(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】欠陥検査装置、欠陥検査方法及びフォトマスクブランクの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20241029BHJP
【FI】
G01N21/956 A
(21)【出願番号】P 2021063981
(22)【出願日】2021-04-05
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】寺島 隆世
(72)【発明者】
【氏名】吉野 巧
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 恒男
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-291225(JP,A)
【文献】特開2014-077732(JP,A)
【文献】特開2018-120211(JP,A)
【文献】特開2002-296197(JP,A)
【文献】特開平06-129992(JP,A)
【文献】特開2001-050907(JP,A)
【文献】特開2005-158780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/84-G01N21/958
G01B11/00-G01B11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共焦点光学系を基本構成とした光学検査装置からなる欠陥検査装置であって、
膜を有する基板が洗浄される前に基板の欠陥
の画像を第二欠陥情報として取得し、基板が洗浄された後で前記基板の欠陥
の画像を第一欠陥情報として取得する欠陥検出部と、
前記第二欠陥情報と前記第一欠陥情報とを比較した結果として得られる変化情報から、
洗浄後に検出されなくなった欠陥の位置情報を取得する比較情報取得部と、
を備え
、
前記位置情報を用いて前記膜に形成された凹状の欠陥を検出する欠陥検査装置。
【請求項2】
前記位置情報に基づいて拡大画像を表示する表示部を備える請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記基板は多層構造であり、
前記膜は、前記基板の最表面
に設けられた厚さ10nm以下の光学薄膜からなり、
前記比較情報取得部は、前記光学薄膜
の欠陥に関する位置情報を取得する、請求項1又は2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記第一欠陥情報及び前記第二欠陥情報の各々は、欠陥
の大きさを含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記第一欠陥情報は検査光を照射することで取得され、
前記検査光の前記基板に対する移動は、前記検査光をスキャンさせる又は前記基板を移動させることで実現される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
共焦点光学系を基本構成とした光学検査装置を用いた欠陥検査方法であって、
膜を有する基板の欠陥
の画像を第二欠陥情報として取得する工程と、
前記第二欠陥情報を取得した後の前記基板を洗浄する工程と、
洗浄後の前記基板の欠陥
の画像を第一欠陥情報として取得する工程と、
前記第二欠陥情報と前記第一欠陥情報とを比較した結果として得られる変化情報から、
洗浄後に検出されなくなった欠陥の位置情報を取得する工程と、
前記位置情報を用いて前記膜に形成された凹状の欠陥を検出する工程と、
を備える欠陥検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の欠陥検査方法を用いてフォトマスクブランクスを選別する工程を備えたフォトマスクブランクスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の欠陥に対する欠陥検査装置、欠陥検査方法及びフォトマスクブランクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス(半導体装置)の製造工程では、パターン転写用マスクに露光光を照射し、マスクに形成されている回路パターンを、縮小光学系を介して半導体基板(半導体ウェハ)上に転写するフォトリソグラフィ技術が用いられる。
【0003】
パターン転写用マスクは、厚みの薄い光学膜が形成された基板(マスクブランク)に、回路パターンを形成することで製造される。このような光学膜は、一般に、遷移金属化合物を主成分とする膜や、遷移金属を含有するケイ素化合物を主成分とする膜であり、目的に応じ、遮光膜として機能する膜や位相シフト膜として機能する膜等が選択される。さらに、光学膜の高精度加工を目的とした加工補助膜であるハードマスク膜も含むこともある。
