組成物、すなわち第一の中間層用樹脂組成物について説明する。
【0026】
第一の中間層用樹脂組成物は、上述の通り、(A)エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体と、(B)硬化剤とを少なくとも含む。
【0027】
(A)成分は、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位を含む。(A)成分の含有量は、例えば、第一の中間層用樹脂組成物の全質量を基準として、70質量%以上、75質量%以上、又は80質量%以上である。
【0028】
(A)成分としては、例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位と、エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位と、場合により(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物に由来する単量体単位と、を含む共重合体が挙げられる。
【0029】
エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、特に制限されるものではないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、又は3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び耐チッピング性の観点から、グリシジル(メタ)クリレートを使用することが好ましい。すなわち、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位は、グリシジル(メタ)クリレートに由来する単量体単位を含むことが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(A)成分におけるエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーの配合量)は、(A)成分の質量を基準として、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましく、15~35質量%であることがさらに好ましい。エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量が5質量%以上であれば、第一の中間層側からの易貫通性をより良好にすることができる。また、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量が50質量%以下であれば、第一の中間層用樹脂組成物の保存中にエポキシ基同士の反応を抑制することができるため、十分な保存安定性を得ることができる傾向がある。
【0031】
エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーとしては、特に制限されるものではないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート若しくはメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート若しくはジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート若しくはフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート若しくはN-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の複素環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、コスト及び合成の容易性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、又は2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(A)成分におけるエポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーの配合量)は、(A)成分の質量を基準として、50~95質量%であることが好ましく、60~90質量%であることがより好ましく、65~85質量%であることがさらに好ましい。エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーとして、脂肪族(メタ)アクリレートを使用する場合、(A)成分における脂肪族(メタ)アクリレートに由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、脂肪族(メタ)アクリレートの配合量)は、(A)成分の質量を基準として、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマーとして、脂環式(メタ)アクリレートを使用する場合、(A)成分における脂環式(メタ)アクリレートに由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、脂環式(メタ)アクリレートの配合量)は、(A)成分の質量を基準として30~80質量%が好ましく、35~70質量%がより好ましく、40~65質量%がさらに好ましい。
【0033】
