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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/591 20060101AFI20241029BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
C04B35/591
H05K1/03 610D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023543225
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2022072353
(87)【国際公開番号】W WO2022156637
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】202110075099.1
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510087966
【氏名又は名称】中国科学院上海硅酸塩研究所
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI INSTITUTE OF CERAMICS, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
【住所又は居所原語表記】1295 Dingxi Road, Changning District, Shanghai China
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 学建
(72)【発明者】
【氏名】張 輝
(72)【発明者】
【氏名】黄 政仁
(72)【発明者】
【氏名】姚 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】蒋 金弟
(72)【発明者】
【氏名】陳 忠明
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-182983(JP,A)
【文献】特開平09-157054(JP,A)
【文献】特開2005-330178(JP,A)
【文献】特開2000-034172(JP,A)
【文献】特開平11-345923(JP,A)
【文献】Yusen Duan, et al.,Cost effective preparation of Si3N4 ceramics with improved thermal conductivity and mechanical properties,Journal of the European Ceramic Society,NL,Elsevier,2019年10月05日,vol.40,p.298-304
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/591
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素粉末及び窒化ケイ素粉のうちの少なくとも1種類を原料粉末とし、Y粉末及びMgO粉末を焼結助剤とし、保護雰囲気で、前記原料粉末及び焼結助剤を混合し、成形して生地を取得するステップであって、前記Y粉末とMgO粉末とのモル比が(1.0~1.4):(2.5~2.9)であり、前記焼結助剤の割合が、原料粉末質量及び焼結助剤質量の総和の5wt%以下であり、原料粉末がケイ素粉末、又はケイ素粉末と窒化ケイ素粉との混合粉末である場合に、前記原料粉末質量とは原料粉末における窒化ケイ素粉及び原料粉末におけるケイ素粉末の窒化処理後に生成した窒化ケイ素の質量総和を指し、原料粉末にケイ素粉末が含まれる場合に、ケイ素粉末の質量が原料粉末質量の75wt%以上であり、前記保護雰囲気が不活性雰囲気または窒素雰囲気であるステップ(1)と、
得られた生地を還元雰囲気に置いて、500~800℃で前処理し、ラフボディを取得するステップであって、前記還元雰囲気が、水素含有量が5vol%以下である水素・窒素混合雰囲気であるステップ(2)と、
ラフボディを窒素雰囲気において、まず1600~1800℃で低温熱処理後に、1800~2000℃で高温熱処理を行い、前記窒化ケイ素セラミックス材料を取得するステップであって、原料粉末にケイ素粉末が含まれる場合に、前処理の後且つ低温熱処理の前に、得られたラフボディを窒化処理し、前記窒化処理のパラメータとして、雰囲気が水素含有量5vol%以下の水素・窒素混合雰囲気、圧力が0.1~0.2MPa、温度が1350~1450℃、保温時間が3~6時間であるステップ(3)と、を含み、
得られた窒化ケイ素セラミックス材料は、窒化ケイ素相と粒界相を含み、前記窒化ケイ素相の含有量≧95wt%であり、前記粒界相は、少なくともY、Mg、Oの3つの元素を含有する混合物であり、前記粒界相の含有量≦5wt%であり、且つ粒界相における結晶相の含有量≧40vol%であり、熱伝導率が90W・m-1・K-1以上であり、破壊電界強度が30kV/mm以上である、
ことを特徴とする窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法。
【請求項2】