【0004】
このパターン転写用マスクは、回路パターンを有する半導体素子を製造するための原図として用いられるため、転写用マスクに欠陥が存在すると、その欠陥が回路パターンに転写されてしまう。このため、転写用マスクには無欠陥であることが求められるが、このことは当然に、フォトマスクブランクについても無欠陥であることを要求することとなる。このような状況から、フォトマスクやフォトマスクブランクの欠陥を検出する技術についての多くの検討がなされてきた。
【0005】
フォトマスクブランクやガラス基板等の欠陥を検出する装置として、基板上にレーザ光を照射して基板表面の欠陥による散乱光を光検出器により受光し、光検出器からの出力信号に基づいて欠陥の存在を検出する検査装置が既知である。例えば特許文献1には、複数の光ビームを用いて試料表面を走査し、資料からの反射光を光検出器で検出する欠陥検査装置が記載されている。特許文献2には、試料表面を光スポットにより走査し、試料表面からの反射光により試料の表面領域の情報を検出する検出光学系において、光スポットの走査方向と対応する方向の片側半分の光路を遮光する遮光板を光路中に配置して、光検出器からの出力信号の形状により凸状欠陥と凹状欠陥とを判別することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-27611号公報
【文献】特開2003-4654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
転写用マスクは、微細パターンの原版として使用されるので、パターン転写の忠実性を阻害する転写用マスク上の欠陥はすべて排除しなければならない。従って、マスクブランクの製造段階においても、マスクパターン形成において障害となる欠陥をすべて検出する必要がある。
【0008】
上記特許文献1及び2に記載されている検査装置は、いずれも光学的な欠陥検出法を採用した装置である。光学的な欠陥検出法は、比較的短時間での広域欠陥検査を可能とし、光源の短波長化等により、数10nm程度の微細欠陥の精密検出も可能となるという利点がある。
【0009】
しかし、本願の発明者らの検討によると、上記特許文献1及び2に記載されている検査装置では検査光に対し比較的透明かつ厚さが10nm 以下の薄膜に存在する凹状欠陥の検出能力は低く、欠陥形状によっては数10μm程度の比較的大きな欠陥を検出できないことが確認された。
【0010】
凹状欠陥が発生するメカニズムの一つとして、前記の光学膜の成膜後に実施する基板洗浄工程がある。すなわち、成膜前の基板上にパーティクル等が付着した場合、その上に薄膜の光学膜が成膜されると、この光学膜の検査ではパーティクル由来の凸状欠陥が検出される。その後の洗浄工程を経ると、パーティクルのサイズが大きいと、その上の光学膜と共にパーティクルが除去され、光学膜に凹状欠陥が生成する場合がある。このような凹状欠陥は比較的サイズが大きいが、光学膜が検査光に対して比較的透明な材料で構成されていると、欠陥検査装置で検出することが困難になる。
【0011】
マスクブランクスにおける数10μmの凹状欠陥は、後の回路パターン形成に致命的な影響を与える。そのため、見逃し得る致命欠陥の検出率を高め、致命欠陥を持つ基板の排除が可能な手法の確立が望まれている。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、見逃し得る欠陥を検出、解析し検査の信頼性を高める欠陥検査装置及び欠陥検査方法と、当該欠陥検査方法を採用したフォトマスクブランクスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による欠陥検査装置は、
基板の欠陥に関する第一欠陥情報を取得する欠陥検出部と、
記憶部に記憶された所定欠陥情報と前記第一欠陥情報とを比較した結果を取得する比較情報取得部と、
を備えてもよい。
【0014】
本発明による欠陥検査装置において、
基板処理部によって前記基板に対して所定の処理が施される前に、前記欠陥検出部が欠陥に関する第二欠陥情報を取得し、
前記第二欠陥情報が前記所定欠陥情報として使用され、比較情報取得部によって、前記第二欠陥情報と前記第一欠陥情報とを比較した結果が取得されてもよい。
【0015】
本発明による欠陥検査装置において、
前記所定の処理は前記基板の洗浄処理であってもよい。
【0016】
本発明による欠陥検査装置において、
前記比較情報取得部は、所定欠陥情報と前記第一欠陥情報とを比較した結果として得られる変化情報から、変化の起こった箇所の位置情報を取得してもよい。
【0017】