(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物としては、特に制限されるものではないが、例えば、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、ビニルシクロヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、塩化ビニル、又は塩化ビニリデン等が挙げられる。これらの中でも、第一の中間層の靭性を向上させ易い観点から、(メタ)アクリロニトリル、N-シクロヘキシルマレイミド、又はN-フェニルマレイミドを使用することが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(A)成分における(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物に由来する単量体単位の含有量((A)成分を合成する共重合成分全量を基準とする、(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物の配合量)は、(A)成分の質量を基準として、0~40質量%であることが好ましく、5~35質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
(A)成分のガラス転移温度は、特に制限されないが、-30℃~150℃であることが好ましく、0℃~100℃であることがより好ましく、10~50℃であることがさらに好ましく、30℃~50℃であることが特に好ましい。(A)成分のガラス転移温度が-30℃以上である場合、第一の中間層側からの衝撃に対する易貫通性は有しつつも耐チッピング性に優れる合わせガラスが得られ易くなる傾向がある。(A)成分のガラス転移温度が150℃以下である場合、第一の中間層の靭性が高くなり易いため、加工性に優れた第一の中間層が得られ易くなる傾向がある。また、ガラス転移温度が-30℃以上であると、第一の中間層の裁断時に刃に対する重合体の粘着を抑止することができる傾向がある。また、ガラス転移温度が50℃以下であると、第一の中間層の割れを抑止することができる傾向がある。
【0036】
(A)成分のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定した中間点ガラス転移温度である。具体的には、昇温速度10℃/分の条件で熱量変化を測定し、JIS K 7121:1987に準拠した方法によって算出した中間点ガラス転移温度である。測定温度は、ガラス転移温度を含む範囲であればよく、例えば-50~100℃又は-80~80℃であってもよい。
【0037】
(A)成分のガラス転移温度は、(A)成分を合成する共重合成分、例えば、上述のエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー、エポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー及び(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物の配合割合により調整することができる。
【0038】
(A)成分のエポキシ当量は、200~2,000g/eqであることが好ましい。(A)成分のエポキシ当量が200g/eq以上であれば、第一の中間層用樹脂組成物の保存中にエポキシ基同士の反応を抑制することができるため、保存安定性が良好となる傾向がある。(A)成分のエポキシ当量が2,000g/eq以下であれば、第一の中間層を備える合わせガラスが第一の中間層側からの衝撃に対する易貫通性は有しつつも優れ耐チッピング性を有する傾向がある。エポキシ当量は、JIS K 7236:2001に準拠した方法によって測定した値である。
【0039】
(A)成分の重量平均分子量は、100,000~3,000,000であることが好ましい。(A)成分の重量平均分子量が100,000以上である場合、得られる第一の中間層の靭性が向上する傾向がある。(A)成分の重量平均分子量が3,000,000以下である場合、合わせガラス作製時に気泡が抜け易くなるため外観が良好になる傾向がある。(A)成分の重量平均分子量は、重合温度、重合時間、重合に用いる溶媒、連鎖移動剤の添加等、常用の方法により調整することができる。
【0040】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算したポリスチレン換算値である。
【0041】
(A)成分の合成方法として、特に制限はないが、例えば、上記のエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマー、上記のエポキシ基を有さない(メタ)アクリルモノマー、及び場合によりさらに配合する上記の(メタ)アクリルモノマー以外のエチレン性不飽和基を有する化合物を、適切な熱ラジカル重合開始剤を用いて、加熱しながら共重合させる方法が挙げられる。重合方法として、特に制限はないが、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、又は溶液重合法が挙げられる。必要に応じて適切な連鎖移動剤等を使用して重合することもできる。
【0042】
(B)硬化剤は、(A)成分のエポキシ基と反応して架橋構造体を形成する成分である。(B)硬化剤としては、(A)成分のエポキシ基と反応し得る官能基を有するものであればよく、フェノール化合物、酸無水物化合物、アミン化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、トリアジン化合物、又はホスフィン化合物等が挙げられる。これらの中でも、潜在硬化性及び光学的な透明性の観点からは硬化剤が酸無水物化合物を含むことが好ましい。硬化時間を短縮する観点からは硬化剤がイミダゾール化合物を含むことが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。(B)成分の含有量が0.01質量部以上であれば、樹脂組成物から形成される第一の中間層の硬化性を良好にすることができるため、第一の中間層側からの衝撃に対する易貫通性は有しつつも耐チッピング性の高い合わせガラスを得易くなること、工程時間の短縮及び作業性の向上が期待できる。(B)成分の含有量が50質量部以下であれば、樹脂組成物の保存安定性を良好にすることができる傾向がある。同様の観点から、(B)成分の含有量は、0.5~30質量部であることがより好ましい。