ケイ素粉末及び窒化ケイ素粉のうちの少なくとも1種類を原料粉末とし、Y粉末及びMgO粉末を焼結助剤とし、さらに有機溶剤及び接着剤を添加し、保護雰囲気で混合し、混合スラリーを取得するステップであって、前記Y粉末とMgO粉末とのモル比が(1.0~1.4):(2.5~2.9)であり、前記焼結助剤の割合が、原料粉末質量及び焼結助剤質量の総和の5wt%以下であり、原料粉末がケイ素粉末、又はケイ素粉末と窒化ケイ素粉との混合粉末である場合に、前記原料粉末質量とは原料粉末における窒化ケイ素粉及び原料粉末におけるケイ素粉末窒化処理後に生成した窒化ケイ素の質量総和を指し、原料粉末にケイ素粉末が含まれる場合に、ケイ素粉末の質量が原料粉末質量の75wt%以上であり、前記保護雰囲気が不活性雰囲気または窒素雰囲気であり、前記接着剤添加量が原料粉末質量及び焼結助剤質量の総和の5~9wt%であるステップ(1)と、
得られた混合スラリーを保護雰囲気でテープキャスティング成形によって、生地を取得するステップ(2)と、
得られた生地を還元雰囲気に置いて、500~800℃で前処理し、ラフボディを取得するステップであって、前記還元雰囲気が、水素含有量が5vol%以下である水素・窒素混合雰囲気であるステップ(3)と、
ラフボディを窒素雰囲気において、まず1600~1800℃で低温熱処理後に、1800~2000℃で高温熱処理を行い、前記窒化ケイ素セラミックス材料を取得するステップであって、原料粉末にケイ素粉末が含まれる場合に、前処理の後且つ低温熱処理の前に、得られたラフボディを窒化処理し、前記窒化処理のパラメータとして、雰囲気が水素含有量5vol%以下の水素・窒素混合雰囲気、圧力が0.1~0.2MPa、温度が1350~1450℃、保温時間が3~6時間であるステップ(4)と、を含み、
得られた窒化ケイ素セラミックス材料は、窒化ケイ素相と粒界相を含み、前記窒化ケイ素相の含有量≧95wt%であり、前記粒界相は、少なくともY、Mg、Oの3つの元素を含有する混合物であり、前記粒界相の含有量≦5wt%であり、且つ粒界相における結晶相の含有量≧40vol%であり、熱伝導率が90W・m-1・K-1以上であり、破壊電界強度が30kV/mm以上である、
ことを特徴とする窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法。
【請求項3】
ステップ(3)で、前記窒素雰囲気の圧力は0.5~10MPaであり、前記低温熱処理の時間は1.5~2.5時間であり、前記高温熱処理の時間は4~12時間である、請求項1に記載の作製方法。
【請求項4】
ステップ(4)で、前記窒素雰囲気の圧力は0.5~10MPaであり、前記低温熱処理の時間は1.5~2.5時間であり、前記高温熱処理の時間は4~12時間である、請求項2に記載の作製方法。
【請求項5】
テープキャスティング成形の前に、得られた混合スラリーを真空脱気処理し、前記接着剤はポリビニルブチラールである、請求項2に記載の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法に関し、窒化ケイ素セラミックス分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスは、高出力化、高周波化、集積化の方向へ急速に発展している。半導体デバイスの作動によって生成した熱は、半導体デバイスの故障を引き起こす要因であるが、絶縁基板の熱伝導率は、半導体デバイスの全体の放熱に影響する重要な要素である。また、例えば電気自動車、高速鉄道、鉄道交通等の分野では、半導体デバイスの使用中に、常に衝撃、振動等の複雑な力学的環境に臨むことがあり、使用される材料の信頼性に対して厳しく要求される。
【0003】
高熱伝導性窒化ケイ素(Si)セラミックスは、その優れた力学的及び熱的性能のため、高強度と高熱伝導率を備えた最適の半導体絶縁基板材料であると考えられ、ハイパワー絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の放熱適用の面で素晴らしい潜在力を持っている。窒化ケイ素晶体の理論熱伝導率は、400W・m-1・K-1以上に達することができ、高熱伝導性基板となる潜在力を持っている。優れた力学的性能及び高熱伝導性の潜在力によって、窒化ケイ素セラミックスは、アルミナ、窒化アルミニウム等の既存のセラミック基板材料の欠点を補うことが期待され、ハイエンド半導体デバイス、特にハイパワーIGBT放熱基板への応用において大きな潜在力を持っている。しかし、従来の窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率は、20~30W・m-1・K-1のみであり、ハイパワー半導体デバイス基板の放熱の適用需要を全く満たすことができない。
【0004】
一方、窒化ケイ素は、強い共有結合化合物であり、固相拡散によって緻密的に焼結され難しく、適量(添加量は通常5wt%よりも大きい)の希土類酸化物及び(又は)金属酸化物を焼結助剤(例えばY、La、MgO、Al、CaO等)として添加する必要があるが、焼結助剤の添加によって窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率が顕著に低下し、低い焼結助剤の含有量は、高熱伝導の取得に寄与するが、低い焼結助剤含有量は、窒化ケイ素セラミックス焼結の緻密化の問題をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-330178号公報
