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特許7578848荷電粒子ビーム装置、及び荷電粒子ビーム装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-28
(45)【発行日】2024-11-06
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置、及び荷電粒子ビーム装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/305 20060101AFI20241029BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20241029BHJP
【FI】
H01J37/305 A
H01J37/317 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023559379
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2021041908
(87)【国際公開番号】W WO2023084773
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】酉川 翔太
(72)【発明者】
【氏名】麻畑 達也
(72)【発明者】
【氏名】石井 晴幸
(72)【発明者】
【氏名】清原 正寛
(72)【発明者】
【氏名】上本 敦
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-96395(JP,A)
【文献】特開2018-163826(JP,A)
【文献】特開2015-138666(JP,A)
【文献】特開2001-243905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対してデポジション加工またはエッチング加工を実施する荷電粒子ビーム装置であって、
荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、
試料を保持する試料ステージと、
前記試料ステージを駆動する駆動機構と、
前記試料の表面にエッチングガスを供給するガス供給部と、
前記試料の加工領域を設定し、設定した前記加工領域に前記荷電粒子ビームを照射して前記試料をエッチング加工するように前記荷電粒子ビーム照射光学系および前記駆動機構を制御するコンピュータと
を備え、
前記コンピュータは、
前記試料に対して、スキャン毎に異なる加工領域を設定する、荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記コンピュータは、
前記荷電粒子ビーム照射光学系が照射する前記荷電粒子ビームの径または電流密度分布に基づいて、前記加工領域として、前記荷電粒子ビームの照射位置を設定する、請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記コンピュータは、
前記荷電粒子ビーム照射光学系が荷電粒子に印加する加速電圧に基づいて、前記加工領域として、前記荷電粒子ビームの照射位置を設定する、請求項1または請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
前記コンピュータは、
前記荷電粒子ビーム照射光学系の荷電粒子が電子またはイオン、あるいはイオン種であるかに基づいて、前記加工領域として、前記荷電粒子ビームの照射位置を設定する、請求項1又は請求項3に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
前記コンピュータは、
デポジション加工またはエッチング加工を行う前記加工領域として、前記試料に所定の間隔で複数の第1照射位置を設定し、隣り合う前記第1照射位置の間に一又は複数の第2照射位置を設定する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
前記コンピュータは、
デポジション加工またはエッチング加工を行う前記加工領域として、前記試料に、直交する二方向で、スキャン毎に異なる加工領域を設定する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、試料を保持する試料ステージと、前記試料ステージを駆動する駆動機構と、前記試料の表面にエッチングガスを供給するガス供給部と、前記試料の加工領域を設定するコンピュータとを備え、試料に対してデポジション加工またはエッチング加工を実施する荷電粒子ビーム装置の制御方法であって、
前記コンピュータが、前記試料に対して、スキャン毎に異なる加工領域を設定するステップと、
前記コンピュータが、設定した前記加工領域に前記荷電粒子ビームを照射して前記試料をエッチング加工するように前記荷電粒子ビーム照射光学系および前記駆動機構を制御するステップと
を有する、荷電粒子ビーム装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置、及び荷電粒子ビーム装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子ビーム装置(FIB:Focused Ion Beam)は、試料に化合物ガスを噴霧してデポジション加工やガスアシストエッチング加工を実施するアプリケーションを有しているものがある。デポジション加工やガスアシストエッチング加工は、主に、荷電粒子ビームの照射によって発生する二次電子により、試料上に吸着した化合物ガスを分解することで実施される。荷電粒子ビームの照射によって発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲となるため、荷電粒子ビームの照射は一定以上の間隔を空けて行われる。荷電粒子ビームを照射する位置の間隔の設定は荷電粒子ビームの電流密度分布に依存する。
【0003】
荷電粒子ビームを用いるエッチング加工に関して、薄片試料の強度が低下することを抑制する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術では、薄片試料作製装置は、集束イオンビーム照射光学系と、ステージと、ステージ駆動機構と、コンピュータとを備える。集束イオンビーム照射光学系は、集束イオンビームFIBを照射する。ステージは、試料片を保持する。ステージ駆動機構は、ステージを駆動する。コンピュータは、試料片において加工領域である薄片化領域と薄片化領域の全周を取り囲む周縁部とを設定する。コンピュータは、試料片の被照射面に交差する方向から集束イオンビームFIBを照射して、エッチング加工によって薄片化領域の厚さを周縁部の厚さよりも薄く形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-148550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
荷電粒子ビームの照射によって発生する二次電子により試料上に吸着した化合物ガスが分解されることでデポジション加工およびガスアシストエッチング加工が行われる。化合物ガスが十分に残存していない試料上の領域にビームを照射しても、分解される化合物ガスが十分に存在しないため、デポジション加工およびガスアシストエッチング加工の効率は著しく低下する。試料上のその領域に化合物ガスが再び十分に供給されるまで、その領域のデポジション加工ではデポジション膜の堆積レートの低下またはエッチングが発生し、ガスアシストエッチング加工では、通常のエッチング加工との差がなくなるため、デポジション加工に要する時間が長くなり、ガスアシストエッチング加工のエッチングの増速または減速効果を十分に得ることができない。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、デポジション加工に要する時間を短縮でき、ガスアシストエッチング加工の効果を効率良く得ることができる荷電粒子ビーム装置、及び荷電粒子ビーム装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る荷電粒子ビーム装置は、試料に対してデポジション加工またはエッチング加工を実施する荷電粒子ビーム装置であって、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、試料を保持する試料ステージと、前記試料ステージを駆動する駆動機構と、前記試料の表面にエッチングガスを供給するガス供給部と、前記試料の加工領域を設定し、設定した前記加工領域に前記荷電粒子ビームを照射して前記試料をエッチング加工するように前記荷電粒子ビーム照射光学系および前記駆動機構を制御するコンピュータとを備え、前記コンピュータは、前記試料に対して、スキャン毎に異なる加工領域を設定する。
【0008】