本発明による欠陥検査装置において、
前記位置情報に基づいて拡大画像を表示する表示部を備えてもよい。
【0018】
本発明による欠陥検査装置において、
前記基板は多層構造であり、
前記基板の最表面の層は厚さ10nm以下の光学薄膜からなり、
前記比較情報取得部は、前記光学薄膜の一部が除去された欠陥に関する位置情報を取得してもよい。
【0019】
本発明による欠陥検査装置において、
前記第一欠陥情報及び前記所定欠陥情報の各々は、欠陥の位置情報及び大きさを含んでもよい。
【0020】
本発明による欠陥検査装置において、
前記第一欠陥情報は検査光を照射することで取得され、
前記検査光の前記基板に対する移動は、前記検査光をスキャンさせる又は前記基板を移動させることで実現されてもよい。
【0021】
本発明による欠陥検査方法は、
基板の欠陥に関する第一欠陥情報を取得する工程と、
記憶部に記憶された所定欠陥情報と前記第一欠陥情報とを比較した結果を取得する工程と、
を備えてもよい。
【0022】
本発明によるフォトマスクブランクスの製造方法は、
上記欠陥検査方法を用いてフォトマスクブランクスを選別する工程を備えてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、従来の光学的な欠陥検査方法にて、見逃し得るフォトマスクブランクスの欠陥を検出、解析することができる。また、本発明の欠陥検査方法を適用することにより、致命欠陥である巨大な凹状欠陥を有するフォトマスクブランクの排除をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の概要を示す断面図である。
【
図1B】
図1Aに続く、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の概要を示す断面図である。
【
図1C】
図1Bに続く、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の概要を示す断面図である。
【
図1D】
図1Cに続く、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の概要を示す断面図である。
【
図1E】
図1Eに続く、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の概要を示す断面図である。
【
図1F】
図1Fに続く、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の概要を示す断面図である。
【
図2A】フォトマスクブランクのハードマスク膜に凹欠陥が存在する例を示した断面図である。
【
図2B】フォトマスクブランクの光学薄膜に凹欠陥が存在する例を示した断面図である。
【
図2C】欠陥が存在するフォトマスクブランクから製造されたフォトマスクを示した断面図である。
【
図3A】欠陥が存在する、ハードマスクを成膜する直前を示したフォトマスクブランクの断面図である。
【
図3B】
図3Aに続く、ハードマスクを成膜した後のフォトマスクブランクの断面図である。
【
図3C】
図3Bに続く、洗浄後のフォトマスクブランクの断面図である。
【
図4】フォトマスクブランクスの欠陥検査に用いられる検査装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態による欠陥検査方法のフローチャートである。
【
図7】本実施の形態による欠陥検査装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程を説明する。
【0027】
図1A乃至
図1Fは、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の説明図であり、製造工程の各段階におけるフォトマスクブランク、中間体又はフォトマスクの断面図である。フォトマスクブランクには、透明基板上に、少なくとも1層の光学薄膜、加工補助薄膜等の薄膜が形成されている。
【0028】
図1Aに示されるフォトマスクブランク100では、透明基板101上に、遮光膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜等として機能する光学薄膜102が形成され、光学薄膜の上に、ハードマスク膜(加工補助薄膜)103が形成されている。このようなフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する場合、まず、ハードマスク膜103の上に、その加工のためのレジスト膜104が形成される(
図1B参照)。次に、電子線描画法等によるリソグラフィ工程を経て、レジスト膜からレジストパターン104aを形成する(
