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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】多元冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/50 20060101AFI20241029BHJP
   F25B 7/00 20060101ALI20241029BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241029BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01L21/50 Z
F25B7/00 D
F25B1/00 399Y
H01L23/46 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021080878
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022174869
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】小博 基司
(72)【発明者】
【氏名】福住 幸大
(72)【発明者】
【氏名】坂内 伸隆
(72)【発明者】
【氏名】宮田 啓雅
【審査官】金田 孝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-137271(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111179(WO,A1)
【文献】特開2012-107805(JP,A)
【文献】特開平04-055677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/50
F25B 7/00
F25B 1/00
H01L 23/34-23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス製造装置を冷却するための多元冷凍サイクル装置であって、
前記半導体デバイス製造装置を冷却するための冷却媒体と熱交換を行う第1冷媒が循環する第1冷凍サイクルと、
前記第1冷媒と熱交換を行う第2冷媒が循環する第2冷凍サイクルを備えており、
前記第1冷凍サイクルの少なくとも一部は、前記半導体デバイス製造装置が設置されたクリーンルーム内に配置されており、
前記第2冷凍サイクルは、サブファブ内に配置されている、多元冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記第1冷凍サイクルの全体は、前記クリーンルーム内に配置されている、請求項1に記載の多元冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記第1冷凍サイクルは、
前記冷却媒体と前記第1冷媒との間で熱交換を行い、気相の前記第1冷媒を生成するように構成された第1蒸発器と、
前記気相の第1冷媒を圧縮するように構成された第1圧縮機と、
圧縮された前記気相の第1冷媒を凝縮させて液相の前記第1冷媒を生成するように構成された第1凝縮器と、
前記第1冷媒の圧力と温度を低下させるために前記第1凝縮器と前記第1蒸発器の間に配置された第1膨張機構を含み、
前記第1蒸発器と前記第1膨張機構は、前記クリーンルーム内に配置され、前記第1圧縮機および前記第1凝縮器は、前記サブファブ内に配置されている、請求項1に記載の多元冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記多元冷凍サイクル装置は、前記第1冷凍サイクルと前記第2冷凍サイクルとの間で中間媒体を循環させるための中間媒体循環ラインをさらに備え、
前記中間媒体循環ラインは、前記第1冷凍サイクルと前記第2冷凍サイクルとの間を延びている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の多元冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記多元冷凍サイクル装置は、前記中間媒体循環ラインに接続されたバッファタンクをさらに備えている、請求項4に記載の多元冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記中間媒体は、ブライン(不凍液)である、請求項4または5に記載の多元冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記第1冷媒と前記第2冷媒とを熱交換するためのカスケードコンデンサをさらに備えている、請求項1または2に記載の多元冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記第1冷凍サイクルは、