【文献】中国特許出願公開第108585881号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】DUAN Yusen et al., “Cost effective preparation of Si3N4 ceramics with improved thermal”, Journal of the European Ceramic Society, Vol. 40, No. 2, October 2019 (2019-10-05), ISSN: 0955-2219, page 2, Experiment procedure section
【発明の概要】
【0007】
上記技術課題に対して、本発明は、緻密で高熱伝導性の窒化ケイ素セラミックス材料を取得するように、窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法を提供する。
【0008】
前段階の研究過程で、本発明者は、窒化ケイ素セラミックスがフォノンの熱伝達メカニズムであり、窒化ケイ素結晶格子が完全で欠陥がない場合のみに、フォノンの平均自由行程が大きく、熱伝導率が高いことを発見した。しかし、窒化ケイ素セラミックス材料の作製過程において、格子酸素、金属不純物イオン、炭素不純物等が、常に異なる度合で窒化ケイ素晶格に入り、空孔、転位等の構造欠陥が形成され、フォノンの平均自由行程が大幅に低下し、これによって材料の熱伝導率が低下する。故に、格子酸素、金属不純物イオン、炭素不純物等の含有量を如何に低減するかということは、窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率を向上させるキーポイントである。
【0009】
本発明者等は、窒化ケイ素セラミックス材料を高温で焼結する過程において、添加した焼結助剤が、低共熔液相を形成することができ、且つ窒化ケイ素粉末の表面の少量の原生酸化物(SiO、SiO等)等に反応しやすく、低融点液相が形成されることで、窒化ケイ素晶粒の液相物質移動が高温の焼結緻密化(即ち液相焼結メカニズム)を実現することを促進することをさらに発見した。しかし、焼結温度の低下に伴い、これらの液相は、窒化ケイ素晶粒の間に、アモルファス状態のガラス相を主とする粒界相を形成し、このアモルファス状態のガラス相を主とする粒界相は、熱伝導率が低い(一般的に数~十数個のW・m-1・K-1である)ように影響するキーポイントである。故に、非晶の粒界相を結晶化の粒界相に如何にするか(即ち粒界相における結晶相の含有量を向上させる)ということは、窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率を向上させるキーポイントである。
【0010】
また、本発明者等による予備研究によれば、窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率が焼結助剤の希土類元素イオン半径の増大に伴って小さくなる傾向があり、且つMgO焼結助剤に比べて、CaO焼結助剤の添加が窒化ケイ素の柱状晶粒の成長に寄与せず、熱伝導率及び強度が一般的に低いことがわかっている。
【0011】
上記研究の結果、本発明者等は、適当な焼結助剤種類を如何に選択するか、焼結助剤の含有量を如何に制御するか、粒界相の結晶度合を如何に制御するかということは、窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率を向上させる重要手段であると認定する。
【0012】
これについて、一態様で、本発明は、窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法を提供する。本発明の窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法は、
ケイ素粉末及び窒化ケイ素粉のうちの少なくとも1種類を原料粉末とし、Y粉末及びMgO粉末を焼結助剤とし、保護雰囲気で、前記原料粉末及び焼結助剤を混合し、成形して生地を取得するステップであって、前記Y粉末とMgO粉末とのモル比が(1.0~1.4):(2.5~2.9)であり、前記焼結助剤の割合が、原料粉末質量及び焼結助剤質量の総和の5wt%以下であり、原料粉末がケイ素粉末、又はケイ素粉末と窒化ケイ素粉との混合粉末である場合に、前記原料粉末質量とは原料粉末における窒化ケイ素粉及び原料粉末におけるケイ素粉末の窒化処理後に生成した窒化ケイ素の質量総和を指し、原料粉末にケイ素粉末が含まれる場合に、ケイ素粉末の質量が原料粉末質量の75wt%以上であり、前記保護雰囲気が不活性雰囲気または窒素雰囲気であるステップ(1)と、
得られた生地を還元雰囲気に置いて、500~800℃で前処理し、ラフボディを取得するステップであって、前記還元雰囲気は、水素含有量が5vol%以下である水素・窒素混合雰囲気であるステップ(2)と、
ラフボディを窒素雰囲気において、まず1600~1800℃で低温熱処理後に、1800~2000℃で高温熱処理を行い、前記窒化ケイ素セラミックス材料を取得するステップであって、原料粉末にケイ素粉末が含まれる場合に、前処理の後且つ低温熱処理の前に、得られたラフボディを窒化処理し、前記窒化処理のパラメータとして、雰囲気が水素含有量5vol%以下の水素・窒素混合雰囲気、圧力が0.1~0.2MPa、温度が1350~1450℃、保温時間が3~6時間であるステップ(3)と、を含み、
