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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】粉もの類食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20241029BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20241029BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20241029BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20241029BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20241029BHJP
   A23L 29/219 20160101ALI20241029BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L5/00 N
A21D2/18
A21D13/00
A23L35/00
A21D2/36
A23L29/219
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021519350
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017779
(87)【国際公開番号】W WO2020230593
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2019090185
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山縣 海
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 采香
(72)【発明者】
【氏名】石川 千弘
(72)【発明者】
【氏名】相楽 浩二
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 耕士
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 三四郎
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/132534(WO,A1)
【文献】特開2013-085524(JP,A)
【文献】特開平06-277011(JP,A)
【文献】特開2013-208102(JP,A)
【文献】特開2017-073993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A21D
CAplus/FSTA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体原料、および、以下の条件(1)~()を満たす成分(A)を含む、粉もの類食品であって、
当該粉もの類食品が、お好み焼き、たこ焼きおよびチヂミからなる群から選択される1種であって、冷蔵保存または冷凍保存後に再加熱して喫食されるものであり、
前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が5質量%以上45質量%以下である、粉もの類食品
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が75質量%以上100質量%以下
(5)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が40質量%以上100質量%以下
【請求項2】
前記粉体原料が穀粉を含む、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が12質量%以上45質量%以下である、請求項1または2に記載の食品
【請求項4】
粉体原料、および、以下の条件(1)~()を満たす成分(A)を含む、粉もの類食品の製造方法であって、
前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が質量%以上45質量%以下となるように、前記粉体原料および前記成分(A)を配合し、粉もの類食品用生地を調製する工程を含み、
前記粉もの類食品が、お好み焼き、たこ焼きおよびチヂミからなる群から選択される1種であって、冷蔵保存または冷凍保存後に再加熱して喫食されるものである、製造方法。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が75質量%以上100質量%以下
(5)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が40質量%以上100質量%以下
【請求項5】
前記生地を、加熱調理する工程をさらに含む、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
粉もの類食品用生地を調製する前記工程において、前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が12質量%以上45質量%以下となるように、前記粉体原料および前記成分(A)を配合する、請求項4または5に記載の製造方法。
【請求項7】
粉もの類食品用生地を調製する前記工程が、前記粉体原料および前記成分(A)を含む原材料を混練する工程および前記粉体原料および前記成分(A)を含むドウを調製する工程をいずれも含まない、請求項4乃至6いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
以下の条件(1)~()を満たす成分(A)を含む、粉もの類食品用組成物であって、
前記粉もの類食品が、お好み焼き、たこ焼きおよびチヂミからなる群から選択される1種であって、冷蔵保存または冷凍保存後に再加熱して喫食されるものであり、
粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が5質量%以上45質量%以下となるように前記粉もの類食品に配合される、粉もの類食品用組成物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が75質量%以上100質量%以下
(5)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が40質量%以上100質量%以下
【請求項9】
前記成分(A)の含有量が、前記組成物中、3質量%以上100質量%以下である、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
さらに穀粉、澱粉、山芋粉、増粘剤および調味料からなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
前記粉もの類食品のしっとり感向上のために用いられる、請求項乃至10いずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記粉もの類食品のふっくら感向上のために用いられる、請求項乃至10いずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記粉もの類食品の口溶け向上のために用いられる、請求項乃至10いずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が12質量%以上45質量%以下となるように前記粉もの類食品に配合される、請求項8乃至13いずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
以下の条件(1)~()を満たす成分(A)を粉もの類食品に含有させる、前記粉もの類食品のしっとり感向上の方法であって、
粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が5質量%以上45質量%以下となるように、前記粉体原料および前記成分(A)を配合し、粉もの類食品用生地を調製する工程を含み、
前記粉もの類食品が、お好み焼き、たこ焼きおよびチヂミからなる群から選択される1種であって、冷蔵保存または冷凍保存後に再加熱して喫食されるものである、方法
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が75質量%以上100質量%以下
(5)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が40質量%以上100質量%以下
【請求項16】
前記しっとり感向上が、保存後のしっとり感向上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
以下の条件(1)~()を満たす成分(A)を粉もの類食品に含有させる、前記粉もの類食品のふっくら感向上の方法であって、
粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が5質量%以上45質量%以下となるように、前記粉体原料および前記成分(A)を配合し、粉もの類食品用生地を調製する工程を含み、
前記粉もの類食品が、お好み焼き、たこ焼きおよびチヂミからなる群から選択される1種であって、冷蔵保存または冷凍保存後に再加熱して喫食されるものである、方法
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が75質量%以上100質量%以下
(5)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が40質量%以上100質量%以下
【請求項18】