図1C参照)。次に、レジストパターン104aをエッチングマスクとして、下層のハードマスク膜103を加工し、ハードマスク膜パターン103aを形成して(
図1D参照)、レジストパターン104aを除去する(
図1E参照)。さらに、ハードマスク膜パターン103aをエッチングマスクとして、下層の光学薄膜102を加工すると、光学薄膜パターン102aが形成され、その後、ハードマスク膜パターン103aを除去すると、フォトマスク100aが得られる(
図1F参照)。
【0029】
フォトマスクブランクの薄膜に、例えばピンホール欠陥のような凹状欠陥が存在すると、最終的にフォトマスク上の現像パターン欠陥の原因となる。典型的なフォトマスクブランクの凹状欠陥の例を
図2A及び
図2Bに示す。なお、本実施の形態の「欠陥」の概念には、ピンホール欠陥(凹状欠陥)のように基板に形成される欠陥の他、パーティクルといった基板に付着したゴミ等の異物も含まれている。
【0030】
図2Aは、透明基板101上に形成された光学薄膜102の高精度な加工を行うために、その上に形成したハードマスク膜103に凹状欠陥DEF1が存在するフォトマスクブランク100の例を示している。
図2Bは、透明基板101上に形成された光学薄膜102自体に凹欠陥DEF2が存在するフォトマスクブランクの例を示す断面図である。
【0031】
図2A及び
図2Bに示すようないずれのフォトマスクブランクにおいても、このようなフォトマスクブランクから
図1A乃至
図1Fに示されるような製造工程によりフォトマスクを製造した場合、
図2Cに示されるフォトマスク100aのように、フォトマスクブランク由来の凹状欠陥DEF3が光学薄膜パターン102aに存在するフォトマスクとなってしまう。そして、この凹状欠陥DEF3はフォトマスクを用いた露光において、パターン転写エラーを引き起こす原因となる。
【0032】
また、基板の洗浄工程を経ることによって新たに凹状欠陥が発生する場合があり、そのメカニズムを
図3A乃至
図3Cに示す。
【0033】
図3Aは、フォトマスクブランクの製造において、薄膜のハードマスク膜を成膜する直前の表面を示す図である。基板表面にはパーティクルDEF4及びDEF5が付着し存在している。ここにハードマスク膜103を成膜すると、
図3Bに示すような態様になる。
図3Bでは、成膜前の欠陥DEF4及びDEF5に加え、成膜時に付着したパーティクルDEF6が存在する態様となっている。洗浄工程を経ると、成膜時に発生したパーティクルDEF6を除去することはできるが、成膜前に付着したサイズの大きなパーティクルDEF5も除去され、ハードマスク膜103にホール状の凹状欠陥DEF7が発生する(
図3C参照)。
【0034】
この凹状欠陥DEF7もフォトマスクを用いた露光において、パターン転写エラーを引き起こす原因となる。そのため、フォトマスクブランクの凹状欠陥については、フォトマスクブランクを加工する前の段階で検出して、欠陥を有するフォトマスクブランクを排除したり、欠陥の修正を施したりする必要がある。
【0035】
このように、フォトマスクブランクに存在する致命的な欠陥である凹状欠陥の排除はフォトマスクブランクスの品質保証のカギを握ることになる。そのため凹状欠陥に対する高い信頼性を持った検査手法の提供が望まれる。
【0036】
図4は、フォトマスクブランクの表面部における欠陥を検査するために好適に用いられる検査装置の構成の一例を概念的に説明するブロック図である。
図4に示す態様では、基板としてフォトマスクブランクMBを用いて説明するが、これに限られることはない。本実施の形態の欠陥検査装置110は、基板の欠陥に関する情報を取得する欠陥検出部152と、様々な情報を記憶する記憶部155と、記憶部155に記憶された所定欠陥情報と第一欠陥情報とを比較した結果を取得する比較情報取得部150と、を有している。本実施の形態では、一例として、所定欠陥情報及び第一欠陥情報の各々が画像情報である態様を用いて説明する。そして、
図4に示す態様では、画像の処理を行う画像処理部154が比較情報取得部150として機能する態様を用いて説明する。
【0037】
制御部153には、様々な制御を行う制御プログラムと、様々な演算処理を行う演算処理プログラムがインストールされており、これらのプログラムに基づいて制御や演算処理を行うようになっている。制御部153に各種の画像演算プログラムがインストールされており、画像処理部154での処理の一部を制御部153が行ってもよい。この場合には、前述した画像処理部154が比較情報取得部150として機能する態様とは異なり、制御部153及び画像処理部154の両方によって比較情報取得部150としての機能が果たされることになる。
【0038】
フォトマスクブランクMBに対して所定の処理を施す基板処理部が設けられてもよい(
