(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20241029BHJP
H10K 30/30 20230101ALI20241029BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20241029BHJP
H10K 85/20 20230101ALI20241029BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241029BHJP
H10K 101/00 20230101ALN20241029BHJP
【FI】
H10K30/60
H10K30/30
H10K85/10
H10K85/20
H10K85/60
H10K101:00
(21)【出願番号】P 2022562877
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2021085841
(87)【国際公開番号】W WO2022129137
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】カムテカー,キーラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ソフィーアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコビ-グロス,ニール
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/109825(WO,A2)
【文献】特表2019-533044(JP,A)
【文献】国際公開第2020/109823(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/137354(WO,A1)
【文献】Muhammad Ans et al.,"Opto-electronic properties of non-fullerene fused-undecacyclic electron acceptors for organic solar cells",Computational Materials Science,2019年,Vol.159,pp.150-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 10/00-99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子供与体及び電子受容体を含む組成物であって、前記電子受容体が、式(I)の化合物であって、
EAG-EDG-EAG(I)
(I)
式中、EDGが、式(II)の電子供与性基であり、各EAGが、独立して、式(III
a)の電子受容性基であり、
【化1】
【化2】
各Xが、独立して、O又はSであり、
各Yが、独立して、O、S、Se、NR
8、又はC(R
9)
2であり、R
8及びR
9が、独立して、各出現時において、H又は置換基から選択され、
Ar
3及びAr
4が、
各々独立して、
チオフェン、フラン、チエノチオフェン、フロフラン、チエノフラン、ベンゾチオフェン、及びベンゾフランから選択され、
R
1及びR
2が、独立して、各出現時において、置換基であり、
R
3~R
6が、各々独立して、H又は置換基であり、
Z
1が、直接結合であるか、又はZ
1が、置換基R
4とともにAr
1を形成し、Ar
1が、単環式若しくは多環式芳香族
基又はヘテロ芳香族基であり、
Z
2が、直接結合であるか、又はZ
2が、置換基R
5とともにAr
2を形成し、Ar
2が、単環式若しくは多環式芳香族
基又はヘテロ芳香族基であり、
pが、0、1、2、又は3であり、
qが、0、1、2、又は3であり、
R
10が、各出現時において、H又は置換基であり、
----が、EDGへの連結位置を表し、
R
7が、各出現時において、
Hであり、
電子供与体:電子受容体の重量比が1:0.5~1:1の範囲内である、組成物。
【請求項2】
p及びqが、各々1である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
Z
1及びZ
2が、各々、直接結合である、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
R
1及びR
2が、各出現時において、
直鎖状、分岐状、又は環状C
1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、NR
12、CO、又はCOOで置き換えられていてもよく、R
12が、C
1-12ヒドロカルビルであり、前記C
1-20アルキルの1つ以上のH原子が、Fで置き換えられていてもよい)、及び
式-(Ak)u-(Ar
6)vの基(Akが、1つ以上のC原子が、O、S、CO、又はCOOで置き換えられてもよいC
1-14アルキレン鎖であり、uが、0又は1であり、Ar
6が、各出現時において、独立して、非置換であるか、又は1つ以上の置換基で置換されている芳香族
基又はヘテロ芳香族基であり、vが、少なくとも1である)からなる群から選択される、請求項1~
3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
R
1及びR
2のうちの少なくとも1つが、非置換であるか、又はC
1-20アルキルから選択される1つ以上の置換基で置換されているフェニルであり、1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、NR
12、CO、又はCOOで置き換えられていてもよく、前記C
1-20アルキルの1つ以上のH原子が、Fで置き換えられていてもよい、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
各R
3~R
6が、独立して、
H、
C
1-21アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、COO、又はCOで置き換えられていてもよい)、及び
芳香族又はヘテロ芳香族基Ar
6(非置換であるか、又は1つ以上の置換基で置換されている)から選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記電子供与体:電子受容体の重量比が1:0.8~1:1の範囲内である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、少なくとも1つの更なる電子受容体を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、更なる電子受容体であるフラーレンを含む、請求項
8に記載の組成物。
【請求項10】
溶媒中に溶解又は分散されている、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物を含む、調合物。
【請求項11】
アノードと、カソードと、前記アノードとカソードとの間に配置された光応答性層と、を含む、有機光応答性デバイスであって、前記光応答性層が、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物を含む、有機光応答性デバイス。
【請求項12】
前記有機光応答性デバイスが、有機光検出器である、請求項
11に記載の有機光応答性デバイス。
【請求項13】
請求項
11又は
12に記載の有機光応答性デバイスを形成する方法であって、前記アノード及びカソードのうちの一方の上への光応答性有機層の形成と、前記光応答性有機層の上への前記アノード及びカソードのうちの他方の形成と、を含む、方法。
【請求項14】
前記光応答性有機層の形成が、請求項
10に記載の調合物の堆積を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
光源と、前記光源から放出された光を検出するように構成された請求項
12に記載の有機光検出器と、を備える、光センサ。
【請求項16】
前記光源が、750nmを超えるピーク波長を有する光を放出する、請求項
15に記載の光センサ。
【請求項17】
前記有機光検出器と前記光源との間の光路にサンプルを受け取るように構成された、請求項
15に記載の光センサ。
【請求項18】
サンプル中の標的材料の存在及び/又は濃度を判定する方法であって、前記方法が、前記サンプルを照射することと、照射時に前記サンプルから放出される光を受け取るように構成された請求項
12に記載の光検出器の応答を測定することと、を含む、方法。
【請求項19】
前記有機光検出器が、請求項
15~
17のいずれか一項に記載の光センサの前記有機光検出器である、請求項
18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示の実施形態は、有機光応答性デバイスに使用するための有機化合物、特に、有機光検出器に使用するための電子受容性化合物に関する。