前記ふっくら感向上が、保存後のふっくら感向上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
以下の条件(1)~()を満たす成分(A)を粉もの類食品に含有させる、前記粉もの類食品の口溶け向上の方法であって、
粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が5質量%以上45質量%以下となるように、前記粉体原料および前記成分(A)を配合し、粉もの類食品用生地を調製する工程を含み、
前記粉もの類食品が、お好み焼き、たこ焼きおよびチヂミからなる群から選択される1種であって、冷蔵保存または冷凍保存後に再加熱して喫食されるものである、方法
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が75質量%以上100質量%以下
(5)目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が40質量%以上100質量%以下
【請求項20】
前記口溶け向上が、保存後の口溶け向上である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
粉もの類食品用生地を調製する前記工程において、前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が12質量%以上45質量%以下となるように、前記粉体原料および前記成分(A)を配合する、請求項15乃至20いずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
粉もの類食品用生地を調製する前記工程が、前記粉体原料および前記成分(A)を含む原材料を混練する工程および前記粉体原料および前記成分(A)を含むドウを調製する工程をいずれも含まない、請求項15乃至21いずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉もの類食品に関する。
【背景技術】
【0002】
粉もの類食品とは一般に、主に小麦粉等の穀粉を原料として焼成等した料理の総称であり、代表的なものにお好み焼き、たこ焼きがある。これら粉もの類食品は、食事や軽食として根強い人気があり、家庭での手作りや外食のみならず、冷凍食品やコンビニエンスストアでのチルド食品としても多くの製品が流通している。
これら粉もの類食品は、ふっくら、しっとりとして口溶けが良いものが好まれ、このような食感を付与するために、例えば山芋が使用されてきた。一方で、山芋を配合した場合、時間経過や冷凍冷蔵保管、電子レンジでの再加熱等で縮みやすく、見た目にもボリュームダウンし、喫食時にもふっくら感が損なわれやすく、さらにアレルゲンであること、比較的高価であるなどの課題がある。
【0003】
特許文献1には、水に対し2重量%~10重量%の増粘剤を配合して比重0.24~0.30g/mlに起泡させた起泡物に、澱粉、および/または穀物粉を含有する未加熱生地中の水割合を55重量%~80重量%(但し増粘剤2重量%~3重量%の場合は55重量%~70重量%)となるように起泡が壊れぬように混合し、適宜お好み焼用の具材等を加え、加熱凝固させる、お好み焼き類の製造方法が開示されている。かかる製造方法によれば、加熱凝固後の生地の食感がソフトであり、かつ口溶けが良いお好み焼き類の製造方法において、アレルゲン成分が少なく、幅広い人に喫食が可能となる品質を、外観等の品質が手作り風であり、特殊な機器を使用せずに工業的に大量生産が可能になるとされている。
【0004】
また、特許文献2には澱粉を75質量%以上含む組成物であって、上記澱粉として、アミロース含量5質量%以上である澱粉を原料として得られた低分子化澱粉を当該組成物中3質量%以上45質量%以下含み、上記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下であって、25℃における当該組成物の冷水膨潤度が7以上20以下であり、当該組成物中の目開き0.5mmの篩上の粒状物の含有量が50質量%以下である組成物が開示されており、該発明によれば、吸水率の高さ、べたつきのなさ、および、ダマになりにくさのバランスに優れる新規な素材を得ることができるとされている。また、たとえば各種食品に配合した際に、優れた食感や良好な作業性を得ることも可能となるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-010620号公報
【文献】国際公開第2014/132534号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を用いても、粉もの類食品のしっとり感、ふっくら感、口溶けが良好で、トロっと感にも優れ、保存した後もこれらの食感低下を抑えられるという点で、なお改善の余地があった。
また、特許文献2では、粉もの類食品に配合した場合に、粉もの類食品の食感を向上させること、保存した後の再加熱後の食感低下を抑制できること、等の手段については、開示も示唆もされていない。
【0007】
本発明においては、しっとり感、ふっくら感、口溶けが良好で、さらに保存後も食感向上された粉もの類食品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者等が鋭意検討したところ、粉もの類食品において、特定の成分を含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下の粉もの類食品、粉もの類食品の製造方法、粉もの類食品用組成物、粉もの類食品のしっとり感向上の方法、粉もの類食品のふっくら感向上の方法、および、粉もの類食品の口溶け向上の方法が提供される。
[1]
粉体原料、および、以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を含む、粉もの類食品。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
[2]
前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下である、[1]に記載の食品。
[3]
前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である[1]または[2]に記載の食品。
[4]
前記粉体原料が穀粉を含む、[1]乃至[3]いずれか1項に記載の食品。
[5]
前記食品が、お好み焼き、たこ焼きおよびチヂミからなる群から選択される1種である、[1]乃至[4]いずれか1項に記載の食品。
[6]
粉体原料、および、以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を含む粉もの類食品の製造方法であって、
前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下となるように、前記粉体原料および前記成分(A)を配合し、粉もの類食品用生地を調製する工程を含む、前記製造方法。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
[7]
前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、[6]に記載の製造方法。
[8]
前記粉もの類食品用生地を、加熱調理する工程をさらに含む、[6]または[7]に記載の製造方法。
[9]
以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を含む、粉もの類食品用組成物。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
[10]
前記成分(A)が、前記組成物中、3質量%以上100質量%以下である、[9]に記載の組成物。
[11]
前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、[9]または[10]に記載の組成物。
[12]
さらに穀粉、澱粉、山芋粉、増粘剤および調味料からなる群から選択される1種または2種以上を含む、[9]乃至[11]いずれか1項に記載の組成物。
[13]
粉もの類食品用生地に用いられる、[9]乃至[12]いずれか1項に記載の組成物。
[14]
前記粉もの類食品のしっとり感向上のために用いられる、[9]乃至[13]いずれか1項に記載の組成物。
[15]
前記粉もの類食品のふっくら感向上のために用いられる、[9]乃至[13]いずれか1項に記載の組成物。
[16]
前記粉もの類食品の口溶け向上のために用いられる、[9]乃至[13]いずれか1項に記載の組成物。
[17]
以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を粉もの類食品に含有させる、前記粉もの類食品のしっとり感向上の方法。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
[18]
前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、[17]に記載の方法。
[19]
前記粉もの類食品が粉体原料を含み、前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下である、[17]または[18]に記載の方法。
[20]
前記しっとり感向上が、保存後のしっとり感向上である、[17]乃至[19]いずれか1項に記載の方法。
[21]
以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を粉もの類食品に含有させる、前記粉もの類食品のふっくら感向上の方法。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
[22]