(2)上記(1)に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記コンピュータは、前記荷電粒子ビーム照射光学系が照射する前記荷電粒子ビームの径または電流密度分布に基づいて、前記加工領域として、前記荷電粒子ビームの照射位置を設定する。
(3)上記(1)又は上記(2)に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記コンピュータは、前記荷電粒子ビーム照射光学系が荷電粒子に印加する加速電圧に基づいて、前記加工領域として、前記荷電粒子ビームの照射位置を設定する。
(4)上記(1)又は上記(3)に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記コンピュータは、前記荷電粒子ビーム照射光学系の荷電粒子が電子またはイオン、あるいはイオン種であるかに基づいて、前記加工領域として、前記荷電粒子ビームの照射位置を設定する。
(5)上記(1)から上記(4)のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記コンピュータは、デポジション加工またはエッチング加工を行う前記加工領域として、前記試料に所定の間隔で複数の第1照射位置を設定し、隣り合う前記第1照射位置の間に一又は複数の第2照射位置を設定する。
(6)上記(1)から上記(5)のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記コンピュータは、デポジション加工またはエッチング加工を行う前記加工領域として、前記試料に、直交する二方向で、スキャン毎に異なる加工領域を設定する。
【0009】
(7)本発明の一態様に係る荷電粒子ビーム装置の制御方法は、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、試料を保持する試料ステージと、前記試料ステージを駆動する駆動機構と、前記試料の表面にエッチングガスを供給するガス供給部と、前記試料の加工領域を設定するコンピュータとを備え、試料に対してデポジション加工またはエッチング加工を実施する荷電粒子ビーム装置の制御方法であって、前記コンピュータが、前記試料に対して、スキャン毎に異なる加工領域を設定するステップと、前記コンピュータが、設定した前記加工領域に前記荷電粒子ビームを照射して前記試料をエッチング加工するように前記荷電粒子ビーム照射光学系および前記駆動機構を制御するステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、デポジション加工に要する時間を短縮でき、ガスアシストエッチング加工の効果を効率良く得ることできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置が荷電粒子ビームを照射する位置の例1を示す図である。
図3】本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の加工処理手順を示したフローチャートである。
図4】本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置が荷電粒子ビームを照射する位置の例2を示す図である。
図5】本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置が荷電粒子ビームを照射する位置の例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本実施形態の荷電粒子ビーム装置、及び荷電粒子ビーム装置の制御方法を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置を示す概略構成図である。
本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10は、試料に対してデポジション加工またはエッチング加工を実施する。荷電粒子ビーム装置10は、荷電粒子ビームを照射する。荷電粒子ビーム装置10は、荷電粒子ビームを照射する集束イオンビーム照射光学系と、試料を保持する試料ステージと、試料ステージを駆動するステージ駆動機構と、試料の表面にデポジション加工用ガスまたはアシストエッチング加工ガスを供給するガス供給部と、試料の加工領域を設定し、設定した加工領域に荷電粒子ビームを照射して試料をデポジション加工またはエッチング加工するように荷電粒子ビーム照射光学系および駆動機構を制御するコンピュータとを備える。コンピュータは、試料に対して、スキャン毎に異なる加工領域を設定する。具体的には、荷電粒子ビーム装置10は、図1に示すように、内部を真空状態に維持可能な試料室11と、試料室11の内部において、バルクの試料Vや、試料片Sを保持するための試料片ホルダPを固定可能なステージ12と、ステージ12を駆動するステージ駆動機構13と、を備えている。
【0014】
荷電粒子ビーム装置10は、試料室11の内部における所定の照射領域(つまり走査(スキャン)範囲)内の照射対象に荷電粒子ビーム、例えば集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)を照射する集束イオンビーム照射光学系14を備えている。荷電粒子ビーム装置10は、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に電子ビーム(EB:electron beam)を照射する電子ビーム照射光学系15を備えている。荷電粒子ビーム装置10は、荷電粒子ビームの照射によって照射対象から発生する二次荷電粒子(二次電子、二次イオン)Rを検出する検出器16を備えている。荷電粒子ビーム装置10は、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に気体イオンビーム(GB:gaseous ion beam)を照射する気体イオンビーム光学系18を備えている。
【0015】
集束イオンビーム照射光学系14、電子ビーム照射光学系15、および気体イオンビーム光学系18は、それぞれのビーム照射軸がステージ12上の実質的な1点で交差可能なように配置されている。即ち、試料室11を側面から平面視した時に、集束イオンビーム照射光学系14は鉛直方向に沿って配置され、電子ビーム照射光学系15と気体イオンビーム光学系18は、それぞれ鉛直方向に対して例えば45°傾斜した方向に沿って配置されている。こうした配置レイアウトにより、試料室11を側面から平面視した時に、電子ビーム照射光学系15から照射される電子ビーム(EB)のビーム照射軸に対して、気体イオンビーム(GB)のビーム照射軸は、例えば直角に交わる方向になる。
【0016】
荷電粒子ビーム装置10は、照射対象の表面にガスGを供給するガス供給部17を備えている。ガス供給部17の一例は、具体的には外径200μm程度のノズル17aなどである。
荷電粒子ビーム装置10は、ステージ12に固定された試料Vから試料片Sを取り出し、この試料片Sを保持して試料片ホルダPに移設するニードル19aおよびニードル19aを駆動して試料片Sを搬送するニードル駆動機構19bからなる試料片移設手段19と、ニードル19aに流入する荷電粒子ビームの流入電流(吸収電流とも言う)を検出し、流入電流信号はコンピュータに送り画像化する吸収電流検出器20と、を備えている。
荷電粒子ビーム装置10は、検出器16によって検出された二次荷電粒子Rに基づく画像データなどを表示する表示装置21と、コンピュータ22と、入力デバイス23と、を備えている。
集束イオンビーム照射光学系14および電子ビーム照射光学系15の照射対象は、ステージ12に固定された試料V、試料片S、および照射領域内に存在するニードル19aや試料片ホルダPなどである。
【0017】
荷電粒子ビーム装置10は、試料などの照射対象の表面に荷電粒子ビームを走査しながら照射することによって、被照射部の画像化やスパッタリングによる各種の加工(掘削、トリミング加工など)、エッチング加工、デポジション膜の形成などが実行可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料Vから試料片Sの切り出し、切り出した試料片Sから透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)による観察に用いる微小試料片Qや電子ビーム利用の分析試料片を形成する加工を実行可能である。微小試料片Qの一例は、薄片試料、針状試料などである。
【0018】
荷電粒子ビーム装置10は、試料片ホルダPに移設された試料片Sの例えば先端部分を、透過型電子顕微鏡による透過観察に適した所望の厚さ(例えば、5nm~100nmなど)まで薄膜化して、観察用の微小試料片Qを得ることが可能である。荷電粒子ビーム装置10は、試料片Sおよびニードル19aなどの照射対象の表面に荷電粒子ビームまたは電子ビームを走査しながら照射することによって、照射対象の表面の観察を実行可能である。
【0019】
吸収電流検出器20は、プリアンプを備え、ニードルの流入電流を増幅し、コンピュータ22に送る。吸収電流検出器20により検出されるニードル流入電流と荷電粒子ビームの走査と同期した信号により、表示装置21にニードル形状の吸収電流画像を表示でき、ニードル形状や先端位置の特定が行える。