【0002】
有機発光デバイス、有機電界効果トランジスタ、有機太陽電池デバイス、及び有機光センサ(OPD)を含む、有機半導体材料を含む有機電子デバイスの範囲が知られている。
【0003】
WO2018/065352は、フラーレン部位を含有しない小分子受容体と、供与体単位及び受容体単位を有する共役コポリマー電子供与体と、を含有する光活性層を有するOPDを開示している。
【0004】
WO2018/065356は、フラーレン部位を含有しない小分子受容体と、ランダムに分散された供与体及び受容体単位を有する共役共重合体電子供与体と、を含有する光活性層を有するOPDを開示している。
【0005】
Yao et al,「Design,Synthesis,and Photovoltaic Characterization of a Small Molecular Acceptor with an Ultra-Narrow Band Gap」,Angew Chem Int Ed Engl.2017 Mar 6;56(11):3045-3049は、1.24eVのバンドギャップを有する非フラーレン受容体を開示している。
【0006】
Li et al,「Fused Tris(thienothiophene) -Based Electron Acceptor with Strong Near-Infrared Absorption for High-Performance As-Cast Solar Cells」,Advanced Materials,Vol.30(10),2018は、太陽電池用の縮合八環式電子受容体(FOIC)を開示している。
【0007】
Gao et al,「A New Non-fullerene Acceptor with Near Infrared Absorption for High Performance Ternary-Blend Organic Solar Cells with Efficiency over 13%」Advanced Science,Vol.5(6),June 2018は、3つの縮合チエノ[3,2-b]チオフェンを中心コアとし、ジフルオロ置換インダノンを末端基とする受容体-供与体-受容体(A-D-A)型非フラーレン受容体3TT-FICを含有する太陽電池を開示している。
【0008】
Wang et al,「Fused Hexacyclic Non-fullerene Acceptor with Strong Near-Infrared Absorption for Semitransparent Organic Solar Cells with 9.77% Efficiency」は、電子供与性基ジチエノシクロペンタチエノ[3,2-b]チオフェンをベースに、電子吸引性基1,1-ジシアノメチレン-3-インダノンを挟んだ、受容体IHICを含有する太陽電池を開示している。
【発明の概要】
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、式(I)の化合物を提供し、
EAG-EDG-EAG
(I)
式中、EDGは、式(II)の電子供与性基であり、各EAGは、独立して、式(III)の電子受容性基であり、
【化1】
各Xが、独立して、O又はSであり、
各Yは、独立して、O、S、Se、NR
8、又はC(R
9)
2(R
8及びR
9は、独立して、各出現時において、H又は置換基から選択される)であり、
Ar
3及びAr
4が、独立して、各出現時において、単環式若しくは多環式芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R
1及びR
2が、独立して、各出現時において、置換基であり、
R
3~R
6は、各々独立して、H又は置換基であり、
Z
1が、直接結合であるか、又はZ
1が、置換基R
4とともにAr
1を形成し、Ar
1が、単環式若しくは多環式芳香族又はヘテロ芳香族基であり、
Z
2が、直接結合であるか、又はZ
2が、置換基R
5とともにAr
2を形成し、Ar
2が、単環式若しくは多環式芳香族又はヘテロ芳香族基であり、
pが、0、1、2、又は3であり、
qが、0、1、2、又は3であり、
R
10が、各出現時において、H又は置換基であり、
----が、EDGへの連結位置を表し、
R
7は、各出現時において、H又は置換基であり、ただし、少なくとも1つのR
7は、CNである。
【0010】
任意選択的に、Ar3及びAr4は、各々独立して、チオフェン、フラン、チエノチオフェン、フロフラン、チエノフラン、ベンゾチオフェン、及びベンゾフランから選択される。
【0011】
任意選択的に、p及びqは、各々1である。
【0012】
任意選択的に、Z1及びZ2は、各々、直接結合である。
【0013】
任意選択的に、式(III)の基は、式(IIIa)を有する。
【化2】
【0014】
任意選択的に、R1及びR2は、各出現時において、
直鎖状、分岐状、又は環状C1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、NR12、CO、又はCOOで置き換えられていてもよく、R12が、C1-12ヒドロカルビルであり、前記C1-20アルキルの1つ以上のH原子が、Fで置き換えられていてもよい)、及び
式-(Ak)u-(Ar6)vの基(Akは、1つ以上のC原子が、O、S、CO、又はCOOで置き換えられてもよいC1-14アルキレン鎖であり、uは、0又は1であり、Ar6は、各出現時において、独立して、非置換であるか、又は1つ以上の置換基で置換されている芳香族又はヘテロ芳香族基であり、vは、少なくとも1である)からなる群から選択される。
【0015】
任意選択的に、R1及びR2のうちの少なくとも1つは、非置換であるか、又はC1-20アルキルから選択される1つ以上の置換基で置換されているフェニルであり、1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、NR12、CO、又はCOOで置き換えられていてもよく、C1-20アルキルの1つ以上のH原子は、Fで置き換えられていてもよい。
【0016】
任意選択的に、各R3~R6は、独立して、
H、
C1-21アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、COO、又はCOで置き換えられていてもよい)、及び
芳香族又はヘテロ芳香族基Ar6(非置換であるか、又は1つ以上の置換基で置換されている)から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示は、電子供与体及び電子受容体を含む組成物を提供し、電子受容体は、先行する請求項のいずれか一項に記載の化合物である。
【0018】
任意選択的に、組成物は、少なくとも1つの更なる電子受容体を含む。任意選択的に、組成物は、更なる電子受容体であるフラーレンを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は、溶媒に溶解又は分散されている、本明細書に記載される化合物又は組成物を含む調合物を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示は、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配置された光応答性層と、を含む、有機光応答性デバイスを提供し、光応答性層は、電子受容体と、電子供与体と、を含み、電子受容性材料は、本明細書に記載される化合物である。
【0021】
任意選択的に、有機光応答性は、有機光検出器である。
【0022】
いくつかの実施形態では、本開示は、アノード及びカソードのうちの一方の上への光応答性有機層の形成と、光応答性有機層の上へのアノード及びカソードのうちの他方の形成と、を含む、本明細書に記載される有機光応答性デバイスを形成する方法を提供する。
【0023】
任意選択的に、光応答性有機層の形成は、本明細書に記載される調合物の堆積を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、本開示は、光源と、光源から放出された光を検出するように構成された本明細書に記載される有機光検出器と、を含む、光センサを提供する。
【0025】
任意選択的に、光源は、750nmを超えるピーク波長を有する光を放出する。
【0026】
任意選択的に、光センサは、有機光検出器と光源との間の光路において、サンプルを受容するように構成されている。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、サンプル中の標的材料の存在及び/又は濃度を判定する方法を提供し、方法が、サンプルを照射することと、照射時にサンプルから放出される光を受け取るように構成された本明細書に記載される光検出器の応答を測定することと、を含む。
【0028】