図7参照)。そして、当該所定の処理の前に、欠陥検出部152が欠陥に関する第二欠陥情報を取得してもよい。この第二欠陥情報が前述した所定欠陥情報であってもよい。上記所定の処理は、基板の洗浄処理であってもよく、場合には、基板処理部は基板洗浄部210を有することになる(
図7参照)。
【0039】
欠陥検出部152は、記憶部155に保存された位置情報に基づいて欠陥の拡大像を生成して欠陥の確認や解析を行うようにしてもよい。このような拡大像の生成は画像処理部154によって行われてもよい。また、このような拡大像はディスプレイ等からなる表示部156で表示されてもよい。
【0040】
画像処理部154は、所定欠陥情報である第二欠陥情報と第一欠陥情報とを比較した結果として得られる変化情報から、変化の起こった箇所(例えば、洗浄処理によって除去された欠陥の位置)を位置情報として取得してもよい。
【0041】
表示部156では、欠陥が存在していると考えられる箇所が拡大されて表示できるようにしてもよい。また、第二欠陥情報と第一欠陥情報とを比較した結果として得られた、洗浄処理によって除去された欠陥の存在していた箇所が拡大されて表示できるようにしてもよい。洗浄後の画像に対して、洗浄処理によって除去された欠陥の存在していた箇所の位置情報が追加された画像が合成され、当該画像において、洗浄処理によって除去された欠陥の存在していた箇所が拡大されて表示できるようにしてもよい。このような拡大された画像を用いることで、欠陥の確認や解析を行うようにしてもよい。
【0042】
一例を示すと、画像処理部154によって、第二欠陥情報と第一欠陥情報とが比較され、第二欠陥情報では存在していた欠陥のうち、洗浄処理後に除去された箇所の位置が特定される。この特定は、画像処理部154によって、第二欠陥情報における画像と、第一欠陥情報における画像とを比較して分析することで行われる。洗浄処理後に除去された欠陥の位置情報が所得され、当該位置情報が第二欠陥情報における画像に足しあわされて、新たな画像が生成されてもよい。また、このようにして特定された箇所が自動又は操作者が操作することで拡大されて、表示部156で映し出されるようになってもよい。表示部156で映し出される画像は画像処理部154によって処理された画像であり、除去された欠陥の箇所が強調して表示されてもよい(例えば赤枠で囲まれて表示されてもよい。)。欠陥が複数除去された場合には、制御部153からの指令を受けて、除去された欠陥の箇所が順に拡大されて自動で表示されるようにしてもよい。また、このような態様に限られることはなく、除去された欠陥のリストが表示され、当該リストの中から個別に欠陥を選択することで、除去された欠陥が存在して箇所が拡大されて表示されるようにしてもよい。
【0043】
本実施の形態による欠陥検査装置110及び基板処理部の一例である基板洗浄部210における基板(フォトマスクブランクMB)に対する一連の処理はレシピとして記憶部155で記憶されてもよい。そして、レシピが記憶部155から読み出されることで、欠陥検査装置110及び基板洗浄部210における基板に対する一連の処理が自動で行われるようにしてもよい。
【0044】
欠陥検査装置110は、一例として、検査光学系130、欠陥検出部152、制御部153、画像の処理を行う画像処理部154、様々な情報を記憶する記憶部155及び表示部156を主な構成要素としている。制御部153は、制御プログラムに基づいて欠陥検査装置110の全体を制御してもよい。
【0045】
本実施の形態では、制御部153にインストールされるプログラム及び当該プログラムを保存したUSBメモリ等を含む記憶媒体も提供される。このようなプログラムをコンピュータにインストールすることで、本実施の形態の欠陥検査装置110の制御部153や画像処理部154が生成されてもよい。
【0046】
本実施の形態の欠陥検出部152、制御部153、画像処理部154等は一つのユニット(制御ユニット)によって実現されてもよいし、異なるユニットによって実現されてもよい。複数の「部」による機能が一つのユニット(制御ユニット)で統合されて実現されてもよい。また、欠陥検出部152、制御部153、画像処理部154等は回路構成によって実現されてもよい。
【0047】
欠陥検出部152及び/又は比較情報取得部150は人工知能機能を有し、過去の実績データやサンプルデータを用いて機械学習を行ってもよい。より具体的には、欠陥検出部152で、過去の実績データやサンプルデータ(学習用データ)を用いて欠陥を検出するための欠陥検出モデルを生成し、当該欠陥検出モデルを用いて、新たな検知対象となる基板に対する欠陥を検出するようにしてもよい。また、比較情報取得部150で、過去の実績データやサンプルデータ(学習用データ)を用いて変化(例えば洗浄後に無くなった欠陥)を検出するための比較結果検出モデルを生成し、当該比較結果検出モデルを用いて、新たな検知対象となる基板に対する変化(洗浄後に無くなった欠陥)を検出するようにしてもよい。欠陥検出モデル及び比較結果検出モデルは、複数の採用変数と当該採用変数の各々に対する重みである採用係数を用いて生成されてもよい。