試料室11は、排気装置(図示略)によって内部を所望の真空状態になるまで排気可能であるとともに、所望の真空状態を維持可能に構成されている。
【0020】
ステージ12は、試料Vを保持する。ステージ12は、試料片ホルダPを保持するホルダ固定台12aを備えている。このホルダ固定台12aは複数の試料片ホルダPを搭載できる構造であってもよい。
ステージ駆動機構13は、ステージ12に接続された状態で試料室11の内部に収容されており、コンピュータ22から出力される制御信号に応じてステージ12を所定軸に対して変位させる。ステージ駆動機構13は、少なくとも水平面に平行かつ互いに直交するX軸およびY軸と、X軸およびY軸に直交する鉛直方向のZ軸とに沿って平行にステージ12を移動させる移動機構13aを備えている。ステージ駆動機構13は、ステージ12をX軸またはY軸周りに傾斜させる傾斜機構13bと、ステージ12をZ軸周りに回転させる回転機構13cと、を備えている。
【0021】
集束イオンビーム照射光学系14は、試料室11の内部においてビーム出射部(図示略)を、照射領域内のステージ12の鉛直方向上方の位置でステージ12に臨ませるとともに、光軸を鉛直方向に平行にして、試料室11に固定されている。これによって、ステージ12に載置された試料V、試料片S、照射領域内に存在するニードル19aなどの照射対象に鉛直方向上方から下方に向かい荷電粒子ビームを照射可能である。
また、荷電粒子ビーム装置10は、上記のような集束イオンビーム照射光学系14の代わりに他のイオンビーム照射光学系を備えてもよい。イオンビーム照射光学系は、上記のような荷電粒子ビームを形成する光学系に限定されない。イオンビーム照射光学系は、例えば、光学系内に定型の開口を有するステンシルマスクを設置して、ステンシルマスクの開口形状の成形ビームを形成するプロジェクション型のイオンビーム照射光学系であってもよい。このようなプロジェクション型のイオンビーム照射光学系によれば、試料片Sの周辺の加工領域に相当する形状の成形ビームを精度良く形成でき、加工時間が短縮される。
【0022】
集束イオンビーム照射光学系14は、イオンを発生させるイオン源14aと、イオン源14aから引き出されたイオンを集束および偏向させるイオン光学系14bと、を備えている。イオン源14aおよびイオン光学系14bは、コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、荷電粒子ビームの照射位置および照射条件などがコンピュータ22によって制御される。
イオン源14aは、例えば、液体ガリウムなどを用いた液体金属イオン源やプラズマ型イオン源、ガス電界電離型イオン源などである。イオン光学系14bは、例えば、コンデンサレンズなどの第1静電レンズと、静電偏向器と、対物レンズなどの第2静電レンズと、などを備えている。イオン源14aとして、プラズマ型イオン源を用いた場合、大電流ビームによる高速な加工が実現でき、サイズの大きな試料片Sの摘出に好適である。例えば、ガス電界電離型イオン源としてアルゴンイオンを用いることで、集束イオンビーム照射光学系14からアルゴンイオンビームを照射することもできる。
【0023】
電子ビーム照射光学系15は、試料室11の内部においてビーム出射部(図示略)を、照射領域内のステージ12の鉛直方向に対して所定角度(例えば60°)傾斜した傾斜方向でステージ12に臨ませるとともに、光軸を傾斜方向に平行にして、試料室11に固定されている。これによって、ステージ12に固定された試料V、試料片S、および照射領域内に存在するニードル19aなどの照射対象に傾斜方向の上方から下方に向かい電子ビームを照射可能である。
電子ビーム照射光学系15は、電子を発生させる電子源15aと、電子源15aから射出された電子を集束および偏向させる電子光学系15bと、を備えている。電子源15aおよび電子光学系15bは、コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、電子ビームの照射位置および照射条件などがコンピュータ22によって制御される。電子光学系15bは、例えば、電磁レンズや偏向器などを備えている。
なお、電子ビーム照射光学系15と集束イオンビーム照射光学系14の配置を入れ替えて、電子ビーム照射光学系15を鉛直方向に、集束イオンビーム照射光学系14を鉛直方向に所定角度傾斜した傾斜方向に配置してもよい。
【0024】
気体イオンビーム光学系18は、例えばアルゴンイオンビームなどの気体イオンビーム(GB)を照射する。気体イオンビーム光学系18は、アルゴンガスをイオン化して1kV程度の低加速電圧で照射することができる。こうした気体イオンビーム(GB)は、集束イオンビーム(FIB)に比べて集束性が低いため、試料片Sや微小試料片Qに対するエッチングレートが低くなる。よって、試料片Sや微小試料片Qの精密な仕上げ加工に好適である。
【0025】
検出器16は、試料V、試料片Sおよびニードル19aなどの照射対象に荷電粒子ビームや電子ビームが照射された時に照射対象から放射される二次荷電粒子(二次電子、二次イオン)Rの強度(つまり、二次荷電粒子の量)を検出し、二次荷電粒子Rの検出量の情報を出力する。検出器16は、試料室11の内部において二次荷電粒子Rの量を検出可能な位置、例えば照射領域内の試料V、試料片Sなどの照射対象に対して斜め上方の位置などに配置され、試料室11に固定されている。
【0026】
ガス供給部17は試料室11に固定されており、試料室11の内部においてガス噴射部(ノズルとも言う)を有し、ステージ12に臨ませて配置されている。ガス供給部17は、荷電粒子ビーム(集束イオンビーム)による試料V、試料片Sのエッチングを、これらの材質に応じて選択的に促進するためのエッチング用ガスと、試料V、試料片Sの表面に金属または絶縁体などの堆積物によるデポジション膜を形成するためのデポジション用ガスなどを試料V、試料片Sに供給可能である。
【0027】
試料片移設手段19を構成するニードル駆動機構19bは、ニードル19aが接続された状態で試料室11の内部に収容されており、コンピュータ22から出力される制御信号に応じてニードル19aを変位させる。ニードル駆動機構19bは、ステージ12と一体に設けられており、例えばステージ12が傾斜機構13bによって傾斜軸(つまり、X軸またはY軸)周りに回転すると、ステージ12と一体に移動する。
ニードル駆動機構19bは、3次元座標軸の各々に沿って平行にニードル19aを移動させる移動機構(図示略)と、ニードル19aの中心軸周りにニードル19aを回転させる回転機構(図示略)と、を備えている。
なお、この3次元座標軸は、試料ステージの直交3軸座標系とは独立しており、ステージ12の表面に平行な2次元座標軸とする直交3軸座標系で、ステージ12の表面が傾斜状態、回転状態にある場合、この座標系は傾斜し、回転する。
【0028】
コンピュータ22は、少なくともステージ駆動機構13と、集束イオンビーム照射光学系14と、電子ビーム照射光学系15と、ガス供給部17と、ニードル駆動機構19bとを制御する。
また、コンピュータ22は、試料室11の外部に配置されている。コンピュータ22は、表示装置21と、操作者の入力操作に応じた信号を出力するマウスやキーボードなどの入力デバイス23とが接続されている。コンピュータ22は、入力デバイス23から出力される信号または予め設定された自動運転制御処理によって生成される信号などによって、荷電粒子ビーム装置10の動作を統合的に制御する。
【0029】
コンピュータ22は、集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームのビーム径を導出する。ビーム径の一例は、式(1)で表される。
D=[(2M×Rs)+{(1/2)×Csi×ai+(Cci×ai×ΔV/V)0.5 (1)
式(1)において、Dはビーム径であり、Mは光学系倍率であり、Rsはソース半径であり、Csiは球面収差係数であり、αiは像面開き半角であり、Cciは色収差係数であり、ΔVはエネルギー広がりであり、Vは加速エネルギーである。
コンピュータ22は、導出した荷電粒子ビームのビーム径Dに基づいて、荷電粒子ビームDの複数の照射位置を設定する。荷電粒子ビームの複数の照射位置の一例は、荷電粒子ビームの隣り合う照射位置同士の間隔である。コンピュータ22は、荷電粒子ビームのビーム径が小さい値から大きい値になるにしたがって、荷電粒子ビームの隣り合う照射位置同士の間隔を小さい値から大きい値に設定する。
【0030】
コンピュータ22は、荷電粒子ビームの複数の照射位置に基づいて、スキャン回数を設定する。コンピュータ22は、荷電粒子ビームの複数の照射位置を特定する情報とスキャン回数とに基づいて、集束イオンビーム照射光学系14とステージ駆動機構13とに、複数の照射位置の各々に荷電粒子ビームを照射させる制御信号を作成する。