任意選択的に、有機光検出器は、本明細書に記載される光センサの有機光検出器である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
開示される技術及び添付の図は、開示される技術のいくつかの実施態様を記載する。
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態による有機光センサを示す。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態による化合物実施例1の溶液及びフィルムの吸収スペクトルを示す。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態による化合物実施例2のフィルムの吸収スペクトルを示す。
【
図4A】本開示のいくつかの実施形態による有機光検出器及び比較の電子受容体を含有する比較の光検出器の外部量子効率を示す。
【
図5】異なる電子供与体:電子受容体の比を有する本開示のいくつかの実施形態による光検出器の外部量子効率を示す。
【
図6A】化合物実施例2を含有する有機光検出器の電流密度対波長のグラフである。
【
図6B】化合物実施例2を含有する有機光検出器の外部量子効率対波長のグラフである。
【
図7】化合物実施例1及びフラーレンを含有する有機光検出器の外部量子効率対波長のグラフである。
【0031】
図面は、縮尺どおりに描かれておらず、様々な視点及び見解を有する。図面は、いくつかの実施態様及び実施例である。加えて、いくつかの成分及び/又は操作は、開示の技術のいくつかの実施形態の考察を目的として、異なるブロックに分離され得るか、又は単一のブロックに組み合わされ得る。更に、技術は、様々な修正及び代替形式に変更可能であるが、特定の実施形態は、例として図面に示されており、以下に詳細に記載される。しかしながら、意図は、記載の特定の実施態様に技術を限定することではない。対照的に、技術は、添付の特許請求の範囲によって定義される技術の範囲内に入る全ての修正物、同等物、及び代替物を網羅することが意図される。
【発明を実施するための形態】
【0032】
別段文脈が明らかに要求しない限り、記載及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprise)」、「含むこと(comprising)」などの単語は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味、すなわち、「含むが、限定されない」という意味で解釈されるものである。本明細書で使用される場合、「接続される」、「結合される」、又はそれらの任意の変形という用語は、2つ以上の要素間の直接的又は間接的ないずれかの任意の接続又は結合を意味し、要素間の結合又は接続は、物理的、論理的、電磁的、又はそれらの組み合わせであり得る。加えて、「本明細書の」、「上の」、「以下の」という単語、及び類似の趣旨の単語は、本出願で使用される場合、本出願全体を指し、本出願の任意の特定の部分を指すものではない。文脈が許容する場合、単数又は複数を使用する発明を実施するための形態において、単語はまた、それぞれ複数又は単数を含み得る。「又は」という単語は、2つ以上の項目の列挙を参照して、列挙の項目のうちのいずれか、列挙の項目の全て、及び列挙の項目の任意の組み合わせ、という単語の解釈の全てを網羅する。元素への言及は、特に明記しない限り、その元素の全ての同位体を含む。
【0033】
本明細書に提供される技術の教示は、必ずしも以下に記載されるシステムだけではなく、他のシステムにも適用され得る。以下に記載の様々な実施例の要素及び行為を組み合わせて、技術の更なる実施態様を提供することができる。技術のいくつかの代替的な実施態様は、以下に記述されるこれらの実施態様に対する追加の要素を含み得るだけでなく、より少ない要素も含み得る。
【0034】
以下の詳細な記載に照らし合わせて、これら及び他の変更は、技術に対して行われ得る。記載は、技術のある特定の実施例を記載し、企図される最良のモードを記載しているが、記載がどれほど詳細に表示されていようとも、技術は、多くの方式で実践することができる。システムの詳細は、その具体的な実施態様においてかなり異なる場合があるが、本明細書に開示される技術にはなおも包含されている。上に記述されるように、技術のある特定の特色又は態様を記載する場合に使用される特定の用語は、その用語に関連する技術の任意の特定の特徴、特色、又は態様に制限されるように、その用語が本明細書で再定義されることを意味するものと解釈されるべきではない。一般に、以下の特許請求の範囲で使用される用語は、発明を実施するための形態の項でそのような用語を別段明示的に定義しない限り、技術を本明細書に開示の特定の実施例に限定するものと解釈されるべきではない。したがって、技術の実際の範囲は、開示の実施例だけでなく、特許請求の範囲下の技術の全ての実践又は実施態様の同等の方式も包含する。
【0035】
特許請求の範囲の数を低減するために、技術のある特定の態様は、ある特定の特許請求の範囲の形態で以下に提示されるが、出願人は、任意の数の特許請求の範囲の形態における技術の様々な態様を企図している。例えば、本技術のいくつかの態様は、コンピュータ可読媒体の特許請求の範囲として列挙され得るが、他の態様は、同様に、コンピュータ可読媒体の特許請求の範囲として、又はミーンズプラスファンクションの特許請求の範囲で具体化されるなど、他の形態で具現化されてもよい。
【0036】
以下の記載では、説明の目的として、開示の技術の実施態様の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、開示の技術の実施形態が、これらの具体的な詳細のいくつかを用いずとも実践することができることは、当業者には明らかであろう。
【0037】
本開示は、式(I)の化合物を提供し、
EAG-EDG-EAG
(I)
式中、EDGは、式(II)の電子供与性基であり、各EAGは、式(III)の電子受容性基である。
【0038】
式(II)は、以下の化合物であり、
【化3】
式中、
各Xが、独立して、O又はSであり、
各Yは、独立して、O、S、Se、NR
8、又はC(R
9)
2(R
8及びR
9は、独立して、各出現時において、H又は置換基から選択される)であり、
Ar
3及びAr
4が、独立して、各出現時において、単環式若しくは多環式芳香族基又はヘテロ芳香族基であり、
R
1及びR
2が、独立して、各出現時において、置換基であり、
R
3~R
6は、各々独立して、H又は置換基であり、
Z
1は、直接結合であるか、又はZ
1は、置換基R
4とともにAr
1を形成し、Ar
1は、単環式若しくは多環式芳香族又はヘテロ芳香族基であり、
Z
2が、直接結合であるか、又はZ
2が、置換基R
5とともにAr
2を形成し、Ar
2が、単環式若しくは多環式芳香族又はヘテロ芳香族基であり、
pは、0、1、2、又は3であり、
qは、0、1、2、又は3である。
【0039】
任意選択的に、R1及びR2は、独立して、各出現時において、
直鎖状、分岐状、又は環状C1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、NR12、CO、又はCOOで置き換えられていてもよく、R12は、C1-12ヒドロカルビルであり、C1-20アルキルの1つ以上のH原子は、Fで置き換えられていてもよい)、及び
式-(Ak)u-(Ar6)vの基(Akは、1つ以上のC原子が、O、S、CO、又はCOOで置き換えられていてもよいC1-14アルキレン鎖であり、uは、0又は1であり、Ar6は、各出現時において、独立して、非置換であるか、又は1つ以上の置換基で置換されている芳香族又はヘテロ芳香族基であり、vは、少なくとも1であり、任意選択的に1、2、若しくは3である)からなる群から選択される。
【0040】
C1-14ヒドロカルビルは、C1-14アルキル、非置換フェニル、及び1つ以上のC1-6アルキル基で置換されているフェニルであってもよい。
【0041】
Ar6は、好ましくはフェニルである。
【0042】
存在する場合、Ar6の置換基は、置換基R16であってもよく、R16は、各出現時において、独立して、F、C1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、NR12、CO、又はCOOで置き換えられていてもよく、C1-20アルキルの1つ以上のH原子は、Fで置き換えられていてもよい)から選択される。
【0043】
vが3以上である場合、-(Ar6)vは、Ar6基の直鎖又は分岐鎖であってもよい。本明細書に記載されるAr6基の直鎖は、1つの一価の末端Ar6基のみを有し、一方、Ar6基の分岐鎖は、少なくとも2つの一価の末端Ar6基を有する。
【0044】
任意選択的に、R1及びR2のうちの少なくとも1つは、各出現時において、上述したように、非置換であるか、又はR16から選択される1つ以上の置換基で置換されているフェニルである。
【0045】