【0044】
酸無水物化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、又はメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等のアルキル基で置換されたヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。アルキル基で置換されたヘキサヒドロ無水フタル酸は、例えば、炭素数1~9のアルキル基で置換されたヘキサヒドロ無水フタル酸であってもよい。硬化物の光学的な透明性の観点から、硬化剤が、テトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、及びアルキル基で置換されたヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましく、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を含むことがさらに好ましい。
【0045】
酸無水物化合物の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5~30質量部であることが好ましく、1~25質量部であることがより好ましく、5~20質量部であることがさらに好ましく、10~20質量部であることが特に好ましい。酸無水物化合物の含有量が0.5質量部以上であれば、第一の中間層用樹脂組成物から形成される第一の中間層の硬化性を良好にすることができるため、第一の中間層側からの衝撃に対する易貫通性は有しつつも優れた耐チッピング性及び光学的に高い透明性を有する合わせガラスをより得易くなること、工程時間の短縮及び作業性の向上が期待できる。酸無水物化合物の含有量が30質量部以下であれば、第一の中間層用樹脂組成物の保存安定性を良好にすることができる傾向がある。酸無水物化合物の含有量は、(A)成分におけるエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーに由来する単量体単位の含有量100質量部に対し、40~70質量部であることが好ましく、45~65質量部であることがより好ましく、50~60質量部であることがさらに好ましく、50~55質量部であることがより好ましい。
【0046】
イミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、又は1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロリド等が挙げられる。これらの中でも、第一の中間層用樹脂組成物の保存安定性の観点から、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、又は2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールを使用することが好ましい。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
イミダゾール化合物の含有量は、特に制限されないが、例えば、(A)成分100質量部に対して、1.0質量部以下、0.5質量部以下、0.3質量部以下、0.2質量部以下、又は0.03質量部以下である。イミダゾール化合物の含有量が上記の範囲内である場合、硬化温度の低温化及び硬化時間の短縮を図ることができるとともに、硬化後の樹脂組成物が黄変することを抑制することができる傾向がある。
【0048】
第一の中間層用樹脂組成物は、場合により、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤の例としては、例えば、有機リン系硬化促進剤が挙げられる。イミダゾール化合物も硬化促進剤の機能を発揮できるが、本明細書では硬化剤に分類される。有機リン系硬化促進剤の例としては、トリフェニルホスフィン、トリパラトリルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、1,4-ビスジフェニルホスフィノブタン、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5-テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、n-ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、又はテトラブチルホスホニウムデカン酸塩が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
硬化促進剤の含有量は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が0.01質量部以上であれば、第一の中間層用樹脂組成物から形成される第一の中間層の硬化性を良好にすることができるため、第一の中間層側からの衝撃に対する易貫通性は有しつつも耐チッピング性の高い合わせガラスをより得易くなること、工程時間の短縮及び作業性の向上が期待できる。硬化促進剤の含有量が50質量部以下であれば、第一の中間層用樹脂組成物の保存安定性を良好にすることができる傾向がある。硬化促進剤の含有量は、(A)成分100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましい。