前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、[21]に記載の方法。
[23]
前記粉もの類食品が粉体原料を含み、前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下である、[21]または[22]に記載の方法。
[24]
前記ふっくら感向上が、保存後のふっくら感向上である、[21]乃至[23]いずれか1項に記載の方法。
[25]
以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を粉もの類食品に含有させる、前記粉もの類食品の口溶け向上の方法。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
[26]
前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、[25]に記載の方法。
[27]
前記粉もの類食品が粉体原料を含み、前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下である、[25]または[26]に記載の方法。
[28]
前記口溶け向上が、保存後の口溶け向上である、[25]乃至[27]いずれか1項に記載の方法。
【0010】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、しっとり感、ふっくら感、口溶けが良好で、さらに保存後も食感向上された粉もの類食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、各成分の具体例を挙げて説明する。なお、各成分はいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本実施形態における粉もの類食品用生地(単に生地ともいう。)とは、ことわりのない限りは加熱前の生地を指す。
【0013】
[1.粉もの類食品]
本実施形態において、粉もの類食品は、粉体原料、および、以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を含む。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、上記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
本実施形態においては、調理直後、ならびに冷蔵保存または冷凍保存後に再加熱しても、しっとり感、ふっくら感、口溶けに優れた粉もの類食品を得ることができる。またさらに具体的には、調理時の成形性あるいは保存後の保形性に優れた粉もの類食品が得られ、さらに具体的には、粉もの類食品を製造する際の作業性を向上することができる。
以下、粉もの類食品の原材料である各成分について説明する。
【0014】
[1-1.成分(A)]
成分(A)中の澱粉の含有量は、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、75質量%以上であり、80質量%以上とすることが好ましく、85質量%以上とすることがさらに好ましい。
また、成分(A)中の澱粉含量の上限に制限はなく、100質量%以下であるが、粉もの類食品の性状等に応じてたとえば99.5質量%以下、99質量%以下としてもよい。
【0015】
また、成分(A)は、上記澱粉として、アミロース含量5質量%以上の澱粉を原料とする低分子化澱粉を特定の割合で含み、低分子化澱粉として特定のピーク分子量のものが用いられる。すなわち、成分(A)中の澱粉が、アミロース含量5質量%以上の澱粉を原料とする低分子化澱粉を成分(A)中に3質量%以上45質量%以下含み、低分子化澱粉のピーク分子量が3×10以上5×10以下である。
【0016】
低分子化澱粉のピーク分子量は、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、3×10以上であり、8×10以上とすることが好ましい。また、低分子化澱粉のピーク分子量は、同様の観点から、5×10以下であり、3×10以下とすることが好ましく、1.5×10以下とすることがさらに好ましい。なお、分解後の澱粉のピーク分子量の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0017】
低分子化澱粉は、その製造安定性に優れる観点から、好ましくは、酸処理澱粉、酸化処理澱粉または酵素処理澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは酸処理澱粉である。
【0018】
上記酸処理の条件は、問わないが、例えば、以下のように処理することができる。
上記アミロース含量5質量%以上の澱粉と水を反応装置に投入した後、さらに酸を投入する。あるいは水に酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的に行う観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理を行う上での澱粉スラリーの濃度を、たとえば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0019】
上記酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0020】
酸処理反応において、たとえば酸処理時の酸濃度は.0.05規定度(N)以上4N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.2N以上3N以下がさらに好ましい。また、反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましい。反応時間は、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0021】
成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、成分(A)全体に対して3質量%以上であり、8質量%以上であることが好ましく、13質量%以上とすることがさらに好ましい。
一方、成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、同様の観点から、成分(A)全体に対して45質量%以下であり、35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0022】
また、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量は、5質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上、さらにより好ましくは55質量%以上、よりいっそう好ましくは65質量%以上である。なお、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0023】
低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、および、タピオカ澱粉から選択される1種または2種以上を用いることが好ましく、ハイアミロースコーンスターチを用いることがより好ましい。ハイアミロースコーンスターチのアミロース含量は、40質量%以上のものが入手可能である。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、より好ましくはアミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである。
【0024】
また、成分(A)の25℃における冷水膨潤度は、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、5以上であり、好ましくは5.5以上であり、さらに好ましくは6以上である。
また、同様の観点から、成分(A)の25℃における冷水膨潤度は20以下であり、好ましくは17以下、さらに好ましくは15以下である。
ここで、成分(A)の25℃における冷水膨潤度は、以下の方法で測定される。
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社製、型番MX-50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾物質量を算出する。
(2)この乾物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃の恒温槽の中でゆるやかに撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプター)し、沈殿層と上澄層に分ける。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とする。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とする。
(5)BをCで割った値を冷水膨潤度とする。
【0025】
成分(A)の、JIS-Z8801-1規格における目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量は30質量%以上100質量%以下であり、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、好ましくは40質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは65質量%以上100質量%以下、よりいっそう好ましくは75質量%以上100質量%以下、さらにまた好ましくは83質量%以上100質量%以下である。
ここで、篩上の含有量および篩下の含有量とは、具体的には、それぞれ、篩上の画分の含有量および篩下の画分の含有量である。