任意選択的に、各R3~R6は、独立して、
H;
F:
線状又は分岐状C1-21アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、COO、又はCOで置き換えられていてもよい)、及び
芳香族又はヘテロ芳香族基Ar6(非置換であるか、又は1つ以上の置換基で置換されている)から選択される。
【0046】
R3~R6のいずれかがAr6である場合、Ar6は、好ましくは芳香族基、より好ましくはフェニルである。
【0047】
Ar6の1つ以上の置換基は、存在する場合、C1-14アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、COO、又はCOで置き換えられていてもよい)から選択されてもよい。
【0048】
本明細書で使用される場合、アルキル基の「非末端の」C原子とは、直鎖状(n-アルキル)鎖のメチルC原子又は分岐状アルキル鎖のメチルC原子以外のアルキルのC原子を意味する。
【0049】
好ましくは、R8は、H及びC1-30ヒドロカルビル基から選択される。C1-30ヒドロカルビル基は、任意選択的に、C1-30アルキル、非置換フェニル、及び1つ以上のC1-12アルキル基で置換されているフェニルから選択される。
【0050】
好ましくは、R9は、各出現時において、独立して、R1に関して記載される置換基から選択される。
【0051】
任意選択的に、Ar3及びAr4は、各々独立して、チオフェン、フラン、チエノチオフェン、フロフラン、チエノフラン、ベンゾチオフェン、及びベンゾフランから選択される。
【0052】
Ar3及びAr4は、各々独立して、非置換であるか、又は1つ以上の置換基で置換される。Ar3、及びAr4の好ましい置換基は、存在する場合、H以外の上述したR3~R6基、好ましくはC1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、CO、又はCOOで置き換えられている)から選択される。
【0053】
好ましくは、各R3~R6は、H、C1-20アルキル、又はC1-20アルコキシである。
【0054】
いくつかの実施形態では、R4及びR5のうちの少なくとも1つ、任意選択的に両方は、Hではなく、各R3及びR6は、Hである。
【0055】
好ましくは、pは、0又は1であり、より好ましくは、1である。
【0056】
好ましくは、qは、0又は1であり、より好ましくは、1である。
【0057】
Yは、各出現時において、好ましくは、O又はSである。
【0058】
好ましくは、Z1及びZ2は、各々、直接結合である。
【0059】
いくつかの実施形態では、Z1は、R4に連結して、単環式芳香族基又はヘテロ芳香族基を形成し、かつ/又はZ2は、R5に連結して、単環式芳香族基又はヘテロ芳香族基を形成する。
【0060】
任意選択的に、Z1は、R4に連結して、チオフェン環又はフラン環を形成し、かつ/又はZ2は、R5に連結して、チオフェン環又はフラン環を形成する。
【0061】
各EAGは、式(III)の基であり、
【化4】
式中、
R
10は、H又は置換基であり、
----が、EDGへの連結位置を表し、
R
7は、各出現時において、H又は置換基であり、ただし、少なくとも1つのR
7は、CNである。
【0062】
任意選択的に、各R7は、独立して、H、C1-12アルキル、及びCNから選択され、ただし、少なくとも1つのR7は、CNである。
【0063】
R10は、好ましくはHである。
【0064】
置換基R10は、好ましくは、C1-12アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、COO、又はCOで置き換えられていてもよく、アルキルの1つ以上のH原子が、Fで置き換えられていてもよい)、及び芳香族基Ar9、任意選択的に、フェニル(非置換であるか、又はF及びC1-12アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、COO、又はCOで置き換えられていてもよい)から選択される1つ以上の置換基で置換されてもよい)からなる群から選択される。
【0065】
式(III)の例示的な基は、以下の化合物である。
【化5】
【0066】
式(III)の基は、同じであっても異なっていてもよい。好ましくは、それらは、同じである。
【0067】
任意選択的に、式(I)の化合物は、真空レベルから4.00eVを超える、任意選択的に、真空レベルから少なくとも4.10eVのLUMO準位を有する。特に明記しない限り、本明細書に与えられる材料のHOMO及びLUMOレベルは、材料のフィルムの方形波ボルタンメトリーによって測定された値である。
【0068】
【0069】
追加の電子受容体
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I)の化合物及び電子供与体を含む組成物の唯一の電子受容体である。いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の更なる電子受容体を含んでもよい。1つ以上の更なる受容体は、フラーレン及び非フラーレン受容体(NFA)から選択されてもよい。
【0070】
式(I)の化合物:更なる受容体の重量比は、約1:0.1~1:1の範囲であってもよく、好ましくは約1:0.1~1:0.5の範囲である。
【0071】
フラーレンは、C60、C70、C76、C78、又はC84フラーレン、又はその誘導体であってもよく、その誘導体としては、限定されないが、PCBM型フラーレン誘導体(フェニル-C61-ブチル酸メチルエステル(C60PCBM)及びフェニル-C71-ブチル酸メチルエステル(C70PCBM)を含む))、TCBM型フラーレン誘導体(例えば、トリル-C61-ブチル酸メチルエステル(C60TCBM))、及びThCBM型フラーレン誘導体(例えば、チエニル-C61-ブチル酸メチルエステル(C60ThCBM))が挙げられる。
【0072】
存在する場合、フラーレン受容体は、式(VIII):
【化7】
(式中、Aは、フラーレンのC~C基とともに、非置換であっても、又は1つ以上の置換基で置換されていてもよい単環式又は縮合環基を形成する)を有してもよい。
【0073】
例示的なフラーレン誘導体としては、式(VIIIa)、(VIIIb)、及び(VIIIc):
【化8】
(式中、R
30~R
42が、各々独立して、H又は置換基である)が挙げられる。
【0074】
置換基R30~R42は、任意選択的に、独立して、各出現時において、アリール又はヘテロアリール、任意選択的に、フェニル(非置換であってもよいか、又は1つ以上の置換基で置換されていてもよい)、並びにC1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子が、O、S、CO、又はCOOで置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子が、Fで置き換えられていてもよい)からなる群から選択される。
【0075】
アリール又はヘテロアリール基R30~R42の置換基は、存在する場合、任意選択的に、C1-12アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、CO、又はCOOで置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子は、Fで置き換えられていてもよい)から選択される。
【0076】
電子供与体
供与体(p型)化合物は特に限定されず、有機ポリマー及び非ポリマー性有機分子を含む当業者に既知の電子供与材料から適切に選択することができる。p型化合物は、式(I)の化合物のLUMOよりも深い(真空から更に深い)HOMOを有する。任意選択的に、p型供与体のHOMOレベルと、式(I)のn型受容体化合物のLUMOレベルとの間のギャップは、1.4eV未満である。好適には、供与体材料及び受容体材料は、II型界面を形成する。
【0077】