【0050】
第一の中間層用樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤をさらに含んでもよい。添加剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、重合禁止剤、シランカップリング剤、界面活性剤、無機充填剤、難燃剤、可塑剤、又はその他のポリマー等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤の含有量は、例えば、第一の中間層用樹脂組成物の全量に対して、0.01~5質量%である。
【0051】
重合禁止剤の例としては、パラメトキシフェノールが挙げられる。シランカップリング剤の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、又はγ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランが挙げられる。界面活性剤の例としては、ポリジメチルシロキサン系化合物、又はフッ素系化合物が挙げられる。
【0052】
無機充填剤の例としては、破砕シリカ、溶融シリカ、マイカ、粘土鉱物、ガラス短繊維又は微粉末及び中空ガラス、炭酸カルシウム、石英粉末、又は金属水和物が挙げられる。無機充填剤の含有量は、例えば、第一の中間層用樹脂組成物100質量部に対して、0.01~100質量部、0.05~50質量部、又は0.1~30質量部である。無機充填剤の含有量が0.01~100質量部であると、第一の中間層用樹脂組成物に関して、低収縮性、機械強度の向上、低熱膨張率等の効果が得られる傾向がある。無機充填剤は、カップリング剤等の市販の表面処理剤等で処理されていてもよい。
【0053】
その他のポリマーの例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、又はアイオノマー樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂又はフェノール樹脂を用いると、第一の中間層の強度が高くなり易い傾向がある。ポリビニルアセタール樹脂又はアイオノマー樹脂を用いると、第一の中間層とガラス板との接着力が高くなり易い傾向がある。
【0054】
第一の中間層用樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤をさらに含んでもよい。有機溶剤として、該樹脂組成物を溶解し得るものであれば特に制限はないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン若しくはシクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル若しくはγ-ブチロラクトン等のエステル系有機溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル若しくはジエチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート若しくはジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド若しくはN-メチルピロリドン等のアミド系有機溶剤等が挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
第一の中間層用樹脂組成物の樹脂層(すなわち第一の中間層用樹脂層)は、第一の中間層用樹脂組成物を膜状又は層状に形成して得られるものである。第一の中間層用樹脂層は、第一の中間層用樹脂組成物を硬化(架橋を含む)させて得られるものであってもよい。すなわち、第一の中間層用樹脂層は、第一の中間層用樹脂組成物又はその硬化物を含む樹脂層である。
【0056】
第一の中間層用樹脂層は、例えば、第一の中間層用樹脂組成物を支持フィルムに塗布することにより製造することができる。第一の中間層用樹脂組成物が有機溶剤で希釈されている場合、該樹脂組成物を支持フィルムに塗布し、加熱乾燥にて有機溶剤を除去することにより、合わせガラスの作製に用いられる第一の中間層樹脂層を製造することができる。この場合、支持フィルム及び第一の中間層用樹脂層から構成される2層構造を有する第一の中間層用フィルム材を得ることができる。
【0057】
支持フィルム上に設けられた第一の中間層用樹脂層には、必要に応じて、さらに保護フィルムを貼り付けることができる。この場合、支持フィルムと第一の中間層用樹脂層と保護フィルムとから構成される3層構造を有する第一の中間層用フィルム材を得ることができる。
【0058】
第一の中間層用樹脂層は、温度0℃、周波数0.5Hzにおける損失正接tanδが、0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.2以下であることがさらに好ましい。tanδが0.5以下であると、外部からの衝撃による第一の中間層の変形が抑制されるため、第一の中間層側からの衝撃に対する易貫通性は有しつつも耐チッピング性に優れた合わせガラスをより得易くなる傾向がある。tanδは、引張モードの動的粘弾性試験により測定した数値である。具体的には、樹脂層を厚み0.1mmに調整したフィルム材を、150℃で2時間加熱した後、動的粘弾性試験装置(TAインスツルメント・ジャパン株式会社製、RSA-G2)を用いて、サンプル幅5mm、サンプル長さ5mm、ひずみ量0.05%、温度0℃、周波数0.5Hzの条件で測定することができる。
【0059】
フィルム材を加熱する温度及び時間の条件は、樹脂組成物に含まれる(A)成分及び(B)成分の種類と量により変化するが、樹脂組成物が分解及び揮発せずに十分に架橋できる条件であれば特に制限されない。ひずみ量は、フィルム材が塑性変形しない領域で可能な限り大きな値を設定することが好ましい。