【0026】
また、成分(A)の、JIS-Z8801-1規格の篩における0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量は、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、好ましくは30質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは33質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは35質量%以上100質量%以下、さらにより好ましくは40質量%以上100質量%以下、よりいっそう好ましくは60質量%以上100質量%以下である。
【0027】
また、成分(A)の、JIS-Z8801-1規格の篩における0.15mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量は、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、好ましくは10質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは12質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上100質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以上100質量%以下、よりいっそう好ましくは25質量%以上100質量%以下、さらにまた好ましくは50質量%以上100質量%以下である。
【0028】
また、成分(A)の、JIS-Z8801-1規格の篩における1.0mmの篩の篩下かつ目開き0.5mmの篩の篩上の含有量は、口溶けを向上させる観点から、好ましくは0質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上25質量%以下、さらにより好ましくは0質量%以上20質量%以下、よりいっそう好ましくは0質量%以上10質量%以下である。また、成分(A)の、JIS-Z8801-1規格の篩における1.0mmの篩の篩下かつ目開き0.5mmの篩の篩上の含有量は、0質量%であってもよい。
【0029】
本実施形態において、成分(A)中の上記低分子化澱粉以外の澱粉成分としては、様々な澱粉を使用することができる。具体的には、用途に応じて一般に市販されている澱粉、たとえば食品用の澱粉であれば、種類を問わないが、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉などの澱粉;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉などから、1種以上を適宜選ぶことができる。好ましくは、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上の澱粉を含有し、より好ましくは、コーンスターチを含有する。
【0030】
また、本実施形態における成分(A)には、澱粉以外の成分を配合することもできる。
澱粉以外の成分の具体例としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウムなどの不溶性塩や、色素が挙げられ、不溶性塩を配合することが好ましく、不溶性塩の配合量は、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
次に、成分(A)の製造方法を説明する。成分(A)の製造方法は、たとえば、以下の工程を含む。
(低分子化澱粉の調製工程)アミロース含量5質量%以上の原料澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×10以上5×10以下の低分子化澱粉を得る工程。
(造粒工程)原料に低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ低分子化澱粉と低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、原料を加熱糊化して造粒する工程。
【0032】
低分子化澱粉の調製工程は、アミロース含量5質量%以上の澱粉を分解して低分子化澱粉とする工程である。ここでいう分解とは、澱粉の低分子化を伴う分解をいい、代表的な分解方法として酸処理や酸化処理、酵素処理による分解が挙げられる。この中でも、分解速度やコスト、分解反応の再現性の観点から、好ましくは酸処理である。
【0033】
また、造粒工程には、澱粉の造粒に使用されている一般的な方法を用いることができるが、所定の冷水膨潤度とする点で、澱粉の加熱糊化に使用されている一般的な方法を用いることが好ましい。具体的には、ドラムドライヤー、ジェットクッカー、エクストルーダー、スプレードライヤーなどの機械を使用した方法が知られているが、本実施形態において、冷水膨潤度が上述した特定の条件を満たす成分(A)をより確実に得る観点から、エクストルーダーやドラムドライヤーによる加熱糊化が好ましく、エクストルーダーがより好ましい。
エクストルーダー処理する場合は通常、澱粉を含む原料に加水して水分含量を10~60質量%程度に調整した後、たとえばバレル温度30~200℃、出口温度80~180℃、スクリュー回転数100~1,000rpm、熱処理時間5~60秒の条件で、加熱膨化させる。
【0034】
本実施形態において、たとえば上記特定の原料を加熱糊化する工程により、冷水膨潤度が特定の条件を満たす成分(A)を得ることができる。また、加熱糊化して得られた造粒物を、必要に応じて、粉砕し、篩い分けをし、大きさを適宜調整して、成分(A)を得るとよい。
【0035】
以上により得られる成分(A)は、低分子化澱粉を含む澱粉組成物であって、澱粉含量、冷水膨潤度、および、低分子化澱粉のピーク分子量がいずれも特定の条件を満たす構成となっているため、粉もの類食品のしっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させることができる。
本実施形態における粉もの類食品中、粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量は、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、好ましくは3質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上55質量%以下、さらに好ましくは5.7質量%以上50質量%以下、さらにより好ましくは8質量%以上45質量%以下、よりいっそう好ましくは11.4質量%以上40質量%以下、さらにまた好ましくは12質量%以上37.2質量%以下である。同様の観点から、粉もの類食品中、粉体原料と成分(A)の含有量の合計に対する成分(A)の含有量は、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは5.7質量%以上、さらにより好ましくは8質量%以上、よりいっそう好ましくは11.4質量%以上、さらにまた好ましくは12質量%であり、また、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは45質量%以下、よりいっそう好ましくは40質量%以下、さらにまた好ましくは37.2質量%以下である。
また、本実施形態における粉もの類食品中の、粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量は、冷蔵ののち再加熱した際のふっくら感を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上55質量%以下、さらに好ましくは5.7質量%以上50質量%以下、さらにより好ましくは8質量%以上45質量%以下、よりいっそう好ましくは11.4質量%以上40質量%以下、殊更好ましくは12質量%以上37.2質量%以下、さらにまた好ましくは12質量%以上35質量%以下である。同様の観点から、粉もの類食品中、粉体原料と成分(A)の含有量の合計に対する成分(A)の含有量は、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上さらに好ましくは5.7質量%以上、さらにより好ましくは8質量%以上、よりいっそう好ましくは11.4質量%以上、さらにまた好ましくは12質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは45質量%以下、よりいっそう好ましくは40質量%以下、殊更好ましくは37.2質量%以下、さらにまた好ましくは35質量%以下である。
【0036】
本実施形態における粉もの類食品中、成分(A)の含有量は、生地全量に対して、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1.2質量%以上20質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以上20質量%以下、よりいっそう好ましくは3質量%以上16質量%以下、さらにまた好ましくは4質量%以上12質量%以下である。同様の観点から、粉もの類食品中の成分(A)の含有量は、生地全量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは1.2質量%以上、さらにより好ましくは2質量%以上、よりいっそう好ましくは3質量%以上、さらにまた好ましくは4質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは16質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