好ましい実施形態では、p型供与体化合物は、有機共役ポリマーであり、該有機共役ポリマーは、ホモポリマー又は、交互、ランダム、又はブロックコポリマーを含むコポリマーであり得る。好ましいのは、非結晶性又は半結晶性共役有機ポリマーである。更に好ましくは、p型有機半導体は、低バンドギャップ、典型的には2.5eV~1.5eV、好ましくは2.3eV~1.8eVを有する共役有機ポリマーである。例示的なp型供与体ポリマーとして、共役炭化水素又はヘテロ環式ポリマーから選択されるポリマーが言及されてもよく、これらは、ポリアセン、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリベンゾフラン、ポリフルオレン、ポリフラン、ポリインデノフルオレン、ポリインドール、ポリフェニレン、ポリピラゾリン、ポリピレン、ポリピリダジン、ポリピリジン、ポリトリアリルアミン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリ(3-置換チオフェン)、ポリ(3,4-二置換チオフェン)、ポリセレノフェン、ポリ(3-置換セレノフェン)、ポリ(3,4-二置換セレノフェン)、ポリ(ビスチオフェン)、ポリ(テルチオフェン)、ポリ(ビスセレノフェン)、ポリ(テルセレノフェン)、ポリチエノ[2,3-b]チオフェン、ポリチエノ[3,2-b]チオフェン、ポリベンゾチオフェン、ポリベンゾ[1,2-b:4,5-b’ジチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(一置換ピロール)、ポリ(3,4-置換ピロール)、ポリ-1,3,4-オキサジアゾール、ポリイソチアナフテン、及びこれらの共誘導体を含む。p型供与体の好ましい例は、各々が置換されてもよいポリフルオレンとポリチオフェンとのコポリマー、並びに各々が置換されていてもよいベンゾチアジアゾール系及びチオフェン系の繰り返し単位を含むポリマーである。p型供与体は、複数の電子供与材料の混合物からも構成され得ることが理解される。
【0078】
任意選択的に、供与体ポリマーは、式(X):
【化9】
(式中、R
50及びR
51が、独立して、各出現時において、H又は置換基である)の繰り返し単位を含む。
【0079】
置換基R50及びR51は、R3に関して説明されているH以外の基から選択されてもよい。
【0080】
好ましくは、各R50は、置換基である。好ましい実施形態では、R50基は、式-Y1-C(R52)2-の基を形成するように連結されており、式中、Y1は、O、|S、NR53、又はC(R52)2であり、R52は、各出現時において、H又は置換基、好ましくはR1に関して記載される置換基、最も好ましくはC1-30ヒドロカルビル基であり、R53は、H又は置換基、好ましくはH又はC1-30ヒドロカルビル基である。
【0081】
好ましくは、各R51は、Hである。
【0082】
供与体ポリマーは、式(XX)~(XXXII)のうちの1つ以上から選択される繰り返し単位を含んでよい。
【化10】
【0083】
R23は、各出現時において、置換基、任意選択的にC1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、COO、又はCOで置き換えられていてもよく、アルキルの1つ以上のH原子は、Fで置き換えられていてもよい)である。
【0084】
R
25は、各出現時において、独立して、H、F、CN、NO
2、C
1-20アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、COO、又はCOで置き換えられていてもよく、アルキルの1つ以上のH原子は、Fで置き換えられていてもよい)、又は芳香族基Ar
7、任意選択的に、フェニル(非置換であるか、若しくはF及びC
1-12アルキル(1つ以上の隣接していない、非末端のC原子は、O、S、COO、若しくはCOで置き換えられていてもよい)から選択される1つ以上の置換基で置換されている)であり、
【化11】
式中、Z
40、Z
41、Z
42、及びZ
43は、各々独立して、CR
14又はNであり、R
14は、各出現時において、H又は置換基、好ましくはC
1-20ヒドロカルビル基であり、
Y
40及びY
41は、各々独立して、O、S、NX
71であり、X
71は、CN又はCOOR
40であるか、又はCX
60X
61であり、X
60及びX
61は、各々独立して、CN、CF
3、又はCOOR
40から選択され、
W
40及びW
41は、各々独立して、O、S、NX
71であり、X
71は、CN又はCOOR
40であるか、又はCX
60X
61であり、X
60及びX
61は、各々独立して、CN、CF
3、又はCOOR
40であり、
R
40は、各出現時において、H又は置換基、好ましくはH又はC
1-20ヒドロカルビル基である。
【0085】
Z1は、N又はPである。
【0086】
T1、T2及びT3は、各々独立して、1つ以上の更なる環に縮合し得る、アリール又はヘテロアリール環、任意選択的にベンゼンを表す。T1、T2及びT3の置換基は、存在する場合、任意選択的に、R25の非H基から選択される。
【0087】
R11は、各出現時において、置換基、好ましくは、C1-20ヒドロカルビル基である。
【0088】
Ar8は、アリーレン又はヘテロアリーレン基、任意選択的に、チオフェン、フルオレン、又はフェニレンであり、これらは、非置換であっても、又は1つ以上の置換基、任意選択的に、R25から選択される1つ以上の非H基で置換されていてもよい。
【0089】
好ましくは、供与体ポリマーは、電子供与性繰り返し単位、好ましくは式(X)の繰り返し単位、及び電子受容性繰り返し単位、好ましくは式(XX)~(XXXI)から選択される繰り返し単位を含む供与体-受容体ポリマーである。
【0090】
例示的な供与体材料は、例えば、WO2013/051676に開示されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
任意選択的に、p型供与体は、真空レベルから5.5eV以下のHOMOレベルを有する。任意選択的に、p型供与体は、真空レベルから少なくとも4.1eVのHOMOレベルを有する。
【0092】
好ましくは、供与体材料(又は2つ以上の供与体が存在する場合、供与体材料のうちの少なくとも1つ)及び式(I)の化合物は、(II)型ヘテロ接合を形成する。好ましくは、式(I)の化合物は、供与体材料のHOMOよりも少なくとも0.05eV深い、任意選択的に少なくとも0.10eV深いHOMOレベルを有する。
【0093】
任意選択的に、供与体材料、又は2つ以上の供与体が存在する場合、供与体材料のうちの少なくとも1つは、2.00eV未満のHOMO-LUMOバンドギャップを有する。
【0094】
任意選択的に、供与体材料、又は2つ以上の供与体が存在する場合、供与体材料のうちの少なくとも1つは、少なくとも900nmの吸収ピークを有する。特に明記しない限り、本明細書に記載される吸収スペクトルは、Cary 5000 UV-vis-IR分光計を使用して溶液中で測定されたものである。
【0095】
特に明記しない限り、本明細書に記載される材料のHOMO及びLUMOレベルは、方形波ボルタンメトリーを使用して化合物のフィルムから測定されたものである。
【0096】
いくつかの実施形態では、供与体化合物の受容体化合物に対する重量は、約1:0.5~約1:2である。
【0097】
好ましくは、電子供与体:電子受容体の重量比は、約1:0.5~1:2、好ましくは1:0.7~1:1.7の範囲である。好ましい実施形態では、電子受容体の重量は、電子供与体の重量を超える。
【0098】
有機光検出器
本明細書に記載される式(I)の化合物は、光応答性デバイス、好ましくはOPDのバルクヘテロ接合層内の電子受容体として提供されてもよい。
【0099】
図1は、本開示のいくつかの実施形態によるOPDを示す。OPDは、カソード103と、アノード107と、アノードとカソードとの間に配置されたバルクヘテロ接合層105と、を含む。OPDは、基板101上に支持されてもよい。
【0100】
図1は、カソードが基板とアノードとの間に配置される構成を示す。他の実施形態では、アノードは、カソードと基板との間に配置され得る。
【0101】
バルクヘテロ接合層は、電子受容体と電子供与体との混合物を含む。いくつかの実施形態では、バルクヘテロ接合層は、電子受容体及び電子供与体からなる。いくつかの実施形態では、バルクヘテロ接合層は、式(I)の電子受容体以外の更なる電子受容体を含む。任意選択的に、更なる電子受容体は、フラーレンである。
【0102】
任意選択的に、バルクヘテロ接合層は、100~1000nmの範囲の厚さを有する。
【0103】
アノード及びカソードの各々は、独立して、単一の導電性層であり得るか、又は、複数の層を含んでもよい。
【0104】
OPDは、
図1に示されるアノード、カソード、及びバルク以外の層を含んでもよい。いくつかの実施形態では、正孔輸送層は、アノードとバルクヘテロ接合層との間に配置される。いくつかの実施形態では、電子輸送層は、カソードとバルクヘテロ接合層との間に配置される。いくつかの実施形態では、仕事関数修正層は、バルクヘテロ接合層とアノードとの間、及び/又はバルクヘテロ接合層とカソードとの間に配置される。
【0105】
光検出器を含む装置は、光検出器に逆バイアスを印加するための電圧源、及び/又は光電流を測定するように構成されたデバイスを更に含んでいてもよい。光検出器に印加される電圧は可変であり得る。いくつかの実施形態では、光検出器は、使用時に連続的にバイアスがかけられてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、光検出器システムは、本明細書に記載される複数の光検出器、例えば、カメラの画像センサを備える。
【0107】
いくつかの実施形態では、センサは、本明細書に記載されるOPDと、光源と、を含んでいてもよく、OPDは、光源から放出された光を受け取るように構成されている。