得られた窒化ケイ素セラミックス材料は、窒化ケイ素相と粒界相を含み、前記窒化ケイ素相の含有量≧95wt%であり、前記粒界相は、少なくともY、Mg、Oの3つの元素を含有する混合物であり、前記粒界相の含有量≦5wt%であり、且つ粒界相における結晶相の含有量≧40vol%であり、熱伝導率が90W・m-1・K-1以上であり、破壊電界強度が30kV/mm以上である。
【0013】
他の態様で、本発明は、他の上記窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法をさらに提供する。本発明の窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法の他の態様は、
ケイ素粉末及び窒化ケイ素粉のうちの少なくとも1種類を原料粉末とし、Y粉末及びMgO粉末を焼結助剤とし、さらに有機溶剤及び接着剤を添加し、保護雰囲気で混合し、混合スラリーを取得するステップであって、前記Y粉末とMgO粉末とのモル比が(1.0~1.4):(2.5~2.9)であり、前記焼結助剤の割合が、原料粉末質量及び焼結助剤質量の総和の5wt%以下であり、原料粉末がケイ素粉末、又はケイ素粉末と窒化ケイ素粉との混合粉末である場合に、前記原料粉末質量とは原料粉末における窒化ケイ素粉及び原料粉末におけるケイ素粉末窒化処理後に生成した窒化ケイ素の質量総和を指し、原料粉末にケイ素粉末が含まれる場合に、ケイ素粉末の質量が原料粉末質量の75wt%以上であり、前記保護雰囲気が不活性雰囲気または窒素雰囲気であり、前記接着剤添加量が原料粉末質量及び焼結助剤質量の総和の5~9wt%であるステップ(1)と、
得られた混合スラリーを保護雰囲気でテープキャスティング成形によって、生地を取得するステップ(2)と、
得られた生地を還元雰囲気に置いて、500~800℃で前処理し、ラフボディを取得するステップであって、前記還元雰囲気が、水素含有量が5vol%以下である水素・窒素混合雰囲気であるステップ(3)と、
ラフボディを窒素雰囲気に置いて、まず1600~1800℃で低温熱処理後に、1800~2000℃で高温熱処理を行い、前記窒化ケイ素セラミックス材料を取得するステップであって、原料粉末にケイ素粉末が含まれる場合に、前処理の後且つ低温熱処理の前に、得られたラフボディを窒化処理し、前記窒化処理のパラメータとして、雰囲気が水素含有量5vol%以下の水素・窒素混合雰囲気、圧力が0.1~0.2MPa、温度が1350~1450℃、保温時間が3~6時間であるステップ(4)と、を含み、
得られた窒化ケイ素セラミックス材料は、窒化ケイ素相と粒界相を含み、前記窒化ケイ素相の含有量≧95wt%であり、前記粒界相は、少なくともY、Mg、Oの3つの元素を含有する混合物であり、前記粒界相の含有量≦5wt%であり、且つ粒界相における結晶相の含有量≧40vol%であり、熱伝導率が90W・m-1・K-1以上であり、破壊電界強度が30kV/mm以上である。
【0014】
本発明で、本発明者等は、保護雰囲気で粉末及びラフボディの作製を完了することにより、原料粉末における酸素含有量、金属不純物イオン、不純物炭素原子等の不純物を制御すると同時に、ラフボディを還元雰囲気で前処理する方式で原料粉末の作製中のさらなる酸化を抑制することにより、最終的に窒化ケイ素セラミックス格子酸素及び他の欠陥の濃度を低減する。この上で、本発明者等は、二段階焼結方式(窒素雰囲気で、まず1600~1800℃で低温熱処理した後、さらに1800~2000℃で高温熱処理を行う)により、窒化ケイ素セラミックス材料のうち、粒界相の成分及び含有量を調整し、粒界相における結晶相の含有量を向上させ、最終的に高熱伝導率及び高破壊電界強度の窒化ケイ素セラミックス材料を取得する。具体的には、まず、1600~1800℃で低温焼結段階において焼結助剤が液相を生成することを促進し、緻密化を促進し、後に1800~2000℃の高温段階において残りのMgO焼結助剤を部分的に揮発させ、粒界相の含有量≦5wt%であると制御する同時に、粒界相におけるガラス相含有量をさらに低減させ、粒界相における結晶相の含有量≧40vol%にして、粒界相含有量を低減させ、粒界相の結晶化度を増加し、さらに窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率、及び破壊電界強度を向上させる目的を達成する。得られた窒化ケイ素セラミックス材料は、窒化ケイ素相の組成含有量が高く、且つ粒界相における結晶相の体積含有量≧40%であり、この高い窒化ケイ素結晶相、及び結晶の粒界相が、フォノンの散乱の低減に有利し、窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度を向上させる。一般的に、焼結助剤酸化物(例えばY、MgO等)及び窒化ケイ素粉末の表面の少量の原生酸化物(SiO、SiO等)は、窒化ケイ素セラミックス材料の高温焼結過程において低共熔液相が形成され(即ち液相焼結メカニズム)、焼結温度の低下に伴って、これらの低共熔液相は、常に非晶ガラス相の形式で固態(即ち粒界相)に変換されて、作製された窒化ケイ素セラミックス材料に存在する。窒化ケイ素晶粒に比べると、粒界相の熱伝導率及び破壊電界強度はより低く、且つ粒界相における非晶ガラス相の含有量が高いほど、その対応する熱伝導率及び破壊電界強度は低くなる。
【0015】