前記冷却媒体と前記第1冷媒との間で熱交換を行い、気相の前記第1冷媒を生成するように構成された第1蒸発器と、
前記気相の第1冷媒を圧縮するように構成された第1圧縮機と、
圧縮された前記気相の第1冷媒を凝縮させて液相の前記第1冷媒を生成するように構成された第1凝縮器と、
前記第1圧縮機と前記第1凝縮器の間に配置され、圧縮された前記気相の第1冷媒を冷却するための熱交換器を備えている、請求項1または2に記載の多元冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温側冷凍サイクルと高温側冷凍サイクルを含む多元冷凍サイクル装置に関し、特に、エッチング装置などの半導体デバイス製造装置の冷却に使用される多元冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリ容量拡大のため、3D-NANDの技術革新として積層化が進んでいる。積層化によりエッチングプロセスにかかる加工処理時間が増加しており、生産能力(スループット)の低下が課題となっている。エッチング加工時間を短縮し、スループットを向上させるためには、エッチング装置の処理チャンバを-30℃~-120℃程度の低温に冷却することが効果的である。
【0003】
そこで、-30℃~-120℃程度の低温を達成するために、二元冷凍サイクル装置が従来から使用されており(例えば、特許文献1-3参照)、複数社によって製品化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-193908号公報
【文献】特開2013-64559号公報
【文献】国際公開第2012/128229号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの二元冷凍サイクル装置では単段冷凍サイクル装置に比べて機器点数が増加し、それらを結ぶ配管も多くなるため、装置の全体寸法が大きくなることは不可避である。半導体デバイス製造装置の一般的な設置状況として、図7に示すように、半導体デバイスの加工を担うプロセスチャンバ(例えば、エッチング装置の処理チャンバ)はクリーンルーム内に設置され、プロセスチャンバを冷却する二元冷凍サイクル装置はクリーンルームとは別のエリアである各種周辺機器が設置されるサブファブリケーション通称サブファブと呼ばれるエリアに設置される。
【0006】
クリーンルームとサブファブの位置関係は、大抵の場合、階上と階下の位置関係になっており、サブファブ内の機器の設置面積は、原則として、階上の半導体デバイス製造装置の設置面積を超えることはできない。また、サブファブに設置される装置は多数あることから、設置面積を縮小することは各種装置の基本的な課題となっている。しかしながら、半導体デバイス製造装置の積層構造の層数は増加する傾向にあり、これに伴い、二元冷凍サイクル装置は、今後大型化することが予想されている。
【0007】
上記問題に加え、超低温の冷却媒体を移送するための配管は、結露防止と断熱のため分厚い保冷材で覆う必要があり、施工の手間やコストが上昇する。さらに、このような配管をサブファブからクリーンルームまでの長い距離に亘って設置するためのスペースが必要になるのみならず、配管が長くなるほど、周囲雰囲気の温度が配管内の冷却媒体に伝わりやすくなる(冷却効果が低くなる)。
【0008】
そこで、本発明は、サブファブ内に設置される機器の設置面積を小さくすることができ、かつ半導体デバイス製造装置に冷却媒体を移送するための配管を短くすることができる多元冷凍サイクル装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、半導体デバイス製造装置を冷却するための多元冷凍サイクル装置であって、前記半導体デバイス製造装置を冷却するための冷却媒体と熱交換を行う第1冷媒が循環する第1冷凍サイクルと、前記第1冷媒と熱交換を行う第2冷媒が循環する第2冷凍サイクルを備えており、前記第1冷凍サイクルの少なくとも一部は、前記半導体デバイス製造装置が設置されたクリーンルーム内に配置されており、前記第2冷凍サイクルは、サブファブ内に配置されている、多元冷凍サイクル装置が提供される。