【0108】
いくつかの実施形態では、光源からの光は、OPDに到達する前に変更されてもよいか、又は変更されなくてもよい。例えば、光がOPDに到達する前に、フィルタリング、ダウン変換、又はアップ変換されてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、光源は、750nm超、任意選択的に1500nm未満、任意選択的に1300~1400nmの範囲のピーク波長を有する。
【0110】
第1及び第2の電極のうちの少なくとも1つは、デバイスに入射する光がバルクヘテロ接合層に到達できるように透明である。いくつかの実施形態では、第1及び第2の電極の両方が透明である。
【0111】
各透明電極は、好ましくは、850~1500nmの範囲の波長に対して、少なくとも70%、任意選択的に少なくとも80%の透過率を有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、一方の電極は透明であり、他方の電極は反射性である。
【0113】
任意選択的に、透明電極は、透明導電性酸化物、好ましくは、インジウムスズ酸化物又はインジウム酸化亜鉛の層を含むか、又はそれらからなる。好ましい実施形態では、電極は、ポリ3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含んでもよい。他の好ましい実施形態では、電極は、PEDOTとポリスチレンスルホネート(PSS)との混合物を含んでもよい。電極は、PEDOT:PSSの層からなり得る。
【0114】
任意選択的に、反射電極は、反射金属の層を含んでもよい。反射材料の層は、アルミニウム、又は銀、又は金であり得る。いくつかの実施形態では、二層電極が使用されてもよい。例えば、電極は、インジウムスズ酸化物(ITO)/銀二層、ITO/アルミニウム二層、又はITO/金二層であってもよい。
【0115】
デバイスは、基板によって支持されるアノード及びカソードのうちの一方の上にバルクヘテロ接合層を形成し、アノード又はカソードのうちの他方をバルクヘテロ接合層の上に堆積させることによって形成されてもよい。
【0116】
OPDの面積は、約3cm2未満、約2cm2未満、約1cm2未満、約0.75cm2未満、約0.5cm2未満、又は約0.25cm2未満であり得る。任意選択的に、各OPDは、OPDアレイの一部であってよく、各OPDは、本明細書に記載される面積、任意選択的に1mm2未満、任意選択的に0.5ミクロン2~900ミクロン2の範囲の面積を有するアレイの画素である。
【0117】
基板は、ガラス又はプラスチック基板であり得るが、これらに限定されない。基板は、無機半導体として説明することができる。いくつかの実施形態では、基板は、シリコンであり得る。例えば、基板は、シリコンのウエハであり得る。使用時に、入射光が基板及び基板によって支持された電極を通って透過される場合、基板は透明である。
【0118】
アノード及びカソードのうちの一方を支持する基板は、使用時に、入射光がアノード及びカソードのうちの他方を透過する場合、透明であっても、又は透明でなくてもよい。
【0119】
バルクヘテロ接合層は、熱蒸発及び溶液堆積法を含むが、これらに限定されない、任意のプロセスによって形成されてもよい。
【0120】
好ましくは、バルクヘテロ接合層は、受容体材料と、溶媒又は2つ以上の溶媒の混合物中に溶解又は分散されている、電子供与体材料と、を含む調合物を堆積させることによって形成される。調合物は、スピンコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、ドクターブレードコーティング、ワイヤーバーコーティング、スリットコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、及びフレキソ印刷を含むが、これらに限定されない任意のコーティング又は印刷方法によって堆積されてもよい。
【0121】
調合物の1つ以上の溶媒は、任意選択的に、塩素、C1-10アルキル、及びC1-10アルコキシ(2つ以上の置換基が連結されて、非置換であってもよいか、又は1つ以上のC1-6アルキル基で置換されていてもよい環を形成する)、任意選択的に、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、アニソール、インダン、及びそのアルキル置換誘導体、並びにテトラリン及びそのアルキル置換誘導体から選択される1つ以上の置換基で置換されたベンゼンを含むか、又はそれらからなり得る。
【0122】
調合物は、2つ以上の溶媒の混合物、好ましくは、上述したように1つ以上の置換基により置換された少なくとも1つのベンゼンと、1つ以上の更なる溶媒とを含む混合物を含んでもよい。1つ以上の更なる溶媒は、エステル、任意選択的にアルキル又はアルキル若しくはアリールカルボン酸のアリールエステル、任意選択的にC1-10アルキルベンゾエート、ベンジルベンゾエート又はジメトキシベンゼンから選択されてもよい。好ましい実施形態では、トリメチルベンゼンとベンジルベンゾエートとの混合物を溶媒として使用する。他の好ましい実施形態では、トリメチルベンゼン及びジメトキシベンゼンの混合物を溶媒として使用する。
【0123】
調合物は、電子受容体、電子供与体、及び1つ以上の溶媒に加えて、更なる成分を含んでもよい。そのような成分の例として、接着剤、消泡剤、脱気剤、粘度増強剤、希釈剤、補助剤、流れ改良剤着色剤、染料又は顔料、増感剤、安定剤、ナノ粒子、表面活性化合物、潤滑剤、湿潤剤、分散剤、及び阻害剤が言及され得る。
【0124】
本明細書に記載される有機光センサは、周囲光の存在及び/又は明るさの検出を含むがこれらに限定されない広範囲の用途で、並びに有機光センサ及び光源を含むセンサで使用されてもよい。光検出器は、光源から放出された光が光検出器に入射し、光の波長及び/又は明るさの変化が、例えば、光源と有機光検出器との間の光経路に配置されたサンプル中の標的材料による光の吸収及び/又はそれからの光の放出に起因して検出され得るように構成されてもよい。サンプルは、非生物学的サンプル、例えば、水サンプル、又はヒト若しくは動物対象から採取された生物学的サンプルであってもよい。センサは、ガスセンサ、バイオセンサ、X線撮像デバイス、カメラ撮像センサなどの撮像センサ、モーションセンサ(例えば、セキュリティアプリケーションで使用するための)、近接センサ、又は指紋センサであってもよいが、これらに限定されない。1D又は2D光センサアレイは、画像センサ内に本明細書に記載される複数の光検出器を備え得る。光検出器は、光源による照射時に光を放出するか、又は光源による照射時に光を放出する発光タグに結合される、標的分析物から放出された光を検出するように構成されてもよい。光検出器は、標的分析物又はそれに結合された発光タグによって放出された光の波長を検出するように構成されてもよい。
【実施例】
【0125】
化合物実施例1
化合物実施例1は、スキーム1に従って調製されてもよい。
【化12】
【0126】
中間体2:
n-ブチルリチウム(97.4ml、1.6M、0.16mol)を、THF(100ml)中のチエノ[3,2-b]チオフェン(1)(10g、0.07mol)の溶液に-78℃で添加し、混合物を25℃で1時間撹拌した。-78℃に冷却後、THF(100ml)中の塩化トリメチルスズ(35.5g、0.18mol)を添加し、混合物を25℃で16時間撹拌した。次いで、0℃で水(200ml)を用いてクエンチし、ヘキサン(200ml)を用いて抽出し、有機層を、ブラインを用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。粗製固体をクロロホルム(50ml)中に溶解させ、メタノール(250ml)を添加し、混合物を0℃で2時間撹拌した。得られたスラリーを濾過し、メタノール(100ml)で洗浄し、真空下で乾燥させて、白色固体として中間体2を得た(20g、収率60%)。
HPLC:98.45%。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6):δ[ppm]0.362(s,18H),7.38(s,2H)。
【0127】
中間体4:
中間体3を、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Journal of Materials Chemistry A:Materials for Energy and Sustainability(2020),8,(10),5163-5170に記載されるように合成することができる。
【0128】
脱気トルエン(100ml)中の中間体2(4.8g、0.01mol)及びメチル2-ブロモチオフェン-3-カルボキシレート(3)(4.77g、0.02mmol)の混合物に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(144mg、0.2mmol)を添加し、混合物を80℃で16時間加熱した。冷却後、得られたスラリーを濾過し、トルエン(20ml)を用いて洗浄し、真空下で乾燥させて、中間体4を黄色固体(4.5g)として得た。