コンピュータ22は、集束イオンビーム照射光学系14とステージ駆動機構13とに制御信号を出力する。集束イオンビーム照射光学系14は、コンピュータ22が出力した制御信号を取得し、取得した制御信号に基づいて、集束イオンビーム照射光学系14のレンズ電極、走査電極への入力を制御することにより、集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームの照射位置と、ビーム径と、ビーム照射量とを制御する。ステージ駆動機構13は、コンピュータ22が出力した制御信号を取得し、取得した制御信号に基づいて、ステージ12を所定軸に対して変位させることにより、集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームの照射位置を制御する。
コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながら検出器16によって検出される二次荷電粒子Rの検出量を照射位置に対応付けた輝度信号に変換して、二次荷電粒子Rの検出量の2次元位置分布によって照射対象の形状を示す画像データを生成する。吸収電流画像モードでは、コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながらニードル19aに流れる吸収電流を検出することによって、吸収電流の2次元位置分布(吸収電流画像)によってニードル19aの形状を示す吸収電流画像データを生成する。
コンピュータ22は、生成した各画像データとともに、各画像データの拡大、縮小、移動、および回転などの操作を実行するための画面を、表示装置21に表示させる。コンピュータ22は、自動的なシーケンス制御におけるモード選択および加工設定などの各種の設定を行なうための画面を、表示装置21に表示させる。
【0031】
以上のような構成の荷電粒子ビーム装置10を用いた、本発明の試料加工方法を説明する。荷電粒子ビームを照射する1つの照射単位を「1ピクセル」と呼び、照射単位の集合である1つの照射領域を「1フレーム」と呼ぶ。本実施形態では、照射する位置をずらすことによって、スキャン毎に異なるピクセルに照射を行う。
図2は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置が荷電粒子ビームを照射する位置の例1を示す図である。図2において「A」から「L」はピクセルを示す。図2において、(1)は1回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14が荷電粒子ビームを照射する位置(1フレーム)を示し、(2)は2回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14が荷電粒子ビームを照射する位置(2フレーム)を示し、(3)は3回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14が荷電粒子ビームを照射する位置(3フレーム)を示す。
集束イオンビーム照射光学系14は、ガス供給部17によって化合物ガスなどのエッチング用ガスを供給しながら、1回目のスキャン時にピクセルA、ピクセルD、ピクセルG、ピクセルJに荷電粒子ビームを順次照射し、2回目のスキャン時にピクセルB、ピクセルE、ピクセルH、ピクセルKに荷電粒子ビームを順次照射し、3回目のスキャン時に、ピクセルC、ピクセルF、ピクセルI、ピクセルLに荷電粒子ビームを順次照射する。
【0032】
集束イオンビーム照射光学系14がピクセルAに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルAに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルAの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。ピクセルAに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルAの近傍のピクセルB又はピクセルCに荷電粒子ビームを照射しても、ピクセルB又はピクセルCには分解される化合物ガスが少ないため、エッチング加工を十分に行うことはできないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルAに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルDに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルDはピクセルAから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルDに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルDに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルDの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。ピクセルDに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルDの近傍のピクセルE又はピクセルFに荷電粒子ビームを照射しても、ピクセルE又はピクセルFには分解される化合物ガスが少ないため、エッチング加工を十分に行うことはできないと想定される。
【0033】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルDに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルGに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルGは、ピクセルDから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルGに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルGに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルGの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。ピクセルGに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルGの近傍のピクセルH又はピクセルIに荷電粒子ビームを照射しても、ピクセルH又はピクセルIには分解される化合物ガスが少ないため、エッチング加工を十分に行うことはできないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルGに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルJに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルJはピクセルGから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルJに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルJに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。以上で、1回目のスキャンを終了する。
【0034】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルJに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルBに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルBは、ピクセルAに荷電粒子ビームが照射されたときに吸着していた化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少なくなっていたが、ピクセルDとピクセルGとピクセルJとに荷電粒子ビームが照射されている間に化合物ガスが再び供給されるため、化合物ガスが十分に存在すると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルBに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルBに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルBの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。ピクセルBに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルBの近傍のピクセルCに荷電粒子ビームを照射しても、ピクセルCには分解される化合物ガスが少ないため、エッチング加工を十分に行うことはできないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルBに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルEに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルEはピクセルBから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルEに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルEに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルEの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。ピクセルEに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルEの近傍のピクセルFに荷電粒子ビームを照射しても、ピクセルFには分解される化合物ガスが少ないため、エッチング加工を十分に行うことはできないと想定される。