また、冷蔵の後再加熱した際のふっくら感を向上させる観点から、粉もの類食品中、成分(A)の含有量は、生地全量に対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上20質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以上15質量%以下、よりいっそう好ましくは4.3質量%以上11.5質量%以下、さらにまた好ましくは4.5質量%以上10質量%以下である。同様の観点から、粉もの類食品中の成分(A)の含有量は、生地全量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは3質量%、よりいっそう好ましくは4.3質量%以上、さらにまた好ましくは4.5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは11.5質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下である。
【0037】
[1-2.粉体原料]
次に粉体原料について説明する。粉体原料は、粉もの類食品用生地を調製する際に粉状の形態で配合される原材料である。ただし成分(A)は粉体原料には含まない。また、粉体成分は、具体的には、成分(A)とは独立して配合される成分である。
粉体原料の具体例として、小麦粉、米粉、ライ麦粉、大豆粉(たとえば脱脂大豆粉)等の穀粉;山芋粉;グルテン、大豆蛋白質等の蛋白質;未加工澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、α化澱粉、酸処理澱粉、酸化処理澱粉、酵素処理澱粉、難消化性澱粉等の澱粉;デキストリン等の多糖類;砂糖、果糖、ブドウ糖、異性化糖、転化糖、オリゴ糖、トレハロース、糖アルコール等の糖類;アスパルテーム、アセスルファムカリウム等の粉末状の甘味料;脱脂粉乳、全脂粉乳、チーズパウダー等の乳類;食塩、粉末醤油、顆粒だし、粉末だし、昆布粉、昆布茶の素、煮干し粉、鰹節粉、グルタミン酸ナトリウム等の調味料;ふすま、セルロース、難消化性デキストリン等の食物繊維;卵白粉、全卵粉などの卵類;グアーガム、アルギン酸エステル等の増粘剤;膨張剤等が挙げられる。
また、粉もの類食品は、粉体原料として、好ましくは穀粉、澱粉、山芋粉、増粘剤および調味料から選ばれる1種または2種以上を含み、より好ましくは穀粉、澱粉および調味料から選ばれる1種または2種以上を含み、さらに好ましくは穀粉および澱粉から選ばれる1種または2種以上を含み、さらにより好ましくは穀粉を含み、よりいっそう好ましくは小麦粉および米粉から選ばれる1種または2種以上を含み、さらにまた好ましくは小麦粉を含む。
【0038】
[1-3.その他の原材料]
本実施形態において、粉もの類食品は、これら粉体原料および成分(A)以外の原材料を含むことができる。そのうち、粉もの類食品用生地に含まれる原材料の具体例としては、水;だし汁、醤油、酒、みりんなどの液体調味料;全卵、卵黄、卵白などの卵類;が挙げられる。これらをはじめとする液体成分を、粉もの類食品が含むことが好ましい。
また、粉もの類食品は上述した生地に含まれる原材料以外に、具材を含むことができる。具材は、粉もの類食品用生地を調製したのちに加えられるもので、具体例としては、キャベツ、ネギ等の野菜;タコ、イカなどの魚介類;豚肉、牛肉などの肉類;掛油や敷油等の油脂;紅ショウガ;揚げ玉;麺類;チーズ等が挙げられる。また、トッピングとして目玉焼き等の卵を乗せる場合もあるが、この場合の卵は粉もの類食品用生地の原材料には含まれない。
【0039】
[1-4.粉もの類食品の種類]
本実施形態において得られる粉もの類食品としては、広島風お好み焼き、大阪焼き等のお好み焼き類;たこ焼き;チヂミ;明石焼き等が挙げられ、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、好ましくはお好み焼き類、たこ焼きおよびチヂミからなる群から選択される1種であり、より好ましくはお好み焼き類およびたこ焼から選択される1種である。
また、トロっと感を向上させる点で、たこ焼きが好ましい。
粉もの類食品は、具体的には、麺帯利用食品を含まない。また、粉物類食品は、好ましくは菓子類を含まない。
【0040】
本実施形態における食品の焼成前生地の水分量は、お好み焼きの場合、具材を除いた生地全量中、たとえば50質量%以上85質量%以下であり、好ましくは60質量%以上80質量%以下である。また、お好み焼きの焼成前生地の水分量は、しっとり感、ふっくら感または口溶けを向上する観点から、具材を除いた生地全量中、たとえば50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、また、たとえば85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下である。
また、本実施形態における食品の焼成前生地の水分量は、たこ焼きの場合、生地全量中、たとえば50質量%以上95質量%以下であり、好ましくは70質量%以上90質量%以下である。また、たこ焼きの焼成前生地の水分量は、しっとり感、ふっくら感または口溶けを向上する観点から、生地全量中、たとえば50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、また、たとえば95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。
ここで、食品の焼成前生地の水分量には、粉体原料自体に含まれる水分量は含まない。
【0041】
本実施形態における粉もの類食品中、成分(A)の含有量は、食品全量に対して、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上18質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以上18質量%以下、さらに好ましくは1.7質量%以上18質量%以下、さらにより好ましくは3質量%以上14質量%以下、よりいっそう好ましくは5質量%以上10質量%以下である。同様の観点から、粉もの類食品中の成分(A)の含有量は、食品全量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上、さらに好ましくは1.7質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上、よりいっそう好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
また、冷蔵後再加熱した際のふっくら感を向上させる観点から、粉もの類食品中、成分(A)の含有量は、食品全量に対して、好ましくは0.5質量%以上18質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以上18質量%以下、さらに好ましくは1.7質量%以上18質量%以下、さらにより好ましくは1.7質量%以上15質量%以下、よりいっそう好ましくは1.7質量%以上6質量%以下、さらにまた好ましくは3質量%以上6質量%以下である。同様の観点から、粉もの類食品中の成分(A)の含有量は、食品全量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは0.8質量%以上、さらに好ましくは1.7質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上であり、また、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。
【0042】
本実施形態における粉もの類食品中、粉体原料と成分(A)の合計の含有量は、食品全量に対して、しっとり感、ふっくら感、口溶けを向上させる観点から、好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは12質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは14質量%以上30質量%以下、さらにより好ましくは16質量%以上28質量%以下である。同様の観点から、粉もの類食品中の粉体原料と成分(A)の含有量の合計は、食品全量に対して、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%、さらに好ましくは14質量%以上、さらにより好ましくは16質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは28質量%以下である。
【0043】
[2.粉もの類食品の製造方法]
次に、粉もの類食品の製造方法について説明する。
【0044】
[2-1.粉もの類食品用生地調製工程]
本実施形態における粉もの類食品の製造方法は、粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する上記成分(A)の含有量が、たとえば3質量%以上60質量%以下となるように、上記粉体原料および上記成分(A)を配合し、粉もの類食品用生地を調製する工程を含む。成分(A)については、[1.粉もの類食品]の項で述べたとおりである。
粉もの類食品用生地を調製する工程において、成分(A)を添加するタイミングは限定されず、成分(A)およびそれ以外の原材料をすべて同時に混合してもよいし、成分(A)と粉体原料を混合した後に、その他の原材料と共に混合してもよいが、均一な生地を得る観点から、成分(A)と粉体原料を予め混合することが好ましい。たとえばお好み焼きの場合には、成分(A)と粉体原料を混ぜ合わせ、水などの液体や卵を添加してバッター状の粉もの類食品用生地を調製する。粉もの類食品が具材を含む場合は、粉もの類食品用生地を調製する工程の後、具材を添加する工程を含んでもよい。