【0010】
本発明によれば、多元冷凍サイクル装置の構成要素は2つに分割されて、クリーンルームとサブファブとにそれぞれ配置されるので、サブファブ内に設置される機器の設置面積を小さくすることができる。
また、第1冷凍サイクルの少なくとも一部はクリーンルーム内に配置されるので、第1冷凍サイクルから半導体デバイス製造装置(例えばエッチング装置の処理チャンバ)に超低温の冷却媒体を移送するための冷却配管を短くできる。結果として、冷却配管用のスペースが小さくでき、かつ冷却効率が向上する。
【0011】
一態様では、前記第1冷凍サイクルの全体は、前記クリーンルーム内に配置されている。
本発明によれば、サブファブ内での設置面積をさらに小さくすることができる。
【0012】
一態様では、前記第1冷凍サイクルは、前記冷却媒体と前記第1冷媒との間で熱交換を行い、気相の前記第1冷媒を生成するように構成された第1蒸発器と、前記気相の第1冷媒を圧縮するように構成された第1圧縮機と、圧縮された前記気相の第1冷媒を凝縮させて液相の前記第1冷媒を生成するように構成された第1凝縮器と、前記第1冷媒の圧力と温度を低下させるために前記第1凝縮器と前記第1蒸発器の間に配置された第1膨張機構を含み、前記第1蒸発器と前記第1膨張機構は、前記クリーンルーム内に配置され、前記第1圧縮機および前記第1凝縮器は、前記サブファブ内に配置されている。
本発明によれば、階下のサブファブ内に第1圧縮機と第1凝縮器が配置され、階上のクリーンルーム内に第1蒸発器と第1膨張機構が配置されるので、第1圧縮機から第1冷媒内に漏れ出した潤滑油が第1蒸発器に滞留せず、潤滑油をその重力で第1圧縮機に戻すことができる。
【0013】
一態様では、前記多元冷凍サイクル装置は、前記第1冷凍サイクルと前記第2冷凍サイクルとの間で中間媒体を循環させるための中間媒体循環ラインをさらに備え、前記中間媒体循環ラインは、前記第1冷凍サイクルと前記第2冷凍サイクルとの間を延びている。
本発明によれば、第1冷凍サイクルの第1冷媒と第2冷凍サイクルの第2冷媒は、中間媒体を介して熱交換する。中間媒体には、第1冷媒の熱を第2冷媒に伝達することができる限りにおいて、第1冷媒および第2冷媒よりも取り扱いが容易な流体を使用することができる。したがって、中間媒体循環ラインには、樹脂チューブなどの柔軟性のある配管を使用することができる。結果として、製造コストを下げることができ、さらには第1冷凍サイクルと第2冷凍サイクルの配置の自由度が増す。中間媒体の温度(例えば、0℃~-80℃)は、冷却媒体の温度(例えば、-30℃~-120℃)よりも高いので、冷却配管を覆う保冷材に比べて、中間媒体循環ラインを覆う保冷材は簡易なものでよい。
また、中間媒体は、その体積に応じた熱的容量を有するので、第1冷媒と第2冷媒との間の熱的バッファとしても機能する。一般に、半導体デバイス製造装置の冷却に使用された冷却媒体の温度は変動し、これに応じて第1冷媒の温度も変動しやすい。中間媒体は、このような第1冷媒の温度の変動を吸収することができるので、多元冷凍サイクル装置の運転を安定させることができる。結果として、多元冷凍サイクル装置は、安定した温度の冷却媒体を半導体デバイス製造装置に供給することができる。
【0014】
一態様では、前記多元冷凍サイクル装置は、前記中間媒体循環ラインに接続されたバッファタンクをさらに備えている。
本発明によれば、中間媒体の熱的容量を増加させることができ、多元冷凍サイクル装置の運転をさらに安定させることができる。
【0015】
一態様では、前記中間媒体は、ブライン(不凍液)である。
本発明によれば、中間媒体循環ラインには、樹脂チューブなどの柔軟性のある安価な配管を使用することができる。結果として、製造コストを下げることができ、さらには第1冷凍サイクルと第2冷凍サイクルの配置の自由度が増す。
【0016】
一態様では、前記多元冷凍サイクル装置は、前記第1冷媒と前記第2冷媒とを熱交換するためのカスケードコンデンサをさらに備えている。
本発明によれば、カスケードコンデンサは第1冷凍サイクルの凝縮器が第2冷凍サイクルの蒸発器を兼ねているので、熱交換器を減らすことができ、多元冷凍サイクル装置の設置面積を減らすことができる。
【0017】