【0035】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルEに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルHに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルHは、ピクセルEから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルHに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルHに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルHの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。ピクセルHに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルHの近傍のピクセルIに荷電粒子ビームを照射しても、ピクセルIには分解される化合物ガスが少ないため、エッチング加工を十分に行うことはできないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルHに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルKに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルKはピクセルHから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルKに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルKに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。以上で、2回目のスキャンを終了する。
【0036】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルKに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルCに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルCは、ピクセルBに荷電粒子ビームが照射されたときに吸着していた化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少なくなっていたが、ピクセルEとピクセルHとピクセルKとに荷電粒子ビームを照射している間に化合物ガスが供給されるため、化合物ガスが十分に存在すると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルCに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルCに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルCの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルCに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルFに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルFは、ピクセルCから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルFに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルFに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルFの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルFに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルIに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルIは、ピクセルFから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルIに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルIに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルIの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
【0037】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルIに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルLに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルLはピクセルIから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルLに荷電粒子ビームを照射した場合に二次電子が発生する。発生する二次電子によってピクセルLに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。以上で、3回目のスキャンを終了する。
このように、荷電粒子ビーム装置10は、スキャン毎に試料Vに対して異なるピクセルを設定し、設定したピクセルに荷電粒子ビームを照射する。なお、図2に示した例では、スキャン毎に、荷電粒子ビームを照射するピクセル同士の間隔を2ピクセルとする場合について説明したが、この例に限られない。例えば、スキャン毎に、荷電粒子ビームを照射するピクセル同士の間隔を1ピクセルとしてもよいし、3ピクセル以上としてもよい。なお、図2に示した例では、スキャン回数(照射処理回数)が3回の例を示したが、これに限らない。例えば、スキャン回数は2回でもよいし、4回以上でもよい。また、荷電粒子ビームを照射するピクセルの数についても、ビーム径に基づいて、任意の数を設定できる。
【0038】
次に、荷電粒子ビーム装置10の加工処理手順について説明する。図3は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の加工処理手順を示したフローチャートである。荷電粒子ビーム装置10は、ガス供給部17によって化合物ガスなどのエッチング用ガスを供給しながら、以下の処理を行う。
(ステップS1) 荷電粒子ビーム装置10において、コンピュータ22は、集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームのビーム径を導出する。
(ステップS2) 荷電粒子ビーム装置10において、コンピュータ22は、導出した荷電粒子ビームのビーム径Dに基づいて、荷電粒子ビームDの照射位置を複数導出し、導出した複数の照射位置を設定する。
(ステップS3) 荷電粒子ビーム装置10において、コンピュータ22は、設定した荷電粒子ビームDの複数の照射位置に基づいて、スキャン回数を導出し、導出したスキャン回数を設定する。
(ステップS4) 荷電粒子ビーム装置10において、コンピュータ22は、荷電粒子ビームの複数の照射位置を特定する情報とスキャン回数を特定する情報とに基づいて、集束イオンビーム照射光学系14とステージ駆動機構13とに、複数の照射位置の各々に荷電粒子ビームを照射させる制御信号を作成する。
(ステップS5) 荷電粒子ビーム装置10において、コンピュータ22は、集束イオンビーム照射光学系14とステージ駆動機構13とに制御信号を出力する。集束イオンビーム照射光学系14とステージ駆動機構13とは、コンピュータ22が出力した制御信号を取得し、取得した制御信号に基づいて、スキャンを実行する。