また、粉もの類食品用生地調製工程は、具体的には、粉体原料、成分(A)および液体原料を混合する工程、または、粉体原料、成分(A)および液体を含む分散液(バッター)を調製する工程を含む。一方、粉もの類食品用生地調製工程は、具体的には、粉体原料および成分(A)を含む原材料を混練する工程および粉体原料および成分(A)を含むドウを調製する工程をいずれも含まない。
【0045】
本実施形態において、粉もの類食品の製造工程は、さらに以下の工程を含んでもよい。
(加熱調理工程)
粉もの類食品用生地を調製する工程の後、生地(場合によっては具材を含む。)を加熱調理して食品を得る工程、ならびに、
(保存工程)
粉もの類食品用生地を加熱調理する工程の後に、得られた粉もの類食品を温蔵保存、室温保存、冷蔵保存および冷凍保存からなる群から選択される1種または2種以上で保存する工程
【0046】
[2-2.加熱調理工程]
加熱調理の具体例として、焼成、蒸し、油ちょう等が挙げられ、焼成および蒸しから選択される1種または2種の加熱調理が好ましく、より好ましくは焼成である。焼成の具体例としては、鉄板による焼成、コンベクション加熱等が挙げられ、鉄板、およびスチームコンベクション加熱から選択される1種または2種の焼成が好ましい。また、たこ焼きや大阪焼き等のように、型を使って焼成することも可能である。加熱調理の温度は、好ましくは150~230℃、より好ましくは170~230℃である。時間は好ましくは2~50分であり、より好ましくは4~40分であり、さらに好ましくは4~30分である。
【0047】
[2-3.保存工程]
また、本実施形態において、粉もの類食品は、加熱調理後すぐに喫食されてもよいし、保存工程ののち喫食されてもよい。
保存工程ののち喫食される場合、保存は、温蔵保存、室温保存、冷蔵保存および冷凍保存からなる群から選択される1種または2種以上であり、冷蔵保存および冷凍保存からなる群から選択される1種または2種以上である。また、保存の温度は具体的には、好ましくは-50℃以上90℃以下であり、より好ましくは-50℃以上80℃以下、さらに好ましくは-30℃以上30℃以下、さらにより好ましくは-30℃以上10℃以下である。また、保存後の食感をより好ましいものとする観点から、保存の温度は、好ましくは-50℃以上であり、より好ましくは-30℃以上であり、また、好ましくは90℃以下であり、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは30℃以下、さらにより好ましくは10℃以下である。
また、本実施形態における食品は、保存工程の後、電子レンジまたはスチームコンベクションオーブン等で再加熱後、喫食されるものであってもよい。
【0048】
本実施形態において、粉もの類食品用生地を調製する工程では、成分(A)を含むため、加水量を増やしても適正な生地粘度となり、加熱中に生地が流れ出にくく、成形性に優れる。
さらに、生地を加熱調理する工程においては、成分(A)を含むため、加熱調理時間を短縮することも可能である。たとえば加水を増やした場合、成分(A)を含まないと加熱調理時間が延長する傾向があるのに対し、成分(A)を含むことで加熱調理時間が延長せず、むしろ短縮することもできる。
また、本実施形態の粉もの類食品は、成分(A)を含むため、保存工程や再加熱を経た場合にも焼成後生地がダレず、保形性にも優れる。
【0049】
[3.粉もの類食品用組成物]
本実施形態においては成分(A)を含む、粉もの類食品用組成物が提供される。成分(A)については、[1.粉もの類食品]の項で述べたとおりである。
粉もの類食品用組成物は、成分(A)のみを含んでもよく、あるいは成分(A)と粉もの類食品の原材料の一部を混合して粉もの類食品用組成物を調製してもよい。粉もの類食品用組成物は、成分(A)以外の成分、すなわち、成分(A)とは独立して配合される成分として、好ましくは穀粉、澱粉、山芋粉、増粘剤および調味料から選ばれる1種または2種以上を含み、より好ましくは穀粉、澱粉および調味料から選ばれる1種または2種以上を含み、さらに好ましくは穀粉および澱粉から選ばれる1種または2種を含む。
粉もの類食品用組成物中の、成分(A)の含有量は、好ましくは3質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上100質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以上90質量%以下である。粉もの類食品に対する効果をより安定的に得る観点から、粉もの類食品用組成物中の、成分(A)の含有量は、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
ここで、粉もの類食品用組成物中の成分(A)の含有量は、粉もの類食品用組成物全体に対する成分(A)の含有量である。
また、本実施形態の粉もの類食品用組成物の性状は、好ましくは粉末状である。
【0050】
本実施形態の粉もの類食品用組成物は、粉もの類食品用生地に好適に用いることができる。また、本実施形態の粉もの類食品用組成物は、粉もの類食品のしっとり感、ふっくら感および口溶け向上のために用いることができる。
【0051】
本実施形態において、成分(A)を含有させることにより得られる粉もの類食品は、上述の成分(A)を含むため、しっとり感を向上させることができる。上記粉もの類食品は好ましくは粉体原料を含み、粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量が、好ましくは3質量%以上60質量%以下である。
【0052】
また上記しっとり感を向上させることができる粉もの類食品における成分(A)は、目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0053】
また上記しっとり感向上は、好ましくは保存後のしっとり感向上である。
【0054】
本実施形態において、成分(A)を含有させることにより得られる粉もの類食品は、上述の成分(A)を含むため、ふっくら感を向上させることができる。上記粉もの類食品は好ましくは粉体原料を含み、粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量が、好ましくは3質量%以上60質量%以下である。
【0055】
また上記ふっくら感を向上させることができる粉もの類食品における成分(A)は、目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0056】
また上記ふっくら感向上は、好ましくは保存後のふっくら感向上である。
【0057】
本実施形態において、成分(A)を含有させることにより得られる粉もの類食品は、上述の成分(A)を含むため、口溶けを向上させることができる。上記粉もの類食品は好ましくは粉体原料を含み、粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量が、好ましくは3質量%以上60質量%以下である。
【0058】
また上記口溶けを向上させることができる粉もの類食品における成分(A)は、目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0059】
また上記口溶け向上は、好ましくは保存後の口溶け向上である。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 粉体原料、および、以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を含む、粉もの類食品。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10 以上5×10 以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
2. 前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下である、1.に記載の食品。
3. 前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、1.または2.に記載の食品。
4. 前記粉体原料が穀粉を含む、1.乃至3.いずれか1つに記載の食品。
5. 前記食品が、お好み焼き、たこ焼きおよびチヂミからなる群から選択される1種である、1.乃至4.いずれか1つに記載の食品。
6. 粉体原料、および、以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を含む、粉もの類食品の製造方法であって、
前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下となるように、前記粉体原料および前記成分(A)を配合し、粉もの類食品用生地を調製する工程を含む、前記製造方法。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10 以上5×10 以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
7. 前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、6.に記載の製造方法。
8. 前記生地を、加熱調理する工程をさらに含む、6.または7.に記載の製造方法。
9. 以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を含む、粉もの類食品用組成物。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10 以上5×10 以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
10. 前記成分(A)が、前記組成物中、3質量%以上100質量%以下である、9.に記載の組成物。