HPLC:95.7%。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ[ppm]1.57(s,4H),3.88(s,6H),7.28(s,2H),7.54(d,J=5.40Hz,2H),7.69(s,2H)。
【0129】
中間体6:
n-ブチルリチウム(ヘキサン中に2.5M、17.1ml、0.04mol)を、THF(60ml)中の1-ブロモ-4-ヘキシルベンゼン(5)(12.0g、0.05mol)の溶液に-100℃で添加し、混合物を2.5時間撹拌した。中間体4(3g、0.01mol)を固体として添加し、混合物を25℃に温め、16時間撹拌した。0℃に冷却した後、NH4Cl溶液(20%水溶液、30ml)を用いてクエンチし、酢酸エチル(2×20ml)を用いて抽出し、ブライン(30ml)を用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(溶出物としてヘキサン中の2%EtOAc)で精製し、中間体6を得た(4.5g、収率63%)。
LCMS:96.5%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ[ppm]0.91(t,J=6.64Hz,12H),1.33-1.37(m,24H),1.59-1.64(m,8H),2.62(t,J=7.88Hz,8H),3.26(bs,2H),6.47(d,J=5.36Hz,2H),6.66(s,2H),7.11-7.17(m,18H)。
【0130】
中間体7:
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル化合物(2.74ml、0.02mol)を、乾燥DCM(60ml)中の中間体(6)(4.5g、0.004mol)の溶液に、窒素下、0℃で滴下した。26℃で16時間撹拌した後、混合物を、氷水(30ml)を用いてクエンチし、ジクロロメタン(50ml)を用いて希釈し、有機層を、水(30ml)を用いて洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をシリカカラムクロマトグラフィー(溶出液としてヘキサン中の2~5%DCM)によって精製して、中間体7を赤色~オレンジ色固体として得た(2g、収率46%)。
HPLC:98.1%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ[ppm]0.88(t,J=6.84Hz,12H),1.29-1.37(m,24H),1.55-1.63(m,8H),2.56(t,J=7.92Hz,8H),7.08-7.10(m,10H),7.16-7.18(m,10H)。
【0131】
中間体8:
n-ブチルリチウム(ヘキサン中に2.5M、16.5ml、0.04mol)を、乾燥THF(150ml)中の中間体7(10g、0.01mol)の溶液に、-78℃で添加した。1時間後、THF(20ml)中の塩化トリブチルスズ(16.9g、0.05mol)をゆっくりと添加し、混合物を室温に温め、16時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、粗残渣をメタノールで粉砕し、濾過して、中間体8を黄色固体として得た(4g、LCMSによる約75%の所望の生成物)。
【0132】
中間体10:
トリ(o-トリル)ホスフィン(147mg、0.48mmol)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム(0)(117mg、0.13mmol)を、トルエン(150ml)中の中間体8(2.5g、1.61mmol)及び5-ブロモ-4-[(2-エチルヘキシル)オキシ]チオフェン-2-カルバルデヒド(1.28g、4.02mmol)の脱気溶液に添加し、混合物を80℃に16時間加熱した。混合物を濃縮し、粗生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(溶出液としてヘキサン中の0~50%DCM)によって精製して、中間体10を得た(81%LCMS純度を有する1.1g及び86%LCMS純度を有する0.3g)。
【0133】
化合物実施例1:
エタノール(25ml)中の中間体10(550mg、0.38mmol)、中間体11(461mg、1.89mmol)及びパラトルエンスルホン酸(540mg、2.84mmol)の脱気溶液を、65℃で18時間撹拌し、混合物を濃縮した。また、更に550mgの中間体10を、化合物実施例1に変換した。粗生成物を組み合わせ、シリカカラムクロマトグラフィー(溶出液としてヘキサン:ジクロロメタン(1:1))によって2回精製した。所望の生成物を含有する画分を組み合わせ、エタノールで更に粉砕し、濾過して、化合物実施例1(500mg)を得た。
HPLC:93.79%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ[ppm]0.87-0.90(m,12H),0.93-0.97(m,6H),0.99-1.04(m,6H),1.29-1.34(m,12H),1.26-1.41(m,12H),1.56-1.67(m,24H),1.85-1.90(m,2H),2.61(t,J=7.6Hz,8H),4.17(d,J=4.8Hz,4H),7.15-7.20(m,18H),7.78(s,2H),8.12(s,2H),8.75(br,s,2H),8.98(s,2H)。
【0134】
スキーム2に従って、中間体11を形成した。
【化13】
【0135】
中間体13
水(2L)中の1,2-ジブロモ-4,5-ジメチルベンゼン(100g、0.38mol)、水酸化カリウム(105g、1.89mol)、及び過マンガン酸カリウム(298g、1.89mol)の混合物を、115℃で24時間加熱した。室温に冷却した後、亜硫酸水素ナトリウムを添加し、10%水酸化カリウム溶液を使用してpHを8に調整し、混合物を、セライトパッドを通して濾過し、水(2×50ml)を用いて洗浄した。水層を、濃HClを用いて1のpHに酸性化して白色沈殿を得、これを濾過し、水(2×250ml)を用いて洗浄し、メタノールを用いて粉砕した。得られた固体を濾過し、真空下で乾燥させて、中間体13を得た(46g、収率38%)。
1H-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ[ppm]8.18(s、2H)。
【0136】
中間体14:
無水酢酸(IL)中の中間体13(200g、618mmol)を130℃で4時間加熱した。室温に冷却した後、粗固体を濾過し、トルエン(200ml)を用いて洗浄し、真空下で乾燥させて、中間体14(200g)を得た。
【0137】
中間体15:
Tert-ブチルアセトアセテート(103g、654mmol)を、中間体14(200g、654mmol)、無水酢酸(1L)及びトリエチルアミン(600ml)の混合物に添加し、反応混合物を25℃で16時間撹拌した。温度を50℃未満に維持しながら、(10M HCl、1L)と氷(1kg)との混合物を用いてクエンチした後、混合物を75℃に2時間加熱し、室温に冷却した。固体を濾過し、乾燥させて、褐色固体として中間体15を得た(132g、収率68%)。
LCMS:96.8%。
1H-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ[ppm]3.28(s、2H)、8.25(s、2H)。
【0138】
中間体16:
トルエン(1.5L)中の中間体15(120g、394mmol)、エチレングリコール(244g、3.9mol)及びパラ-トルエンスルホン酸(6.78g、39.4mmol)の溶液を125℃で40時間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を水(500ml)に添加し、有機層を分離し、真空下で濃縮した。粗残渣をヘキサン(1L)中に懸濁し、30分間撹拌し、濾過して中間体16を得た(91g 59%収率)。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ[ppm]2.56(s、2H)、4.09-4.12(m、4H)、4.20-4.24(m、4H)、7.65(s、2H)。
【0139】
中間体17:
フェロシアン化カリウム(48.6g、132mmol)、1-ブチルイミダゾール(42.9g、383mmol)、及びヨウ化銅(I)(12.5g、65.6mmol)を、3回に分けてo-キシレン(2.5L)中の中間体16(65g、165mmol)の溶液に添加した。140℃で44時間加熱した後、反応混合物を室温に冷却し、Florisilプラグを通して濾過し、トルエン、続いて酢酸エチルを用いて洗浄した。濾液を減圧下で1Lに濃縮し、25℃で16時間撹拌した。得られた固体を濾過し、ヘキサンを用いて洗浄し、シリカカラムクロマトグラフィー(溶出液としてヘキサン:酢酸エチル(2:8))によって精製した。所望の生成物を含有する画分を減圧下で濃縮し、ヘキサン(1L)を残渣に添加し、得られた固体を濾過し、真空下で乾燥させて、中間体17を得た(30g、収率64%)。