一態様では、前記第1冷凍サイクルは、前記冷却媒体と前記第1冷媒との間で熱交換を行い、気相の前記第1冷媒を生成するように構成された第1蒸発器と、前記気相の第1冷媒を圧縮するように構成された第1圧縮機と、圧縮された前記気相の第1冷媒を凝縮させて液相の前記第1冷媒を生成するように構成された第1凝縮器と、前記第1圧縮機と前記第1凝縮器の間に配置され、圧縮された前記気相の第1冷媒を冷却するための熱交換器を備えている。
【0018】
本発明によれば、前記気相の第1冷媒は第1凝縮器に入る前に予め冷却されるので、第1凝縮器での必要な冷却熱量が低下する。すなわち、中間媒体を使用した冷却熱量が低下することになるので、第2冷凍サイクルに要求される冷凍容量が小さくて済むことになる。このことは、第2冷凍サイクルの消費電力低減につながり、結果として多元冷凍サイクル装置の運転効率を向上できる。また、第2冷凍サイクルの冷凍能力を小さくできるため、結果として機器の設置面積を低減できる。さらに、冷却に使用した冷却水やブライン(不凍液)は、加熱されて熱交換器から排出されるので、加熱が必要な他の用途に利用でき、加熱のための消費電力も低減できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サブファブ内に設置される機器の設置面積を小さくすることができ、かつ半導体デバイス製造装置に冷却媒体を移送するための配管を短くすることができ、冷却配管用のスペースが小さくでき、かつ冷却効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】半導体デバイス製造装置を冷却するための多元冷凍サイクル装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】多元冷凍サイクル装置の一実施形態の詳細構造を示す模式図である。
図3】多元冷凍サイクル装置の他の実施形態の詳細構造を示す模式図である。
図4】多元冷凍サイクル装置のさらに他の実施形態の詳細構造を示す模式図である。
図5】多元冷凍サイクル装置のさらに他の実施形態の詳細構造を示す模式図である。
図6】多元冷凍サイクル装置のさらに他の実施形態の詳細構造を示す模式図である。
図7】半導体デバイス製造装置と多元冷凍サイクル装置の従来の配置を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、半導体デバイス製造装置を冷却するための多元冷凍サイクル装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示す実施形態では、半導体デバイス製造装置1は、処理チャンバを備えたエッチング装置である。半導体デバイス製造装置1は、クリーンルーム内に配置されており、多元冷凍サイクル装置2の一部は、クリーンルームの下に存在するサブファブ内に配置されている。クリーンルームは上層階にあり、サブファブは下層階にある。
【0022】
多元冷凍サイクル装置2は、半導体デバイス製造装置1に冷却配管3により連結されている。多元冷凍サイクル装置2は、冷却配管3を通じて冷却媒体を半導体デバイス製造装置1(例えばエッチング装置の処理チャンバ)に送り、半導体デバイス製造装置1を冷却する。冷却媒体は、半導体デバイス製造装置1と多元冷凍サイクル装置2との間を循環する。すなわち、多元冷凍サイクル装置2により生成された低温(例えば、-30℃~-120℃)の冷却媒体は、冷却配管3を通って半導体デバイス製造装置1に送られ、半導体デバイス製造装置1の冷却に使用された冷却媒体は冷却配管3を通って多元冷凍サイクル装置2に戻される。
【0023】
多元冷凍サイクル装置2は、冷却媒体と熱交換を行う第1冷媒が循環する第1冷凍サイクル5と、第1冷媒と熱交換を行う第2冷媒が循環する第2冷凍サイクル6を備えている。したがって、本実施形態の多元冷凍サイクル装置2は、二元冷凍サイクル装置である。一実施形態では、多元冷凍サイクル装置2は、3つ以上の冷凍サイクルを含んでもよい。
【0024】
第1冷凍サイクル5の全体はクリーンルーム内に配置されており、第2冷凍サイクル6の全体は、クリーンルームの階下にあるサブファブ内に配置されている。クリーンルーム内には、グレーチングなどの金属製の床7が配置されており、床7の下には床下スペース9がある。この床下スペース9は、クリーンルームの一部である。半導体デバイス製造装置1は床7の上に設置され、第1冷凍サイクル5は半導体デバイス製造装置1の周辺のスペースや床下スペース9内などに設置されている。
【0025】