好ましくは、得られた窒化ケイ素セラミックス材料における不純物総量≦1.0wt%である。好ましくは、得られた不純物は、格子酸素、金属不純物イオン、不純物炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
本方法で、好ましくは、前記前処理の時間は1~3時間である。
【0017】
本方法で、好ましくは、前記窒素雰囲気(好ましくは水素が含まれない)の圧力は0.5~10MPaであり、前記低温熱処理的時間は1.5~2.5時間であり、前記高温熱処理の時間は4~12時間である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、作製プロセス過程中の酸素含有量の制御(ミックス及び生地成形過程において原料酸化回避、還元雰囲気前処理を含む)、金属不純物イオンの含有量の制御、炭素含有量の制御によって、晶格空孔、転位等の構造欠陥の量を減らし、窒化ケイ素セラミック材料の熱伝導率と破壊電界強度を向上させる目的を達成する。本発明は同時に、二段階の焼結プロセスによって粒界相の成分及び含有量を調整し、低温焼結段階で焼結助剤が液相を生成することを促進し、緻密化を促進し、高温段階で残りのMgO焼結助剤が部分的に揮発するようにすると同時に、粒界相におけるガラス相の含有量を更に低減し、これによって粒界相の含有量の減少、粒界相の結晶化度合を増加し、さらに窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率を向上する目的に達成する。本発明は同時に、材料の高い破壊電界強度は、ハイパワーデバイスの適用に寄与するとともに、基板材料の厚さの低減及び熱抵抗の低下に寄与し、この材料によって作製された銅張積層板は、耐熱衝撃性、高信頼性、長寿命といった典型な特性を体現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1で作製された窒化ケイ素セラミックス材料のXRDパターンである。
図2】実施例1で作製された窒化ケイ素セラミックス材料の典型的なSEM微細構造である。
図3】実施例1で作製された窒化ケイ素セラミックス材料の典型的なTEM微細構造である。
図4】実施例6で窒化後に作製された材料のXRDパターンである。
図5】実施例6で高温焼結後に作製された材料のXRDパターンである。
図6】実施例6で作製された窒化ケイ素セラミックス材料の典型的なSEM微細構造である。
図7】表1は窒化ケイ素セラミックス材料の組成及びその作製プロセスである。
図8】表2は窒化ケイ素セラミックス材料の相組成及び性能パラメータである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、下記実施形態を参照しながら本発明をさらに説明する。理解すべきこととしては、以下の実施形態は本発明を説明するためのものだけであり、本発明を限定するものではない。
【0021】
本開示で、窒化ケイ素セラミックス材料には95%以上の窒化ケイ素相と、結晶相含有量40%以上の粒界相とが含まれる。そして、得られた窒化ケイ素セラミックス材料のうち、格子酸素、金属不純物イオン、炭素不純物等の含有量が低く、総量が1.0wt%以下である。故に、本発明における窒化ケイ素セラミックス材料は、高い熱伝導率及び破壊電界強度を有する。
【0022】
本発明の一実施形態において、クリーニング化かつ保護雰囲気での作製プロセスを採用することによって、空気又は熱空気が材料に接触することを回避し、セラミックス作製における不純物の含有量及び酸素の含有量を制御し、材料の曲げ強度を低下しない前提で、材料の熱伝導率及び破壊電界強度を向上させる目的を達成する。以下、本発明で提供される窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法を例示的に説明する。
【0023】
この窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法は、具体的に、保護雰囲気でのミックス及び生地成形、還元雰囲気での前処理、窒素雰囲気での焼結及び焼結制度制御というステップを含む。
【0024】
保護雰囲気でのミックス
原料粉末、焼結助剤Y粉末及びMgO粉末を密閉容器で無水エタノールを加えて溶剤とし、保護雰囲気で保護して均一に混合してから、乾燥し、混合粉末が得られる。或いは、原料粉末、焼結助剤Y粉末及びMgO粉末を密閉容器に置いてから、無水エタノールを添加し有機溶剤とし、PVBを接着剤とし、その後、保護雰囲気で保護して均一に混合し、混合スラリーが得られる。そのうち、接着剤は、原料粉末+焼結助剤総質量の5wt%であってもよい。得られた混合スラリーの固含有量は50~70wt%である。
【0025】
選択可能な実施形態において、ミックスに使用される保護雰囲気は、不活性雰囲気又は窒素雰囲気であり、好ましくは窒素雰囲気である。好ましくは、ポリウレタン又はナイロンライニングを有する密閉容器を用いてミックスし、容器に窒素を注入し、空気の侵入を避ける。
【0026】
選択可能な実施形態において、原料粉末は、窒化ケイ素粉末、ケイ素粉末、又は窒化ケイ素粉ケイ素粉末との混合粉末である。そのうち、窒化ケイ素粉末とケイ素粉末の混合粉末のうち、ケイ素粉末の質量割合は75%以上であり、即ち、Si粉窒化処理後に生成した窒化ケイ素がすべての窒化ケイ素相に占める質量割合は80%以上である。
【0027】