【0039】
前述した実施形態では、荷電粒子ビーム装置10が、集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームのビーム径に基づいて、荷電粒子ビームDの複数の照射位置を導出する場合について説明したがこの例に限られない。例えば、コンピュータ22は、加速電圧に基づいて、荷電粒子ビームDの複数の照射位置を導出してもよい。加速電圧を変化させることで荷電粒子ビームのプロファイルが変化する。コンピュータ22は、荷電粒子ビームのプロファイル(形状)に基づいて、シャープ(鋭く)になるにしたがって照射位置同士の間隔を短くしてもよい。また、コンピュータ22は、荷電粒子ビームの電流密度分布に基づいて、荷電粒子ビームDの複数の照射位置を導出してもよい。コンピュータ22は、荷電粒子ビームの電流密度分布が小さい値から大きい値になるにしたがって、荷電粒子ビームの隣り合う照射位置同士の間隔を小さい値から大きい値に設定する。また、コンピュータ22は、荷電粒子ビーム照射光学系の荷電粒子が電子またはイオン、あるいはイオン種であるかに基づいて、加工領域として、荷電粒子ビームの照射位置を設定するようにしてもよい。
前述した実施形態では、荷電粒子ビーム装置10が、試料の一方向に荷電粒子ビームを照射する場合について説明したが、この例に限られない。例えば、荷電粒子ビーム装置10は、二方向で照射する位置をずらすことによって、スキャン毎に異なるピクセルに照射を行うようにしてもよい。荷電粒子ビーム装置10は、X軸方向とY軸方向との二方向で照射する位置をずらすことによって、スキャン毎に異なるピクセルに照射を行う。
【0040】
図4は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置が荷電粒子ビームを照射する位置の例2を示す図である。図4において、「A」から「L」はピクセルを示す。図4において、(1)は1回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14が荷電粒子ビームを照射する位置(1フレーム)を示し、(2)は2回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14が荷電粒子ビームを照射する位置(2フレーム)を示す。
図示する例では、1回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14は、1ライン目のピクセルA、ピクセルC、ピクセルE、ピクセルG、ピクセルI及びピクセルK、2ライン目のピクセルB、ピクセルD、ピクセルF、ピクセルH、ピクセルJ及びピクセルL、・・・、12ライン目のピクセルB、ピクセルD、ピクセルF、ピクセルH、ピクセルJ及びピクセルLの72箇所に荷電粒子ビームを順次照射する。2回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14は、1ライン目のピクセルB、ピクセルD、ピクセルF、ピクセルH、ピクセルJ及びピクセルL、2ライン目のピクセルA、ピクセルC、ピクセルE、ピクセルG、ピクセルI及びピクセルK、・・・、12ライン目のピクセルA、ピクセルC、ピクセルE、ピクセルG、ピクセルI及びピクセルKの72箇所に荷電粒子ビームを順次照射する。
【0041】
1回目のスキャンの1ライン目の処理について説明する。荷電粒子ビーム装置10は、ガス供給部17によってエッチング用ガスを供給しながら、集束イオンビーム照射光学系14によってピクセルAに荷電粒子ビームを照射する。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルAに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルAの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルAに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルCに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルCはピクセルAから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルCに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルCの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルCに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルEに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルEは、ピクセルCから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルEに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルEの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
【0042】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルEに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルGに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルGはピクセルEから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルGに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルGの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルGに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルIに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルIはピクセルGから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルIに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルIの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルIに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルKに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルKはピクセルIから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルKに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。以上で1ライン目のスキャンを終了する。
【0043】
1回目のスキャンの2ライン目の処理について説明する。集束イオンビーム照射光学系14は、1ライン目のピクセルKに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルBに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルBは、1ライン目のピクセルAに荷電粒子ビームが照射されたときに吸着していた化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少なくなっていたが、1ライン目のピクセルCとピクセルEとピクセルGとピクセルIとピクセルKとに荷電粒子ビームが照射されている間に化合物ガスが再び供給されるため、化合物ガスが十分に存在すると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルBに荷電粒子ビームを照射した場合に発生する二次電子によってピクセルBに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルBの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルBに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルDに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルDはピクセルBから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルDに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルDの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