本実施形態によれば、多元冷凍サイクル装置2の構成要素である第1冷凍サイクル5と第2冷凍サイクル6は、クリーンルームとサブファブとにそれぞれ配置されるので、サブファブ内に設置される機器の設置面積を小さくすることができる。また、第1冷凍サイクル5はクリーンルーム内に配置されるので、第1冷凍サイクル5から半導体デバイス製造装置1(例えばエッチング装置の処理チャンバ)に超低温の冷却媒体を移送するための冷却配管3を短くできる。結果として、冷却配管3用のスペースが小さくでき、かつ冷却効率が向上する。
【0026】
図2は、多元冷凍サイクル装置2の一実施形態の詳細構造を示す模式図である。図2に示すように、第1冷凍サイクル5は、液相の第1冷媒(冷媒液)を蒸発させて気相の第1冷媒(冷媒ガス)を生成する第1蒸発器11と、気相の第1冷媒を圧縮する第1圧縮機12と、圧縮された気相の第1冷媒を凝縮させて液相の第1冷媒を生成する第1凝縮器14を備えている。第1蒸発器11、第1圧縮機12、および第1凝縮器14は、第1冷媒配管16によって連結されている。第1冷媒は、第1冷媒配管16を通って第1蒸発器11、第1圧縮機12、第1凝縮器14を循環する。
【0027】
第1冷凍サイクル5は、第1蒸発器11と第1凝縮器14との間に位置する第1膨張機構としての第1膨張弁17をさらに備えている。第1膨張弁17は、第1蒸発器11と第1凝縮器14との間を延びる第1冷媒配管16の部分に取り付けられている。第1凝縮器14から第1蒸発器11に流れる第1冷媒は第1膨張弁17を通過することで、第1冷媒の圧力と温度が低下する。第1膨張弁17を通過した第1冷媒は、第1蒸発器11に流入する。
【0028】
冷却配管3は、第1蒸発器11に接続されており、第1蒸発器11内で冷却媒体と第1冷媒との熱交換が行われる。この熱交換の結果、冷却媒体は冷却されて低温(例えば、-30℃~-120℃)となり、その一方で第1冷媒は冷却媒体により加熱されて蒸発し、冷媒ガスとなる。冷却された冷却媒体は、冷却配管3を通って半導体デバイス製造装置1に送られ、冷媒ガスは、第1冷媒配管16を通って第1圧縮機12に送られる。第1圧縮機12は、冷媒ガスを圧縮し、圧縮された冷媒ガスを第1凝縮器14に送る。第1凝縮器14では、後述するように、冷媒ガスは、凝縮されて冷媒液となる。
【0029】
第2冷凍サイクル6は、液相の第2冷媒(冷媒液)を蒸発させて気相の第2冷媒(冷媒ガス)を生成する第2蒸発器21と、気相の第2冷媒を圧縮する第2圧縮機22と、圧縮された気相の第2冷媒を凝縮させて液相の第2冷媒を生成する第2凝縮器24を備えている。第2蒸発器21、第2圧縮機22、および第2凝縮器24は、第2冷媒配管26によって連結されている。第2冷媒は、第2冷媒配管26を通って第2蒸発器21、第2圧縮機22、第2凝縮器24を循環する。
【0030】
多元冷凍サイクル装置2は、第1冷凍サイクル5と第2冷凍サイクル6との間で中間媒体を循環させるための中間媒体循環ライン31をさらに備えている。中間媒体循環ライン31は、第1冷凍サイクル5と第2冷凍サイクル6とに接続されている。より具体的には、中間媒体循環ライン31は、中間媒体を第2冷凍サイクル6の第2蒸発器21から第1冷凍サイクル5の第1凝縮器14に送るための送りライン31Aと、中間媒体を第1冷凍サイクル5の第1凝縮器14から第2冷凍サイクル6の第2蒸発器21に戻すための戻りライン31Bを有している。送りライン31Aの一端は第1凝縮器14に接続され、送りライン31Aの他端は第2蒸発器21に接続されている。戻りライン31Bの一端は第1凝縮器14に接続され、戻りライン31Bの他端は第2蒸発器21に接続されている。
【0031】
中間媒体は、中間媒体循環ライン31を通って第1冷凍サイクル5の第1凝縮器14と第2冷凍サイクル6の第2蒸発器21との間を循環する。気相の第1冷媒(冷媒ガス)と中間媒体は、第1凝縮器14内で熱交換を行う。その結果、気相の第1冷媒は、中間媒体に冷却されて液相の第1冷媒(冷媒液)となる。中間媒体は、第1冷媒に加熱されて温度が上昇する。
【0032】
第1冷媒に加熱された中間媒体と、液相の第2冷媒(冷媒液)は、第2蒸発器21内で熱交換を行う。その結果、液相の第2冷媒は、中間媒体に加熱されて気相の第2冷媒(冷媒ガス)となり、その一方で、中間媒体は、第2冷媒に冷却されて温度が低下する。冷却された中間媒体は、中間媒体循環ライン31を通って第1冷凍サイクル5の第1凝縮器14に送られる。冷却された中間媒体と第1冷媒は、第1凝縮器14内で熱交換を行う。このようにして、中間媒体は、中間媒体循環ライン31を通って第1冷凍サイクル5の第1凝縮器14と第2冷凍サイクル6の第2蒸発器21との間を循環する。第2蒸発器21から第1凝縮器14に向かって流れる中間媒体の温度は、例えば、0℃~-80℃である。