11. 前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、9.または10.に記載の組成物。
12. さらに穀粉、澱粉、山芋粉、増粘剤および調味料からなる群から選択される1種または2種以上を含む、9.乃至11.いずれか1つに記載の組成物。
13. 粉もの類食品用生地に用いられる、9.乃至12.いずれか1つに記載の組成物。
14. 前記粉もの類食品のしっとり感向上のために用いられる、9.乃至13.いずれか1つに記載の組成物。
15. 前記粉もの類食品のふっくら感向上のために用いられる、9.乃至13.いずれか1つに記載の組成物。
16. 前記粉もの類食品の口溶け向上のために用いられる、9.乃至13.いずれか1つに記載の組成物。
17. 以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を粉もの類食品に含有させる、前記粉もの類食品のしっとり感向上の方法。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10 以上5×10 以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
18. 前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、17.に記載の方法。
19. 前記粉もの類食品が粉体原料を含み、前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下である、17.または18.に記載の方法。
20. 前記しっとり感向上が、保存後のしっとり感向上である、17.乃至19.いずれか1つに記載の方法。
21. 以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を粉もの類食品に含有させる、前記粉もの類食品のふっくら感向上の方法。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10 以上5×10 以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
22. 前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、21.に記載の方法。
23. 前記粉もの類食品が粉体原料を含み、前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下である、21.または22.に記載の方法。
24. 前記ふっくら感向上が、保存後のふっくら感向上である、21.乃至23.いずれか1つに記載の方法。
25. 以下の条件(1)~(4)を満たす成分(A)を粉もの類食品に含有させる、前記粉もの類食品の口溶け向上の方法。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10 以上5×10 以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き0.5mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下
26. 前記成分(A)の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の含有量が30質量%以上100質量%以下である、25.に記載の方法。
27. 前記粉もの類食品が粉体原料を含み、前記粉体原料と前記成分(A)の合計の含有量に対する前記成分(A)の含有量が3質量%以上60質量%以下である、25.または26.に記載の方法。
28. 前記口溶け向上が、保存後の口溶け向上である、25.乃至27.いずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0060】
(原材料)
以下の例では、原材料として、主に以下のものを使用した。
(成分A)
澱粉組成物1~3:後述する製造例2の方法で製造された澱粉組成物
(粉体原料)
薄力粉1:フラワー、日清製粉株式会社製
薄力粉2:ハート、日本製粉株式会社製
顆粒だし:ほんだし、味の素株式会社製
昆布茶の素:こんぶ茶、玉露園食品工業株式会社製
アセチル化タピオカ澱粉:アクトボディーA700、株式会社J-オイルミルズ製
α化ハイアミロースコーンスターチ:ジェルコールAH-F、株式会社J-オイルミルズ製
酸処理澱粉:ジェルコールR-100、株式会社J-オイルミルズ製
脱脂大豆粉:ニッカミルキーS、株式会社J-オイルミルズ製
(その他の原材料)
だし汁:上記顆粒だし3gを50gの水で希釈し、だし汁として使用した。
【0061】
(製造例1)酸処理澱粉の製造
澱粉組成物1~3の原料となる低分子化澱粉として酸処理澱粉を製造した。
(酸処理ハイアミロースコーンスターチの製造方法)
ハイアミロースコーンスターチ(株式会社J-オイルミルズ製、HS-7、アミロース含量70質量%)を水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を後述の方法で測定したところ、ピーク分子量は1.2×10であった。
【0062】
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー株式会社製HPLCユニットを使用しておこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で、目開き0.15mm篩下の画分を回収した。この回収画分を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過を行い、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー株式会社製)2本
流速:0.5mL/min
移動相:5mM 硝酸ナトリウム含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー株式会社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。
検量線には、分子量既知のプルラン(Shodex Standard P-82、昭和電工株式会社製)を使用した。
【0063】
(冷水膨潤度の測定方法)
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、型番MX-50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃の恒温槽の中でゆるやかに撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプター)し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
(5)BをCで割った値を冷水膨潤度とした。
【0064】
(製造例2)澱粉組成物1~3の製造
コーンスターチ(「J-オイルミルズ コーンスターチY」、株式会社J-オイルミルズ製)79質量%、上述の方法で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチ20質量%、および、炭酸カルシウム1質量%を充分に均一になるまで袋内で混合した。2軸エクストルーダー(幸和工業社製KEI-45)を用いて、混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。
原料供給:450g/分
加水:17質量%
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃および100℃
出口温度:100~110℃
スクリューの回転数250rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られた加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を10質量%に調整した。
次いで、乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けした。篩分けした加熱糊化物を、表1の配合割合で混合し、澱粉組成物1~3を調製した。澱粉組成物1~3の25℃における冷水膨潤度を前述の方法で測定した値を表1に合わせて示す。
【0065】
【表1】
【0066】
(B型粘度計による生地粘度の測定方法)
表3および表4に示した本実施例の生地について、生地粘度を測定した。ただし、表3については原材料のうち、揚げ玉とキャベツを除いて調製した生地を用いた。
調製した生地の300mLを300mLトールビーカー(IWAKI製、PYLEX)に移して25℃における粘度を測定した。B型粘度計(東京計器株式会社製、BM型)60rpmで60回転目の粘度を測定した。ただし、表3の生地はローターNo.3、表4の生地はローターNo.1を用いて測定した。
【0067】
(実験1)
(お好み焼きの調製)
表3に示す配合で、下記の製造方法により、各例のお好み焼きを調製した。
【0068】
(お好み焼きの製造方法)
1.キャベツ千切り、卵、揚げ玉を除く原材料をすべてボールに入れ、ハンドミキサー(IWATANI製、IMX-610)で強度1にて30秒間良く混ぜた。
2.上記1.に卵を加えて軽く混ぜ、生地を得た。
3.上記2.で得た生地に、キャベツ千切り、揚げ玉を加えてさっくりと混ぜ合わせた。
4.ホットプレート(ZOJIRUSHI、EA-DD10型)を200℃まで熱して薄く油を引いた。そこに8cmセルクルを置き、セルクル内に生地を100gずつ流し込み、約2cmの高さになるよう成形した。セルクルはすぐに外した。
5.3分間焼いたらひっくり返し、蓋をしてさらに3分蒸し焼きにし、お好み焼きを得た。