【0044】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルDに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルFに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルFは、ピクセルDから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルFに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルFの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルFに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルHに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルHはピクセルFから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルHに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルHの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
【0045】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルHに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルJに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルJはピクセルHから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルJに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルJの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルJに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルLに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルLはピクセルJから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルLに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。以上で、2ライン目のスキャンを終了する。3ライン目から12ライン目は、1ライン目から2ライン目の処理を適用できるため、ここでの説明は省略する。以上で、1回目のスキャンを終了する。
【0046】
2回目のスキャンの1ライン目の処理について説明する。荷電粒子ビーム装置10は、ガス供給部17によってエッチング用ガスを供給しながら、集束イオンビーム照射光学系14によってピクセルBに荷電粒子ビームを照射する。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルBに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルBの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルBに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルDに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルDはピクセルBから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルDに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルDの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
【0047】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルDに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルFに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルFは、ピクセルDから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルFに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルFの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルFに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルHに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルHはピクセルFから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルHに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルHの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
【0048】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルHに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルJに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルJはピクセルHから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルJに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルJの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルJに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルLに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルLはピクセルJから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルLに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。以上で1ライン目のスキャンを終了する。
【0049】
2回目のスキャンの2ライン目の処理について説明する。集束イオンビーム照射光学系14は、1ライン目のピクセルLに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルAに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルAは、1ライン目のピクセルBに荷電粒子ビームが照射されたときに吸着していた化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少なくなっていたが、1ライン目のピクセルDとピクセルFとピクセルHとピクセルJとピクセルLとに荷電粒子ビームが照射されている間に化合物ガスが再び供給されるため、化合物ガスが十分に存在すると想定される。集束イオンビーム照射光学系14がピクセルAに荷電粒子ビームを照射した場合に発生する二次電子によってピクセルAに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルAの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルAに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルCに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルCはピクセルAから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルCに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルCの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルCに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルEに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルEは、ピクセルCから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルEに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルEの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