【0033】
第2蒸発器21では、第2冷媒は中間媒体により加熱されて蒸発し、冷媒ガスとなる。この冷媒ガスは、第2冷媒配管26を通って第2圧縮機22に送られる。第2圧縮機22は、冷媒ガスを圧縮し、圧縮された冷媒ガスを第2凝縮器24に送る。第2凝縮器24では、図示しない冷却水源から供給される冷却水と、冷媒ガス(気相の第2冷媒)と熱交換が行われる。その結果、冷媒ガスは、凝縮されて冷媒液となる。
【0034】
上述したように、第1冷凍サイクル5の第1冷媒と第2冷凍サイクル6の第2冷媒は、中間媒体を介して熱交換する。中間媒体は、第1冷媒および第2冷媒とは異なる種類の液体である。より具体的には、中間媒体は、パーフルオロカーボン(PFC)液、またはエチレングリコール液などのブライン(不凍液)である。したがって、中間媒体は、液相のまま中間媒体循環ライン31を循環する。
【0035】
中間媒体には、第1冷媒の熱を第2冷媒に伝達することができる限りにおいて、第1冷媒および第2冷媒よりも取り扱いが容易なブライン(不凍液)を使用することができる。したがって、中間媒体循環ライン31には、樹脂チューブなどの柔軟性のある安価な配管を使用することができる。結果として、製造コストを下げることができ、さらには第1冷凍サイクル5と第2冷凍サイクル6の配置の自由度が増す。また、中間媒体の温度(例えば、0℃~-80℃)は、冷却媒体の温度(例えば、-30℃~-120℃)よりも高いので、冷却配管3を覆う保冷材に比べて、中間媒体循環ライン31を覆う保冷材は簡易なものでよい。
【0036】
また、中間媒体は、その体積に応じた熱的容量を有するので、第1冷媒と第2冷媒との間の熱的バッファとしても機能する。一般に、半導体デバイス製造装置1の冷却に使用された冷却媒体の温度は変動し、これに応じて第1冷媒の温度も変動しやすい。中間媒体は、このような第1冷媒の温度の変動を吸収することができるので、多元冷凍サイクル装置2の運転を安定させることができる。結果として、多元冷凍サイクル装置2は、安定した温度の冷却媒体を半導体デバイス製造装置1に供給することができる。
【0037】
第2冷凍サイクル6は、第2蒸発器21と第2凝縮器24との間に位置する第2膨張機構としての第2膨張弁27をさらに備えている。第2膨張弁27は、第2蒸発器21と第2凝縮器24との間を延びる第2冷媒配管26の部分に取り付けられている。第2凝縮器24から第2蒸発器21に流れる第2冷媒は第2膨張弁27を通過することで、第2冷媒の圧力と温度が低下する。第2膨張弁27を通過した第2冷媒は、第2蒸発器21に流入する。
【0038】
図3は、多元冷凍サイクル装置2のさらに他の実施形態の詳細構造を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1および図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図3に示す実施形態では、第1冷凍サイクル5の一部は、クリーンルーム内に配置され、第1冷凍サイクル5の他の部分は、サブファブ内に配置されている。本実施形態では、第1蒸発器11および第1膨張弁17は、クリーンルーム内に配置され、第1圧縮機12および第1凝縮器14は、サブファブ内に配置されている。中間媒体循環ライン31の全体もサブファブ内に配置されている。
【0039】
本実施形態は、クリーンルームの設置面積が小さい場合に有利である。また、本実施形態によれば、階下のサブファブ内に第1圧縮機12と第1凝縮器14が配置され、階上のクリーンルーム内に第1蒸発器11が配置されるので、第1圧縮機12から第1冷媒内に漏れ出した潤滑油が第1蒸発器11に滞留せず、潤滑油をその重力で第1圧縮機12に戻すことができる。また、第1冷凍サイクル5において、低温となる構成要素である第1蒸発器11、第1膨張弁17をクリーンルーム内に配置することで第1冷凍サイクル5から半導体デバイス製造装置1に冷却媒体を移送するための冷却配管3を短くできる。
【0040】
図4に示すように、一実施形態では、多元冷凍サイクル装置2は、中間媒体循環ライン31に接続されたバッファタンク32をさらに備えてもよい。図4に示す実施形態では、バッファタンク32は、中間媒体を第1冷凍サイクル5の第1凝縮器14から第2冷凍サイクル6の第2蒸発器21に戻すための戻りライン31Bに接続されている。バッファタンク32は、設置面積に余裕があるサブファブ内に配置されている。第1冷凍サイクル5の第1凝縮器14を出た中間媒体は、一旦バッファタンク32内に貯留され、その後バッファタンク32から第2冷凍サイクル6の第2蒸発器21に戻される。