選択可能な実施形態において、焼結助剤(Y粉末とMgO粉末)の総質量は、原料粉末+焼結助剤総質量の5wt%以下である。焼結助剤が多すぎると、作製された窒化ケイ素セラミックス材料のうち、粒界相含有量が増えるため、材料の熱伝導率及び破壊電界強度が低下する。焼結助剤が少な過ぎると、緻密化を十分に促進することができず、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の密度が比較的に低く、気孔が増加し、材料の熱伝導率及び破壊電界強度が低下する。さらに好ましくは、焼結助剤のうち、YとMgOとのモル比は、1.0~1.4:2.5~2.9であってもよい。MgOが過剰すると、焼結助剤によって形成された液相共融点温度が比較的に低く、MgOが高温で深刻に揮発することによって、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率の破壊電界強度が比較的に低い。MgOが少量であれば、焼結助剤のうち、MgOの比率が比較的に低いため、焼結助剤によって形成された液相共融点温度が比較的に高く、材料緻密化の効果が比較的に悪いため、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度は、いずれも明らかに低下する。
【0028】
保護雰囲気での生地成形
保護雰囲気で、混合粉末を直接的にプレス成形し、生地が得られる。ここで、プレス成形の方式は、乾式プレス成形、等静圧圧縮成形等を含むが、これらに限定されない。或いは、保護雰囲気中で、混合スラリーを直接的にテープキャスティング成形し、生地(片状生地)が得られる。好ましくは、テープキャスティング成形の前に、混合スラリーを真空脱気処理する(真空度は一般に-0.1~-10kPaであり、処理時間は4~24時間である)。より好ましくは、テープキャスティング成形のスクレーパー高さを制御することによって、片状生地の厚さを調整する。選択可能な実施形態において、生地成形に使用される保護雰囲気は不活性雰囲気又は窒素雰囲気であってもよく、好ましくは窒素雰囲気である。一般的に、成形中に直接的に窒素を注入して保護する。
【0029】
還元雰囲気での成形生地の前処理
還元雰囲気、一定温度で成形生地の前処理を行い、原料粉末中の酸素を除去し、成形生地中の有機物を除去する。選択可能な実施形態において、原料粉末がケイ素粉末、又は窒化ケイ素粉末とケイ素粉末との混合粉末である時に、成形生地は、まず還元雰囲気で、一定温度で前処理した後に、さらに還元雰囲気で窒化処理する。
【0030】
選択可能な実施形態において、前記前処理は、水素含有量が5vol%以下である還元性窒素雰囲気で行われることができ、還元雰囲気のガス圧は0.1~0.2MPaである。前処理温度は、500~800℃であってもよく、保温時間は1~3時間であってもよい。
【0031】
選択可能な実施形態において、前記窒化処理は、水素含有量が5vol%以下である窒素雰囲気で行われることができ、雰囲気圧力は0.1~0.2MPaである。窒化処理温度は1350~1450℃であり、保温時間は3~6時間である。
【0032】
ラフボディの焼結処理は、低温熱処理と高温熱処理を含む。具体的に、高窒素の圧力で、段階的な焼結プロセスで焼結緻密化し、前記段階的な焼結プロセスは、焼結助剤における低融点物質が揮発することを抑制する低温熱処理と、それを緻密化するさらなる高温焼結とを含む。本発明で、焼結処理は、高い窒素圧力条件でのガス圧焼結を採用すべきであり、雰囲気圧力は0.5~10MPaであってもよい。ラフボディをBN坩堝に入れて焼結処理することができる。ここで、低温熱処理(低温焼結)の温度は、1600~1800℃であってもよく、保温時間は1.5~2.5時間であってもよい。高温熱処理(高温焼結)の温度は1800~2000℃であってもよく、保温時間は4~12時間であってもよい。
【0033】
本発明では、作製された窒化ケイ素セラミックス中の格子酸素、金属不純物イオン、不純物炭素等の含有量が低く、高い熱伝導率、高い破壊電界強度の特徴を有し、その熱伝導率が90W・m-1・K-1以上であると同時に、破壊電界強度が30KV/mm以上である。
【0034】
以下、さらに実施例をあけて本発明を詳細的に説明する。同様に、以下の実施例は本発明をさらに説明するだけに用いられ、本発明の保護範囲を限定するものと理解すべきではない。当業者による、本発明の上記内容に基づいてなされたいくつかの本質的な改良及び調整は、いずれも本発明の保護範囲に属する。下記例示的なプロセスパラメータ等も適当な範囲のうちの一例である。すなわち当業者は、本明細書の説明により適当な範囲において選択を行うことができ、以下の例示的な具体的数値に限定されるものではない。
【0035】
実施例1
まず、95gのSi粉末、5gの焼結助剤粉末(Y:MgO=1.2:2.5,モル比)、1gのヒマシ油、1gのPEG、70gの無水エタノール及び200gの窒化ケイ素研磨ボールを、雰囲気保護機能を有するポリウレタン裏地付きのボールミルタンクに入れた。ボールミルタンクキャップをパッケージングした後に順に真空引き、N保護雰囲気を注入し、6時間ボールミーリング混合した後にスラリーが得られた。上記スラリーに5gのPVB及び3gのDBPをさらに添加し、続いてN雰囲気保護で6時間ボールミーリングした後に均一なスラリーが得られた。次に、スラリーに対して6時間真空脱ガス処理を行い、在N雰囲気保護で基板生地がテープキャスティング成形された。基板生地の厚さはd±0.05mm(d=0.2~2.0)であった。再び、成形基板生地を所要の形状に切り取ってBN坩堝に入れ、それをカーボンチューブ炉に置き、その後、以下のプロセス順序で熱処理が行われた。