【0050】
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルEに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルGに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルGはピクセルEから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルGに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルGの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルGに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルIに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルIはピクセルGから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルIに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。発生する二次電子は荷電粒子ビームの照射領域より広範囲に広がるため、ピクセルIの近傍は荷電粒子ビームの照射によって試料上に吸着した化合物ガスが分解され、残存する化合物ガスが少ないと想定される。
集束イオンビーム照射光学系14は、ピクセルIに荷電粒子ビームを照射した後に、ピクセルKに荷電粒子ビームを照射する。ピクセルKはピクセルIから離れているために化合物ガスが十分に残存していると想定される。集束イオンビーム照射光学系14が照射する荷電粒子ビームによって発生した二次電子によってピクセルKに吸着した化合物ガスが分解されることでエッチング加工が行われる。以上で、2ライン目のスキャンを終了する。3ライン目から12ライン目は、1ライン目から2ライン目の処理を適用できるため、ここでの説明は省略する。以上で、2回目のスキャンを終了する。
【0051】
また、例えば、荷電粒子ビーム装置10は、X軸とY軸との二方向で荷電粒子ビームを走査しながら照射する場合に、スキャン毎に、連続しない、少なくとも一ライン以上空けたラインのピクセルに荷電粒子ビームを照射してもよい。
図5は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置が荷電粒子ビームを照射する位置の例3を示す図である。図5において、(1)は1回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14が荷電粒子ビームを照射する位置(1フレーム)を示し、(2)は2回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14が荷電粒子ビームを照射する位置(2フレーム)を示し、(3)は3回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14が荷電粒子ビームを照射する位置(3フレーム)を示し、(4)は4回目のスキャン時に集束イオンビーム照射光学系14が荷電粒子ビームを照射する位置(4フレーム)を示す。
荷電粒子ビーム装置10は、スキャン毎に試料Vの異なるピクセルに荷電粒子ビームを照射する。なお、図5に示した例では、スキャン毎に、X軸とY軸との二方向で、荷電粒子ビームを照射するピクセル同士の間隔を1ピクセルとする場合について説明したが、この例に限られない。例えば、スキャン毎に、荷電粒子ビームを照射するピクセル同士の間隔を2ピクセル以上としてもよい。また、例えば、X軸とY軸とで、荷電粒子ビームを照射するピクセル同士の間隔を異なるようにしてもよい。なお、図5に示した例では、スキャン回数(照射処理回数)が4回の例を示したが、これに限らない。例えば、スキャン回数は2回から3回としてもよいし、5回以上としてもよい。図5において、(1)から(4)で示されるスキャンは、任意の順序で行われてもよい。
【0052】
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10によれば、試料に対してデポジション加工またはエッチング加工を実施する荷電粒子ビーム装置であって、荷電粒子ビームを照射する集束イオンビーム照射光学系14としての荷電粒子ビーム照射光学系と、試料を保持する試料ステージと、試料ステージを駆動するステージ駆動機構13としての駆動機構と、試料の表面にエッチングガスを供給するガス供給部17と、試料の加工領域を設定し、設定した加工領域に荷電粒子ビームを照射して試料をエッチング加工するように荷電粒子ビーム照射光学系および駆動機構を制御するコンピュータ22とを備える。コンピュータ22は、試料に対して、スキャン毎に異なる加工領域を設定する。このように構成することによって、スキャンの間に加工領域にエッチングガスを供給できるため、1回のスキャンで加工領域にエッチングガスが供給されるのを待ちながら処理する場合よりも、デポジション加工に要する時間を短縮でき、ガスアシストエッチング加工の効果を効率良く得ることできる。
また、コンピュータ22は、荷電粒子ビーム照射光学系が照射する荷電粒子ビームの径または電流密度分布に基づいて、加工領域として、荷電粒子ビームの照射位置を設定する。このように構成することによって、荷電粒子ビームの径または電流密度分布に基づいて、加工領域が重ならないように荷電粒子ビームの照射位置を設定できる。
また、コンピュータ22は、荷電粒子ビーム照射光学系が荷電粒子に印加する加速電圧に基づいて、加工領域として、荷電粒子ビームの照射位置を設定する。このように構成することによって、加速電圧から導出される荷電粒子ビームの形状に基づいて、加工領域が重ならないように荷電粒子ビームの照射位置を設定できる。
また、コンピュータ22は、荷電粒子ビーム照射光学系の荷電粒子が電子またはイオン、あるいはイオン種であるかに基づいて、加工領域として、荷電粒子ビームの照射位置を設定する。このように構成することによって、荷電粒子ビームが電子またはイオン、あるいはイオン種であるかに基づいて、加工領域が重ならないように荷電粒子ビームの照射位置を設定できる。
また、コンピュータ22は、デポジション加工またはエッチング加工を行う加工領域として、試料に所定の間隔で複数の第1照射位置を設定し、隣り合う前記第1照射位置の間に一又は複数の第2照射位置を設定する。このように構成することによって、加工領域が重ならないように荷電粒子ビームの照射位置を設定できる。
また、コンピュータ22は、デポジション加工またはエッチング加工を行う加工領域として、試料に、直交する二方向で、スキャン毎に異なる加工領域を設定する。このように構成することによって、直交する二方向で加工領域が重ならないように荷電粒子ビームの照射位置を設定できる。
【0053】
前述した実施形態における荷電粒子ビーム装置10のコンピュータ22の制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、荷電粒子ビーム装置D1、複合荷電粒子ビーム装置Dに内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0054】
また、上述した実施形態におけるコンピュータ22の一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。コンピュータ22の各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…荷電粒子ビーム装置、11…試料室、12…ステージ(試料ステージ)、13…ステージ駆動機構、14…集束イオンビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、15…電子ビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、16…検出器、17…ガス供給部、18…気体イオンビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、19a…ニードル、19b…ニードル駆動機構、20…吸収電流検出器、21…表示装置、22…コンピュータ、23…入力デバイス、33…試料台、34…柱状部、C…傾斜部、P…試料片ホルダ、Q…微小試料片、R…二次荷電粒子、S…試料片、V…試料
図1
図2
図3
図4
図5