【0048】
検査光学系130は、共焦点光学系を基本構成としており、検査光を発する光源ILS、ビームスプリッタBSP、対物レンズOBL、フォトマスクブランクMBを載置し移動できるステージSTG及び画像検出器SEを有してもよい。
【0049】
検査光は光学薄膜を透過する波長となってもよい。検査光は波長210nm~550nmの光であってもよい。一例として、光源ILSから射出された検査光BM1は、ビームスプリッタBSPで折り曲げられ、対物レンズOBLを通してフォトマスクブランクMBの所定領域を照射する。フォトマスクブランクMB表面で反射した光BM2は対物レンズOBLで集められるとともに、ビームスプリッタBSP、光の一部を遮光する空間フィルタSPF及びレンズL1を透過して画像検出器SEの受光面に到達する。このとき、画像検出器SEの受光面がマスクブランクMBの表面と共役な位置になるように画像検出器SEの位置が調整されている。
【0050】
検査光BM1は走査手段(図示せず)により一方向に走査され、その走査方向と直交する方向にステージSTGは移動する。この検査光の走査と被検査基板の移動を組み合わせて、被検査基板の所定の領域内を検査し、画像検出器SEで捉えられる反射光の強度に所定レベルより大きい変動が認められた場合は欠陥が存在すると判断する。欠陥を検出した場合にはその位置情報や反射光の強度分布から予測される欠陥サイズを逐次記憶し保存する。次に、保存された位置情報に基づいて、改めて欠陥部を含む小領域の2次元拡大像を生成して、欠陥の確認や解析を行う。
【0051】
このように、基板の所定の領域内の検査光走査と、走査で欠陥が検知された領域のみの2次元拡大像生成との2段階の工程の組合せで、欠陥検査の高速性と欠陥解析の正確性とを両立させることができる。
【0052】
例えば
図4で示すような構成を採用し、検査光のスキャンや検査対象基板の移動を組み合わせて、検査対象基板の所定の領域内を検査し、欠陥を検出した場合にはその位置情報や欠陥サイズを記憶部155で逐次記憶するようにしてもよい。
【0053】
検査対象基板の最表面層が厚さ10nm以下の光学薄膜を持ってもよい。そして、この光学薄膜は検査光に対して透明な薄膜であってもよい。上記のようにして解析される欠陥は、光学薄膜上の数10μmの大きさからなる(数10μm以上の)凹状欠陥であってもよい。
【0054】
次に、本実施形態による欠陥検査方法の一例について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0055】
まず洗浄工程の前に実施する検査としてハードマスク成膜後にブランクス表面上の欠陥の有無を検査する(ステップS01)。検査により検出された欠陥位置と欠陥画像を取得し欠陥情報を記録する(ステップS02)。この記憶は記憶部155で行われる。記憶部155は光学検査装置に組み込まれたものであってもよいが、遠隔地に配置されてもよく、サーバ等であってもよい。欠陥情報は欠陥のサイズ、位置及び/又は凹凸判定結果を含んでもよい。この際、欠陥情報に基づく座標の画像(2次元拡大像)を取得し、取得画像を詳細に解析し欠陥の有無を判定してもよい。
【0056】
当該検査の後、洗浄工程(ステップS03)へと移り、成膜時に膜表面上に付着したパーティクル等のごみを除去する。この時、成膜前に付着したパーティクルの高さが成膜の厚さ以上の場合には、洗浄工程により除去される可能性が高く、パーティクルと一緒に最表面膜の一部も除去されて表面膜上に凹状欠陥が形成し得る(
図3B及び
図3C参照)。
【0057】
洗浄工程の後に光学検査装置により再度表面膜上の欠陥を検査する(ステップS04)。検査により得られた結果から欠陥画像の取得と欠陥情報を記録する(ステップS05)。このとき、洗浄工程に起因して発生した凹状欠陥を見逃す可能性があるので、洗浄工程の後に実施した検査結果と洗浄工程の前に実施した検査結果の欠陥情報を比較し、洗浄工程の後に実施した検査で未検出の欠陥位置情報を抽出する(ステップS06)。つまり、洗浄前検査における欠陥に関する情報と洗浄後検査における欠陥に関する情報とを比較し、洗浄後に検出されなくなった欠陥(DEF5及びDEF6)の位置に関する情報を抽出する。その後、当該位置に関する情報(例えば座標による情報等)を、洗浄後に撮影された画像データに追加して、表示部156で表示する(ステップS07)。そして、洗浄後に検出されなくなった欠陥の位置における画像(2次元拡大像)を取得し、取得画像を詳細に解析し欠陥の有無を判定する(ステップS08)。このように取得画像を詳細に解析することで、DEF7のように従来であれば検出が困難であった凹部欠陥を検出することができることになる。また、洗浄後に検出されなくなった欠陥の位置のみを詳細に解析する対象とするので、解析に要する時間等を抑えることができる。