(1)0.15MPaのN(5%のH含有)雰囲気保護で、5℃/minの速度で600℃まで昇温した後に2時間剥離前処理が行われ、
(2)2MPaのN雰囲気保護で、5℃/minの速度で1650℃まで昇温した後に2時間低温熱処理が行われ、
(3)8MPaのN雰囲気保護で、3℃/minの速度で1950℃まで昇温した後に8時間高温焼結し、
(4)炉で室温まで冷却する。
【0036】
本実施例1によって作製された窒化ケイ素セラミックス基板材料は、曲げ強度が810MPa、熱伝導率が106W・m-1・K-1、破壊電界強度が45KV/mmであった。この材料のXRDパターンは、図1に示されるように、高い強度のβ-Si回折ピークのみが存在し、且つ明らかな蒸しパン状ピーク(steamed bread-shaped peaks)がなかった。これは、作製された材料におけるβ-Si相の含有量が95wt%よりも大きく、粒界相の含有量が5%よりも小さいことを示している。材料の典型的なSEM微細構造は、図2に示されるように、材料が高致密度を有し、微細構造が均一であった。Si晶粒(灰色の黒い領域)は、典型的な二峰性分布を呈し、細小の等軸状S4晶粒及び大きい長い柱状S4晶粒が互いに象嵌するように組成された。粒界相(グレー領域)の含有量は低く、Siマトリックスに均一的に拡散分布された。さらに少なくとも10枚のSEM図面から統計し分析し、かつ原料における焼結助剤の総引入量≦5wt%を参照すると、本実施例で作製された窒化ケイ素セラミックス材料における粒界相の含有量が5wt%であることが得られる。材料の典型的なTEM微細構造は、図3図3中のBは図3中のAの点線のボックス領域の部分拡大図である)に示されるように、Si晶粒(灰色の黒い領域)の間で粒界相(グレー領域)が分散的に分布されるが、粒界相はガラス相(明るい領域)と結晶相(暗い領域)とからなる。少なくとも10枚のTEM図から統計的に分析した結果、本実施例の作製した窒化ケイ素セラミックス材料の粒界相における結晶相の含有量は、約54vol%であった。
【0037】
実施例2~5
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータを表1(図7)に示す。プロセス過程については実施例1を参照し、作製された材料組成及び性能を表2(図8)に示す。
【0038】
実施例6
まず、3gのSi粉末、55gのSi粉末、4.5gの焼結助剤粉末(Y:MgO=1.4:2.6,モル比)、0.7gのヒマシ油、0.6gのPEG、50gの無水エタノール及び130gの窒化ケイ素の研磨ボールを、雰囲気保護機能を有するポリウレタン裏地付きのボールミルタンクに入れた。ボールミルタンクキャップをパッケージングした後に、順に真空引き、N保護雰囲気を注入し、8時間ボールミーリング混合した後、スラリーが得られた。上記スラリーに4gのPVB及び2.5gのDBPをさらに添加し、続いてN雰囲気保護で6時間ボールミーリングした後、均一なスラリーが得られた。次に、スラリーに対して6時間真空脱ガス処理を行い、在N雰囲気保護で基板生地がテープキャスティング成形された。再び、成形基板生地を所要の形状に切り取ってBN坩堝に入れ、それをカーボンチューブ炉に置き、その後、下記のプロセス順序で熱処理が行われ、
(1)0.2MPaのN(5%のH含有)雰囲気保護で、4℃/minの速度で600℃まで昇温した後に3時間剥離前処理が行われ、
(2)0.2MPaのN(5%のH)雰囲気保護で、5℃/minの速度で1450℃まで昇温した後、6時間窒化処理が行われ、
(3)3MPaのN雰囲気保護で、6℃/minの速度で1700℃まで昇温した後に、2時間低温熱処理が行われ、
(4)8MPaのN雰囲気保護で、5℃/minの速度で1950℃まで昇温した後に、10時間高温焼結し、
(5)炉で室温まで冷却した。
【0039】
本実施例6によって作製された窒化ケイ素セラミックス基板材料は、曲げ強度が710MPa、熱伝導率が110W・m-1・K-1、破壊電界強度が48KV/mmであった。この材料の窒化処理プロセス(上記プロセス過程(2))後のXRDパターンは、図4に示されるように、主晶相がいずれもα-Siであると同時に、少量のβ-Si物相(5~10%)を含有する。この材料の高温焼結プロセス(上記プロセス過程(4))後のXRDパターンは、図5に示されるように、β-Si回折ピークのみ存在し、且つ明らかな蒸しパン状ピーク(steamed bread-shaped peaks)がなかった。これは、作製された材料におけるβ-Si相の含有量が95wt%よりも大きく、粒界相の含有量が5wt%よりも小さいことを示している。さらに上記実施例1と同一の方法を用いて、作製された材料粒界相における結晶相の含有量が約60vol%であることが測定された。材料断口の典型的なSEM微細構造は、図6に示されるように、材料が高い密度を有し、微細構造が均一であり、細小の等軸状Si晶粒及び大きな長い柱状Si晶粒が互いに象嵌するように組成される。
【0040】
実施例7~10
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、窒化処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータを表1(図7)に示す。プロセス過程について実施例6を参照し、作製された材料組成及び性能を表2(図8)に示す。