【0060】
このようにして得られた第一の中間層用フィルム材は、例えばロール状に巻き取り、ロール状で保存することができる。ロール状のフィルム材を好適なサイズに切り出して、シート状にして保存することもできる。
【0061】
支持フィルムとしては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、又はポリイミド等が挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、支持フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド、又はポリイミドであることが好ましい。第一の中間層用樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物等により離型処理が施されたフィルムを支持フィルムとして用いることが好ましい。
【0062】
支持フィルムの厚みは、目的とする柔軟性により適宜変え得るが、3~250μmであることが好ましい。支持フィルムの厚みが3μm以上であれば、フィルム強度が十分である傾向がある。支持フィルムの厚みが250μm以下であれば、十分な柔軟性が得られる傾向がある。このような観点から、支持フィルムの厚みは、5~200μmであることがより好ましく、7~150μmであることがさらに好ましい。
【0063】
保護フィルムとしては、特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、又はポリプロピレン等が挙げられる。これらの中で、柔軟性及び強靭性の観点から、保護フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、又はポリプロピレンであることが好ましい。第一の中間層用樹脂層との剥離性向上の観点から、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物等により離型処理が施されたフィルムを保護フィルムとして用いることが好ましい。
【0064】
保護フィルムの厚みは、目的とする柔軟性により適宜設定することができるが、10~250μmであることが好ましい。保護フィルムの厚みが10μm以上であれば、フィルム強度が十分である傾向がある。保護フィルムの厚みが250μm以下であれば、十分な柔軟性が得られる傾向がある。このような観点から、保護フィルムの厚みは、15~200μmであることがより好ましく、20~150μmであることがさらに好ましい。
【0065】
第一の中間層用樹脂層の厚みは、特に限定されないが、10~10,000μmであることが好ましい。第一の中間層用樹脂層の厚みが10μm以上であれば、厚みが十分であるため第一の中間層用樹脂層の強度が十分になる傾向がある。第一の中間層用樹脂層の厚みが10,000μm以下であれば、第一の中間層樹脂層の加工が容易となる傾向がある。このような観点から、第一の中間層用樹脂層の厚みは、50μm~5,000μmであることがより好ましく、100~1,000μmであることがさらに好ましい。第一の中間層用樹脂層は、(A)成分と(B)成分とを組み合わせて含む樹脂組成物により形成されることから、第一の中間層用樹脂層の厚みを厚くしても、耐チッピング性及び光学的な透明性に優れる合わせガラスを形成させることができる。このような観点から、第一の中間層用樹脂層の厚みは、150μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上、350μm以上又は400μm以上であってもよい。
【0066】
第一の中間層用樹脂層は、押出成形のような溶融成形によって成膜することで形成することもできる。
【0067】
第一の中間層用樹脂層は、合わせガラスの反射防止層、防汚層、色素層、ハードコート層等の機能性を有する機能層等と組み合わせて貼り合わせるために使用してもよい。反射防止層は、可視光反射率が5%以下となる反射防止性を有している層であればよい。反射防止層は、透明なプラスチックフィルム等の透明基材に既知の反射防止方法で処理された層であってもよい。防汚層は、表面に汚れがつき難くするためのものである。色素層は、色純度を高めるための層である。色素層は、合わせガラスで透過する不要な波長の光を低減するために使用される。ハードコート層は、表面硬度を高くするために設けられる。ハードコート層としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の膜であってもよい。
【0068】
ただし、第一の中間層用樹脂層は第二の中間層に隣接する位置に配置することが好ましく、すなわち、第一の中間層用樹脂層は第二の中間層に接して配置することが好ましい。
【0069】
<第二の中間層>
第二の中間層は、ポリビニルブチラール樹脂を含む。ポリビニルブチラール樹脂は、優れた耐貫通性を有する。また、ポリビニルブチラール樹脂は、優れた熱融着性も有する。
【0070】
第二の中間層は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤又は着色剤等が挙げられる。
【0071】
第二の中間層の厚さは、例えば、0.1~3.0mmであり、好ましくは、0.2~2.5mmである。第二の中間層の厚さが0.1mm以上であれば、車両外側からの衝撃に対する合わせガラスの耐貫通性を効果的に向上することができる。第二の中間層の厚さが3.0mm以下であれば、第一の中間層側からの衝撃に対する合わせガラスの易貫通性を効果的に向上することができる。
【0072】