【0041】
本実施形態によれば、バッファタンク32の容積分だけ中間媒体の体積が増えるので、中間媒体の熱的容量が増加し、多元冷凍サイクル装置2の運転をさらに安定させることができる。図4に示すバッファタンク32は、図3の実施形態に組み込んでもよい。
【0042】
図5は、多元冷凍サイクル装置2のさらに他の実施形態の詳細構造を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図5に示す実施形態では、第1冷凍サイクル5の凝縮器と、第2冷凍サイクル6の蒸発器は、共通のカスケードコンデンサ40から構成されている。カスケードコンデンサ40は、第1冷凍サイクル5の凝縮器が第2冷凍サイクル6の蒸発器を兼ねている熱交換器であり、サブファブ内に配置されている。一実施形態では、クリーンルーム内の設置面積に余裕がある場合は、第1冷凍サイクル5の第1蒸発器11、第1圧縮機12、第1膨張弁17、およびカスケードコンデンサ40は、クリーンルーム内に配置されてもよい。
【0043】
本実施形態では、中間媒体循環ライン31は設けられていない。第1冷凍サイクル5の第1冷媒配管16と、第2冷凍サイクル6の第2冷媒配管26の両方は、カスケードコンデンサ40に接続されている。第1冷凍サイクル5を循環する第1冷媒および第2冷凍サイクル6を循環する第2冷媒は、カスケードコンデンサ40を流れ、カスケードコンデンサ40内で第1冷媒と第2冷媒との熱交換が行われる。カスケードコンデンサ40は第1冷凍サイクル5の凝縮器が第2冷凍サイクル6の蒸発器を兼ねているので、熱交換器を減らすことができ、多元冷凍サイクル装置2の設置面積を減らすことができる。
【0044】
図6は、多元冷凍サイクル装置2のさらに他の実施形態の詳細構造を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図2を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、第1冷凍サイクル5の第1圧縮機12と第1凝縮器14の間に熱交換器50が設置される。熱交換器50は、第1圧縮機12と第1凝縮器14の間を延びる第1冷媒配管16の部分に接続されている。この熱交換器50には冷却水やブライン(不凍液)などの冷却液と、圧縮された前記気相の第1冷媒が流れ、冷却液と気相の第1冷媒との熱交換が行われる。冷却液との熱交換により冷却された気相の第1冷媒は第1凝縮器14に導かれる。
【0045】
このように、気相の第1冷媒は第1凝縮器14に入る前に予め冷却されるので、第1凝縮器14での必要な冷却熱量が低下する。すなわち、中間媒体を使用した冷却熱量が低下することになるので、第2冷凍サイクル6に要求される冷凍容量が小さくて済むことになる。このことは、第2冷凍サイクル6の消費電力低減につながり、結果として多元冷凍サイクル装置2の運転効率を向上できる。また、第2冷凍サイクル6の冷凍能力を小さくできるため、結果として機器の設置面積を低減できる。さらに、気相の第1冷媒の冷却に使用した冷却水やブライン(不凍液)などの冷却液は、加熱されて熱交換器50から排出されるので、加熱が必要な他の用途に利用でき、加熱のための消費電力も低減できる。
【0046】
熱交換器50は、図3乃至図5を参照して説明した実施形態にも適用することができる。例えば、熱交換器50は、図5に示す第1圧縮機12とカスケードコンデンサ40との間に配置されてもよい。
【0047】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 半導体デバイス製造装置
2 多元冷凍サイクル装置
3 冷却配管
5 第1冷凍サイクル
6 第2冷凍サイクル
7 床
9 床下スペース
11 第1蒸発器
12 第1圧縮機
14 第1凝縮器
16 第1冷媒配管
17 第1膨張弁
21 第2蒸発器
22 第2圧縮機
24 第2凝縮器
26 第2冷媒配管
27 第2膨張弁
31 中間媒体循環ライン
31A 送りライン
31B 戻りライン
32 バッファタンク
40 カスケードコンデンサ
50 熱交換器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7