HPLC:98.9%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ[ppm]2.62(s,2H),4.15-4.21(m,4H),4.24-4.28(m,4H),7.83(s,2H)。
【0140】
中間体18:
ジエチルエーテル(2M、500ml、1.0mol)及び水(5ml)中の塩化水素を、tert-ブチルメチルエーテル(1L)中の中間体17(90g、316mmol)の溶液に添加した。25℃で48時間撹拌した後、混合物を濾過し、得られた固体を、ジエチルエーテル(100ml×3)を用いて洗浄し、アセトン(500ml)を用いて3回、1時間撹拌し、濾過した。得られた固体を真空下で乾燥させ、中間体18を得た(61g、収率80%)。
HPLC:95%。
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ[ppm]3.07(s、2H)、4.20-4.36(m、4H)、8.11(s、1H)、8.16(s、1H)。
【0141】
中間体11
THF(200ml)中のマロノニトリル(5.49g、83.2mmol)の溶液を、THF(200ml)中の水素化ナトリウム(3.31g、83.2mmol)の懸濁液に25℃で添加し、25℃で1時間撹拌した。得られた混合物をTHF(600mL)中の中間体18(20g、83.2mmol)の懸濁液に0℃で添加し、反応混合物を25℃で16時間撹拌した。得られた混合物を真空下で濃縮して、粗製の暗紫色固体を得た。この手順を、別の40gの中間体18において繰り返した。粗材料を組み合わせ、シリカカラムクロマトグラフィー(溶出液として、DCM中の10~20%MeOH)によって精製した。所望の生成物を含有する画分を組み合わせ、減圧下で濃縮し、残渣をジクロロメタン及びアセトニトリルの混合物中で撹拌して、中間体11(20.2g、収率33%)を得た。
LCMS:96.35%の純度。
1H-NMR(400MHz、CD3OD):δ[ppm]3.61(s、2H)、5.55(s、1H)、7.73(s、1H)、8.29(s、1H)。
【0142】
化合物実施例2
化合物実施例2は、スキーム3に従って調製されてもよい。
【化14】
【0143】
中間体20は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、Adv.Sci.2018,5,1800307に記載されているように合成することができる。
【0144】
HOMO及びLUMOの測定
化合物実施例1のHOMO及びLUMO値を、方形波ボルタンメトリーによって測定した。
【0145】
方形波ボルタンメトリーにおいて、作用電極における電流は、作用電極と基準電極との間の電位を時間的に直線的に掃引させる間に測定される。順方向パルスと逆方向パルスとの間の差電流は、電位の関数としてプロットされて、ボルタモグラムが得られる。測定は、CHI 660Dポテンシオスタットを用いることができる。
【0146】
SWVによってHOMO又はLUMOエネルギーレベルを測定する装置は、アセトニトリル中の0.1Mの三級ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを含有するセル、直径3mmのガラス状炭素作用電極、白金対電極、及び漏れのないAg/AgCl基準電極を含んでいた。
【0147】
フェロセンを、計算目的のために実験の終了時に既存のセルに直接添加し、フェロセン対Ag/AgClの酸化及び還元のために環状ボルタンメトリー(CV)を使用して電位を判定する。
【0148】
サンプルをトルエンに溶解(3mg/ml)し、ガラス状炭素作用電極に直接3000rpmで回転させた。
【0149】
LUMO=4.8-Eフェロセン(ピーク間平均)-サンプルのE還元(ピーク最大)。
【0150】
HOMO=4.8-Eフェロセン(ピーク間平均)+サンプルのE酸化(ピーク最大)。
【0151】
典型的なSWV実験は、15Hzの周波数、25mVの振幅、及び0.004Vの増分ステップで実行する。結果を、HOMOデータ及びLUMOデータの両方について、3つの、回転させたばかりのフィルムサンプルから計算した。
【表1】
【化15】
【0152】
表1に示されるように、化合物実施例1は、比較化合物1よりも有意に小さいバンドギャップ及び顕著に深いLUMOを有する。
【0153】
吸収測定
図2は、化合物実施例1の15mg/ml溶液からキャストされたフィルム及び15mg/ml溶液の吸収スペクトルを示す。
【0154】
図3は、化合物実施例2の15mg/mlの溶液からキャストされたフィルムの吸収スペクトルを示す。
【0155】
吸収スペクトルは、Cary 5000 UV-vis-IR分光計を使用した溶液及びフィルムにおけるものであった。
図2に示されるように、化合物実施例1は、最大約1500nmの波長でのフィルムにおける吸収を示す。
【0156】
デバイス実施例1
以下の構造を有するデバイスを調製した。
カソード/供与体:受容体層/アノード
【0157】
インジウム-スズ酸化物(ITO)層でコーティングされたガラス基板をポリエチレンイミン(PEIE)で処理して、ITOの作業機能を修飾した。
【0158】
1:1.5の供与体:受容体質量比の供与体ポリマーと化合物実施例1(受容体)との混合物を含有する調合物を、1,2,4トリメチルベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼンの95:5体積/体積の溶媒混合物中の15mg/mlの溶液からバーコーティングによって、変性ITO層上に堆積させた。フィルムを80℃で乾燥させて、約500nmの厚さのバルクヘテロ接合層を形成した。
【0159】
MoO3(10nm)及びITO(50nm)のアノードスタックを、熱蒸発(MoO3)及びスパッタリング(ITO)によってバルクヘテロ接合上に形成した。
【0160】
供与体ポリマーは、1.86eVのバンドギャップと、式(X)の供与体繰り返し単位とを有する供与体-受容体ポリマーであり、式中、R50基は、連結されて、式-O-C(R52)2-の基を形成する。供与体ポリマーは、化合物実施例1とII型界面を形成する。
【0161】
比較デバイス1
デバイスを、化合物実施例1を比較化合物1に置き換えたことを除いて、デバイス実施例1について記載されるように調製した。
【化16】
である。
【0162】
図4Aを参照すると、約1100~1500nmの範囲ではるかに高い外部量子効率が達成されているが、
図4Bに示されるように暗電流の増加を伴う。
【0163】
デバイス実施例2~4
供与体ポリマー1を除いて、デバイス実施例1について記載されるようにデバイス実施例2~4を調製した。化合物実施例1の重量比を表2に示されるように変更した。
【表2】
【0164】
図5を参照すると、外部量子効率は、最低量の化合物実施例1を含有するデバイス実施例4について最も高い。
【0165】
デバイス実施例5
2つのデバイス(5-1及び5-2)を、化合物実施例1の代わりに化合物実施例2を使用したことを除いて、デバイス実施例4について記載されるように調製した。
【0166】
電流密度対電圧及び外部量子効率対波長のプロットは、それぞれ、
図6A及び
図6Bに示される。
【0167】
デバイス実施例6
変性ITO層上に堆積した調合物が、供与体ポリマー及び化合物実施例1に加えて、フラーレンC60PCBMを、供与体ポリマーが1.0:化合物実施例1が0.8:C60PCBMが0.2の比で含有していたことを除いて、デバイス実施例1について記載されるように多数のデバイスを調製した。
【0168】
図6A及び
図6Bに示されるように、デバイス性能のいくつかの変動は、フラーレンを含有しないデバイス5-1と5-2との間で観察される。本発明者らは、
図7に示されるように、バルクヘテロ接合層中に電子受容性フラーレンを提供することによって、そのような変動が低減又は排除され得ることを見出した。
【0169】
更に、フラーレンを含むことによって、式(I)の化合物が唯一の電子受容体であるデバイスと比較して、外部量子効率の増加がもたらされる場合がある。
【0170】
モデル化データ
B3LYP(機能的)を有するGaussian09を使用して、Gaussianから入手可能なGaussian09ソフトウェアを使用して、モデル化合物実施例1及び2並びにモデル比較化合物1のエネルギーレベルをモデル化した。表4に記載されるように、モデル化合物実施例1及び2は各々、モデル比較化合物1よりも深いLUMO及びより小さいバンドギャップを有する。
表4
【表3】