【0058】
なお、フォトマスクブランクは、様々な材料の光学膜の成膜工程や洗浄工程を含む種々のプロセスを経て製造され、各プロセス間で適宜欠陥検査が実施される。それらの検査で得られた欠陥情報は、欠陥検査装置110に附随している記録装置に記録しても良いし、また、複数の検査装置の状態を管理する上位の管理システムの記録装置に記録し、適宜、記録、読み出しを実行してもよい。なお、これらの記録装置は本実施の形態における記憶部155の概念に含まれている。
【0059】
上記方法にて未検出位置での画像を取得することにより欠陥検査工程にて検出不可能であった、洗浄由来の凹状欠陥を検出することができる。この時未検出位置での画像を取得する欠陥を分析する工程は複数の撮像装置を用いて解析してよい。
【0060】
以上のように、ハードマスク成膜後に基板の検査を行い、第二欠陥情報を取得し、さらに洗浄後に第一欠陥情報を取得し、さらに第一欠陥情報と第二欠陥情報とを比較することで、従来であれば見落としやすかった欠陥についての情報をより確実に取得できる点で有益である。
【0061】
また、上述の欠陥確認方法を採用することで、凹状欠陥を含まない又は10μm以上の大きな凹状欠陥を含まないフォトマスクブランクスを選別するようにしてもよい。この場合には、例えば、基板上に少なくとも1層の薄膜と当該薄膜の加工補助層であるハードマスク膜を形成する工程と、上記欠陥確認方法により、薄膜又はハードマスク膜に存在する欠陥の確認と解析工程と、を含むフォトマスクブランクスの製造方法が提供されることになる。
【0062】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例
フォトマスクブランク上に10nmのSiOxを最表面に成膜する成膜工程において成膜後の洗浄前検査結果をもとに洗浄後検査にて未検出となった欠陥の検出、解析を実施した。成膜後、洗浄工程を経る前に
図4に示される検査光学系を用いて、開口数NA0.95、検査波長を532nmとし、フォトマスクブランクス上の欠陥検査を実施した。検査により得られた欠陥位置情報を記録し、洗浄工程へと進めた。
【0064】
フォトマスクブランクスを洗浄後、フォトマスクブランクス上の欠陥を、開口数NA0.85、検査波長が355nmの光学検査装置を用いて検査した。検査により得られた欠陥位置情報を記録し、洗浄工程の前後の欠陥検査から洗浄工程を経て未検出となった欠陥を抽出した。
【0065】
洗浄前検査結果を使い、上記欠陥検査装置110を用いて減少した欠陥座標位置の撮像を実施した。得られた画像をもとに欠陥の有無及び欠陥形状の解析を実施したところ
図6の画像を確認した。本画像からは、本欠陥が数10μmを超える非常に巨大な欠陥であることが考えられた。
【0066】
上記手法により得られた欠陥のAFM分析を実施し、欠陥形状の測定を行ったところ凹状の巨大欠陥であることを確認した。これにより致命欠陥であるハードマスク上の凹状欠陥を検出できた。すなわち、洗浄後検査にて未検出であり従来の製造フローでは見逃し得る欠陥の検出が可能であった。
【0067】
また、本発明の欠陥部の凹凸の分類方法を適用して致命的な欠陥であるピンホール欠陥を含む基板を排除し、欠陥を含まないフォトマスクブランクを提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の一態様によれば、凹状欠陥の検出性能を向上させる技術を提供する。本発明の一態様によれば、特に、フォトマスクブランクに形成される薄膜に存在するピンホール等の凹状形状の検出に有効なフォトマスクブランクの欠陥検査技術として、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
100 フォトマスクブランク
101 透明基板
102 光学薄膜
103 ハードマスク膜
110 欠陥検査装置
130 検査光学系
150 比較情報取得部
152 欠陥検出部
153 制御部
154 画像処理部
155 記憶装置
156 表示部
BM1 検査光
BM2 反射光
BSP ビームスプリッタ
DEF1、DEF2、DEF3 ピンホール欠陥(凹状欠陥)
DEF4、DEF5、DEF6 パーティクル
DEF7 凹状欠陥
ILS 光源
L1 レンズ
MB フォトマスクブランク
OBL 対物レンズ
SE 光検出器
STG ステージ