第二の中間層用樹脂層を作製するには、例えば、ポリビニルブチラール樹脂を含む樹脂組成物を押出機を用いて加熱溶融状態で押し出し成形する。その後、押し出し成形された樹脂膜を、ガラス板のサイズ・形状に合わせて、適宜伸展させることで、第二の中間層用樹脂層を形成することができる。第二の中間層用樹脂層の形態は、好ましくは、フィルム状である。
【0073】
以下、本実施形態に係る車両用合わせガラスの製造方法について説明する。
【0074】
<車両用合わせガラスの製造方法>
本実施形態に係る車両用合わせガラスは、特に制限されるものではないが、例えば、1対のガラス板の間に、上記第一の中間層用樹脂層及び上記第二の中間層用樹脂層を配置させて積層体を形成する工程と、積層体を加熱及び加圧して合わせガラスを形成する工程とを含む方法により製造することができる。
【0075】
第一の中間層用樹脂層は、積層体の形成工程並びに積層体の加熱及び加圧工程のうちの少なくとも1つ以上の工程の過程で、硬化され得る。2枚のガラス板及びこれらの間に配置された第一の中間層及び第二の中間層を有する積層体は、例えば、第一の中間層の上述のフィルム材及び第二の中間層の上述のフィルム材を2枚のガラス板で挟むことにより、形成することができる。また、第一の中間層用樹脂層は、一方のガラス板上に、上述の第一の中間層用樹脂組成物を塗布することにより形成してもよい。
【0076】
第一の中間層用樹脂層を硬化させる工程は、特に制限されないが、作業時間を短縮させる観点及び気泡等の外観不良を低減させる観点から、2枚のガラス板並びにこれらの間に配置された第一の中間層用樹脂層及び第二の中間層用樹脂層を有する積層体を形成させる工程で硬化又は架橋させることが好ましい。また、第一の中間層用樹脂層を硬化させる工程は、特に制限されないが、気泡等の外観不良を低減させる観点からは、積層体を加熱及び加圧して合わせガラスを形成させる工程で硬化又は架橋させることが好ましい。
【0077】
第一の中間層を硬化させる方法は、第一の中間層用樹脂組成物を硬化させることができれば、特に制限されないが、80~300℃の温度範囲で及び10分~5時間加熱する方法であることが好ましい。加熱温度は、硬化(架橋を含む)を十分に進行させる観点及びエネルギコストを低減させる観点から、100~250℃であることがより好ましく、120~200℃であることがさらに好ましい。適切な加熱時間は、加熱温度により変化するが、加熱温度と同様の観点から20分~4時間がより好ましく、30分~2時間がさらに好ましい。
【0078】
第一の中間層用樹脂組成物又は第一の中間層用樹脂層は、硬化又は架橋前は優れた柔軟性及び/又は熱流動性を有することから、曲面ガラスへの追従性及び貼合性に優れる傾向がある。また、第一の中間層用樹脂組成物又は第一の中間層用樹脂層は、合わせガラスの貼合時又は貼合後に後硬化又は架橋させることで優れた機械強度を発現することから、合わせガラスの耐チッピング性を向上させることができる。第一の中間層用樹脂組成物又は第一の中間層用樹脂層は、熱流動性を発現する温度よりも高い温度から硬化又は架橋が緩やかに進行する潜在硬化性を有することから、貼合時に気泡及びシワが消失し易い傾向がある。第二の中間層用樹脂層は熱可塑性を有するため、加熱及び加圧工程により良好に形成することができ、曲面ガラスへの追従性及び貼合性に優れる。
【実施例】
【0079】
以下に、本実施形態について実施例を用いて説明する。
【0080】
[実施例1]
<樹脂Aの作製>
アクリル酸ブチル(BA)300.0g、アクリル酸ジシクロペンタニル(FA-513AS、日立化成株式会社製)550.0g、及びエポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしてメタクリル酸グリシジル(GMA)150.0gを混合して単量体混合物を得た。得られた単量体混合物に、重合開始剤として過酸化ラウロイル5.0gと、連鎖移動剤としてn-オクチルメルカプタン1.0gとを溶解させて、単量体を含む混合液を得た。冷却管、温度計、攪拌装置、及び窒素導入管が装着された反応容器に、イオン交換水2000g及びポリビニルアルコール0.3gを入れ、そこに、撹拌しながら上記混合液を加えた。形成された反応液を、窒素雰囲気下、攪拌回転数250回転/分(rpm)で撹拌しながら、60℃で5時間、次いで90℃で2時間かけて重合反応を進行させて、エポキシ基を有する(メタ)アクリル共重合体を含む樹脂Aの粒子を形成させた。反応液から取り出した樹脂Aの粒子を水洗及び乾燥した。
【0081】
<第一の中間層用樹脂組成物、及び第一の中間層用フィルム材の作製>
(A)成分として上記樹脂Aの粒子100.0g、(B)成分として酸無水物化合物である3又は4-メチル-ヘキサヒドロ無水フタル酸(HN-5500、日立化成株式会社製)8.0g、及びイミダゾール化合物である2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業株式会社製)0.3gをメチルエチルケトン100.0gに均一に溶解させ、樹脂ワニスとして第一の中間層用樹脂組成物を得た。得られた樹脂ワニスを、支持フィルム(重剥離セパレータ)としてのポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理された表面に滴下し、バーコーターを用いて塗膜を形成し、塗膜を80℃で30分間の加熱により乾燥して、第一の中間層用樹脂組成物から形成された厚み100μm(0.1mm)の樹脂層(第一の中間層用樹脂層)を得た。樹脂層の上に、保護フィルム(軽剥離セパレータ)としてのポリエチレンテレフタレートフィルムの離型処理された面を被せ、これを1.0kgfのハンドローラーで押し付けることにより貼り付け、支持フィルム/第一の中間層用樹脂層/保護フィルムの構成を有する第一の中間層用フィルム材を得た。
【0082】
<合わせガラスの作製>