【0041】
実施例11
本実施例11で、窒化ケイ素セラミックス材料の作製過程について実施例1を参照し、主な相違点として、95gのSi粉末、5gの焼結助剤粉末(Y:MgO=1.2:2.5,モル比)、1gのヒマシ油、1gのPEG、70gの無水エタノール及び200gの窒化ケイ素研磨ボールを、雰囲気保護機能を有するポリウレタン裏地付きのボールミルタンクに入れた。ボールミルタンクキャップをパッケージングした後に、順に真空引き、N保護雰囲気を注入し、6時間ボールミーリングしてスラリーが得られた。そして、窒素雰囲気で乾燥、ふるい分け、乾式プレス成形(20MPa)及び冷間等静圧圧縮(200MPa)が行われ、生地が得られた。
【0042】
比較例1
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図7)を参照)、プロセス過程について実施例1を参照し、相違点として、ボールミルミックス及び生地成形等のプロセス過程で窒素雰囲気保護措置が採用されない。作製された材料組成及び性能を表1(図7)に示す。材料作製プロセス過程で本発明に記載の窒素雰囲気保護措置が採用されなかったため、原料における窒化ケイ素粉に異なる度合の酸化が発生し、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下したが、曲げ強度は基本的に変わらない。
【0043】
比較例2
焼結助剤組成比率、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図7)を参照)、相違点として、焼結助剤の総量が増加する。作製された材料組成及び性能を表2(図8)に示す。焼結助剤の含有量が比較的に高いため、焼結助剤によって形成された低い熱伝導率特性を有する粒界相の含有量が比較的に高く、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下したが、曲げ強度は基本的に変わらない。
【0044】
比較例3
原材料配合、焼結助剤種類及び総量、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図7)を参照)、相違点として、焼結助剤の配合が異なる(Y:MgO=1.2:4.0)。作製された材料組成及び性能を表2(図8)に示す。焼結助剤におけるMgOの比率が比較的に高いため、焼結助剤によって形成された液相共融点温度が相対的に低く、高温で揮発するのは深刻であり、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下した。
【0045】
比較例4
原材料配合、焼結助剤種類及び総量、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図7)を参照)、相違点として、焼結助剤の配合が異なる(Y:MgO=1.3:2.0)。作製された材料組成及び性能を表2(図8)に示す。焼結助剤におけるMgOの比率が比較的に低いため、焼結助剤によって形成された液相共融点温度が相対的に高く、材料緻密化の効果が比較的に悪いため、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度は、いずれも明らかに低下した。
【0046】
比較例5
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図7)を参照)、プロセス過程は実施例1と類似し、相違点として、焼結プロセスが一段階焼結である。作製された材料組成及び性能を表2(図8)に示す。低温熱処理過程が含まれないため、十分に緻密化していない場合に、深刻なMgO揮発が発生し、材料の緻密化効果が相対的に悪く、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下した。
【0047】
比較例6
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図7)を参照)、プロセス過程は実施例1と同一であり、相違点として、低温熱処理の温度が比較的に低い。作製された材料組成及び性能を表2(図8)に示す。低温熱処理の温度が比較的に低いため、材料の緻密化効果が相対的に悪く、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下した。
【0048】
比較例7~8
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例8と同一であり(表1(図7)を参照)、プロセス過程は実施例8と同一であり、相違点として、窒化処理温度が比較的に低く(比較例7)又は比較的に高い(比較例8)。作製された材料組成及び性能を表2(図8)に示す。窒化処理の温度が比較的に低く(比較例7)又は比較的に高い(比較例8)ため、材料におけるSi粉窒化処理が不充分(比較例7)又は一部のケイ素化現象が発生し(比較例8)、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の力学的、熱学的及び電学的性能はいずれも明らかに低下した。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(A)】
図3(B)】
図4
図5
図6
図7
図8