6.得られた各例のお好み焼きのうち、一部は粗熱を取って食感評価を行い(焼成直後評価)、一部は4℃の冷蔵庫で2日間保存したのち、2枚ずつ皿に載せ、電子レンジ700Wで1分30秒加熱し、食感評価を行った(冷蔵再加熱後評価)。また、他の一部は-30℃の冷凍庫で2日間保存したのち、2枚ずつ皿に載せ、電子レンジ700Wで3分間加熱し、食感評価を行った(冷蔵再加熱後評価)。
【0069】
(成形性評価)
上記(お好み焼きの製造方法)の5.で得られたお好み焼きのうち各例1枚を、最も厚さのある中心を通るよう半分にカットし、断面の厚さをノギスで測定した。
【0070】
(調理歩留まり)
焼成後の各例のお好み焼きの質量を測定し、以下の式で調理歩留まりを算出した。
調理歩留まり(質量%)=焼成後食品質量/焼成前生地および具材の合計質量×100
【0071】
得られたお好み焼きの焼成直後、冷蔵保存したあと再加熱したもの、冷凍保存したあと再加熱したものについて、しっとり感、ふっくら感、口溶けを、表2に示した評価基準でパネラー4名が評価し、各評点の平均値を算出した。
しっとり感、ふっくら感およびトロッと感については、焼成直後評価が3.0以上であり、かつ、冷蔵再加熱後評価および冷蔵再加熱後評価がいずれも2点超であるものを合格とした。
口溶けについては、焼成直後評価が2.5以上であり、かつ、冷蔵再加熱後評価および冷蔵再加熱後評価がいずれも2点超であるものを合格とした。
評価結果を表3に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表3より、各実施例で得られたお好み焼きは、焼成直後、冷蔵保存した後に再加熱した場合、冷凍保存した後に再加熱した場合のいずれにおいても、比較例1のお好み焼きに比べ、しっとり感、ふっくら感、口溶けにおいて優れていた。
また、実施例1-2および1-3のお好み焼きを冷蔵保存した後に、再加熱せず食した場合、対照例1および比較例1のお好み焼きに比べ、しっとり感、ふっくら感、口溶けにおいて優れていた。
さらに、実施例1-3および実施例1-4は比較例1に比べ、生地中水分量が10質量%以上高いにもかかわらず、生地の粘度は比較例1とほぼ同等であった。また、対照例1では山芋を配合しているため、生地作製の際、混合して均一にするのに手間がかかるのに比べ、各実施例の生地は、非常に混合しやすく、作業性に優れていた。さらに各実施例はいずれも対照例1や比較例1と比べ、成形性に優れていた。
粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量((A/A+X))は、焼成直後のしっとり感の観点からは、5.7質量%以上37.2質量%以下で良好であり、11.4質量%以上37.2質量%以下でより良好であり、22.9質量%以上37.2質量%以下でさらに良好であった。
冷蔵再加熱後のしっとり感の観点からは、((A/A+X))は5.7質量%以上37.2質量%以下で良好であり、11.4質量%以上37.2質量%以下でより良好であり、22.9質量%以上37.2質量%以下でさらに良好であった。
冷凍再加熱後のしっとり感の観点からは、((A/A+X))は5.7質量%以上37.2質量%以下で良好であり、11.4質量%以上37.2質量%以下でより良好であり、22.9質量%以上37.2質量%以下でさらに良好であった。
粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量((A/A+X))は、焼成直後のふっくら感の観点からは、5.7質量%以上37.2質量%以下で良好であり、22.9質量%以上37.2質量%以下でより良好であった。
冷蔵再加熱後のふっくら感の観点からは、((A/A+X))は5.7質量%以上37.2質量%以下で良好であり、11.4質量%以上37.2質量%以下でより良好であり、11.4質量%以上22.9質量%以下でさらに良好であった。
冷凍再加熱後のふっくら感の観点からは、((A/A+X))は5.7質量%以上37.2質量%以下で良好であり、11.4質量%以上37.2質量%以下でより良好であり、22.9質量%以上37.2質量%以下でさらに良好であった。
粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量((A/A+X))は、焼成直後の口溶けの観点からは、5.7質量%以上37.2質量%以下で良好であり、11.4質量%以上37.2質量%以下でより良好であり、22.9質量%以上37.2質量%以下でさらに良好であった。
冷蔵再加熱後の口溶けの観点からは、((A/A+X))は5.7質量%以上37.2質量%以下で良好であり、11.4質量%以上37.2質量%以下でより良好であり、22.9質量%以上37.2質量%以下でさらに良好であった。
冷凍再加熱後の口溶けの観点からは、((A/A+X))は5.7質量%以上37.2質量%以下で良好であり、22.9質量%以上37.2質量%以下でより良好であった。
また、焼成前の生地中水分量は、お好み焼きの場合、生地全量中52.5質量%以上64.8質量以下の時しっとり感が良好であり、60.2質量%以上64.8質量%の時、さらに良好であった。
成分(A)の0.5mm篩下、0.038mm篩上の含有量が80.7質量%以上95.8質量%以下の場合、しっとり感、ふっくら感、口溶けが良好であった。
また成分(A)の0.25mm篩下、0.038mm篩上の含有量が38.7質量%以上95.8質量%以下の場合、しっとり感、ふっくら感、口溶けが良好であった。
またさらに成分(A)の粒度分布は、0.15mm篩下、0.038mm篩上の含有量が23.7質量%以上59.4質量%以下の場合、しっとり感、ふっくら感、口溶けが良好であった。
【0075】
(実験2)
(たこ焼きの調製)
表4に示す配合で、下記の製造方法により、各例のたこ焼きを調製した。
【0076】
(たこ焼きの製造方法)
1.薄力粉および澱粉組成物をボールに入れ泡立て器で混ぜダマを無くし、粉もの類食品用組成物を得た。また、比較例は、小麦粉のみをボールに入れて泡立て器で混ぜた。
2.上記1.に冷水を加えて良く混ぜ合わせた。
3.上記2.に顆粒だし、昆布茶の素、溶いた卵を加えて混ぜ合わせ、生地を得た。
4.付属品のたこ焼きプレートをセットしたホットプレート(ZOJIRUSHI製、EA-GV35)の12穴に油20gをひいて、200℃に熱して生地を300g投入し、刻んだタコ30g、紅ショウガ10g、青ネギ10g、揚げ玉10gを振りかけた。
5.ひっくり返しながら焼成し、たこ焼きを得た。上記作業を各例ごとに3回行い各例36個のたこ焼きを作製した。
6.得られた各例のたこ焼きは粗熱を取った後に、12個はすぐに官能評価を行い(焼成直後評価)、12個は4℃の冷蔵庫で1時間保存したのち、皿に載せ、電子レンジ1500Wで1分加熱し、官能評価を行った(冷蔵再加熱後評価)。また、12個は-18℃の冷凍庫で7日間保存したのち、皿に載せ、1500Wで1分30秒加熱し、官能評価を行った(冷凍再加熱後評価)。
【0077】
(調理歩留まり)
焼成後の各例のたこ焼き12個の質量を測定し、以下の式で調理歩留まりを算出した。
調理歩留まり(質量%)=焼成後食品質量/焼成前生地および具材の合計質量×100
【0078】
得られたたこ焼きの焼成直後、冷蔵保存したあと再加熱したもの、冷凍保存したあと再加熱したものについて、しっとり感、ふっくら感、口溶け、トロッと感を、表2に示した評価基準でパネラー2名が評価し、評点の平均値を算出した。また、目視にてパネラーが保形性を評価した。さらに、焼成のしやすさ(作業性)について、作業者1名が評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
表4より、各実施例で得られたたこ焼きは、焼成直後、冷蔵保存したあと再加熱した場合、冷凍保存したあと再加熱した場合いずれにおいても、各比較例のたこ焼きに比べ、しっとり感、ふっくら感、口溶け、トロっと感において同等もしくは優れていた。また、焼成時の作業性、再加熱後の保形性にも優れていた。
ここで、比較例2-2は、通常のたこ焼き用生地としては加水が多く、性能としては不十分であったが、実施例2-1と加水量をそろえるために作製した。
また、各実施例は各比較例に比べ、生地中水分量に大きな差はなかったが、生地の粘度は各比較例より高かった。
作業性の観点からは、比較例2-1は10分程度の焼成時間を要したのに対し、粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量が12.0質量%以上13.7質量%以下であるたこ焼き生地(実施例2-1、2-2)は、焼成時間が7分ほどと短く、作業性が良好であった。一方、比較例2-2は、比較例2-1よりも長い焼成時間を要した。
保形性の観点からは、粉体原料と成分(A)の合計の含有量に対する成分(A)の含有量が12.0質量%以上13.7質量%以下であるたこ焼き生地(実施例2-1、2-2)は、冷蔵および冷凍後再加熱した場合に、焼成直後と形の変化が最も少なく、良好な保形性を示した。一方、比較例では、冷蔵および冷凍後再加熱した場合に、たこ焼きがダレてしまい、保形性が劣っていた。
【0081】
(粉もの類食品用組成物の調製例1)
アセチル化タピオカ澱粉100g、澱粉組成物3を100g混合し、本例の組成物を得た。
【0082】
(実験3)
(たこ焼きの調製2)
表5に示す配合としたことと、薄力粉、澱粉組成物、および澱粉(実施例3-1はさらに脱脂大豆粉)をボールに入れ泡立て器で混ぜ、粉もの類食品用組成物を得たこと以外は、実験2と同じ製造方法により、各例のたこ焼きを調製した。
【0083】
【表5】
【0084】
表5の配合で得られた本発明のたこ焼きはいずれも、焼成後の保形性、しっとり感、ふっくら感、口溶け、トロッと感に優れ、さらに焼成のし易さの点で作業性も良好であった。
【0085】
この出願は、2019年5月10日に出願された日本出願特願2019-090185号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。