縦300mm、横300mmのサイズに裁断した第一の中間層用フィルム材を必要数準備した。第一の中間層用フィルム材の軽剥離セパレータ及び重剥離セパレータを剥離して第一の中間層用樹脂層を両面とも露出させた後、露出している第一の中間層用樹脂層にPVB樹脂シート(縦:300mm、横:300mm、厚さ:0.76mm)を4辺が重なるように積層して複合樹脂層を形成した。次に、複合樹脂層を、PVB樹脂シートの4辺がフロートガラス(縦:300mm、横:300mm、厚さ:2.0mm)の4辺と重なるように、フロートガラスに積層した。そして、フロートガラス(縦:300mm、横:300mm、厚さ:2.0mm)を、複合樹脂層の第一の中間層用樹脂層の4辺とフロートガラスの4辺が重なるように、複合樹脂層に積層した。これにより、フロートガラス/第一の中間層/第二の中間層(PVB樹脂層)/フロートガラスの積層体を得た。得られた積層体を、125℃に設定した真空ラミネータを用いて25分間加熱し、続いて150℃に設定したオートクレーブを用いて、圧力115N/cm2、120分間の条件で加熱及び加圧して、フロートガラス(2.0mm)/第一の中間層(0.1mm)/PVB樹脂層(0.76mm)/フロートガラス(2.0mm)の構成を有する合わせガラスを得た。同様の操作により、合わせガラスを必要枚数作製した。
【0083】
[比較例1]
<PVB樹脂層の作製>
市販の厚さ約0.4mmのPVB樹脂層を使用した。
【0084】
<PVB合わせガラスの作製>
PVB樹脂シート(縦:300mm、横:300mm、厚さ:0.76mm)をフロートガラス(縦:300mm、横:300mm、厚さ:2.0mm)に4辺が重なるように積層し、更にPVB樹脂シートと接するように、もう一枚のフロートガラス(縦:300mm、横:300mm、厚さ:2.0mm)を積層した。これにより、フロートガラス/PVB樹脂層/フロートガラスの積層体を得た。得られた積層体を、125℃に設定した真空ラミネータを用いて25分間加熱し、続いて150℃に設定したオートクレーブを用いて、圧力115N/cm2、120分間の条件で加熱及び加圧して、フロートガラス(2.0mm)/PVB樹脂層(0.76mm)/フロートガラス(2.0mm)の構成を有する合わせガラスを得た。同様の操作により、合わせガラスを必要枚数作製した。
【0085】
[評価1]
実施例1及び比較例1で得られた合わせガラス(縦300mm×横300mm)を表面温度が23℃となるように調整した。次いで、JIS R 3212:2015の5.5 耐貫通性試験に準拠して、4m又は6mの高さから質量2.26kgの鋼球を合わせガラスの中心部分に表面側(第一の中間層側)から落下させた。また、同様に、別に得られた合わせガラスの中心部分に裏面側(第二の中間層側)から鋼球を落下させた。
【0086】
その結果、本実施形態に係る合わせガラスに相当する実施例1の合わせガラスでは、表面側(第一の中間層側)から鋼球を落とした場合、高さ4mで貫通した一方で(n=1)、裏面側(第二の中間層側)から鋼球を落とした場合、高さ6mでも貫通しなかった(n=7)。また、従来のPVB合わせガラスに相当する比較例1の合わせガラスでは、表面側及び裏面側の両面側から鋼球を高さ6mから落とした場合でも、貫通しなかった(n=7)。
【0087】
[評価2]
実施例1及び比較例1で得られた合わせガラスの中心部分を、市販の丸型ハンマーを用いて表面側(第一の中間層側)から人力で叩き、貫通の有無を確認した。また、同様に、別に得られた合わせガラスの中心部分を、市販の丸型ハンマーを用いて裏面側(第二の中間層側)から人力で叩き、貫通の有無を確認した。
【0088】
その結果、本実施形態に係る合わせガラスに相当する実施例1の合わせガラスでは、表面側から叩いた場合は貫通した一方で、裏面側から叩いた場合は貫通しなかった。また、従来のPVB合わせガラスに相当する比較例1の合わせガラスでは、表面側及び裏面側の両面側から叩いた場合でも、貫通しなかった。
【0089】
以上の結果により、本実施形態に係る車両用合わせガラスは、第二の中間層側からの衝撃に対しては優れた耐貫通性を有する一方で、第一の中間層側からの衝撃に対しては低減された耐貫通性を有することが確認された。
【0090】
本明細書中に記載した数値範囲の上限値及び/又は下限値は、それぞれ任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。例えば、数値範囲の上限値及び下限値を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、数値範囲の上限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができ、また、数値範囲の下限値同士を任意に組み合わせて好ましい範囲を規定することができる。
【0091】
この記載した開示に続く特許請求の範囲は、本明細書においてこの記載した開示に明示的に組み込まれ、各請求項は個別の実施形態として独立している。本開示は独立請求項をその従属請求項によって置き換えたもの全てを含む。さらに、独立請求項及びそれに続く従属請求項から誘導される追加的な実施形態も、この記載した明細書に明示的に組み込まれる。
【0092】
当業者であれば本開示を最大限に利用するために上記の説明を用いることができる。本明細書に開示した特許請求の範囲及び実施形態は、単に説明的及び例示的なものであり、いかなる意味でも本開示の範囲を限定しないと解釈すべきである。本開示の助けを借りて、本開示の基本原理から逸脱することなく上記の実施形態の詳細に変更を加えることができる。換言すれば、上記の明細書に具体的に開示した実施形態の種々の改変及び改善は、本開示の範囲内である。
【符号の説明】
【0093】
100 合わせガラス
101a ガラス板
101b ガラス板
102 第一の中間層
103 第二の中間層